2022年12月02日
核兵器について、本音で話そう・・・
とーとつですが「核兵器について、本音で話そう」とゆー本のご紹介であります
本日、自民党と公明党が自衛目的でミサイル発射拠点などを叩く反撃能力の保有で合意、
国家安全保障戦略など安保関連3文書を今月中に閣議決定する、との報道がありました
本書にもその必要性などが詳しく書かれてましたので、何かの参考になればと・・・
表紙
裏表紙にあった著者紹介
表紙カバー裏にあった惹句
日本では数少ない核や軍事の専門家4人による2021年9月10日の座談会の記録です
(なのでウクライナ侵攻以降の情勢については入ってません)
「はじめに」によると・・・
「それぞれの立場も考え方も違うが、これまでタブー扱いされてきた核問題について国民に
見える形で、現実的な議論を戦わせることの必要性では一致を見た」とのことでした
確かに今の日本ではこちらの本にもあったとおり、核兵器はもちろん軍事全般に関しても、
基本的な世界の常識を知らないままの話が蔓延り、現実とゲームなど空想世界との区別が
つかない連中がウクライナや台湾の問題でも、それらに踊らされている感があります
ま、わたくしも踊らされている一人なので、あらためてウクライナ侵攻前の核の問題を
おさらいしようと、とりあえず何冊かを借りてみた次第・・・
著者・発行所・発行年月日などは奥付のとおり
著者は外務省や自衛隊やメディアの現場で核や軍事に関わってこられた方々・・・
例によって目次のみのご紹介・・・
以下、いつもどおりのテキトー思いつくままメモなので、正しくは本書のご熟読を・・・
(著者の独断では?と思える部分もありましたが、横やりは入れず概要をメモしました
さらに座談会なので各氏でも異なる意見でしたが発言者名なども省略しています)
第1章「核をめぐる現状」より
・核抑止の議論は東西冷戦期のヨーロッパで進められ従来は「ヨーロッパの話」だった
→通常兵器で圧倒的に有利なソ連軍を、どうやって核を用いて抑止するか、という議論と
核不拡散の議論とはクルマの両輪、コインの表裏だった
→これまで日本では核不拡散・核廃絶の議論と、どうやって核抑止を保障するかという議論は、
まったく交わっていなかった
→アジアでも現実的な核の議論をしなくてはいけないと考えて集まってもらった
・これまでの常識が通用しない核をめぐる世界の現状
→核兵器が生まれてから75年以上が経過した
→冷戦期のヨーロッパは核ミサイルによる相互確証破壊MADへ
→大量報復戦略(大都市空爆など)から柔軟反応戦略(ピンポイント基地攻撃など)へ
→1970常任理事国による核兵器不拡散条約NPT(仏中の加盟は1992)
→1987中距離核戦力条約INF(米ソ)
→1991第1次戦略兵器削減条約STARTⅠ(米ソ)
→と、ほぼ人類の常識に沿った核の議論へ落ち着いて行った
→今は中国の台頭がすさまじく北東アジアでも紛争を想定した核抑止論が必要
→日米豪韓台に太平洋に領土を持つ英仏も含めた首脳レベルでの核議論が必要
→考慮しなくてはならないのは核兵器の進化とシステムの脆弱化
→高高度弾道ミサイルから低高度極超音速ミサイルへ(露中米は開発済で北朝鮮は実験中)
→従来の弾道ミサイル迎撃システムでは歯がたたない
→国土が広いロシアの核の小型化、戦術核先制使用の公言
→宇宙、サイバー攻撃を含む平時と有事が曖昧なハイブリッド戦争
→中距離ミサイルをいっぱい持っている中国と配備されていない日米との非対称
→インド・パキスタン・イスラエル・北朝鮮の核保有(やがてイランも)や、サイバー空間や
宇宙空間への依存による体系の脆弱化・・・
→これらの変化の中で日本の核抑止力を強化するにはどうすればいいのか?
→国産核保有は政治・外交上あり得ないので日米同盟の核抑止力をどうするかの話になる
・変化した五つのポイント
1多極化により今まで米露間にあった経験や検証による「暗黙の了解」が通用しなくなった
2性格の違った事態が同時多発し、それがネットによりさらに加速している
→不測の事態が発生しやすくなっている
→今まで双方に共有されていたエスカレーションラダー(エスカレーションすればこうなる)
がなくなり、これが核抑止の構造に影響を与え不確実性を高めている
3通常兵器と核兵器とのつながりがよりグレーになってきている
→兵器システムの有効性や相互関係、紛争の形態、通常兵器と核兵器、戦争とそれ以外の事態
→サイバー空間での妨害行為やグローバルサプライチェーンの問題など、核兵器システムの
信頼性の問題→兵器だけでなく、それを運用する体制も疑わなければならない状況
4中国の通常兵器と核戦力の増強と加速→独特な世界にどう対応するか
5戦後の核戦争抑止は「ゴリ押し」の成果が積み重なったもの→ゴリ押しした方が勝つ
→ロシアがジョージアやウクライナへの対応で成功している
・核抑止は重要な柱だが、それを延長するだけでは足りなくなってきている
・自衛隊にいても核問題は遠かった
→国防の現場にあった者として核の問題は非常に距離が遠かった
→自衛隊はアメリカの核の傘の下、非核で国防に専念し核戦略には向き合ってこなかった
→ただ核戦略の影響は大きく受けていたと感じている
→入隊した1980年当時、米ソのSLBMによる核戦略には北海道が非常に重要だった
→今の南西地域への配備も、核を含む中国のA2/AD(接近阻止/領域拒否)戦略への対応
→冷戦期から現在まで通常戦力で米国の核抑止戦略に間接・直接に寄与してきた
→北朝鮮ミサイルへの防衛もイラク派遣も福島への震災派遣も核と関係している
→冷戦のヨーロッパ、その後の中東での戦闘やテロではアジア太平洋は第二戦線だったが、
中国、北朝鮮の核戦力増により東アジアが核戦略上、最も重要な場所になってきた
→状況は冷戦期より遥かに複雑で、日本は冷戦期のNATO諸国以上に核問題を真剣に考えるべき
・攻撃と防御の境が曖昧に(ウクライナ侵攻前の状況です)
→核の問題は冷戦時代には攻撃兵器と防御兵器の組み合わせによる戦略的安定性の問題だった
→互いのバランスを何とか均衡させ、様々な意思疎通の手段を介してバランスを何とか保つ
→今の状況は遥かに複雑で、核のリスクが最も高いのは東アジア
→米国はじめ西側の脅威は、ロシアから「ならず者国家による大量破壊兵器とテロ」へ
→2019年のINF条約の失効、2002年のABM制限条約の無効化・・・
→これらの動きを見て中国がどう考え、東アジアの安全保障にいかなる影響を与えるのか、
そうした観点からの日米間の話し合いは全くなかった
(攻撃兵器の開発合戦)→略
・日本がアメリカの核政策にコミットした唯一の例
→アメリカは核についてヨーロッパとは議論するがアジアについては「オレに任しとけ」
→日本も議論したくないから好都合だった
→唯一踏み込んだのはレーガン大統領に絡みINF全廃を実現した中曽根総理のゼロ・オプション
→ドイツは左派政党でも米国との核協議に取り組んだが日本では・・・
・スターウォーズ計画SDIという契機→略
→ミサイル防衛の話がなければ「先制攻撃しろ」か、怖くて圧力をかけられないかどちらか
→世論を落ち着かせ安定にも貢献している
→NATOは大陸の核同盟でありリスク、計画、さらに人までシェアしている
→NATOは集団防衛体制だがアジアの同盟はすべて二国間同盟で舞台は広大な海洋
・専門家の中だけの議論でいいのか→略
・核抑止と核不拡散は「一緒の話」
→軍縮・不拡散・平和的利用・抑止・・・略
→日本の戦略文書の流れ
→76,95,04までの防衛計画大綱では「核の脅威に対しては米国の核抑止力に依存」のみ
→10,13,18では「核抑止力を中心とする米国の拡大抑止は不可欠」と核抑止以外を含む記述に・・・
→戦略的安定性を構築することで相互抑止が成立するが、日本の政治エリートの議論では
核軍縮・軍備管理・不拡散・軍縮教育といったテーマは専ら「ヒロシマ・ナガサキの話」
→軍縮・不拡散教育は世界にも日本にも非常に重い原点なのだが・・・
→核廃絶が目標であっても核兵器が存在することを前提にした抑止が有効に機能し、
それに伴うリスクを減らし、規模を縮小するための方策は必要
→それには抑止とか軍備管理の意義についても認識して、はじめてコインの表裏が見える
→日本では核廃絶チームと核抑止チームが別々にあって両者は交わらない
→誰を相手にどう戦うのか、それをどう抑止するのか、その中で核をどう位置づけするのか、
リアルなシナリオベースの議論が必要
→ロシアが核先制攻撃するといってるのは通常兵器だけでは周りの国に勝てないから
→アメリカはどちらでも勝てると思ってるので、そんなことをいう必要はない
→今の日本の戦略環境は強大なソ連軍に直面していたNATO成立前の西洋諸国のようなもの
・軍事関係を巡っては緊張感を上げるほど事態が安定するというパラドックスがある
→特に核の世界では緊張が高まれば最低限の透明性確保と検証措置などの信頼醸成に入る
→一方的に軍事力を下げたら戦略環境はかえって不安定になる
→この核抑止の感覚は日本にはあまりない
・今の中国軍は戦前の日本陸海軍と同じでアジアに敵はいないといえるほど強い
→このような軍事勢力が日本の真横に現れたのは元寇・幕末・冷戦初期だけ
→尖閣と台湾が狙われ、韓国は文在寅政権で戦略的方向性が混乱している
→だからこそ有事は起こさせてはいけない
→そのための核抑止力・拡大抑止
→なのでオバマ議論(先制不使用・廃絶)には当時も反対だったが今はもっと反対
→この話は後ほど中国との関係で・・・
第2章「台湾にアメリカの核の傘を提供すべきか」より
・欧州と比べた東アジアの戦略環境の特色は著しい非対称性
→NATOの場合、主たる敵はロシアだけで陸上戦闘が主体
→NATO軍とワルシャワ条約機構軍がスクラムを組んだようになっていた
→NATOの指揮権は米軍人に一本化され事務局も作戦も人員も共有された単純な構造
→東アジアの場合は米国をハブにした「ハブ&スポーク」構造だが、鋼鉄のスポークは
日本と豪州だけで、豪州は遠くて規模も小さい
→韓国は大国化したが陸続きの中国への恐怖心が強く左翼政権は反米・反日
→他の米国の同盟国はフィリピンとタイだが東アジアの安全保障に資する軍事力はない
→頼みのアメリカは太平洋の向こう側にあり脅威認識も指揮権もバラバラ
→なので米国の太平洋同盟網はNATOに比べて哀しいほど弱い
・台湾有事となればアメリカも戦力強化した中国の第一列島線の内側には入れない
→米国の同盟国で日本が当てにできるのは遠い豪州だけ
・非同盟のインドとのクワッド連携は軍事同盟ではない
→しかも中国は北がシベリア、西がゴビ砂漠、南がヒマラヤ山塊で東側に勢力を集中できる
・台湾と韓国は核を持ちたかったが米国が止めた
→米中国交正常化で米華同盟は消えたが、緊張が高まれば米国が核の傘を提供すべきでは?
