2023年05月
2023年05月26日
地霊を訪ねる
とーとつですが・・・
地霊を訪ねる~もうひとつの日本近代史~とゆー本のご紹介
著者略歴と奥付
目次であります
そう・・・
鉱山や鉱山跡を中心に辿った旅のエッセイであります・・・
「まえがき」よりの読後メモ・・・
・同じ技術で同じ製品を生産する同じ規模の企業組織であっても、そのために必要な人材を探し、
技能を高める方式は、日本と欧米、東南アジアとでは少なからぬ違いがある
→その差異と類似性をどう説明すればよいのか・・・
→日本社会を具体的に知るために歩いて旅をする、私流のブラタモリ、街道をゆく・・・
→近代日本の工業化の担い手のひとつ鉱業操業地跡への旅
→地霊(社会風土あるいは習俗)によって「もうひとつの日本の近代」を探ってみたい・・・
と、15年かけて40を超える鉱山跡地を訪れて綴ったのが本書
ちなみに鉱山跡地は地下遺構がメインの廃墟ですから、わたくしの大好きな場所ですし、
鉱山鉄道跡はサイクリング・ロードとして整備されてるところも多く、鉄道敷とゆーのは
そもそも勾配やカーブが緩いので、まったりポタリングにぴったりでこちらも大好きです
以下、最初の「伊那谷から中山道に出る」よりの読後メモ(福田恒存の言葉の紹介)
・日常的でないものにぶつかったとき即座に応用がきくということ、それが教養というものです
・あることを知ったということは、それを知る前に感じていた未知の世界より、
もっと大きな未知の世界を、眼前にひきすえたということであります
・さらにそれは、そのもっと大きな世界を知らなければならぬという責任を引き受けたことを意味します
・・・
で、各項の紀行内容は、メモするには濃かったので、この際どどんと省略して・・・
「あとがき」よりの読後メモのみ・・・
・どの棚に置けばよいのか、書店が困るような分類の難しい本になった
・旅という体験を通して「足から」しか学べないことは少なくない
・本を読め、人に会え、そして旅をしろ(池島信平の言葉)
・何を読んだか、どこを旅したかを話し合うことで、どのような人格の人物なのかを知ることができる
じっくりと読ませていただきましたが、まさに著者版の「街道をゆく」や「ブラタモリ」で、
経済学者としての深い知識知見だけでなく、幅広い教養と美的感覚と味覚に裏打ちされた、
格調高く味わい深い文章で楽しめました
特に柵原鉱山、生野銀山、紀和鉱山など西日本の鉱山跡については、ライトOFF会キャンプや
ポタリングなどで訪れたことがあるので、それらの歴史や文化、たたら製鉄に関する考察などは
とても興味深く読みました
ええ、当時は前知識なんか殆どなく、みんなでわいわいと坑道に入っては、
「わははは、こんな明るいライト軍団が入ったのは、歴史上初めてのはずじゃあ!!!」
とか、大はしゃぎしてただけですから・・・
地霊を訪ねる~もうひとつの日本近代史~とゆー本のご紹介
著者略歴と奥付
目次であります
そう・・・
鉱山や鉱山跡を中心に辿った旅のエッセイであります・・・
「まえがき」よりの読後メモ・・・
・同じ技術で同じ製品を生産する同じ規模の企業組織であっても、そのために必要な人材を探し、
技能を高める方式は、日本と欧米、東南アジアとでは少なからぬ違いがある
→その差異と類似性をどう説明すればよいのか・・・
→日本社会を具体的に知るために歩いて旅をする、私流のブラタモリ、街道をゆく・・・
→近代日本の工業化の担い手のひとつ鉱業操業地跡への旅
→地霊(社会風土あるいは習俗)によって「もうひとつの日本の近代」を探ってみたい・・・
と、15年かけて40を超える鉱山跡地を訪れて綴ったのが本書
ちなみに鉱山跡地は地下遺構がメインの廃墟ですから、わたくしの大好きな場所ですし、
鉱山鉄道跡はサイクリング・ロードとして整備されてるところも多く、鉄道敷とゆーのは
そもそも勾配やカーブが緩いので、まったりポタリングにぴったりでこちらも大好きです
以下、最初の「伊那谷から中山道に出る」よりの読後メモ(福田恒存の言葉の紹介)
・日常的でないものにぶつかったとき即座に応用がきくということ、それが教養というものです
・あることを知ったということは、それを知る前に感じていた未知の世界より、
もっと大きな未知の世界を、眼前にひきすえたということであります
・さらにそれは、そのもっと大きな世界を知らなければならぬという責任を引き受けたことを意味します
・・・
で、各項の紀行内容は、メモするには濃かったので、この際どどんと省略して・・・
「あとがき」よりの読後メモのみ・・・
・どの棚に置けばよいのか、書店が困るような分類の難しい本になった
・旅という体験を通して「足から」しか学べないことは少なくない
・本を読め、人に会え、そして旅をしろ(池島信平の言葉)
・何を読んだか、どこを旅したかを話し合うことで、どのような人格の人物なのかを知ることができる
じっくりと読ませていただきましたが、まさに著者版の「街道をゆく」や「ブラタモリ」で、
経済学者としての深い知識知見だけでなく、幅広い教養と美的感覚と味覚に裏打ちされた、
格調高く味わい深い文章で楽しめました
特に柵原鉱山、生野銀山、紀和鉱山など西日本の鉱山跡については、ライトOFF会キャンプや
ポタリングなどで訪れたことがあるので、それらの歴史や文化、たたら製鉄に関する考察などは
とても興味深く読みました
ええ、当時は前知識なんか殆どなく、みんなでわいわいと坑道に入っては、
「わははは、こんな明るいライト軍団が入ったのは、歴史上初めてのはずじゃあ!!!」
とか、大はしゃぎしてただけですから・・・
2023年05月19日
稲畑汀子俳句集成
(期間限定のお知らせ)
フラッシュ光・2023ボルネオツアーの案内記事はこちらです
航空便の予約状況が逼迫してるので興味のある方は早めの連絡をお願いします
と・・・
いよいよ本格的に「晴漕雨読」(晴れたら自転車を漕ぎ雨なら読書)の日々が・・・
フラッシュ光・2023ボルネオツアーの案内記事はこちらです
航空便の予約状況が逼迫してるので興味のある方は早めの連絡をお願いします
と・・・
いよいよ本格的に「晴漕雨読」(晴れたら自転車を漕ぎ雨なら読書)の日々が・・・
と思っていた矢先の落車骨折で思わぬ自宅療養となり「晴読雨読」の日々が続いています
つーことで今回は心静かに俳句なんぞを・・・
中にあった栞
そう、稲畑汀子俳句集成であります
著者紹介と奥付
2022年2月に亡くなった俳人・稲畑汀子の句集で同年5月の初版発行・・・
高価な本ですが7ヶ月後には三刷が発行されてるんですね
著者あとがきが2021年9月15日付、刊行委員会の後記が2022年1月8日付となっており、
後記の追記に「先生に(完成本を)お見せできなかったことが残念でなりません」とありますが、
著者のあとがきには(この本は)「私の生きてきた証です」「自然体で生涯を振り返るという
チャンスをいただきました」とあって、さらに自選句集の集大成ですから、まさに「集成句集」
恒例により目次のみのご紹介・・・
わたくしが俳句を論ずるなど、もちろんできないので「句集解題」(岩岡中正)にあった、
各句集の特徴と、その代表的な作品の中から一部をご紹介・・・
第一句集
①写生と、あるがまま
今日何も彼もなにもかも春らしく
②軽やかな叙法
この辺の景色となってゆく芒
第二句集
①境涯の深まり
とりとめし命に秋の立つ日かな
②存問の広がり
物の芽のどこもかしこも踏みさうで
③花鳥諷詠の心
落椿とはとつぜんに華やげる
第三句集
①海外吟と信仰
三日月の沙漠と聞けば訪ねたし
春雷も心に印す神のもの
②句境の深まり
咲き満ちて花に遅速のなかりけり
第四句集 障子明り
①平明と俳味
口許に目許に春の風邪心地
鳴沙山片陰作りつつありぬ
②存問と挨拶
春愁と問へば旅疲れと応ふ
③洗練された美意識
桐箱にかるたの月日をさめおり
一枚の障子明りに伎芸天
第五句集 さゆらぎ
①平明、即興、存問
三椏の花三三が九三三が九
②滑稽
早々と庭師来てゐる朝寝かな
③21世紀の哲学としての花鳥諷詠詩→生命の写生
山の音とも霧走る音かとも
さゆらぎは開く力よ月見草
句集「花」
①存問の旅
②花への存問
一山の花の散り込む谷と聞く
さゆらぎてさゆらぎて花心かな
③連衆、土地、自然への存問
みよし野のこたびは花の宿りかな
連れ立つも迷うも花の吉野山
怖くない人数で行く夜の朧
句集「月」
①若々しい詩情の月
月の波消え月の波生まれつつ
月見えぬ側のデッキに月の波
②旅の月
能登の旅日本海の月にそひ
夜々の月名を得て旅路果てにけり
③境涯の月
これよりは月の茶屋守る生活(くらし)かな
丹波路の一人欠けたる月の友
④美しい月
月の燭置きて今宵の浮御堂
⑤月の含意の拡大
置いて来し月が行手に現はるる
梅雨の月狐の仕業かも知れず
⑥祈りの月
寒月の照らすは地震に崩るる町
月満ちてゆく大空に祈りあれ
未刊句集「風の庭」
①旅の日々
初空であり旅空でありにけり
万緑の塊として山を見る
海の日に集ひて地球ボランティア
寄鍋と聞けば出席することに
五月晴明智贔屓の城下町
②日常への存問
新鮮といひて菜虫の穴だらけ
水音を纏ひ遅日の庭に立つ
腹立ててならぬ転んでならぬ秋
・・・つーことで・・・
わたくしも現在の境涯をば一句・・・
転んでしまいアウトドアなしの春 98k
2023年05月12日
フラッシュ光・2023ボルネオツアーの公式?案内
(本記事は期間限定のお知らせです)
とーとつですが・・・
フラッシュ光・2023ボルネオツアーの公式?案内であります
こちらの記事末尾でも日程は紹介しましたが、現時点での2023ツアー概要とご案内です
航空便の予約状況が逼迫してますので参加希望者は早めの連絡をお願いします
①スケジュール(出発まで順次更新しています)
(関西空港発着の場合7泊9日うち平日は4日間で日本のサラリーマンには優しい選択)
10月27日(金)
とーとつですが・・・
フラッシュ光・2023ボルネオツアーの公式?案内であります
こちらの記事末尾でも日程は紹介しましたが、現時点での2023ツアー概要とご案内です
航空便の予約状況が逼迫してますので参加希望者は早めの連絡をお願いします
①スケジュール(出発まで順次更新しています)
(関西空港発着の場合7泊9日うち平日は4日間で日本のサラリーマンには優しい選択)
10月27日(金)
23:25関西空港発(往復ともシンガポール航空を利用予定)
10月28日(土)
10月28日(土)
04:40チャンギ空港着06:40発 08:10クチン空港着
ホテルへチェックイン休憩、屋台で昼食後、全面改装されたボルネオ文化博物館へ
