2021年10月12日
戦争と農業
戦争と農業・・・
藤原辰史著 集英社インターナショナル新書15 2017年10月11日第1刷発行
例によって目次のみのご紹介
以下わたくしの読後メモからの抜き書きです。
・機械化→生産性の向上→分業と競争→作ることと使うことの分離
1
・20世紀の人口増加を支えた4つの技術(農業機械・化学肥料・農薬・品種改良)
→トラクター(1892~)が農民一人あたりの作業量を上げる
ただし牛馬と異なり肥料は作れず、土壌攪拌が強く、輪作より単一作物栽培、大規模区画
に向いてるので、農地の生産力(地力)を下げ、農村とは別の企業戦略による農業へ
→化学肥料(窒素・リン酸・カリウム)→農業機械とセットで同じ経緯
(レンゲなどマメ科植物の根粒菌や稲妻は空気中の窒素をアンモニアに変え土壌へ浸透させる)
膨大なエネルギー(電力)と資本を要する空中窒素固定法(1909~)で農業の仕組みが変わる
→農薬(1920~)→農業機械、化学肥料と同じ経緯へ
どれも農村外からで生産や使用には大量の環境破壊が必要だが農作業は楽になる
→品種改良とくに遺伝子組み換え技術は農業の特定ライセンス企業への依存へ
2
→第一次世界大戦は初めての銃後も含む総力戦→経済封鎖→欧州全体の食料不足
→アメリカ・キャタピラー社のトラクターから戦車の発想
→化学肥料(アンモニア)→硝酸→火薬
→毒ガス→戦後は大量に余りアメリカ綿花畑の農薬に
→ヨーロッパでは禁止、アフリカ・アジア・ユダヤ人への使用→害虫駆除の発想
→膨大な電力が要る植物工場と出力調整できない原発の関係
(もとは原子力潜水艦内でサラダを作るための原発メーカーGEの開発技術)
→軍事技術からのスピンオフからはもはや逃れようがないが・・・
3
・バッケ・プラン(飢餓計画)
・レニングラード封鎖
・アグリビジネスの南北問題
・スターリニズムを支えた階級的基盤と日本の軍国主義を支えた農本主義的基盤
→「国民を飢えさせない」を名目に基本的人権を制限する、国民の選別
・兵站→日本の戦死者のうち半数は餓死者
・1929年世界恐慌後のファシズム、2009年リーマン・ショック後のヘイトクライムの顕在化
→プロパガンダ、討議より行動、インパクト優先→化学肥料や農薬による農業体系と同じ
・政治の基本は牽引ではなく切り盛り(宰相の宰→料理を等分に切り分けること)
・ギリシャのアゴラ(輸入食料の配分討議の場)
・君主loadの語源(パンを守る人)
・即興的な話し合いと暴力による即効性の違い
→政治の場に即興性がないのにリーダーシップ(即効性)が求められる→議会の儀式化
4
・食べものの特徴は非耐久性(腐りやすい)、自然性(動植物の死骸の塊)、精神依存性
(信仰や家族愛などの気持ちが入り込みやすい)の3つだった
→いまや単なる「モノ」になりつつある
・BSE、鳥インフルエンザ、O157、異物混入・・・すべてフードシステムの問題
・穀物メジャー4社で小麦・大豆・サトウキビ取引の60~73%を占める
・朝日新聞によると世界で生産される食料の1/3にあたる13億トンが捨てられている
・農林水産省によると食品ゴミは家庭系と事業系あわせて1676万トン、うち632万トンは
まだ食べられるのに捨てられる「食品ロス」→世界食糧計画が支援した320万トンの2倍
・ファーストフード肉・大量生産される食品の背景にある過酷さ
5
・20世紀以降の戦争、政治、日常の食事の変質の根っこには、効率を重視した食の仕組みと
それを支える農業の仕組みがある
・食べることの範囲
→大規模な食品企業にとっては消費者の購入がゴール
→本来は生命の長い旅の一部に関わる行為で気の長い行為であり、自然の命を奪い食べて
排泄して自然に還す、生態系の一部を成す存在
→人は生き物の死骸が通過するチューブで、入るまでの世界と出てからの世界も範囲内
→食べることは世界に自分を育ててもらう現象
・食べることも排泄することも発酵食も農業もすべて微生物との共同作業
・北海道・山形・秋田などでは食料自給率が100%を超えている
6
・現代の農業・政治・軍事・教育は大量に作り、迅速に運び、即座に効く、という原則
・迅速・即効・決断の仕組みから遅効性が即効性に先立つ仕組みへ
などなど、農業史の専門家が素人にもわかりやすくまとめられた本でした。
ちなみに目次の最後のほうにある「働く暇を惜しんで食べる」つーのは、