→台湾に米国防衛の死活的価値はないが世界の信頼がなくなるので守る、そのためには?
・米軍の戦い方は「鬼舞辻無惨型」になる
→鬼滅の刃の鬼舞辻無惨は体内に脳が5つあり無数の鞭が出て敵を叩きまくる
→遠くから反撃し司令部を分散させ、1つが叩かれても別のところから反撃する
→米軍の国防高等研究計画局DARPAが一番研究しているのが日本の漫画やアニメ
・これで台湾有事を戦う場合、核抑止までのエスカレーションラダーをどう組み上げるか
→各段階での戦術的優位を確立する必要がある
→敵が一段上がれば、こちらはさらに高みに上がれることを常に見せつけ、抑止する
→各段階で常に主導権をとる(エスカレーションドミナンス)
・中国の作戦構想、エスカレーションラダーの双方の了解・・・略
・冷戦時は日米や日本独自でも対ソ連シミュレーションの分析や共同評価をやっていたが、
今の台湾をめぐる総合的な分析や評価は行われていない
→戦略環境だけではない「民主台湾」の重要性を日本だけでなく西側全体で認識すべき
・中国は南シナ海を「核の要塞」にしようとしている
→中国の核戦略は最小限抑止・先制不使用から確証報復・攻撃戦略になっている
→そのためのSLBM原潜を遊弋させるには東シナ海では浅く南シナ海が最適
→中でも南沙と西沙とスカボロー礁をつなぐ三角形が最も深いので人工島を作り押さえた
→台湾は東シナ海と南シナ海をつなぐ要で尖閣や南西諸島も渤海湾から東シナ海を経て、
大平洋に出る出口であり、核戦略上は何としても押さえたい場所
→単なるランドパワーの海洋進出とかではなく核戦略上の要請ではないか
→重要性が分かっているから国際的な非難を受けても進出をやめない
→兵器体系の進化とここ10年ぐらいの活発な動きは核戦略と深く連動しているのでは?
・バイデンが2021年8月のアフガン撤退時に「アフガンは自分で自分の国を守る意思を
示さなかったのでアメリカは出ていくが、NATO、日本、韓国、台湾は違う」と発言
・増殖する中国ICBMサイロ→略
→米露なみの核の3本柱TRIAD(ICBM、SLBM、戦略爆撃機)を構築しようとしている
・外交と軍事をどう組み合わせるか
→紛争を避けようと外交官がやることと、紛争に備え軍がやることは違うが両方とも本物
→片手で握手、もう一方の手にナイフというのが普通の国の外交なのだが・・・
→軍縮の動機は「緊張が高まり過ぎて偶発戦争は困るから最低限の透明性確保と信頼醸成を」か、
「これ以上の軍拡はお金がかかり過ぎるからやめよう」のどちらかしかない
→上り調子の今の中国には動機がない
→ロンドン海軍条約の際の帝国海軍艦隊派と同じ
・危機を経験した方が対話は進む
→中国が軍拡路線を走り続けるなら対抗するしかない
→さらに緊張が高まり一触即発になる
→最後は軍備管理・軍縮協議をやるしかなくなる
→その段階でようやくエスカレーションラダーの暗黙の了解に至る
→核兵器配備の相互検証をやって最低限の透明性を確保できるようになる
→米ソ冷戦時と同じ冷たい平和で戦略的安定性が実現する
・日中国交正常化の前提になっていた「台湾海峡の平和」
→台湾島~与那国島の距離は110kmで、東京~熱海間とほぼ同じ
→朝鮮有事では対日ミサイル攻撃がない限り後方支援だろうが、台湾有事では・・・
→日米安保条約の第6条でいう極東とは日米の旧植民地で西側に残った韓国・台湾・フィリピン
→この「極東」の安全保障のために米軍は日本の基地を使用すると定めた(1960)
→日本はポツダム宣言を受諾した→その第8項には「カイロ宣言は履行される」とある
→カイロ宣言には「日本国が清国より盗取した(台湾などの)地域を中華民国に返還する」とある
→日中共同声明には「日本国政府は台湾が中華人民共和国の不可分の領土であるという
中華人民共和国の立場を理解し尊重し、ポツダム宣言第8項の立場を堅持する」と書いた
→日本はサンフランシスコ平和条約で台湾を既に放棄している
→なので台湾は中華人民共和国のものとは言わず、その立場を尊重すると言ってるだけ
→その後の政府統一見解は「台湾問題は基本的には中国の国内問題であり当事者間で平和的に
解決されることを希望し、かつ武力紛争の可能性はないと考えている」というもの
→以上から「基本的には国内問題」というのは平和的に解決される限り国内問題という意味
(中距離ミサイル配備は認めるのか)→略
(アメリカの核戦略にもの申したいなら人を出せ)→略
・自衛隊が南西諸島に部隊を配する理由
→沖縄本島には米軍基地があり自衛隊もいるが、沖縄から九州までの600キロ、沖縄本島から
与那国島までの500キロにはレーダーなど海空施設はあったが戦略的には空白域だった
→九州南端から与那国島までの1200キロに中国を第一列島線の中へ封じ込める逆の壁を作る
・危機の際の対話の枠組みを準備しておくべき
→日米間、米台間はあるが日台間、日米台間はない→そろそろ必要な時期では?
