人類学者K「まあいっか」で楽に生きる・・・

2023年05月03日

歴史の逆流

ええ、本日は憲法記念日つーことで・・・

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歴史の逆流~時代の分水嶺を読み解く~とゆー本のご紹介




表紙カバー裏にあった惹句

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惹句にもあるとおり「憲法学・政治学・歴史学の視点から、暴力の時代に抗する術を考える」本であります


著者紹介

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奥付

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例によって目次のみ・・・

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以下、思いつくままの読後メモ
(わたくしがはたしてそうなの?と感じた部分も著者の趣旨をメモしたつもりです)


1章より
・日本の統治システムの宿痾は歴史から学ばないこと

・政治学を含め社会科学の特徴は自然科学と異なり実験できないこと→歴史が実験のかわり

・日本はデータをきちんと使えない国
→執着によって幻想が生まれ、都合のいい幻想はなかなか手放さない→ネーションの幻想も
→ジョンソンの早いコロナ規制解除、菅の東京オリンピック→楽観幻想にしがみついていた

・安倍政権とその人事権を握った菅官房長官、杉田副長官の振る舞いは、説明しないことによって、
権力を生じさせるというもの
→国民どころか官僚にも説明せず、人事権を使って忖度しろと迫る、新たな権力の磁場を作った
→官僚の党派的な中立を損ない個々の政治家の子分にする内閣人事局への干渉
→学術会議の会員も部下の任命と考えているから拒否にも一切説明はない
→国民も同じで、説明と納得で動いているのではなく命令と服従で動いていると思ってる
→安倍さんも同じだったが一部右派にとってはナショナリズムのアイドルで偶像であり得た

・偶像崇拝は自分の思いや迷い願いを投影しているだけなので結局は自分を拝んでいるだけ
→そんな役に立たないことはやめて自分の頭を使って自分で考えろというのが偶像崇拝禁止
→偶像崇拝せず直接神と対話する神秘主義は教団宗教から迫害されていた
→プロテスタントから立憲主義へ
→宗教上も偶像と象徴は異なる(十字架のペンダントは象徴、戦後の天皇も偶像から象徴に)

・反ユダヤ主義と反9条主義は似ている
→ユダヤ陰謀説が論破されても諦めないように、9条で専守防衛が可能といってもきかない
→因果関係などとは無関係なイデオロギー的幻想(ジジェク)だから
→今後どちらも根拠もなく盛り上がる可能性は否定できない

・病理学の進歩と地方自治制度の間のギャップ
→感染症は特定の地域で流行するので自治体が管轄すべきとの考え
→パンデミックに適した制度ではないのではないか
→制度設計が明治期の感染症(コレラや腸チフス)対策段階で止まってしまった
→大阪でコロナ事態がひどくなったのは保健所を無駄として整理したからという指摘がある
→公衆衛生はナショナルミニマムなので中央集権のほうがいいとの考え方も成り立つが・・・
→大阪の保健所統合などの間違いは地方に権限を委ねる中で折り込み済みの話でもある

・市場より国家が強力だった頃の革新自治体は国家政府に対抗するため自治体の自由を使うと言ってた
→だが、ここまで市場が強力になれば、その発想では無理
→大阪維新は自治体の自立性を市場原理と結びつけネオリベ的な政策の突破口にしている

・日本の学術レベルが落ちたのは2004年の国立大学法人化から→この検証が必要
・今の日本の為政者には学問体験が足りないので、彼らが専門知が大事といっても説得力がない


2章より
・ロシアで革命やソ連の崩壊があっても独裁体制が続いているように、日本の政治体制にも戦前からの
連続性と慣性力があるのではないか
→価値の多様性を前提とした競争(民主主義)という意識が、まだ根付いていないのではないか

・自分は現実的で多数派だから正解と思って与党に投票する与党支持者も多い
→その自分の後ろにいる支持者は有権者の20%に過ぎないことを彼らに知ってほしい

・多くの国では現状に不満のある人は第二党に投票する
→日本では無党派が最大で政党政治から離れている
→宗教と同じで特定の政党支持は異常とされるから、習俗として自民党を支持しているだけ
→党派性を持つことは悪と浸透しているので高校での有権者教育もできないし二大政党もできない

・1997年頃からの行政改革で、公務員を減らし公共を市民社会が引き受けることになった
→その結果、会社が請け負って中抜きする事態になった

・2022年から高校の科目に歴史総合ができた
→近現代史に限ってだが「世界とその中の日本を広く相互的な視野から捉える」科目
→これで多くの高校生が、日本の内政が外国の働きかけで動いていることが分かるようになる・・・

