2025年02月28日
土と生命の46億年史
とーとつですが・・・

「土と生命の46億年史」であります
裏表紙カバーにあった惹句

奥付

第1刷から僅か1ヶ月で第2刷が発行されており売れ行きは好調のようですね
(本日現在、書店では次の増刷まで品切れになってるとか!!!)
著者の略歴

そう、以前wingさんからお借りした「大地の五億年」著者の最新刊であります
ま、今回も図書館からの借り物なんでしゅが・・・
例によって目次のご紹介





土と生命の関係に特化した入門書で・・・
・まず、かなり専門的なハナシなのにサルにもわかるように書かれてて、
(ま、さすがに中学生程度の読解力を持つサルに限られるけど)
・「諸説あります」ではなく様々な仮説の概要も紹介されてて目からウロコ、
・「たとえ話」が身近で一般的なので(土とか蟲とか懐中電灯とかのマニアに限らず
)、
ふつーの生活をしてる人でも最後まで関心が途切れることはないでしょう
・たとえば「大地の五億年」にもあった「地球お母さんの半生」(地球46億年のたとえ話)
(前回は「地球おばさん」だったのに何故か今回「地球お母さん」になってたけど
)
⇒地球お母さんは現在46歳
⇒小学1年生(6歳)で生き物係になる(生命の誕生)
⇒19歳で生計を独立(酸素発生型光合成の開始)
⇒28歳から38歳まで債務処理(海水の鉄イオンの酸化)⇒地質学では退屈な10億年とされる
⇒41歳で一念発起して家庭菜園をはじめる(植物の上陸⇒土の誕生)
⇒2年ほど暮らしていた恐竜兄さんが半年前に失踪する
⇒10日前に小人たちが温室栽培をはじめた(人類の誕生)・・・
まあ、こんな感じでわかりやすく土と生命の関係が描かれるのですが、以下高齢の恒例の、
消えゆく脳の外部記憶としてのランダムな一部メモです
(著作物からのメモなので公開に問題があれば非公開設定にします)
・植物が上陸してから5億年
⇒主役の交代劇はあっても生命と物質(土)のサイクルが繰り返されてきた
⇒これが完全に循環した場合、土の栄養分収支は差し引きゼロになる
⇒必要な栄養分は地表付近に集まり必要のない成分は集まらない⇒表土が肥沃になる
⇒細菌・カビなどにキノコや動物も加わり土のシステムは多様化し今も進化している
⇒これが「土を人工的に作ることができない」土の研究者の言い訳・・・
・土と動物の歴史
⇒ミミズは植物の上陸から1億年後、ダンゴムシはさらに1億年後に登場している
⇒動物は植物・微生物の炭素・窒素・リンの循環に余剰が生まれるまで上陸できなかった
(植物・微生物のように陸地を風や水で移動できず糖分を植物の光合成に依存していたから)
⇒植物はカリウムを必要とするがナトリウムは必要としない(動物はどちらも必要)
(植物・微生物の上陸で岩石風化が活発化し、要らない(塩化)ナトリウムが海水に増えた?)
⇒捕食者(魚類)と塩分濃度の変化から自由になる方法の一つが「上陸」だった
⇒「土ができるのを1億年も待っていた」というのが遅刻したミミズの言い訳
⇒花の4億年組(脚が0~無数の土壌動物)と森の3億年組(脚が6本の昆虫と4本の両生類)略
・土壌動物は変動への柔軟性で数億年も生き続けている⇒そんな大型動物はいない
⇒恐竜はまだ息の長い方だがアルカロイド毒を持つ被子植物の登場で絶滅した説もある
⇒大型動物は植物の進化にすぐに適応できない
・大陸移動⇒地域固有の生物進化に
⇒ゴンドワナ大陸の分裂前に拡がった土壌動物
⇒大陸ごとに異なる土や植物に合わせた昆虫
・土と大気の変化に対応できなかった生物は衰退・絶滅した
⇒現在、人類も気候変動に直面している
・白亜紀に増加した被子植物とキノコ
⇒被子植物は光合成能力が高く根とキノコの働きで岩石風化も促進され土も深くなった
⇒岩石風化で土ができるプロセスで大気中の二酸化炭素が大量に消費された
⇒海でも酸欠により植物プランクトンが大量死、海底に二酸化炭素が固定された(中東の石油)
⇒これで地球が寒冷化し巨大隕石もあって恐竜が絶滅、小型の鳥類と哺乳類が増加した説
・鳥類と哺乳類は脳が大きく、さらに「自分の殻に閉じこもらない」(アルマジロは例外)
⇒哺乳類の体温は37度(アルマジロは例外34度
)で鳥類は41度
⇒土の温度はふつう25度以下、土壌微生物は25度で活発に増殖する
⇒37度では8割が増殖できない⇒母から継承された腸内細菌だけが37度で活発化する
