桜花下見ポタリング・・・追憶の花見・・・

2020年04月03日

銃・病原菌・鉄(承前メモ)

こんなご時世ですので、何かの参考になればと・・・

以前紹介したジャレド・ダイアモンド著「銃・病原菌・鉄」を読んだ際のわたくしのメモの中から、
とりあえず第11章「家畜がくれた死の贈り物」部分を記事にアップしておきます。
わたくしの読み違いなど、ご教示コメントをいただけるとありがたいです。

なお23年前に書かれた進化生物学者の著書(翻訳版)についての個人メモであることにご留意ください。

・第二次世界大戦までは負傷して死亡する兵士より戦場でかかった病気で死亡する兵士のほうが多かった。
・過去の戦争で勝利できたのは、たちの悪い病原菌に対して免疫を持っていて、免疫のない相手側に
その病気をうつすことができた側である。
・1492年のコロンブス以降、なぜヨーロッパ側の病原菌がアメリカ先住民を滅ぼし、その逆はなかったのか?
・いっぽうでアジアやアフリカの熱帯地方ではヨーロッパ人は大勢死んでいる。

・病原菌も人間と同様、自然淘汰の産物で自分の子孫を適正な生存環境にばらまくことによって生き残る。
・患者が感染源として生き延びられる長さと感染効率によって感染者数は決まる。
・もっとも何もしないタイプ→サルモネラ菌や寄生虫など→熱を通さずに食べてもらうのを待ってるだけ
・昆虫の唾液経由で感染するタイプ→マラリアの蚊、ペストのノミ、チフスのシラミ、睡眠病のツェツェバエなど
・感染を早めるため感染者を変化させるタイプ→梅毒、天然痘など
→アメリカでは意図的に天然痘患者の使った毛布を屈服しない先住民部族にプレゼントしていた。
・もっとも強力な感染手段のタイプ→インフルエンザ、風邪、百日咳などは咳やくしゃみ、コレラなどは下痢、
腎症候性出血熱ウィルスはネズミの尿、狂犬病ウィルスは犬を凶暴にして噛みつかせ唾液感染させる。
・病原菌自身が動き回るタイプ→鉤虫や住血吸虫の幼虫など→穴をあけて入り込む

・性器の炎症、下痢、咳などは人間から見れば病気の症状に過ぎないが、病原菌から見れば進化の過程で獲得した
より広い範囲に伝播するための方法。
・なぜ病原菌は自分の宿主を死に追いやって自分の住処を奪うのか?
→平均して一人以上の新しい犠牲者を出すことができれば目的の伝播を達成できるから・・・
・人間の側に立って考えると、まず遺伝子により発熱によって菌を焼き殺そうとする。
・もうひとつの反応は免疫システムの動員、白血球などの細胞が菌を探し出して殺そうとし、感染症にかかると
抗体が体内にできてかかりにくくなるが(ワクチンはこれを利用)一時的なものと終生免疫ができるものがある。
やっかいなのはインフルエンザやエイズウィルス、マラリア、睡眠病のような抗原を変化させるタイプ。
・さらに(人間側には)世代交代の際に遺伝子を変化させる自然選択があり、これがもっとも時間がかかるが、
→歴史上、同じ病原菌に繰り返しさらされてきた民族は、その菌への抵抗力を持った人の割合が高い。
→民族によりマラリア、結核、細菌性下痢など特定の病原菌に対する抵抗遺伝子を持つ割合が高い。
(NHK番組「食の起源」でやってた、稲作の伝播にあわせアセトアルデヒド分解酵素が少ない人=酒に弱い人
=体内に残ったアセトアルデヒドで殺菌できる人の割合が高くなっていったとゆー仮説もこれかも・・・)

・特定地域の感染症の種類と数が時系列的にどのように変化するか?
→病気の種類によって発生パターンがかなり異なる。
→突然大流行する感染症には共通する特徴がある。
①感染が早いため短期間で集団全体が感染する。
②感染者は短期間で死亡するか、完全に回復するかのどちらか。
③回復者は抗体を持つようになり同じ病気にかからなくなる。
④(死亡か回復で)感染者の数が減少し体内でしか生きられない病原菌が死滅して大流行が収束する。
⑤次の大流行は抗体を持たない新生児が感染年齢に達し集団外部から感染者が来るまで起こらない。
(つまり病原菌側からすれば、)
死滅前に抗体を持たない新生児が感染年齢に達する出生率を維持できる大集団でしか継続生存できない。
→なので集団感染症は狩猟採集民や焼畑農業の集落では、はびこりつづけることはできない。
→発生するのは病原菌が外部から持ち込まれた場合。→すぐに全滅するので特有の流行にはならない。
・集団感染症は(集団)農業が始まった1万年前に登場し、数千年前に都市生活が始まり加速度的に増えた。
→天然痘は紀元前1600年頃、おたふく風邪は紀元前400年頃、ハンセン病は紀元前200年頃、
ポリオは1840年、エイズは1959年に最初の患者が確認されてて、どれも比較的最近である。

