ひのとりdeノリタケと・・・反穀物の人類史(本章メモ)

2022年09月19日

反穀物の人類史(序章メモ)

とーとつですが・・・
「反穀物の人類史~国家誕生のディープヒストリー~」のご紹介であります

文明史にも興味のあったわたくしには、じつに読みごたえのある本でした


表紙カバー

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裏表紙カバーにあった惹句

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そう、前々回記事「食べものから学ぶ世界史」の中で紹介されてて借りてきた本です




著者、発行所、発行年月日などは奥付のとおり

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著者と訳者の略歴

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目次

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前々回のジュニア新書とは異なりハードカバーの専門書で、読破やメモに時間を要しており、
とりあえず今回は序章のみのご紹介であります

ちなみに序章の後半に「本書の手短な行程表」というガイダンスみたいなのがあったので、
ここだけでも本の概要ぐらいは理解できるかも知れません・・・

以下、例によって思いつくままのメモですので、正しくは本書をお読みくださいね


序章より
・どんな経緯があって、ホモ・サピエンスはこんな暮らしをするようになったのか
→家畜や穀物と一緒に密集して定住するようになったのはごく最近
→この鋳型は増強されながら化石燃料の利用まで6000年かけて広がってきた

・メソポタミアに最初の農業社会・国家が誕生したのは種の歴史の最後の5%
→化石燃料の時代はさらに0.25%だが、
→その影響は大きく地質学上「人新世(アントロポセン)」という別の時代に分類されている
→いつから
人新世になったかは議論(産業革命・化石燃料・ダム・核使用など)があるが、
→火の使用とすると40万年以上前でホモ・サピエンス以前
→定住・農業・牧畜で変容させたとすれば12000年前
→いずれにしてもヒト科動物の絶対数が少なかった時代

・国家と文明の物語のパラドックス
→ホモ・サピエンスの登場は20万年前でティグリス・ユーフラテスには早くても6万年前から、
植物栽培と定住の最初の証拠は12000年前から
→その4000年もあとになって小規模な国家(階層化・税・壁)が生まれている
→作物栽培と定住が確立すれば国家・帝国が生ずるというのが今までの通説
→農業・定住を拒絶した人々は無知だったか適応できなかった野蛮人という神話
→カエサルの「社会は家族⇒親族⇒氏族⇒民族⇒国家と進化する」という物語
→トマス・ホッブス⇒ジョン・ロック⇒フリードリヒ・エンゲルス・・・と展開する教義
→しかし永続的な定住(病気や国家支配)に抵抗した膨大な証拠がある
→少なくとも人類が定住を熱望していたと考える正当な理由はない
→狩猟採集民が食生活・健康・余暇の視点からは優秀で、農耕民が劣っているという事実
→農耕以前の環境でも生態学的に豊かで多様な場所には定住も町もあった
→現在でもアナトリアの野生小麦を3週間だけ石鎌で採集すれば家族が1年食べていける
→完全な野生でも作物でもない植物の栽培が3000年以上続けられて作物に→農耕
→近東の村々は植物を作物化して動物を家畜化、ウルの都市制度は人間を家畜化した

・国家の正しい位置づけ
→400年前まで地球の1/3は狩猟採集民・移動耕作民・遊牧民・独立園耕民が支配していた
→国家は本質的に農耕民で構成され、ごくわずかな耕作好適地に限られるので世界人口の大半は
農耕の発明から最近(400年前)まで6000年以上、税に関係なく国家の空間を出入りして、
生業様式を切り換えることができた
→国家は壊れやすく季節限定で定数ではなく変数だった
→初期国家の脆弱性の大きな要因は病気だったと考えている


(本書の手短な行程表)

