2021年11月16日

AI・兵器・戦争の未来

とーとつですが・・・

AI・兵器・戦争の未来であります。

PB120660




著者・訳者・発行所・発行年月日などは以下のとおり

PB120674

今年4月の新刊で本文だけで400頁以上、原注・用語解説・付録・索引も付いた分厚い本です。



例によって目次のみのご紹介・・・

(目次だけでも10頁ありますが順に項目を眺めていくと本書の概要がわかります)

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2050年以降については「ターミネーター」や「マトリックス」の世界そのものでしたが、
今放置すればSFではなく現実になり戦争の可能性が高まるだけでなく・・・とゆーのも、
これらはすでに実戦配備されているAI兵器のすぐ先にあるもの・・・とゆーのも驚きでした。

著者はIBMとハネウェル社で30年以上にわたり国防総省向けナノテクノロジー研究などに
従事していた物理学者だそうで、豊富な研究開発経験からの検証には説得力がありましたし、
2017年の著書はAmazonのナンバーワン・ベストセラーになったとか・・・

以下、わたくしの読後メモから一部を抜粋・・・
ただし兵器に関する部分以外(特に後半のあるべき姿など)のメモは殆どカットしてますし、
わたくしの無知による勘違いもあるでしょうから、興味のある方は是非ご一読を・・・



序章より
・あなたの国で突然戦争が起きたら、あなたがたの息子や娘たちによって守られたいか、
それとも自律型AI兵器システムによって守られたいか?
・あなたがたは敵の
息子や娘たちによって侵略されたいか、それとも自律型AI兵器システム
によって侵略されたいか?

・人間の直感的な道徳的認知能力は倫理的に望ましいものなのか?
→もしイエスなら、必ず人間による制御が必要(致死性自律型兵器システムについて)

・スマート兵器から全能(ジニアス)兵器への移行過程で人類絶滅のリスクを冒すことなく、
AI兵器の能力を増強し続けることは可能なのか・・・
→現実に米中露は精力的に配備・増強しようとしている


第1章より
・AIを備えた初期型ロボットでさえ貪欲さ・欺瞞・自己保存性をみせた(後述)

・社会や兵器が複雑さを増し敵の脅威が増大するにつれ、人類はコンピュータ依存を深める
→コンピュータが「超絶知能」になるのは2070年代とAI専門家の少なくとも半数が予測
→「超絶知能」の人類に対する判断は、人類がハチを有用なハチか有害なハチかで判断する
のと同じ。(人類はハチにはイヌほどの知能はないとの前提で判断している)

・アシモフのロボット三原則を「超絶知能」にプログラムしたと仮定しても・・・
→自己保存の欲求が進化の土台なので最大利益に反すれば抹消することを選択するかも
・「超絶知能」が国家兵器システムの一部なら完璧に防護され人間から隔離する手段を持つ
・「超絶知能」がアシモフ・チップに適切に接続しているか(人間が)確認する方法はない

・コンピュータの歴史→2014年の映画「イミテーション・ゲーム」(エニグマ解読者)
→チューリング・テストは人かマシンかの判別に今でも有効な方法
・自動駐車や会話など人間の知能を必要とする作業を遂行できるコンピュータが通常はAI
→スマートフォンの肯定的な側面とスマート兵器の暗い側面


第2章より
・AI効果→AIが組み込まれていることを意識しない→ただのアップグレード版と認識している
→汎用人工知能が製造されていないだけで、AIはすでにあらゆる分野に浸透している
→人類は4300年前に石斧を作り木の実を砕いたチンパンジーや人工知能の進化を過少評価

・セキュリティ分野
→テクノロジーは倫理的規制よりも先に進歩する→個人情報盗難とサイバー攻撃

・モノのインターネット(IoT)→信頼が従属へ変化→ハッカーの脅威→規制すべきか

・パーソナルアシスタントと生産性→iPhoneの登場
→カーク船長はコミュニケーターに質問したり、それで映画を観たりはしなかった

・E・コマース(ネットショッピングなど)→取引の85%をAIが処理
・ロボット工学→掃除機ルンバからMQ-1プレデターまで

・教育→インターネット以前は授業では質問できるが家では教科書のみ、宿題は図書館へ
→AIによる個人指導システム・クラウドゾーニング式指導強化法・深層学習システムへ

・AI依存の増大とそれに気づかないAI効果→開発や使用を規制する法律はない
→すでに自律型兵器システムを(ロシアは)配備している


第3章より
・中国
→アジア太平洋とりわけ近海支配権の強化にはアメリカとの軍事的均衡を必要としない
→アメリカの世界的任務はアジア太平洋地域を含む海洋航行の自由を確保することだが、
→アジア太平洋地域に限定すればアメリカに脅威を与え続けられる
→戦争の非対称的な側面
→中国とロシアの軍事投資の重点は自律型兵器で非対称な優位を獲得することへ
→百度バイドゥ社はマイクロソフト社の1年前に人間の言語認識を上回ったAIアルゴリズムを
開発し沈黙を保っていたが、これは偶然ではない
→音声認識や自然言語理解の分野も同じで軍や政府系ではなく民間企業から獲得できる
→AI分野の強力な商業基盤が自律型兵器の強力な軍事的優位を占めることを理解している

・ロシア
→核の均衡以外では米中両国に後れをとっている
→人口が少ない不利があるのでロボット軍、自律型兵器を配備する戦略を公表している
→さらに世界経済に組み込まれている世界第2位の武器輸出国で次世代兵器の輸出も重要