わたくしの現役時代の座右の銘でもあり・・・(以下略)
藤原辰史著 集英社インターナショナル新書15 2017年10月11日第1刷発行
例によって目次のみのご紹介
以下わたくしの読後メモからの抜き書きです。
・機械化→生産性の向上→分業と競争→作ることと使うことの分離
1
・20世紀の人口増加を支えた4つの技術(農業機械・化学肥料・農薬・品種改良)
→トラクター(1892~)が農民一人あたりの作業量を上げる
ただし牛馬と異なり肥料は作れず、土壌攪拌が強く、輪作より単一作物栽培、大規模区画
に向いてるので、農地の生産力(地力)を下げ、農村とは別の企業戦略による農業へ
→化学肥料(窒素・リン酸・カリウム)→農業機械とセットで同じ経緯
(レンゲなどマメ科植物の根粒菌や稲妻は空気中の窒素をアンモニアに変え土壌へ浸透させる)
膨大なエネルギー(電力)と資本を要する空中窒素固定法(1909~)で農業の仕組みが変わる
→農薬(1920~)→農業機械、化学肥料と同じ経緯へ
どれも農村外からで生産や使用には大量の環境破壊が必要だが農作業は楽になる
→品種改良とくに遺伝子組み換え技術は農業の特定ライセンス企業への依存へ
2
→第一次世界大戦は初めての銃後も含む総力戦→経済封鎖→欧州全体の食料不足
→アメリカ・キャタピラー社のトラクターから戦車の発想
→化学肥料(アンモニア)→硝酸→火薬
→毒ガス→戦後は大量に余りアメリカ綿花畑の農薬に
→ヨーロッパでは禁止、アフリカ・アジア・ユダヤ人への使用→害虫駆除の発想
→膨大な電力が要る植物工場と出力調整できない原発の関係
(もとは原子力潜水艦内でサラダを作るための原発メーカーGEの開発技術)
→軍事技術からのスピンオフからはもはや逃れようがないが・・・
3
・バッケ・プラン(飢餓計画)
・レニングラード封鎖
・アグリビジネスの南北問題
・スターリニズムを支えた階級的基盤と日本の軍国主義を支えた農本主義的基盤
→「国民を飢えさせない」を名目に基本的人権を制限する、国民の選別
・兵站→日本の戦死者のうち半数は餓死者
・1929年世界恐慌後のファシズム、2009年リーマン・ショック後のヘイトクライムの顕在化
→プロパガンダ、討議より行動、インパクト優先→化学肥料や農薬による農業体系と同じ
・政治の基本は牽引ではなく切り盛り(宰相の宰→料理を等分に切り分けること)
・ギリシャのアゴラ(輸入食料の配分討議の場)
・君主loadの語源(パンを守る人)
・即興的な話し合いと暴力による即効性の違い
→政治の場に即興性がないのにリーダーシップ(即効性)が求められる→議会の儀式化
4
・食べものの特徴は非耐久性(腐りやすい)、自然性(動植物の死骸の塊)、精神依存性
(信仰や家族愛などの気持ちが入り込みやすい)の3つだった
→いまや単なる「モノ」になりつつある
・BSE、鳥インフルエンザ、O157、異物混入・・・すべてフードシステムの問題
・穀物メジャー4社で小麦・大豆・サトウキビ取引の60~73%を占める
・朝日新聞によると世界で生産される食料の1/3にあたる13億トンが捨てられている
・農林水産省によると食品ゴミは家庭系と事業系あわせて1676万トン、うち632万トンは
まだ食べられるのに捨てられる「食品ロス」→世界食糧計画が支援した320万トンの2倍
・ファーストフード肉・大量生産される食品の背景にある過酷さ
5
・20世紀以降の戦争、政治、日常の食事の変質の根っこには、効率を重視した食の仕組みと
それを支える農業の仕組みがある
・食べることの範囲
→大規模な食品企業にとっては消費者の購入がゴール
→本来は生命の長い旅の一部に関わる行為で気の長い行為であり、自然の命を奪い食べて
排泄して自然に還す、生態系の一部を成す存在
→人は生き物の死骸が通過するチューブで、入るまでの世界と出てからの世界も範囲内
→食べることは世界に自分を育ててもらう現象
・食べることも排泄することも発酵食も農業もすべて微生物との共同作業
・北海道・山形・秋田などでは食料自給率が100%を超えている
6
・現代の農業・政治・軍事・教育は大量に作り、迅速に運び、即座に効く、という原則
・迅速・即効・決断の仕組みから遅効性が即効性に先立つ仕組みへ
などなど、農業史の専門家が素人にもわかりやすくまとめられた本でした。
ちなみに目次の最後のほうにある「働く暇を惜しんで食べる」つーのは、
わたくしの現役時代の座右の銘でもあり・・・(以下略)