チームフラッシュ光・第2回企画会議???一筋縄・・・

2020年09月12日

いまこそ「小松左京」を読み直す

いまこそ「小松左京」を読み直す・・・

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宮崎哲弥著 NHK出版 2020年7月10日第1刷発行



表紙裏にあった惹句

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著者紹介

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例によって目次のみ・・・

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「はじめに」によると、本書は2019年7月にNHK Eテレで放送された「100分de名著
小松左京スペシャル」用テキストを大幅に改稿、書き下ろしの第2章を併せたものだそうです。

放送時には意識してませんでしたが、じつに詳細に小松作品を読み込んで研究しておられる、
仏教思想・政治哲学・サブカルチャーの評論家だったんですね。

番組放送直後の記事のコメント欄にも書きましたが、わたくし小松作品は中学時代から
読み耽っており、たまたま大学時代に小松氏の「現代史」の授業が文学部であって、
わたくしは他学部でしたが本来授業をサボって全講義を聴講、半年間の講義の最終日には
小松氏が学生時代に高橋和己氏や山崎正和氏らと通っていた居酒屋での(全額ご本人持ちの)
打ち上げにも参加、別の日には講義終了後に近くの喫茶店で、わたくしがSF研究会とは別に
所属していた史跡サークルとして、仏教や宇宙に関する学生たちの拙いインタビューにも、
快く応じていただきました。(こちらも喫茶店代は全額ご本人が・・・)

さらにわたくしの政治史ゼミの論文も小松作品からの受け売りが殆どでしたし、まさに
わたくしの青春時代つーか人格形成期に、最も大きな影響を与えてくれた作家・・・



最新刊ですし紹介されている作品は今一度その視点で読み返したいとも思いましたし、
とりあえず、わたくしが特に印象に残ったキーワードのみ備忘のため羅列・・・
(著者の見解、小松氏本人の言葉、その他からの引用など、ごっちゃにメモしてます)

第1章(地には平和を・戦争はなかった・ヤクトピアなど)より
・小松の「異常なほど情熱的な好奇心や向日性、あるいはエネルギッシュな行動力」は、
「ひたすら根にからまる翳の部分に、ひきこまれないためのあがき」のようにもみえる・・・

第2章(果てしなき流れの果に・神への長い道・彼方へ)より
(著者によると「宇宙構造探求系SF」に分類される作品群とのことですが、
書き下ろしで番組で紹介されてない部分も多かったですし、わたくしが最も影響を受けた
作品群なので、メモを書けばこの章だけで膨大な量になるし、いずれ、あらためて・・・)

第3章(日本沈没)より
・1973年にベストセラーになった時代背景(井上ひさし)
円の変動相場制への移行、石油危機、水銀・PCB(ポリ塩化ビフェニール)汚染魚の年で、
前二者は繁栄がカルタの城に過ぎなかったこと、後者は自然が必ず報復すること、
を日本人が思い知った年だった。
・ともかく先を読んでるのは間違いない
(プレートテクトニクス理論、新発売された「電卓」による沈下速度の計算など)
(日本はインターナショナルでもトランスナショナルでもなくサブナショナルがポスト国家)
→まるで1980年代以降のポストモダンの脱国家観
・文明論というより一種の仏教的諦観
・このデリケートな自然が、島が、破壊されなくなれば日本人というものはなくなる・・・

第4章(ゴルディアスの結び目、岬にてなど)より
・宇宙の本質をめぐる超神学論争
(釈迦がヒンズーの認識をバックに考えたのは宇宙=世界=生命=人間観)
(アーリア系の宗教は光と闇、善と悪の二元論で、一神教でも二元論的宇宙観)
・イベント・ホライゾン→(バイオハザードの)ポール・アンダーソン監督の1997年作品

第5章(虚無回廊、結晶星団、雨と風と夕映えの彼方に、など)より
・文学は科学さえも相対化する
星空の美しさと近代宇宙論の不思議な宇宙像
電子顕微鏡下の超現実的な美しさと生化学に対する知識
生産発展の驚異とそれを組織する演算素子の働き
これらに対する常識的理解を持たないものに・・・どうやって新しい世界像が語れるか、
と思っていたが・・・
・1995年の阪神淡路大震災
・心と、魂あるいは実存との違いは、自己の存在理由の自覚の有無?
・人工知能と人工実存の相違点
・「我思う」は「我あり」の恒久的な根拠にはなり得ないのでは・・・
・仏教は我(アートマン)も大我(ブラフマン)も実在を否定したが、
アートマン(個人原理)は実体として斥けられてもブラフマン(宇宙原理)の実体性は否定されない
・このダキニ師の反実存論が今後の(物語の)伏線になっている→未完のまま亡くなった
・一般自然言語
・イマジナリーは日本語と漢語では虚、無は虚と実のあいだの原点みたいなもの、
→無を挟んで虚と実が向かい合ってる・・・
・学生時代の桑原武夫の文学概論のレポート課題が「文学は人生に必要か」だった
→これに終生こだわりつつ文学と自分の作品に対峙していたのが高橋和己
→こんな難問を生涯手放すことなく探問し続けることになる無二の親友が小松左京
・救済のための文学を志すのは意味があるが、文学による救済はあり得ないという立場
→すると文学は一時の慰めだけど、それでいいじゃないかと・・・
・今ここにある苦しみを文学作品に置き換えるという理解
・でも人間は文学、物語をどうして編み出したのか
→何か人間性の大きな肯定が文学を志す者の基本的な心構えの中に要るだろう・・・

