熱帯雨林をいく・・・鼠径ヘルニア手術記録

2022年03月27日

中国海軍VS.海上自衛隊

とーとつですが・・・

中国海軍VS.海上自衛隊であります

P3240890

原題はDragon Against The Sun・・・


表紙裏にあった惹句

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裏表紙裏にあった著者と監訳者のプロフィール

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ビジネス社 2020年10月1日 第1刷発行


目次のご紹介

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本文に出てくる訳文凡例と略語一覧

P3240896

英語版が2020年5月、日本語版が2020年10月の出版ですから、その時点での分析になります。

アメリカの海洋軍事専門家が英語で書かれた本であり、アメリカの最大利益が前提という
点には留意が必要ですが、
欧米には日本の海上自衛隊に関する研究や著作物は殆どなく、
いっぽう中国には豊富にあるそうで、台湾生まれで中国語にも堪能な日系米人の著者が、
膨大な刊行物や著作物を分析し、中国では日中のシーパワーがどのように認識されているのか、
また、そのパワーバランスの変化をどう捉えているのか、という視点が新鮮でした。

ちなみに日本では著者のような権威ある海洋軍事専門家が海上自衛隊幹部やそのOB以外に
どれだけおられるのか、権威ある国際政治学者によるシーパワーの分かりやすい著作物が
どれだけあるのか・・・是非は別として、そちらも不安になりました・・・

読む際には烏賀陽弘道氏の世界標準が参考になりましたが、彼も書いておられたように、
軍事や国際政治については、思い込みとかではなく冷静に、分かりやすく書かれた著作物
というのは、ほんとに日本では少ないですね・・・

以下、わたくしの読後メモの一部ですが、例によって勘違いや読み飛ばしが多々あるはずで、
少しでも興味を持たれた方は是非本書を熟読されますように・・・

また、
監訳者は元海上幕僚長、こちらもまさに権威ある専門家で「監訳者あとがき」も
大いに参考になりましたので、わたくしの読後メモから一部を抜粋しています


第1章より

・この10年で中国海軍と海上自衛隊のパワーバランスが崩れた
→艦隊規模、総トン数、火力等すべてで中国海軍が海上自衛隊を凌駕している
→この権力交代(パワーシフト)についてはアメリカでは殆ど研究されていない
・海軍力の不均衡は(局地的な制海権を得る)戦争というオプションを指導部に提供する


第2章より

・中国海軍の増強は2000年代初頭から加速、そのペースは2010年代半ばから更に加速した
→この5年間で両国の海軍力格差は劇的に拡大し中国は決定的な優位性を保持している

・これまでの欧米の研究は日本のシーパワーに注意を払わなかったが、中国での研究成果は
公開されているだけでも膨大にあり、米国シーパワー研究へのエネルギーにも匹敵する
→なので、あまり翻訳・研究されていない中国の著作物を精査した
→中国シーパワーがアジア海域における米国海軍の優位性を侵食することへの研究は多いが
研究に欠けているには、この地域の主要な海軍力が静かに日本から中国に代わっていること

・GDP、軍事支出、その割合いなど全てで大きく逆転し、海軍力のバランスに大きな影響
→2019年の国防省の年次報告書で既に「中国海軍はこの地域で最大の海軍」と記されている

・艦艇数
→米海軍情報局によると2030年まで中国海軍の新鋭艦がさらに増加する可能性が高いが、
海上自衛隊の艦艇数は日本の国家資源から見ても大幅に増加することはない

・総トン数と火力
→中国海軍の平均トン数は1990年から2019年で7倍になった
→1艦あたりの能力と潜在能力が大幅に向上している
(
平均トン数では海上自衛隊がまだ僅かに上回っているが中国大型艦の就役で長くは続かない)
→火力を示すミサイルとVLSセルの数は
2020年では3300対1600に、
→主要水上艦は2020年では130隻対51隻に
→1990年代前半までで
主力艦数は海上自衛隊とほぼ均衡状態になったが、2000年代半ばから
大きく引き離し、2020年では2.5倍となっている
→中国艦艇は射程距離290海里で超音速の長射程対艦巡航ミサイル(ASCM)を装備しているが
海上自衛隊の同タイプは
射程距離70~80海里で亜音速の年代物
→射程距離の優位が戦術上の主導権を与える

