2022年03月19日
安いニッポン・・・
安いニッポン~「価格」が示す停滞~
![P3130890](https://livedoor.blogimg.jp/m98k/imgs/d/c/dc0814cb-s.jpg)
中藤 玲著 日経プレミアシリーズ453 2021年3月8日第1刷発行
裏表紙にあった惹句であります
![P3130891](https://livedoor.blogimg.jp/m98k/imgs/5/3/5301a919-s.jpg)
著者紹介
![P3130898](https://livedoor.blogimg.jp/m98k/imgs/f/8/f8611fa1-s.jpg)
そう、記者である著者が日経新聞やその電子版に掲載した記事をベースに、
書き下ろされた本であります
例によって目次のご紹介・・・
![P3130893](https://livedoor.blogimg.jp/m98k/imgs/9/9/99bf122d-s.jpg)
![P3130894](https://livedoor.blogimg.jp/m98k/imgs/b/d/bdd93ca4-s.jpg)
![P3130895](https://livedoor.blogimg.jp/m98k/imgs/4/4/44fe4856-s.jpg)
![P3130896](https://livedoor.blogimg.jp/m98k/imgs/5/e/5e392ceb-s.jpg)
日本の物価と給与がいかに安いか、その実態から原因や問題点、解決策などを現地取材や
インタビューから探ろうとした本で、経済の素人にも分かりやすかったです。
以下、わたくしの読後メモより部分抜粋・・・
(勘違いも読み飛ばしもありますので少しでも興味を持たれた方は本書の熟読を、
ちなみに価格や為替レートなどの時点は省略しています)
第1章より
・ダイソー100円商品の海外と日本の価格差
①物流費②人件費や賃料などの現地経費③関税や検査費により各国で価格が異なるが、
台湾180・アメリカ160・ニュージーランド270・タイ210・フィリピン190・中国160・・・
・20年前なら新興国で200円は高額で売れなかったが今は人件費・賃料・物価・所得が向上
→日本では40年以上ずっと100円→これは異常事態
・くら寿司
100円皿がアメリカでは270~310
→米や魚などの原材料は日本より安いのに人件費と家賃が桁違いに高いから
・イギリス・エコノミストのビッグマック指数
→日本では390円、アメリカでは5.66ドル
→円とドルが同じ価値なら為替レートは1ドル68.90円のはずだが、実際は104円前後で推移
→円は約34%過小評価されている→為替では説明できない長期デフレによるもの
・モノやサービスが海外に較べて高いか安いかは国内物価・海外物価・名目為替レートで決まる
→2000年2末も2020年2末も為替レートは1ドル110円だった
→物価水準はこの20年間で、日本は変わらずアメリカは5割増→インバウンド増加
→円安ではなくデフレ→インフレに抵抗があるのは所得が上がらないから
→これらの要因をカバーした概念が実質実効為替レート→円の購買力
→25年間で5割減、20年間でも4割減
・一人あたり名目国内総生産(GDP)
→1990-2019で日本は2.2倍、アメリカは2.7倍、タイは4.5倍に
→日本の購買力はアメリカの7割以下に
・スーパーも販促費と人手のかかる特売からEDLP、PBへ→消費者の根強い低価格志向から
・ガリガリ君の値上げCMがニューヨーク・タイムスの一面で話題になった
→日本では25年ぶりの10円値上げがニュースになっていると・・・
・スタバやヒルトンやディズニーやアマゾンプライムなどグローバルの中で日本では
安いモノやサービスでも、多くの日本人は高いと感じている
・一方で生活に密着したモノやサービスは安いと感じている
→安さやデフレを歓迎する理由の多くは給料が低いから
(インタビューより)
・日本が値上げできない理由の一つは解雇規制
→20年間旋盤を回し続けた労働者に介護の仕事はできない→日本文化の理屈
→学習し直して必要とされる仕事に就いた方が労働者も幸せ→アメリカの考え方
(これについてはマイケル・サンデルが著書で説明してましたね)
・二つ目は同質競争気質
→日本は戦後ずっと、生き残るには価格競争しかないという状況
(欧米企業はオンリーワン、付加価値で勝負)
→系列でひと揃いの産業を持つ傾向から
→企業グループの数だけプレーヤーが存在するので過当競争の値下げ合戦に(許斐潤)
・ターゲットを物価2%上昇から賃金3%上昇にすり替えて強調すればいい(渡辺努)
・アフターコロナ時代はもっと低価格指向が強まるのでは
→医療費の値上げで景気が崩壊し格差が拡がり、もっとデフレになるので基幹は価格戦略
→安さは生産者のためにならないとよくいわれるが、コストを省いて安さを提供するのが
サービス業の原点(田中邦彦)
第2章より
・サンフランシスコの低所得水準は毎年1万ドルずつ上昇しており2020年で1400万円を超えた
・東京トップの港区の平均所得は1217万円でサンフランシスコでは低所得に分類される
家賃、食事、アマゾンプライム・・・すべて日本よりはるかに高い
・日本の実質賃金が最高だった1997年を100として比較すると2019年現在、日本は90.6で、
アメリカは118、イギリスは127、平均賃金をドルを基準とした購買力平価で国際比較すると
日本の賃金はアメリカや西欧各国、韓国、イタリア、スペインよりも低い。
・日本の労働生産性はG7中で最下位、OECD37ヶ国中で21位、理由は価格付けの安さ
・パイが増えない中での外資との人材争奪戦で若手を確保するのに中高年の賃金を抑える
→一方で内部留保にあたる利益剰余金の増大と人件費の横ばい、黒字リストラ・・・
→ところが大卒1年目の基本給で見ても日本は韓国シンガポールより低く、30代のIT人材で
見ればアメリカの半分以下、アメリカでは全世代で1000万円を超えてるのに、日本では
年功序列の最も高い50代でも750万円、海外のIT人材を取り込みたくても給与の壁がある。
→世界が欲しがるインド工科大学のIT人材→世界標準を払えない日本企業には狭き門
・労働組合の組織率は戦後50%を超えたが2020年には17.1%まで低下、女性は12.8%、
パートタイムは8.7%、99人以下企業だと0.9%、全雇用者の4割が非正規
→集団的な労使交渉以外の個別交渉メカニズムが日本にないのが賃金が上がらない理由?
