2024年05月13日
大地の五億年(前篇)
とーとつですが・・・
wingさんからお借りしている「大地の五億年(藤井一至著)」の読書メモ前篇であります
裏表紙カバーにあった惹句
表紙カバー裏にあった惹句
裏表紙カバー裏にあった著者紹介
奥付
僅か1年半で第九刷まで増刷されてて、この分野では驚異的でしょうね
例によって目次のみ
素人にも分かりやすい年表が冒頭にあったので1枚だけメモ
(著作物なので公開に問題があるようなら非公開にします)
まえがきによれば・・・
・5億年前の植物の上陸により緑と土に覆われた大地が誕生した
→5億年の土と生命の物語は主役の入れ替わりが激しく共有の台本はない
・遅れて登場してきたお騒がせ生物(ヒト)が物語の存続を危うくしているが、
土と生き物は相互に影響しあいながら5億年を通して変動してきた
→そんな歴史を一冊に凝縮した
→土に埋もれた生き物の生活記録を掘り起こす試み
・生き物はヒトも含め、もとはみな栄養分を土から獲得している
→だから見方を180度変えた自然史・人類史でもある
・・・とゆー本なのであります
著者の面白いエピソードもいっぱいで科学解説としても魅力ある文章で楽しめました
ともかく内容が豊富で、当初は要点をメモしだしたのですが、殆ど書き写しになったので、
学術的な部分は読み飛ばし、ボルネオ島と日本に関する部分をメインにメモしましたが、
それでも長くなったので前編と後編の2回に分け、脳の外部記憶として記事にしました
(わたくしの思い違いも多いので興味を持たれた方は本書のご熟読を・・・)
プロローグより
・生き物が土を生んだ
→土壌とは岩石の風化によって生まれた砂や粘土に動植物の遺体が混ざったもの
・地球誕生から46億年、土壌誕生から5億年・・・つまり・・・
→「46歳の地球おばさんが5年前から家庭菜園をはじめ、1年前から菜園で働いてた恐竜兄さんが
半年前に失踪、10日前に生まれたばかりの小人が大規模な温室栽培をはじめた」
→ようなもので、この10日前に生まれた小人が人類
・ミミズが粘土と落ち葉を一緒に食べてフンをする→柔らかい土壌ができる(ダーウィン)
→足元に広がる土のほとんどはミミズのフンだったのだ
・土をめぐる戦い(地上に存在した生物の99.9%は絶滅した)
→土壌の厚さは平均すると1mにすぎない→この皮膚が地上の生命を養ってきた
→ヒトも水と空気以外は土壌から供給されている
・土の多様性(略)
・メソポタミア文明の崩壊、持続的どころか壊滅寸前だった江戸時代の里山・・・
→温暖化、砂漠化、酸性雨、熱帯雨林の減少・・・すべて土に関わる話題
・難波津に 咲くやこの花 冬ごもり 今は春べと 咲くやこの花
→7世紀前半の観音寺遺跡(徳島県)から木簡が出土しており万葉集よりずっと古い
→平和と繁栄を祈るメッセージも地下に埋もれている・・・
第1章より
・最初に岩石沙漠を開拓したのは地衣類→5億年前
→今も陸地の8%を覆う、菌類と藻類が共生したユニークな生き物
→光合成の糖分→有機酸で岩を溶かす→リン・カルシウム・カリウムを得るが大部分は残存し、
砂や粘土に→それが地衣類やコケの遺骸(有機物)と混ざったものが地球最初の土だった
・最初に大地に根を下ろしたシダ植物
→4億年前の二酸化炭素濃度は現在の10倍以上で温暖湿潤な環境
→蒸し暑い水辺の湿地帯に初めて本格的な土壌が生まれた
→現在のボルネオ島には当時と似た環境がある→水辺のシダ植物の下は泥炭土
(水中には酸素が少なく微生物分解が進まず堆積する→深くなれば高温・高圧に→石炭)
・赤毛のアン(カナダ・セントエドワード島の赤い土)と大陸移動(同じ色の土が世界に分散)
→4億年前のシダの森(熱帯林)が全く別の場所(極北カナダ)に行った例
