戦争の世界史 大図鑑BE-PAL2023年4月号の・・・

2023年03月11日

ロシアのダーチャから備蓄について考える

今日で東日本大震災から12年が経ちました
あらためて震災の犠牲になられた方々のご冥福をお祈りいたします
あわせて、今も地域の復興に尽力されておられる方々に心からの敬意を表します 

で、今回はロシアのダーチャから備蓄について、思いつくまま・・・


「ロシア人は窮乏に耐えられる我慢強い民族なので経済制裁は効かない」との記事をネットで見ましたが、
民族として我慢強いとかではなく、過去から学び個人個人が対策しているから耐えられるのではないか?
と思った次第です

帝政ロシアの圧制、革命の混乱、ドイツ軍の侵攻、スターリンの粛清、冷戦下の窮乏、ソ連崩壊後の混乱・・・
多くの餓死者や凍死者を出してきた過去の歴史があるから、富裕層はもちろん備蓄しているだろうし、
一般市民も多くが都市近郊のダーチャ(別荘)とかで備蓄しているはず・・・

以下はソ連崩壊以前に知人のダーチャに招待された、本人から直接聞いた話です

・当時、日本のマスコミではモスクワの商店に並ぶ長蛇の列が紹介され、市民の窮乏を伝えていた
・招待してくれたのはモスクワの簡素なアパートに住む一般市民の技師だったが、立派なダーチャだった
・庭には菜園もありウォッカなど大量の備蓄品・高級家具・美術品が置いてあり歓待してくれた
・モスクワで市民が並んでいたのは政府系の商店で、配給品が入れば特別に安く買えるから並んでいただけで、
他の店に行けば同じ商品が(やや割高だが)豊富にあって並ぶこともなく、市民が窮乏している事実もなかった
(以上、報道や他人の話を鵜呑みにせず現地を確認すべきという話の中で)


で、この例から考えたのは、今も多くの市民がダーチャなどで備蓄したり自給自足できるようにしたりして、
いつ襲ってくるとも限らない窮乏時に備えているのではないかということ

厳冬期のロシアで燃料や食料の供給が途絶えれば、たちまち家族が死んでしまうのだから当然の備えでしょう
また高級家具や美術品などは(信頼できない)自国貨幣に替わる蓄えとして置いているのでしょう
さらに混乱期の政府からの支援などは、ハナから期待していないとも考えられます
これはイタリア・トスカーナの家庭を訪れた際も同じで、殆どが菜園と別の仕事を持ってました

2024.5追記です
(藤井一至(土の研究者)さんのX(ツイッター)投稿より)
X上でしばしば称揚されるロシアの家庭菜園ダーチャ。
じゃがいもの全生産の9割を占め、飢餓を防いだ小さな農業。
気になって、その面積を調べると、282万ヘクタール(じゃがいも栽培面積の9割)。
日本の水田面積(236万ヘクタール)より広い。
ロシアでは小さい農業だけど、日本の感覚だと結構大きいな。
ロシア飢饉、ホロドモール。食糧独裁のもたらした悲劇、人災と、その反動としてのダーチャ。
実質、ロシア全農用地の1/3までを占めていたというから、かなり大規模なものだったんだ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

国家規模での政治や経済の混乱を何度も経験していると、それに対応できるよう平時からできる範囲で
備えようとするのは当然とも思われますが、戦中戦後の窮乏や貨幣価値の混乱、ましてや自然災害などは
何度も経験しているはずの日本ではどうでしょう・・・

熊野キャンプで毎年訪れていた小集落では、未曽有の大水害時に1週間以上も完全に孤立していたけれど、
住民に備蓄と生活できる技術や知識があって困らなかったようですが、都会ではどうでしょう・・・

食料や燃料などの流通が途絶える大災害への備えについては、1週間程度からモノによっては1ヶ月程度の
備蓄が勧められていますが、それらを有効に使える知識や経験、技術などを都市に暮らす一般市民が、
いったいどれだけ持っているのか・・・

さらに戦争や国家規模での貨幣価値・貿易・経済などの破綻を前提とした備蓄となるとどうでしょう
まあ、そんなことにならないよう献身している優秀な政治家や役人ばかりだから国民は安心している???
って、その顔ブレを思い浮かべると、ますます不安になってくるのですが・・・

やはり郊外の安全な場所に、水と電力が独自に確保できて菜園もできる、強固で豪華な別荘を持って、
そこに食料や燃料だけでなく、円やドルの貨幣価値に左右されず換金や物々交換ができる金銀財宝や
稀少なライトなども大量に備蓄、ついでにスイスの秘密口座預金とか暗号通貨とかも大量に・・・

って、そんな余裕が一般市民にあるのかっ???

