ワールド・スケールモデラーNo.2!!!危機と人類(承前)

2020年09月01日

危機と人類・・・

「危機と人類」(上下巻)のご紹介、つーか個人的な読後メモであります。

上巻表紙

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下巻表紙

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上下巻の表紙絵を重ね合わせると下田沖に現れた黒船の浮世絵に・・・

「危機と人類」原題は「UPHEAVAL~Turning Points for Nations in Crisis~」
ジャレド・ダイアモンド著 小川敏子、川上純子=訳
日本経済新聞出版社 2019年10月25日初版第1刷発行。

著者の「銃・病原菌・鉄」を読んですっかり虜になり、最新刊も読みたくなって、
2月に図書館へ貸出予約してたのですが、感染症対策による臨時休館もあって先日ようやく
借りることができました。わたくしの後にも予約が入ってるようで大人気なんですね。


上巻の表紙裏にあった惹句であります。

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続いて下巻表紙裏の惹句。

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例によって目次のみ・・・

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プロローグにあった「本書の構成」によると、第1章では国家的危機の帰結にも影響する
個人的危機の12の要因について、第2章~第7章は二つの国で1セットの章が3セット・・・
・他国からの衝撃によって突然の大変動に発展した国セット
(1939年からのフィンランドと1853年からの日本)、
・政治的妥協の破綻という国内の激変によって
突然の大変動に発展した国セット
(1973年からのチリと1965年からのインドネシア)、
・突然の激変はなく危機がゆっくりと進展していった国セット
(第二次大戦後からのドイツとオーストラリア)、
そして第三部の四つの章では、現在進行中あるいは将来起きるであろう危機として
日本、アメリカ、世界の、それぞれの問題と待ち受けるものを論じておられます。

フィンランド、チリ、インドネシア、ドイツの各章についても、興味深く読みましたが、
キリがないので、まずは下巻の大部分を占めるアメリカと世界の章およびエピローグについて
わたくしの読後メモからの抜粋・・・(日本とオーストラリアについては次回記事で)


・アメリカの基本的問題

→二極化、投票率と有権者登録にともなう障害、格差の拡大と社会的流動性の衰退、
教育や公共目的への政府予算の減少
(これに対して良好な見通しを示す要因)
選択の自由、強いナショナル・アイデンティティ、柔軟性あふれる歴史を与えた地理的特徴
(阻害する要因)
合意が得られない(危機を迎えているという共通認識の欠如)、他国(特にカナダ)を手本にしない、

不安や失敗を許容するのに慣れていない(ベトナム戦争など)、他者(他国)を責める、
危機を認識した富裕層が国家としての問題解決より自己保身に投資している。
(ニュージーランドの不動産を購入、廃地下ミサイル倉庫の豪華個人用防空壕化など)

アメリカについては長いので以下省略して・・・


・世界全体の基本的問題
→核兵器の使用、世界的な気候変動、資源枯渇、生活水準における格差の拡大
(他にイスラム教原理主義、新種の伝染病、小惑星衝突、大規模生物学的絶滅などもあるが)

・世界の危機の枠組み
今回の七つの国家には国政を議論する場、過去の危機への対処事例、手本となる国、
友好国からの物質的支援やアドバイスがあったが、世界には支援を求められる惑星も
手本となる社会を持つ惑星もなく、共有するアイデンティティや基本的価値観もない。
→解決へのひとつは二国間あるいは多国間の協定で、これは5000年以上続く経験済みのルート
(イスラエルとレバノンの野鳥観察家による協定→画期的な合意達成の例)
→別のルートは地域内の国家間協定
(EU→数千年間ほとんど戦争に明け暮れていた国家間の協定、他にも病気撲滅の協定など)
→第三のルートは世界的協定→国際連合や特定の活動目的を持った世界組織の協定
→これらはEUの権力よりも弱く、国家の自国内での権力よりもはるかに弱いが、
多くの目標を達成している。
(天然痘撲滅、オゾン層保護、マルポール条約、国際海洋法条約、国際海底機構など)
・グローバル化は問題の原因になるだけでなく、問題の解決も促進する。
→原因の拡大が早いか、解決の促進が早いか、どちらも2005年以降は著しく加速しており
今(2019年)現在も明らかでないが、少なくとも結果が判明するまでの時間は減ってきている。


・エピローグ(教訓、疑問、そして展望)より
国家的危機にも影響を与えると仮定した12要因の、今回取り上げた七か国へのあてはめ

1危機に陥っていることを認める
→日本はアヘン戦争で西欧の脅威を知っていたが1853年のペリー来航まで改革議論はなく、
その後はすみやかに危機について意見一致したが、1868年の解決までに15年かかった。
→フィンランドは1930年代後半にはソ連の強大な軍隊の脅威について知っていたが、
やはり1939年に直接攻撃を受けるまでは深刻に受け止めていなかった。
→ただし、いったん攻撃を受けると一夜にして、全会一致で反撃を決めた。
→チリとインドネシアでは勝者が敗者の多くを殲滅することで危機が消滅した。
→オーストラリアとドイツは危機の拡大を長年否定、ゆっくりと民主主義的プロセスをたどり
政府の政策を変える国家的合意に達することで解決した。