スーパーなどに立ち寄り、夕食は海鮮料理の屋台街
<クチンのホテル泊>
10月29日(日)
ホテルにて朝食後チェックアウト、クチン空港へ
09:45クチン空港発11:25ムル空港着、ムル国立公園へ。約3.4㎞の木道をハイキング
ディア・ケイブとラング・ケイブの見学+コウモリの群れの見学
公園内食堂にて夕食後、ナイト・ウォーク
<グヌン・ムル国立公園の宿泊所泊>
10月30日(月)
公園内食堂にて朝食後にボートで移動、プナン族の村訪問、
ウィンド・ケイブとクリアーウォータ―ケイブの見学、ピクニックランチの昼食
ウィンド・ケイブとクリアーウォータ―ケイブの見学、ピクニックランチの昼食
ボートで戻る途中、元気のある方は約3kmのハイキング
公園内食堂にて夕食後、ナイト・ウォーク
<グヌン・ムル国立公園の宿泊所泊>
10月31日(火)
公園内食堂にて朝食、出発まで自由行動(希望者は別料金でツリーウォークへ)
チェックアウト後、ムル空港へ。昼食はムル空港近くの食堂にて。
13:10ムル空港発14:50クチン空港着、いったんホテルへ
スーパーなどに立ち寄り、夕食はスチームボート
<クチンのホテル泊>
11月1日(水)
ホテルにて朝食後、サバル森林保護区にある過去の植林地見学、記念植樹
昼食は弁当、夕食はローカル料理
夕食後、クバ国立公園カエル池ナイトツアー
<クチンのホテル泊>
11月2日(木)
ホテルにて朝食後、サバル森林保護区にある過去の植林地見学、記念植樹
昼食は弁当、夕食はローカル料理
夕食後、クバ国立公園カエル池ナイトツアー
<クチンのホテル泊>
11月2日(木)
ホテルにて朝食後、ボルネオのジュラシックパークと呼ばれるベンゴー地区へ
(車両とボートで移動。インドネシアとの国境を跨ぐクレーター状の山脈に囲まれた湖)
(車両とボートで移動。インドネシアとの国境を跨ぐクレーター状の山脈に囲まれた湖)
滝の傍でビダユ族スタイルのお弁当の昼食。
その後、さらに奥のアナ・ライス村でホームステイ。
サラワク川源流には温泉もあります。夕食は伝統料理。
<ビダユ族のロングハウス泊>
11月3日(金・祝)
ロングハウスにて朝食後、人々の生活や畑などを見学し早めに出発。
屋台で昼食後、Fairy & Wind Cave へ
屋台で昼食後、Fairy & Wind Cave へ
ラフレシアが咲いていればグヌン・ガディン国立公園へ
夕方クチン郊外の週末のみに開催されるシニアワンのナイト・バザールへ
ウツボカズラ飯など含めクチン中のいろんな食べ物が並びます。ホテルにチェックイン。
<クチンのホテル泊>
11月4日(土)
ホテルにて朝食後、ホテルをチェックアウト
09:30クチン空港発 11:00チャンギ空港着14:05発 21:10関西空港着、解散
②概算費用など(出発まで順次更新しています)
・関空⇔クチン往復、現地での移動、宿泊、食事、植林等を含み5月12日時点で27万ぐらい
・現地クチンでの集合解散も可能、その場合は半額ぐらいになります
・別途、個人の酒代・土産物代・旅行保険代等が必要(安全な飲み水は用意します)
・クチンでのホテル4泊は基本2人1室ですが、割増料金により1人1室も可能
・ムル国立公園の宿泊所2泊は男女別各4人部屋、ビダユ族の村ホームステイ1泊は全員で
大部屋に近い状態になります
③参加人数・参加方法・申込期限など
・9月末時点で確定している参加者は6名です
・予約申込時期により航空運賃は変わります(満席で同じ便を予約できない場合もあります)
・参加を希望される方はコメント欄やDMなどで早めの連絡をお願いします
(こちらから申込方法など詳細をお知らせします)
つーことで・・・
秋にはボルネオの洞窟や熱帯雨林でライト照射を楽しみましょう!!!
2023年05月09日
「まあいっか」で楽に生きる・・・
(期間限定のお知らせ)
2023フラッシュ光ボルネオツアーのご案内はこちらの記事の末尾です
まあいっか・・・
東南アジア式「まあいっか」で楽に生きる本・・・であります
裏表紙カバー
表紙カバー裏にあった惹句
東南アジアでの暮らしぶり、特に働き方については、わたくしの昨年末バンコクでの思い
と見事に一致してて、大いに納得しました
やはり日本の働き方よりマレーシアなどの働き方の方が世界標準に近いようです
裏表紙カバー裏にあった著者紹介
奥付
例によって目次のみ
以下、ランダムに読後メモから抜粋・・・
1章より
・1990年代は東南アジアの若者と話をしていても「日本で働きたい」が多かった
→2010年頃には「日本に行くのは好きだけど日本で働くのは嫌」になってきた・・・
・GDPや安全度、健康寿命などを考慮に入れない幸福度調査が海外に住む自分の実感に近い
・2021年秋に行われたマレーシア統計局の「幸福度調査」(11州42246人)
→パンデミックや経済危機にもかかわらず全体的に幸福を感じていた
→日本より不平等なのに階層、民族、年齢層、性別、学歴、婚姻状況で有意なギャップがない
・英国バーキー財団の2017年の若者調査で1位だったインドネシアは幸福度が90%
→先進国より発展途上国の若者の方が幸福度は高い
→ヨーロッパの若者は世界平均レベル
→18位のトルコで50%
→韓国と日本が「最も不幸」で29%と28%
・CNBCの2021年「住みやすさランキング」(駐在員12000人を対象に57都市を比較)
→1位はクアラルンプール、東京は53位で最下位に近い
→東京の方が交通網、環境、経済などで勝るはずなのに「住み着きやすさ」では最下位
→外国人には親切だがコミュニティには受け入れてくれないから
・日本では子育て世代は少数派→社会から分断されている→子育てがしにくい
・マレーシアは日本より不平等だが言語や学校や仕事がバラバラで他人と比べる意味がない
→「正しさ競争」をしていない、ちゃんとしない人(子ども)を受け入れる、親が楽しむ・・・
→人もインフラも役所もちゃんとしていないが他人に期待し過ぎず自分の責任で行動している
・マレーシアでは社会も予定も急に変わる→まあいっかで適当にやらないとストレスになる
→背景のある移民や難民も多く、自分の常識や礼儀を押し付ける暴力性に気づかされた
→日本では家でも職場でも、ちゃんと、きちんと、笑顔で、が求められる
・日本の完璧主義でいくか、世界スタンダードに近い80%主義でいくか・・・
→スローリー、スローリー、ラーニング
2章より
・緻密さ完璧さの日本製品は昔は東南アジアのお手本だった
→潮目が変わったのは2000年代の中頃
→技術が進み製品の部品数が減り時代はソフトウェアに
→日本の顧客が求める(過剰)高品質は世界では売れなくなった→亀山モデルの例
・アジアに原材料や製品を発注しているのは日本だけではない
→クレームが多く発注が安定しない日本メーカーは切られる
・アジア航路の北東端にあり小規模港が多い日本はコンテナ船コストがかかるので抜港される
・製造業だけでなくサービス業にも完璧が求められる日本
→マレーシアでは学校でも病院でもスタッフにクレームの多い保護者や患者は切られる
→日本のコンビニやレストランでの接客は働く側の安い給料に釣り合っていない
→マレーシアでは高級店のみ→賃金以上のサービスはしない
→ちゃんと、きちんと、は人によって基準が違うので全て詳細な契約による(日本は逆)
・日本は時間や計画に正確で中国やマレーシアはフレキシブルだが最終的にどちらでも回る
・東南アジアの会社のチームワークの良さと日本の会社の和の重視の違い
・日本の序列競争、細かい差別待遇、謝罪の儀式、反省文・・・
3章より
・マレーシアには様々な宗教・民族の人が住み結論が異なる→答えはたくさんある
→学校も様々で転校も多い
→他人と比べなくていい→自分で自分の道を選択することになる
→重要なのは他人の選択に口を出さないこと→多様性を認め合う社会を生きる上での知恵
(この章のメインである教育制度や教育論のメモは、いずれ別の機会に)
4章より
・日本よりGDPが低く貧富の差も激しく犯罪も多いのに幸福度が高いのはなぜか
→とくにティーンエイジャーが精神的に落ち着いている
→自閉症の障害もマイルドで穏やか→社会の許容量の問題ではないか
→多国籍文化で自閉症も文化の一つとして受け入れ、多少の違いは気にしない優しさ
→外国人は日本のマナーの良さに驚嘆するが、ついていけない人も出てくる
・マレーシア人の幸福度には家族、宗教と精神、健康が重要な要素で、お金はあまり関係ない
→日本語学校で「お金と休みがたくさんあればどこへ行きたいか」と授業で訊いたら、
→マレー系の生徒ほぼ全員が「実家に帰る」と答えた→家族が一番
・日本では組織=システムにウェイトを置き、家庭も同じ経済的システム
→収入も家事も育児も互いに「ちゃんと」やるべき→家庭で安らぐことは難しいかも・・・
・怒りを正当化する人々
→マレーシアでは怒りで人を動かそうとすると自分が損をする
→日本は「叱られるのが当たり前の文化」
→「ちゃんとした基準」でないことを怒りミスを修正して教育してあげようという正義感から
→マレーシアの顧客対応では日本のようなクレーマーに出会った記憶がない
→家族関係に満足している人が多く、多様な人種や宗教で「正しさ」が異なるからでは・・・
→日本の大人社会の上下関係は子ども社会からずっと同じで、それが怒りにつながる
・日本のダメ出し文化(英語のnoteは良い点・悪い点の指摘だが日本ではダメ出しのみ)
→他人の目を気にする繊細な人には厳しい社会
・ミスや失敗に厳しい日本と緩いマレーシア
→厳しい方が便利快適で、緩い方は不便だけど生きるのは楽
→自分も間違えたらダメと思い、心が削られるのがつらいから
・マレーシアは多様な文化の社会で相手を完全に理解することは難しいと肌で知っている
→答えを決めつけない、価値観を押し付けない、ちゃんと、きちんとを要求しない・・・
・迷惑をかけてはいけない日本社会
→気を遣うのはいいが傾向が強まると「弱い立場の人は我慢が当たり前」になる
→日本で子育てしていた際のプレッシャーがマレーシアにはない
・どうにもならないことが当たり前
→迷惑をかけられても怒ったり叱ったりしない「まあいいか」があふれた社会は楽
・2021年の大洪水でのボランティア体験(近所のシク教寺院の無料食堂へ)
→参加資格、受付、分担、シフト・・・すべてがざっくりしていた
→他者への基本的な信頼があると社会のルールは少なくなる
→この寺院でのルールは髪を覆うこととアルコール・タバコの禁止のみ
→様々な宗教の信仰者が多いので「人間は完璧にできない」とゆったりしている
・予定は予定で時間はゴム→沖縄の島時間と同じ→南国共通?