・政策的な議論をしない政治家たち
→政府部内の専門的な話を、普通の人として聞いて感じて、考えたことを普通の言葉で
しゃべって発信することは、政治家にしかできない
→核の議論も政治の波に乗せないと、安保系専門家と反核ロビーの不毛な対立が続くだけ・・・
・中距離ミサイルのギャップをどう埋めるか
→アメリカは中国とのミサイルギャップを急いで埋めようとしている
→日本も射程を伸ばす努力以外に中距離ミサイル持ち込みの是非を国民に問うべき・・・
第3章「北朝鮮の核」より
・北朝鮮が暴発すれば朝鮮半島と日本列島、グアム島までが一つの戦域になる
→日米同盟、韓米同盟はあるが日韓が結びつかない
→韓国にとっての北朝鮮は(一時的に不法占拠されている)韓国の一部
→なので日本が攻撃されても日本が勝手に反撃することは許さない
→日韓の意思統一・連携はハワイのインド太平洋軍司令部でやるしかない
→韓国との多様なチャンネルが今こそ必要
→時の政権の動向や短期的な政治外交の影響で重要なパイプを切らせてはいけない
・韓国の防衛費は日本と同じ5兆円で経済はロシアやカナダに並んでいる
→ソ連はなくなったが国内冷戦のままで、日本では70代80代の左翼世代が、まだ40代50代
→日本の60代以下にあたる10代でアメリカン・リベラルを吸い込んだ世代は、まだ20代30代
→彼らが社会の中枢に出てくるようになれば・・・
・最初に核装備した空母が横須賀に入港したのは1953年10月
→その後は日本海に展開し休戦後の「ぞっとするような抑止力として貢献した」
→当時は空母内で時間をかけて核兵器を組み立て出撃態勢に入っていた
→なので日本の核の傘はアメリカにしてみれば、もともと日韓ワンセットだった
→中国ソ連に「いつでも核が使えるぞ」と見せつけるため
→今の中国は負ける方にはつかず先に平壌に攻め込んで傀儡政権を立てるかも・・・
第4章「ロシアの核」より(ウクライナ侵攻前の状況です)
・面積は中国とアメリカを足したぐらい、人口は日本と変わらず経済力はカナダや韓国と同じで
日本の1/4ぐらい、国家収入の半分が石油・天然ガスの輸出税で、将来は明るくない
→西側の資金技術がクリミア侵攻による制裁で入らなくなり、武器輸出も市場がなくなり、
嫌いな中国に買ってもらうしかない
→中国の極東シベリア進出が心配だがアメリカと対抗するために中国と組む
→対米保険が中国で、対中特約保険が中国への押さえとしての日本
→中国との関係では日露の利害関係は一致する部分もあるので安倍外交でも・・・
・国土が広く人口が少ないので(兵員90万)、核戦力は譲らず先制攻撃を公言している
→INF条約をやめた理由、その後どうなるか、米露の戦略核にどこまで中国が迫るか→略
・中国の戦略原潜は南シナ海の遊弋だが、ロシアではバレンツ海とオホーツク海の遊弋
→北方領土や千島列島への最新装備配備・・・返還交渉は容易ではない
・核についてのドクトリンは変わっていない
→アメリカ相手のトラディショナルな核戦略は守る
→ハイブリット戦の大火力として低出力の核は使う
→NATO内の飛び地などは戦域(核)ミサイルで守るしかない
・4000キロの国境や今後の北極海航路など、嫌いな中国に対してどうするか
→中国の警戒即時発射態勢への移行はロシアの潜在的な脅威になるか
→中長期的には対中警戒が対西側警戒を上回る可能性もあるのでは・・・
・中国はまだISR(情報・監視・偵察)には弱く早期警戒システムなどは教えているのか
→反米が共通利益なので中国への武器輸出は強化しているのでは
第5章「サイバーと宇宙」より
・勝つにはまず敵の早期警戒衛星・偵察衛星・測位衛星・通信衛星とそれらの基地を潰す
→最近では物理攻撃でなくてもサイバー攻撃やジャミングで宇宙をブラックアウトできる
→核兵器とそれを支えるシステムの脆弱性は大きくなっている
→サイバー戦の時代に古典的な核抑止論は機能するのか
・核廃絶を目指すにしろ核抑止前提の軍縮・軍備管理を進めるにしろ、抑止が機能する環境を
どうやって作るか、様々なリスクをどう減らすかは大きなテーマ
→米露間には一定の理解があり、アメリカは中国とも対話する姿勢を示しているが・・・
・サイバー空間攻撃から通常紛争・核紛争へ転化する可能性が高くなっている
→両側から議論する必要があるがサイバー技術は民間が先行しておりルール作りは難しい
→民間衛星や他国衛星に軍事利用可能な機能を搭載して目標を複雑にする動きもある
→社会経済システムと軍事システムが繋がり、ますますグレーになっている
・宇宙やサイバー空間のインフラがなければ核兵器の運用は成り立たない
→核兵器の議論は宇宙やサイバー空間を含めたトータルなシステムの話
→国際的な枠組みが必要
→EMP(電磁パルス)攻撃へのシールドなど抗堪性の強化は非核国でも必要
→C5ISR(指揮・統制・通信・コンピュータ・サイバー・インテリジェンス)の重要性
→通常戦力でもC5ISRを破壊されたら核運用能力の破壊になりエスカレーションする
→ルール・オブ・ゲームズを構築しないと抑止力は成り立たないとの認識共有が必要
・核装備には金がかかるが核を無力化したり不利にするサイバー攻撃は少数でも可能
→核保有国でのプロテクション・ルール作り・合意形成がないと抑止機能が崩壊する
・昔の戦争は局地戦から全面戦争、最後にインフラ落とし(破壊)で民間人も犠牲になった
・今は最初にインフラを落とせる→B29の大編隊は要らず天才ハッカー4~5人で済む
→そこから戦争が始まる可能性が高い→いきなり核で報復するのか・・・
・重要インフラを守るのは流れるパケットを全て押さえる態勢を構築する平素の戦い
→アメリカには軍と政府とシステムを作った企業を囲い込む政府クラウドがある
→鉄壁のファイアウォールで囲まれたデジタルの城だがローテク企業は入れない
→パイプラインは重要インフラだがローテクで入れず2021年にハッカー集団にやられた
→日本には守られた政府クラウドはなく自衛隊が守るのは自衛隊分野だけという法制度
→米国では政府のサイバーセキュリティは国防総省の所管
→日本には統合部署そのものが存在しない
(以下のサイバーセキュリティの話は理解できなかったので省略)
第6章「日本の核抑止戦略」より
・戦後の核抑止論をめぐる経緯
→戦後ドイツは二分され55年に連邦軍創設NATO加盟
→イギリス・フランスも核を持ちソ連との最前線だったのでNATO核という形に結実
→社会民主党SPDも59年には立ち位置を西側に
→政権を取っても安全保障政策は不変で国内冷戦はなかった
→日本は逆で55年体制からアメリカ寄り自民党とソ連寄り社会党の政治分断構図に
→国内冷戦だが島国で戦略環境に恵まれ核問題は曖昧に→非核三原則の曖昧運用
→曖昧にすることでも核抑止効果はあったがブッシュ時代に海上戦術核はなくなった
→今後どうするかは先送りされたまま・・・
・今また戦略環境が激変している→中国の圧倒的な通常戦力
→核の傘といっても戦略核の運用はアメリカの都合で決まる
→日本はこの地域の戦術核をどうするか考える必要がある
→NATO同様F35などで核の傘を一緒に背負うのか、戦術核もアメリカ任せか
→韓国は核を持ちたいので戦術核が復活すればF35などの共同運用になるだろう
→NATOと同様の核シェアリングをすべきか・・・瓶の蓋論との関係、NPTとの関係→略
→NATOとの違いは核戦力を持ち使用ハードルが低く異なる考えの3国が相手ということ
・沖縄の核と西ドイツの核の経緯→略
・日本が核攻撃されたらアメリカは核で反撃するのか
→しない(恐らく有利な休戦交渉に持ち込む)から、日本の核抑止レベルを上げるべき
→戦術核の話も「お互い怖いから撃たない」へ持って行くための議論で準備が必要
→最悪のシナリオを考え「地獄が見えるから小競り合いからやめよう」が核抑止の議論
→自衛隊で核兵器の管理運用ができるまで予算と人員があって10年ぐらいかかる
→結論はどうあれ10年後の国民も理解できる核の議論は必要
・日本の核武装派
→晴嵐会など自民党タカ派でNPT加盟(76年)を遅らせたグループ
→NPTは核の傘で核を持たせない条約→軍事的に核抑止力については正しい議論だった
→核抑止力強化の方法は心理戦も含め色々あるが今も具体論に入れないまま
→具体論には国民の納得と合意が必要だが政治家は核問題には二の足を踏む
・日本はなぜ打撃力を持てなかったか
→国内の政治的な理由、日米の役割分担、当時の戦略的な環境から専守防衛だけに
→今は周りの国の攻撃能力が飛躍的に増大している→長射程(中距離)ミサイルの是非
→沖縄本島から尖閣なら500キロ、九州から南西諸島なら1000キロの射程が必要
→自国の島嶼防衛用としては整備を進めてきた
→抑止の観点からは反撃力としての打撃能力が重要なので議論が必要
(自国領外への反撃能力保有を閣議決定すると与党合意したのが本日2022.12.02)
・長射程(中距離)を持つなら日米共同で
→長射程はミサイルだけでなく情報収集やシステムが重要で日米同盟の真価の分野
→アメリカ海兵隊は水陸作戦用の戦車や火砲を削減して、初期段階から前方に分散展開し
地上発射の巡航ミサイルなどを配備する「遠征前進基地作戦」に舵を切った
→中国のA2/ADを無効化するため→第一列島線内の艦艇を撃てるミサイル打撃力
→INF条約の失効により保有可能になった対艦ミサイル装備を開発すると明言している
→日本の努力と重なる部分があり戦略目的や運用ドクトリンでも連携することが重要
(日本単独での保有を閣議決定すると与党合意したのが本日2022.12.02)
・日本は専守防衛で巨額のミサイル防衛システムを入れ、空自と海自の統合防空は進んだ
→ただし中国のミサイル攻撃は飽和攻撃で防衛システムだけでは防げない
→飽和攻撃には大してカネはかからない
(トマホークで数億、北朝鮮のミサイルは数千万、対する迎撃ミサイルは一発数十億)
→戦争の経済学は敵にカネを使わせることが基本でコスパが悪すぎる
・ロシア・中国・北朝鮮はミサイルと核を保有、中距離ミサイルだけなら台湾・韓国も保有
→剣道の乱取り稽古で全員が長めの竹刀を持って戦う中、日本だけプラチナ繊維製の高価な
小手先防具による「真剣白刃取り」だけで戦うのか・・・
(日本も長めの竹刀を持つことを閣議決定すると与党合意したのが本日2022.12.02)
・日本の先制攻撃の議論は1956年の相互確証破壊の頃のもの
→敵の核ミサイルを先制攻撃できるか、先制攻撃されても第二攻撃力を残せるか・・・
→今は発射前の先制攻撃など不可能で「撃たれたら撃ち返すぞ」という抑止しかない
→空自は射程1000キロの空対地巡航ミサイルを保有し始めているが自国領内での使用に限定
(この限定解除を閣議決定すると与党合意したのが本日2022.12.02)