→転職で年収がアップしないのは日本だけ→能力を市場価格ではなく前職水準で評価
→雇用契約時の個別の賃金交渉がない→宅配クライシスの例
・職務を明確にし勤務時間ではなく能力や成果で評価するジョブ型雇用
→年功序列や年次主義が残る日本企業では転職市場で不利なまま
→フェアで透明性の高い人事制度になれば物価が安く安全な日本で働くことが魅力的になる
→ただし契約が細かいのでグローバルに展開し抱えたい人材が明確な大企業向き
・従業員の役割を明確にして日々のマネジメントで評価と処遇を連動させるロール型雇用
→個人の自立性や生産性を高めたい企業や中小企業向きで、日本型雇用とのハイブリッド
・人生で成功するために重要なものは何か
→世界共通のトップは「一生懸命に働く」
→次いで世界では「変化を喜んで受け入れる」や「人脈」などが続くが、日本では「運」
→日本の労働者は配属もキャリアも、すべて会社や外的要因に任せている・・・
・日本は給与よりやりがいを重要視する文化だといわれるが・・・
→英独仏日4ヶ国で日本は賃金給与への満足度も余暇レジャー生活全般への満足度も最低
→つまりお金の豊かさも精神的な豊かさもない
→賃金が低いと個人は幸せになれず、やがて企業も行き詰まる
→物価上昇分の賃上げだけでなくスキルアップに対する正当な昇格・昇給も必要
(インタビュー)
・賃金の相場データが流通していないから個人が寝たまま起きない
→様々な人が働くようになると事情も環境も個別で異なるようになる
→個別交渉の仕組みを社会全体で共有して適用しなければならない
→企業にとっては最適分配にシフトすることが重要(中村天江)
・日本が人材獲得で負けているのは給与の安さと業務内容や勤務先を会社に委ねる日本式の
メンバーシップ型雇用
→その中で貢献すれば(大企業では)終身雇用を前提に、たとえ給与ベースは低くても、
見えない福利厚生が「ゆりかごから墓場まで」提供されていた
→夫が工場で働き妻が家庭を支え家族ぐるみで会社に貢献する→システム化された人種差別
→その前提が消えると自分の市場価値を高め続けることが重要
→自分のキャリアは自分にしか作れず、海外では転職する気がない時でも社外情報を収集し
常に自分の市場価値に向き合うのが一般的
→自分も職務経歴書をアップデートすることが習慣になっている(村上臣)
・賃金の低い理由のひとつは非正規雇用の拡大
→労働市場のメカニズムが機能していれば「不安定だから高い賃金を払え」になるはずだが
条件が悪いまま増え続け賃金が下がった
・賃上げは国民経済の大きな要素で交渉結果の集積ではなく政府・労働者団体・使用者団体の
3者の考え方を合わせることが重要
→フランスの組合組織率は7%と低いが労働協約は9割以上の労働者に拡張適用される
・雇用のセーフティネットは不可欠で、職業教育や就労支援を通じて、やりたい仕事と
必要とされている仕事をマッチングする制度を政府として進めるべき(神津里季生)
第3章より
・2019年11月のニセコ取材
→インド人が経営するインド料理店の家賃は月40万、冬だけの営業だがすぐにテナントが
埋まるので、年間を通して家賃を払っている
→物件の所有者はオーストラリア人で向かいの物件の所有者は香港人
→店員の住む1K部屋の家賃は6万で札幌市中央区の相場4.3万より高い
→住宅地の地価上昇率は4年連続トップで2019年は66.7%
→スキー場やホテルの経営は西武からアメリカ企業そしてマレーシア企業へ
→5大スキー場のうち3つは海外企業の運営、リッツカールトンのパークハイアットも・・・
→1軒10億のペントハウス群を開発しているのはシンガポール企業
(日本企業では富裕層にコネクションがなく売り切れない)
→ホテルのバーで日本人従業員に高級シャンパンを頼んでるのは東南アジアからの富裕層
→長野県白馬村も沖縄県宮古島も同じ状況→バブル期の東南アジアでの日本人と同じ
→まさに「安くないニッポン」だが世界のリゾートからみると土地も家賃も圧倒的に安い
→なのでコロナ後に備えて外貨マネーは活発に投資を続けている
→地元の固定資産税は増えたが地元民の生活を圧迫している(居酒屋のラーメンが3000円)
・安いと企業や技術も買われる
→狙われるのは技術はあるのに経営難や後継者不足で廃業寸前の中小企業
→日本の大手は興味を示さない→海外資本が安く買える
→中国や台湾などアジア資本の買収で持ち直した企業も多い
→日本のピラミッド型サプライチェーンの下請けでは良い製品を安く買いたたかれ続け
海外展開もできずジリ貧になるだけ
→中国企業に買われグローバルな販路で息を吹き返した企業も多い
→大企業は中小企業を抱え込むだけでなく海外進出に協力しサプライチェーンを維持する
方策が求められる
・安いと人材も買われる
→中国のアニメブーム→海外ネットコンテンツの流通規制→日本品質の内製化
→日本の制作会社を傘下にアニメを自前で制作→独占配信する