→パンデミックも断水も洪水も生活は大変なのに面白動画のネタにしている
・マレーシアも少しずつ「ちゃんとする」社会に変わりつつあるが、
→緩さについていけず短期間で日本に帰国する人も多い
→完璧か不完全か、考え方や正解はいっぱいあっていいのだと思う・・・
・マレーシアでは人間関係の離脱戦略が簡単→友人を作りやすい
→あまりくっつかず「風船的」で気軽に離脱できる(寂しく感じるケースもある)
→日本の人間関係はぎっしり詰められた「ウニ的」
→狭い社会で距離が近く、お互いの棘が刺さらないよう気を遣っている
→人間関係や友人作りに慎重になる
・マレーシア人は寛容ではなく合理的なだけ?
→民族の排斥、華人の干支の犬飾りとムスリムなどなど・・・
→自分の正義を振りかざすと、すぐに別の正義とぶつかる→それで得られるものは少ない
→多民族なので責めたり怒ったりせず間違いや失敗にも寛容になる
→ちゃんとしていない自分は安心する
・マレーシアの全方位外交
→イスラム協力機構メンバーでイギリス連邦加盟国で一帯一路にも参加・・・
→2018年の政権交代の際も1969年の人種暴動を繰り返してはいけないと慎重になってた
→全てに寛容になるメリットを実感として国民が知っている
・「多様性とは相手を理解すること」と言われるが、実は非常に難しい
→できることは「理解はできないけど放っておく、口を出さない」こと
→Mind your own business(自分のことに集中せよ)→マレーシアで何度も言われた言葉
→自分の責任の範囲に集中し理解できない他人を必要以上に見ないこと
→正解が増えると勝ち組も負け組もなくなり他人の生き方に余計な口を出す人が減る
→自分の人生に集中する人が増えると、ようやく生きやすくなるのではないか
おわりにより
・視野が広がれば正解がわからなくなり、たどり着けなくなる
→マレーシアに来て11年になるが知らないことが増えるいっぽう
・2022年の夏に欧州を廻ったが様々なサービスは日本よりマレーシアに近いと感じた
→これが世界標準で日本のサービスが変わっているのではと書いたら欧州在住者の賛同を得た
・東南アジアに住む人たちからは「日本に旅行に行くのは最高、でも働くのは嫌」
→海外の日本人からも「母国ではもう働きたくないけど、住むだけなら安全快適で安心」
→サービスを受ける側には快適だが、提供する側は厳しい労働環境の日本・・・
・もう少し構成人員がリラックスすれば幸福度の高い社会が作れるのではないか
→安全で完璧なサービスを望む人にはオプションで残せばいい
→幸福度の高い生き方は外国の「いいとこ取り」をすればいい
・マレーシアは英語が通じ外国人が働きやすいが、宗教を中心とした民族コミュニティも健在
→友人の敬虔なマレー系ムスリムは子どもをドイツなどに留学させている
→グローバルとローカルも、いいとこ取り、ハイブリッド、グレーゾーンでいい
→二項対立ではない
・日本の良さを残しつつ、みなが楽になっていくことが実現できれば・・・
ちなみにわたくし98kは昔から・・・
まあいっか・てきとー・とーとつをモットーに暮らしてましゅが・・・
2023フラッシュ光ボルネオツアーのご案内はこちらの記事の末尾です
まあいっか・・・
東南アジア式「まあいっか」で楽に生きる本・・・であります
裏表紙カバー
表紙カバー裏にあった惹句
東南アジアでの暮らしぶり、特に働き方については、わたくしの昨年末バンコクでの思い
と見事に一致してて、大いに納得しました
やはり日本の働き方よりマレーシアなどの働き方の方が世界標準に近いようです
裏表紙カバー裏にあった著者紹介
奥付
例によって目次のみ
以下、ランダムに読後メモから抜粋・・・
1章より
・1990年代は東南アジアの若者と話をしていても「日本で働きたい」が多かった
→2010年頃には「日本に行くのは好きだけど日本で働くのは嫌」になってきた・・・
・GDPや安全度、健康寿命などを考慮に入れない幸福度調査が海外に住む自分の実感に近い
・2021年秋に行われたマレーシア統計局の「幸福度調査」(11州42246人)
→パンデミックや経済危機にもかかわらず全体的に幸福を感じていた
→日本より不平等なのに階層、民族、年齢層、性別、学歴、婚姻状況で有意なギャップがない
・英国バーキー財団の2017年の若者調査で1位だったインドネシアは幸福度が90%
→先進国より発展途上国の若者の方が幸福度は高い
→ヨーロッパの若者は世界平均レベル
→18位のトルコで50%
→韓国と日本が「最も不幸」で29%と28%
・CNBCの2021年「住みやすさランキング」(駐在員12000人を対象に57都市を比較)
→1位はクアラルンプール、東京は53位で最下位に近い
→東京の方が交通網、環境、経済などで勝るはずなのに「住み着きやすさ」では最下位
→外国人には親切だがコミュニティには受け入れてくれないから
・日本では子育て世代は少数派→社会から分断されている→子育てがしにくい
・マレーシアは日本より不平等だが言語や学校や仕事がバラバラで他人と比べる意味がない
→「正しさ競争」をしていない、ちゃんとしない人(子ども)を受け入れる、親が楽しむ・・・
→人もインフラも役所もちゃんとしていないが他人に期待し過ぎず自分の責任で行動している
・マレーシアでは社会も予定も急に変わる→まあいっかで適当にやらないとストレスになる
→背景のある移民や難民も多く、自分の常識や礼儀を押し付ける暴力性に気づかされた
→日本では家でも職場でも、ちゃんと、きちんと、笑顔で、が求められる
・日本の完璧主義でいくか、世界スタンダードに近い80%主義でいくか・・・
→スローリー、スローリー、ラーニング
2章より
・緻密さ完璧さの日本製品は昔は東南アジアのお手本だった
→潮目が変わったのは2000年代の中頃
→技術が進み製品の部品数が減り時代はソフトウェアに
→日本の顧客が求める(過剰)高品質は世界では売れなくなった→亀山モデルの例
・アジアに原材料や製品を発注しているのは日本だけではない
→クレームが多く発注が安定しない日本メーカーは切られる
・アジア航路の北東端にあり小規模港が多い日本はコンテナ船コストがかかるので抜港される
・製造業だけでなくサービス業にも完璧が求められる日本
→マレーシアでは学校でも病院でもスタッフにクレームの多い保護者や患者は切られる
→日本のコンビニやレストランでの接客は働く側の安い給料に釣り合っていない
→マレーシアでは高級店のみ→賃金以上のサービスはしない
→ちゃんと、きちんと、は人によって基準が違うので全て詳細な契約による(日本は逆)
・日本は時間や計画に正確で中国やマレーシアはフレキシブルだが最終的にどちらでも回る
・東南アジアの会社のチームワークの良さと日本の会社の和の重視の違い
・日本の序列競争、細かい差別待遇、謝罪の儀式、反省文・・・
3章より
・マレーシアには様々な宗教・民族の人が住み結論が異なる→答えはたくさんある
→学校も様々で転校も多い
→他人と比べなくていい→自分で自分の道を選択することになる
→重要なのは他人の選択に口を出さないこと→多様性を認め合う社会を生きる上での知恵
(この章のメインである教育制度や教育論のメモは、いずれ別の機会に)
4章より
・日本よりGDPが低く貧富の差も激しく犯罪も多いのに幸福度が高いのはなぜか
→とくにティーンエイジャーが精神的に落ち着いている
→自閉症の障害もマイルドで穏やか→社会の許容量の問題ではないか
→多国籍文化で自閉症も文化の一つとして受け入れ、多少の違いは気にしない優しさ
→外国人は日本のマナーの良さに驚嘆するが、ついていけない人も出てくる
・マレーシア人の幸福度には家族、宗教と精神、健康が重要な要素で、お金はあまり関係ない
→日本語学校で「お金と休みがたくさんあればどこへ行きたいか」と授業で訊いたら、
→マレー系の生徒ほぼ全員が「実家に帰る」と答えた→家族が一番
・日本では組織=システムにウェイトを置き、家庭も同じ経済的システム
→収入も家事も育児も互いに「ちゃんと」やるべき→家庭で安らぐことは難しいかも・・・
・怒りを正当化する人々
→マレーシアでは怒りで人を動かそうとすると自分が損をする
→日本は「叱られるのが当たり前の文化」
→「ちゃんとした基準」でないことを怒りミスを修正して教育してあげようという正義感から
→マレーシアの顧客対応では日本のようなクレーマーに出会った記憶がない
→家族関係に満足している人が多く、多様な人種や宗教で「正しさ」が異なるからでは・・・
→日本の大人社会の上下関係は子ども社会からずっと同じで、それが怒りにつながる
・日本のダメ出し文化(英語のnoteは良い点・悪い点の指摘だが日本ではダメ出しのみ)
→他人の目を気にする繊細な人には厳しい社会
・ミスや失敗に厳しい日本と緩いマレーシア
→厳しい方が便利快適で、緩い方は不便だけど生きるのは楽
→自分も間違えたらダメと思い、心が削られるのがつらいから
・マレーシアは多様な文化の社会で相手を完全に理解することは難しいと肌で知っている
→答えを決めつけない、価値観を押し付けない、ちゃんと、きちんとを要求しない・・・
・迷惑をかけてはいけない日本社会
→気を遣うのはいいが傾向が強まると「弱い立場の人は我慢が当たり前」になる
→日本で子育てしていた際のプレッシャーがマレーシアにはない
・どうにもならないことが当たり前
→迷惑をかけられても怒ったり叱ったりしない「まあいいか」があふれた社会は楽
・2021年の大洪水でのボランティア体験(近所のシク教寺院の無料食堂へ)
→参加資格、受付、分担、シフト・・・すべてがざっくりしていた
→他者への基本的な信頼があると社会のルールは少なくなる
→この寺院でのルールは髪を覆うこととアルコール・タバコの禁止のみ
→様々な宗教の信仰者が多いので「人間は完璧にできない」とゆったりしている
・予定は予定で時間はゴム→沖縄の島時間と同じ→南国共通?