・コロナ禍で(立場により見える風景が全く異なる)パラレルワールドが広がった→これが本当の危機


3章より
・戦争指導者の説明と真の理由を区別し明らかにしたのが2400年前の古代アテナイ歴史学のはじまり

・ウクライナ侵攻でのNATOなどの支援は両者の「暗黙の了解」→38度線の休戦ラインと同じ

・橋下徹は戦うな、山東昭子は戦い抜けと言ってるが国のあり方を賭けた話でウクライナが決めること
→被害でいえば沖縄戦、原爆投下、加害でいえば南京戦
→日本では、これらの戦争終結への対立と混乱があったことから、早く降伏すべきとの議論が出てきやすい

・ホッブズの社会契約論は個人セキュリティと国家セキュリティの議論
→個人セキュリティのための国家との契約なのだから戦場で死ぬ義務はない
→殺し合う自然状態でのミニマムな国家との約束に過ぎない→国家から逃げればいい→ロシア

・ルソーの社会契約論は自由国家を守らねば個人セキュリティも守れないから戦って死ぬべき
→国民の意志により国家は運営されており国民の中長期の利害を見据えた決定がなされている
→そうである以上、国家を守るため国民全員が戦うべき→ウクライナ

・日本の歴史では、共同体のリーダー(天皇)を祭り上げた徴兵制から自衛隊になった
→ホッブズ型かルソー型か、国民動員をどう捉えるか・・・

・戦争の開戦法規は自衛が基本で交戦法規は戦闘員と非戦闘員の区別が基本
→経済封鎖は非戦闘員を苦しめるので戦争より悪い(マイケル・ウォルツァーの正戦論)
→マリウポリの封鎖は問題だが、ロシアへの経済制裁はまだ飢餓になってないので今は問題ない
→今後の制裁が強まり、ロシアの飢餓状況が報道されるようになればどうなるか・・・

・現代の戦争は核戦争かゲリラ戦になる(丸山真男)→群民蜂起→軍隊を否定したゲリラ戦のススメ
→しかし民間人が武装していたら交戦法規は・・・デスパレードだから仕方がない???

・戦争と冷戦を含む戦争状態は異なり、戦争よりマシだが深刻な戦争状態はリスキー
→法秩序の破壊を止めるためにどんな行動をとったかが為政者に問われる
→東京裁判では広田弘毅は不作為とされ有罪になった

・決闘ルールでは勝った方が正しいとされる→これが戦争のルール(グロティウス)
→ルールにより地獄を弱める効果はあるが、戦争犯罪さえなければ戦争で決めていいのか
→国際紛争を解決する手段としてウクライナ侵攻したとして、多くの国から非難されている
→パリ不戦条約から国連憲章(憲法9条も)への国際社会の秩序は揺らいでいない
(なのでロシアは国内問題であると主張している)

・NATO東進脅威に対するロシアの言い分と満州鉄道権益に対する日本の言い分
→どちらも欧米がもう少しコミットしていたら戦争にならなかったのでは・・・


4章より
・戦争は憲法原理の違いと歴史観の違いから
→それでも外部に喧伝している戦争目的と真の戦争目的には常にズレがある
→ロシアのウクライナ東部併合と日本の鮮満一如は同じもの

・西側が軍事的にロシアを圧倒できなければロシアの国民を覚醒させることはできないのか
→日本国民は原爆あるいは満蒙開拓民を捨てて逃げた関東軍によって明治以来の歴史観が変わった

・満州事変の意図は米ソへの戦争準備だったが、インテリ向けには「中国が条約を守らないから」であり、
農民向けには「満蒙の土地を手に入れて豊かに暮らすため」で、昭和恐慌時に計算され尽くしたもの
→プーチンの意図は「ウクライナがNATOに入れば安全が脅かされるのでウクライナを占領する」
→満州と同様に他国の土地を安全確保の目的にしており必ず滅びが始まる

・ウクライナはオーストリア・ハンガリー帝国に属したリビウとロシア帝国に属したキーウに分かれる
→ゼレンスキー政権はそれをまとめ上げているが言語はウクライナ語に統一しようとしている

・憲法改正(解釈を含む)により政治の劣化が急速に進む例→ロシア、ハンガリー、日本・・・

・国連の選択肢としてはロシアを安保理から排除するか現状維持か、しかない
→総会に来ているだけ現状のほうがマシか・・・
→ソ連は1949年に建国された中華人民共和国を認めないことを不満とし欠席し続けたため、拒否権を発動する
こともなく国連として朝鮮戦争に対応できた(当時の常任理事国は中華民国)
→当初は戦勝国の集まりだったのだから「当事者に議決権はない」と入れておけば→今では不可能