→日本人アニメーターの年収は3倍まで出せフレックス勤務で住宅手当や交通費も支給
→背景にあるのは日本人アニメーターの給与の安さ
→中国の求人サイトではアニメーターの月収平均が45万~52万、日本では年収平均が440万、
中国では高収入職なので美術大学でデッサンを学んだアニメーターが多い
→日本は製作委員会式で各社の立場も異なり予算ありき、中国アメリカの制作会社の交渉相手は
1社のみで質と作品ありき、なので予算も潤沢
→日本のアニメーターは生活できず勉強する時間もなくトップ以外のスタジオは質も低下
→人材育成や設備投資による生産性の向上には安定した収入の確保と還元の仕組みが必要
・アマゾンやネットフリックスなどの海外勢も日本のクリエーターを囲む
→ネットフリックスのコンテンツ費用はNHK年間製作費の5倍
→日本でアニメーター育成を始め卒業後はネットフリックス独自アニメ製作という丸抱え
→日本のコンテンツやエンターテイメントの生産性を高めるには劣悪な労働環境の見直し
・2021年1月の埼玉県川口市芝園団地取材
→2020年まで外国人住民は増え続けたが、日本がいつまでも優位な買い手市場とは限らない
→今では自分の国の企業のほうが自分が勤める日本の企業より報酬が高いとの話もあった
→自分の世代は日本で働くが、子供には日本より給与の高い自分の国で働いて欲しい
→これからも「選ばれる国」になるためには、受け入れ体制や環境の整備が欠かせない
第4章より
・インバウンドの恩恵を最初に受けたのは家電量販店や百貨店
→爆買いは円安や高品質とかではなく、まさに購買力の移り変わりだった
→その後の感染拡大で消失→地方や関連企業の経営危機
→円安バブルや叩き売りではなく富裕層向けの宿泊税やサービス提供も
・英国デイリーメールの「イギリスの観光客にとって最も安い場所10」(8項目比較)
→合計費用で日本・東京はブルガリア・サニービーチ、トルコ・マルマリスに次いで3位
→しかも長距離では最も安く、インドネシア・バリ、ベトナム・ホイアンより安い
→東京以外は欧米からの観光客が多く、それなりの価格設定になっている可能性が高い
→つまり、東京はそうなっていない
・インバウンドバブルによるホテルの二重価格
→同じ条件の五つ星ホテルがロンドンでは17万円、東京では7万円
→それでも収入の少ない日本人には高くて外国人向け(近くのアパホテルは5640円)
・供給過多で値崩れする京都のホテル
→市内のホテル不足から2015年3月には29189室だったのを2020年3月に53471室と1.8倍に
→増加そのものではなく価格帯など似たような施設が同時にできたのが値崩れの原因
→ゲストハウスや民宿の廃業も
→付加価値を高めて軌道修正しなければニッポンの価格はさらに安くなる
・携帯料金
→所得が増えないデフレ傾向の中のIT化でデータ容量が増え、負担が重くなった
→長らく3社寡占が続いていた
→格安の価格優位性が奪われ、今は生き残りをかけた消耗戦に突入した
→「格安スマホによって市場競争が生まれ大手のサービス向上や値下げにつなげる」という
従来のシナリオが崩れかねない
→品質にあった適正価格も必要で値下げで設備投資ができないと通信インフラが後退する
→価格だけでなく通信産業のあり方を抜本的に考える時期
・水産物の買い負け
→欧米やアジアでの健康志向、中間層の所得が増えた新興国での需要の高まり
→日本では減り続けている
→海外では高くても食べようとするが日本では安くなければ買ってもらえない
→国際相場では買い付けられなくなっている
→サーモン、ロブスター、タコ→これ以上世界で普及すれば日本には入らなくなる
→感染拡大で世界的に値下がりしたが、それでも日本人には手が出せない
・安いことによる弊害
→賃金が安くても物価が安ければいいのでは・・・
→安さと貧乏は必ずしもイコールではないが・・・
①個人として
→国際的な一物一価の高級品は高くて買えなくなる
→滞在費や旅費が高いので海外旅行に行けなくなる
→外国人は日本を安く楽しめるが自分たちは余裕をもって彼らの国に行けない
②人材や企業の流出
→英語ができて能力の高い日本人や企業は、より高い報酬を求めて海外へ
③人材が育たなくなる
→若者が成長したくても学費の高い海外の大学には行けず、英語ができず能力の低い人は
外国人に安い給料で雇われる職種にしか就けなくなる
④その結果、国際的に活躍できる人材は少なくなる
→日本企業のトップは外国人になり日本人は一般労働者となって所得は海外に流出、
→さらに貧しくなり海外援助も自衛隊装備も貧弱になる→日本の成長力はそがれる
・コロナ後は
→需要の抑制面での冷え込みとサプライチェーン分断による供給面での下落
→需要減による物価下落は世界も同様なので相対的に日本の安さは変わらない
→モノは生産を国内回帰する動きがあり、そんなモノは少し上がるがサービスは下落する?
