2024年09月21日
地図リテラシー入門
ええ、
地図リテラシー入門・・・
~地図の正しい読み方・描き方がわかる
騙されない・読み間違えないために、地図を扱うすべての人に必須の知識~
とゆー本のご紹介であります
表紙カバー裏にあった惹句
裏表紙カバー裏にあった著者紹介
奥付
著者の地理学・地図学への愛情、GIS(地理情報システム)への思い入れがひしひしと伝わる、
(おそらく強い危機感を持って)高校生にも分かるように書かれた入門書であります
図版も多くて分かりやすく(やはり地図があると視覚的に理解できますね)、地図を読むのも
好きなわたくしにも知らなかったことが多く、じつに好書でした
例によって目次のみの紹介
以下、数学的な部分は読み飛ばして読み違いも多いであろう読後メモです
(著作物からの個人メモなので公開に問題があれば非公開設定にします)
第1章より
・情報の5W3H
①いつwhen②どこwhere③だれwho④なにwhat⑤なぜwhy⑥どのようにhow
⑦どのくらいhow much⑧how many
→このうち、②どこwhereの情報を示したものが地図
・一般図と主題図(略)
→国土地理院1/25000「地形図」は固有名詞(情報が地形だけではないので一般図)
・地図も楽譜も見るものではなく読む(読み込む)もの→読図
→(例として)勾配10%は分度器では僅か5.7度、勾配100%でも45度
→分度器の数値感覚より実際には急坂(であることを地図から読み込めるか)
第2章より
・(ミサイル弾道などの)マスメディア報道もインターネット上の指摘も間違いだらけ(略)
→殆どがグーグルマップ(メルカトル図法)に準拠して主題図にも多用している
(グーグルマップは2018年から宇宙から見た外射図法にも切り替えられるようになった)
・地図に間引き・誇張・省略・ずらしがあるのは本来だが、結論を伝える主題図では、
作り手の結論ありきの地図や知識不足で間違った方法による地図も多い
第3章より
・主題図の種類(略)→位置図、概観図、索引図・・・
→国ごとの宗教分布を示すような定性図(面の場合は塗り分け図とも)
→都道府県ごとの人口、人口密度のような階級区分図(コロプレス図)
→ほかにドット、バー、積み上げ、比例記号、パイ、階級記号、流線、メッシュ、等値線、
段彩図、変形地図、絵地図、カラム地図、分布図、統計地図などなど・・・(略)
・色の色相・彩度・明度、光のRGB、インクのCMYK(シアン・マゼンタ・黄・黒)・・・
→例として災害危険度を示すのは青→黄→赤だが、水害(浸水)危険度は自治体で異なる
(濃い青ほど危険度が高い(深い)とか)
・巡回セールスマン問題と地理情報システムGIS(略)
第4章より
・地図上の現象と事象、地物(フィーチャ)と地貌(自然現象)、属性、注記・・・
・地図の端と論議領域(略)
→一枚もの地図がmapで、地図帳はatlas
(1570年に出版された世界初の地図帳名が由来で名付け親はメルカトル)
・方位
→昔の方位は十二支だったので今も南北を子午線、東西を卯酉(ぼうゆう)線としている
→日本の方位記号の「4」部分は磁気偏角を示すという解説があるが根拠はない
・縮尺(スケール)の正しい表現→「縮尺が大きい小さい」だけでは混乱する
→縮尺値が小さい地図=縮尺分母が大きい地図(日本全図とか世界地図とか)のこと
→縮尺値が大きい地図=縮尺分母が小さい地図(地形図とか詳細図とか)のこと
・メルカトル図法で縮尺や南北方位を表示するなど間違った表示の地図も多い
(縮尺記号は赤道上のみ、南北方位記号は(日本なら)東経135度上のみで正しい)