・国会議員の質は冷戦時代よりも下がっている
→安全保障政策が国会対策に飲み込まれている
→冷戦時代は左右で対立していたが議論のレベルは高く本格論戦もあった
→今は幅広い議論ができるようになったのに高レベルの議論がない
→「立場は違っても、この人の言うことは信用できる」という人が今はいない
→長射程ミサイルのプラス効果とマイナス帰結を公の場で論じるべき
→その上で「9条の範囲内」という政府の説明に国民の大半が納得できるかどうか
→どちらの結論になるにしても、このプロセスは不可欠
(このプロセスなしに閣議決定すると与党合意したのが本日2022.12.02)
第7章「核廃絶と不拡散」より
・核不拡散、核軍縮、核廃絶について
→核は使えない兵器のままか、使える兵器に逆流しつつあるのか
→持っていることに意味があると考えていたが今はロシアの小型核の話もある
→軍縮は成長の落ち着いた国か稠落の始まった国がやるもので、戦前の日本や今の中国・
インドのような成長途上国に無理に呑ませようとしても反発されるだけ
・日本が核兵器禁止条約に加盟しない(反対する)理由
→核抑止議論をせず核廃絶のポーズだけとるのは無責任でポピュリスト的な偽善だから
→外交青書では「核使用をほのめかす相手への抑止ができなくなるから」と説明している
→「安全保障の観点を踏まえず人道の観点から核抑止力を直ちに規制することは危険」
→「核兵器国や被脅威国は支持しておらず国際社会を分断する」
・核廃絶の目標は正しいが、その目的は日本や世界が安全になること
→代替手段としての安全保障が欠かせない(対人地雷やクラスター爆弾の例)
→アメリカに依存している核抑止力の穴埋めをどうするかの議論がないままでは・・・
・NPTの96年の報告時より核兵器状況は悪化している
→98年にインドとパキスタン、06年に北朝鮮が核実験
→18年には国連事務総長が国際的な緊張が高まっていると軍縮を要請した
・NATOの二重決定という先例
→アメリカとロシアは冷戦時代から軍備管理も含め現実的な議論をしてきた
→中国と北朝鮮は軍備管理交渉も軍縮交渉も全く応じないので核抑止体制は必要
→NATO軍とワルシャワ条約機構軍の軍縮交渉で中距離ミサイルの配備も決めた例
→軍備管理と抑止を組み合わせた成功例で両方を結集させる時期が日本にも来ている
・核兵器禁止条約の成立は核兵器国の怠慢の結果
→核兵器のセイリエンス(顕現性)を上げることが本当に日本の安全保障に資するのか
→日米での核シェアリングはセイリエンスを高めるが軍拡など負の連鎖も起こり得る
→中国の核政策の今後が不明な時期での核シェアリングには否定的
→それより米中露の核兵器の役割低減を構想すべき
→そんな戦略環境を創出するための外交を展開すべき
→日米ミサイル防衛システムと中国核施設の相互訪問など・・・
→NPTは95年に無期限延長されたが核供与や威嚇などの禁止法制化は進まず競争が加速
→非核兵器国がNPTの延長を認める代わりに採択されたイスラエル加盟もそのまま放置
→なので核兵器禁止条約の国連採択は核兵器国の怠慢の結果
→日本は条約に反対だけでなく条約の理念は尊重する意思を明確に示すべき
・核のタブーを守る責任
→米戦略家トマス・シェリング博士の2005年ノーベル経済学賞の受賞演説(略)
→核兵器禁止条約を否定することは日本の道徳的権威だけでなく安全保障も損ねる
→すぐに加盟できなくとも、その可能性を排除する必要など毛頭ない
→国際社会ではみんな自国の安全保障だけを考えて動いている
→核を使わないのも自国に波及するのが怖いからで生殺与奪権は他人には与えない
→このダイナミズムの中で、それでも「ないほうがいいね」に持って行かねばならない
→理想を説教するだけでは駄目
→国際関係は大半が力関係なので核不拡散は核抑止の議論も合わせないと聞いてもらえない
→力関係と損得勘定で動く核P5の外交も分かった上で絡んでいかないといけない
→核を使えないようにするためには同盟管理とか軍事バランスとか安全保障全体を議論して
敵にも味方にも共通の利益は軍備管理・軍縮である、という議論にしないと・・・
→中国もどこかでピークアウトするから核は重荷になるはずで、いずれは冷たい平和が実現する
・核の使用を想定していた自衛隊の部隊編成
→日本に抜けてるのは民間防衛や国民保護の部分
→核シェルターはスイス・イスラエル100%アメリカ8割ヨーロッパ7~8割で日本は0.02%
→自衛隊は戦術核攻撃を想定した分散ペントミック配置(欧州駐留米軍の初期配置と同じ)
→普通の師団→旅団→連隊→大隊配置ではなく、分散した師団→連隊→中隊配置
→CBRN(化学・生物・放射能・核兵器)部隊も創設当初からあり研究・訓練している
→核攻撃からどう守るかは自衛隊の一部だけでなく国民で共有することも重要
→国会でのシビアな軍事の話は皆無だが自衛隊は実務で動いていた
→ただし自衛隊の中だけで空域・空港・港湾・電波使用などは調整がついていない
→他省庁とも戦時体制をどうするかの議論ができていない
→安全保障は日米安保に賛成か反対か、自衛隊は違憲か合憲かで止まっていた
→後は戦略的には全く意味不明な法律論ばかりで国民の命を守る議論は出てこない
→日本は災害大国だが最大の災害は戦争、それも核戦争
→日本人は中規模以上の災害は天命と思ってしまい、政府要人でさえ想定外と言ってしまう
→自分の命は自分で守るのと同じような安保議論に変えていかないと・・・
→そのためには国民世論の啓発と政治家の資質向上が絶対に必要
云々・・・
つーことで、
核をめぐるウクライナ侵攻前の現実というのは、おそらくこんな感じだったんでしょう
で、国際情勢はこの座談会の後、ますます深刻化してきてますね
ま、だからと言って台湾有事や北朝鮮のミサイル攻撃に備え、直ちに核の日米共同運用へ、
というのは早計過ぎるでしょうし、そのことが中国などのさらなる軍備増強の原因になる
可能性も否定できません
ただしパワーバランスが崩れていることも確かで、何らかの対策は必要なんでしょうが、
オープンに国防の議論をして国民の合意を得るといっても・・・
本文には「国民世論の啓発」とありましたが、豊富な行政側の情報だけを信用するのは心配
ですし、特に核や軍事の分野は情報が少ないので一番操作されやすい分野・・・
根拠のないポピュリズムや主義主張や陰謀論まで渦巻く世界ですから他国や在野の信頼できる
客観情報も集めて慎重に判断すべき問題ですね
冒頭にも書いたとおり反撃能力については本日以降、閣議決定に向けて動き出すようですが、
戦後の安全保障政策の大きな転換でもあり、閣議決定で済ませられるハナシなのか・・・
ましてや核の共同運用とかになると、さらにオープンな議論と国民の合意が必要でしょう
具体的には政府が国民啓発用に流す情報に対し、他の情報も併せて総合的に冷静に判断して、
自分が最も納得できる主張をしている政治家や政党に投票することになるのですが・・・
そのためには本文にもあったとおり、まずは政治家の資質向上がないと・・・
ええ、今は自己保身と身内や支援者の利益だけで動いているとしか思えない政治家や政党か、
ウケ狙いで煽るだけの良識とは無縁のポピュリストぐらいしか・・・(以下略)
本日、自民党と公明党が自衛目的でミサイル発射拠点などを叩く反撃能力の保有で合意、
国家安全保障戦略など安保関連3文書を今月中に閣議決定する、との報道がありました
本書にもその必要性などが詳しく書かれてましたので、何かの参考になればと・・・
表紙
裏表紙にあった著者紹介
表紙カバー裏にあった惹句
日本では数少ない核や軍事の専門家4人による2021年9月10日の座談会の記録です
(なのでウクライナ侵攻以降の情勢については入ってません)
「はじめに」によると・・・
「それぞれの立場も考え方も違うが、これまでタブー扱いされてきた核問題について国民に
見える形で、現実的な議論を戦わせることの必要性では一致を見た」とのことでした
確かに今の日本ではこちらの本にもあったとおり、核兵器はもちろん軍事全般に関しても、
基本的な世界の常識を知らないままの話が蔓延り、現実とゲームなど空想世界との区別が
つかない連中がウクライナや台湾の問題でも、それらに踊らされている感があります
ま、わたくしも踊らされている一人なので、あらためてウクライナ侵攻前の核の問題を
おさらいしようと、とりあえず何冊かを借りてみた次第・・・
著者・発行所・発行年月日などは奥付のとおり
著者は外務省や自衛隊やメディアの現場で核や軍事に関わってこられた方々・・・
例によって目次のみのご紹介・・・
以下、いつもどおりのテキトー思いつくままメモなので、正しくは本書のご熟読を・・・
(著者の独断では?と思える部分もありましたが、横やりは入れず概要をメモしました
さらに座談会なので各氏でも異なる意見でしたが発言者名なども省略しています)
第1章「核をめぐる現状」より
・核抑止の議論は東西冷戦期のヨーロッパで進められ従来は「ヨーロッパの話」だった
→通常兵器で圧倒的に有利なソ連軍を、どうやって核を用いて抑止するか、という議論と
核不拡散の議論とはクルマの両輪、コインの表裏だった
→これまで日本では核不拡散・核廃絶の議論と、どうやって核抑止を保障するかという議論は、
まったく交わっていなかった
→アジアでも現実的な核の議論をしなくてはいけないと考えて集まってもらった
・これまでの常識が通用しない核をめぐる世界の現状
→核兵器が生まれてから75年以上が経過した
→冷戦期のヨーロッパは核ミサイルによる相互確証破壊MADへ
→大量報復戦略(大都市空爆など)から柔軟反応戦略(ピンポイント基地攻撃など)へ
→1970常任理事国による核兵器不拡散条約NPT(仏中の加盟は1992)
→1987中距離核戦力条約INF(米ソ)
→1991第1次戦略兵器削減条約STARTⅠ(米ソ)
→と、ほぼ人類の常識に沿った核の議論へ落ち着いて行った
→今は中国の台頭がすさまじく北東アジアでも紛争を想定した核抑止論が必要
→日米豪韓台に太平洋に領土を持つ英仏も含めた首脳レベルでの核議論が必要
→考慮しなくてはならないのは核兵器の進化とシステムの脆弱化
→高高度弾道ミサイルから低高度極超音速ミサイルへ(露中米は開発済で北朝鮮は実験中)
→従来の弾道ミサイル迎撃システムでは歯がたたない
→国土が広いロシアの核の小型化、戦術核先制使用の公言
→宇宙、サイバー攻撃を含む平時と有事が曖昧なハイブリッド戦争
→中距離ミサイルをいっぱい持っている中国と配備されていない日米との非対称
→インド・パキスタン・イスラエル・北朝鮮の核保有(やがてイランも)や、サイバー空間や
宇宙空間への依存による体系の脆弱化・・・
→これらの変化の中で日本の核抑止力を強化するにはどうすればいいのか?