→海外はインフレでカネの価値が下がりやすく、日本は物価が上がりにくいので、カネの価値が
下がりにくい→交換比率や為替レートで円高になりやすく、生産拠点の空洞化につながる
・ネットフリックスなどデジタル関連を皮切りに世界標準の価格メカニズムが日本にも
→ぬるま湯は心地よかったがグローバル価格に付いていけなければ海外にも行けなくなる
・安いニッポンから脱却する提言は様々だが、現場でもう一歩踏み出せるかどうか
→日本の常識は世界の常識ではない・・・
(インタビューより)
・日本はデフレで安いモノしか買ってもらえない
→購買力を上げるには所得を上げるしかない
→環境意識が低いため完全養殖などの付加価値を認めてもらえず値上げにつながりにくい
→冷凍食品の需要は伸びてるのにスーパーではずっと安売りされていた
→感染拡大の巣籠で需要がさらに伸びスーパー来店制限で値引きも少なく単価が上がった
→消費者に認めてもらう商品を出し、しかるべき価格で販売できるのが理想的(池見賢)
・企業が生産性の高い若者の所得を引き上げ終身雇用や年功序列を改め価格設定も柔軟に変更、
消費者も質の高いモノやサービスにはきちんと対価を払う(伊藤隆敏)
・政府のインフラ投資、税制改正、職業訓練・・・財政規律が厳しすぎる
→企業は収益を最大化する価格設定
→消費者は支出の切り詰めから収入を増やす努力にシフト
→社会主義新興国の市場経済への参入→安い労働力
→デジタル化もあり物価や金利が上がりにくい→国内の格差拡大で富が集中
→富の集中は消費につながらず物価が上がらないので金利も上がりにくく引き締めしにくい
→株や証券にカネが集中する
→労働所得より投資所得のほうが増えやすくなる
→グローバル化前は働けば成長の恩恵を受けたが今は成長に見合った労働所得は得にくい
→投資をうまくやっていくことも必要になる(永濱利廣)
・賃金が安いのは日本だけ労働生産性が停滞してるから
→生産性の高かった製造業の海外流出で生産性の低い農業やサービスの比率が高くなった
→製造業もコストの高い工場を国内に残すとグローバルバリューチェーンに乗り遅れる
→初期コストはかかっても情報化への投資で生産性を高める
→高度成長期に得意だった生産性の高い分野への雇用の流動化
(今は過剰労働力が中小企業に滞留→保護制度の見直しや解雇の金銭解決制度)
→農業、医療、教育、法務部門などへの規制撤廃と企業参入、流動的な労働市場(八代尚宏)
・日本の低成長の理由は・・・
①企業が儲かっても人的資産投資、無形資産投資をせず、お金を貯め込んできたこと
②コストカットのため非正規社員を増やしたこと
→従業員能力開発費用のGDPに占める割合は日本が突出して低く、非正規だけでなく正規社員の
生産性も上がらず賃金も低迷してきた
→IT投資も先進国では日本だけが2000年から増えていない
→非正規は消費性向が高いが賃金が低く消費が低迷、企業は安さで勝負するしかなかった
→調整弁であることが分かっていたので消費せず貯蓄した
→コロナでも正規は守ったが非正規は悪化した
→4割を占める非正規への失業手当、職業訓練などセーフティネットが必要
→良いモノが安いニッポン→消費者余剰が大きくなり経済厚生が高いがGDPには反映されない
→企業利益が出ず賃金が上がらず税金財源も確保できない→バランスが重要
・2000年以降、厚生年金改革や後期高齢者医療改革などで社会保険料を引き上げてきた
→企業負担は重くなり、さらに非正規雇用に
→高齢化で膨張する社会保障の財源を増税ではなく現役世代の社会保険料を引き上げた
→最も取りやすいが事実上の労働課税であり消費が低迷するのは当然
・安いニッポンから脱するために・・・
→アベノミクスでは消費増税と法人税減税
→この組み合わせは労働所得への課税強化→格差の時代には資本課税へ
→消費増税と社会保険料(労働課税)引き下げのセットなら事実上の資本課税になる
(社会保険料の引き下げは所得の高くない人への恩恵が大きく、企業が輸出する際の
消費税は還付対象なので競争力には影響しない)
→苦しい現役の社会保障負担を、ゆとりある高齢者からの消費税負担に
→企業はコストカットではなく生産性を高める投資、個人もワークライフバランスを考え
スキルアップに注力、高校や大学でのスキル取得につながる教育の提供も必要(河野龍太郎)
・あとがきより
→筆者も含めたバブル期を知らない世代には、30年間も賃金や価格が足踏みし続けて、
世界での競争力を失った日本が当たり前になりつつある
→取材で度々出会うのが、海外拠点で部下が現地競合社に引き抜かれても「うちはそんな
給与は出せないから、おめでとうと言うしかなかった」と苦笑する経営者や幹部・・・
→これは原資の大小だけでなく改革できなかった人事制度の問題でもある
→元社員が他社から出戻った際に、その他社に応じて給与を上げると社員から不満が出るため
出戻り禁止にしているという企業も複数あった
→東京都の2人以上勤労世帯中間層の可処分所得から、食費や住宅費、通勤がなければできた
機会費用などを差し引いた娯楽などに使える残った金額は、全都道府県で最下位だった
→つまり東京都の中間層世帯は全国で最も豊かではないと言える
→感染拡大後は多くのサービス需要が喪失、価格は下落傾向にある
→大きな転換点になるかも知れない今、本書が誰かの気付きになってもらえれば・・・
![P3130890](https://livedoor.blogimg.jp/m98k/imgs/d/c/dc0814cb-s.jpg)
中藤 玲著 日経プレミアシリーズ453 2021年3月8日第1刷発行
裏表紙にあった惹句であります
![P3130891](https://livedoor.blogimg.jp/m98k/imgs/5/3/5301a919-s.jpg)
著者紹介
![P3130898](https://livedoor.blogimg.jp/m98k/imgs/f/8/f8611fa1-s.jpg)