・これ以上の事態に進展すればNATOの集団的自衛権がうまく働くか→ロシアと全面戦争するか
→日米安保条約では日本が攻撃された場合に米軍が反撃するか否かはアメリカ議会の判断による

・ロシアは1937年の上海戦以降の日本と同じ失敗をしている→敵を侮っていた

・19世紀はじめにヘーゲルは戦争や革命で歴史は進むとした
→ファシズムやナチズムはヘーゲル右派、ソ連はヘーゲル左派で歪曲しているが共通している
→カントは何が正しいかは国によって異なり国内では法秩序、国際社会では秩序あるバランス尊重
→現在のロシアと西側諸国の対立はヘーゲルとカントの対立

・日本では防衛装備移転も反撃能力も法律として定まっていない
→相手の攻撃能力を全滅させられない先制攻撃は意味がない

・9条の内容は基本的に1928年の不戦条約や国連憲章で形成された侵略戦争の違法化
→戦後も海外で武力行使してきたアメリカの行動様式と専守防衛の日本の行動様式とは異なるもの
→そのハードルを下げるより、攻撃目標となる原発を撤去したりシェルターを整備する方がいい
→9条1項は侵略戦争を放棄した条文というのは誤解

・抑止力で侵略を抑止できるか
→アメリカは日本への抑止力として真珠湾に軍備したが、日本にそれさえ叩けばと思わせてしまった

・自衛隊のどこが違憲なのかは学者によって異なる
→憲法に自衛隊を書き込んだとしても憲法上の疑義がなくなるわけではない
→憲法に明記されている天皇制にも様々な疑義があるのと同じ
→侵略された場合は自衛し国際社会は侵略に抗議するという国際社会の前提は何も覆っていない

・ロシアはウクライナを国内問題と主張しており中国の台湾と同じ
→台湾有事に備え憲法改正しフルの集団的自衛権を持つべきとの議論
→バイデンが口先で牽制してるのは武力行使ができないから

・中国の海洋戦略上の脅威増大は事実だが・・・
→中国にとってアメリカは朝鮮戦争の際に台湾海峡を封鎖した国
→台湾を武力で統合する話も、すでに中国の一部なので武力で現状変更する必要はないとする話もある
→現状が続けば中国が民主化する可能性もあるがウクライナ侵攻で中国への警戒感が高まるのは当然
→アイルランドは1998年に北アイルランドを放棄し長く続いた戦争を収めた
→田中角栄は台湾について「ポツダム宣言に基づく立場を堅持する」で周恩来と妥結した

・日本の安全保障の危機を叫ぶ人ほど現実を見ていない
→IEPの世界平和指数2021では日本は12位、ウクライナ142位、ロシア154位・・・
→リスクを考えるなら原発と近隣国との関係を悪化させないことを考えるべき

・世の中を動かしているのは既得権益ではなく思想(ケインズ)


5章より
・安倍元首相の国葬
→侵害留保説(権利制限には法的根拠が必要)では法的根拠は不要
→重要事項法理説では自衛隊出動と同じく国会承認が必要だが国葬は重要事項なのかどうか
→山本五十六の国葬は負け戦のターニングポイントだったが、同様に日本衰退のターニングポイントか
→日本の衰退は1990年代からの行政改革などの失敗の帰結で、個人に意味を持たせるのは危うい
→安倍政権に正当な政治批判をしてきた言論や報道を、テロを誘発したとして抑圧したい勢力に利するもの
→山本五十六の頃は民族精神フォルクスガイストがあったが戦後は各自が個人で判断するようになった
→これは「ミネルヴァのふくろうは黄昏になって飛び立つ(ヘーゲル)」歴史の終着点
→今の日本は闇夜の状態で変革も発展もなく偉人も英雄も現れない
→同じ行動という日本人のコンセンサスを分断線で壊そうとした人の国葬に全員が納得するのは困難
→ド・ゴール国葬時のフランスも今の日本と同じ闇夜の状態だった
→銃撃事件の動機が選挙演説の阻止であれば明らかに民主主義の危機だが今回は微妙

・戦前に弾圧された宗教団体はその後、権力との癒着に向かっている
→日本の政教分離原則は信仰の自由のための原則
→両者が衝突する場合は信仰の自由が確保されるかたちにすべき
→革命後のフランスでは政治を宗教から守るための政教分離原則
→宗教弾圧は問題だが外国の宗教団体が密かに日本の政治に食い込むのも問題