・アメリカのオフセット戦略
①戦争に勝つための軍事テクノロジー②戦争を抑止できる技術的な軍事能力
→1960年代は核兵器における技術的優位で通常兵力での抑止による出費を抑えた
→1975~1989は数より情報・監視・誘導での技術的優位を重視した「スマート兵器」
→80年代後半に追いつかれ新テクノロジーは民間企業から得られるようになった
→2014年からの第3の
オフセット戦略→人工知能・ロボット工学・小型化による優位
→ただし相手が開発するまでの僅かな期間しか続かないもの

・自律型兵器と遠隔制御型兵器は別
→アメリカは適切なレベルでの人間の判断という半自律型の配備を望んでいるが
→ファランクス・システムは速やかに対応する必要性から人間の制御を外している
→サイバー防衛においては攻撃が瞬時なので一部を自律型とした半自律型に
・戦闘機と爆撃機における自律型の優位性(極限飛行が可能・生命維持システムが不要など)
・ナノ兵器の分類(略)
・人間の関与の分類→制御・監督・自律
→国防省指令は自律を禁じているがサイバー戦など一部は例外として認めている

・(最も精密な半自律型兵器を保有しているといわれる)アメリカ海軍の例
→ロッキード・マーティン社のイージス兵器システム
→ノースロップ・グラマン社のX-47Bドローン実証機など

・アメリカ陸軍の例
→陸軍で最も重要なのはサイバー戦で使われるナノ兵器
→自律型戦闘車両・偵察斥候スローボット
→爆弾処理ロボットやTOWミサイルは半自律型

・アメリカ空軍の例
→遠隔操縦ドローンなどは半自律型→
操縦士不足でさらに自律性を高める研究中
→撃ちっ放し空対地ミサイルも人間が引き金を引くので半自律型
→目的はスタンドオフ能力とドローン操縦士の負担の軽減

・アメリカ沿岸警備隊・海兵隊の例
→サイバーコマンド、無人機、水陸両用武装ロボットなど

・中国の例(自律型兵器への国家規制はなく国際法制定を要請している)
→AIを駆使した巡航ミサイル、2016世界最速のスーパーコンピュータ(2018ではアメリカ)、
2015ハッカー軍の公表(サイバー諜報には熟達しているがサイバー戦の経験は少ない)

・ロシアの例(人口の少なさという弱点を補う自律型兵器の配備を公言している)
→モスクワの新弾道ミサイル防衛システム、カラシニコフ・グループの新戦闘モジュール、
武装歩哨ロボット(いずれも自律型)、P-800オーニクス・ミサイル、最先端のサイバー攻撃能力
→ワシントンはサイバー戦はエスカレートしやすいと見る傾向が強いがクレムリンの敷居は低い
→ジョージアやウクライナの緊急事態では通常戦力を増強する手段としてサイバー攻撃を運用

・次の段階では致死性自律型兵器になるだろうが、これは火薬・核兵器に続く第三の革命
→議論は今や開発するか否かではなく、どれだけの独立性を与えるかが中心に
→これはアメリカ軍が「ターミネーターの難問」と名付けた問題


第4章より
・兵器開発は認識された脅威の結果→どの国も同様のプロセスでその結末が「新しい現実」
→「新しい現実」の時代に平和はなく勝利したよう見えても紛争の只中にある
①米中露の緊張の高まり
②北朝鮮など「ならず者国家」の脅威
③中国の南シナ海の領有権主張
→毎年5兆3千億ドルの船舶貨物が通過、うち1兆2千億ドルはアメリカ
→推定110億バレルの原油と190兆立方フィートの天然ガスを埋蔵している
→世界漁獲量の12%を占め、中国は世界最大の漁業生産国・水産輸出国
④ロシアのクリミア併合・ウクライナ東部のロシア化・テロと独立運動の支援

・国防省指令に拘束されない中国やロシアに対して長期的に軍事的優位を維持できるか
・自律型兵器の国際的な規制は可能か
→生物兵器は制御の困難性、化学兵器は戦略的な非有効性から可能だったが一部のみ

・グーグル翻訳サイト(2006~)の例→ニューラルネットワークで最高水準に

・ムーアの法則→価格が一定でも2年おきに性能は倍増(コストは半減)→収穫加速の法則
→2040~50でスーパーコンピュータが人間の知能レベルに到達
→人間レベルの自律性を備えた自律型兵器の到来(配備するのは米中露)
→2070前後に超絶知能(シンギュラリティ)マシンが出現→人類を脅威と見なすかも


第5章より
・AI内蔵兵器の相互接続→群生行動の推進→スウォーム・ボートの例、USSコールの例

・ナノエレクトロニクス・マイクロプロセッサやナノ素材を活用しているものがナノ兵器
→人工知能を搭載する精密誘導兵器がスマート兵器(スマートとAIは同義)

・全能(ジニアス)兵器は超絶知能を搭載しているかそれに接続されているロボット兵器

・スマートから全能への移行
→軍用自律型ナノボット(MANS)を超絶知能が無線制御すれば全能兵器
→膨大な数が必要なので自己増殖機能を持たせることになろう
→医療用ナノボットはすでに存在する→軍用は極秘だが・・・

・軍事力の投射能力→現在はアメリカが優位(原子力空母と潜水艦)→超絶知能で自動化へ
→通常兵器や核兵器に加えMANSを紛争地域に投入することができる

・知能爆発→知能マシンはさらに高性能な次世代マシンを(自ら)開発する
→真空管→トランジスタ→集積回路→量子コンピュータ(もつれの加速を1減速を0とするなど)