そう、記者である著者が日経新聞やその電子版に掲載した記事をベースに、
書き下ろされた本であります
例によって目次のご紹介・・・
![P3130893](https://livedoor.blogimg.jp/m98k/imgs/9/9/99bf122d-s.jpg)
![P3130894](https://livedoor.blogimg.jp/m98k/imgs/b/d/bdd93ca4-s.jpg)
![P3130895](https://livedoor.blogimg.jp/m98k/imgs/4/4/44fe4856-s.jpg)
![P3130896](https://livedoor.blogimg.jp/m98k/imgs/5/e/5e392ceb-s.jpg)
日本の物価と給与がいかに安いか、その実態から原因や問題点、解決策などを現地取材や
インタビューから探ろうとした本で、経済の素人にも分かりやすかったです。
以下、わたくしの読後メモより部分抜粋・・・
(勘違いも読み飛ばしもありますので少しでも興味を持たれた方は本書の熟読を、
ちなみに価格や為替レートなどの時点は省略しています)
第1章より
・ダイソー100円商品の海外と日本の価格差
①物流費②人件費や賃料などの現地経費③関税や検査費により各国で価格が異なるが、
台湾180・アメリカ160・ニュージーランド270・タイ210・フィリピン190・中国160・・・
・20年前なら新興国で200円は高額で売れなかったが今は人件費・賃料・物価・所得が向上
→日本では40年以上ずっと100円→これは異常事態
・くら寿司
100円皿がアメリカでは270~310
→米や魚などの原材料は日本より安いのに人件費と家賃が桁違いに高いから
・イギリス・エコノミストのビッグマック指数
→日本では390円、アメリカでは5.66ドル
→円とドルが同じ価値なら為替レートは1ドル68.90円のはずだが、実際は104円前後で推移
→円は約34%過小評価されている→為替では説明できない長期デフレによるもの
・モノやサービスが海外に較べて高いか安いかは国内物価・海外物価・名目為替レートで決まる
→2000年2末も2020年2末も為替レートは1ドル110円だった
→物価水準はこの20年間で、日本は変わらずアメリカは5割増→インバウンド増加
→円安ではなくデフレ→インフレに抵抗があるのは所得が上がらないから
→これらの要因をカバーした概念が実質実効為替レート→円の購買力
→25年間で5割減、20年間でも4割減
・一人あたり名目国内総生産(GDP)
→1990-2019で日本は2.2倍、アメリカは2.7倍、タイは4.5倍に
→日本の購買力はアメリカの7割以下に
・スーパーも販促費と人手のかかる特売からEDLP、PBへ→消費者の根強い低価格志向から
・ガリガリ君の値上げCMがニューヨーク・タイムスの一面で話題になった
→日本では25年ぶりの10円値上げがニュースになっていると・・・
・スタバやヒルトンやディズニーやアマゾンプライムなどグローバルの中で日本では
安いモノやサービスでも、多くの日本人は高いと感じている
・一方で生活に密着したモノやサービスは安いと感じている
→安さやデフレを歓迎する理由の多くは給料が低いから
(インタビューより)
・日本が値上げできない理由の一つは解雇規制
→20年間旋盤を回し続けた労働者に介護の仕事はできない→日本文化の理屈
→学習し直して必要とされる仕事に就いた方が労働者も幸せ→アメリカの考え方
(これについてはマイケル・サンデルが著書で説明してましたね)
・二つ目は同質競争気質
→日本は戦後ずっと、生き残るには価格競争しかないという状況
(欧米企業はオンリーワン、付加価値で勝負)
→系列でひと揃いの産業を持つ傾向から
→企業グループの数だけプレーヤーが存在するので過当競争の値下げ合戦に(許斐潤)
・ターゲットを物価2%上昇から賃金3%上昇にすり替えて強調すればいい(渡辺努)
・アフターコロナ時代はもっと低価格指向が強まるのでは
→医療費の値上げで景気が崩壊し格差が拡がり、もっとデフレになるので基幹は価格戦略
→安さは生産者のためにならないとよくいわれるが、コストを省いて安さを提供するのが
サービス業の原点(田中邦彦)
第2章より
・サンフランシスコの低所得水準は毎年1万ドルずつ上昇しており2020年で1400万円を超えた
・東京トップの港区の平均所得は1217万円でサンフランシスコでは低所得に分類される
家賃、食事、アマゾンプライム・・・すべて日本よりはるかに高い
・日本の実質賃金が最高だった1997年を100として比較すると2019年現在、日本は90.6で、
アメリカは118、イギリスは127、平均賃金をドルを基準とした購買力平価で国際比較すると
日本の賃金はアメリカや西欧各国、韓国、イタリア、スペインよりも低い。
・日本の労働生産性はG7中で最下位、OECD37ヶ国中で21位、理由は価格付けの安さ
・パイが増えない中での外資との人材争奪戦で若手を確保するのに中高年の賃金を抑える
→一方で内部留保にあたる利益剰余金の増大と人件費の横ばい、黒字リストラ・・・
→ところが大卒1年目の基本給で見ても日本は韓国シンガポールより低く、30代のIT人材で
見ればアメリカの半分以下、アメリカでは全世代で1000万円を超えてるのに、日本では
年功序列の最も高い50代でも750万円、海外のIT人材を取り込みたくても給与の壁がある。
→世界が欲しがるインド工科大学のIT人材→世界標準を払えない日本企業には狭き門
・労働組合の組織率は戦後50%を超えたが2020年には17.1%まで低下、女性は12.8%、
パートタイムは8.7%、99人以下企業だと0.9%、全雇用者の4割が非正規
→集団的な労使交渉以外の個別交渉メカニズムが日本にないのが賃金が上がらない理由?