・6600万年前の隕石衝突で森林が壊滅、その分解者であるカビ・キノコが大増殖した
⇒変温性の恐竜はカビ由来の病気で淘汰され恒温性の哺乳類・鳥類が選抜された説も
⇒隕石衝突時の硫酸雨で土壌が酸化し森林が破壊されたので大型恐竜が一掃された説も
・岩石⇒(生命誕生に関わる)粘土⇒植物と微生物が岩石砂漠を土に変化させた
⇒土と大気が動物の栄枯盛衰に関わり変動に対応できなかった生物は衰退・絶滅した
・岩石のサイクル
⇒岩石(玄武岩や花崗岩⇒土の成分)⇒風化・浸食⇒一部が海底に沈み堆積岩に
⇒さらにその一部がマグマになって隆起や噴火で岩石に戻る(一周するのに数千年~数億年)
・土の新陳代謝
⇒日本は地形が急峻で隆起も噴火も活発、火山灰も黄砂も降り積もるので土は若い
⇒地質年代が古くなだらかな大陸では土の新陳代謝が起きにくく土が古い
⇒古い土は栄養分が失われる⇒風化しにくい鉄と砂だけ残されたのがラテライト「土の墓標」
⇒オーストラリア大陸、アフリカ大陸の中央部、南米大陸の赤土など⇒リン不足
・脳が大きくエネルギー消費も大きい哺乳類と鳥類は多くのリンを必要とする
⇒フクロミツスイとバンクシアの例(略)
⇒気候変動による火災頻発で絶滅の危機に⇒人類も同じ
・哺乳類⇒霊長類⇒大型類人猿⇒ヒト
⇒高カロリーでリンの豊富な食料が熱帯雨林のトロピカルフルーツ
⇒実際にサルの分布は熱帯雨林に集中している(ニホンザルとヒトは例外)
・現在の熱帯雨林は南米アマゾン・アフリカ中央部・東南アジアが三大地域
⇒南米やアフリカの樹高は40mぐらいだが東南アジアのフタバガキ科は60m以上
⇒樹間をつなぐツル植物も少なく滑空生物が有利となる(サル・トカゲ・カエルなど)
⇒フタバガキ科が増加した時期に滑空を選ばなかったサルが霊長類の祖先説
・東南アジアの赤黄色土はアフリカの赤土より若く酸性土壌でリンが溶けにくいが、
⇒キノコ(外生菌根菌)との共生でフタバガキ科の巨大化を可能にした
⇒多様なドリアンも育ち多くのリンを求める霊長類の胃袋を満たした
・ヒマラヤの標高とサルの脳の巨大化の関係
⇒ヒマラヤ山脈の発達⇒モンスーン気候を強化⇒雨は山を削り土砂は熱帯アジアに流れ込む
⇒広大な半島スンダランドを形成⇒風化に多くの二酸化炭素が使われた⇒地球寒冷化
⇒同時期にアンデス山脈も隆起し同様の風化で熱帯アマゾンを形成⇒地球寒冷化
⇒氷河・永久凍土が発達⇒地球全体が乾燥化して森林は草原に
⇒アフリカでは熱帯雨林が分断された⇒サルは森から森へ草原を歩くようになった
⇒草食動物を狩るために社会性を身につけたサル(ヒト)の脳は巨大化した
⇒これが人類進化についての一つの仮説だが、話はここまで単純ではない・・・
・陸地で風化が進めば海では逆の現象が起きる(逆風化)
⇒陸で溶けた鉄などが海で鉱物に戻る際に二酸化炭素が大気に返却される
⇒この逆風化が地球の極端な寒冷化を食い止めてきた
⇒この動きを止めたのが生物進化
・乾燥化により陸ではイネ科、海では珪藻(植物プランクトン)が増加した
⇒海中のケイ素が減少し海底の粘土鉱物も生成されにくくなる
⇒二酸化炭素のリサイクル、温度調節が低調になり寒冷化・乾燥化を止められなくなった
・これらの生物進化と土壌侵食・岩石風化が組み合わさった気候変動が脳の巨大化に・・・
・サハラ砂漠の誕生は300万年前で人類最古の二足歩行の足跡と同じ年代
⇒砂漠のない東南アジアとは異なりアフリカでは乾燥化で熱帯雨林が減少した
⇒分断された森から森へ草原を二足歩行するようになったのがヒト
⇒実際に化石人骨は東アフリカに集中していた⇒イーストサイドストーリー仮説
⇒ところがアフリカ中央部や西アフリカでも発見され、この仮説は否定された
⇒アフリカ中央部は化石が示す700万年前は熱帯雨林だった(現在はサハラ砂漠)
⇒ヒトが二足歩行するようになったのは草原ではなく熱帯雨林だった
・なぜアフリカの熱帯雨林では「サルも木から降りた」のか
⇒上陸後の両生類や哺乳類は紫外線で発生する活性酸素への抗酸化物質としてビタミンCを
合成する酵素遺伝子を持っていたが霊長類は失った
⇒熱帯雨林のフルーツでビタミンCを摂取できてたから
⇒東南アジアのフタバガキ科の熱帯雨林では外生菌根菌との共生で栄養を貯めてもらい、
エルニーニョの低温や乾燥で細菌や菌類が死んだり眠った隙に放出された栄養分を集める