第6章より
・第二次世界大戦における戦域指揮官とスタッフの責任
→計画と伝達、監督と報告、敵の行動に基づく計画の修正
→紛争ペースが速まると計画修正や意思決定に関与できなくなる
→現場指揮官が修正をおこなうことになる
→人間より弱いAIの自律型兵器は現場指揮官と同じ→MK-50魚雷の例

・2009スイス連邦工科大学・知能システム研究所(ローザンヌ)の実験
→欺瞞と狡猾さと自己保存を数百世代で学びプログラムを無視して利益を最優先した

・イギリス王立協会の2012年報告
→無意識に標的を画像処理するほうが意識的に標的を知覚するよりもはるかに速い
→道路の先に何か正常でないものがあるという兵士の直感
→兵士の潜在意識が瞬時に情報を処理し特定できない脅威として本能が作動したもの
→兵士は検分し続け、やがて即製爆発装置を発見した

・脳内ニューロンの活動パターンを追跡できるヘルメットを被ったパイロットは、
潜在意識下で航空機を操縦し、意識的に脅威を感知する前にミサイルを発射できる

・2016ジョンズ・ホプキンス大学の実験→脳内インプラントへ
→このシナリオなら人間による自律型兵器の制御は可能→もし接続先が超絶知能なら?

・相互確証破壊MADから全面確証破壊TADへ
→攻撃の疑いのある全ての国に対する全面的報復


第7章より
・アメリカ国防省指令による定義(国際的には合意されていない)
自律型兵器システム
=起動後、オペレーターの関与なしに攻撃目標を選定・交戦できる兵器システム
半自律型兵器システム
=起動後、オペレーターが選定した個別の攻撃目標あるいは特定の目標群に対する交戦のみを
自動的に行えるように設計された兵器システム

・自律型兵器は現存しない将来の新しい兵器→これが最大の誤解
→自律型兵器は目新しいものではなく現存し「将来に発展を遂げる分野」ということ

・アメリカのファランクス近接防御火器システム、ロシアの偵察ロボット、移動式ロボット複合体、
カラシニコフ・グループの新戦闘モジュールなどは自律型兵器
・イスラエルのハーピー2ミサイル、イギリスの対装甲ミサイル二重モード式ブリムストーン、
韓国のSGR-A1歩哨ロボットシステム
も自律型あるいは容易に自律型に転換可能な兵器

・自律型兵器は区別原則・均衡原則・説明責任といった法的要件を満たせると考えている
→AIの進歩で自律型兵器が全能兵器に至ると人間の倫理は全能兵器の倫理に変わる・・・



第8章より
・1930年代のソ連のT-26軽戦車ベースの「テレタンク」→初の無線遠隔操縦の無人戦車
・2016年のロシアの無人戦闘車両「ウラン-9」
→30mm機関砲、7.62mm機関銃、アターカ対戦車誘導ミサイルを装備

・アメリカM1A2エイブラムズ戦車の次世代タイプはロボットとなる公算が高い
・フォード級超大型航空母艦はニミッツ級のほぼ半数の乗組員
・ズムウォルト級駆逐艦はアーレイ・バーク級駆逐艦の2/3の乗組員

・国際人道法と自律型兵器と意志決定ループへの人間の関与
→区別原則や均衡原則はAIの進歩でプログラムにより制御可能になる
→一方で核兵器は国際人道法を侵害する
→自律型兵器や全能兵器の登場で核兵器への依存は低下するだろう
→全能兵器の出現により技術先進国は核兵器の廃絶に合意するかも知れない

・エイリアンは我々の言語や習慣は理解できないだろうがエネルギーについては理解するはず
→エネルギーの作り方と利用法を知っているから星間移動してきた
→エネルギーの製造と利用について我々と同じ進化を遂げた可能性が高い
→稀少物質とかではなくエネルギーそのものが宇宙の真の通貨
・米中露はすでに宇宙条約に違反しているのは明らか


第9章より
・MANSは超小型で製造も容易→敵の領内に密かに持ち込むと生産ラインとして機能する
→どこの国の仕業か特定は困難で核ミサイルと異なり探知も困難

・1832年の戦争の霧(クラウゼヴィッツ)・2003年の同題映画(マクナマラ国防長官の告白)
→当初は戦争の副作用で兵器ではなかったがノルマンディー上陸の隠蔽作戦に使われた
→イラク戦争、クリミア併合などでも意図的に使われている
→霧を晴らすのはテクノロジーで人類にとって霧は晴れない

・歴史は勝者によって書かれる(チャーチル)→超絶知能が有する歴史は?
→1776アメリカ独立宣言「すべて人間は平等」に女性・奴隷・子供は含まれていなかった
→その後の歴史で進展を遂げたが、歴史が正確な記述であり続ける保証はない→洗脳

・シンプルコンピュータ(パソコン・スマートフォンなど)
・ハイエンドコンピュータ(イージス・システムなど)
・スーパーコンピュータ(人間の脳の処理速度に近いもの、集積回路)
・超絶知能(人間の認知能力をはるかに上回るもの、量子コンピュータ)
→天気予報と異なり国家安全保障の場合は超絶知能の警告に従うしか方法がない

・(ドイツ兵に囲まれた自分の位置を砲撃座標として指示した)フォックス少尉の自己犠牲の
判断と超絶知能による判断に違いはあるか

・今世紀の後半には米中相互防衛条約が締結される→避けられない同盟
→米中の依存関係は深化し米中(だけ)の経済が発展する
→軍事コストはさらに高価になり、それを維持できるのも米中だけになる
→米中間の戦争が人類の滅亡と地球の破壊をもたらすことは明らか
→そんな中での国防費支出は困難で無駄なことだと気づく国家が増える
→アメリカの州になるか経済成長に専念するためアメリカの保護国になる
(著者がイギリス滞在中、多くのイギリス人がアメリカの州になることを希望していた)