6章より
・この国はどこに向かうのか
→2022年7月の参院選では自民党は動かず固定化→政策ではなく自民党だから支持する→同調圧力
→自分が投票した候補者が当選すれば正答、落選すれば誤答と考える人もいるが間違い
→正答も誤答もなく、とりあえず任せているだけだがルソーの社会契約論にも正答にというのはある
→野党への支持も固定化している
→安倍政権は明らかに右寄りだったが自民党が元の中道勢力の連合体に戻るかが分岐点

・日本の選挙制度と集団
→保守合同による自民党と左右統一による社会党の「55年体制」以上にマシな政治にはならない
→大阪維新の2回目の住民投票での否決はどちらの陣営にも予想外だった
→選挙の票を読む技術がどちらにも蓄積されていないのではないか
→地方と大都市圏では同じ選挙制度でも全く違うかたちになっている
→組織化しやすい集団と非正規労働者のようにしにくい集団がある→棄権の多さにもつながる
→今の野党にカリスマ的なリーダーは見あたらない→属人的な部分もある

・少数政党の乱立
→ポピュリスト政党がここまで乱立している国は世界でも珍しい
→政党助成金は90年代の政治改革で成立した制度だが(これによる)少数政党の乱立は予測してなかった
→まともな政党に限定すべきだが野党乱立は自民党に都合がいいので改めることはないだろう
→政治家をいかに育てるか、松下政経塾も連携を目指したが結局バラバラに

・対案を出せ症候群
→野党も国立大学の教授会も「では対案を出せ」ばかりだと正しい批判ができなくなる
→ガバナンス、ステークホルダー、効率化、生産性など、いわばコンサル用語が大学に限らずあらゆる組織で
幅を利かせている
→そもそも発生経緯の異なる組織を一つの方向に押し込もうとしていることがおかしい
→中央省庁も内閣人事局ができて人事は官邸が行うようになり、失敗の痕跡や政権批判をしなくなった
→本来の公務員制度改革は人事の集権化と、内閣官房長官による人事管理についての国民への説明責任の確立
→幹部人事が官邸に掌握されただけで「ヒラメ官僚」が跋扈し、有権者の「それでも与党に投票する」に
→政治家は選挙で信任された一般意思を示すので官僚は機械的に執行すればよいという権力システムの
集権的な理解が広まった
→意見を言う官僚は民主的な権力行使に介入する雑音として排除される
→政治家が一般意思ではなく特殊意思に配慮しようとするときに、選挙に左右されず安定した身分で
一定の中立性を保つ官僚が、適切にブレーキをかけることは適切な権力行使に必要
(旧統一教会の名称変更を自分の見識で止めた当時の文部科学省宗務課長など)
→政治主導は進んだが政治家の要請をメモし全て公開する提案は制度化されないまま
→政治家は選挙で選ばれたことを正当性の根拠にするが、それは一般意思を体現している根拠にはならない
→そもそも一般意思を貫徹するかたちで政治主導を行うことなど原理的にできない
→なので権力を多元的な構造にしなければならない
(宗教団体の名称変更は選挙でお世話になってる政治家より宗務課長が判断する方がまともなシステム)
→内閣人事局は自民党が絶対に廃止しないので、可能なのは特殊意思を通す場合に公開することぐらい

・公文書管理
→福田康夫が尽力し麻生太郎内閣下で公布された公文書管理法の施行は2011年4月で東日本大震災は施行前、
菅直人首相は議事録を残す指示をしなかったが、野田佳彦内閣下の岡田克也副総理が指揮し大部分を復活させた
→しかし2012年12月からの安倍政権以降は公文書管理を重視する姿勢は一切なくなった
→公文書管理法の見直しや公務員制度改革など現実的に可能な問題提起をすべき
→官僚に過剰な統制機能が働いているのに政治家は統制されず選挙もチェック機能を果たせていない

・放送法
→放送行政を総理大臣や内閣の指揮が及ばない独立規制委員会に託す放送法の改正が必要
→NHKの受信料制度は政府や広告主に左右されない適切な制度だと思っているが、
→受信料は国会がNHK予算を承認しない限り受け取ることができない仕組みになっている
→国会多数派の意向が番組内容に及ぶことがないとは言い切れない(高市早苗総務相の発言など)
→なので国会権限から除外して独立した第三者機関に委ねるべき
→これは右派が叫ぶ「NHKの偏向」をなくすことにもなるはず・・・