第1章「火と植物と動物と・・・」のテーマ
・火の道具化・植物の作物化・動物の家畜化と、そうした飼い馴らしによって可能となった
食料と人口の集中
→国家形成には餓死しないという合理的な予測の人間が集まるか集められる必要がある
→この飼い馴らしによって自然界は再構成され食事の範囲は縮小した
→農耕は狩猟採集より重労働で健康にもよくないので、飢えや危険や抑圧で強制されない限り、
狩猟採集や遊牧を捨てて農耕に専念するものはいない

第2章「世界の景観修正」のテーマ
・植物と人間、動物それぞれにとっての「飼い馴らし」の意味を探っていく
→ホモ・サピエンスが望むように環境全体を形作っていこうとする現在進行中の努力
→濃い
人新世(アントロポセン)は原爆投下からと考えられているが、
→薄い
人新世(アントロポセン)はホモ・エレクトスが火を使い始めた50万年前に始まり、
→農業や放牧のための開墾や伐採で拡大し、結果として森林破壊とシルトの堆積をもたらした
→火と植物、草食動物の飼い馴らしによる地球環境への影響
→遺伝子構造と形態を変え、新しい適応が進んだ
→過密状態によって人類も飼い馴らされてきた道のり・・・
→主要穀類に縛り付けられた農耕民の生活世界と狩猟採集民の生活世界の比較
→農業生活は経験の幅が狭く文化的にも儀式的にも貧しい

第3章「動物原生感染症」のテーマ
・最初期の国家で非エリート層にのしかかった生活の負担
→第一は重労働
→氾濫農耕は別にして農業は狩猟採集より手間がかかる
→何かの圧がかかるか強制されない限り農業に移行する理由などない
→第二は密集による疫学的影響
→人間、家畜、作物のおなじみの感染症は初期国家で初めて現れたもので、
→最初期の国家の大半は流行病によって崩壊した
→もうひとつの疫病は「税」で、初期国家はどのように人口を集め維持し増やしたのか

第4章「初期国家の農業生態系」のテーマ
・「穀物仮説」
→ほぼすべての古典的国家が雑穀を含めた穀類を基礎としていた(イモ国家はない)
→集中生産・税額査定・収奪・地籍調査・保存・配給のすべてに適していたから
→イモは地中で育ち、隠せて、世話も要らず、腐らず2年は食べられるが、必要な際には
現地で掘り出し運ぶ必要があり重く、税からすれば最低ランクになるだろう

→国家形成が可能になるのは作物化された穀物が食生活を支配し、変わるものがない場合
→豆類は栄養価が高く乾燥保存可能だが無限成長し収穫期がなく税査定できない
→穀物適応地は人口集中適応地で国家適応地だが、灌漑を発明したのは国家ではない
→以前に確立されたものを拡大し環境を変え、課税対象とならない生業を禁止した

→コムギ・オオムギ・コメ・トウモロコシは今も世界カロリー消費の半分以上を占めるが、
→大半の初期国家の類似点としては課税可能な穀物を栽培する画一的環境を作り出すこと、
→その土地に大規模な人口を維持して穀物生産・賦役・兵役に当たらせること
→生態学上、疫学上、政治上の理由により達成されないことが多いが、国家の見果てぬ夢・・・

・それにしても国家とは何か・・・
→わたしが考えているのは初期メソポタミアの国家になりつつある政体群
→国家らしさ(王・行政スタッフ・階級・センター・城壁・税の徴収と分配)があればいい
→ウル第三王朝以前にも町の集合体のようなものはあったが、国家らしさの定義次第・・・
→国家が興るのは生態学的に豊かな地域というのは誤った理解を呼び、必要なのは富
→その富とは収奪と測定が可能な主要穀物と育てるための人口

→湿地など多様性に富んだ地域では移動性の人々に多様な生業を与えるが、判別が難しく
多様で一過性なので、国家を作ろうとしてもうまく行かない
(小規模にはラテンアメリカ植民地の居留地や単作プランテーションのバラックの例)