→シダの森は地上でも地下でも大量の二酸化炭素を固定した
→そのため地球が寒冷化(乾燥化)し酸素濃度も上昇した
→昆虫の巨大化、シダ植物の縮小衰退へ
→シダ植物は初期の土から本格的な森と土を形成、大陸移動とともに気候変動をもたらした
・裸子植物と根の進化
→3億年前にシダ植物は衰え、乾燥に強い種子を持つ裸子植物が主役に
→生き延びるための「通気のできる根(水稲やマングローブの例)」と「リグニン(木質)の生成」
→リグニンは幹などの強度を高め、より高くなりより光を吸収して成長、害虫にも強くなった
→土の微生物には食べにくくなったので有機物がどんどん土に溜まっていった
(私の机の書類のように処理が追いつかず未処理業務(泥炭)が蓄積していったのだ)
→微生物の対応が遅れたので泥炭→石炭が蓄積した→なので地質年代では「石炭紀」
・キノコの進化と石炭紀の終焉
→分解が進むと二酸化炭素や窒素・リン・カルシウムなどの栄養素が循環するが、
→分解が遅いと循環が停止し生態系も停止する(消化不良)
→キノコの進化が生態系の救世主になった
→キノコの主体は菌糸で有機物を食べる分解者だが、当初はリグニン分解能力はなかった
→2.5億年前にリグニンを分解する仕組みを獲得して種数がどんどん増えた
→有機物の分解が促進され石炭紀は終焉を迎えた
・キノコと樹木の進化で地球の物質バランスが保たれるようになったのだ
・恐竜たちの食卓
→映画ジュラシックパークでは琥珀の中の蚊の血液DNAから恐竜の復元に成功したが、
→本書ではもっと泥臭い土や化石からの恐竜時代の環境復元を試みる
→2億年前の大地は温暖湿潤、土壌の分布は広がっていた
→大型シダ植物から針葉樹が主役となった
→草食恐竜は亜熱帯!!!針葉樹の柔らかい!!!葉を食べていた(まだ草も草原もなかった)
・土を酸性に変える植物(略)
→恐竜の生活も体重も酸性土壌ポトゾルなどが支えていた
→針葉樹アロウカリアの高木化と草食恐竜プロキオサウルスの巨大化の例
→冷戦期のソ連とアメリカの軍拡競争と同じとされている
→特殊能力に特化すれば環境変化へのリスクがあるのは自然界も人間界も同じ
→6600万年前の恐竜絶滅でアロウカリアも北半球から消えた
・ボルネオ最高峰キナバル山の熱帯山地林のダクリカルプス(2億年前のアロウカリアの親戚)
→その下の土は熱帯には珍しい北欧と同じポトゾル
→ダクリカルプスも北欧のマツもリグニンやタンニン(酸性物質)が多く栄養分が少ない
→分解されにくく酸性腐葉土が堆積する
→茶色い酸性物質が染み出しポトゾルをつくる→色彩豊かなジュラシック・ソイルに
・岩を食べるキノコ
→北半球で繁栄するマツと衰退したアロウカリアの違い(略)
→キノコ(外性菌根菌)との共生はどちらにもあるがアロウカリアの根は限定的
・2億年前の酸性土壌で針葉樹は恐竜と繁栄し落ち葉や根で土を積極的に変化させた
→キノコ(外性菌根菌)との共生でマツの仲間は現在も北方林で繫栄している
→なぜ北方林と南半球の一部に追いやられたか→被子植物の台頭による
・砂上の熱帯雨林
・フタバガキの大遠征
→1.5億年前にジュラ紀から白亜紀に移ると被子植物が出現した
→熱帯地域は裸子植物(針葉樹)から花と果実を持つ被子植物に
→東南アジアの熱帯雨林で大発展したのがフタバガキ(沙羅双樹・合板のラワン材)
→ゴンドワナ大陸が起源のフタバガキは9000万年前に分離したインド亜大陸からアジアへ
(インド亜大陸のユーラシア大陸との衝突は4500万年前)
→3000万年前には東南アジアに到達し熱帯雨林の優占種となった
→なぜ高木化して大繁栄したのかは東南アジアの酸性土壌がカギ
・熱帯の土は貧栄養で森林を伐採したら不毛の大地になるといわれている