・核兵器保有国は現在9ヶ国(米中露英仏印パキスタン北朝鮮イスラエル)
→このうち米中露が関わる世界戦争は地球の完全な破壊をもたらす
→今世紀の後半に全能兵器を保有している可能性は高く核兵器の破壊力を凌ぐだろう
→いかなる紛争行動も全能兵器の使用を誘発するので各国とも慎む
→冷戦が「不安定な平和」をもたらしたように、絶え間ない不安状態に置かれ続ける


第10章より
・人間とマシンとの競争はエネルギーと天然資源をめぐる争い→共存できるほど広くない
→映画ターミネーターのような公然たる戦争では人類が勝者になる機会を与える
→人類に対するマシンの抵抗は悟られないように隠して「戦わずして勝つ」はず

・脳内インプラントで超絶知能に従属した人類も生き残る時間は僅か
→宇宙の真の通貨であるエネルギーを使う価値のある存在と認識しなくなるから
→それ以外の人類は22世紀の前四半期には病気・事故・老衰により死に絶える


終章より
・自律型兵器と全能兵器
→人類絶滅の危険なしに自律型兵器を開発することはできない→核兵器と同じ
→それでも開発・配備は続くので・・・
①防御に焦点をあてる
→防御が100%有効なら攻撃は行われない(今は確実ではないので北朝鮮は実験を繰り返す)
②半自律型兵器に焦点をあてる
→人間の「意思決定ループへの関与」は区分原則・責任の所在原則の保証となり国際人道法
とも合致し、それが国家の軍事能力を弱めるとは思わない。
③自律可能な兵器に制限を設ける
→自律型の大量破壊兵器を作るべきではない
→コンピュータ依存なのでサイバー攻撃や誤作動やウィルスが第三次世界大戦の引き金になる

・草の根の(SNSによる)活動や世界的なイベントを通じて「マシンがもたらす脅威」は
世界の指導者の関心を呼び起こすことができる

・2020年7月現在のスーパーコンピュータ・トップ10の1位は日本、2位3位はアメリカ、
4位5位は中国、6位はイタリア、7位8位はアメリカ、9位イタリア、10位スイス・・・
→超絶知能は複数の国で出現し、ほぼ同時に起こり得る、ということを示している

・戦争を予防する最善の方法は、
→戦争に関与することは無益であり、自らの破滅を招くということを、
→あらゆる敵対者に明らかにすることである

・地球の正当な継承者とは人類であり知能マシンではない
→我々は人類であり我々は人間の精神を体現している
→コンピュータはマシンにすぎない

云々・・・


ちなみに解説(小野圭司・防衛省防衛研究所特別研究官)にあった(講義でも話しているという)

・軍事や安全保障の分野では「
阪神ファンの応援心理」が大事とゆーハナシ・・・
→関西の阪神ファンは一流選手だった野球評論家から街のおっちゃん・おばちゃん、小学生の
子供まで「昨日の監督の采配はアカン」とか「なぜあそこで代打を出したんや」とか試合の
論評をするわけです。
→そうしてファンの世論というものが形成されて、ファンが怒り心頭に発すると、監督や
球団社長の辞任・解任という事態を招く力を発揮します。
→安全保障も同様で一部の専門家に限らず、いろんな人が議論することが大事です。
(もちろん大衆扇動や教条論争に陥らない冷静で客観的な議論が前提)
つーのには感心しましたし・・・ま、結果が勝率に繋がってるかは別ですが・・・

・日露戦争の児玉源太郎の言葉「諸君は昨日の専門家かも知れんが明日の専門家ではない」
(司馬遼太郎「坂の上の雲」より)→これは今日の安全保障論議にも当てはまります。
「阪神ファンの応援心理」については(略)フランス宰相クレマンソーの「戦争は軍人だけに
任せるにはあまりに重大である」の対を張ってるつもりです(笑)。
つーのも印象に残りました。


(追記です)
「デジタルな不死を探して」というカナダで制作されたドキュメンタリー番組が11月12日に
NHK・BS1で再放送されてて(わたくしははじめて)観てました。

実在する人物の膨大なマインドファイルをもとに作られたAIアバターやAIアンドロイド、
培養された脳細胞で動くロボット、
クラウドベースのAIと脳を融合させる動きの是非論議、
トランスヒューマニストとチーム・ヒューマン、シンギュラリティ・ネット創設者の話など、
本書にも密接に繋がるテーマばかりで興味津々でした。

特に番組ラスト近くのFacebookチャットボット同士の会話の音声化には驚愕しました。
やがて独自の言語を作りはじめたことに開発者が気づきシャットダウンしたそうで、
「(これは)コンピュータが世界を乗っ取るには程遠い話ですが、AIが我々の言語を使って
未知の領域に踏み出したことは確かです」と結論付けてましたし・・・


(さらに追記です)
11月24日放送のNHK番組「クローズアップ現代+」で、実際に自分をAIに置き換える人たちや、
脳波を読み取って直接パソコンを操作する様子などが紹介されてました。