・人的資源
→海上自衛隊の慢性的な人員不足と(募集可能な)人口の減少
→人民解放軍で人口減少問題が表面化するのは10年以上先

・古代から現代まで、海軍力バランスの大きな変化は大国の関係再編・軍拡競争・外交的
技術的革命・ブレイクスルー技術への多額投資・予防的な軍事攻撃を行わせた
→日本が1904年や1941年のような予防的・直接的な軍事行動をとるとは考えられないが、
海上進出に対して行動を起こすよう、これまで以上に強い圧力の下に置かれるだろう
→米国の政策立案者は日本の態勢を強化し抑止と安定を高める方法で、日本政府が将来の
決定をするよう方向づける準備をしなければならない

・日本の苦境と米国戦略への悪影響を示す類例が冷戦時代の英国海軍衰退のジレンマ
→1950年代にソ連は英国を抜き世界2位の海軍大国になった
→米海軍はあまりに薄く世界に展開しているため他の戦域を全てカバーできない
→ノルウェー沖でのソ連海軍の挑戦的な行動に直面した英国海軍の無力さが深刻な状況に

・日本の領土・空域・海域を守る防衛力は抑止が破綻した場合、米国の前方展開基地への
アクセスを維持し、増援部隊が前線に到達するための時間を稼ぐ
→その過程で海上自衛隊は主要な海上からの進入路を掃討し、続いて共同で制海権を獲得する
→海上自衛隊は米国が西太平洋を越えて戦力投射することを可能にし、機雷掃海など米軍に
欠落した部分を補い、米海軍の戦力を補完してきた
→中国政府が選択肢を計算する場合、海上自衛隊が弱い環になりつつあると判断すれば・・・
→つまり中国海軍が海上自衛隊を凌駕すれば、米国の戦略に対する直接的な挑戦になる
→米国の政策立案者は、日本のシーパワーの相対的な低下を、西太平洋における米国の力が
低下していることと同義として認識すべき
→中国海軍のA2/ADに対する効果的な対抗手段は日米同盟にとって互恵的であり、同盟協力の
中心的事項とする必要がある

・人民解放軍の各種ミサイルは日本列島のあらゆる固定目標に到達できる
→海上自衛隊(の基地)に壊滅的な打撃を与える可能性が高い
→海上自衛隊の相対的な弱体化で日本が中国に屈し米国と協調できなくなる可能性もある
→日本の自信喪失と米国の安全保障への不信感の高まりは日本独自の核抑止力という脅威に
→これは中国海軍進出への黙認に劣らない地域秩序への悪影響となる
→中国の台頭と日本の衰退は、日本の
政策立案者に好ましくない選択を強いるかも知れない
→日本から中国に傾きつつある海軍力バランスは、米国によるアジア平和への最初の挑戦

・日本のシーパワーに関する英語の著作物は少ないが中国語の著作物は膨大で詳細
→政府が奨励し比較的自由に議論させ、各分野で研究・発表している
→日本の専門誌「世界の艦船」や「軍事研究」の完全な翻訳や要約も頻繁に掲載されているし
自衛隊幹部や著名な学者の発言、論文も豊富に紹介している
(多くの例示は略してますが日本の著作物よりはるかに多いのではと感じました)
→最近まで嫌悪と不承不承の称賛で「一流海軍」と認めていたが、いずれ追い越すとの見方が
強まっている


第3章より

・海上自衛隊の劇的な地位の低下は、この20年間の中国の台頭と日本経済の低迷、相対的な
衰退、自信の低下と一致している
→中国政府はより積極的な戦略を追及、日本政府にはより用心深く防衛させるようになり、
ある部分では両国関係の敵意を強めている
→日本の「失われた数十年」から生じる不安、地政学的な位置、米国との同盟関係、戦略、
戦略的文化のすべてが激しい対立へ向かわせている

・中国の著作物から
→中国の台頭で東アジアではじめて2つの大国が共存した
→この均衡状態での東アジア「華夷秩序」復活への不安が日本の中国脅威論の源泉
→比較優位が逆転した2011年以降、日本の判断は悲観的になり中国への態度や反応は硬化した
→弱気なサインは中国の勢力拡大を促すだけと考えているから
→不均衡の拡大は、これまで以上に自国の利益を守ろうとさせている
→進展に過剰に反応しようとする結果として、競争となる可能性が高い
→経済・軍事力のバランス悪化から中国の海上脅威を再評価し敵対するようになった
→日本は中国を大陸国家と見ており、その海洋進出の意志は明確で海洋国家である日本との
対立は避けられないとの結論に達した

・構造的要因としての第一列島線(中国の著作物から)
→日本列島はアメリカと同盟国である日本が監視塔を置いている、逆さ万里の長城に見える
→バリケードであり積極的な防御者が配置された物理的障害物の列である