・真北と磁北と方眼北(横軸法を除く円筒図法のみ真北と一致するので補正している)
(北極星は遠いのでどこから見ても北)
・自分で回せる地図は北が上でいいが街区や壁面の案内図は常に向かった方角が上にあるべき
→北が上の案内図で周辺が理解できないのは読み手の知識不足ではなく作り手の知識不足
(これは実際に数多くあって、自分が案内図と向っている方向を頭の中で上に回転してから、
目的方向に向かおうとするのですが、確かに難しいです
まあ北が上なら現在地表示さえ別々に追加すれば、同じ地図が全ての場所で使えるので、
安上りなんでしょうがやはり不親切、作り手の知識不足とも知ってやや納得しましたが)
・カーナビではどちらも選べるが正解はない
→交差点を右に曲がると考えるか東に曲がると考えるかの違い
→初期設定は進行方向を上にしたヘディングアップ表示で、これが多数派だけど、
→国土地理院の人はレンタカーを運転する際に北を上にしたノースアップ表示に切り替えてた
(ルート全体を把握するなら位置関係のわかりやすいノースアップ、案内モードなら交差点を
どちらに曲がるかが分かりやすいヘディングアップとか・・・)
(そーいやアボリジニ語には左右に該当する単語がなく常に正確な方位で表現するとあったし、
ヒトにも体内磁石が備わっていることが実験で証明されたとテレビ番組でやってましたね)
・地理院地図Globe、Google Earth、カシミール3Dのような無料3D地図(略)
(国土地理院1/25000も2013年から「ぼかし図」になって等高線だけより直感的に立体把握が
できるようになったが、北西方向(図の左上)から太陽があたっている前提の陰影なので、
地図を180度回転させると地形の凹凸を逆に認識してしまうことがあるので注意が必要)
・ケバ図、赤色立体地図、CS立体図・・・(略)
・日本地図の同縮尺分割表示では離島が省略される→部分拡大や文字注記で調整している
→日本の領土・領海・排他的経済水域を示す一般図ではすべての島嶼部が表示されるべきだが、
→主題図では、例えば国勢調査であれば無人離島を除外しても支障はないなど・・・
→ただし離島は意図せず書き忘れたり、位置関係がおかしかったりするので常に意識すること
第5章より
・地球は完全な球体ではなく自転の遠心力で赤道付近が膨らんだミカンのかたち
→グーグルマップはWGS84楕円体を採用しているが真球とみなして地図を表示している
→そのことを知らず絶対的な位置を表示すると本来の位置より大きくずれてしまう
・地球が丸いことは知っていても世界も丸いことは実感されていない
→メルカトル図法での世界地図はあり得ないのに殆どの人がこれで世界を想像しているから
(東京モスクワより東京キャンベラのほうが遠いのにメルカトル図法では逆に見えるなど)
・地球上の直線と平面の直線は異なるが同じとみなしている
・緯度と経度の初歩的な求め方とか(略)
(東経135度は天文経度なのでGPSからの地理経度とは異なるなど)
・地図投影法の仕組み(略)
(陸上自衛隊の地形図には距離や面積が計算しやすい横メルカトル図法の投影座標と格子がある)
→地図の面積・角度・距離・方位のうちどれを正確さが必要な要素とするか
→東京から東の方位先はチリだが、メルカトル図法の東(方眼東)先はアメリカ合衆国
→方位は始点から目的地に向いた時の基準方向(真北)に対する角の大きさで、その角度が方位角
→大人が浜から見える水平線は約4.6kmで、ほんの僅かしか見渡せない
・標高、海抜、ジオイド高(略)
・2000年代までのアメリカ国防総省GPS(Grobal Positioning System)以外にも2010年代から