2責任を受け入れる、被害者意識や自己憐憫、他者を責めることを避ける
→他者を責めるのを避けた事例はフィンランド(対ソ連→犠牲者として非難を続けず対話へ)と、
明治日本(対欧米→不平等条約で犠牲者として非難を続けず対抗できる実力醸成に集中)
→逆に責任は他国(イギリス)としていたのはオーストラリアで発展にマイナスだった
→責任否定が悲惨な結果になったのが第一次大戦後のドイツ
(政府のミスを否定し自己を犠牲者とみなした結果、ナチス支持からの厄災へ発展)
→責任の受容をめぐって対照的なのが第二次世界大戦後のドイツと日本
→どちらも戦争を始めた責任があり、ドイツでは連合国による一般市民の爆撃犠牲者や
ソ連兵によるレイプ犠牲者、領土喪失が多大であったが、自己憐憫にふけることなく、
ナチスの犯罪とドイツの責任についての教育が行われ、多くの犠牲者を出した国々とも
良好な関係を確立した。
→日本は戦争を始めた責任をアメリカの企みと否定し、その4年前から中国で宣戦布告なしに
大規模な戦争を始めていた事実も無視、中国や韓国での犯罪責任も否定し続ける一方で、
爆撃などの被害者としての立場ばかりに目を向けており、隣国との関係を害している。

3囲いをつくる、選択的変化
→六か国はすべて危機への対応として選択的変化を取り入れた。
→変化の受容と非受容で非常に示唆に富んでいるのは明治日本とフィンランド
→明治日本は西洋化し発展したがコピーではなく手を加えて基本的な側面は変えなかった。
→フィンランドは自由を幾分犠牲にしソ連との対話を続けて独立を維持、他の隣国より
自由な工業国に発展した。

4他国からの支援
正の側面の例→明治日本へ西洋から、チリやインドネシアの軍事政権、戦後日本とドイツへの
アメリカからの経済援助、オーストラリアへのイギリス次にアメリカの軍事防衛など、
負の側面の例→チリのアジェンデ政権へのアメリカの援助停止、ドイツ・ワイマール共和国への
イギリス・フランスからの莫大な戦争賠償金など、
正負両側面の例→オーストラリアへのイギリスの軍事防衛喪失とECC加盟による特恵関税廃止
(新しいナショナル・アイデンティティ追及に寄与)、フィンランドへの友好国の支援の欠如
(再び紛争が起きれば支援が期待できない→ソ連との関係を発展させるしかない認識へ)

5他国を手本として利用する
→明治日本は西洋モデルに手を加えて利用、戦後日本はアメリカ民主主義モデルに手を加え、
あるいは押し付けられて利用したが明治期ほどの規模ではない。
→手本のない例としてはソ連の要求を満たしつつ独立の維持にも成功したフィンランド
→手本としての西欧やカナダの民主主義から学ぶことはないと否定するアメリカの問題

6ナショナル・アイデンティティ
→フィンランドと日本は他国では使われていない独自の言語を持ち誇りにしている
→チリは他の中南米諸国と同じ言語を使いながら政治的安定性や民主主義の伝統において
異なっていることを逆説的にナショナル・アイデンティティにしている。
→軍事的成功→フィンランド、オーストラリア、アメリカ、イギリス
→文化→イタリアの芸術や料理や生活様式、イギリスの文学、ドイツの音楽
→歴史→イギリスとイタリアはかつて大国であった歴史
→歴史の浅いインドネシアを除けばナショナル・アイデンティティが危機の解決に寄与したが
今日のアメリカは集団ごとのアイデンティティの声は大きいが国家をまとめるアイデンティティ
の声は小さい。
→国家神話は事実と嘘のスペクトルをすべて取り込んでしまうもの
→事実として正確性があり政治目的に今も語られているもの
(イギリスのバトル・オブ・ブリテン、フィンランドの冬戦争など)
→語られる事実は正しいが他の重要な出来事を省略してしまっているもの
(アメリカの開拓史、インドネシアの独立史、オーストラリアの歴史など)
→ほぼ嘘に等しいもの
(第一次大戦の敗北原因についてのドイツの説明、南京大虐殺を否定する日本の説明など)
→いずれにせよナショナル・アイデンティティは国家神話によって政治目的のため利用され
国家にとって重要であり、神話が拠り所とする歴史はそれぞれで異なることは変わらない。

7公正な自己評価
→強力な指導者・独裁者の対照的な例
(ビスマルクとヴィルヘルム2世、ヒトラーとブラント、スカルノとスハルト)
→強力な指導者がなく公正な自己評価にもとづく国民的コンセンサスに至った国
(多くの官僚や民間人を欧米に派遣した明治日本、対ソ連の厳しい現実に正面から向き合った
フィンランド、イギリスの重要性が消滅しアジア・アメリカが重要になった現実を認めることで
世論の合意を得たオーストラリア)
→今日、公正な自己評価が欠如している日本とアメリカの問題