さらにニューズウィーク日本版には、こんな記事も・・・
AI兵器vs AI兵器の戦争は人知を超える(キッシンジャー&エリック・シュミット)(ニューズウィーク日本版) - Yahoo!ニュース








m98k at 12:16|PermalinkComments(4) mixiチェック 書斎 | ミリタリーグッズ

2021年11月12日

日本のごちそう・・・

前回記事では世界のごちそうを紹介しましたので、今回は日本のごちそうを・・・

今週水曜日のお昼、大阪駅前第3ビル33階にある日本料理の河久にて・・・

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大きな座敷に8人だけで4人ずつに分かれ、しかも対面にはアクリル板が設置されてました。
これなら実質2人で飲食するのと同じだし、向かいの料理を奪うこともできないし・・・

緊急事態宣言は解除されたものの、まだまだ元どおり!!!とゆーわけにはいきませんね。



さすがに33階からの眺めはなかなかのものでした。

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左下が大阪市庁舎で右上遠くが日本一のハルカスビル・・・御堂筋の銀杏も色づいてました。


元職場の同期有志で年数回は集まってたのが今回のコロナ禍で、じつに2年ぶりとなった次第。
ま、この間に物故者が出なかったのは何よりでしたが・・・


わたくしにはひさしぶりの宴席だったので、今回はしっかりと記録・・・

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食前酒→前菜→造り→煮物→焼き物→油物→酢の物→吸い物→食事→香の物→デザートと、
典型的な日本料理の宴席コースですね・・・

ま、茹で物・膾(なます→造りなど)・羹(あつもの→煮物・吸い物など)・漬け物・焼き物・
大盛りの強飯と酒に、果物や菓子とゆー平安時代の宴席料理から殆ど変わらないとゆーか、
猪・鹿・鳥などの肉類が江戸時代にいったん消えて復活したのが今の日本の宴席料理・・・


以下、さくさくっと・・・

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このあたりからハイボールも入って、かなり撮影が怪しくなってましゅが・・・




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うぃーす




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別席に移動した隣席の料理も取り上げてと・・・ばくばく





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角ハイボールはこれで何杯目だったか・・・ひっく



ま、何とか・・・

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デザートまで(食べる前に)撮ることができました・・・ばたっ





m98k at 21:12|PermalinkComments(2) mixiチェック 糧食、飲料 | ブログ日誌

2021年11月09日

もてなしとごちそう・・・

前回、前々回、前々々回と食について学んだので・・・

今回は世界各地の「もてなしとごちそう」をご紹介・・・じゃるじゅる

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著者が旅の途中で出会った「もてなしとごちそう」に関するエッセイ集であります。


著者・発行所・発行年月日については以下のとおり・・・

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2009年に開高健ノンフィクション賞を受賞とありますが、確かに文章に訴える力があり、
わたくしの知らない世界に、ごく自然に惹き込まれていきました。
また食に対する執念ともいえる興味も開高健なみとゆーか、わたくし以上とゆーか・・・


例によって目次のみのご紹介
(著者撮影の各写真も、じつに雰囲気があるのですが・・・)

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「はじめに」と「おわりに」を加えると全17話・・・

世界中を旅する途中で、たまたま知り合った人たちから受けた「もてなし」のお話が、
そのあり方まで考えさせてくれましたし、とても新鮮で感動しました。


今回は著者が感じたと思われる部分のみをわたくしの読後メモから抜粋、
料理については
省略してますが、もちろんそれぞれの料理についても見事に描写されてますし、そのレシピや
歴史についても巻末付録にありましたので、興味を持たれた方は是非ご一読を・・・


・クリスチャンが見知らぬ土地の教会に、ムスリムが移住先のモスクに駆け込むように、
東洋人は(世界中どこにでもある)中華料理店に駆け込めばいい・・・
(中国語が堪能だった韓国人ビジネスマンの)彼はそんな風に言いたかったのかも知れない
~エチオピアで見ず知らずの中国人技術者たちから、お手製中華のもてなしを受けて~

・芋とバナナしかないような状況では何でも出されたものを食べるほうが相手も扱いやすいが、
世界中の食べ物が食べられる状況で「何が食べたいか」と訊かれたときに「何でもいい」
といった曖昧で消極的な態度では相手を困らせることもある。
→きちんと要求することは「最高のもてなしをするチャンス」を与えることでもある。
~ウガンダ登山で現地食を食べたくてガイドに「何でもいい」と言ったら毎日洋食ばかりに~

・ミャンマーの村でのもてなしと民主化直後の再会エピソード→(ともかく感動しました)

・「だって、あなたは難民だから」
医師は笑い、やがて穏やかに私を諭した「難民も人間だ」
(著者は)ゆっくり最後まで飲み干してから、重たい気持ちでグラスを返した。
~ロヒンギャ難民キャンプで難民の医師から茶店のインスタントコーヒーをごちそうになり、
せめて支払いだけでもと申し出て断られ、申し出たことへの後悔に苛まれながら~

・天国と呼ばれた(平和だった)シリアで出会った家族、ごちそうになったナスの素揚げとマテ茶
→その3年後から爆撃の海になり、旅人が足を踏み入れることもできない悪夢の場所になった
→当時14歳でダマスカスに嫁いだはずの女の子は今年(2020年)27歳を迎える
→彼女が今どこにいるのかは分からない
→でもいつかまた、どこかで、ナスの素揚げを一緒に食べられる時がきたら、
きっとわたしは柄にもなく、ただただ泣いてしまうだろう。