⇒充分な栄養が貯まると大量のフルーツを生産する(およそ4年に1度で気まぐれ)
⇒フルーツを主食にするオランウータンは我慢することを選んだ
⇒繁殖・子育てしやすい「気まぐれな豊作年」を待つため繁殖能力は極めて低い
(これが熱帯雨林の減少とあいまってオランウータン絶滅の危機に)
⇒いっぽうアフリカの熱帯雨林にフタバガキ科はなくマメ科が多い
⇒マメ科は根粒菌と共生しアンモニアを補給してもらうので赤土でも育つ
⇒しかし東南アジアの土より100倍も古い赤土にフルーツを作るのに必要なリンは少ない
⇒結果としてフルーツ生産量も少なく、ゴリラ・チンパンジーは明確な発情期を持って、
フルーツの多い季節にだけ子育てをするようになった
⇒乾燥化による森林減少に加え生産力が少ないことは食料争奪戦を激化させたはず
⇒弱かったヒトの祖先は落ちたフルーツを拾うことから始めた(腐る直前が一番美味しい)
⇒地面に落ちたフルーツは微生物によりアルコール発酵していた⇒酒の味を覚えた
⇒これがヒトの二足歩行の動機がフルーツ酒という「のんべえ仮説」
⇒地面のフルーツを両手に抱え妻子に運ぶため二足歩行を始めたという「イクメン仮説」もある
⇒いずれにせよ赤土の栄養不足で樹上のフルーツを食べられなくなったサルが私たちの祖先
・フルーツ争奪戦に負け木を降りたサルは西アフリカの熱帯雨林から東アフリカの草原へ
⇒東アフリカの草原は半乾燥地だったので土は肥沃だった
⇒化石人骨の多くはこの肥沃な土の分布域から見つかっている
⇒肥沃な土で季節を問わず食料入手できるようになり発情期がなくなった⇒人口爆発へ
⇒アウストラロピテクス属は植物食、ホモ属は肉食を含む雑食だった
⇒肉食のホモ・ネアンデルタールはヨーロッパの寒冷化で絶滅、雑食のホモ・サピエンスは
ネアンデルタールと交雑しつつ生き延び世界に分布した
⇒なので「好き嫌いせず食べなさい」は人類史に基づく教訓なのである
・農業は3000万~5000万年前に昆虫が始めたが人類農業の特異点は「土を変える」こと
⇒土には人類が文明を興せた理由、危機に瀕している理由が隠されている
・地球の方程式⇒岩石+大気⇒(風化作用)⇒土+海
⇒この方程式には生命という項がない
⇒つまり生命が利用しているのは土の主成分ではなく周りの栄養分
・花崗岩の風化の例
花崗岩+炭酸水=砂+粘土+ケイ素+塩(ナトリウム)
⇒濃尾平野の山の花崗岩が風化すると微粒子に分解して木曽川に運ばれ砂は扇状地に堆積
⇒これが砂質土壌になり守口大根を生む
⇒粘土は名古屋を含む下流域に堆積して瀬戸焼に使われる粘土層となる
⇒岩石のカリウムやケイ素は田んぼのイネに吸収され米を生む
⇒海に流れ込んだナトリウムは食塩になる
⇒海に流れ込んだケイ素は珪藻(植物プランクトン)の材料になりウナギを育む
⇒これらを合わせると名古屋名物のうな丼になる
・つまり生命は土や海の栄養分の存在量より循環量に支えられているのだ
⇒循環量を超えて資源を利用すればやがて枯渇する
⇒この原則に抗う唯一の地球生物が人類・・・(略)
・(肉食から竹食へ変化したパンダのように)安定して確保できる安全な食料が欲しい
⇒草原でヒトと共存した草食動物の食料はイネ科植物の葉や茎で硬い殻の種子は好まない
⇒これに目をつけたヒトと作物の共進化が始まった
⇒集落の周りは糞尿や廃棄物で栄養分の多い土が多く実りがいい
⇒そこに実りのいい作物を選別してまた植える⇒小規模な家庭菜園から焼畑へ⇒農業
⇒狩猟採集では10㎢あたり1~7人しか生きられないが焼畑だと300人分の食料ができる
・農業は物質循環の法則を利用し土から効率よく食料を得る大発明
⇒狩猟採集より忙しくなり社会構造も変わるがヒトの繁殖能力の高さが農業を求めた
⇒人口増加による環境問題や土壌劣化もなく世界から飢餓、貧困、戦争がなくなっていれば
農業にケチをつける人はいなかっただろうが・・・
・焼畑農業でも人口が増加すれば土を回復させる余裕がなくなり酷使して放棄される
⇒人類は土によって繁栄したが土が繁栄の代償となったともいえる⇒文明崩壊へ
⇒それでも人類が発展を続けられたのは土の栄養分に貯蓄があって技術革新があったから
⇒不足分は日本では人糞尿や草木堆肥、ヨーロッパでは家畜糞尿堆肥で
⇒家畜の骨や硝石は有機物ではなく化学肥料だが生態系の物質循環を利用したものだった
・人新世の地層としての土とは?