→国産核保有は政治・外交上あり得ないので日米同盟の核抑止力をどうするかの話になる
・変化した五つのポイント
1多極化により今まで米露間にあった経験や検証による「暗黙の了解」が通用しなくなった
2性格の違った事態が同時多発し、それがネットによりさらに加速している
→不測の事態が発生しやすくなっている
→今まで双方に共有されていたエスカレーションラダー(エスカレーションすればこうなる)
がなくなり、これが核抑止の構造に影響を与え不確実性を高めている
3通常兵器と核兵器とのつながりがよりグレーになってきている
→兵器システムの有効性や相互関係、紛争の形態、通常兵器と核兵器、戦争とそれ以外の事態
→サイバー空間での妨害行為やグローバルサプライチェーンの問題など、核兵器システムの
信頼性の問題→兵器だけでなく、それを運用する体制も疑わなければならない状況
4中国の通常兵器と核戦力の増強と加速→独特な世界にどう対応するか
5戦後の核戦争抑止は「ゴリ押し」の成果が積み重なったもの→ゴリ押しした方が勝つ
→ロシアがジョージアやウクライナへの対応で成功している
・核抑止は重要な柱だが、それを延長するだけでは足りなくなってきている
・自衛隊にいても核問題は遠かった
→国防の現場にあった者として核の問題は非常に距離が遠かった
→自衛隊はアメリカの核の傘の下、非核で国防に専念し核戦略には向き合ってこなかった
→ただ核戦略の影響は大きく受けていたと感じている
→入隊した1980年当時、米ソのSLBMによる核戦略には北海道が非常に重要だった
→今の南西地域への配備も、核を含む中国のA2/AD(接近阻止/領域拒否)戦略への対応
→冷戦期から現在まで通常戦力で米国の核抑止戦略に間接・直接に寄与してきた
→北朝鮮ミサイルへの防衛もイラク派遣も福島への震災派遣も核と関係している
→冷戦のヨーロッパ、その後の中東での戦闘やテロではアジア太平洋は第二戦線だったが、
中国、北朝鮮の核戦力増により東アジアが核戦略上、最も重要な場所になってきた
→状況は冷戦期より遥かに複雑で、日本は冷戦期のNATO諸国以上に核問題を真剣に考えるべき
・攻撃と防御の境が曖昧に(ウクライナ侵攻前の状況です)
→核の問題は冷戦時代には攻撃兵器と防御兵器の組み合わせによる戦略的安定性の問題だった
→互いのバランスを何とか均衡させ、様々な意思疎通の手段を介してバランスを何とか保つ
→今の状況は遥かに複雑で、核のリスクが最も高いのは東アジア
→米国はじめ西側の脅威は、ロシアから「ならず者国家による大量破壊兵器とテロ」へ
→2019年のINF条約の失効、2002年のABM制限条約の無効化・・・
→これらの動きを見て中国がどう考え、東アジアの安全保障にいかなる影響を与えるのか、
そうした観点からの日米間の話し合いは全くなかった
(攻撃兵器の開発合戦)→略
・日本がアメリカの核政策にコミットした唯一の例
→アメリカは核についてヨーロッパとは議論するがアジアについては「オレに任しとけ」
→日本も議論したくないから好都合だった
→唯一踏み込んだのはレーガン大統領に絡みINF全廃を実現した中曽根総理のゼロ・オプション
→ドイツは左派政党でも米国との核協議に取り組んだが日本では・・・
・スターウォーズ計画SDIという契機→略
→ミサイル防衛の話がなければ「先制攻撃しろ」か、怖くて圧力をかけられないかどちらか
→世論を落ち着かせ安定にも貢献している
→NATOは大陸の核同盟でありリスク、計画、さらに人までシェアしている
→NATOは集団防衛体制だがアジアの同盟はすべて二国間同盟で舞台は広大な海洋
・専門家の中だけの議論でいいのか→略
・核抑止と核不拡散は「一緒の話」
→軍縮・不拡散・平和的利用・抑止・・・略
→日本の戦略文書の流れ
→76,95,04までの防衛計画大綱では「核の脅威に対しては米国の核抑止力に依存」のみ
→10,13,18では「核抑止力を中心とする米国の拡大抑止は不可欠」と核抑止以外を含む記述に・・・
→戦略的安定性を構築することで相互抑止が成立するが、日本の政治エリートの議論では
核軍縮・軍備管理・不拡散・軍縮教育といったテーマは専ら「ヒロシマ・ナガサキの話」
→軍縮・不拡散教育は世界にも日本にも非常に重い原点なのだが・・・
→核廃絶が目標であっても核兵器が存在することを前提にした抑止が有効に機能し、
それに伴うリスクを減らし、規模を縮小するための方策は必要
→それには抑止とか軍備管理の意義についても認識して、はじめてコインの表裏が見える
→日本では核廃絶チームと核抑止チームが別々にあって両者は交わらない
→誰を相手にどう戦うのか、それをどう抑止するのか、その中で核をどう位置づけするのか、
リアルなシナリオベースの議論が必要
→ロシアが核先制攻撃するといってるのは通常兵器だけでは周りの国に勝てないから
→アメリカはどちらでも勝てると思ってるので、そんなことをいう必要はない
→今の日本の戦略環境は強大なソ連軍に直面していたNATO成立前の西洋諸国のようなもの
・軍事関係を巡っては緊張感を上げるほど事態が安定するというパラドックスがある
→特に核の世界では緊張が高まれば最低限の透明性確保と検証措置などの信頼醸成に入る
→一方的に軍事力を下げたら戦略環境はかえって不安定になる
→この核抑止の感覚は日本にはあまりない
・今の中国軍は戦前の日本陸海軍と同じでアジアに敵はいないといえるほど強い
→このような軍事勢力が日本の真横に現れたのは元寇・幕末・冷戦初期だけ
→尖閣と台湾が狙われ、韓国は文在寅政権で戦略的方向性が混乱している
→だからこそ有事は起こさせてはいけない
→そのための核抑止力・拡大抑止
→なのでオバマ議論(先制不使用・廃絶)には当時も反対だったが今はもっと反対
→この話は後ほど中国との関係で・・・
第2章「台湾にアメリカの核の傘を提供すべきか」より
・欧州と比べた東アジアの戦略環境の特色は著しい非対称性
→NATOの場合、主たる敵はロシアだけで陸上戦闘が主体
→NATO軍とワルシャワ条約機構軍がスクラムを組んだようになっていた
→NATOの指揮権は米軍人に一本化され事務局も作戦も人員も共有された単純な構造
→東アジアの場合は米国をハブにした「ハブ&スポーク」構造だが、鋼鉄のスポークは
日本と豪州だけで、豪州は遠くて規模も小さい
→韓国は大国化したが陸続きの中国への恐怖心が強く左翼政権は反米・反日
→他の米国の同盟国はフィリピンとタイだが東アジアの安全保障に資する軍事力はない
→頼みのアメリカは太平洋の向こう側にあり脅威認識も指揮権もバラバラ
→なので米国の太平洋同盟網はNATOに比べて哀しいほど弱い
・台湾有事となればアメリカも戦力強化した中国の第一列島線の内側には入れない
→米国の同盟国で日本が当てにできるのは遠い豪州だけ
・非同盟のインドとのクワッド連携は軍事同盟ではない
→しかも中国は北がシベリア、西がゴビ砂漠、南がヒマラヤ山塊で東側に勢力を集中できる
・台湾と韓国は核を持ちたかったが米国が止めた
→米中国交正常化で米華同盟は消えたが、緊張が高まれば米国が核の傘を提供すべきでは?