・エジプトで究極のもてなしだったと後に分かったフィシーフと日本でのもてなし考
→おいしく食べてもらうことだけがゲストの満足値を高めるわけではないのかも知れない
・(日本で)納豆と卵かけご飯で始まった一日を、パンとコーヒーで始まった一日よりも、
ずっと懐かしく思い返す可能性は十分ある。実際に列車で話のネタにして楽しんでいた。
・日本食に慣れている外国人には「ウチの味」こそが手の届かなかった、潜在的に求めていた、
「体験としての本場の味」だったのではないか・・・
・地元の人しか知らない安くて旨い「いい店」は、たいてい汚くて辺鄙なところにあり、
ローカル・ルールがややこしすぎてオーダーもしにくいので、自力ではなかなか行けない
→そんなところに頻繁に連れて行ってくれるのも嬉しいもてなし・・・(まったく同感)

・「どうぞ揚げたてを(一人だけ先に)食べて下さい」と勧められ、
→日没前に「せびご一緒に」と勧めるのは逆にムスリムには失礼だろうし、
→異教徒に自分たちの習慣を押し付けたくない、という彼らの気持ちを受け止めるなら
揚げたてを美味しくいただくのが礼儀ではないかと判断した
~ラマダン明けのバングラデシュで、運転手家族の突然のもてなしを受けて~

・スロベニアでのすべて「自家製」で、すべて「スープの冷めない距離」のもてなし
→イースターとクリスマスと誕生日だけに焼く大好きなポティーツァ
→「あれっ、五月は誰の誕生日だったっけ?」
→「東洋の端の国から、お客さんが来たんだもの・・・」

・ジャガイモと豚肉とウォッカしかなかったソヴィエト時代のリトアニアの思い出話
→100%果汁ジュースなど西側からの食品がはじめて並んだスーパーの衝撃・・・
→それでも地味に食べ継がれてきた(ジャガイモと豚肉だけの)食事には、良くも悪しくも
その土地の事情と時代の本音が映し出されている・・・(だから今でも大好き)

・インド北部で出会ったラダック人家族のもてなしから・・・
→ユダヤ教やイスラム教など砂漠地帯の宗教が豚肉食を禁止した理由
→農耕に適した湿潤な地域で生まれたヒンズー教が牛を食肉対象から外した理由
→チベット仏教が「あれをしろ、これをするな」と言わなかったのは何故か
→あるがままを受け止める人たち・・・

・エチオピア・カファ地方の木の実
→それを食べたヤギが夜中も飛び廻るので人も食べてみた
→やがてアラビア(イエメン)に伝わりアラビカ・コーヒーに・・・(諸説あり)

・香港の家族に招待された旧正月のごちそうともてなし
→円卓に大皿料理というのは、誰が来ても、何人来ても大丈夫
→円卓の強みは、そのまま香港の強みであるように思えた・・・

・著者が12年前から今でもよくやる料理「ドイツの友だちのアレ」
→カード(熟成させないフレッシュチーズまたは水分を落として固めたヨーグルト?)に、
玉ねぎのみじん切り、水に戻したドライトマト、青ネギ、イタリアンパセリ、オリーブオイル
→これらを混ぜ込んだクリームソースを茹でたてのジャガイモにのせて食べるだけ
→2008年エネルギー政策転換期のドイツで友だちがもてなしてくれたシンプル料理
→自分流にニンニクやカリカリに焼いたベーコンを混ぜ込むこともあるが、とても美味しい


云々・・・


ちなみに巻末の解説は既に何度か著書を紹介している藤原辰史氏によるもので、
「中村安希は旅行のイロハを守らない」
「見知らぬ土地の見知らぬ人から、ご飯に招いてもらい」
「それを食べ、大笑いして、深い友情を結び、お腹を壊し、熱を出し、それでも食べる」
「旅行先では腹八分目という旅の掟も平気で破ってしまう」
「それら自由奔放にみえる旅は中村の鍛えられた観察力と判断力に支えられている」
などから、やがて本書の核心にも迫ってて、こちらもなるほどと納得しました。



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2021年11月06日

給食の歴史


年相応に「食」の量も質も考えないといけないし、外で食べる環境についても・・・
そう「ご飯おかわり自由」とか「大盛り無料」の看板で店を選ぶ習慣とかも・・・

つーことで引き続き「食」に関する本のご紹介

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給食の歴史 藤原辰史著 岩波新書 2018年11月20日第1刷発行



例によって目次のみ・・・

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わたくしの世代は目次でいえば第3章から第4章の間ぐらいで「テトラパック牛乳」は中学校の
購買部で初めて知りましたし、小学校給食ではまだ「脱脂粉乳とコッペパン」が主流でした。


この著者の著作については既に何冊か紹介してますので、今回もわたくしの読後メモの中から
思いつくキーワードのみを抜粋してますので、興味のある方はご一読を・・・


学校給食を囲む基本的条件
・家族以外の人々と、
・貧富の差を棚上げして、
・食品産業のビジネスの場(1988年の段階で人件費と食材費で年間1兆4千億円)で、
・不思議な雰囲気を醸し出しつつ、
・同じ時間に同じ場所で同じものを子どもたちが一緒に食べる

①子どもの貧困対策という視角
→経済成長以降の合理化→家で満足に食べられない子どもたち
②「災害大国の給食」という視角
→災害時に給食施設のない不利益と給食施設と調理員が炊き出しの拠点になったこと
③運動史からの視角
→貧困児童救済→関東大震災後の普及→敗戦直後の試み→学校給食法の制定→センター方式の阻止
→調理員などの地位向上、僻地の完全給食普及などは、すべて現場の運動による
④教育史からの視角
→教育とは切り離すべきとの議論と給食の教育効果
⑤世界史の中の日本の給食史という視角
→19世紀の国民国家→労働者や兵士を合理的に創出する義務教育制度→家庭の貧困の可視化
→貧困者には無償→目立つので全校給食へ→世界的な現象の日本的な展開→食の管理と市場開拓