・人民解放軍の軍事用語辞典では、
第一列島線は、日本列島から琉球諸島、台湾島、フィリピン諸島、パラワン諸島を経て、
カリマンタン島等に至る、中国の海域の外洋周に沿って形成された鎖状の群島
第二列島線は、日本列島から小笠原諸島、硫黄島、マリアナ、ヤップ、パラオを経て、
マルク諸島に至る、広い海域を占める弧状の列島線状の群島と定義している

・どちらも北にある日本列島が目立っている
→アジア諸国が経済発展し海洋で軍事的に行動する際の大きな制約
→さらにユーラシア大陸東部に隣接しているため、黄海、東シナ海の全域、アジア大陸の
奥深くまで戦力投射できる
→日米シーパワーは中国より優れ、容易に圧迫できる好都合の地理的利点を有する

・日米中の3国にとっての海へのアクセス能力は必然的に他者のアクセスを拒否する能力
→中国は列島線に囲まれた海域を支配する手段を保有して、はじめて障壁を作ったり、
自由航行することが可能になり、これは米国も同じ
→アジアにおける米国の優位性は列島線を境界とする海域の支配
→琉球諸島は国益に対する脅威であり海洋公域へのアクセスのための軍事手段が必要で
それを根拠に海軍の頻繁な宮古海峡通過を正当化した

・1950年の朝鮮戦争、1954年と1958年の台湾海峡危機、1960年の北ベトナム爆撃、
1995年から1996年にかけての台湾海峡危機、それ以降の異常接近の繰り返しなどは、
中国にとっては日本列島があることによる地理的苦境であった
→日本の基地協定は中国が米軍による侵略と挑発と見なす行為すべての共犯協定
→日米同盟は中国の利益に反し、その海洋大国同士の緊密な連携が安全と戦略的な成功を
日米にもたらしたと理解している
(日英同盟は日本に繁栄を提供し、その後の大陸進出は日本に国難をもたらした)

・この歴史からも日本は大陸国家とは同盟できず、海洋国家と同盟する
→シーパワー同盟は防衛的なメカニズムではなく経済成長を促進し世界海洋秩序の規範や
ルールを支える制度的基盤を提供する協定
→使命を広範に定義し地域や世界の安全保障に大きな影響力を持っている
→米国がアジアでの野望を実現するため同盟に依存し強化し中国を封じ込める
→グローバル化する同盟は自衛隊をグローバル化し米軍の行くところに行くようになる
→日米同盟は単なる安全保障の傘ではなく日本が影響力を拡大するための根拠と手段

・日本は日米同盟だけでなくアジア全域でのパートナーシップを拡大
→これは中国を封じ込めるための海洋国家連合を形成→日本の海洋戦略の中核
→ランドパワーとしての中国の勃興を封じ込めるという目標
→沿岸国への寄港やパトロールや演習は現地で中国と対峙している国家の抵抗力強化が目的

・日本も中国も同じ海上交通路に依存して繁栄している
→日本の3シーレーンのうちマラッカ海峡と東シナ海を通るルートは中国と共有
→平時は相互に利益を享受しているが危機や戦争になれば、どちらかが相手の海を人質にする
→これが日本の恐怖で過剰な主張を余儀なくされている
→中国によるインド洋支配は日本の生命線を絶つ
→東シナ海ほど利害関係は高くないが競争が敵意を高めることは間違いない

・海洋意識を持つ国は効果的な戦略を策定し海上で大成する可能性が高い
→その国独特の歴史経験が海洋世界観に大きな影響を与えている
→日本の反中感情は明治の脱亜論以来続いている
→海に守られて、中国に同化されたアジア諸国とは一線を画してきた歴史
→海は中国の軍事的・文化的侵略から守る防波堤
→中国への疑念と敵意は日本のDNAで海洋での攻撃性に
→日本の地政学的な位置が危機感と不安感を高め、攻撃は最大の防御という格言を受け入れた

・林子平、横井小楠、佐久間象山、A.F.マハンとその弟子の秋山真之、佐藤鉄太郎
(彼らの古い著作に関する詳細な研究論文が中国には数多くある)
→日本の海洋戦略は積極防衛が特徴
→冷戦構造が一時的に攻撃性を抑制していたが、その終結と侵略記憶の薄れが拡張主義的な
野心の復活を可能にした
(これらの文献は、対立の根源は文明的なものという厄介な確信を示している)