(世界と出会い直すためにーあとがきにかえてー)より
・たとえば「痛い」はある事態を記述し表出する行為と考えられているが、
それは錯覚で、事態の単なる報告ではなく何らかの対処を求める行為
・何かを意味する言明ではなく機能
・「痛み」の概念は生活において果たす固有の機能によって特徴づけられる
(ウィトゲンシュタイン・近内悠太「世界は贈与でできている」)
・小松SFでは疑うよすがもない事物がなくなってしまう
・生活を下支えしていた透明だったものを可視化させる
・(ウィルスや震災など)作品設定に近い事態が起こる都度、予言の書として話題になるが、
物語の表層の奥にある思想も(近内悠太のように)読み取って欲しいと思ってまとめた。
・それが氏への恩返し・・・


わたくし小松氏の書かれた「自伝」と「SF魂」は未読なので、読んでみていずれまた・・・



m98k at 00:25│Comments(7) mixiチェック 書斎 

この記事へのコメント

1. Posted by donchan   2020年09月12日 10:54
小松左京ですね。98Kさんがそんなに小松氏と深い関係(?)にあったとは………。流石に顔の(幅の)広い方ですね。
当方は、記事にもあった高橋和巳に凝っていた時期もあったので、学友でもあった小松の作品も読みましたが、主として初期の作品、
地には平和をとかゴエモンあたりのところで止まったので、印象としては、見かけ以上に陰影のある、もっと率直にいえばネクラなものでした。
特に中年の男の集団が、酔っ払って生意気な学生と乱闘になったが、気がつけば、その集団は若き日の自分達だったという小品が残っています。
今回の記事で、大きく変貌をし、雄大な構想の作品を知り、改めて最近にはいないタイプの作家だったと認識した次第。
いつもながら、勉強になりました。ありがとうございました😊
3. Posted by 98k   2020年09月12日 18:08
>donchanさん コメントありがとうございます。
本書では第1章になりますが、まさに野坂昭如氏らと同じ光景を中学生として見て銃後から廃墟へ、
それらの原体験を持つ作家で、著者によると、向日性などはその翳りの部分にひきこまれないためのあがきにもみえると。
>>中年の男の集団が・・・
そんな作品ありましたねえ、わたくしもタイトル思い出せませんが、確かに心の奥深くにある闇を抉るのも見事です。
わたくし中高生時代に「果てしなき流れの果てに」や「神への長い道」を読んで、全ては理解できないなりにも
気が遠くなるほど感動したのを覚えています。まさにセンス・オブ・ワンダー・・・
あらゆる分野に精通されてて作品の幅も広いですが、やはりわたくしには第2章、第4章、第5章で紹介されている作品群の影響が一番大きいですね。
ま、記事本文にリンクしたような紀行やルポ、桂米朝氏とやってたラジオ番組やバカ話も大好きでしたが・・・
4. Posted by Gomi   2020年09月12日 21:04
5 >>桂米朝氏とやってたラジオ番組
『題なし』ですね。引越し先後番組の京都放送のには何度かハガキを送ったのですが…一度も…( ノД`)シクシク…
のちに知り合った人達の何人かは元読上げ常連さん、そりゃあレベル高いわ(笑)

>>中年の男の集団が・・・
『哲学者の小径(フイロソフアーズ・レーン)』ですね。好きな短編です。
学生時代に何度も哲学の道近くで安酒を飲んでいたのですが残念ながらン年先の自分との遭遇という体験はありませんでした
5. Posted by 98k   2020年09月12日 22:32
>Gomiさん
ええ、題なしです。菊池美智子アナで・・・わたくしハガキは1回送っただけですが、なんと採用されました。
京都放送で後番組をやってたとは知りませんでしたが。
>>「哲学者の小径~フィロソファーズ・レーン~」
そうでした!!!返信コメントしてからタイトルがずっと気になってたので肩の荷が下りました。ありがとうございます。
ちなみに疎水沿いのお店といえば森見登美彦作品でも出てきたはずですが、やはりタイトルが思い出せない・・・
6. Posted by Yasshi   2020年09月15日 09:12
小松さんには良い思い出が無くて(苦笑)

SFショーだったかなぁ、舞台の上で駄々こね始めて、それが分かったのは司会進行ですぐ側にいた私だけで、なだめるのに苦労したこととか、
ロードランナーというファンダムゴシップ紙のライターをやっていた時に、SFフェスティバルで取材をお願いしたら、
間髪を入れずに不機嫌に断られたこととか(まぁあれは伊藤さんの結婚に関する事だったからなぁ)、息子さんのことは...まぁいいか。

SFMに載ったショートショートに?と思ったことがあって、周囲に「あれは...」と意見を求めたら、みんな口をつぐんだこととか。

好きな作家ではあるので、これ読もうかなぁ。

そうか、JちゃんSF研だったのかぁ~(とか言ってみる)
7. Posted by 98k   2020年09月15日 12:07
>Yasshiさん 辛辣なコメントありがとうございます。
そっかぁ・・・そちらはさらにお近くでお付き合いされてましたからねえ・・・
わたくしがナマでお話したのは「現代史」講義後の打ち上げや雑談、別の日のインタビューぐらいでしたが、
どの場面でもずっと上機嫌で付き合ってくれてましたよ。ここはやはり、人徳の違いかと・・・
ともあれ、本書は小松作品の奥にある思想からSF全般についても語られてるので一読の価値はあると思います。

ところであんた、どこのSF研やったかいな・・・関大にはいなかったはずやし・・・
8. Posted by Yasshi   2020年09月22日 09:19
♪~ <( ̄ε ̄;)>

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