→熱帯雨林の土の林床は薄く肥沃な表層土も薄い
→その下には養分の乏しい土が深く続いている
→問題は酸性とリンの欠乏(焼畑は酸性の中和)
→貧栄養でも植物の成長量は日本の森林の3倍で大量の樹木と落ち葉が存在する
・熱帯雨林の貧しい土に森林が成立する理由
→東南アジアのフタバガキはマツ科やブナ科と同様にキノコ(外生菌根菌)と共生している
→ボルネオ熱帯雨林の60m観測タワーで自分が高所恐怖症であることを思い出したけど、
数年後にそのタワーは風で倒れた
→60mのフタバガキは地上に露出した板根で倒れないけど板根は物理的な支え
→栄養の吸収は落ち葉の下に伸び広がり外生菌根菌と共生した細い根ルートマットから(略)
→林冠部で光合成した糖分を根に共生した外生菌根菌に供給している
→外生菌根菌は熱帯土壌で欠乏しやすく酸化物に閉じ込められたリンを溶かして供給している
・熱帯雨林の高い生産性は、土を介したこのネットワークに支えられている
→森林をいったん伐採すると回復が難しいのは土に栄養分が少ないことに加え、
このネットワークを寸断してしまうため
・平家物語の冒頭に「沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす」とあるが、もともとは
お釈迦様が亡くなった時にフタバガキの花が一斉に枯れたという話に由来している
→伐採に脆弱な熱帯雨林を無計画に伐採すれば、花の色のように衰えるのは人間・・・
・フタバガキが4年に一度だけ一斉に開花結実する謎
①エルニーニョ後は安定説②ハチとの日程調整説③オランウータンなどが食べ切れない説
④が真打登場で土が原因説なのだ
→真打といっても毎年開花結実するだけの養分供給ができないという情けない話で
→熱帯雨林の土壌に少ない窒素やリンを貯蔵して種子を作るのに4年かかるという説
→私の調査でもリンを貯めるのには数年かかる計算になるが毎年というのは温帯の常識であり、
熱帯のフタバガキには彼らなりの体内時計があるのだろう・・・
・フタバガキの種子の2枚の羽根
→風によって遠くまで子孫を送り込むためと考えられてきたが、森の中では殆どが真下に
落ちることがわかってきた
→成木の近くなら外生菌根菌の菌糸を通じて稚樹に養分を渡せるから→樹木の子育て!!!
→種子が成木になる確率を高めの1%とした場合、100年で世代交代する調和のとれた仕組み
・氷の世界の森と土(略)
(極北イヌビックでの調査エピソードがめっちゃ面白かったです)
・奇跡の島国・日本
→日本は森の国だが同じ中緯度帯には砂漠や乾燥地が多い→やはり奇跡の島
→日本列島は4つのプレートがせめぎ合う地域に位置する→3000m級の山々が誕生
→2000万年前にユーラシア大陸から分離、日本海が生まれた
→氷河期が終わり海水面が上昇、日本海に対馬海流が流入した
→この暖流と山々の存在が、日本列島を水に恵まれた森の楽園に変えた
→そしてこのことが、日本の土が酸性になることを運命付けた
・降り積もる火山灰
→アイドルのデビュー曲のタイトルが「火山灰(柏木由紀)」になる国は日本ぐらい
→日本中に降り積もり1万年前の縄文時代の地表面は今より1mぐらい下だった
→塵も積もれば土になるのだ
→29000年前の姶良火山の大噴火→関東まで積もった火山灰の下から石器が見つかった
→氷河期だった3万年前の旧石器時代に日本人はマンモスを追いかけていたのだ
→氷河期が終わった縄文時代7300年前の鬼界カルデラの大噴火
→やはり関東まで積もり火砕流は屋久島の全域を飲み込んだ→縄文杉も壊滅していた
→北海道でも過去1万年に火山活動と植生回復が7回繰り返されている
→この活発な火山活動が世界的にもユニークな「黒ぼく土」をつくりあげた