→転職で年収がアップしないのは日本だけ→能力を市場価格ではなく前職水準で評価
→雇用契約時の個別の賃金交渉がない→宅配クライシスの例
・職務を明確にし勤務時間ではなく能力や成果で評価するジョブ型雇用
→年功序列や年次主義が残る日本企業では転職市場で不利なまま
→フェアで透明性の高い人事制度になれば物価が安く安全な日本で働くことが魅力的になる
→ただし契約が細かいのでグローバルに展開し抱えたい人材が明確な大企業向き
・従業員の役割を明確にして日々のマネジメントで評価と処遇を連動させるロール型雇用
→個人の自立性や生産性を高めたい企業や中小企業向きで、日本型雇用とのハイブリッド
・人生で成功するために重要なものは何か
→世界共通のトップは「一生懸命に働く」
→次いで世界では「変化を喜んで受け入れる」や「人脈」などが続くが、日本では「運」
→日本の労働者は配属もキャリアも、すべて会社や外的要因に任せている・・・
・日本は給与よりやりがいを重要視する文化だといわれるが・・・
→英独仏日4ヶ国で日本は賃金給与への満足度も余暇レジャー生活全般への満足度も最低
→つまりお金の豊かさも精神的な豊かさもない
→賃金が低いと個人は幸せになれず、やがて企業も行き詰まる
→物価上昇分の賃上げだけでなくスキルアップに対する正当な昇格・昇給も必要
(インタビュー)
・賃金の相場データが流通していないから個人が寝たまま起きない
→様々な人が働くようになると事情も環境も個別で異なるようになる
→個別交渉の仕組みを社会全体で共有して適用しなければならない
→企業にとっては最適分配にシフトすることが重要(中村天江)
・日本が人材獲得で負けているのは給与の安さと業務内容や勤務先を会社に委ねる日本式の
メンバーシップ型雇用
→その中で貢献すれば(大企業では)終身雇用を前提に、たとえ給与ベースは低くても、
見えない福利厚生が「ゆりかごから墓場まで」提供されていた
→夫が工場で働き妻が家庭を支え家族ぐるみで会社に貢献する→システム化された人種差別
→その前提が消えると自分の市場価値を高め続けることが重要
→自分のキャリアは自分にしか作れず、海外では転職する気がない時でも社外情報を収集し
常に自分の市場価値に向き合うのが一般的
→自分も職務経歴書をアップデートすることが習慣になっている(村上臣)
・賃金の低い理由のひとつは非正規雇用の拡大
→労働市場のメカニズムが機能していれば「不安定だから高い賃金を払え」になるはずだが
条件が悪いまま増え続け賃金が下がった
・賃上げは国民経済の大きな要素で交渉結果の集積ではなく政府・労働者団体・使用者団体の
3者の考え方を合わせることが重要
→フランスの組合組織率は7%と低いが労働協約は9割以上の労働者に拡張適用される
・雇用のセーフティネットは不可欠で、職業教育や就労支援を通じて、やりたい仕事と
必要とされている仕事をマッチングする制度を政府として進めるべき(神津里季生)
第3章より
・2019年11月のニセコ取材
→インド人が経営するインド料理店の家賃は月40万、冬だけの営業だがすぐにテナントが
埋まるので、年間を通して家賃を払っている
→物件の所有者はオーストラリア人で向かいの物件の所有者は香港人
→店員の住む1K部屋の家賃は6万で札幌市中央区の相場4.3万より高い
→住宅地の地価上昇率は4年連続トップで2019年は66.7%
→スキー場やホテルの経営は西武からアメリカ企業そしてマレーシア企業へ
→5大スキー場のうち3つは海外企業の運営、リッツカールトンのパークハイアットも・・・
→1軒10億のペントハウス群を開発しているのはシンガポール企業
(日本企業では富裕層にコネクションがなく売り切れない)
→ホテルのバーで日本人従業員に高級シャンパンを頼んでるのは東南アジアからの富裕層
→長野県白馬村も沖縄県宮古島も同じ状況→バブル期の東南アジアでの日本人と同じ
→まさに「安くないニッポン」だが世界のリゾートからみると土地も家賃も圧倒的に安い
→なのでコロナ後に備えて外貨マネーは活発に投資を続けている
→地元の固定資産税は増えたが地元民の生活を圧迫している(居酒屋のラーメンが3000円)
・安いと企業や技術も買われる
→狙われるのは技術はあるのに経営難や後継者不足で廃業寸前の中小企業
→日本の大手は興味を示さない→海外資本が安く買える
→中国や台湾などアジア資本の買収で持ち直した企業も多い
→日本のピラミッド型サプライチェーンの下請けでは良い製品を安く買いたたかれ続け
海外展開もできずジリ貧になるだけ
→中国企業に買われグローバルな販路で息を吹き返した企業も多い
→大企業は中小企業を抱え込むだけでなく海外進出に協力しサプライチェーンを維持する
方策が求められる
・安いと人材も買われる
→中国のアニメブーム→海外ネットコンテンツの流通規制→日本品質の内製化
→日本の制作会社を傘下にアニメを自前で制作→独占配信する
→日本人アニメーターの年収は3倍まで出せフレックス勤務で住宅手当や交通費も支給
→背景にあるのは日本人アニメーターの給与の安さ
→中国の求人サイトではアニメーターの月収平均が45万~52万、日本では年収平均が440万、
中国では高収入職なので美術大学でデッサンを学んだアニメーターが多い
→日本は製作委員会式で各社の立場も異なり予算ありき、中国アメリカの制作会社の交渉相手は
1社のみで質と作品ありき、なので予算も潤沢
→日本のアニメーターは生活できず勉強する時間もなくトップ以外のスタジオは質も低下
→人材育成や設備投資による生産性の向上には安定した収入の確保と還元の仕組みが必要
・アマゾンやネットフリックスなどの海外勢も日本のクリエーターを囲む
→ネットフリックスのコンテンツ費用はNHK年間製作費の5倍
→日本でアニメーター育成を始め卒業後はネットフリックス独自アニメ製作という丸抱え
→日本のコンテンツやエンターテイメントの生産性を高めるには劣悪な労働環境の見直し
・2021年1月の埼玉県川口市芝園団地取材
→2020年まで外国人住民は増え続けたが、日本がいつまでも優位な買い手市場とは限らない
→今では自分の国の企業のほうが自分が勤める日本の企業より報酬が高いとの話もあった
→自分の世代は日本で働くが、子供には日本より給与の高い自分の国で働いて欲しい