・中国側の評価を総合すると、中国の海洋進出に対する日本の対応については極めて否定的
→強硬な抵抗と中国封じ込めに向けた積極的な海洋戦略を明確に予想している
→このような文明論、運命論、決定論は日本政府を一面的な対立国にしており、
日本の海軍力を評価するための分析的なプリズムを形成している


第4章より

・近年中国が海洋に戻り、海軍が大きな成果を上げるようになると、日本の海軍力に対する
評価に大きな変化をもたらした
→まだ多くは強みを認めているものの、もはや島国の海軍を恐れてはいない
→主要な能力で急速に追いつき海上自衛隊の構造的な弱点を見つけている
→重要なのは戦闘で海上自衛隊を凌ぐ自信を示す者が出始めたことで10年前とは大違い
→海上自衛隊の歴史的な発展、特徴的な利点、永続する弱点を把握し、評価した上での自信
→中国海軍の攻撃火力は大幅に進歩したが海上自衛隊はミサイル戦闘の危険性を克服するのに
苦労するだろうと考えている

・中国から見た日本の海洋戦略(部分)
①日本政府は国家の海洋意識を大変慎重に育ててきた
②海洋の利用、保護、開発、権益主張のための法律を制定してきた
③海洋管理のための国家機関を設立、権限を与え省庁調整と意思決定を改善してきた
→海洋大国になるためのすべての条件を備えている
→この国家戦略推進は両国間の戦略的互恵関係の発展に向けた努力に対する前例のない挑戦
(例示を見ても日本のシーパワーを物理的にも制度的にも総合的高度に理解している)

・中国の軍事用語による日本海軍戦略の進化説明
①1950年代は沿岸防衛と領土保全のみで残りは米国に委託
②その後の10年は近海防御への移行期間で米軍到着までの時間稼ぎ
→この時期に完全な米国依存から共同防衛の取り組みへ
③1970年代には南東・南西1000海里のシーレーン防衛に
④その後の数十年は成長期で1980年の海軍戦略は「外洋での積極防衛」
→グアム以西フィリピン以北のすべての海域→大排水量の多目的戦闘艦の獲得
→8艦8機、4護衛艦隊群の編成
⑤冷戦終結後はペルシャ湾から世界各地へ、1990年代半ばに米軍への兵站支援と後方支援強化、
21世紀に入り長年の専守防衛を捨て「積極攻撃と海外介入」を採用、外洋戦闘能力を持つ
大型高性能艦を就役、アデン湾での海賊対処やジブチでの基地建設は警告信号

・2009年の文献では、総合的に見て海上自衛隊の能力は米国ロシアに次いで世界3位とし、
近代化された新造艦の多さや統制のとれた調達プロセスなどを称賛していた
→冷戦後のロシア海軍力の崩壊と欧州シーパワーの大幅な削減とは対照的

・最近の文献では、かつてほどの脅威ではないとし中国の海軍力を称賛している
→1980年代に近代化ペースと規模の切迫感を失い、1990年代にロシア海軍の老朽化が進み
中国海軍は大きく遅れていたので、さらに緩やかな増強計画を採用した
→この間に中国海軍はブレークスルーし艦隊防衛を破る能力を着実に向上させた
→2008年に第一列島線を突破しパワーバランスの変化が始まり、日本が島嶼防衛に注意を
払うことを余儀なくさせた
→海洋能力への投資を続ければ10年から20年で戦略的な優位を達成すると見積もっている

・米国の優先事項に従った戦力構成の様々な不均衡
→米国の覇権衰退により弱点が明らかになった
→陸上に戦力投入できない→平時でおおすみ型3隻で1個大隊程度
→水陸機動団規模を見積もると海上自衛隊の収容能力を上回る
→揚陸艇の数も大規模な水陸両用作戦のニーズを満たせない
→後方支援も弱点で、前線の戦闘能力を優先する偏見は大日本帝国海軍以来
→港湾施設と造船所工員の質は高いが、近代化・開発ペースは基地能力をはるかに上回る
→海上自衛隊は後方支援の制約から中国海軍に対し継続的な海軍作戦を遂行する能力はない

・ミサイルに対する脆弱性
→世界2位の対潜戦部隊も中国のミサイル攻撃から逃れることはできない
→ひゅうが・いずもなどの大型の高価値艦は中国ミサイルの格好の標的
→宇宙システムや無人偵察機データで陸上から発射される対艦弾道ミサイルに海上自衛隊の
海上配備型弾道ミサイル迎撃システムが最適化されているか疑問
→さらに空と海からのミサイルの数量、速度、機動性能は防御を飽和させ圧倒する
→人民解放軍の早期警戒機と電子戦機は日本機の1世代先を行っているので航空優勢もない