・酸性でも平気なブナとスギ
→火山灰から生まれた黒ぼく土は酸性になりにくいが、いったん酸性になれば中和が難しい
→さらに火山灰から生成する粘土がリンを吸着するので作物栽培には向かない
(同じ黒い土でもカナダやウクライナの黒土はカルシウムを多く含み世界の穀倉に)
→ブナやスギなどの樹木はリン鉱物を溶かせるので問題ない
→黄砂には炭酸カルシウムなどアルカリ成分を含むが中和成分が少なくすぐ酸性に変わる
→この黄砂からできる日本海側の土は酸性になりやすい(室堂の雪の壁には黄砂を含む黒い筋)
→火山灰が多い太平洋側のブナ林はミズナラなどライバルとの競争で窮屈そう
→雪が多く土が酸性になりやすい日本海側やアメリカ五大湖東側では美しいブナの純林
・土の養分の低さや酸性で作物栽培に苦労した人間は樹木の機能を肥料として利用した
→焼畑や里山の落ち葉や草を田畑に入れる刈敷など
→多様な自然環境、火山灰、雨(雪)、人間活動で世界的にもユニークな土と生態系に・・・
第2章より
・土は生命の源
→生命の根源はエネルギー源と自己複製能力で、支える元素は炭素・窒素・リン
→炭素は空気が供給源だが窒素とリンは土壌が重要な供給源
→多くの土壌で雨に流される
→生き物は獲得するための進化の道を歩んできた
・ウツボカズラの戦略
→酸性土壌や栄養分の少ない土壌で昆虫を捕獲消化吸収することで養分を補う戦略
→ウツボカズラからすれば昆虫はタンパク質(窒素)とリンのかたまり
→食虫植物の捕食器は生産コストが高いので栄養分の少ない土壌での生存戦略
→昆虫や共生細菌に分解してもらう種類もある
・人体は水分を除く50~70%がタンパク質で昆虫より高濃度の窒素やリンを含む
→獲得するための戦略が「農業」と「料理」
・微生物と酵素、腸内細菌(略)
・熱帯雨林の掃除屋シロアリ(略)
→熱帯雨林はシロアリとゴキブリの楽園(略)
→シロアリは2000種以上いるが害虫は10%ほど、
→ゴキブリは4500種以上いるが家庭の害虫は12種のみ
・草食恐竜の胃から発酵によって放出されたメタンガスは1日2700ℓとされる
→2億年前の地球を温暖化させるのには充分な量
・リグニンと茶色い水
→カナダ北部や北欧の川は湖や湿地が多い平坦な地形を流れる
→酸素が少なく微生物分解が遅いので泥炭土が蓄積している
→泥炭土のタンニンなどの溶存有機物を溶かしこんでるので茶色
→日本に多い火山灰土壌は吸着力の強い粘土が多く溶存有機物を数分で99%吸収する
→地形も急峻でたゆむことも少ないので透明
・熱帯雨林の茶色い水
→熱帯雨林では微生物分解が活発なので(中南米での観察結果から)透明とされていた
→ところが東南アジアの熱帯雨林では茶色だった→報告論文が認められず違いを立証した
→東南アジア熱帯雨林の黄色い土は中南米熱帯雨林の赤い土よりイオン濃度で10倍酸性だった
→北欧マツ林の腐葉土と同様に酸性に適応したキノコで溶存有機物がつくられるのだ
(熱帯雨林では微生物分解が活発で落葉層は薄いが、絶えず供給されるのでつくられる)
→土の酸性が東南アジアの熱帯雨林の茶色い水の真相
・アマゾンの黒い川と白い川(泥炭土と粘土など)→(略)
(土の養分→川や海へ→魚や食べたトリやクマなどの死骸やフン→土の養分に循環)
・オランウータン、土を食べる(略)
→ボルネオ島にはドリアンの固有種が多く存在する
→一説ではドリアンの多様化が始まった時期とオランウータンの出現時期は同じとされる
→美食家に果実を提供して種子を拡散させる戦略が成功したのだ
→被子植物と種子散布者との協力が熱帯雨林の多様性を支えている
→動物は汗などでナトリウムを失うが植物に含まれるナトリウムは少ない
→海から離れて暮らす動物は塩を獲得する知恵を持っている・・・