各国で衛星測位システムが実用化されたので、現在の教科書ではGNSS(Grobal Navigation
Satelite System)と説明されている→衛星測位(衛星航法)システム
・政府や自治体の地図や基準点は法令により2002年からの世界測地系に移行しているが、
大手地図会社でも今も日本測地系の地図が出てるので、4~500mズレてたら測地系の違い
・エベレスト山頂とチャレンジャー海淵の最深部では約20kmの高低差があるがビーチボール大
(半径40cm)の大地球儀で表現しても、その差はわずか1.25mm→見ても分からない
→なので鳥瞰図や断面図では高さが強調される
・日本の範囲に適した地図投影法(略)
→メルカトル図法では札幌での面積は那覇での同面積の1.23倍になり誤差とは言えないレベル
→主題図の日本全図に絶対に使ってはいけない図法(都道府県など狭い範囲なら誤差レベル)
→東経135度を中央子午線とした横メルカトル図法なら距離・面積・方位はほぼ正しいが、
正しいと見なせる経度の範囲が限られ中央子午線の異なる隣同士は正しくつながらない
・中央子午線の値を60(3度)の帯に分け体系化したのが横メルカトル図法のUTM座標系
→ユニバーサル企画の座標系で国土地理院の地形図にも使われている
(日本は東西に第51帯から第55帯の範囲)
→1/10000ぐらいまでならほぼ問題ないが大縮尺になると歪みが大きい
→地積測量図1/250のような大縮尺では平面直角座標系も定義されて使われている
第6章より
・電子地図アプリなどの仕組みが地理情報システムGIS(Geographic Infomation System)
・GISの歴史
→1953年、米空軍がレーダー識別する対話型CG地図の半自動防空管制組織SAGEを開発
→1959年、大学生だったトブラーがコンピュータによる地図作成(XYプロッター)論文を提出
→1962年、トムリンソンが森林の電子地図管理システムCGISをカナダ農林省に提案
(これが今のGISの由来でありトムリンソンはGISの父とされている)
→1963年、フィッシャーがSYMAPを開発
→1969年、デンジャモンドとローラ夫人がEsriを設立(今も世界シェアトップの企業)
→1982年、Esriが世界初の商用GISであるARC/INFOを販売
→2001年、ハンケがKeyholeEarth技術を開発
→2003年、ハンケがWhere2Technologies技術を開発
→2004年、どちらもGoogleが買収(ハンケもGoogleに)
→2005年、それぞれの技術からGoogleMapとGoogleEarthが登場
(ハンケは位置情報ゲームIngressをリリースし2015年に独立してPokemon GOをリリース)
・日本では1970年に大阪で天六ガス爆発事故があり地図の自動図化と施設管理が重要課題に
→大阪ガスや東京ガスなどが官民取り組みでシステム開発へ
→1995年の阪神・淡路大震災が日本のGIS発展の契機といわれている
→GISの有効性が証明されたが初動から活用できなかったので産官学連携のGIS政策研究へ
→2007年に地理空間情報活用推進基本法が施行(通称はNSDI(国家空間データ基盤)法)
→行政機関の地図データなどの無償サービスも準天頂衛星の稼働もこの法律によるもの
(NSDI法はクリントン政権の事業で1990年代前半から、日本マクドナルドは1996年から
独自のMcGIS商圏分析システムを運用して出店している)
・2005年のGoogleマップで電子地図の普及が加速した
(国土地理院のウェブマップは2003年からでGoogleマップより2年も早かった!!!)