・弱く劣り失敗する個人を救済し市場メカニズムを維持する「介入的な自由主義」
→ボーア戦争→イギリス貧民の栄養状態が悪く兵士不足に→給食の国営化→ドイツも
→サッチャーの公的部門の民営化と地方への押し付け→競争入札→健康状態の悪化→給食改善運動へ

・ニューディールによる余剰農作物対策と失業婦人の雇用対策としての給食
→レーガンの新自由主義による削減→質が低くカロリーの高いものに→NYの公立小学校では50%が肥満児に

・新自由主義による廃止や民営化→新自由主義がもたらした格差の拡大→給食の復活や質の改善へ




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2021年11月04日

ナチスのキッチン

前回記事に続き、食についてのお勉強・・・つーことで・・・

今回は「ナチスのキッチン」であります・・・

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「決定版」ナチスのキッチン~「食べること」の環境史~


著者・発行者・発行所・発行年月日は以下のとおり・・・

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そう、以前紹介した「縁食論」「戦争と農業」の著者による大作であります。



例によって目次のみのご紹介・・・

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様々な分野から反響のあった本だそうで、料理や建築にはまったく素人のわたくしにも
けっこう面白く読めました。

近~現代ドイツの食と台所の歴史なんてはじめて知りましたし、戦後の世界各地の
キッチン設計にも大きな影響を与えてたんですね。
料理や台所に限らず思想史に興味のある方も、ぜひご一読を・・・



なにせ大作ですのでわたくしの読書メモから、てきとーに思いつくままの抜粋です。

序章より
・台所→釣った魚を炙る川べりの焚火から高級システムキッチンまで・・・

・動物や植物のほとんどは、火、水、菌、石、刃物によって物理的かつ化学的な変化を
与えられることで、はじめてヒトの口に運ばれる

・栄養を吸収するためには消化器官だけでは不十分で・・・台所はいわば外部器官・・・
→体内に栄養を取り込むシステムの延長に位置する、人間の身体の派出所・・・

・ナチ時代(1933~1945)は「合理化」だけでは理解しにくい時代
→モダニズム建築を否定しつつアメリカのテイラー主義(労働改善)を受容し合理化する二律背反
→この問題を台所から迫るのが本書の目的

①ヒルデガルド・マルギス→消費者運動の先駆け
②エルナ・マイヤー→国民経済学が専門のカリスマ主婦
③マルガレーテ・リホツキー→オ-ストリアはじめての女性建築家で小型キッチンの生みの親

・欧米の近世の台所の主役は火(煮る)で、日本の台所は水(捌いて盛る)が主役だった
→台所は自然に成立したもので地方により家により異なるもの
→キッチンは意図的に設計されたシステムとその模倣商品で画一的なもの、と便宜上区分

・竈とオーブンと(電子)レンジ→日本とドイツの感覚の違い(温めないとか)
・女性の解放と家事労働→セントラル・キッチン構想
・テイラー主義に基づく台所設計や家具配置がドイツ現代史の特徴
・台所は人間による自然加工の終着駅でありエネルギーの末端であり企業の大きな販路
・台所の神様、竈の神様は日本にも古代ローマにもギリシャにも古代ゲルマンにも存在する
・台所は外の生態系とそこから囲われた「住まい」との通路・・・

1章では火を住まいに囲うための建築技法
2章では食べやすいよう加工するための調理テクノロジー
3章では、それを科学の側面からバックアップする家政学
4章では調理術の蓄積としてのレシピ、
と、台所の近現代史をたどり・・・
5章では、その帰結としてのナチ期の食政策を台所から分析する


第1章
・調理場を兼ねた暖炉(竈)=光と熱の源=家の中心だった
→19世紀後半~20世紀初頭の鋳鉄製の竈で小型化→暖炉はなくなるか別になる
→同時期に普及する電気やガスで台所はさらに小型化→小型キッチンの設計へ
→20世紀初頭以降の上下水道の普及により蛇口とシンクが大きな存在に

・労働者の住宅不足→フランクフルト市の住宅計画に調理専用の「キッチン」が誕生
→このとき専用キッチンと居間キッチンの是非の論争があった
→「主婦は居間の近くで他の家事も」→主婦労働の軽減からは専用キッチンか
(まだ電気冷蔵庫はなかったので別に食料庫は必要だった)

・アメリカの共同キッチンの試み→「共産主義キッチン」としてドイツに移植
→1908年から各地でセントラルキッチンハウス→第一次世界大戦で挫折
・農学者の横井時敬が徳川秋声に書かせた「小説 模範町村」(1907)の模範村
→家族制度重視の横井が農村の魅力を獲得する方策として家事の協同化を提唱していた

・なぜセントラルキッチンは挫折したのか
→戦争による食料不足で戦時食堂=集団給食所が各地にできたから

・リホツキーのフランクフルト・キッチン(1927)のモデルは狭い食堂車の厨房
・エルナ・マイヤーのシュトゥットガルト・ミニキッチン
(テイラー主義に基づく身体制御型のリホツキーに対し家庭を管理する事務所でL型)
・ダイニングとの仕切りを減らしたミュンヒェン・キッチン
→空気の流れを妨げる程度の仕切りを付ける
→子どもの監視ができ衛生上も改善されガラス窓のコストもかからない

・バウハウスとブルーノ・タウト(テイラー主義を美学にまで高めた)の影響

・シュルツ・ナウムブルクの「郷土保護様式」→暖炉と居心地の良い広い台所
→ナチ党の居間キッチンへ→現実には戦争により機能主義を極限まで高めたものになった
→東ドイツの労働キッチンも同様→台所を労働者約1名の小工場化・・・