→台湾に米国防衛の死活的価値はないが世界の信頼がなくなるので守る、そのためには?
・米軍の戦い方は「鬼舞辻無惨型」になる
→鬼滅の刃の鬼舞辻無惨は体内に脳が5つあり無数の鞭が出て敵を叩きまくる
→遠くから反撃し司令部を分散させ、1つが叩かれても別のところから反撃する
→米軍の国防高等研究計画局DARPAが一番研究しているのが日本の漫画やアニメ
・これで台湾有事を戦う場合、核抑止までのエスカレーションラダーをどう組み上げるか
→各段階での戦術的優位を確立する必要がある
→敵が一段上がれば、こちらはさらに高みに上がれることを常に見せつけ、抑止する
→各段階で常に主導権をとる(エスカレーションドミナンス)
・中国の作戦構想、エスカレーションラダーの双方の了解・・・略
・冷戦時は日米や日本独自でも対ソ連シミュレーションの分析や共同評価をやっていたが、
今の台湾をめぐる総合的な分析や評価は行われていない
→戦略環境だけではない「民主台湾」の重要性を日本だけでなく西側全体で認識すべき
・中国は南シナ海を「核の要塞」にしようとしている
→中国の核戦略は最小限抑止・先制不使用から確証報復・攻撃戦略になっている
→そのためのSLBM原潜を遊弋させるには東シナ海では浅く南シナ海が最適
→中でも南沙と西沙とスカボロー礁をつなぐ三角形が最も深いので人工島を作り押さえた
→台湾は東シナ海と南シナ海をつなぐ要で尖閣や南西諸島も渤海湾から東シナ海を経て、
大平洋に出る出口であり、核戦略上は何としても押さえたい場所
→単なるランドパワーの海洋進出とかではなく核戦略上の要請ではないか
→重要性が分かっているから国際的な非難を受けても進出をやめない
→兵器体系の進化とここ10年ぐらいの活発な動きは核戦略と深く連動しているのでは?
・バイデンが2021年8月のアフガン撤退時に「アフガンは自分で自分の国を守る意思を
示さなかったのでアメリカは出ていくが、NATO、日本、韓国、台湾は違う」と発言
・増殖する中国ICBMサイロ→略
→米露なみの核の3本柱TRIAD(ICBM、SLBM、戦略爆撃機)を構築しようとしている
・外交と軍事をどう組み合わせるか
→紛争を避けようと外交官がやることと、紛争に備え軍がやることは違うが両方とも本物
→片手で握手、もう一方の手にナイフというのが普通の国の外交なのだが・・・
→軍縮の動機は「緊張が高まり過ぎて偶発戦争は困るから最低限の透明性確保と信頼醸成を」か、
「これ以上の軍拡はお金がかかり過ぎるからやめよう」のどちらかしかない
→上り調子の今の中国には動機がない
→ロンドン海軍条約の際の帝国海軍艦隊派と同じ
・危機を経験した方が対話は進む
→中国が軍拡路線を走り続けるなら対抗するしかない
→さらに緊張が高まり一触即発になる
→最後は軍備管理・軍縮協議をやるしかなくなる
→その段階でようやくエスカレーションラダーの暗黙の了解に至る
→核兵器配備の相互検証をやって最低限の透明性を確保できるようになる
→米ソ冷戦時と同じ冷たい平和で戦略的安定性が実現する
・日中国交正常化の前提になっていた「台湾海峡の平和」
→台湾島~与那国島の距離は110kmで、東京~熱海間とほぼ同じ
→朝鮮有事では対日ミサイル攻撃がない限り後方支援だろうが、台湾有事では・・・
→日米安保条約の第6条でいう極東とは日米の旧植民地で西側に残った韓国・台湾・フィリピン
→この「極東」の安全保障のために米軍は日本の基地を使用すると定めた(1960)
→日本はポツダム宣言を受諾した→その第8項には「カイロ宣言は履行される」とある
→カイロ宣言には「日本国が清国より盗取した(台湾などの)地域を中華民国に返還する」とある
→日中共同声明には「日本国政府は台湾が中華人民共和国の不可分の領土であるという
中華人民共和国の立場を理解し尊重し、ポツダム宣言第8項の立場を堅持する」と書いた
→日本はサンフランシスコ平和条約で台湾を既に放棄している
→なので台湾は中華人民共和国のものとは言わず、その立場を尊重すると言ってるだけ
→その後の政府統一見解は「台湾問題は基本的には中国の国内問題であり当事者間で平和的に
解決されることを希望し、かつ武力紛争の可能性はないと考えている」というもの
→以上から「基本的には国内問題」というのは平和的に解決される限り国内問題という意味
(中距離ミサイル配備は認めるのか)→略
(アメリカの核戦略にもの申したいなら人を出せ)→略
・自衛隊が南西諸島に部隊を配する理由
→沖縄本島には米軍基地があり自衛隊もいるが、沖縄から九州までの600キロ、沖縄本島から
与那国島までの500キロにはレーダーなど海空施設はあったが戦略的には空白域だった
→九州南端から与那国島までの1200キロに中国を第一列島線の中へ封じ込める逆の壁を作る
・危機の際の対話の枠組みを準備しておくべき
→日米間、米台間はあるが日台間、日米台間はない→そろそろ必要な時期では?
・政策的な議論をしない政治家たち
→政府部内の専門的な話を、普通の人として聞いて感じて、考えたことを普通の言葉で
しゃべって発信することは、政治家にしかできない
→核の議論も政治の波に乗せないと、安保系専門家と反核ロビーの不毛な対立が続くだけ・・・
・中距離ミサイルのギャップをどう埋めるか
→アメリカは中国とのミサイルギャップを急いで埋めようとしている
→日本も射程を伸ばす努力以外に中距離ミサイル持ち込みの是非を国民に問うべき・・・
第3章「北朝鮮の核」より
・北朝鮮が暴発すれば朝鮮半島と日本列島、グアム島までが一つの戦域になる
→日米同盟、韓米同盟はあるが日韓が結びつかない
→韓国にとっての北朝鮮は(一時的に不法占拠されている)韓国の一部
→なので日本が攻撃されても日本が勝手に反撃することは許さない
→日韓の意思統一・連携はハワイのインド太平洋軍司令部でやるしかない
→韓国との多様なチャンネルが今こそ必要
→時の政権の動向や短期的な政治外交の影響で重要なパイプを切らせてはいけない
・韓国の防衛費は日本と同じ5兆円で経済はロシアやカナダに並んでいる
→ソ連はなくなったが国内冷戦のままで、日本では70代80代の左翼世代が、まだ40代50代
→日本の60代以下にあたる10代でアメリカン・リベラルを吸い込んだ世代は、まだ20代30代
→彼らが社会の中枢に出てくるようになれば・・・
・最初に核装備した空母が横須賀に入港したのは1953年10月
→その後は日本海に展開し休戦後の「ぞっとするような抑止力として貢献した」
→当時は空母内で時間をかけて核兵器を組み立て出撃態勢に入っていた
→なので日本の核の傘はアメリカにしてみれば、もともと日韓ワンセットだった
→中国ソ連に「いつでも核が使えるぞ」と見せつけるため
→今の中国は負ける方にはつかず先に平壌に攻め込んで傀儡政権を立てるかも・・・
第4章「ロシアの核」より(ウクライナ侵攻前の状況です)
・面積は中国とアメリカを足したぐらい、人口は日本と変わらず経済力はカナダや韓国と同じで
日本の1/4ぐらい、国家収入の半分が石油・天然ガスの輸出税で、将来は明るくない
→西側の資金技術がクリミア侵攻による制裁で入らなくなり、武器輸出も市場がなくなり、
嫌いな中国に買ってもらうしかない
→中国の極東シベリア進出が心配だがアメリカと対抗するために中国と組む
→対米保険が中国で、対中特約保険が中国への押さえとしての日本
→中国との関係では日露の利害関係は一致する部分もあるので安倍外交でも・・・
・国土が広く人口が少ないので(兵員90万)、核戦力は譲らず先制攻撃を公言している
→INF条約をやめた理由、その後どうなるか、米露の戦略核にどこまで中国が迫るか→略
・中国の戦略原潜は南シナ海の遊弋だが、ロシアではバレンツ海とオホーツク海の遊弋
→北方領土や千島列島への最新装備配備・・・返還交渉は容易ではない
・核についてのドクトリンは変わっていない
→アメリカ相手のトラディショナルな核戦略は守る
→ハイブリット戦の大火力として低出力の核は使う
→NATO内の飛び地などは戦域(核)ミサイルで守るしかない
・4000キロの国境や今後の北極海航路など、嫌いな中国に対してどうするか
→中国の警戒即時発射態勢への移行はロシアの潜在的な脅威になるか
→中長期的には対中警戒が対西側警戒を上回る可能性もあるのでは・・・
・中国はまだISR(情報・監視・偵察)には弱く早期警戒システムなどは教えているのか
→反米が共通利益なので中国への武器輸出は強化しているのでは
第5章「サイバーと宇宙」より
・勝つにはまず敵の早期警戒衛星・偵察衛星・測位衛星・通信衛星とそれらの基地を潰す