以下、次の記事(後編)に続きます
wingさんからお借りしている「大地の五億年(藤井一至著)」の読書メモ前篇であります
裏表紙カバーにあった惹句
表紙カバー裏にあった惹句
裏表紙カバー裏にあった著者紹介
奥付
僅か1年半で第九刷まで増刷されてて、この分野では驚異的でしょうね
例によって目次のみ
素人にも分かりやすい年表が冒頭にあったので1枚だけメモ
(著作物なので公開に問題があるようなら非公開にします)
まえがきによれば・・・
・5億年前の植物の上陸により緑と土に覆われた大地が誕生した
→5億年の土と生命の物語は主役の入れ替わりが激しく共有の台本はない
・遅れて登場してきたお騒がせ生物(ヒト)が物語の存続を危うくしているが、
土と生き物は相互に影響しあいながら5億年を通して変動してきた
→そんな歴史を一冊に凝縮した
→土に埋もれた生き物の生活記録を掘り起こす試み
・生き物はヒトも含め、もとはみな栄養分を土から獲得している
→だから見方を180度変えた自然史・人類史でもある
・・・とゆー本なのであります
著者の面白いエピソードもいっぱいで科学解説としても魅力ある文章で楽しめました
ともかく内容が豊富で、当初は要点をメモしだしたのですが、殆ど書き写しになったので、
学術的な部分は読み飛ばし、ボルネオ島と日本に関する部分をメインにメモしましたが、
それでも長くなったので前編と後編の2回に分け、脳の外部記憶として記事にしました
(わたくしの思い違いも多いので興味を持たれた方は本書のご熟読を・・・)
プロローグより
・生き物が土を生んだ
→土壌とは岩石の風化によって生まれた砂や粘土に動植物の遺体が混ざったもの
・地球誕生から46億年、土壌誕生から5億年・・・つまり・・・
→「46歳の地球おばさんが5年前から家庭菜園をはじめ、1年前から菜園で働いてた恐竜兄さんが
半年前に失踪、10日前に生まれたばかりの小人が大規模な温室栽培をはじめた」
→ようなもので、この10日前に生まれた小人が人類
・ミミズが粘土と落ち葉を一緒に食べてフンをする→柔らかい土壌ができる(ダーウィン)
→足元に広がる土のほとんどはミミズのフンだったのだ
・土をめぐる戦い(地上に存在した生物の99.9%は絶滅した)
→土壌の厚さは平均すると1mにすぎない→この皮膚が地上の生命を養ってきた
→ヒトも水と空気以外は土壌から供給されている
・土の多様性(略)
・メソポタミア文明の崩壊、持続的どころか壊滅寸前だった江戸時代の里山・・・
→温暖化、砂漠化、酸性雨、熱帯雨林の減少・・・すべて土に関わる話題
・難波津に 咲くやこの花 冬ごもり 今は春べと 咲くやこの花
→7世紀前半の観音寺遺跡(徳島県)から木簡が出土しており万葉集よりずっと古い
→平和と繁栄を祈るメッセージも地下に埋もれている・・・
第1章より
・最初に岩石沙漠を開拓したのは地衣類→5億年前
→今も陸地の8%を覆う、菌類と藻類が共生したユニークな生き物
→光合成の糖分→有機酸で岩を溶かす→リン・カルシウム・カリウムを得るが大部分は残存し、
砂や粘土に→それが地衣類やコケの遺骸(有機物)と混ざったものが地球最初の土だった
・最初に大地に根を下ろしたシダ植物
→4億年前の二酸化炭素濃度は現在の10倍以上で温暖湿潤な環境
→蒸し暑い水辺の湿地帯に初めて本格的な土壌が生まれた
→現在のボルネオ島には当時と似た環境がある→水辺のシダ植物の下は泥炭土
(水中には酸素が少なく微生物分解が進まず堆積する→深くなれば高温・高圧に→石炭)
・赤毛のアン(カナダ・セントエドワード島の赤い土)と大陸移動(同じ色の土が世界に分散)
→4億年前のシダの森(熱帯林)が全く別の場所(極北カナダ)に行った例
→シダの森は地上でも地下でも大量の二酸化炭素を固定した