日本でそこまで想定して備えているのは、ごく一部の富裕層(とライトマニア)だけなのかも知れません
アメリカでも、廃棄されたミサイルの地下サイロをシェルターとして購入したり、安全なオセアニアの
高級別荘を購入したりして備蓄してるのは、やはり一部の超富裕層だそうですし・・・

でも、そろそろ・・・
日本の一般市民も一時的な自然災害に対する備蓄だけでなく、国家規模の破綻や混乱も想定したうえで、
できる範囲での対策を考えねばならない時期に来ているのかも知れません・・・

どんな自然災害でも、最初の1週間から1ヶ月程度さえ自給自足できるように備蓄しておけば、あとは
国を挙げての支援や国際的な支援が期待できるのは、東日本大震災の例からも明らかなのですが、
日本が国際的な紛争に巻き込まれた場合はどうでしょう

あるいはどこかで戦争が勃発すれば、食料はじめ燃料・飼料・肥料などの殆どを輸入に頼る日本では、
戦略的な物流停止による影響が大きいことは、ウクライナ侵攻の例からも明らかです
ましてや局地的であっても核兵器が使われると、核の冬による世界的な食糧の減産も想定されますが、
その場合、各国は自国の餓死者を少なくすることを最優先にするので輸入は完全にストップするでしょう

本来、そんな事態に備えるのは国としての役割で、まずは食糧自給率を上げる努力が必要なんでしょうが、
今はひたすら農業予算を削って防衛予算を増やす努力をしてるようだし・・・
食糧自給は国家の重要な防衛戦略だと思うのですが、まだ当面は期待できそうにもありませんから、
やはり個人として最低限の自給自足ができるような手段を考えておかないと・・・

まあ、とりあえずは・・・
窮乏生活(サバイバル)に備えた備蓄や経験を、個人ができる範囲で積み重ねるしかないようです


(追記です)
理想的には、自分か家族と繋がりのある(地理的にも人文的にも安全な)地方都市にある職場にふだんは通い、
その近郊にある安全な自宅(または別宅)には菜園や様々な備蓄があって、周りは里山で水や薪が豊富、
近くには農薬や化学肥料を使わない農家もあり彼らとの関係も良好で、山に入れば釣りや狩猟もできる・・・
そんな環境で暮らすことでしょうか・・・
もちろん、そこで暮らせる技術と知識とコミュニケーション能力が不可欠なんですが・・・



m98k at 04:25│Comments(4) このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック ブログ日誌 | 災害避難とか

この記事へのコメント

1. Posted by ひまぱのぱ(p.himapa)   2023年03月11日 08:16
興味深く拝読しました。
国を変えるのは難しいですね。
世界と繋がっているしがらみも。
牛乳を捨てながら、食料不足に備えて昆虫食だと言ってみたり。

私は体力も技術もなく道具に頼ってしまうので、体力、知識と知恵を持ちたいと思いつつこの歳になってしまいました。
そんなわけで、田舎で自給自足できそうもなく、国家的危機では生き残るのは無理そうです(+_+)

そう言えば、山中の家で黒い鯉を飼っているのは、冬場の食料不足に備えるためだと聞いたことがあります。
2. Posted by 98k   2023年03月11日 11:27
>ひまぱさん
コメントありがとうございます
今の日本の農業・漁業・林業は燃料はじめ各種の輸入品がないと成り立たないようですね
それが途絶えた場合、各自が菜園で作れる主食はイモぐらいでしょうが、それも種芋と技術はいるわけだし・・・

日本で唯一自給できる必需品といえば「真水」でしょうが、これも都会では電力がないと飲用水にはならないし、
そんな状況で庭に菜園があったとしても給水できるかどうか・・・

記事本文にも書いた熊野の小集落では、浸水を免れた高台の数戸で、孤立した全世帯が共同生活をしてたようで、
そこに大量の備蓄があって湧水を引き込む水道工事や建物補修をする建築工事の経験者もいたそうです
おそらく、さらに長期になっても菜園や山菜や薪など食料・燃料の工夫もしっかりとできるのでしょうね

我々は縄文時代の生活には戻れませんし(まず都会では豊かな自然がない!!!)自分では農作業もできないので、
最後の頼みは、近隣で協力しあって、各自ができることをするという信頼関係でしょうか・・・
3. Posted by ひまぱのぱ(p.himapa)   2023年03月12日 08:43
自助>共助>公助
ですね。
4. Posted by 98k   2023年03月12日 10:28
>ひまぱさん
まさにその順番なんですが、政治や経済が混乱すると、最後の公助が期待できないので、
ロシアやイタリアでは家庭での備蓄や自給自足も準備してるんでしょうね
日本の場合の理想を考え記事本文に追記しましたが、大都市では無理かなぁ😔

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