→パンデミックも断水も洪水も生活は大変なのに面白動画のネタにしている
・マレーシアも少しずつ「ちゃんとする」社会に変わりつつあるが、
→緩さについていけず短期間で日本に帰国する人も多い
→完璧か不完全か、考え方や正解はいっぱいあっていいのだと思う・・・
・マレーシアでは人間関係の離脱戦略が簡単→友人を作りやすい
→あまりくっつかず「風船的」で気軽に離脱できる(寂しく感じるケースもある)
→日本の人間関係はぎっしり詰められた「ウニ的」
→狭い社会で距離が近く、お互いの棘が刺さらないよう気を遣っている
→人間関係や友人作りに慎重になる
・マレーシア人は寛容ではなく合理的なだけ?
→民族の排斥、華人の干支の犬飾りとムスリムなどなど・・・
→自分の正義を振りかざすと、すぐに別の正義とぶつかる→それで得られるものは少ない
→多民族なので責めたり怒ったりせず間違いや失敗にも寛容になる
→ちゃんとしていない自分は安心する
・マレーシアの全方位外交
→イスラム協力機構メンバーでイギリス連邦加盟国で一帯一路にも参加・・・
→2018年の政権交代の際も1969年の人種暴動を繰り返してはいけないと慎重になってた
→全てに寛容になるメリットを実感として国民が知っている
・「多様性とは相手を理解すること」と言われるが、実は非常に難しい
→できることは「理解はできないけど放っておく、口を出さない」こと
→Mind your own business(自分のことに集中せよ)→マレーシアで何度も言われた言葉
→自分の責任の範囲に集中し理解できない他人を必要以上に見ないこと
→正解が増えると勝ち組も負け組もなくなり他人の生き方に余計な口を出す人が減る
→自分の人生に集中する人が増えると、ようやく生きやすくなるのではないか
おわりにより
・視野が広がれば正解がわからなくなり、たどり着けなくなる
→マレーシアに来て11年になるが知らないことが増えるいっぽう
・2022年の夏に欧州を廻ったが様々なサービスは日本よりマレーシアに近いと感じた
→これが世界標準で日本のサービスが変わっているのではと書いたら欧州在住者の賛同を得た
・東南アジアに住む人たちからは「日本に旅行に行くのは最高、でも働くのは嫌」
→海外の日本人からも「母国ではもう働きたくないけど、住むだけなら安全快適で安心」
→サービスを受ける側には快適だが、提供する側は厳しい労働環境の日本・・・
・もう少し構成人員がリラックスすれば幸福度の高い社会が作れるのではないか
→安全で完璧なサービスを望む人にはオプションで残せばいい
→幸福度の高い生き方は外国の「いいとこ取り」をすればいい
・マレーシアは英語が通じ外国人が働きやすいが、宗教を中心とした民族コミュニティも健在
→友人の敬虔なマレー系ムスリムは子どもをドイツなどに留学させている
→グローバルとローカルも、いいとこ取り、ハイブリッド、グレーゾーンでいい
→二項対立ではない
・日本の良さを残しつつ、みなが楽になっていくことが実現できれば・・・
ちなみにわたくし98kは昔から・・・
まあいっか・てきとー・とーとつをモットーに暮らしてましゅが・・・
2023年05月03日
歴史の逆流
ええ、本日は憲法記念日つーことで・・・
歴史の逆流~時代の分水嶺を読み解く~とゆー本のご紹介
表紙カバー裏にあった惹句
惹句にもあるとおり「憲法学・政治学・歴史学の視点から、暴力の時代に抗する術を考える」本であります
著者紹介
奥付
例によって目次のみ・・・
以下、思いつくままの読後メモ
(わたくしがはたしてそうなの?と感じた部分も著者の趣旨をメモしたつもりです)
1章より
・日本の統治システムの宿痾は歴史から学ばないこと
・政治学を含め社会科学の特徴は自然科学と異なり実験できないこと→歴史が実験のかわり
・日本はデータをきちんと使えない国
→執着によって幻想が生まれ、都合のいい幻想はなかなか手放さない→ネーションの幻想も
→ジョンソンの早いコロナ規制解除、菅の東京オリンピック→楽観幻想にしがみついていた
・安倍政権とその人事権を握った菅官房長官、杉田副長官の振る舞いは、説明しないことによって、
権力を生じさせるというもの
→国民どころか官僚にも説明せず、人事権を使って忖度しろと迫る、新たな権力の磁場を作った
→官僚の党派的な中立を損ない個々の政治家の子分にする内閣人事局への干渉
→学術会議の会員も部下の任命と考えているから拒否にも一切説明はない
→国民も同じで、説明と納得で動いているのではなく命令と服従で動いていると思ってる
→安倍さんも同じだったが一部右派にとってはナショナリズムのアイドルで偶像であり得た
・偶像崇拝は自分の思いや迷い願いを投影しているだけなので結局は自分を拝んでいるだけ
→そんな役に立たないことはやめて自分の頭を使って自分で考えろというのが偶像崇拝禁止
→偶像崇拝せず直接神と対話する神秘主義は教団宗教から迫害されていた
→プロテスタントから立憲主義へ
→宗教上も偶像と象徴は異なる(十字架のペンダントは象徴、戦後の天皇も偶像から象徴に)
・反ユダヤ主義と反9条主義は似ている
→ユダヤ陰謀説が論破されても諦めないように、9条で専守防衛が可能といってもきかない
→因果関係などとは無関係なイデオロギー的幻想(ジジェク)だから
→今後どちらも根拠もなく盛り上がる可能性は否定できない
・病理学の進歩と地方自治制度の間のギャップ
→感染症は特定の地域で流行するので自治体が管轄すべきとの考え
→パンデミックに適した制度ではないのではないか
→制度設計が明治期の感染症(コレラや腸チフス)対策段階で止まってしまった
→大阪でコロナ事態がひどくなったのは保健所を無駄として整理したからという指摘がある
→公衆衛生はナショナルミニマムなので中央集権のほうがいいとの考え方も成り立つが・・・
→大阪の保健所統合などの間違いは地方に権限を委ねる中で折り込み済みの話でもある
・市場より国家が強力だった頃の革新自治体は国家政府に対抗するため自治体の自由を使うと言ってた
→だが、ここまで市場が強力になれば、その発想では無理
→大阪維新は自治体の自立性を市場原理と結びつけネオリベ的な政策の突破口にしている
・日本の学術レベルが落ちたのは2004年の国立大学法人化から→この検証が必要
・今の日本の為政者には学問体験が足りないので、彼らが専門知が大事といっても説得力がない
2章より
・ロシアで革命やソ連の崩壊があっても独裁体制が続いているように、日本の政治体制にも戦前からの
連続性と慣性力があるのではないか
→価値の多様性を前提とした競争(民主主義)という意識が、まだ根付いていないのではないか
・自分は現実的で多数派だから正解と思って与党に投票する与党支持者も多い
→その自分の後ろにいる支持者は有権者の20%に過ぎないことを彼らに知ってほしい
・多くの国では現状に不満のある人は第二党に投票する
→日本では無党派が最大で政党政治から離れている
→宗教と同じで特定の政党支持は異常とされるから、習俗として自民党を支持しているだけ
→党派性を持つことは悪と浸透しているので高校での有権者教育もできないし二大政党もできない
・1997年頃からの行政改革で、公務員を減らし公共を市民社会が引き受けることになった
→その結果、会社が請け負って中抜きする事態になった
・2022年から高校の科目に歴史総合ができた
→近現代史に限ってだが「世界とその中の日本を広く相互的な視野から捉える」科目
→これで多くの高校生が、日本の内政が外国の働きかけで動いていることが分かるようになる・・・
・コロナ禍で(立場により見える風景が全く異なる)パラレルワールドが広がった→これが本当の危機
3章より
・戦争指導者の説明と真の理由を区別し明らかにしたのが2400年前の古代アテナイ歴史学のはじまり
・ウクライナ侵攻でのNATOなどの支援は両者の「暗黙の了解」→38度線の休戦ラインと同じ
・橋下徹は戦うな、山東昭子は戦い抜けと言ってるが国のあり方を賭けた話でウクライナが決めること
→被害でいえば沖縄戦、原爆投下、加害でいえば南京戦
→日本では、これらの戦争終結への対立と混乱があったことから、早く降伏すべきとの議論が出てきやすい
・ホッブズの社会契約論は個人セキュリティと国家セキュリティの議論
→個人セキュリティのための国家との契約なのだから戦場で死ぬ義務はない
→殺し合う自然状態でのミニマムな国家との約束に過ぎない→国家から逃げればいい→ロシア
・ルソーの社会契約論は自由国家を守らねば個人セキュリティも守れないから戦って死ぬべき
→国民の意志により国家は運営されており国民の中長期の利害を見据えた決定がなされている
→そうである以上、国家を守るため国民全員が戦うべき→ウクライナ
・日本の歴史では、共同体のリーダー(天皇)を祭り上げた徴兵制から自衛隊になった
→ホッブズ型かルソー型か、国民動員をどう捉えるか・・・
・戦争の開戦法規は自衛が基本で交戦法規は戦闘員と非戦闘員の区別が基本
→経済封鎖は非戦闘員を苦しめるので戦争より悪い(マイケル・ウォルツァーの正戦論)
→マリウポリの封鎖は問題だが、ロシアへの経済制裁はまだ飢餓になってないので今は問題ない
→今後の制裁が強まり、ロシアの飢餓状況が報道されるようになればどうなるか・・・
・現代の戦争は核戦争かゲリラ戦になる(丸山真男)→群民蜂起→軍隊を否定したゲリラ戦のススメ
→しかし民間人が武装していたら交戦法規は・・・デスパレードだから仕方がない???