・地図情報(空間情報)は医学にも
→1854年、ロンドンの医師ジョン・スノウによるコレラ感染者の地図上の可視化
→コレラ菌の発見以前に汚染水と感染の因果関係を突き止めた
→1955年と1960年に日本の医師・萩野昇がイタイイタイ病患者の分布図を作成して、
原因が神通川上流からもたらされる鉱毒であることを突き止めた
→2020年からのコロナ禍ではウェブマップとグラフなどを組み合わせたダッシュボードが
活用されている
・電子地図に縮尺の概念はない
→拡大縮小ができるから→ただし見た目とデータは別
・縮尺より精度が重要
→誤差は必ず含まれる(誤差のないデータ作成は現実的ではない)
→国土地理院の地形図の登山道データは民間アプリより古くなりがち
→近年は登山者の地図アプリ移動履歴からビッグデータ解析で修正する取り組みも・・・
・電子地図の仕組み(略)
・衛星「画像」と航空「写真」
→衛星から撮像された「絵」は衛星写真ではなく衛星画像が正しい
→英単語でもsatelite photographyではなくsatelite imagery
→衛星画像は見えない情報も取得してるので写真では狭いのに誤訳されることも多い
→ところが今は同じ原理で撮影される航空機からの画像は伝統的に現在も航空写真のまま
→英単語もaerial photographyのまま
(ちなみにわたくし98kは撮影して紙にプリントされた静止画を写真、画面表示された静止画を
画像と当ブログ上では区別してきたつもりです
静止画も動画もデジタル撮影(撮像)になった現在でも、モニターに表示された静止画像を
写真と呼ぶのには、まだ抵抗があるのですが・・・
でも素晴らしい静止画像は写真作品と呼びたい気持ちもあって複雑な心境が続いてます)
・ヌル島Null Island
→GIS初心者のミスにより緯度経度ゼロ付近に現れる島で日本人が操作すると日本列島、
都道府県、市町村に似た形の島が現れることが多い(地理座標を投影座標と誤って設定している)
・月も緯度の基準は赤道から、経度0は地球を向いている面の中心と決められている
→火星の経度0(本初子午線)はエアリー0クレーターの中心を通る経線と定められている
・GISにより特に主題図は専門の地図調製業でなくても手軽に作製できるようになった
→普及は喜ばしいことだが弊害として読み手が困惑するような地図が増えた
→高校や大学で地図を学ぶ機会が減り、誤りを見抜く力も養えなくなった
→作り手に都合のよい方向に誘導するように意図的に作られた地図も多い
→読み手にも誤りや意図的な誘導を見抜く地図リテラシーが必要
・GISソフトの課題としては誰でも直感的に扱える操作性が望まれる
・簡単なことを難しく説明するのは簡単で、難しいことを簡単に説明するのは難しい
→さらに、難しいことを簡単に「正しく」説明するのはもっと難しい
→でも安易に置き換えられた言葉は誤解を重ねて伝わっていく
→見聞きした地図用語も本書の索引や参考文献で調べてみて欲しい
→知識の「点」が、理解という「線」でつながるはず・・・
・デジタルマッピングなどGISで「意思決定を支援するという地理学の目的」が効率的になった
→CADもBIM,CIM,PIMと進化させ標準化することが検討されている
→リアルワールドとサイバースペースをシームレスに往復できる考え方がデジタルツイン、
構築された仮想世界がミラーワールド
→ミラーワールドにふさわしい電子国土の構築・・・
・1999年の映画マトリックスのような仮想空間はSFでは登場していたがGISの進化で実用化に
→データの精度が高ければ1/1の電子地図も表現できるようになった
・(GISのような)以前からの考え方や技術を新しい言葉として定義することは誤解も招くが、
マイナーだった分野に関心を集める呼び水になるのも事実
→GISは半世紀以上もマイナーで知名度の低い言葉のままだったが、
→別の呼ばれ方や新しい言葉として、今は多くの人に活用されている・・・
おわりにより