→最近では物理攻撃でなくてもサイバー攻撃やジャミングで宇宙をブラックアウトできる
→核兵器とそれを支えるシステムの脆弱性は大きくなっている
→サイバー戦の時代に古典的な核抑止論は機能するのか
・核廃絶を目指すにしろ核抑止前提の軍縮・軍備管理を進めるにしろ、抑止が機能する環境を
どうやって作るか、様々なリスクをどう減らすかは大きなテーマ
→米露間には一定の理解があり、アメリカは中国とも対話する姿勢を示しているが・・・
・サイバー空間攻撃から通常紛争・核紛争へ転化する可能性が高くなっている
→両側から議論する必要があるがサイバー技術は民間が先行しておりルール作りは難しい
→民間衛星や他国衛星に軍事利用可能な機能を搭載して目標を複雑にする動きもある
→社会経済システムと軍事システムが繋がり、ますますグレーになっている
・宇宙やサイバー空間のインフラがなければ核兵器の運用は成り立たない
→核兵器の議論は宇宙やサイバー空間を含めたトータルなシステムの話
→国際的な枠組みが必要
→EMP(電磁パルス)攻撃へのシールドなど抗堪性の強化は非核国でも必要
→C5ISR(指揮・統制・通信・コンピュータ・サイバー・インテリジェンス)の重要性
→通常戦力でもC5ISRを破壊されたら核運用能力の破壊になりエスカレーションする
→ルール・オブ・ゲームズを構築しないと抑止力は成り立たないとの認識共有が必要
・核装備には金がかかるが核を無力化したり不利にするサイバー攻撃は少数でも可能
→核保有国でのプロテクション・ルール作り・合意形成がないと抑止機能が崩壊する
・昔の戦争は局地戦から全面戦争、最後にインフラ落とし(破壊)で民間人も犠牲になった
・今は最初にインフラを落とせる→B29の大編隊は要らず天才ハッカー4~5人で済む
→そこから戦争が始まる可能性が高い→いきなり核で報復するのか・・・
・重要インフラを守るのは流れるパケットを全て押さえる態勢を構築する平素の戦い
→アメリカには軍と政府とシステムを作った企業を囲い込む政府クラウドがある
→鉄壁のファイアウォールで囲まれたデジタルの城だがローテク企業は入れない
→パイプラインは重要インフラだがローテクで入れず2021年にハッカー集団にやられた
→日本には守られた政府クラウドはなく自衛隊が守るのは自衛隊分野だけという法制度
→米国では政府のサイバーセキュリティは国防総省の所管
→日本には統合部署そのものが存在しない
(以下のサイバーセキュリティの話は理解できなかったので省略)
第6章「日本の核抑止戦略」より
・戦後の核抑止論をめぐる経緯
→戦後ドイツは二分され55年に連邦軍創設NATO加盟
→イギリス・フランスも核を持ちソ連との最前線だったのでNATO核という形に結実
→社会民主党SPDも59年には立ち位置を西側に
→政権を取っても安全保障政策は不変で国内冷戦はなかった
→日本は逆で55年体制からアメリカ寄り自民党とソ連寄り社会党の政治分断構図に
→国内冷戦だが島国で戦略環境に恵まれ核問題は曖昧に→非核三原則の曖昧運用
→曖昧にすることでも核抑止効果はあったがブッシュ時代に海上戦術核はなくなった
→今後どうするかは先送りされたまま・・・
・今また戦略環境が激変している→中国の圧倒的な通常戦力
→核の傘といっても戦略核の運用はアメリカの都合で決まる
→日本はこの地域の戦術核をどうするか考える必要がある
→NATO同様F35などで核の傘を一緒に背負うのか、戦術核もアメリカ任せか
→韓国は核を持ちたいので戦術核が復活すればF35などの共同運用になるだろう
→NATOと同様の核シェアリングをすべきか・・・瓶の蓋論との関係、NPTとの関係→略
→NATOとの違いは核戦力を持ち使用ハードルが低く異なる考えの3国が相手ということ
・沖縄の核と西ドイツの核の経緯→略
・日本が核攻撃されたらアメリカは核で反撃するのか
→しない(恐らく有利な休戦交渉に持ち込む)から、日本の核抑止レベルを上げるべき
→戦術核の話も「お互い怖いから撃たない」へ持って行くための議論で準備が必要
→最悪のシナリオを考え「地獄が見えるから小競り合いからやめよう」が核抑止の議論
→自衛隊で核兵器の管理運用ができるまで予算と人員があって10年ぐらいかかる
→結論はどうあれ10年後の国民も理解できる核の議論は必要
・日本の核武装派
→晴嵐会など自民党タカ派でNPT加盟(76年)を遅らせたグループ
→NPTは核の傘で核を持たせない条約→軍事的に核抑止力については正しい議論だった
→核抑止力強化の方法は心理戦も含め色々あるが今も具体論に入れないまま
→具体論には国民の納得と合意が必要だが政治家は核問題には二の足を踏む
・日本はなぜ打撃力を持てなかったか
→国内の政治的な理由、日米の役割分担、当時の戦略的な環境から専守防衛だけに
→今は周りの国の攻撃能力が飛躍的に増大している→長射程(中距離)ミサイルの是非
→沖縄本島から尖閣なら500キロ、九州から南西諸島なら1000キロの射程が必要
→自国の島嶼防衛用としては整備を進めてきた
→抑止の観点からは反撃力としての打撃能力が重要なので議論が必要
(自国領外への反撃能力保有を閣議決定すると与党合意したのが本日2022.12.02)
・長射程(中距離)を持つなら日米共同で
→長射程はミサイルだけでなく情報収集やシステムが重要で日米同盟の真価の分野
→アメリカ海兵隊は水陸作戦用の戦車や火砲を削減して、初期段階から前方に分散展開し
地上発射の巡航ミサイルなどを配備する「遠征前進基地作戦」に舵を切った
→中国のA2/ADを無効化するため→第一列島線内の艦艇を撃てるミサイル打撃力
→INF条約の失効により保有可能になった対艦ミサイル装備を開発すると明言している
→日本の努力と重なる部分があり戦略目的や運用ドクトリンでも連携することが重要
(日本単独での保有を閣議決定すると与党合意したのが本日2022.12.02)
・日本は専守防衛で巨額のミサイル防衛システムを入れ、空自と海自の統合防空は進んだ
→ただし中国のミサイル攻撃は飽和攻撃で防衛システムだけでは防げない
→飽和攻撃には大してカネはかからない
(トマホークで数億、北朝鮮のミサイルは数千万、対する迎撃ミサイルは一発数十億)
→戦争の経済学は敵にカネを使わせることが基本でコスパが悪すぎる
・ロシア・中国・北朝鮮はミサイルと核を保有、中距離ミサイルだけなら台湾・韓国も保有
→剣道の乱取り稽古で全員が長めの竹刀を持って戦う中、日本だけプラチナ繊維製の高価な
小手先防具による「真剣白刃取り」だけで戦うのか・・・
(日本も長めの竹刀を持つことを閣議決定すると与党合意したのが本日2022.12.02)
・日本の先制攻撃の議論は1956年の相互確証破壊の頃のもの
→敵の核ミサイルを先制攻撃できるか、先制攻撃されても第二攻撃力を残せるか・・・
→今は発射前の先制攻撃など不可能で「撃たれたら撃ち返すぞ」という抑止しかない
→空自は射程1000キロの空対地巡航ミサイルを保有し始めているが自国領内での使用に限定
(この限定解除を閣議決定すると与党合意したのが本日2022.12.02)
・国会議員の質は冷戦時代よりも下がっている
→安全保障政策が国会対策に飲み込まれている
→冷戦時代は左右で対立していたが議論のレベルは高く本格論戦もあった
→今は幅広い議論ができるようになったのに高レベルの議論がない
→「立場は違っても、この人の言うことは信用できる」という人が今はいない
→長射程ミサイルのプラス効果とマイナス帰結を公の場で論じるべき
→その上で「9条の範囲内」という政府の説明に国民の大半が納得できるかどうか
→どちらの結論になるにしても、このプロセスは不可欠
(このプロセスなしに閣議決定すると与党合意したのが本日2022.12.02)
第7章「核廃絶と不拡散」より
・核不拡散、核軍縮、核廃絶について
→核は使えない兵器のままか、使える兵器に逆流しつつあるのか
→持っていることに意味があると考えていたが今はロシアの小型核の話もある
→軍縮は成長の落ち着いた国か稠落の始まった国がやるもので、戦前の日本や今の中国・
インドのような成長途上国に無理に呑ませようとしても反発されるだけ
・日本が核兵器禁止条約に加盟しない(反対する)理由
→核抑止議論をせず核廃絶のポーズだけとるのは無責任でポピュリスト的な偽善だから
→外交青書では「核使用をほのめかす相手への抑止ができなくなるから」と説明している
→「安全保障の観点を踏まえず人道の観点から核抑止力を直ちに規制することは危険」
→「核兵器国や被脅威国は支持しておらず国際社会を分断する」
・核廃絶の目標は正しいが、その目的は日本や世界が安全になること