・病原菌にとっての幸運は農業、森の開墾、都市の台頭、交易路の発展→一大繁殖地ができた。
→人種のるつぼは病原菌のつるぼである。

・群居性の動物が家畜化されてから9000年、病原菌が人間に感染できるよう属性を変化するには充分。
→はしか・結核・天然痘は牛、インフルエンザ・百日咳は豚・アヒル・犬、熱帯熱マラリアは家禽類から・・・
第一段階→動物や家畜からの直接感染
第二段階→動物のものだった病原菌が人間同士で感染する→治療か免疫か全員死亡で絶滅し収束する
第三段階→第二段階からまだ絶滅しておらず将来大量の犠牲者を出すか不明なもの
第四段階→人間だけがかかり、昔から大流行すると知られているもの→自然淘汰されなかった成功者

・チフスはシラミが合衆国で駆逐されたので北米ムササビから人間に感染する新ルートを開拓した
・オーストラリアでヨーロッパウサギ駆除のため導入したウィルスは1年目の致死率99.8%から数年後には
25%まで下がった。→すぐには死なせないように進化したため。
・梅毒菌は1495年には感染から数ヶ月で死亡してたが1546年には現在同様の症状に変化している。
→より長期間、菌を周辺にふりまき続けられるように進化した。

・北米ではコロンブス以降の200年で先住民2000万人が100万人に減少。→95%が死滅
→死因は天然痘、はしか、インフルエンザ、チフスなど10種類以上のヨーロッパからの病原菌
→逆に新大陸からヨーロッパに伝播した致死性の病原菌はひとつもない。(梅毒は不明)
・新大陸にそれまで集団感染症がなかったのは、前述の群居性の動物が家畜化されていなかったから。
・南北アメリカだけでなく世界各地でユーラシア大陸の病原菌により先住民の50~100%が死滅した。
・南北アメリカとオーストラリアではヨーロッパ人に伝播した致死性の病原菌はなかったが、熱帯アジア、
アフリカ、インドネシア、ニューギニアなどではコレラやマラリアや黄熱病があったため、ヨーロッパ人による
植民地支配の確立が南北アメリカより400年遅れた。
・非ヨーロッパ人を征服したヨーロッパ人は、より優れた武器、技術、政治機構を持っていたことも確かだが、
家畜との長い親交から免疫を持つようになった病原菌を先住民に渡すことによって征服できたのである。







m98k at 00:03│Comments(6) mixiチェック 書斎 | 災害避難とか

この記事へのコメント

1. Posted by Yasshi   2020年04月03日 08:43
あの図書は、現役時代に選定して図書室で購入しているんだけれど、読まないうちに退職してしまい、いまとなってはとても残念。
図書館から借りようかなぁ、と思っていた所なので、このメモはとてもありがたいです。

私のことだから、これで読んだ気になって終わっちゃうかもしれないけれど(^^ゞ
2. Posted by 98k   2020年04月03日 10:07
>Yasshiさん
早々よりのコメントありがとうございます。
この本、今も人気のようで大阪市の図書館でも昨年末から1ヶ月以上予約待ちでした。さすがの選定眼ですね。
ちなみに本書は全19章に長いプロローグやエピローグが付いてる大作なので、
今回の第11章の部分メモだけで読んだ気になったらあきませんよ・・・
といいつつ、わたくしも図書館の臨時閉館・貸出期間延長を名目に下巻の途中でほったらかしなんでしゅが・・・
3. Posted by Yasshi   2020年04月04日 12:15
図書館に貸出予約をしました。
貸出待ちはほかにいなくて、次に読めるようですが、それがいつかはわかりません。

確か、これのDVDも購入したはずだけどなぁ...民博図書室で。
4. Posted by 98k   2020年04月04日 19:51
>Yasshiさん
まあ、この時期に23年前の進化生物学の観点から病原菌や文明について学ぼうとゆー人も少ないかも・・・
ちなみにどーゆーわけか、自宅にこれのナショジオDVDの無料試供品(短縮版)がありました。
5. Posted by Yasshi   2020年04月07日 03:31
さすが、腐海に住んでおられるだけのことはありますなぁ
6. Posted by 98k   2020年04月07日 10:44
>Yasshiさん
2007年7月3日発行の本編53分3枚組DVD一般価格9800円が、2007年8月31日まで限定特価8800円で買えるとゆー、
申込ハガキつき予告編DVDでしたね。
なので13年前に腐海の底から王蟲の抜け殻とともに拾ってきて、そのまま自宅に放置していたことになりますね。
図書館が再開されたら途中で挫折してる文庫版は返却して、こちらの本編を借りるかもです。

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