・2019年、2022年からの高校「地理総合」必修化の形骸化を危惧されてた木村圭司教授
との雑談の中で地理の一般書を企画、中でも関心を寄せやすい地図を取り上げた
→一般に地理は歴史より読者層が薄いが地図だと一変する
→地図に歴史と同様のロマンを感じる人が多いのだろう(わたくし98kもです)
→本書の内容は地図学だが活躍している実務分野はほとんど知られていない
・メディアには多くの誤った地図が見られ、その誤りが他のメディアで指摘されることもない
→筆者は教諭でも研究者でもないが、地図リテラシー不足を目のあたりにしてきた
→日本ではサービスはタダで地理学で高い収入は得られない
(海外では相応の対価で組織部門を統括する地理空間情報担当GIOの役職もある)
・高校での半世紀ぶりの地理必修の復活(~2022)
→社会への浸透には長い年月が必要で教育者への浸透も必要なので本書を執筆した
・哲学者カントの言葉「地理学は諸科学の母」
(地理学は系統地理学、地誌学、地理学史、地図学に分類される)
→地理は国語・数学・理科・社会・外国語・情報すべての「どこ」を説明する教科であり、
地図リテラシーは社会で役立つ教養・・・
地図リテラシー入門・・・
~地図の正しい読み方・描き方がわかる
騙されない・読み間違えないために、地図を扱うすべての人に必須の知識~
とゆー本のご紹介であります
表紙カバー裏にあった惹句
裏表紙カバー裏にあった著者紹介
奥付
著者の地理学・地図学への愛情、GIS(地理情報システム)への思い入れがひしひしと伝わる、
(おそらく強い危機感を持って)高校生にも分かるように書かれた入門書であります
図版も多くて分かりやすく(やはり地図があると視覚的に理解できますね)、地図を読むのも
好きなわたくしにも知らなかったことが多く、じつに好書でした
例によって目次のみの紹介
以下、数学的な部分は読み飛ばして読み違いも多いであろう読後メモです
(著作物からの個人メモなので公開に問題があれば非公開設定にします)
第1章より
・情報の5W3H
①いつwhen②どこwhere③だれwho④なにwhat⑤なぜwhy⑥どのようにhow
⑦どのくらいhow much⑧how many
→このうち、②どこwhereの情報を示したものが地図
・一般図と主題図(略)
→国土地理院1/25000「地形図」は固有名詞(情報が地形だけではないので一般図)
・地図も楽譜も見るものではなく読む(読み込む)もの→読図
→(例として)勾配10%は分度器では僅か5.7度、勾配100%でも45度
→分度器の数値感覚より実際には急坂(であることを地図から読み込めるか)
第2章より
・(ミサイル弾道などの)マスメディア報道もインターネット上の指摘も間違いだらけ(略)
→殆どがグーグルマップ(メルカトル図法)に準拠して主題図にも多用している
(グーグルマップは2018年から宇宙から見た外射図法にも切り替えられるようになった)
・地図に間引き・誇張・省略・ずらしがあるのは本来だが、結論を伝える主題図では、
作り手の結論ありきの地図や知識不足で間違った方法による地図も多い
第3章より
・主題図の種類(略)→位置図、概観図、索引図・・・
→国ごとの宗教分布を示すような定性図(面の場合は塗り分け図とも)
→都道府県ごとの人口、人口密度のような階級区分図(コロプレス図)
→ほかにドット、バー、積み上げ、比例記号、パイ、階級記号、流線、メッシュ、等値線、
段彩図、変形地図、絵地図、カラム地図、分布図、統計地図などなど・・・(略)
・色の色相・彩度・明度、光のRGB、インクのCMYK(シアン・マゼンタ・黄・黒)・・・
→例として災害危険度を示すのは青→黄→赤だが、水害(浸水)危険度は自治体で異なる
(濃い青ほど危険度が高い(深い)とか)
・巡回セールスマン問題と地理情報システムGIS(略)
第4章より
・地図上の現象と事象、地物(フィーチャ)と地貌(自然現象)、属性、注記・・・
・地図の端と論議領域(略)
→一枚もの地図がmapで、地図帳はatlas