→これからも「選ばれる国」になるためには、受け入れ体制や環境の整備が欠かせない
第4章より
・インバウンドの恩恵を最初に受けたのは家電量販店や百貨店
→爆買いは円安や高品質とかではなく、まさに購買力の移り変わりだった
→その後の感染拡大で消失→地方や関連企業の経営危機
→円安バブルや叩き売りではなく富裕層向けの宿泊税やサービス提供も
・英国デイリーメールの「イギリスの観光客にとって最も安い場所10」(8項目比較)
→合計費用で日本・東京はブルガリア・サニービーチ、トルコ・マルマリスに次いで3位
→しかも長距離では最も安く、インドネシア・バリ、ベトナム・ホイアンより安い
→東京以外は欧米からの観光客が多く、それなりの価格設定になっている可能性が高い
→つまり、東京はそうなっていない
・インバウンドバブルによるホテルの二重価格
→同じ条件の五つ星ホテルがロンドンでは17万円、東京では7万円
→それでも収入の少ない日本人には高くて外国人向け(近くのアパホテルは5640円)
・供給過多で値崩れする京都のホテル
→市内のホテル不足から2015年3月には29189室だったのを2020年3月に53471室と1.8倍に
→増加そのものではなく価格帯など似たような施設が同時にできたのが値崩れの原因
→ゲストハウスや民宿の廃業も
→付加価値を高めて軌道修正しなければニッポンの価格はさらに安くなる
・携帯料金
→所得が増えないデフレ傾向の中のIT化でデータ容量が増え、負担が重くなった
→長らく3社寡占が続いていた
→格安の価格優位性が奪われ、今は生き残りをかけた消耗戦に突入した
→「格安スマホによって市場競争が生まれ大手のサービス向上や値下げにつなげる」という
従来のシナリオが崩れかねない
→品質にあった適正価格も必要で値下げで設備投資ができないと通信インフラが後退する
→価格だけでなく通信産業のあり方を抜本的に考える時期
・水産物の買い負け
→欧米やアジアでの健康志向、中間層の所得が増えた新興国での需要の高まり
→日本では減り続けている
→海外では高くても食べようとするが日本では安くなければ買ってもらえない
→国際相場では買い付けられなくなっている
→サーモン、ロブスター、タコ→これ以上世界で普及すれば日本には入らなくなる
→感染拡大で世界的に値下がりしたが、それでも日本人には手が出せない
・安いことによる弊害
→賃金が安くても物価が安ければいいのでは・・・
→安さと貧乏は必ずしもイコールではないが・・・
①個人として
→国際的な一物一価の高級品は高くて買えなくなる
→滞在費や旅費が高いので海外旅行に行けなくなる
→外国人は日本を安く楽しめるが自分たちは余裕をもって彼らの国に行けない
②人材や企業の流出
→英語ができて能力の高い日本人や企業は、より高い報酬を求めて海外へ
③人材が育たなくなる
→若者が成長したくても学費の高い海外の大学には行けず、英語ができず能力の低い人は
外国人に安い給料で雇われる職種にしか就けなくなる
④その結果、国際的に活躍できる人材は少なくなる
→日本企業のトップは外国人になり日本人は一般労働者となって所得は海外に流出、
→さらに貧しくなり海外援助も自衛隊装備も貧弱になる→日本の成長力はそがれる
・コロナ後は
→需要の抑制面での冷え込みとサプライチェーン分断による供給面での下落
→需要減による物価下落は世界も同様なので相対的に日本の安さは変わらない
→モノは生産を国内回帰する動きがあり、そんなモノは少し上がるがサービスは下落する?
→海外はインフレでカネの価値が下がりやすく、日本は物価が上がりにくいので、カネの価値が
下がりにくい→交換比率や為替レートで円高になりやすく、生産拠点の空洞化につながる
・ネットフリックスなどデジタル関連を皮切りに世界標準の価格メカニズムが日本にも
→ぬるま湯は心地よかったがグローバル価格に付いていけなければ海外にも行けなくなる
・安いニッポンから脱却する提言は様々だが、現場でもう一歩踏み出せるかどうか
→日本の常識は世界の常識ではない・・・
(インタビューより)
・日本はデフレで安いモノしか買ってもらえない
→購買力を上げるには所得を上げるしかない
→環境意識が低いため完全養殖などの付加価値を認めてもらえず値上げにつながりにくい
→冷凍食品の需要は伸びてるのにスーパーではずっと安売りされていた
→感染拡大の巣籠で需要がさらに伸びスーパー来店制限で値引きも少なく単価が上がった
→消費者に認めてもらう商品を出し、しかるべき価格で販売できるのが理想的(池見賢)
・企業が生産性の高い若者の所得を引き上げ終身雇用や年功序列を改め価格設定も柔軟に変更、
消費者も質の高いモノやサービスにはきちんと対価を払う(伊藤隆敏)
・政府のインフラ投資、税制改正、職業訓練・・・財政規律が厳しすぎる
→企業は収益を最大化する価格設定
→消費者は支出の切り詰めから収入を増やす努力にシフト
→社会主義新興国の市場経済への参入→安い労働力
→デジタル化もあり物価や金利が上がりにくい→国内の格差拡大で富が集中
→富の集中は消費につながらず物価が上がらないので金利も上がりにくく引き締めしにくい
→株や証券にカネが集中する
→労働所得より投資所得のほうが増えやすくなる
→グローバル化前は働けば成長の恩恵を受けたが今は成長に見合った労働所得は得にくい
→投資をうまくやっていくことも必要になる(永濱利廣)
・賃金が安いのは日本だけ労働生産性が停滞してるから
→生産性の高かった製造業の海外流出で生産性の低い農業やサービスの比率が高くなった
→製造業もコストの高い工場を国内に残すとグローバルバリューチェーンに乗り遅れる
→初期コストはかかっても情報化への投資で生産性を高める
→高度成長期に得意だった生産性の高い分野への雇用の流動化
(今は過剰労働力が中小企業に滞留→保護制度の見直しや解雇の金銭解決制度)
→農業、医療、教育、法務部門などへの規制撤廃と企業参入、流動的な労働市場(八代尚宏)
・日本の低成長の理由は・・・
①企業が儲かっても人的資産投資、無形資産投資をせず、お金を貯め込んできたこと
②コストカットのため非正規社員を増やしたこと
→従業員能力開発費用のGDPに占める割合は日本が突出して低く、非正規だけでなく正規社員の