・大規模な通常戦力による軍事衝突が発生した場合、日米の海空軍基地を攻撃することになるが
嘉手納、岩国、佐世保、横須賀がミサイル攻撃の主な目標になるだろう
→攻撃の結果、米軍は西太平洋の軍事拠点を失うことになるだろう
→米軍はグアムやハワイに後退せざるを得ず前方部隊の持久力が損なわれる・・・
→空母への野望(略)
→尖閣諸島をめぐる局地紛争
(略)
・このような、あからさまな議論が中国の著作物で一般化し、厄介な特徴になっている

対潜戦戦略
→アジアにおける米軍の「補助軍種」としての最優先事項は
対潜戦と機雷戦
①積極攻勢には敵の潜水艦基地、造船所などへの直接攻撃を含み、米軍は対地攻撃を行い、
海上自衛隊は進入ポイントに近い沿岸の軍港を機雷封鎖、待ち伏せ攻撃区域を設定する
②消極攻勢には主要な海峡の管制と封鎖を含み、封鎖圏を形成するため機雷を敷設、水上艦艇や
対潜哨戒機を派遣し、海底に敷設された探知機で列島線を追尾
③積極守勢には包囲・殲滅戦を含み、公海における探索・攻撃の対潜掃討戦を行う
→近代的な中国潜水艦の数と太平洋の広さから効果は低いと考えている
④消極守勢には同盟国海軍と商船の護衛を含み、固定翼機、回転翼機、水上戦闘艦を組み合わせ
海域や航路を掃討、潜水艦を港内に留め置くための欺瞞作戦に従事すると想定

・機雷戦は秘密性が高く日本政府は殆ど公表していないが公刊情報から機雷種類を特定し、
機雷の開発・生産能力を世界クラスと評価、着実な生産貯蔵と試験演習の少なさと保管能力から
日本は大量の機雷を保有していると考えている(詳細略)
→冷戦時代の津軽、宗谷、根室での計画と同様、南西諸島沿いの重要なチョークポイントに
上昇機雷を敷設する可能性がある
→ただし他の海峡、水道、港湾も守らねばならず、
南西諸島沿い1000kmに渡る対潜戦は、
海上自衛隊の潜水艦部隊に無理を強いることになる
→作戦地域の拡大と中国最新潜水艦の静粛性は機雷の有効性を一段と失わせている

・海戦シナリオ
→中国のアナリスト2人がトム・クランシー・スタイルで日中海戦のシナリオを作った(略)
(日本人はこのシナリオを嘆くだろうが)中国の作戦成功への重要な詳細記述がある
概要(詳細な船名・機種名・兵器名などは省略)
①尖閣諸島沖で海上保安庁の巡視船が中国海警局の
海警艦に発砲、両船は一時的に撤退するが
両国は尖閣諸島への上陸競争を開始
②スールー海にいた遼寧空母戦闘部隊は宮古海峡に向かい自衛隊を尖閣上陸作戦から遠ざけ
母港を出る揚陸部隊への圧力を軽減する
③東シナ海上空では中国の飛行禁止区域内で日本の早期警戒機と戦闘機が戦闘飛行を開始、
中国のステルス戦闘機が撃墜
④ロケット軍と空軍が那覇空港と那覇基地を攻撃、24時間で制空権を掌握
⑤米国は安保条約の発動を拒否、経済制裁の形式的な脅しのみ
⑥烈度の高い海戦が短期間勃発、宮古海峡西でフリゲート艦を失い現場から撤退
いっぽう戦闘爆撃機と多機能戦闘機で構成する海上攻撃隊は尖閣に向かう護衛隊群を
巡航ミサイルの集中攻撃で阻止撃破
⑦米軍偵察機は妨害を受けていない嘉手納基地に帰投、裏で米軍非介入と基地非攻撃の約束
日本は上陸阻止にも失敗し、潜水艦も対潜哨戒機により撃沈され、4日以内に尖閣諸島は
人民解放軍の手に落ちる・・・

・楽観的な前提で結果には無理があるが、中国が好む戦略要素が推測できる
→日本が最初に武力行使すること→そのように意識的に誘導し追い込む可能性
→それで外交を軍事作戦と協力して機能させる
→日米同盟内に不和を生じさせる
→電磁領域の戦術と沖縄の航空拠点喪失により短時間で制空権を掌握する
→海戦についても中国の戦闘ドクトリンと一致しており長射程の精密火力によって船舶や
航空機は短時間の攻撃で壊滅的な打撃を与えることができる
→局地的な制海権をめぐる一進一退の争いは戦争の最終段階まで続く