→代替手段としての安全保障が欠かせない(対人地雷やクラスター爆弾の例)
→アメリカに依存している核抑止力の穴埋めをどうするかの議論がないままでは・・・
・NPTの96年の報告時より核兵器状況は悪化している
→98年にインドとパキスタン、06年に北朝鮮が核実験
→18年には国連事務総長が国際的な緊張が高まっていると軍縮を要請した
・NATOの二重決定という先例
→アメリカとロシアは冷戦時代から軍備管理も含め現実的な議論をしてきた
→中国と北朝鮮は軍備管理交渉も軍縮交渉も全く応じないので核抑止体制は必要
→NATO軍とワルシャワ条約機構軍の軍縮交渉で中距離ミサイルの配備も決めた例
→軍備管理と抑止を組み合わせた成功例で両方を結集させる時期が日本にも来ている
・核兵器禁止条約の成立は核兵器国の怠慢の結果
→核兵器のセイリエンス(顕現性)を上げることが本当に日本の安全保障に資するのか
→日米での核シェアリングはセイリエンスを高めるが軍拡など負の連鎖も起こり得る
→中国の核政策の今後が不明な時期での核シェアリングには否定的
→それより米中露の核兵器の役割低減を構想すべき
→そんな戦略環境を創出するための外交を展開すべき
→日米ミサイル防衛システムと中国核施設の相互訪問など・・・
→NPTは95年に無期限延長されたが核供与や威嚇などの禁止法制化は進まず競争が加速
→非核兵器国がNPTの延長を認める代わりに採択されたイスラエル加盟もそのまま放置
→なので核兵器禁止条約の国連採択は核兵器国の怠慢の結果
→日本は条約に反対だけでなく条約の理念は尊重する意思を明確に示すべき
・核のタブーを守る責任
→米戦略家トマス・シェリング博士の2005年ノーベル経済学賞の受賞演説(略)
→核兵器禁止条約を否定することは日本の道徳的権威だけでなく安全保障も損ねる
→すぐに加盟できなくとも、その可能性を排除する必要など毛頭ない
→国際社会ではみんな自国の安全保障だけを考えて動いている
→核を使わないのも自国に波及するのが怖いからで生殺与奪権は他人には与えない
→このダイナミズムの中で、それでも「ないほうがいいね」に持って行かねばならない
→理想を説教するだけでは駄目
→国際関係は大半が力関係なので核不拡散は核抑止の議論も合わせないと聞いてもらえない
→力関係と損得勘定で動く核P5の外交も分かった上で絡んでいかないといけない
→核を使えないようにするためには同盟管理とか軍事バランスとか安全保障全体を議論して
敵にも味方にも共通の利益は軍備管理・軍縮である、という議論にしないと・・・
→中国もどこかでピークアウトするから核は重荷になるはずで、いずれは冷たい平和が実現する
・核の使用を想定していた自衛隊の部隊編成
→日本に抜けてるのは民間防衛や国民保護の部分
→核シェルターはスイス・イスラエル100%アメリカ8割ヨーロッパ7~8割で日本は0.02%
→自衛隊は戦術核攻撃を想定した分散ペントミック配置(欧州駐留米軍の初期配置と同じ)
→普通の師団→旅団→連隊→大隊配置ではなく、分散した師団→連隊→中隊配置
→CBRN(化学・生物・放射能・核兵器)部隊も創設当初からあり研究・訓練している
→核攻撃からどう守るかは自衛隊の一部だけでなく国民で共有することも重要
→国会でのシビアな軍事の話は皆無だが自衛隊は実務で動いていた
→ただし自衛隊の中だけで空域・空港・港湾・電波使用などは調整がついていない
→他省庁とも戦時体制をどうするかの議論ができていない
→安全保障は日米安保に賛成か反対か、自衛隊は違憲か合憲かで止まっていた
→後は戦略的には全く意味不明な法律論ばかりで国民の命を守る議論は出てこない
→日本は災害大国だが最大の災害は戦争、それも核戦争
→日本人は中規模以上の災害は天命と思ってしまい、政府要人でさえ想定外と言ってしまう
→自分の命は自分で守るのと同じような安保議論に変えていかないと・・・
→そのためには国民世論の啓発と政治家の資質向上が絶対に必要
云々・・・
つーことで、
核をめぐるウクライナ侵攻前の現実というのは、おそらくこんな感じだったんでしょう
で、国際情勢はこの座談会の後、ますます深刻化してきてますね
ま、だからと言って台湾有事や北朝鮮のミサイル攻撃に備え、直ちに核の日米共同運用へ、
というのは早計過ぎるでしょうし、そのことが中国などのさらなる軍備増強の原因になる
可能性も否定できません
ただしパワーバランスが崩れていることも確かで、何らかの対策は必要なんでしょうが、
オープンに国防の議論をして国民の合意を得るといっても・・・
本文には「国民世論の啓発」とありましたが、豊富な行政側の情報だけを信用するのは心配
ですし、特に核や軍事の分野は情報が少ないので一番操作されやすい分野・・・
根拠のないポピュリズムや主義主張や陰謀論まで渦巻く世界ですから他国や在野の信頼できる
客観情報も集めて慎重に判断すべき問題ですね
冒頭にも書いたとおり反撃能力については本日以降、閣議決定に向けて動き出すようですが、
戦後の安全保障政策の大きな転換でもあり、閣議決定で済ませられるハナシなのか・・・
ましてや核の共同運用とかになると、さらにオープンな議論と国民の合意が必要でしょう
具体的には政府が国民啓発用に流す情報に対し、他の情報も併せて総合的に冷静に判断して、
自分が最も納得できる主張をしている政治家や政党に投票することになるのですが・・・
そのためには本文にもあったとおり、まずは政治家の資質向上がないと・・・
ええ、今は自己保身と身内や支援者の利益だけで動いているとしか思えない政治家や政党か、
ウケ狙いで煽るだけの良識とは無縁のポピュリストぐらいしか・・・(以下略)
この記事へのコメント
1. Posted by 98k 2022年12月03日 06:05
反撃能力保有についての、その後の報道によれば・・・
「攻撃対象の範囲や、攻撃を「着手」したとみなす基準は示されず、個別のケースに応じて判断していく」
とのことのようです。
そりゃあ基準なんて作れるわけがないし実際には「撃たれたら撃ち返す」という抑止のための保有でしょう
さらに・・・
「こうした基準を示さず、「反撃能力」をもつことは国際法が禁止する「先制攻撃」になる恐れはないのか」
とかも言われてるようですが、これも本書にあったとおり北朝鮮でも移動式発射台から即時発射できる時代に
「発射準備を察知して事前に攻撃する」なんて不可能で、やはり「撃たれたら撃ち返す」しかないでしょう
さらさらに・・・
社民党 福島みずほ党首
「先制攻撃しないっていうけれど、実際は日本の国が攻められてないのに敵基地叩くんじゃないですか。
これはまさに先制攻撃。専守防衛に反するじゃないですか」
岸田総理
「専守防衛の姿勢もしっかり守ってまいります。
先制攻撃ということにならないように、しっかりと新しいシステムについても考えてまいりたい」
といったやり取りもあったようですが、前述のとおり先制攻撃なんてどうせ不確実な状態でしかできないんだし、
そんな決断ができる為政者は日本にはいないだろうし、カネをかけて新しいシステムなんて作らなくても、
正直に「撃たれたら撃ち返すという抑止のための保有です」と言えば済むハナシだと思うのですが・・・
「攻撃対象の範囲や、攻撃を「着手」したとみなす基準は示されず、個別のケースに応じて判断していく」
とのことのようです。
そりゃあ基準なんて作れるわけがないし実際には「撃たれたら撃ち返す」という抑止のための保有でしょう
さらに・・・
「こうした基準を示さず、「反撃能力」をもつことは国際法が禁止する「先制攻撃」になる恐れはないのか」
とかも言われてるようですが、これも本書にあったとおり北朝鮮でも移動式発射台から即時発射できる時代に
「発射準備を察知して事前に攻撃する」なんて不可能で、やはり「撃たれたら撃ち返す」しかないでしょう
さらさらに・・・
社民党 福島みずほ党首
「先制攻撃しないっていうけれど、実際は日本の国が攻められてないのに敵基地叩くんじゃないですか。
これはまさに先制攻撃。専守防衛に反するじゃないですか」
岸田総理
「専守防衛の姿勢もしっかり守ってまいります。
先制攻撃ということにならないように、しっかりと新しいシステムについても考えてまいりたい」
といったやり取りもあったようですが、前述のとおり先制攻撃なんてどうせ不確実な状態でしかできないんだし、
そんな決断ができる為政者は日本にはいないだろうし、カネをかけて新しいシステムなんて作らなくても、
正直に「撃たれたら撃ち返すという抑止のための保有です」と言えば済むハナシだと思うのですが・・・