別冊新評「筒井康隆の世界」ASTROLUX S42とか・・・

2018年07月04日

おクジラさま・・・

前回記事に続き「晴漕雨読」の日々・・・
つーか、今週は雨と宴会が続いてるので「雨読のち暴飲暴食」ばかりですが・・・

おクジラさま~ふたつの正義の物語~(単行本)のご紹介であります。独立記念日だし・・・

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佐々木芽生著 集英社2017年8月30日発行。

映画監督・プロデューサーである著者が制作した同タイトルのドキュメンタリー映画の公開に合わせて、
出版されたものですが、わたくし映画作品の方はまだ観てません。



恒例により目次のみのご紹介

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まずは、著者がこの映画の製作を決意した経過が書かれてました。

著者が映画「ザ・コーブThe Cove」を見たとき、その制作者の姿勢に違和感を持っていたけど、
同作品がアカデミー賞を受賞したとき、その虚偽表現について発信したのは太地町の町長だけで、
あとの批判はナショナリズムを煽る捕鯨文化論やドキュメンタリー映画のあり方論ばかりだった・・・

あれはドキュメンタリーではないとか、隠し撮りしていたとか、そんなことは大した問題ではないのに、
それを理由に日本でこの映画を批判する人々の多くが最後まで見ていない。

なぜ無理な演出や事実誤認を製作者に正式に抗議する人がいなかったのか。
国際社会で公に抗議していればアカデミー賞を受賞することも、世界中に歪められたメッセージが
拡がることもなかったはず。

このままでは偏見や憎しみ、対立だけが深まるばかりなので、このテーマをきちんと掘り下げて、
海外に向けて発信するには、同じドキュメンタリーが最適・・・

と映画の制作を決意されたようです。


表紙カバーにあった著者紹介・・・

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これまで捕鯨問題に関して(英語圏では)反捕鯨を唱える環境保護団体からの情報しかなかったので、
両方の主張をバランスよく伝えることが重要と考えた著者は、できる限り両者の目の前で取材しようと
努力されたようですが、これがけっこう大変だったようです。



以下、本文にあった賛否両論など、わたくしのてきとーなメモ書きです。

・海洋資源や陸の資源をどうやって持続的に利用するか。
クジラについては科学的な問題も法的な問題も解決している。
持続的利用が可能な技術もすでに達成されている。

・アラスカのイヌイットが獲るホッキョククジラ(7800頭のうち5年間で280頭)の生息数は少なく、
日本が要求していたミンククジラ(25000頭のうち5年間で50頭)はさらに増えている。

・(商業捕鯨は)商業である以上は必ず暴走する、乱獲する、環境破壊する。

・ヨーロッパでは奴隷制度や闘牛やキツネ狩りという伝統もやめた。
切腹や鉄漿をやめた日本人は捕鯨という伝統もやめられるはず。

・子牛や子羊を食べるあなたに人道性はあるのか。

・動物の殺戮映像は捕鯨のみが流される。

・ほとんどの日本人はイルカを食べないし食べたいとも思っていない。
太地町は国益を損なうイルカ漁を即廃止すべき。

・日本政府の南極海での調査捕鯨へのこだわり
科学や資源の持続的利用とどこまで関係があるのか。

・商業捕鯨を再開するなら南極海の調査捕鯨をやめて沿岸捕鯨を目指した方が有益で、
資源の持続的利用という目的にも適っている。地域の伝統も守れる。
需要の少ない鯨肉のために巨額の補助金を投入して南極に出向く必要はないのではないか。

・クジラとイルカは全く同じ鯨類、大きさで一応区分してるが80種以上存在し、定義もあいまい、
その中には絶滅危惧種もあれば、すでに充分な個体数に達している種もある。

・アメリカに長く住む日本人である著者と、日本に長く住むアメリカ人であるジェイ・アラバスターのちがい

・旧約聖書が生まれた厳しい世界では「神の姿に似せて作られた人間は、すべての動物を自由に殺して
食べたり利用していい。」とのお墨付きが必要だった。
「感謝」という気持ちが生まれてくるほど豊かな自然に恵まれていた日本とは異なる世界観