・作戦面に焦点をあてた第二のシナリオ(略)
→どちらのシナリオにも米軍基地への攻撃はなく、米国の関与が中国の戦争を著しく複雑に
するという明確な認識を示している
→日本に対する米国の共感の低下や外交的孤立は中国の作戦目標を大きく前進させる

・これらの著作物は中国が日本の海軍力を非常によく研究していることを示している
→海洋への野心に対する日本の激しい抵抗を予想しているので当然
→もっとも注目すべきテーマは
日本の海軍力への疑問視が出始めていること
→この上昇曲線が続いた場合に日米が直面する課題であり厳しい警告である


第5章より

・中国の執筆者は日本のシーパワーについて驚くほど豊富な知識を持っている
→機雷の在庫管理プログラムから最先端の戦闘機プラットフォームまで精通している
→人民解放軍が空域海域支配のための攻勢的な作戦を展開する可能性を明確に論じている

・日本列島は海洋進出に対する物理的障壁であり、日米同盟が依拠する不可欠な基地であり、
日米の戦力と意志を象徴している
→そのため日本政府は商船であれ軍艦であれ中国の海運を封じ込める潜在能力を持っている
→中国の戦闘ドクトリンでも著作物でも日本の位置について相当の不安を持っている
→特に琉球諸島は台湾に近く、日米空軍のハブで南西諸島での守備隊計画も懸念材料
→その固定要因への認識も最近では変化している
→横須賀、佐世保からは細い海上交通路で米軍が介入しなければ阻止できる可能性もある

・中国の著作物にみる変化は海洋で台頭する傾向を論証している
→経済的な成功で自信に満ちた中国とバブル崩壊以降の低迷で自信のない日本との間で
予想される相互作用は悪い予兆で、対立ではないにしても競争への期待が中国の文献にある
→日本が海洋進出に反対していると信じ、妥協への期待を低下させ、競争か力の行使に
→権威ある文献への表現頻度を見ればプロパガンダや民族主義的な感情だけではない

・日米同盟は中国には厄介な戦略的連合で、長年磨かれた作戦上の分業体制は強力な抑止力
→紛争シナリオでは内政不干渉で自衛隊が東シナ海の海空域の指揮権を直ちに奪われるが、
→これは米軍と自衛隊がどの程度共存・統合されているかを無視したシナリオで、
→日本全体に広がる米軍の恒久的な前方展開部隊が、その攻撃を軽視したり無視したり
些細なことにこだわったりする可能性は非常に低い
→さらに日本の敗戦寸前に米軍が介入する可能性も極めて低い
→海軍の覇権国は勢力バランスが大きく変化する前に、それを回避するために断固として行動する
ペロポネソス戦争でのアテネ海軍の派遣、ナポレオン戦争でのデンマーク艦隊に対する英国の攻撃、
チャーチルの北アフリカのフランス艦隊攻撃の悲痛な決断、いずれも大規模な海軍部隊が
悪意ある者の手に落ちるのを防ぐためであった
→米軍は海上自衛隊の無力化という不利なバランスを未然に防ぐために介入するかも知れない

→同盟を分裂できるのは継ぎ目や弱点を正確に認識し、活用した場合のみだが、彼らは
→米国が一方的に支配する同盟で自発的でも平等でもないと主張している

・重要なことは、このような誤解が指導部に誤った判断をさせたり認識させたりする危険性
→日米同盟に関する誤った仮定を受け入れる意思の存在
→見えにくい指示に従っている可能性もある

・まずアジアの海洋におけるパワーシフトがすでに起こっていることを認識すること
→長い間、日中間の地域的な力学を軽視しながら米中間の海軍バランスのみだった
→中国が地域の不均衡をどう見ているかを含め、日本がどの程度遅れているか理解する
→同盟国海軍の存在意義は海洋での戦争を戦い勝つこと
→中国の著作物からは局地的なハイエンド戦闘(高性能兵器による高烈度戦闘)で近代海軍を
試す準備を進めている
→中国海軍のハイテク戦闘能力は海上自衛隊にも米海軍にも悲惨な結果をもたらす
→過去30年、他の追随を許さない優位を維持してきた同盟にとって大きな転機

・中国が日本の軽空母に無関心なのはミサイル部隊による追尾や目標設定が容易だから
→ミサイル防衛システムで迎撃できる数は少なく、中国が発射できる大量のミサイルによる
集中攻撃は艦隊や基地を圧倒する
→日本の海軍力は少数の価値の高い主力艦に集中しており集中打撃で短時間で艦隊を失う
→この危険回避にはポートフォリオの再調整が必要
→先制攻撃に確実に耐えるには重装備ミサイル艇を含む小型で安価で大量の冗長なシステム