(1570年に出版された世界初の地図帳名が由来で名付け親はメルカトル)
・方位
→昔の方位は十二支だったので今も南北を子午線、東西を卯酉(ぼうゆう)線としている
→日本の方位記号の「4」部分は磁気偏角を示すという解説があるが根拠はない
・縮尺(スケール)の正しい表現→「縮尺が大きい小さい」だけでは混乱する
→縮尺値が小さい地図=縮尺分母が大きい地図(日本全図とか世界地図とか)のこと
→縮尺値が大きい地図=縮尺分母が小さい地図(地形図とか詳細図とか)のこと
・メルカトル図法で縮尺や南北方位を表示するなど間違った表示の地図も多い
(縮尺記号は赤道上のみ、南北方位記号は(日本なら)東経135度上のみで正しい)
・真北と磁北と方眼北(横軸法を除く円筒図法のみ真北と一致するので補正している)
(北極星は遠いのでどこから見ても北)
・自分で回せる地図は北が上でいいが街区や壁面の案内図は常に向かった方角が上にあるべき
→北が上の案内図で周辺が理解できないのは読み手の知識不足ではなく作り手の知識不足
(これは実際に数多くあって、自分が案内図と向っている方向を頭の中で上に回転してから、
目的方向に向かおうとするのですが、確かに難しいです
まあ北が上なら現在地表示さえ別々に追加すれば、同じ地図が全ての場所で使えるので、
安上りなんでしょうがやはり不親切、作り手の知識不足とも知ってやや納得しましたが)
・カーナビではどちらも選べるが正解はない
→交差点を右に曲がると考えるか東に曲がると考えるかの違い
→初期設定は進行方向を上にしたヘディングアップ表示で、これが多数派だけど、
→国土地理院の人はレンタカーを運転する際に北を上にしたノースアップ表示に切り替えてた
(ルート全体を把握するなら位置関係のわかりやすいノースアップ、案内モードなら交差点を
どちらに曲がるかが分かりやすいヘディングアップとか・・・)
(そーいやアボリジニ語には左右に該当する単語がなく常に正確な方位で表現するとあったし、
ヒトにも体内磁石が備わっていることが実験で証明されたとテレビ番組でやってましたね)
・地理院地図Globe、Google Earth、カシミール3Dのような無料3D地図(略)
(国土地理院1/25000も2013年から「ぼかし図」になって等高線だけより直感的に立体把握が
できるようになったが、北西方向(図の左上)から太陽があたっている前提の陰影なので、
地図を180度回転させると地形の凹凸を逆に認識してしまうことがあるので注意が必要)
・ケバ図、赤色立体地図、CS立体図・・・(略)
・日本地図の同縮尺分割表示では離島が省略される→部分拡大や文字注記で調整している
→日本の領土・領海・排他的経済水域を示す一般図ではすべての島嶼部が表示されるべきだが、
→主題図では、例えば国勢調査であれば無人離島を除外しても支障はないなど・・・
→ただし離島は意図せず書き忘れたり、位置関係がおかしかったりするので常に意識すること
第5章より
・地球は完全な球体ではなく自転の遠心力で赤道付近が膨らんだミカンのかたち
→グーグルマップはWGS84楕円体を採用しているが真球とみなして地図を表示している
→そのことを知らず絶対的な位置を表示すると本来の位置より大きくずれてしまう
・地球が丸いことは知っていても世界も丸いことは実感されていない
→メルカトル図法での世界地図はあり得ないのに殆どの人がこれで世界を想像しているから
(東京モスクワより東京キャンベラのほうが遠いのにメルカトル図法では逆に見えるなど)
・地球上の直線と平面の直線は異なるが同じとみなしている
・緯度と経度の初歩的な求め方とか(略)
(東経135度は天文経度なのでGPSからの地理経度とは異なるなど)
・地図投影法の仕組み(略)
(陸上自衛隊の地形図には距離や面積が計算しやすい横メルカトル図法の投影座標と格子がある)
→地図の面積・角度・距離・方位のうちどれを正確さが必要な要素とするか
→東京から東の方位先はチリだが、メルカトル図法の東(方眼東)先はアメリカ合衆国