生産性も上がらず賃金も低迷してきた
→IT投資も先進国では日本だけが2000年から増えていない
→非正規は消費性向が高いが賃金が低く消費が低迷、企業は安さで勝負するしかなかった
→調整弁であることが分かっていたので消費せず貯蓄した
→コロナでも正規は守ったが非正規は悪化した
→4割を占める非正規への失業手当、職業訓練などセーフティネットが必要
→良いモノが安いニッポン→消費者余剰が大きくなり経済厚生が高いがGDPには反映されない
→企業利益が出ず賃金が上がらず税金財源も確保できない→バランスが重要
・2000年以降、厚生年金改革や後期高齢者医療改革などで社会保険料を引き上げてきた
→企業負担は重くなり、さらに非正規雇用に
→高齢化で膨張する社会保障の財源を増税ではなく現役世代の社会保険料を引き上げた
→最も取りやすいが事実上の労働課税であり消費が低迷するのは当然
・安いニッポンから脱するために・・・
→アベノミクスでは消費増税と法人税減税
→この組み合わせは労働所得への課税強化→格差の時代には資本課税へ
→消費増税と社会保険料(労働課税)引き下げのセットなら事実上の資本課税になる
(社会保険料の引き下げは所得の高くない人への恩恵が大きく、企業が輸出する際の
消費税は還付対象なので競争力には影響しない)
→苦しい現役の社会保障負担を、ゆとりある高齢者からの消費税負担に
→企業はコストカットではなく生産性を高める投資、個人もワークライフバランスを考え
スキルアップに注力、高校や大学でのスキル取得につながる教育の提供も必要(河野龍太郎)
・あとがきより
→筆者も含めたバブル期を知らない世代には、30年間も賃金や価格が足踏みし続けて、
世界での競争力を失った日本が当たり前になりつつある
→取材で度々出会うのが、海外拠点で部下が現地競合社に引き抜かれても「うちはそんな
給与は出せないから、おめでとうと言うしかなかった」と苦笑する経営者や幹部・・・
→これは原資の大小だけでなく改革できなかった人事制度の問題でもある
→元社員が他社から出戻った際に、その他社に応じて給与を上げると社員から不満が出るため
出戻り禁止にしているという企業も複数あった
→東京都の2人以上勤労世帯中間層の可処分所得から、食費や住宅費、通勤がなければできた
機会費用などを差し引いた娯楽などに使える残った金額は、全都道府県で最下位だった
→つまり東京都の中間層世帯は全国で最も豊かではないと言える
→感染拡大後は多くのサービス需要が喪失、価格は下落傾向にある
→大きな転換点になるかも知れない今、本書が誰かの気付きになってもらえれば・・・
この記事へのコメント
1. Posted by バスウ 2022年03月19日 18:12
98kさんの要約だけ読んでも気持ちが悪くなるほどです😥
日本に長くいるフランス人の呑み仲間としばし"安い日本"について語り合いますが分かってはいても自分ではどうしたら良いか分からない現実があります。
シェールガスで日本が産油国になるしか一発逆転はないのではないかと真面目に思ったりします。
そのくらいこの国の体質は固まりきってます。
日本に長くいるフランス人の呑み仲間としばし"安い日本"について語り合いますが分かってはいても自分ではどうしたら良いか分からない現実があります。
シェールガスで日本が産油国になるしか一発逆転はないのではないかと真面目に思ったりします。
そのくらいこの国の体質は固まりきってます。
2. Posted by 98k 2022年03月19日 18:52
>バスウさん
さっそくのコメントありがとうございます。
おそらく世界中どこでも地元民が利用する飲み屋などは、それなりに安いんでしょうが、
日本の場合は世界中から集まるほど、サービス内容のわりに異常に安いんですね。
で、所得も異常に安いのでインフレは嫌だと・・・そりゃあ停滞しますよね・・・
まあ、シェールガスが出ても採掘はどうせ世界標準の外国企業になるでしょうから、
牛肉の代わりになるクジラの完全養殖でオンリーワンになるぐらいか・・・(^_^;
さっそくのコメントありがとうございます。
おそらく世界中どこでも地元民が利用する飲み屋などは、それなりに安いんでしょうが、
日本の場合は世界中から集まるほど、サービス内容のわりに異常に安いんですね。
で、所得も異常に安いのでインフレは嫌だと・・・そりゃあ停滞しますよね・・・
まあ、シェールガスが出ても採掘はどうせ世界標準の外国企業になるでしょうから、
牛肉の代わりになるクジラの完全養殖でオンリーワンになるぐらいか・・・(^_^;
3. Posted by donchan 2022年03月20日 07:00
こんにちは。また難しい問題ですね。昔から資本不足(設備や原材等)を根性や努力という精神力でおぎなえ、というのがお家芸でもありますが、70年代から90年代に例外的に賃金でも大盤振る舞いしたのですね。「清貧」なんて言葉もありましたが、ある意味痩せ我慢にもなりますよね。何処かの地方公務員も高給を非難されてましたが、まともな労働には、まともな賃金を払うのは当然なんですね。外国資本の買いまくりについては、ミクロの合理性がマクロの不合理になるという一つの好例ですね。
4. Posted by 98k 2022年03月20日 10:44
>donchanさん おひさしぶりです。
さすがですねえ、ミクロの合理性がマクロの不合理になるというのは、この本にも書かれてました。
行き詰まったときに「あとは根性だ!!!」とゆー日本の精神論とか、何が「まともな労働」だったのかとかはさておき・・・
donchanさんのような「ゆとりのある高齢者」は、どんどん高いモノを消費して消費税で現役世代に貢献して下さい。
わたくしも、せいぜい安酒の酒税で貢献しますので・・・(^_^;
さすがですねえ、ミクロの合理性がマクロの不合理になるというのは、この本にも書かれてました。
行き詰まったときに「あとは根性だ!!!」とゆー日本の精神論とか、何が「まともな労働」だったのかとかはさておき・・・
donchanさんのような「ゆとりのある高齢者」は、どんどん高いモノを消費して消費税で現役世代に貢献して下さい。
わたくしも、せいぜい安酒の酒税で貢献しますので・・・(^_^;