8過去の国家的危機の経験
→成功が自信を与えた日本、フィンランド、イギリス、アメリカ、インドネシア

9国家的失敗に対する忍耐
→明治日本、ドイツ、フィンランド、戦後日本の例
(日本へのペリー来航から西洋との最初の戦争に勝利するまで50年、ドイツの事実上の分断から
再統合まで
45年、フィンランドはソ連との戦争終結後、数十年にわたり対ソ政策を見直し続けた。
敗戦後の日本はアメリカ軍による占領、困難な再建、経済社会問題、自然災害を生き抜いた。
→これら四つの例はいずれも国内の不満はあったが、拙速な行動で墓穴を掘ることには抵抗した。
→アメリカは壊滅的な敗北や占領を経験していなかったので、朝鮮戦争での行き詰った休戦、
ベトナム戦争の敗北、アフガニスタンでの軍事的膠着に耐えるのは困難だった。
→今日のアメリカに必要なのは忍耐と妥協だが、いまだにそれらを発揮できていない。

10状況に応じた国としての柔軟性
→アイスランドの(デンマークの善意を拒否した)硬直性の理由(環境の脆弱性)
→柔軟性が状況に応じて発揮された明治日本、フィンランド、オーストラリア
→アメリカは個人も国家も柔軟だったが、この20年で政治はますます妥協を拒否している。

11国家の基本的価値観
→フィンランドのアイデンティティは言語、基本的価値観は独立
→ドイツのアイデンティティは言語と文化、ゲルマン系が共有する歴史
基本的価値観は公益事業(医療、文化芸術、森林保護など)への政府投資と重要な公益事業を
民間企業に任せないこと、公益を優先するための個人の権利の制限

12地政学的制約がないこと
→アメリカは制約がなく、明治日本、チリ、インドネシア、オーストラリアは比較的自由、
フィンランドとドイツはその逆で厳しい制約がある。
→この500年でつながりはグローバルになり軍事的脅威は世界中で海を渡って訪れるように
→現在では世界中どこでも海洋を越えてICBMで攻撃できるようになったが、地政学的な条件は
今でも国家の危機を左右している。

・危機は必要か?
→日本はペリー来航まで西欧の脅威を避けていたが明治以降は外的ショックを必要とせず、
むしろ更なる西洋からの圧力を想定して変化していった。
→フィンランドもソ連の意図を無視していたがソ連の更なる攻撃を必要とせず圧力を想定、
機先を制することを目的とする外交政策をとった。
→チリのアジェンデ政権は突発的な危機対応ではなく慢性的な二極化への対処をしていたが、
マルクス主義への転換を宣言すると、軍は危機とみなしクーデターを起こした。
→インドネシアでは両方のタイプの対処が選択された。
→戦後ドイツの各種共同体設立計画は危機を想定し阻止するために採用されたもの
→今日の日本は七つの問題に決定的な行動がとれていない。オーストラリアのような
ゆっくりとした変化で解決するか、突発的な危機によって大胆な行動をとるか?
→アメリカもアフガン侵攻・イラク侵攻を除けば決定的な行動をとれていない。
→ゆっくり進む問題より突然悪いことが起こる方が人々に行動を促す。
「二週間後に死刑になることが分かっていれば人は素晴らしい集中力を発揮するものだ」
(サミュエル・ジョンソン)

・歴史上の指導者の役割
→対照的なのはトーマス・カーライルとレフ・トルストイ、中間がマックス・ヴェーバー
→指導者が在任中に自然死すれば経済成果に影響を与えることは実証されている。
→暗殺計画の成功後の方が失敗後より国の政治制度の変化の可能性は高かった。
→指導者によって違いが生まれることもあるが(指導者と検証される影響の)タイプで左右される。
・本書で取り上げた指導者の役割(略)
・次のステップは?(略)

・将来のための教訓
→特定の国の歴史を理解すれば将来の行動を予測しやすい
→大国に脅かされる小国は常に気を配り別の選択肢を考慮し現実的に見極めるべき
→自国が危機の中にあると認識すること
→他国を責め被害者として引き籠るのではなく、変化する責任を受け入れること
→変化する特徴を見極めるために囲いを作り、変化に圧倒されてしまわないこと
→支援を求める他国を見出すこと
→忍耐力を発揮し解決策を続けていくつか試す必要も認識すること
→重視すべき基本的価値観と、もはや適切でないものを熟考すること
→公正な自国評価を行うこと
→これらの「あたりまえ」を無視しているケースがあまりにも多い
→今は歴史を学びやすいし指導者や政治家から過去の自著に影響を受けたといわれ喜んだ
→世界全体がグローバルな問題に直面しているが、過去数十年で対処する諸機関も発展した
→現在の国家や世界は対応策を求めて暗闇を手探りする必要はない
→過去にうまくいった変化、いかなかった変化を知っておくことが導き手になるから・・・

おそらく次回に続きます。→追記です。次回記事にアップしました。

m98k at 22:30│Comments(0) mixiチェック 書斎 

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