→方位は始点から目的地に向いた時の基準方向(真北)に対する角の大きさで、その角度が方位角
→大人が浜から見える水平線は約4.6kmで、ほんの僅かしか見渡せない
・標高、海抜、ジオイド高(略)
・2000年代までのアメリカ国防総省GPS(Grobal Positioning System)以外にも2010年代から
各国で衛星測位システムが実用化されたので、現在の教科書ではGNSS(Grobal Navigation
Satelite System)と説明されている→衛星測位(衛星航法)システム
・政府や自治体の地図や基準点は法令により2002年からの世界測地系に移行しているが、
大手地図会社でも今も日本測地系の地図が出てるので、4~500mズレてたら測地系の違い
・エベレスト山頂とチャレンジャー海淵の最深部では約20kmの高低差があるがビーチボール大
(半径40cm)の大地球儀で表現しても、その差はわずか1.25mm→見ても分からない
→なので鳥瞰図や断面図では高さが強調される
・日本の範囲に適した地図投影法(略)
→メルカトル図法では札幌での面積は那覇での同面積の1.23倍になり誤差とは言えないレベル
→主題図の日本全図に絶対に使ってはいけない図法(都道府県など狭い範囲なら誤差レベル)
→東経135度を中央子午線とした横メルカトル図法なら距離・面積・方位はほぼ正しいが、
正しいと見なせる経度の範囲が限られ中央子午線の異なる隣同士は正しくつながらない
・中央子午線の値を60(3度)の帯に分け体系化したのが横メルカトル図法のUTM座標系
→ユニバーサル企画の座標系で国土地理院の地形図にも使われている
(日本は東西に第51帯から第55帯の範囲)
→1/10000ぐらいまでならほぼ問題ないが大縮尺になると歪みが大きい
→地積測量図1/250のような大縮尺では平面直角座標系も定義されて使われている
第6章より
・電子地図アプリなどの仕組みが地理情報システムGIS(Geographic Infomation System)
・GISの歴史
→1953年、米空軍がレーダー識別する対話型CG地図の半自動防空管制組織SAGEを開発
→1959年、大学生だったトブラーがコンピュータによる地図作成(XYプロッター)論文を提出
→1962年、トムリンソンが森林の電子地図管理システムCGISをカナダ農林省に提案
(これが今のGISの由来でありトムリンソンはGISの父とされている)
→1963年、フィッシャーがSYMAPを開発
→1969年、デンジャモンドとローラ夫人がEsriを設立(今も世界シェアトップの企業)
→1982年、Esriが世界初の商用GISであるARC/INFOを販売
→2001年、ハンケがKeyholeEarth技術を開発
→2003年、ハンケがWhere2Technologies技術を開発
→2004年、どちらもGoogleが買収(ハンケもGoogleに)
→2005年、それぞれの技術からGoogleMapとGoogleEarthが登場
(ハンケは位置情報ゲームIngressをリリースし2015年に独立してPokemon GOをリリース)
・日本では1970年に大阪で天六ガス爆発事故があり地図の自動図化と施設管理が重要課題に
→大阪ガスや東京ガスなどが官民取り組みでシステム開発へ
→1995年の阪神・淡路大震災が日本のGIS発展の契機といわれている
→GISの有効性が証明されたが初動から活用できなかったので産官学連携のGIS政策研究へ
→2007年に地理空間情報活用推進基本法が施行(通称はNSDI(国家空間データ基盤)法)
→行政機関の地図データなどの無償サービスも準天頂衛星の稼働もこの法律によるもの
(NSDI法はクリントン政権の事業で1990年代前半から、日本マクドナルドは1996年から
独自のMcGIS商圏分析システムを運用して出店している)
・2005年のGoogleマップで電子地図の普及が加速した
(国土地理院のウェブマップは2003年からでGoogleマップより2年も早かった!!!)