・議論なき政治
→法的根拠を度外視し国会議論も国民説明もせず閣議決定で決めていく政治は安倍政権以降も続いている
→説明しなくても責任を問われることはなく選挙でも負けないと分かっているから
→内閣法制局も破壊し外務省出身者を起用して集団的自衛権の解釈改憲まで進んだ
→説明しない政治、国会軽視、役人の責任放棄・・・
→ボリス・ジョンソンは政府や議会に繰り返し嘘をついたと退陣させられたが、桜を見る会の国会答弁で
118回の嘘をついた安倍さんは退陣することはなかった
→サッチャー政権では大臣が次々と理由を公表して辞職して退陣に追いやり、トランプ政権の末期でも
政府高官や側近が多数辞めたが、日本では誰一人辞めない、保身しか考えていない
→日本の場合は「説明しなくても選挙では負けない」ことが大きい

・憲法的大問題
→国会審議を経ずに使途が決められる予備費の増大→使途が正確に特定できたのは6.5%のみ
→憲法上は国会の事後承諾が必要だが、承諾されなくとも無効にはならず戻す必要もない
→この上に緊急事態条項まで作って何をやりだすのか・・・
→財政民主主義の背景には戦費調達のため国債を乱発した戦前への反省がある
→行政権力の暴走を無関心な国民が傍観する流れを、このあたりで止めないと・・・


巻末より
・イギリス女王の国葬で軍が前面に出るのは、軍の統帥権が女王にあるのだから当然
→旧植民地からは歴史への反省がないとの批判もあった

・日本でも明治以降は軍の統帥権は天皇であり国葬で軍が前面に出るのは当然だった
→今は内閣総理大臣が自衛隊の最高指揮権を持つが、国葬や私的な葬儀に自衛隊儀仗兵を出すということは、
国家の本質的な部分は軍事であるというイデオロギーを広めることにならないか・・・
→憲法により軍の正当性を否定していることと真っ向から対立することになる

・不幸な銃撃事件から社会の空気が変わった、違う風が吹きはじめた、みんながおかしいと言いはじめた
→岸田さんはしたたかな人ではないか→これを機会に安倍派つぶしとか・・・

・少数者の信条などは多数決の政治プロセスでは守れないので裁判所が守るというのが憲法学会の通念
→カルト宗教団体は信条による強力な統制・監視でサイズに見合わない政治的影響力を発揮していた
→少数派だから裁判所が守るということにはならない
(逆に非正規労働者やシングルマザーは多数派だがバラバラで共通の権利や利益のための協力が難しい)

・憲法の信仰の自由は宗教団体を国家権力の抑圧から守ること、政教分離は政治を特定の宗教団体の
過大な影響力から遮断することだが、両者の関係は書かれていない
→戦前に抑圧された宗教団体は、戦後は「政治は宗教に介入するな」でよかったのに、権力側につけば
抑圧されないというほうに進んで行った
→同じ政教分離のアメリカもフランスも同じで、そのこと自体が問題ではないが・・・

・戦前に弾圧されたのは伊藤博文らが考えた市民宗教としての天皇制の競争相手だったから
→戦後は市民宗教としての天皇制はなくなった

・冷戦終結後、「反共」アイデンティティーの中身は変わってきている
→多様性を否定し特定の価値観で社会を分断してきた
→安倍さんを支持してきた保守派は「リベラル派は旧統一教会を敵とみなし日本に分断を持ち込んでいる」
と言ってるが、分断という概念をはき違えている
→多様性を否定する考え方を多様性の名によって擁護すべきではない

・分断とは社会の中で許容可能な人たちを排除しようとすること
→許容できない泥棒を刑務所に入れるのを分断とはいわない

・安倍政権の負の遺産である分断の政治をどう乗り越えるのか、真剣に構想しなければならない


あとがきより
・新型コロナの諸問題は「政治が生活を左右するという意識」を持たせた
・ウクライナ侵攻は大多数のロシアの人たちを、はじめて独裁のリスクに向き合わせた
・一定の時代に現れた制度・組織・論理が、なぜその時代に、何のために創ろうとしたのかを考える歴史学
・社会の諸事情を規律という側面から考察しようとする憲法学の手法
・その規律を支える条件を考察しようとする政治学の手法
・エコーチェンバーとは正反対の多面的な議論になったが、1章では3人とも安倍晋三政権や菅義偉政権に対する
否定的評価を明確に出している
→政治の失敗は自然現象ではなく政治に関わる人々の行為の結果だから・・・



m98k at 19:30│Comments(0) mixiチェック 書斎 | わからないもの

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