第5章「人口の管理」のテーマ
・古代国家の樹立と維持にあたっての強制の役割に影響するので重要
→最初期の国家形成が主として強制による事業だったとすれば・・・
→ホッブスやロックのような社会契約論者の国家観(市民平和・社会秩序・恐怖からの自由)
の見直しが必要になる

→初期の国家は人口維持に失敗したところが多い
→しかし強制力を振るっていた(非自由労働・奴隷・強制移住など)圧倒的な証拠がある
→富の一形態(労働力)として繁殖も含め管理していた
→古代世界で奴隷制が頂点に達したのは古代ギリシャと初期ローマ帝国で完全な奴隷制国家
→(南北戦争前のアメリカ南部もこれに当たる)
→メソポタミアや初期エジプトではそれほどではなく別形態の非自由労働で、逃亡や失踪に
言及されており、万里の長城も蛮族を入れないためと納税者を出さないためとも・・・
→初期の国家が奴隷制を法制化し組織したことは間違いない

第6章「初期国家の脆弱さ」のテーマ
・脆弱さの理由とその大きな意味をどう理解するか
→原因は複数あり滅亡すれば記録も書けないから文書記録は助けにならない
→強調するのは農業生態自体が持っている内生的な原因
→旱魃や気候変動などの外生的な原因は明らかだが、内生的な原因として、
1.作物と人と家畜(と付随する寄生虫や病原菌)の集中による作物も含めた伝染病
2.都市化→
河川流域国家の上流部での森林破壊と洪水
3.集中的な灌漑農業→土壌の塩類化による耕作放棄
→「国家の崩壊」はもとの構成要素に戻っただけで文明は続くのだから混同してはいけない
→政治秩序の単位は大きい方がいいと決めつけるのもよくない

第7章「野蛮人の黄金時代」のテーマ
・初期国家の時代には国家の臣民よりも野蛮人の数が多く、地球の居住可能な地域の大半を
占有していた
→英語のバーバリアンはギリシャ語が語源、捕えた奴隷以外にも文明化されたエジプト人など
隣人にも用いられ、自分たちと国家の外にいる者を区別するために使っていた
→国家の脆弱な時代は野蛮人にとってはいい時代
→野蛮人ゾーンは国家の農業形態の鏡像となる
→狩猟・焼畑農業・貝類の採集・採食・遊牧・イモ類・自生していれば僅かな穀類のゾーン
→物理的な移動ゾーンで、混合的で移動性の生業戦略ゾーン→判読不能な生産
→野蛮人は文化上のカテゴリーではなく政治上のカテゴリー
→国家によって管理されていない人びとを指し、フロンティアは税と穀物の領域が終わるライン

→最初期の国家は無国家民に比べて脆弱で獲物になったが、略奪より交易が大きかった
→金属鉱石、材木、皮革、黒曜石、蜂蜜、薬草や香草などを提供できたのは多様性に富んだ
環境に広く暮らす野蛮人
→沿岸海運が発達すると長距離の交易が可能になり、狩猟や採集も生業から交易目的に
→交易で利益をあげ、貢納品と必要なら略奪で利益を増やし、税と農作業の煩わしさは回避、
栄養価が高く多様性のある食事と大きな物理的移動性を謳歌した

→初期国家と取引された最大商品はおそらく奴隷で、たいていは別の野蛮人
→古代国家は戦争捕虜と奴隷貿易に特化した野蛮人からの買い付けで人口を補充し、
殆どの初期国家が野蛮人を傭兵にして国防に当たらせた
→これにより野蛮人は自分たちの短い黄金時代の終焉に貢献した・・・



と、序章にあった「手短な行程表」だけでも、はじめて気づかされることばかりで興味深く、
わたくしのメモ(つーか脳のメモリー容量)がいっぱいになってしまったので・・・
本章(1章~7章)の読後メモと感想については、いずれまた・・・

(追記です)
次の記事で本章部分の読後メモを紹介しています





m98k at 10:39│Comments(0) mixiチェック 書斎 | 沙漠緑化・熱帯雨林再生

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