→そのため地球が寒冷化(乾燥化)し酸素濃度も上昇した
→昆虫の巨大化、シダ植物の縮小衰退へ
→シダ植物は初期の土から本格的な森と土を形成、大陸移動とともに気候変動をもたらした
・裸子植物と根の進化
→3億年前にシダ植物は衰え、乾燥に強い種子を持つ裸子植物が主役に
→生き延びるための「通気のできる根(水稲やマングローブの例)」と「リグニン(木質)の生成」
→リグニンは幹などの強度を高め、より高くなりより光を吸収して成長、害虫にも強くなった
→土の微生物には食べにくくなったので有機物がどんどん土に溜まっていった
(私の机の書類のように処理が追いつかず未処理業務(泥炭)が蓄積していったのだ)
→微生物の対応が遅れたので泥炭→石炭が蓄積した→なので地質年代では「石炭紀」
・キノコの進化と石炭紀の終焉
→分解が進むと二酸化炭素や窒素・リン・カルシウムなどの栄養素が循環するが、
→分解が遅いと循環が停止し生態系も停止する(消化不良)
→キノコの進化が生態系の救世主になった
→キノコの主体は菌糸で有機物を食べる分解者だが、当初はリグニン分解能力はなかった
→2.5億年前にリグニンを分解する仕組みを獲得して種数がどんどん増えた
→有機物の分解が促進され石炭紀は終焉を迎えた
・キノコと樹木の進化で地球の物質バランスが保たれるようになったのだ
・恐竜たちの食卓
→映画ジュラシックパークでは琥珀の中の蚊の血液DNAから恐竜の復元に成功したが、
→本書ではもっと泥臭い土や化石からの恐竜時代の環境復元を試みる
→2億年前の大地は温暖湿潤、土壌の分布は広がっていた
→大型シダ植物から針葉樹が主役となった
→草食恐竜は亜熱帯!!!針葉樹の柔らかい!!!葉を食べていた(まだ草も草原もなかった)
・土を酸性に変える植物(略)
→恐竜の生活も体重も酸性土壌ポトゾルなどが支えていた
→針葉樹アロウカリアの高木化と草食恐竜プロキオサウルスの巨大化の例
→冷戦期のソ連とアメリカの軍拡競争と同じとされている
→特殊能力に特化すれば環境変化へのリスクがあるのは自然界も人間界も同じ
→6600万年前の恐竜絶滅でアロウカリアも北半球から消えた
・ボルネオ最高峰キナバル山の熱帯山地林のダクリカルプス(2億年前のアロウカリアの親戚)
→その下の土は熱帯には珍しい北欧と同じポトゾル
→ダクリカルプスも北欧のマツもリグニンやタンニン(酸性物質)が多く栄養分が少ない
→分解されにくく酸性腐葉土が堆積する
→茶色い酸性物質が染み出しポトゾルをつくる→色彩豊かなジュラシック・ソイルに
・岩を食べるキノコ
→北半球で繁栄するマツと衰退したアロウカリアの違い(略)
→キノコ(外性菌根菌)との共生はどちらにもあるがアロウカリアの根は限定的
・2億年前の酸性土壌で針葉樹は恐竜と繁栄し落ち葉や根で土を積極的に変化させた
→キノコ(外性菌根菌)との共生でマツの仲間は現在も北方林で繫栄している
→なぜ北方林と南半球の一部に追いやられたか→被子植物の台頭による
・砂上の熱帯雨林
・フタバガキの大遠征
→1.5億年前にジュラ紀から白亜紀に移ると被子植物が出現した
→熱帯地域は裸子植物(針葉樹)から花と果実を持つ被子植物に
→東南アジアの熱帯雨林で大発展したのがフタバガキ(沙羅双樹・合板のラワン材)
→ゴンドワナ大陸が起源のフタバガキは9000万年前に分離したインド亜大陸からアジアへ
(インド亜大陸のユーラシア大陸との衝突は4500万年前)
→3000万年前には東南アジアに到達し熱帯雨林の優占種となった
→なぜ高木化して大繁栄したのかは東南アジアの酸性土壌がカギ
・熱帯の土は貧栄養で森林を伐採したら不毛の大地になるといわれている
→熱帯雨林の土の林床は薄く肥沃な表層土も薄い