・戦争と冷戦を含む戦争状態は異なり、戦争よりマシだが深刻な戦争状態はリスキー
→法秩序の破壊を止めるためにどんな行動をとったかが為政者に問われる
→東京裁判では広田弘毅は不作為とされ有罪になった
・決闘ルールでは勝った方が正しいとされる→これが戦争のルール(グロティウス)
→ルールにより地獄を弱める効果はあるが、戦争犯罪さえなければ戦争で決めていいのか
→国際紛争を解決する手段としてウクライナ侵攻したとして、多くの国から非難されている
→パリ不戦条約から国連憲章(憲法9条も)への国際社会の秩序は揺らいでいない
(なのでロシアは国内問題であると主張している)
・NATO東進脅威に対するロシアの言い分と満州鉄道権益に対する日本の言い分
→どちらも欧米がもう少しコミットしていたら戦争にならなかったのでは・・・
4章より
・戦争は憲法原理の違いと歴史観の違いから
→それでも外部に喧伝している戦争目的と真の戦争目的には常にズレがある
→ロシアのウクライナ東部併合と日本の鮮満一如は同じもの
・西側が軍事的にロシアを圧倒できなければロシアの国民を覚醒させることはできないのか
→日本国民は原爆あるいは満蒙開拓民を捨てて逃げた関東軍によって明治以来の歴史観が変わった
・満州事変の意図は米ソへの戦争準備だったが、インテリ向けには「中国が条約を守らないから」であり、
農民向けには「満蒙の土地を手に入れて豊かに暮らすため」で、昭和恐慌時に計算され尽くしたもの
→プーチンの意図は「ウクライナがNATOに入れば安全が脅かされるのでウクライナを占領する」
→満州と同様に他国の土地を安全確保の目的にしており必ず滅びが始まる
・ウクライナはオーストリア・ハンガリー帝国に属したリビウとロシア帝国に属したキーウに分かれる
→ゼレンスキー政権はそれをまとめ上げているが言語はウクライナ語に統一しようとしている
・憲法改正(解釈を含む)により政治の劣化が急速に進む例→ロシア、ハンガリー、日本・・・
・国連の選択肢としてはロシアを安保理から排除するか現状維持か、しかない
→総会に来ているだけ現状のほうがマシか・・・
→ソ連は1949年に建国された中華人民共和国を認めないことを不満とし欠席し続けたため、拒否権を発動する
こともなく国連として朝鮮戦争に対応できた(当時の常任理事国は中華民国)
→当初は戦勝国の集まりだったのだから「当事者に議決権はない」と入れておけば→今では不可能
・これ以上の事態に進展すればNATOの集団的自衛権がうまく働くか→ロシアと全面戦争するか
→日米安保条約では日本が攻撃された場合に米軍が反撃するか否かはアメリカ議会の判断による
・ロシアは1937年の上海戦以降の日本と同じ失敗をしている→敵を侮っていた
・19世紀はじめにヘーゲルは戦争や革命で歴史は進むとした
→ファシズムやナチズムはヘーゲル右派、ソ連はヘーゲル左派で歪曲しているが共通している
→カントは何が正しいかは国によって異なり国内では法秩序、国際社会では秩序あるバランス尊重
→現在のロシアと西側諸国の対立はヘーゲルとカントの対立
・日本では防衛装備移転も反撃能力も法律として定まっていない
→相手の攻撃能力を全滅させられない先制攻撃は意味がない
・9条の内容は基本的に1928年の不戦条約や国連憲章で形成された侵略戦争の違法化
→戦後も海外で武力行使してきたアメリカの行動様式と専守防衛の日本の行動様式とは異なるもの
→そのハードルを下げるより、攻撃目標となる原発を撤去したりシェルターを整備する方がいい
→9条1項は侵略戦争を放棄した条文というのは誤解
・抑止力で侵略を抑止できるか
→アメリカは日本への抑止力として真珠湾に軍備したが、日本にそれさえ叩けばと思わせてしまった
・自衛隊のどこが違憲なのかは学者によって異なる
→憲法に自衛隊を書き込んだとしても憲法上の疑義がなくなるわけではない
→憲法に明記されている天皇制にも様々な疑義があるのと同じ
→侵略された場合は自衛し国際社会は侵略に抗議するという国際社会の前提は何も覆っていない
・ロシアはウクライナを国内問題と主張しており中国の台湾と同じ
→台湾有事に備え憲法改正しフルの集団的自衛権を持つべきとの議論
→バイデンが口先で牽制してるのは武力行使ができないから
・中国の海洋戦略上の脅威増大は事実だが・・・
→中国にとってアメリカは朝鮮戦争の際に台湾海峡を封鎖した国
→台湾を武力で統合する話も、すでに中国の一部なので武力で現状変更する必要はないとする話もある
→現状が続けば中国が民主化する可能性もあるがウクライナ侵攻で中国への警戒感が高まるのは当然
→アイルランドは1998年に北アイルランドを放棄し長く続いた戦争を収めた
→田中角栄は台湾について「ポツダム宣言に基づく立場を堅持する」で周恩来と妥結した
・日本の安全保障の危機を叫ぶ人ほど現実を見ていない
→IEPの世界平和指数2021では日本は12位、ウクライナ142位、ロシア154位・・・
→リスクを考えるなら原発と近隣国との関係を悪化させないことを考えるべき
・世の中を動かしているのは既得権益ではなく思想(ケインズ)
5章より
・安倍元首相の国葬
→侵害留保説(権利制限には法的根拠が必要)では法的根拠は不要
→重要事項法理説では自衛隊出動と同じく国会承認が必要だが国葬は重要事項なのかどうか
→山本五十六の国葬は負け戦のターニングポイントだったが、同様に日本衰退のターニングポイントか
→日本の衰退は1990年代からの行政改革などの失敗の帰結で、個人に意味を持たせるのは危うい
→安倍政権に正当な政治批判をしてきた言論や報道を、テロを誘発したとして抑圧したい勢力に利するもの
→山本五十六の頃は民族精神フォルクスガイストがあったが戦後は各自が個人で判断するようになった
→これは「ミネルヴァのふくろうは黄昏になって飛び立つ(ヘーゲル)」歴史の終着点
→今の日本は闇夜の状態で変革も発展もなく偉人も英雄も現れない
→同じ行動という日本人のコンセンサスを分断線で壊そうとした人の国葬に全員が納得するのは困難
→ド・ゴール国葬時のフランスも今の日本と同じ闇夜の状態だった
→銃撃事件の動機が選挙演説の阻止であれば明らかに民主主義の危機だが今回は微妙
・戦前に弾圧された宗教団体はその後、権力との癒着に向かっている
→日本の政教分離原則は信仰の自由のための原則
→両者が衝突する場合は信仰の自由が確保されるかたちにすべき
→革命後のフランスでは政治を宗教から守るための政教分離原則
→宗教弾圧は問題だが外国の宗教団体が密かに日本の政治に食い込むのも問題
6章より
・この国はどこに向かうのか
→2022年7月の参院選では自民党は動かず固定化→政策ではなく自民党だから支持する→同調圧力
→自分が投票した候補者が当選すれば正答、落選すれば誤答と考える人もいるが間違い
→正答も誤答もなく、とりあえず任せているだけだがルソーの社会契約論にも正答にというのはある
→野党への支持も固定化している
→安倍政権は明らかに右寄りだったが自民党が元の中道勢力の連合体に戻るかが分岐点
・日本の選挙制度と集団
→保守合同による自民党と左右統一による社会党の「55年体制」以上にマシな政治にはならない
→大阪維新の2回目の住民投票での否決はどちらの陣営にも予想外だった
→選挙の票を読む技術がどちらにも蓄積されていないのではないか
→地方と大都市圏では同じ選挙制度でも全く違うかたちになっている
→組織化しやすい集団と非正規労働者のようにしにくい集団がある→棄権の多さにもつながる
→今の野党にカリスマ的なリーダーは見あたらない→属人的な部分もある
・少数政党の乱立
→ポピュリスト政党がここまで乱立している国は世界でも珍しい
→政党助成金は90年代の政治改革で成立した制度だが(これによる)少数政党の乱立は予測してなかった
→まともな政党に限定すべきだが野党乱立は自民党に都合がいいので改めることはないだろう
→政治家をいかに育てるか、松下政経塾も連携を目指したが結局バラバラに
・対案を出せ症候群
→野党も国立大学の教授会も「では対案を出せ」ばかりだと正しい批判ができなくなる
→ガバナンス、ステークホルダー、効率化、生産性など、いわばコンサル用語が大学に限らずあらゆる組織で
幅を利かせている
→そもそも発生経緯の異なる組織を一つの方向に押し込もうとしていることがおかしい
→中央省庁も内閣人事局ができて人事は官邸が行うようになり、失敗の痕跡や政権批判をしなくなった
→本来の公務員制度改革は人事の集権化と、内閣官房長官による人事管理についての国民への説明責任の確立
→幹部人事が官邸に掌握されただけで「ヒラメ官僚」が跋扈し、有権者の「それでも与党に投票する」に
→政治家は選挙で信任された一般意思を示すので官僚は機械的に執行すればよいという権力システムの
集権的な理解が広まった
→意見を言う官僚は民主的な権力行使に介入する雑音として排除される
→政治家が一般意思ではなく特殊意思に配慮しようとするときに、選挙に左右されず安定した身分で
一定の中立性を保つ官僚が、適切にブレーキをかけることは適切な権力行使に必要
(旧統一教会の名称変更を自分の見識で止めた当時の文部科学省宗務課長など)