第2章
・電化・マニュアル化・健康志向・市場化・(マルギスの反ナチと)ハイバウディのナチ化

第3章
・家政学の誕生と家事マニュアル→家政年報(1928~1944)
→都市と農村・各職業の収入差・疲労・栄養学・料理教室・モータリゼーション・家事労働時間
→家政学のナチ化と「家政年報」の中断、戦時体制化、節約
→それまでのテクノロジー賛美の基調から文化、民族性、反資本主義のナチズムへ

・家政学は
①科学的手法で女性への抑圧的側面を見いだしたが台所は有機体であると権力関係を温存した
②台所を透明化した→ガラス化、数値化→国家や企業がコントロールしやすい空間へ
③台所を機械化した→人間それ自体も機械化したのではないか
④台所を戦場化した→節約→透明化や機械化の延長線上
(アメリカでは家政学による数値化・清潔志向・栄養学で同じ味になった、とも・・・)

第4章
・台所はモダニズム建築・テイラー主義・家政学・企業による用具の市場で小工場と化した
→ドイツの食文化は本来複雑

・料理本の変化・そのロングセラーの変遷・産業界と縁の深い料理本の紹介(略)
(アイントップの庶民性とそれを利用するナチスの巧妙さ)
(マギーやクノールのブイヨンは第一次世界大戦の戦闘糧食や療養食から平時の家庭へ)

・高度経済成長以降、先進国の食は豊かになったといわれ、確かにパン用穀物の消費
が減り
肉類、牛乳、乳製品の消費が上昇しているが、
18世紀中頃から現在までのレシピの歴史からは
食が豊かになるどころか健康を崇める道具となり、均質化しているという現実もある。

第5章
・ナチ婦人団の重要な任務は食糧自給達成のための台所のコントロール
→牛肉豚肉から羊肉魚肉へ、バナナから国産リンゴへ、などなど・・・

・ヒトラーユーゲントの手引書
→正しい食生活が健康な国民と兵士を作る→健康至上主義と軍国主義の合流

・食の現場を管理し食糧の安定を図るための「家事の軍備拡張」というスローガン

・ラジオによる台所の統制
→魚肉推奨、肉食批判、粗食によるビタミン補給など・・・
・母親学校、農村女子職業学校、労働奉仕団などの家政教育プログラムや家事トレーニング

・マイスター主婦制度・再教育施設
・ポーランドのドイツ化のため移住させられたドイツ人主婦たち
→アーリア人種の女性の中でのヒエラルキー形成

・無駄なくせ運動→「台所の敵である無駄との闘争はドイツ民族が作った収穫物への感謝」
→ナチ国家として電気冷蔵庫の開発に着手したがドイツに普及するのは1970年代から

・残飯回収→食料生産援助事業→豚の餌を分別しない主婦は犯罪者
(この事業で食の生産者と消費者の関係を行政が表面化したことも事実)
・栄養学の試みと強制収容所での人体実験
→国民も囚人も食を自分で選ぶ自由を権力へ委ねた

・台所空間で主婦が「滅私奉公」状態に
→栄養学もテイラー主義も家政学も、その暴走に歯止めをかける術を持ち合わせていなかった

終章
・調理術は五感に快楽をもたらす美学的な課題
→レシピは文字と数字でそれを再現するがレシピだけで表現できるものではない

・栄養学のビタミン信仰への、料理の香りで消化酵素を分泌する生理現象からの批判
・台所の労働空間への純化とナチスの健康崇拝
・竈信仰から機械への絶大な信頼(信仰)へ→要塞のようなシステムキッチン
・千年王国のためにナチスはあらゆる分野での先駆者を必要とした
→台所の先駆的な試みはユダヤ人のものでも共産主義者のものでもナチスのものに・・・

・ドイツ合理主義の遺産は世界各地に拡散するが環境破壊にブレーキはかけられなかった

・現在の食文化の原型は(東西ドイツともに)1960~70年代
→外食産業の発達、冷蔵・冷凍技術の進歩、経済成長と消費社会

・資本主義とナチズムと科学の協同作業からなるテクノロジー社会の構築
→大量生産のシステムキッチン

・清潔や健康のための食事ではなく、単なる栄養摂取の味気なさではなく、食べたいから作る
→これが未来の台所の基本方針→ナチ時代に根源的に批判されたもの
→今の食べものは食品産業と栄養学と家政学によって「選ばされている」もの

・ナチスは食を通じて人がつながるという根本的機能を国民意識の形成に存分に役立てた
→その機能を台所の入口にも食卓にも出口にも徹底させた
→これがナチスのキッチンの特徴だが、あくまでプライベート・キッチンで主婦は孤立したまま

・そもそも家族とは不安定な集団で胃袋を通じてしか絆を維持できない(マリー・ハーン)
→核家族化した市民家族集団は、成員が一人欠けると柱がぐらつき、二人欠けると、
そのほとんどが崩壊する「仮設」の居場所にすぎない
→その不安定な集団と不安定な集団の、胃袋を通じた連帯の場を台所は担えるはず
→ただしこれまでのような台所の小工場化では、この道は見えてこない
→食の荒廃を主婦に押し付ける家族主義では、この社会は支えきれない
→家族愛だけでは台所仕事の深遠さを汲み取ることができない

云々・・・

当時のレシピ紹介も興味津々、この本を参考に料理人が実際に再現された料理もあるようで、
ともかく読みごたえがありました。




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