・長期にわたり効果的に競争するためには中国の弱点と中国のリスク計算を理解し、
脆弱性と危機感に対し圧力をかけなければならない
→海軍力は中国台頭の象徴であり、その価値は成長に伴って増加している
→艦隊が多大な損害を被ることへの指導部の許容度はそれに応じて低下
→物質的な価値以上に艦隊を失うことのリスクが大きくなっている
→実際にも主力艦の割合が高まっていることから一段とリスク回避的になるだろう
→艦隊を失った場合、体制さえ危うくなる可能性がある(日清日露フォークランドの例)
→艦隊を危険にさらすことには慎重になる
→艦隊に壊滅的な損害を与える態勢があれば中国政府を抑止する可能性がある
→日米同盟の潜在的な戦闘力の強化

・究極的に日米両国は、海上で戦い勝利するための戦力を保持し、中国に勝てないと
納得させなければならない


第6章より

・米国戦略コミュニティは米中2国間の海軍バランスのみで関係国を排除する風潮がある
→同盟国が直面している強い圧力を詳細に調査して的確に把握すること
→全体としての力を構成しているのは同盟国との連合軍であり平時戦時に地域海軍の貢献を
加えないと、いかなる評価も不完全
→地域国家と連合した戦争は米国が中国に優位を保つ数少ない分野のひとつ

・中国の著作物は意外に透明性が高く作戦などの詳細を伝えてくれる
→中国海軍の現在および将来に関する情報に基づいた討論と見做すべき
→この10年の中国政府の自信の増加は海軍力の増強とほぼ一致している
→論文等を把握することは中国海軍の方向性や課題を判断するのに役立つ
→日中海軍のバランスをどう見ているか、過小評価や過大評価があれば同盟国が操作できる
→不均衡を明らかに無視している分野→その背景にある理由・・・

・中国の海軍力が日本に追いつき追い抜いたことで中国の軍事的選択肢が根本的に再評価された
→それ以上の変化が数年のうちに起こるかも知れない
→5年あるいは10年後に中国と日本の力の差はどの程度広がるのだろうか
→次の段階と計画について中国の文献はどの程度の早期警戒情報を日米同盟に与えるか
→結果が高くつくことを考えれば、政策立案者は海軍競争の次の段階の輪郭と向かう方向
について、前もって考えておかねばならない・・・


監訳者あとがきより

・戦後のアジアで米国のヘゲモニー体制に唯一組み込まれなかった国が中国
・中国の国境概念には地理的国境と戦略的国境がある
地理的国境は領土領空領海の限界であり、戦略的国境は軍事力が支配している
国家利益と
関係のある地理的空間的範囲の限界

・1990年代以降、ベクトルが外向きになり米国秩序に影響を及ぼす
→2000年代の米国は同じ価値観を持たせて地域秩序に編入しようとした
→中国が経済的軍事的に台頭してくると相対的に米国ヘゲモニーは衰退、その結果、
自由主義・資本主義・海洋性のアジアと、戦略的国境を広げつつある大陸性の中国を
分断するラインが、東シナ海から台湾海峡を通って南シナ海に現れている

・生存と繁栄を海に依存している日本には海洋性のアジアがもっとも居心地がいい
→日米同盟を基軸に価値観を同じくする国々と協調している

・日本の安全保障戦略
→1957年閣議決定の「国防の基本方針」(字数で300字に満たない概念)だけだった
→2013年政府決定の「国家安全保障戦略」まで冷戦を含み戦略を欠いたまま防衛していた
→2006年以降は民主主義・自由・人権・法の支配・市場経済という価値観外交

中国は重要なパートナー国だが異質な国家、同じ農民支配を基礎とするロシアと同様で
→現状変更を望む中国には譲歩は通じない
→相手の変化を促そうと関与しても宥和と受け取られてたのが日本の対中外交
→宥和の連鎖をいかに断ち切るかは常に大きな外交上の課題

・オーストラリアの長距離打撃能力(対空・対艦・対地)強化を盛り込んだ国防計画の制定
→コロナ発生源の究明姿勢以来、中国から強圧的脅迫的な外交圧力を受けている中での決定

