2013ボルネオ紀行10スカウ交流編2013ボルネオ紀行12夕方クルーズ編

2013年09月25日

2013ボルネオ紀行11アブラヤシ編

(期間限定?「HISTORY VIEW」で、当サイトの過去記事を画像付きで一覧することができます。)


ボルネオ島・植林ツアーの四日目、現地の子どもたちとの植林作業を終え、スカウ村の民家に招かれての、
昼食会兼交流会兼歓迎会を楽しんだ御一行、子どもたちと別れて、すぐ近くのアブラヤシ・プランテーションを
見学させていただくことになりました。




DSCN0630

サンダカンへ続く道路から入ってすぐ、はるか奥まで続くアブラヤシのプランテーションであります。

このような光景がサバ州でもサラワク州でも、見渡す限り続いていました。

アブラヤシは成長すると20mにもなりますが、樹高が高くなると収穫が大変になるそうで、
まめに手入れしてカットするか、伐採するか放置しておいて別の場所に植えるか・・・
このプランテーションでは、かなり手入れが行き届いているようで、高い木はありませんでした。








ここで収穫の実演をしてくれました。

DSCN0626

伸縮自在の鎌でカットするのですが、かなりの力仕事のようでした・・・




こちらがカットしてくれた塊、これでもかなり小さい方です・・・

DSCN0628

このような塊が一本の木にいくつもでき、30年間はずっと、年に3~4回程度は収穫できるそうで、
単位当たりの油の採れる量も、大豆やトウモロコシなど他の植物油に較べ群を抜いており、
木ですから成長の際にCO2固定もしてくれますし、大豆やトウモロコシのように森林を畑(草原や裸地と同じ)
にするのではなく自然林を人工林にするだけ、という点では環境に優しいともいえる植物・・・なんですが・・・

ひとつの塊で30~40kgはあり、収穫してから24時間以内に工場に運ばないと品質が極端に落ちるそうですから、
とーぜん、素早く搬出できる通路(裸地)のある広い敷地と、集積する工場への道路網が必要になります。







こちらが実をカットしてくれた画像・・・

DSCN0633

実は大きさも形状もちょうど卵ぐらい、オレンジ色の部分が果肉、白い部分が種子で、どちらからも
(種類は異なりますが)パーム油が大量に採れます。
油を搾ったあとの搾りかすも食用で、「ココナッツなんとか」といったお菓子などにも使われますし、
芯や殻は油分が多いので工場の燃料になり、まったく捨てる部分がありません。

パーム油はあらゆる食品だけでなく、化粧品や洗剤など様々な需要があり、健康ブームも手伝って、
世界中で大量に消費され、一説によると日本人一人あたりでは、年間4kgを消費していることになるとか・・・

また、パーム油をバイオ燃料として利用すれば、CO2を固定してくれている植物を燃焼させるだけなので、
化石燃料とちがってCO2の総量を増やさないで済む、という話もありますが、一方で燃料にするには、
手間がかかり高価格になり、精製による環境負荷も大きい、世界各地での大規模なプランテーションによる、
環境破壊の影響を考慮していない、という異論もあります。

これが無駄のない有用な植物であることは間違いありませんが、見渡す限りアブラヤシ・・・という光景を見ると、
生物の多様性はもちろん、熱帯雨林の環境自体を根本から変えているということも実感できます。

もうひとつは植えてから(一帯を開発してから)30年後の更新の問題。

先に述べたように、高く成長した木から実を採集するのは大変、さらに植えてから30年後には、
実の収穫自体ができなくなるそうです。
そうなったとき、どうするかは市場価格の動きが影響するでしょうし、焼き払ったり伐採したりして更新するか、
そのまま放置して新たな土地を求めるか・・・その選択についても放っておけば経済効率性が優先され、
さらに開発と荒地化が加速する恐れもあります。

この点で、すべてをアブラヤシのプランテーションにした場合、それがずっと持続可能なのかという不安も残ります。



このように、アブラヤシはきわめて有用であると同時に、様々な問題を抱えているのも事実なんですが・・・

わたくしが三年半前に見学させていただき、丁寧な説明と丁重なおもてなしを受けたパーム油の精製工場が、
複数の見学者から悪の権化のように批判され、今は一切の見学者を断っているという残念なお話を、
今回のツアーで聞きました。

自分たちが恩恵を受けていることを棚に上げ、好意で見学を受け入れ、きちんと説明してくれた現場の人々を、
その場で批判するなどというのは、まさに言語道断、厚顔無恥、無礼千万な行為であります。

日本の工業製品や食品などの工場に比べ、はるかに電力や水の消費が少ない自己完結型の工場でしたし、
その努力をしている工場の方々や、アブラヤシに携わっている人々を一方的に批判すべきではありません。

持続可能な発展や自然環境との共存をいうなら、まず現場の話をよく聞いて、その暮らしも理解したうえで、
自分たちでできることを考え、その結果を提案して話し合い、合意した方法で自らも実践して行くべきでしょう。



ここのプランテーションでも・・・

DSCN0632

手前に伐採された巨木の切り株、その後ろには実をつけたアブラヤシ、さらにその背景には、
川沿いに僅かに残る熱帯雨林、という、象徴的な光景がありましたが・・・

現場の人々に「なんとゆーことをするのだ、ただちにもとに戻しなさい。」などとは言えません。

そう、これは我々にとっても、地元の人々にとっても、必要な光景だからであります。
ええ、少なくとも、ある程度は・・・

ただ将来に渡って、ボルネオ島全土をこんな光景にしていかないと、我々はほんとに困るのか、
地元の人々はほんとに豊かになれないのか、そんなことはないはずであります。

今後、我々もパーム油の恩恵を(持続可能な程度に)受け続け、地元も(持続可能な程度に)豊かになり続け、
熱帯雨林の生態系も(持続可能な程度に)回復・保護して、共存できる方策はあるはずです。