・地図情報(空間情報)は医学にも
→1854年、ロンドンの医師ジョン・スノウによるコレラ感染者の地図上の可視化
→コレラ菌の発見以前に汚染水と感染の因果関係を突き止めた
→1955年と1960年に日本の医師・萩野昇がイタイイタイ病患者の分布図を作成して、
原因が神通川上流からもたらされる鉱毒であることを突き止めた
→2020年からのコロナ禍ではウェブマップとグラフなどを組み合わせたダッシュボードが
活用されている
・電子地図に縮尺の概念はない
→拡大縮小ができるから→ただし見た目とデータは別
・縮尺より精度が重要
→誤差は必ず含まれる(誤差のないデータ作成は現実的ではない)
→国土地理院の地形図の登山道データは民間アプリより古くなりがち
→近年は登山者の地図アプリ移動履歴からビッグデータ解析で修正する取り組みも・・・
・電子地図の仕組み(略)
・衛星「画像」と航空「写真」
→衛星から撮像された「絵」は衛星写真ではなく衛星画像が正しい
→英単語でもsatelite photographyではなくsatelite imagery
→衛星画像は見えない情報も取得してるので写真では狭いのに誤訳されることも多い
→ところが今は同じ原理で撮影される航空機からの画像は伝統的に現在も航空写真のまま
→英単語もaerial photographyのまま
(ちなみにわたくし98kは撮影して紙にプリントされた静止画を写真、画面表示された静止画を
画像と当ブログ上では区別してきたつもりです
静止画も動画もデジタル撮影(撮像)になった現在でも、モニターに表示された静止画像を
写真と呼ぶのには、まだ抵抗があるのですが・・・
でも素晴らしい静止画像は写真作品と呼びたい気持ちもあって複雑な心境が続いてます)
・ヌル島Null Island
→GIS初心者のミスにより緯度経度ゼロ付近に現れる島で日本人が操作すると日本列島、
都道府県、市町村に似た形の島が現れることが多い(地理座標を投影座標と誤って設定している)
・月も緯度の基準は赤道から、経度0は地球を向いている面の中心と決められている
→火星の経度0(本初子午線)はエアリー0クレーターの中心を通る経線と定められている
・GISにより特に主題図は専門の地図調製業でなくても手軽に作製できるようになった
→普及は喜ばしいことだが弊害として読み手が困惑するような地図が増えた
→高校や大学で地図を学ぶ機会が減り、誤りを見抜く力も養えなくなった
→作り手に都合のよい方向に誘導するように意図的に作られた地図も多い
→読み手にも誤りや意図的な誘導を見抜く地図リテラシーが必要
・GISソフトの課題としては誰でも直感的に扱える操作性が望まれる
・簡単なことを難しく説明するのは簡単で、難しいことを簡単に説明するのは難しい
→さらに、難しいことを簡単に「正しく」説明するのはもっと難しい
→でも安易に置き換えられた言葉は誤解を重ねて伝わっていく
→見聞きした地図用語も本書の索引や参考文献で調べてみて欲しい
→知識の「点」が、理解という「線」でつながるはず・・・
・デジタルマッピングなどGISで「意思決定を支援するという地理学の目的」が効率的になった
→CADもBIM,CIM,PIMと進化させ標準化することが検討されている
→リアルワールドとサイバースペースをシームレスに往復できる考え方がデジタルツイン、
構築された仮想世界がミラーワールド
→ミラーワールドにふさわしい電子国土の構築・・・
・1999年の映画マトリックスのような仮想空間はSFでは登場していたがGISの進化で実用化に
→データの精度が高ければ1/1の電子地図も表現できるようになった
・(GISのような)以前からの考え方や技術を新しい言葉として定義することは誤解も招くが、
マイナーだった分野に関心を集める呼び水になるのも事実
→GISは半世紀以上もマイナーで知名度の低い言葉のままだったが、
→別の呼ばれ方や新しい言葉として、今は多くの人に活用されている・・・
おわりにより
・2019年、2022年からの高校「地理総合」必修化の形骸化を危惧されてた木村圭司教授
との雑談の中で地理の一般書を企画、中でも関心を寄せやすい地図を取り上げた
→一般に地理は歴史より読者層が薄いが地図だと一変する
→地図に歴史と同様のロマンを感じる人が多いのだろう(わたくし98kもです)
→本書の内容は地図学だが活躍している実務分野はほとんど知られていない
・メディアには多くの誤った地図が見られ、その誤りが他のメディアで指摘されることもない
→筆者は教諭でも研究者でもないが、地図リテラシー不足を目のあたりにしてきた
→日本ではサービスはタダで地理学で高い収入は得られない
(海外では相応の対価で組織部門を統括する地理空間情報担当GIOの役職もある)
・高校での半世紀ぶりの地理必修の復活(~2022)
→社会への浸透には長い年月が必要で教育者への浸透も必要なので本書を執筆した
・哲学者カントの言葉「地理学は諸科学の母」
(地理学は系統地理学、地誌学、地理学史、地図学に分類される)
→地理は国語・数学・理科・社会・外国語・情報すべての「どこ」を説明する教科であり、
地図リテラシーは社会で役立つ教養・・・