→政治主導は進んだが政治家の要請をメモし全て公開する提案は制度化されないまま
→政治家は選挙で選ばれたことを正当性の根拠にするが、それは一般意思を体現している根拠にはならない
→そもそも一般意思を貫徹するかたちで政治主導を行うことなど原理的にできない
→なので権力を多元的な構造にしなければならない
(宗教団体の名称変更は選挙でお世話になってる政治家より宗務課長が判断する方がまともなシステム)
→内閣人事局は自民党が絶対に廃止しないので、可能なのは特殊意思を通す場合に公開することぐらい
・公文書管理
→福田康夫が尽力し麻生太郎内閣下で公布された公文書管理法の施行は2011年4月で東日本大震災は施行前、
菅直人首相は議事録を残す指示をしなかったが、野田佳彦内閣下の岡田克也副総理が指揮し大部分を復活させた
→しかし2012年12月からの安倍政権以降は公文書管理を重視する姿勢は一切なくなった
→公文書管理法の見直しや公務員制度改革など現実的に可能な問題提起をすべき
→官僚に過剰な統制機能が働いているのに政治家は統制されず選挙もチェック機能を果たせていない
・放送法
→放送行政を総理大臣や内閣の指揮が及ばない独立規制委員会に託す放送法の改正が必要
→NHKの受信料制度は政府や広告主に左右されない適切な制度だと思っているが、
→受信料は国会がNHK予算を承認しない限り受け取ることができない仕組みになっている
→国会多数派の意向が番組内容に及ぶことがないとは言い切れない(高市早苗総務相の発言など)
→なので国会権限から除外して独立した第三者機関に委ねるべき
→これは右派が叫ぶ「NHKの偏向」をなくすことにもなるはず・・・
・議論なき政治
→法的根拠を度外視し国会議論も国民説明もせず閣議決定で決めていく政治は安倍政権以降も続いている
→説明しなくても責任を問われることはなく選挙でも負けないと分かっているから
→内閣法制局も破壊し外務省出身者を起用して集団的自衛権の解釈改憲まで進んだ
→説明しない政治、国会軽視、役人の責任放棄・・・
→ボリス・ジョンソンは政府や議会に繰り返し嘘をついたと退陣させられたが、桜を見る会の国会答弁で
118回の嘘をついた安倍さんは退陣することはなかった
→サッチャー政権では大臣が次々と理由を公表して辞職して退陣に追いやり、トランプ政権の末期でも
政府高官や側近が多数辞めたが、日本では誰一人辞めない、保身しか考えていない
→日本の場合は「説明しなくても選挙では負けない」ことが大きい
・憲法的大問題
→国会審議を経ずに使途が決められる予備費の増大→使途が正確に特定できたのは6.5%のみ
→憲法上は国会の事後承諾が必要だが、承諾されなくとも無効にはならず戻す必要もない
→この上に緊急事態条項まで作って何をやりだすのか・・・
→財政民主主義の背景には戦費調達のため国債を乱発した戦前への反省がある
→行政権力の暴走を無関心な国民が傍観する流れを、このあたりで止めないと・・・
巻末より
・イギリス女王の国葬で軍が前面に出るのは、軍の統帥権が女王にあるのだから当然
→旧植民地からは歴史への反省がないとの批判もあった
・日本でも明治以降は軍の統帥権は天皇であり国葬で軍が前面に出るのは当然だった
→今は内閣総理大臣が自衛隊の最高指揮権を持つが、国葬や私的な葬儀に自衛隊儀仗兵を出すということは、
国家の本質的な部分は軍事であるというイデオロギーを広めることにならないか・・・
→憲法により軍の正当性を否定していることと真っ向から対立することになる
・不幸な銃撃事件から社会の空気が変わった、違う風が吹きはじめた、みんながおかしいと言いはじめた
→岸田さんはしたたかな人ではないか→これを機会に安倍派つぶしとか・・・
・少数者の信条などは多数決の政治プロセスでは守れないので裁判所が守るというのが憲法学会の通念
→カルト宗教団体は信条による強力な統制・監視でサイズに見合わない政治的影響力を発揮していた
→少数派だから裁判所が守るということにはならない
(逆に非正規労働者やシングルマザーは多数派だがバラバラで共通の権利や利益のための協力が難しい)
・憲法の信仰の自由は宗教団体を国家権力の抑圧から守ること、政教分離は政治を特定の宗教団体の
過大な影響力から遮断することだが、両者の関係は書かれていない
→戦前に抑圧された宗教団体は、戦後は「政治は宗教に介入するな」でよかったのに、権力側につけば
抑圧されないというほうに進んで行った
→同じ政教分離のアメリカもフランスも同じで、そのこと自体が問題ではないが・・・
・戦前に弾圧されたのは伊藤博文らが考えた市民宗教としての天皇制の競争相手だったから
→戦後は市民宗教としての天皇制はなくなった
・冷戦終結後、「反共」アイデンティティーの中身は変わってきている
→多様性を否定し特定の価値観で社会を分断してきた
→安倍さんを支持してきた保守派は「リベラル派は旧統一教会を敵とみなし日本に分断を持ち込んでいる」
と言ってるが、分断という概念をはき違えている
→多様性を否定する考え方を多様性の名によって擁護すべきではない
・分断とは社会の中で許容可能な人たちを排除しようとすること
→許容できない泥棒を刑務所に入れるのを分断とはいわない
・安倍政権の負の遺産である分断の政治をどう乗り越えるのか、真剣に構想しなければならない
あとがきより
・新型コロナの諸問題は「政治が生活を左右するという意識」を持たせた
・ウクライナ侵攻は大多数のロシアの人たちを、はじめて独裁のリスクに向き合わせた
・一定の時代に現れた制度・組織・論理が、なぜその時代に、何のために創ろうとしたのかを考える歴史学
・社会の諸事情を規律という側面から考察しようとする憲法学の手法
・その規律を支える条件を考察しようとする政治学の手法
・エコーチェンバーとは正反対の多面的な議論になったが、1章では3人とも安倍晋三政権や菅義偉政権に対する
否定的評価を明確に出している
→政治の失敗は自然現象ではなく政治に関わる人々の行為の結果だから・・・
歴史の逆流~時代の分水嶺を読み解く~とゆー本のご紹介
表紙カバー裏にあった惹句
惹句にもあるとおり「憲法学・政治学・歴史学の視点から、暴力の時代に抗する術を考える」本であります
著者紹介
奥付
例によって目次のみ・・・
以下、思いつくままの読後メモ
(わたくしがはたしてそうなの?と感じた部分も著者の趣旨をメモしたつもりです)
1章より
・日本の統治システムの宿痾は歴史から学ばないこと
・政治学を含め社会科学の特徴は自然科学と異なり実験できないこと→歴史が実験のかわり
・日本はデータをきちんと使えない国
→執着によって幻想が生まれ、都合のいい幻想はなかなか手放さない→ネーションの幻想も
→ジョンソンの早いコロナ規制解除、菅の東京オリンピック→楽観幻想にしがみついていた
・安倍政権とその人事権を握った菅官房長官、杉田副長官の振る舞いは、説明しないことによって、
権力を生じさせるというもの
→国民どころか官僚にも説明せず、人事権を使って忖度しろと迫る、新たな権力の磁場を作った
→官僚の党派的な中立を損ない個々の政治家の子分にする内閣人事局への干渉
→学術会議の会員も部下の任命と考えているから拒否にも一切説明はない
→国民も同じで、説明と納得で動いているのではなく命令と服従で動いていると思ってる
→安倍さんも同じだったが一部右派にとってはナショナリズムのアイドルで偶像であり得た
・偶像崇拝は自分の思いや迷い願いを投影しているだけなので結局は自分を拝んでいるだけ
→そんな役に立たないことはやめて自分の頭を使って自分で考えろというのが偶像崇拝禁止
→偶像崇拝せず直接神と対話する神秘主義は教団宗教から迫害されていた
→プロテスタントから立憲主義へ
→宗教上も偶像と象徴は異なる(十字架のペンダントは象徴、戦後の天皇も偶像から象徴に)
・反ユダヤ主義と反9条主義は似ている
→ユダヤ陰謀説が論破されても諦めないように、9条で専守防衛が可能といってもきかない
→因果関係などとは無関係なイデオロギー的幻想(ジジェク)だから
→今後どちらも根拠もなく盛り上がる可能性は否定できない
・病理学の進歩と地方自治制度の間のギャップ
→感染症は特定の地域で流行するので自治体が管轄すべきとの考え
→パンデミックに適した制度ではないのではないか
→制度設計が明治期の感染症(コレラや腸チフス)対策段階で止まってしまった
→大阪でコロナ事態がひどくなったのは保健所を無駄として整理したからという指摘がある
→公衆衛生はナショナルミニマムなので中央集権のほうがいいとの考え方も成り立つが・・・
→大阪の保健所統合などの間違いは地方に権限を委ねる中で折り込み済みの話でもある
・市場より国家が強力だった頃の革新自治体は国家政府に対抗するため自治体の自由を使うと言ってた
→だが、ここまで市場が強力になれば、その発想では無理
→大阪維新は自治体の自立性を市場原理と結びつけネオリベ的な政策の突破口にしている
・日本の学術レベルが落ちたのは2004年の国立大学法人化から→この検証が必要
・今の日本の為政者には学問体験が足りないので、彼らが専門知が大事といっても説得力がない