→その下には養分の乏しい土が深く続いている
→問題は酸性とリンの欠乏(焼畑は酸性の中和)
→貧栄養でも植物の成長量は日本の森林の3倍で大量の樹木と落ち葉が存在する
・熱帯雨林の貧しい土に森林が成立する理由
→東南アジアのフタバガキはマツ科やブナ科と同様にキノコ(外生菌根菌)と共生している
→ボルネオ熱帯雨林の60m観測タワーで自分が高所恐怖症であることを思い出したけど、
数年後にそのタワーは風で倒れた
→60mのフタバガキは地上に露出した板根で倒れないけど板根は物理的な支え
→栄養の吸収は落ち葉の下に伸び広がり外生菌根菌と共生した細い根ルートマットから(略)
→林冠部で光合成した糖分を根に共生した外生菌根菌に供給している
→外生菌根菌は熱帯土壌で欠乏しやすく酸化物に閉じ込められたリンを溶かして供給している
・熱帯雨林の高い生産性は、土を介したこのネットワークに支えられている
→森林をいったん伐採すると回復が難しいのは土に栄養分が少ないことに加え、
このネットワークを寸断してしまうため
・平家物語の冒頭に「沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす」とあるが、もともとは
お釈迦様が亡くなった時にフタバガキの花が一斉に枯れたという話に由来している
→伐採に脆弱な熱帯雨林を無計画に伐採すれば、花の色のように衰えるのは人間・・・
・フタバガキが4年に一度だけ一斉に開花結実する謎
①エルニーニョ後は安定説②ハチとの日程調整説③オランウータンなどが食べ切れない説
④が真打登場で土が原因説なのだ
→真打といっても毎年開花結実するだけの養分供給ができないという情けない話で
→熱帯雨林の土壌に少ない窒素やリンを貯蔵して種子を作るのに4年かかるという説
→私の調査でもリンを貯めるのには数年かかる計算になるが毎年というのは温帯の常識であり、
熱帯のフタバガキには彼らなりの体内時計があるのだろう・・・
・フタバガキの種子の2枚の羽根
→風によって遠くまで子孫を送り込むためと考えられてきたが、森の中では殆どが真下に
落ちることがわかってきた
→成木の近くなら外生菌根菌の菌糸を通じて稚樹に養分を渡せるから→樹木の子育て!!!
→種子が成木になる確率を高めの1%とした場合、100年で世代交代する調和のとれた仕組み
・氷の世界の森と土(略)
(極北イヌビックでの調査エピソードがめっちゃ面白かったです)
・奇跡の島国・日本
→日本は森の国だが同じ中緯度帯には砂漠や乾燥地が多い→やはり奇跡の島
→日本列島は4つのプレートがせめぎ合う地域に位置する→3000m級の山々が誕生
→2000万年前にユーラシア大陸から分離、日本海が生まれた
→氷河期が終わり海水面が上昇、日本海に対馬海流が流入した
→この暖流と山々の存在が、日本列島を水に恵まれた森の楽園に変えた
→そしてこのことが、日本の土が酸性になることを運命付けた
・降り積もる火山灰
→アイドルのデビュー曲のタイトルが「火山灰(柏木由紀)」になる国は日本ぐらい
→日本中に降り積もり1万年前の縄文時代の地表面は今より1mぐらい下だった
→塵も積もれば土になるのだ
→29000年前の姶良火山の大噴火→関東まで積もった火山灰の下から石器が見つかった
→氷河期だった3万年前の旧石器時代に日本人はマンモスを追いかけていたのだ
→氷河期が終わった縄文時代7300年前の鬼界カルデラの大噴火
→やはり関東まで積もり火砕流は屋久島の全域を飲み込んだ→縄文杉も壊滅していた
→北海道でも過去1万年に火山活動と植生回復が7回繰り返されている
→この活発な火山活動が世界的にもユニークな「黒ぼく土」をつくりあげた
・酸性でも平気なブナとスギ