・ユダヤ人とギリシャ人の思想を統一したのがトマス・アクィナスで人間中心の世界観がカトリックで定着。

・2015年4月、世界動物園水族館協会WAZAが日本動物園水族館協会JAZAに突きつけた通告

・広西チワン族自治区にある玉林市(ユリン市)の犬肉祭
著者はできれば犬は食べて欲しくないと感じてしまった。

・クジラやイルカを大量に食べる太地町の人たちは、なぜ水俣病にならず健康で長寿なのか。
金属水銀 
無機水銀(硫化水銀)顔料・塗料・朱肉など、短期間で排出される
有機水銀
セレンとの関係

・CASアメリカにある化学物質の登録機関
20世紀初めには12000種ほど
1999年のNHK「世紀を越えて」の取材時には2000倍の2000万種になってた。
2015年6月には1億種目が登録されていた。
環境破壊の加害者は、もう水俣病のように特定することはできない。
加害者は先進国で電化製品に囲まれ大量のモノや食料を持て余して捨てながら暮らしている、
我々そのもの・・・

・テディベア 駆除すべき猛獣が愛すべき友達になった例

・鯨は生き物ではなく産業革命やアメリカを支えた産業資源だった。
1960年には日本が世界一の捕鯨国に
1964年から1967年まで「わんぱくフリッパー」TV放映
1971年、グリーンピースがアムチトカの核実験を阻止
1972年 商業捕鯨モラトリアム クジラが環境保護運動のシンボルに

・アメリカ広告業界にある「クライシスPR」という専門分野

・歴史も価値観も違う世界中の国を巻き込んで、国際社会がある特定の生き物だけを守ろうとすれば、
それは政治問題に発展し対立が起きかねない。

・肉を食べなければ、それで動物が救われるわけではない。

・太地町には移民の歴史があるので、以前は外国人に対してとてもオープンな町だった。

・現在の太地町の「森浦湾・鯨の海構想」

・EU離脱に投票した人たちやドナルド・トランプに投票した人たち
もし太地町で取材していなければ、彼らに怒りを感じ、その無知を嘆いたかもしれない。
世界の変化(グローバリズム)に戸惑い、自分たちがこれまで必死に守ってきた仕事や生活、
アイデンティティが脅かされている人々は、太地の漁師たちの不安と怒りに重なったから。

・私が太地での衝突で学んだことは「正義の反対は悪ではなく別の正義」だということだった。


などなど・・・


わたくしも著者にならい賛否についての思いはあえて書きませんが、著者も書いておられたとおり、
最近は捕鯨問題について報道されることが少ないので、とてもいい機会でした。

まあ・・・
日本人はクジラやイルカを家畜化して(養殖して)それだけを食べます。
みなさんが食用として家畜化したウシやブタやトリやヒツジは可哀想なので一切食べません。
つーのなら、世界に発信してもインパクトがある・・・とは思いますが・・・はてさて・・・



m98k at 23:23│Comments(8) このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック 書斎 | 沙漠緑化・熱帯雨林再生

この記事へのコメント

1. Posted by donchan   2018年07月05日 07:42
捕鯨問題ですね。難しく言えば、文化的差異に基づく価値観の差ですか。文化相対主義が主流の現在では、日本固有文化として(イヌイットのように)許容されるべきでしょうが、戦後から商業主義が強すぎた報いかもしれませんね。
この問題に対する当方の意見は簡単です。小学校時代の惨めな給食、そう、パサパサのコッペパン、脱脂粉乳、油の回った鯨カツの三点セットのトラウマゆえ、成人後鯨肉は、ほぼ口にしておりません。クジラ肉はいらん、のみの意見です。
例え、道頓堀の女将で有名な(だった?)「〇家」であろうと、です。
しかしながら、何事にも例外はあり、学生時代当時なけなしの1500円もの大枚を叩いて口にしたナガスクジラの尾の身の刺身は別品でした。上等の牛肉を越えたの口当たり、大トロ以上のあぶら身の芳醇さ、まさに筆舌に尽くしがたい。ジュルジュル。
朝から一杯やりたくなった。
98Kさんの意図とは違った独断と偏見の意見でした。
2. Posted by 川端   2018年07月05日 08:03
かつて神サマは人間が天空に至ろうと建設した巨大な塔を破壊するついでに言語をバラバラにし人々のコミュニケーションを妨げたのだとか。
グローバリゼーションとは、もしかするとある種の"バベルの塔"であるのかも知れませんね。