そのひとつとして、現地での合意に基づく秩序ある森林開発と管理、再生と保護があります。
以前も書きましたが、もともとあった樹種のうち、有用な(高く売れる)樹種を中心とした森に一部を再生し、
有用木の伐採などやエコツーリズムの受け入れなどによる収入と、育苗・植林などによる支出については、
安定した収益が生ずるまでは公社や森林局などが関与して、地元には一定の仕事と収入を保証するような仕組み。

言い換えると、アブラヤシ・プランテーション(農業)だけではなく、熱帯雨林が本来持っている資源を
循環・活用する「持続可能な林業」による収入とエコツーリズムなどによる収入への一部転換であります。

各地の保護区指定の際にも地元の猛反対があったそうですが、転換への地元の真の理解を得るには、
仕事と収入の保証が必要で、これには政府や地方政府の強力な施策が不可欠なんですが、
わたくしが、サバ州の森林開発公社やサラワク州の森林局(今は政府の森林局に格上げされたそうです。)
で見聞した限り、これは徐々に、しかし着実に、進んでいると感じています。
もちろん、利権や圧力とのせめぎあいは今後もさらに続くでしょうから、これからも困難な道であり、
協力も必要なんですが・・・


そしてもうひとつは、ヤシノミ洗剤のサラヤさんはじめ、様々な企業や団体、個人が先行しておられる、
エコツーリズムも含めた、ボルネオの熱帯雨林の回復・保護への国際的な支援活動でしょう。
こちらも押しつけではなく、地元の合意を得て、地元の人たちと協力して、地元の収入も考えて、
というのが大原則です。

ささやかですが我々の活動も、今後も継続していきたいと思っています。


と、またまたえらそうなことを書きましたが、やはり実際にアブラヤシのプランテーションに足を踏み入れて、
そこで少しでも豊かな暮らしを求めて懸命に働いている人たちと出会うと、いろいろと考えさせられた次第です。

この後、御一行はいったんロッジに戻り、夕方のリバークルーズに向かいます。

(以下次号)



m98k at 20:25│Comments(4)TrackBack(0) mixiチェック 沙漠緑化・熱帯雨林再生 | その他アウトドア

トラックバックURL

この記事へのコメント

1. Posted by 川端   2013年09月27日 08:13
よく知らないのでググってみましたが、パーム油は植物油としては既に第一位の生産量であり、かつ年々伸び続け、世界の人口増加に伴う油の消費に対応できているのもそれ故なのだとか。

なんというか、自分たちが"正しい"から容赦せんでいいってのは正義とやらの原初心理。どんな人であれつい偏見に捕らわれてしまいがちなんでしょうか。
かといって、それが間違っていると判断し行動することはそれ自体に意味や価値があったりもするわけで、スカルにトライデントとアロンの杖みたいな過激な団体だって、是非はともかくその一点でのみなら評価の対象と考えることも出来るわけで・・・

なんとなく、ちょっと日本の原発云々と重なる話題のような気もしました。
植林って、折に触れてとても複雑で難しい様々な提示と向き合ってますよね。
2. Posted by 98k   2013年09月27日 23:37
>川端さん
スカルなんとかがよくわかりませんでしたが・・・
熱帯雨林をアブラヤシのプランテーションにするのはやめるべきだと、声高に主張する人も多いのですが、
おっしゃるとおり日本の原発問題と同様、そう簡単に解決できることではありません。
電力消費を抑えたり代替電源を確保したり火力のCO2増加や水力の自然破壊などについても、
大多数がきちんと理解したうえで納得することが大前提になると思うんですが・・・
まあ、幸か不幸か、現地の人々の数は日本ほど多くはないので、「持続可能な林業」やエコツーリズムなどの観光収入に、
一部を転換したとしても、ある程度は発展していけるはずで、そちらは本文にも書いたように要はやり方次第、
むしろ我々の方が、植物油のコストアップや供給不足にどこまで対応できるか、という問題なんだと思います。
なにせ、アブラヤシは赤道から10度以内の熱帯でしか育たないそうですから・・・
3. Posted by 川端   2013年09月28日 06:04
>スカルにトライデントとアロンの杖
シーシェパードの旗のことです。
ややこしい書き方ですみませんでしたm(__)m
4. Posted by 98k   2013年09月28日 12:29
>川端さん
補足ありがとうございました。

南氷洋上とかの遠洋捕鯨だけでなく、イヌイットや日本人の伝統的な沿岸捕鯨さえ阻止しようというのは、
ボルネオ島やアマゾン流域の伝統的な焼き畑、モンゴルや内蒙古などの伝統的な遊牧を、
資本がらみの大規模開発と同じレベルで阻止しようとするのと同じ、やはり「持続可能な程度」がポイントだと思います。

秋の熊野キャンプで食べた、太地町獲れたての味は忘れられませんが・・・
ttp://98k.dreamlog.jp/archives/51335393.html


コメントする

名前
 
  絵文字
 
 
2013ボルネオ紀行10スカウ交流編2013ボルネオ紀行12夕方クルーズ編