→火山灰から生まれた黒ぼく土は酸性になりにくいが、いったん酸性になれば中和が難しい
→さらに火山灰から生成する粘土がリンを吸着するので作物栽培には向かない
(同じ黒い土でもカナダやウクライナの黒土はカルシウムを多く含み世界の穀倉に)
→ブナやスギなどの樹木はリン鉱物を溶かせるので問題ない
→黄砂には炭酸カルシウムなどアルカリ成分を含むが中和成分が少なくすぐ酸性に変わる
→この黄砂からできる日本海側の土は酸性になりやすい(室堂の雪の壁には黄砂を含む黒い筋)
→火山灰が多い太平洋側のブナ林はミズナラなどライバルとの競争で窮屈そう
→雪が多く土が酸性になりやすい日本海側やアメリカ五大湖東側では美しいブナの純林
・土の養分の低さや酸性で作物栽培に苦労した人間は樹木の機能を肥料として利用した
→焼畑や里山の落ち葉や草を田畑に入れる刈敷など
→多様な自然環境、火山灰、雨(雪)、人間活動で世界的にもユニークな土と生態系に・・・
第2章より
・土は生命の源
→生命の根源はエネルギー源と自己複製能力で、支える元素は炭素・窒素・リン
→炭素は空気が供給源だが窒素とリンは土壌が重要な供給源
→多くの土壌で雨に流される
→生き物は獲得するための進化の道を歩んできた
・ウツボカズラの戦略
→酸性土壌や栄養分の少ない土壌で昆虫を捕獲消化吸収することで養分を補う戦略
→ウツボカズラからすれば昆虫はタンパク質(窒素)とリンのかたまり
→食虫植物の捕食器は生産コストが高いので栄養分の少ない土壌での生存戦略
→昆虫や共生細菌に分解してもらう種類もある
・人体は水分を除く50~70%がタンパク質で昆虫より高濃度の窒素やリンを含む
→獲得するための戦略が「農業」と「料理」
・微生物と酵素、腸内細菌(略)
・熱帯雨林の掃除屋シロアリ(略)
→熱帯雨林はシロアリとゴキブリの楽園(略)
→シロアリは2000種以上いるが害虫は10%ほど、
→ゴキブリは4500種以上いるが家庭の害虫は12種のみ
・草食恐竜の胃から発酵によって放出されたメタンガスは1日2700ℓとされる
→2億年前の地球を温暖化させるのには充分な量
・リグニンと茶色い水
→カナダ北部や北欧の川は湖や湿地が多い平坦な地形を流れる
→酸素が少なく微生物分解が遅いので泥炭土が蓄積している
→泥炭土のタンニンなどの溶存有機物を溶かしこんでるので茶色
→日本に多い火山灰土壌は吸着力の強い粘土が多く溶存有機物を数分で99%吸収する
→地形も急峻でたゆむことも少ないので透明
・熱帯雨林の茶色い水
→熱帯雨林では微生物分解が活発なので(中南米での観察結果から)透明とされていた
→ところが東南アジアの熱帯雨林では茶色だった→報告論文が認められず違いを立証した
→東南アジア熱帯雨林の黄色い土は中南米熱帯雨林の赤い土よりイオン濃度で10倍酸性だった
→北欧マツ林の腐葉土と同様に酸性に適応したキノコで溶存有機物がつくられるのだ
(熱帯雨林では微生物分解が活発で落葉層は薄いが、絶えず供給されるのでつくられる)
→土の酸性が東南アジアの熱帯雨林の茶色い水の真相
・アマゾンの黒い川と白い川(泥炭土と粘土など)→(略)
(土の養分→川や海へ→魚や食べたトリやクマなどの死骸やフン→土の養分に循環)
・オランウータン、土を食べる(略)
→ボルネオ島にはドリアンの固有種が多く存在する
→一説ではドリアンの多様化が始まった時期とオランウータンの出現時期は同じとされる
→美食家に果実を提供して種子を拡散させる戦略が成功したのだ
→被子植物と種子散布者との協力が熱帯雨林の多様性を支えている
→動物は汗などでナトリウムを失うが植物に含まれるナトリウムは少ない
→海から離れて暮らす動物は塩を獲得する知恵を持っている・・・
以下、次の記事(後編)に続きます