2011年03月22日
災害避難について4
(災害避難についての「まとめ記事」はこちらです。)
道路、空港、港、鉄道などの輸送インフラがどんどん復旧しています。
また、楽八さんのmixi記事で知りましたが、台湾で各TV局合同のチャリティ生番組が放映され、
四時間で20億円を超える義援金が集まったそうで、他にも世界中で支援の輪が拡がっています。
九日ぶりに救出されたお二人といい、明るい話題は気持ちを前向きにさせてくれますね。
直接被害に遭わなくても、なにせ未曾有の大惨事、どうしても気持ちが沈みがちになりますが、
自分にできることを考えつつ、前向きな気持ちに切り替えて、明るくやっていきましょう。
こちらでも、3月19日から予定していた岡山・洞窟OFF会は相談のうえ延期したのですが、
先日、川端さんからのご提案で、わたくし、wingさん、red-bicycleさんが賛同して、
「災害用非常装備だけで、歩いてみて食べてみて、自分の装備を再点検する」OFF会をやりました。
気分の切り替えもでき、いろいろ参考になりましたので、追ってその内容も紹介するつもりです。
さて、前回からの続きになりますが、公共交通などが止まり帰宅困難となった場合、
あるいは被災地から徒歩で脱出する場合などは、長距離の歩行を余儀なくされます。
ただし、前回も書いたとおり、その判断は山歩きでいえば遭難しかけた時の状況と同じですから、
強行突破するか、エスケープルートをとるか、引き返すか、とどまる(ビバークする)かについては、
その危機的状況と自分の体力や装備の状況を見極め、もっとも安全な方法をとるべきです。
そのうえで、どうしても長距離を歩いて脱出(帰宅)しなければならなくなった場合の、
基本的なポイントや装備について、以下で考えてみます。
3 長距離歩行避難のポイントと装備
長距離を歩く・・・といっても、どんな状況下で、どの程度を歩くのかは様々ですが、
ここでは地震で被災し停電した状況下で、東京都心部から郊外の住宅地へ、あるいは、
大阪から京都、神戸といった別の都市圏への脱出を考えて、おおむね40km程度を歩く、
といった想定で考えてみます。
わたくしが一日で歩いた最も長い距離は、有名な六甲全山縦走56km、15時間・・・
といいたいのですが、全山縦走はテント担いで二泊三日でチャレンジしただけ、
しかも途中で二日酔いのため挫折して引き返したとゆー情けない結果・・・
実際には、六甲山系の菊水山の西側、菊水ルンゼからスタートして、宝塚までが最長であります。
まあ、それでも距離は40kmほどありますし、全山縦走となると、登りだけでも標高差3000m、
上高地から奥穂高岳までの1.7倍、富士山五合目から山頂までの2倍だそうであります。
この56kmを平均15時間(早い人は9時間!)で歩くのですから、ほぼ平地なみの歩行速度です。
わたくしも、菊水ルンゼを朝出発して、夕方には宝塚に着きましたから、ほぼ同じ速度になります。
このような場合は、できる限りの軽装備、簡単な食料と水、雨具ぐらいで歩くことになりますが、
おにぎり二合分と副食で1kg、水が2リッターで2kg、雨具やエマージェンシーキットで2kg、
その他非常食やリュック、水筒なんかを含めても、総重量は7~8kg程度にしかなりません。
この程度の荷重なら、山歩きに慣れておれば、かなりアップダウンがあっても平地なみに歩ける、
ということなんですね・・・今のわたくしにはとても無理ですが・・・
ええ、先ほどのハナシは、あくまで学生時代のハナシで、今すぐこんな長距離は歩けない・・・
そう、基本的に長距離歩行は「慣れ」なのであります。
震災前の新聞記事に、東京マラソンの制限時間が7時間、時速6kmほどであり、初心者が、
いきなりフルマラソンに参加するのは無理でも、半年ほどかけて徐々に距離を延ばしていけば、
だれでも完走できるようになりますよ、という専門家のお話がありましたが、それと同じことだと思います。
つまり、ふだんから長距離を歩くことに慣れておくことが重要になります。
身体が慣れれば、重いリュックを担いでも、かなり長距離を歩けるようになるはずです。
ただし、長距離をできるだけ疲れないように、安全に歩くことへの「慣れ」が目的ですから、
いわゆるウォーキングエクササイズとは正反対の歩き方になります。
胸を張らない、腕を大きく振らない、踵から着地しない、つま先で蹴りださない・・・etc・・・
そう、日本では「ナンバ歩き」、アメリカン・ネイティブでは「フォックス・トロット」として伝わる、
伝統的な長距離歩行の際の、きわめて用心深い歩き方であります。