とか書いといてなんですが、

悲しいかな結局「流行(はやり)」なんでしょうね。捕鯨ネタは本当に聞かなくなりました。確かに。。。
3. Posted by donchan   2018年07月05日 08:39
ショウムナイ追伸
捕鯨と言えば、今のプロ野球のベイスターズの前身は、「大洋ホエールズ」で、親会社は捕鯨の大洋漁業でしたね。半世紀で捕鯨会社からIT企業へ親会社を見ても産業の変化がよくわかります。
因みに、東大野球部からプロ入りした第1号が、新治投手で、引退後農学部卒の経歴を生かし大洋漁業入社だったはず。ついでに、第2号が井手(井出)投手で、やはり引退後、親会社の某新聞社に入ったのではなかったか?
球団と契約したというより、親会社と契約したようなもの。
98Kさんの母校出身者は、某関西球団でバッティングコーチをして、貧打の責任者とファンから罵倒されとります😁。
京大第1号は、某総合商社を受け直しで就職とか。まぁ、どうでもいいですが😁
4. Posted by 98k   2018年07月05日 16:14
>donchanさん
そうですね、昔は貴重なタンパク源だった鯨肉も「今の日本では要らんやろ・・・」つーのが一般的な感覚なのかも知れませんね。
ま、他のジビエ料理と同様「年に一度ぐらいは有難くいただく。」のは自然への感謝を忘れないためにも必要と思ってますが・・・
で、我々世代は脱脂粉乳と鯨肉で栄養不良から脱したわけですから、トラウマなどと言わずに感謝しなければ・・・
とは言いつつ、ほんとに美味しい「生の鯨肉」は太地町などごく一部でしか味わえません。
13年前に(現在は某局某理事の)友人が熊野キャンプに差し入れてくれた新鮮な生肉が、今までで最高の味でした。
http://98k.dreamlog.jp/archives/51335393.html
5. Posted by 98k   2018年07月05日 16:28
>川端さん
グローバリゼーションが「ある種のバベルの塔」かも知れないつーのは、なるほどですねえ・・・
いろんな文化や民族を受け入れ理解しつつも「やはり我が町の暮らしとマンマの料理が一番」と言ってたトスカーナやシチリアの人たち・・・
や、がっちょと玉葱とだんじりで暮らす大阪ディープサウスの人たちが羨ましいです。
6. Posted by 98k   2018年07月05日 16:51
>donchanさん
シヨウムナイ追伸ありがとうございます。
スポーツ万能???のわたくしですが、野球の話題はさっぱりわからないのでスルーさせていただきますが・・・
そーいや、マルハブランドの大洋漁業は捕鯨、あけぼのブランドの日魯漁業は鮭やカニでしたが、今はマルハニチロ食品になってて、
どちらのブランドでも現在では鯨肉缶詰は作ってないようですね。
ま、「鯨の大和煮」缶詰より「牛肉の大和煮」缶詰の方がはるかにお安い時代ですからねえ・・・
(いただいたコメントはてきとーに修正・削除しておきます。)
7. Posted by donchan   2018年07月05日 20:46
あえて書かなかったですが、子供時代のささやかな望みが、死ぬまでに牛肉の大和煮を食べたいだった😭。
8. Posted by 98k   2018年07月05日 21:11
>donchanさん
それと馬肉や鶏肉の混ざっていないコンビーフやハンバーグとか・・・

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