・海上自衛隊の防衛力整備が停滞した理由
→1955年から1993年まで続いた55年体制、とりわけ1980年代に始まった政治の混乱期に、
政争の具になりやすい防衛議論が忌避されてきた
→1991年のバブル崩壊から続く経済不況→米国海軍への甘えの構造→ブレークスルーなし
→専守防衛の解釈は戦略環境に応じて変えていくべきだが前述の要因で狭めてきた

・周辺国の主要兵器による潜在的な脅威をオフセットできない状況が今のまま継続すれば、
自ら軍事的な空白地帯を作ってしまい、軍事的冒険主義を呼び込む戦略環境を醸成する
→現行憲法のもとで専守防衛の基本政策を変更せず予算内で兵力組成を改善することは可能
→著者のいう攻勢的な思考による防衛政策へとパラダイムシフトできるはず

・防衛政策で喫緊になすべきことは、想定される主要な作戦空間と作戦領域で中国はじめ
周辺国の保有する主要兵器と一連の作戦手段のオフセット

①中国に対する安全保障政策を守勢から攻勢に転換
→冷戦時代は日本自身が断固たる対ソ防衛体制をとっていた
→大きな違いは、今の中国が対等な競争相手で経済的には西側の重要なパートナーであり、
投資先であるということ
→外交政策の右手(経済政策)と左手(安全保障政策)を欧米以上にうまく使い分けねばならない
→冷戦時代のソ連への姿勢と比較して西側諸国には弱腰に映ることは免れない
→しかし領土交渉に関しては当時のソ連と同じで、引けば必ず出てくる
→安全保障上は明らかに潜在的な脅威で抑止態勢を改善していく必要がある

②日米同盟を基軸に
価値観を同じくする国々との結びつきを強化していく
→米国中枢の変数を除けば自由で開かれたインド太平洋のコンセプトや価値観は共有できている
→法の支配に基づく海洋秩序維持の輪は英国やカナダなど域外にも広がっている

③自衛隊の兵力組成を戦略環境に適応させるようリバランスする
→本書のとおり中国海軍と日米海軍ではアウトレンジ攻撃能力に大きなギャップがある
→長射程ミサイルに超音速滑空兵器が加わり迎撃能力はさらに限定された
→技術イノベーションが遅れているが限られた予算でミサイルギャップを埋めるためには、
一部への集中ではなく一連のシステムに欠落や弱点を作らない配慮が必要
→たとえばイージス・アショアは有効だが弾道ミサイル防衛という森の中の1本の木に過ぎず、
弾道ミサイル防衛というのは各種ミサイル防衛という山の一部に過ぎない
イージス・アショア中止を好機に一連の作戦が健全迅速に機能するよう俯瞰するべき
→本書に具体例として大型艦に代えて小型安価単機能の艦艇を多数保有するオプションが
あったが、これは米軍が進めるモザイク戦
→1枚の小さなタイルを失ってもモザイク画の全体は維持されるという作戦構想
→ただし有事ミサイル戦への専用装備だけでは平時やグレーゾーンに適切に対応できない
平時からグレーゾーン、有事の幅広い時間軸に活動するには大型多機能艦が有効であり、
多機能な護衛艦は不要にはならないが、小型ステルス化しスタンド・オフ攻撃能力を備えた
多数の艦艇を散開する作戦がA2/AD環境では有効なことも事実で海上自衛隊には欠落している

本書では日米海軍がより攻勢的な活動を中国沿岸海域でとることを推奨している
→リアクティブ行動だけでなくプロアクティブ活動で意思決定者にメッセージを送る
→本書によれば中国政府は大型艦を失うことを政治的に忌避しつつある
→実際に1隻ごとの非代替性は日米海軍並みに高くなっている
→日米の潜水艦をより攻勢的に運用し、常に大型艦の近傍に存在していることを認識させる
ことも効果が期待できる

・著者からの返信メールの最後は「時間は短いかも知れないが抑止力強化のため日米同盟が
できることは、まだたくさんあると信じます」と結ばれていた
→回復不能なまで落ち込みつつある海上防衛力で不測の事態を迎えたときの代償は高い
→長い経済不況や人口減少の中でのドラスティックな変換には大きな勇気が必要
→それでも自ら軍事的空白を作らないよう、脅威に対応できる体制への改善が急がれる
→そうしなければ国家と国民を守れないばかりか、同僚の隊員たちをいたずらに窮地に
追い込むことになる
→これは陸空自衛隊でも同じで強い政治のリーダーシップと国民の理解が求められる



m98k at 20:17│Comments(0) mixiチェック 書斎 | ミリタリーグッズ

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熱帯雨林をいく・・・鼠径ヘルニア手術記録