これらの正しい歩き方については、専門のサイトなどをご覧いただきたいのですが、
わたくしの経験上は、①重心を低く、②べた足に近く、③少し前かがみに、④小股で内股で、
といった感じで歩くと、荷重があってもアップダウンがあっても、安全に長く歩ける気がします。
「安全に歩く」というのは、状況に変化があっても、とっさの場合でも対応できるということ。
ふだん歩くのは舗装された平坦路ですし、ましてや走るのはもっと限定された条件に限られます。
ところが被災した道路や線路というのは、いたるところが寸断され、いつ路肩が崩れるかといった、
きわめて危険な状況になるでしょうし、これは山歩きでは、ケモノ道や藪漕ぎのような状況、
あるいは浮き石があったりガレ場があったりという状況に似ていると思われます。
そんな状況では、大手を振って、胸を張って歩くのではなく、むしろその逆になりますし、
足元や周りに常に注意を払いながら慎重に歩くことになり、夜間の場合は尚更です。
また、ちょっとしたミスが命取りになりますから、冷静な判断のできる余力がなくなる前に、
こまめに休憩する、場合によっては仮眠する、水分補給やカロリー補給も、
喉が渇く前に、バテる前に、が原則であります。
で、歩行に関する装備としては、まず最初に靴の選択が重要であります。
避難の際には、基本は舗装路になると思いますが、瓦礫やガラスの破片があったり、
舗装が寸断されてたり、水没していたりと、あらゆる路面状況が想定されますので、
ソールが硬めのウォーキングシューズでローカットかミッドカット、ただし10kg以内の荷重なら、
慣れないミッドカットやハイカットは、かえって歩きにくい場合もありますので、
山歩きをされてない方には、わたくしはローカットのハイキングシューズをお薦めします。
少し慣れた方なら、アプローチシューズというジャンルの、ミッドカットのゴアテックスブーティ仕様、
重い荷重が前提なら、ハイカットの本格的なやつ、ということになります。
ちなみに、山道に特化したソールパターンは、舗装路では疲れる場合もありますので、
災害避難用として用意するのであれば、アウトドアショップでよく相談されるほうがいいでしょう。
また障害物の危険性を考えると、スチールや樹脂のトゥカップの入った安全靴やブーツもありますが、
やはり慣れていないとつらいですし、長距離歩行には向いていないので、わたくしはオススメできません。
もちろん、いくら足に合った靴でも、ふだんから履き馴らしておくことがポイントであります。
次に服装ですが、これは日帰りハイキングと同じで、速乾性の化繊下着に速乾性のシャツ、
今の季節なら保温用の薄手の中綿入り中間着に防水・透湿性のあるアウタージャケット、
という基本のレイヤードシステムでいいでしょう。
ただし、災害避難用となると、アウターにはノーメックスなどの難燃性素材も考えられますが、
火災に対する装備については、また別項で考えたいと思います。
それと中間着の中綿素材についてですが、以前のシュラフに関する記事にも書き、
過日のOFF会でもwingさんと話していたのですが、やはりダウンと化繊では一長一短があります。
同じ重さなら、ダウンははるかにロフトがあるけど、濡れてしまうと保温力が極端に落ちる、
化繊はメンテフリーで濡れてもある程度ロフトはあるけど、その分収納サイズが嵩張る、
ということで、山歩きやキャンプの際には、その状況に応じて使い分けるのですが、
災害避難用と割り切るなら化繊、ただし、非常用で絶対に濡らさない、少しでも小さく収納したい、
ということであればダウンの選択もありかと思います。
事実、こちらの記事で紹介したサバイバル登山家は、やはり小さくなってロフトが大きい、
ということで小型のダウンシュラフと薄手の防水性のあるシュラフカバーを併用されているようです。
(この項、次回に続きます。)
この記事へのコメント
かかとからでなく、親指の付け根当たりを中心にして、着地の瞬間、すっと垂直に足裏を着けるような歩き方なんですね。革靴の底も、かかとはそれなりに減りますが、真っ先に薄くなるのは親指の付け根当たりです。
この歩き方は、足音があまりたちません。家の中でもそうなので、奥様など、「いつの間にか近くにいる、気持ちが悪い」などと文句を言います。ま、テロリストには最適の歩き方ということでしょうか。
学生の頃(つまり、「若い」頃ね!)、東京の山手線に沿って約40キロを一晩で一周するという遊びを、春と秋の2回ずつ毎年やっていました。
以前、川端さん所でも書いたのですが、コンクリートやアスファルトの上の長距離は、格別応えますね。マメやら靴擦れやら、足の筋肉痛やら。血染めのスニーカーで歩くヤツ。終わって下宿にたどり着いたものの、階段を上がれないヤツ。悲惨でした。