2章より
・ロシアで革命やソ連の崩壊があっても独裁体制が続いているように、日本の政治体制にも戦前からの
連続性と慣性力があるのではないか
→価値の多様性を前提とした競争(民主主義)という意識が、まだ根付いていないのではないか
・自分は現実的で多数派だから正解と思って与党に投票する与党支持者も多い
→その自分の後ろにいる支持者は有権者の20%に過ぎないことを彼らに知ってほしい
・多くの国では現状に不満のある人は第二党に投票する
→日本では無党派が最大で政党政治から離れている
→宗教と同じで特定の政党支持は異常とされるから、習俗として自民党を支持しているだけ
→党派性を持つことは悪と浸透しているので高校での有権者教育もできないし二大政党もできない
・1997年頃からの行政改革で、公務員を減らし公共を市民社会が引き受けることになった
→その結果、会社が請け負って中抜きする事態になった
・2022年から高校の科目に歴史総合ができた
→近現代史に限ってだが「世界とその中の日本を広く相互的な視野から捉える」科目
→これで多くの高校生が、日本の内政が外国の働きかけで動いていることが分かるようになる・・・
・コロナ禍で(立場により見える風景が全く異なる)パラレルワールドが広がった→これが本当の危機
3章より
・戦争指導者の説明と真の理由を区別し明らかにしたのが2400年前の古代アテナイ歴史学のはじまり
・ウクライナ侵攻でのNATOなどの支援は両者の「暗黙の了解」→38度線の休戦ラインと同じ
・橋下徹は戦うな、山東昭子は戦い抜けと言ってるが国のあり方を賭けた話でウクライナが決めること
→被害でいえば沖縄戦、原爆投下、加害でいえば南京戦
→日本では、これらの戦争終結への対立と混乱があったことから、早く降伏すべきとの議論が出てきやすい
・ホッブズの社会契約論は個人セキュリティと国家セキュリティの議論
→個人セキュリティのための国家との契約なのだから戦場で死ぬ義務はない
→殺し合う自然状態でのミニマムな国家との約束に過ぎない→国家から逃げればいい→ロシア
・ルソーの社会契約論は自由国家を守らねば個人セキュリティも守れないから戦って死ぬべき
→国民の意志により国家は運営されており国民の中長期の利害を見据えた決定がなされている
→そうである以上、国家を守るため国民全員が戦うべき→ウクライナ
・日本の歴史では、共同体のリーダー(天皇)を祭り上げた徴兵制から自衛隊になった
→ホッブズ型かルソー型か、国民動員をどう捉えるか・・・
・戦争の開戦法規は自衛が基本で交戦法規は戦闘員と非戦闘員の区別が基本
→経済封鎖は非戦闘員を苦しめるので戦争より悪い(マイケル・ウォルツァーの正戦論)
→マリウポリの封鎖は問題だが、ロシアへの経済制裁はまだ飢餓になってないので今は問題ない
→今後の制裁が強まり、ロシアの飢餓状況が報道されるようになればどうなるか・・・
・現代の戦争は核戦争かゲリラ戦になる(丸山真男)→群民蜂起→軍隊を否定したゲリラ戦のススメ
→しかし民間人が武装していたら交戦法規は・・・デスパレードだから仕方がない???
・戦争と冷戦を含む戦争状態は異なり、戦争よりマシだが深刻な戦争状態はリスキー
→法秩序の破壊を止めるためにどんな行動をとったかが為政者に問われる
→東京裁判では広田弘毅は不作為とされ有罪になった
・決闘ルールでは勝った方が正しいとされる→これが戦争のルール(グロティウス)
→ルールにより地獄を弱める効果はあるが、戦争犯罪さえなければ戦争で決めていいのか
→国際紛争を解決する手段としてウクライナ侵攻したとして、多くの国から非難されている
→パリ不戦条約から国連憲章(憲法9条も)への国際社会の秩序は揺らいでいない
(なのでロシアは国内問題であると主張している)
・NATO東進脅威に対するロシアの言い分と満州鉄道権益に対する日本の言い分
→どちらも欧米がもう少しコミットしていたら戦争にならなかったのでは・・・
4章より
・戦争は憲法原理の違いと歴史観の違いから
→それでも外部に喧伝している戦争目的と真の戦争目的には常にズレがある
→ロシアのウクライナ東部併合と日本の鮮満一如は同じもの
・西側が軍事的にロシアを圧倒できなければロシアの国民を覚醒させることはできないのか
→日本国民は原爆あるいは満蒙開拓民を捨てて逃げた関東軍によって明治以来の歴史観が変わった
・満州事変の意図は米ソへの戦争準備だったが、インテリ向けには「中国が条約を守らないから」であり、
農民向けには「満蒙の土地を手に入れて豊かに暮らすため」で、昭和恐慌時に計算され尽くしたもの
→プーチンの意図は「ウクライナがNATOに入れば安全が脅かされるのでウクライナを占領する」
→満州と同様に他国の土地を安全確保の目的にしており必ず滅びが始まる
・ウクライナはオーストリア・ハンガリー帝国に属したリビウとロシア帝国に属したキーウに分かれる
→ゼレンスキー政権はそれをまとめ上げているが言語はウクライナ語に統一しようとしている
・憲法改正(解釈を含む)により政治の劣化が急速に進む例→ロシア、ハンガリー、日本・・・
・国連の選択肢としてはロシアを安保理から排除するか現状維持か、しかない
→総会に来ているだけ現状のほうがマシか・・・
→ソ連は1949年に建国された中華人民共和国を認めないことを不満とし欠席し続けたため、拒否権を発動する
こともなく国連として朝鮮戦争に対応できた(当時の常任理事国は中華民国)
→当初は戦勝国の集まりだったのだから「当事者に議決権はない」と入れておけば→今では不可能
・これ以上の事態に進展すればNATOの集団的自衛権がうまく働くか→ロシアと全面戦争するか
→日米安保条約では日本が攻撃された場合に米軍が反撃するか否かはアメリカ議会の判断による
・ロシアは1937年の上海戦以降の日本と同じ失敗をしている→敵を侮っていた
・19世紀はじめにヘーゲルは戦争や革命で歴史は進むとした
→ファシズムやナチズムはヘーゲル右派、ソ連はヘーゲル左派で歪曲しているが共通している
→カントは何が正しいかは国によって異なり国内では法秩序、国際社会では秩序あるバランス尊重
→現在のロシアと西側諸国の対立はヘーゲルとカントの対立
・日本では防衛装備移転も反撃能力も法律として定まっていない
→相手の攻撃能力を全滅させられない先制攻撃は意味がない
・9条の内容は基本的に1928年の不戦条約や国連憲章で形成された侵略戦争の違法化
→戦後も海外で武力行使してきたアメリカの行動様式と専守防衛の日本の行動様式とは異なるもの
→そのハードルを下げるより、攻撃目標となる原発を撤去したりシェルターを整備する方がいい
→9条1項は侵略戦争を放棄した条文というのは誤解
・抑止力で侵略を抑止できるか
→アメリカは日本への抑止力として真珠湾に軍備したが、日本にそれさえ叩けばと思わせてしまった
・自衛隊のどこが違憲なのかは学者によって異なる
→憲法に自衛隊を書き込んだとしても憲法上の疑義がなくなるわけではない
→憲法に明記されている天皇制にも様々な疑義があるのと同じ
→侵略された場合は自衛し国際社会は侵略に抗議するという国際社会の前提は何も覆っていない
・ロシアはウクライナを国内問題と主張しており中国の台湾と同じ
→台湾有事に備え憲法改正しフルの集団的自衛権を持つべきとの議論
→バイデンが口先で牽制してるのは武力行使ができないから
・中国の海洋戦略上の脅威増大は事実だが・・・
→中国にとってアメリカは朝鮮戦争の際に台湾海峡を封鎖した国
→台湾を武力で統合する話も、すでに中国の一部なので武力で現状変更する必要はないとする話もある
→現状が続けば中国が民主化する可能性もあるがウクライナ侵攻で中国への警戒感が高まるのは当然
→アイルランドは1998年に北アイルランドを放棄し長く続いた戦争を収めた
→田中角栄は台湾について「ポツダム宣言に基づく立場を堅持する」で周恩来と妥結した
・日本の安全保障の危機を叫ぶ人ほど現実を見ていない
→IEPの世界平和指数2021では日本は12位、ウクライナ142位、ロシア154位・・・
→リスクを考えるなら原発と近隣国との関係を悪化させないことを考えるべき
・世の中を動かしているのは既得権益ではなく思想(ケインズ)
5章より
・安倍元首相の国葬
→侵害留保説(権利制限には法的根拠が必要)では法的根拠は不要
→重要事項法理説では自衛隊出動と同じく国会承認が必要だが国葬は重要事項なのかどうか
→山本五十六の国葬は負け戦のターニングポイントだったが、同様に日本衰退のターニングポイントか
→日本の衰退は1990年代からの行政改革などの失敗の帰結で、個人に意味を持たせるのは危うい
→安倍政権に正当な政治批判をしてきた言論や報道を、テロを誘発したとして抑圧したい勢力に利するもの
→山本五十六の頃は民族精神フォルクスガイストがあったが戦後は各自が個人で判断するようになった
→これは「ミネルヴァのふくろうは黄昏になって飛び立つ(ヘーゲル)」歴史の終着点
→今の日本は闇夜の状態で変革も発展もなく偉人も英雄も現れない
→同じ行動という日本人のコンセンサスを分断線で壊そうとした人の国葬に全員が納得するのは困難