そのとき気づいたのは、とにかく堅い路面はマメや靴擦れを起こしやすいので、靴下を湿らさないこと。余分を持っていて、適宜交換した方がよいようです。あ、これは山歩きでも常識のひとつですね。
>親指の付け根当たりを中心にして、着地の瞬間、すっと垂直に足裏を着けるような歩き方
まさにアメリカンネイティブの「キツネ歩き」そのものですね。
忍者は一晩に百里を駈けるといいますが、昔の日本人の歩き方もこれ、やはり数百年を生きているTOMOさんならではの・・・
>東京の山手線に沿って約40キロを一晩で一周するという遊び
わたくしも以前、川端さんちに書いたのですが、学生時代に、碁盤目状の京都市街地の外周道路を深夜に一周する遊びをやってました。
約6時間、休みなしの歩行ですからこちらは20km強でしょうか、TOMOさんの半分ほどの距離ですね。
硬い路面では、今なら「街道歩き用」というのがあるようですね。
体力があれば、舗装路向けではありませんがトレイルラン用、舗装路用なら厚手のジョギングシューズという選択もあるかも知れません。
やはり靴は体力と荷重、歩く距離や状況によって専門家に相談して選ぶのが確実でしょう。
いずれにしても、靴は靴下とインソールの三点でワンセットですから、おっしゃるとおり靴下を濡らさない工夫、
あと、衝撃吸収性や吸水性、速乾性のあるインソールとの組み合わせも重要ですね。
私も良く職場で「いつのまに近づいてたの」みたいに驚かれるのでわざと足音をたてるようにしています。
>やはり数百年を生きているTOMOさんならではの・・
って~ことは同い年の98kさんも数百年???
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職場から時々歩いて帰宅(深夜までの残業で交通手段もなくなり泣きながら歩いたことも・・・)してますが、約5kmをおおよそ50分で歩きます。
アスファルトなのでかな~り足に来ますね。
靴下を濡らさない工夫も必要ですが、替えの靴下まで手が回るとは限らない(それは私です)ので、靴擦れ防止に紙ガムテープがおすすめです。
足の違和感を感じたところに靴下の上から貼っておけば摩擦が低減され「血染めのスニ~カ~」にはならないでしょう。
いやあ、やはりあなたもテロリスト歩きでしたか・・・(違)
>約5kmをおおよそ50分で歩きます。
かなりの速度ですね・・・さすが新幹線が全通しただけのことは・・・(違)
>靴擦れ防止に紙ガムテープ
テーピングや靴ずれ防止パッドは知ってましたが、靴下の上からのガムテは知りませんでした。
たしかにツルツル滑るような気はしますが、同時に摩擦熱も発生するような気もするんですが、
ま、5kmを50分で歩いておられる方のアドバイスですから、参考にさせていただきます。
>先日、川端さんからのご提案で、わたくし、wingさん、red-bicycleさんが賛同して、
「災害用非常装備だけで、歩いてみて食べてみて、自分の装備を再点検する」OFF会をやりました。
ですと?
なにさりげなくつつがなくふつーにとどこおりなく「災害用非常装備だけ」で行われましたみたいなハナシにしてんスか(^^;
さておき、
靴、屯鶴峰の長靴行軍で足裏の筋をヤラれて、一番最近のオフで重い荷物背負って山道や舗装路なんか歩いてみて、確かに重要だと感じました。
個人的には、普段歩かないし重い物を背負ったりしないカンジの方、
まあ、私みたいな足の弱い人間は、どうしても足首を保護するハイカットもしくはわりとカッチリ足首を保護してくれるミッドカットが安全なのではないかと感じますm(_ _)m
これはまた、なんちゅーいいがかりを・・・
たしか当日はですね、
>さりげなくつつがなくふつーにとどこおりなく「災害用非常装備だけ」
の、いつもどおりのきわめてありふれた宴会もといOFF会だったように記憶しておりますが・・・何か?
ま、もうすぐ公開されるred-bicycleさんの記事とかで、その真実は明らかとなるでありましょう。うぐぐぐ
>靴
そうですね、体力と経験に自信のある人なら、超軽量のマラソンシューズで重いリュックを担いでの激しいアップダウンも可能ですが、
どちらかでも自信がなければ、まずは慎重な靴選びからスタートするのが賢明ですね。
わたくしも最近急激に、とっさの動きが鈍くなってきてますので、
ともかく滑らず転倒しにくい、ソールのしっかりしたやつを選ぶようにしています。
それと「転ばぬ先の杖」、アップダウンや不整地には、必ずストック(しかも両手)を持参するように気をつけております。げほげほ