→ド・ゴール国葬時のフランスも今の日本と同じ闇夜の状態だった
→銃撃事件の動機が選挙演説の阻止であれば明らかに民主主義の危機だが今回は微妙
・戦前に弾圧された宗教団体はその後、権力との癒着に向かっている
→日本の政教分離原則は信仰の自由のための原則
→両者が衝突する場合は信仰の自由が確保されるかたちにすべき
→革命後のフランスでは政治を宗教から守るための政教分離原則
→宗教弾圧は問題だが外国の宗教団体が密かに日本の政治に食い込むのも問題
6章より
・この国はどこに向かうのか
→2022年7月の参院選では自民党は動かず固定化→政策ではなく自民党だから支持する→同調圧力
→自分が投票した候補者が当選すれば正答、落選すれば誤答と考える人もいるが間違い
→正答も誤答もなく、とりあえず任せているだけだがルソーの社会契約論にも正答にというのはある
→野党への支持も固定化している
→安倍政権は明らかに右寄りだったが自民党が元の中道勢力の連合体に戻るかが分岐点
・日本の選挙制度と集団
→保守合同による自民党と左右統一による社会党の「55年体制」以上にマシな政治にはならない
→大阪維新の2回目の住民投票での否決はどちらの陣営にも予想外だった
→選挙の票を読む技術がどちらにも蓄積されていないのではないか
→地方と大都市圏では同じ選挙制度でも全く違うかたちになっている
→組織化しやすい集団と非正規労働者のようにしにくい集団がある→棄権の多さにもつながる
→今の野党にカリスマ的なリーダーは見あたらない→属人的な部分もある
・少数政党の乱立
→ポピュリスト政党がここまで乱立している国は世界でも珍しい
→政党助成金は90年代の政治改革で成立した制度だが(これによる)少数政党の乱立は予測してなかった
→まともな政党に限定すべきだが野党乱立は自民党に都合がいいので改めることはないだろう
→政治家をいかに育てるか、松下政経塾も連携を目指したが結局バラバラに
・対案を出せ症候群
→野党も国立大学の教授会も「では対案を出せ」ばかりだと正しい批判ができなくなる
→ガバナンス、ステークホルダー、効率化、生産性など、いわばコンサル用語が大学に限らずあらゆる組織で
幅を利かせている
→そもそも発生経緯の異なる組織を一つの方向に押し込もうとしていることがおかしい
→中央省庁も内閣人事局ができて人事は官邸が行うようになり、失敗の痕跡や政権批判をしなくなった
→本来の公務員制度改革は人事の集権化と、内閣官房長官による人事管理についての国民への説明責任の確立
→幹部人事が官邸に掌握されただけで「ヒラメ官僚」が跋扈し、有権者の「それでも与党に投票する」に
→政治家は選挙で信任された一般意思を示すので官僚は機械的に執行すればよいという権力システムの
集権的な理解が広まった
→意見を言う官僚は民主的な権力行使に介入する雑音として排除される
→政治家が一般意思ではなく特殊意思に配慮しようとするときに、選挙に左右されず安定した身分で
一定の中立性を保つ官僚が、適切にブレーキをかけることは適切な権力行使に必要
(旧統一教会の名称変更を自分の見識で止めた当時の文部科学省宗務課長など)
→政治主導は進んだが政治家の要請をメモし全て公開する提案は制度化されないまま
→政治家は選挙で選ばれたことを正当性の根拠にするが、それは一般意思を体現している根拠にはならない
→そもそも一般意思を貫徹するかたちで政治主導を行うことなど原理的にできない
→なので権力を多元的な構造にしなければならない
(宗教団体の名称変更は選挙でお世話になってる政治家より宗務課長が判断する方がまともなシステム)
→内閣人事局は自民党が絶対に廃止しないので、可能なのは特殊意思を通す場合に公開することぐらい
・公文書管理
→福田康夫が尽力し麻生太郎内閣下で公布された公文書管理法の施行は2011年4月で東日本大震災は施行前、
菅直人首相は議事録を残す指示をしなかったが、野田佳彦内閣下の岡田克也副総理が指揮し大部分を復活させた
→しかし2012年12月からの安倍政権以降は公文書管理を重視する姿勢は一切なくなった
→公文書管理法の見直しや公務員制度改革など現実的に可能な問題提起をすべき
→官僚に過剰な統制機能が働いているのに政治家は統制されず選挙もチェック機能を果たせていない
・放送法
→放送行政を総理大臣や内閣の指揮が及ばない独立規制委員会に託す放送法の改正が必要
→NHKの受信料制度は政府や広告主に左右されない適切な制度だと思っているが、
→受信料は国会がNHK予算を承認しない限り受け取ることができない仕組みになっている
→国会多数派の意向が番組内容に及ぶことがないとは言い切れない(高市早苗総務相の発言など)
→なので国会権限から除外して独立した第三者機関に委ねるべき
→これは右派が叫ぶ「NHKの偏向」をなくすことにもなるはず・・・
・議論なき政治
→法的根拠を度外視し国会議論も国民説明もせず閣議決定で決めていく政治は安倍政権以降も続いている
→説明しなくても責任を問われることはなく選挙でも負けないと分かっているから
→内閣法制局も破壊し外務省出身者を起用して集団的自衛権の解釈改憲まで進んだ
→説明しない政治、国会軽視、役人の責任放棄・・・
→ボリス・ジョンソンは政府や議会に繰り返し嘘をついたと退陣させられたが、桜を見る会の国会答弁で
118回の嘘をついた安倍さんは退陣することはなかった
→サッチャー政権では大臣が次々と理由を公表して辞職して退陣に追いやり、トランプ政権の末期でも
政府高官や側近が多数辞めたが、日本では誰一人辞めない、保身しか考えていない
→日本の場合は「説明しなくても選挙では負けない」ことが大きい
・憲法的大問題
→国会審議を経ずに使途が決められる予備費の増大→使途が正確に特定できたのは6.5%のみ
→憲法上は国会の事後承諾が必要だが、承諾されなくとも無効にはならず戻す必要もない
→この上に緊急事態条項まで作って何をやりだすのか・・・
→財政民主主義の背景には戦費調達のため国債を乱発した戦前への反省がある
→行政権力の暴走を無関心な国民が傍観する流れを、このあたりで止めないと・・・
巻末より
・イギリス女王の国葬で軍が前面に出るのは、軍の統帥権が女王にあるのだから当然
→旧植民地からは歴史への反省がないとの批判もあった
・日本でも明治以降は軍の統帥権は天皇であり国葬で軍が前面に出るのは当然だった
→今は内閣総理大臣が自衛隊の最高指揮権を持つが、国葬や私的な葬儀に自衛隊儀仗兵を出すということは、
国家の本質的な部分は軍事であるというイデオロギーを広めることにならないか・・・
→憲法により軍の正当性を否定していることと真っ向から対立することになる
・不幸な銃撃事件から社会の空気が変わった、違う風が吹きはじめた、みんながおかしいと言いはじめた
→岸田さんはしたたかな人ではないか→これを機会に安倍派つぶしとか・・・
・少数者の信条などは多数決の政治プロセスでは守れないので裁判所が守るというのが憲法学会の通念
→カルト宗教団体は信条による強力な統制・監視でサイズに見合わない政治的影響力を発揮していた
→少数派だから裁判所が守るということにはならない
(逆に非正規労働者やシングルマザーは多数派だがバラバラで共通の権利や利益のための協力が難しい)
・憲法の信仰の自由は宗教団体を国家権力の抑圧から守ること、政教分離は政治を特定の宗教団体の
過大な影響力から遮断することだが、両者の関係は書かれていない
→戦前に抑圧された宗教団体は、戦後は「政治は宗教に介入するな」でよかったのに、権力側につけば
抑圧されないというほうに進んで行った
→同じ政教分離のアメリカもフランスも同じで、そのこと自体が問題ではないが・・・
・戦前に弾圧されたのは伊藤博文らが考えた市民宗教としての天皇制の競争相手だったから
→戦後は市民宗教としての天皇制はなくなった
・冷戦終結後、「反共」アイデンティティーの中身は変わってきている
→多様性を否定し特定の価値観で社会を分断してきた
→安倍さんを支持してきた保守派は「リベラル派は旧統一教会を敵とみなし日本に分断を持ち込んでいる」
と言ってるが、分断という概念をはき違えている
→多様性を否定する考え方を多様性の名によって擁護すべきではない
・分断とは社会の中で許容可能な人たちを排除しようとすること
→許容できない泥棒を刑務所に入れるのを分断とはいわない
・安倍政権の負の遺産である分断の政治をどう乗り越えるのか、真剣に構想しなければならない
あとがきより
・新型コロナの諸問題は「政治が生活を左右するという意識」を持たせた
・ウクライナ侵攻は大多数のロシアの人たちを、はじめて独裁のリスクに向き合わせた
・一定の時代に現れた制度・組織・論理が、なぜその時代に、何のために創ろうとしたのかを考える歴史学
・社会の諸事情を規律という側面から考察しようとする憲法学の手法
・その規律を支える条件を考察しようとする政治学の手法
・エコーチェンバーとは正反対の多面的な議論になったが、1章では3人とも安倍晋三政権や菅義偉政権に対する
否定的評価を明確に出している
→政治の失敗は自然現象ではなく政治に関わる人々の行為の結果だから・・・