⇒火の使用からか農業からか鉄器からか化学肥料の発明からか・・・
⇒古生代初期なら三葉虫、白亜紀ならアンモナイトが示準化石とされる
⇒人新世の地層はプラスチックや核実験由来の放射性物質が識別特徴とされる
・食料増産の手段は耕地の拡大か面積当たり収穫量を高めるかのいずれか
⇒自然の窒素循環速度が世界人口を16億人に制限していた(20世紀初頭)
⇒チリ硝石も枯渇し第一次世界大戦の前夜に発明されたのが火薬にもなるハーバー・ボッシュ法
・化石燃料を使って窒素肥料を作ることにより人口が5倍に増加した
(人体中の窒素2㎏のうち半分は化学肥料由来になっている)
⇒根粒菌の窒素固定と異なるのは重化学工業の発展が前提となること
(途上国では製造できず先進国では栄養過剰で汚染や富栄養化に)
⇒物質循環ではなく過去の生物の化石(石油や石炭)に一方的に協力させる仕組み
⇒一方的で経済的だが大気中の二酸化炭素を増やし化石燃料への依存体質になった
・品種改良された作物は野生を忘れ化学肥料と灌漑水の土が選択される
⇒機械化・大規模化
⇒肥沃な農地の分布する11%で世界人口の80%60億人分の食料を生むいびつな構造に
⇒ウクライナなど東欧、北米プレーリー、南米パンパ、インド玄武岩地帯、中国黄土高原に局在
⇒グローバル化すると生産地リサイクルできず北米プレーリーでは100年で腐植の半分を失った
・農耕開始から1万年、人類は技術革新を続けてきた(他生物の農業に似る⇒収斂進化)
⇒キノコや土壌動物のような土を作る生物の模倣はまだできていない
⇒環境汚染の低減・肥沃な土の維持・劣化した土の再生・・・
⇒人新世にはさらなる技術や知恵が必要
・化学肥料、植物工場、人工土壌、土壌改良、土壌生成(腐植の蓄積)・・・
・熱帯雨林の伐採・耕地化後、土壌有機物量は数年で急速に失われる
⇒土の復元には重粘土質、強酸性に併せて多様な微生物の喪失が問題になる
⇒私が20年間調査を継続しているインドネシア東カリマンタン州(ボルネオ島)では、
二次林において30年間で土壌有機物量が回復した
⇒荒れ地を森林に回復させた場所では10年で深さ30cmまでの腐植が1.5~2倍になった
⇒これは世界平均より早く、土の研究者の話よりも早い
⇒粘土が多い分は下駄を履いてるが条件次第で早く土ができる事実は現地には希望
・もっと条件の悪い石炭採掘跡地
⇒チェコでは私の共同研究者がミミズで森林土壌の再生に成功した
⇒ミミズの多様性はヨーロッパで高く小笠原ではカタツムリ、アフリカ・インドネシアでは
シロアリ、南米ではアリ
・植物・微生物・ミミズ・昆虫と、その生存環境をそろえることが土壌生成加速のカギ
⇒5億年前とは異なり進化を待つ必要はない⇒すでにフルメンバーは揃っている
⇒最後は人間の出番だ!!!
・栄養不足のアフリカの赤土も強酸性のインドネシアの赤黄色土も石灰・化学肥料・堆肥で
土壌改良はできるが、現地には資材も資金も充分ではないし数年で消失・流失する
⇒現地の物質循環で土を再生する仕組み⇒これが人工土壌に求める個人的なこだわり
・土壌再生には隣の天然林の土を借りて荒れ地にまくのが一番
⇒荒れ地への植林用の苗木ポッドに天然林の土を少し加える技術もある
⇒しかし熱帯雨林は風前の灯なので、このアイデアも広まると負の連鎖を招く
⇒持続可能な資材で土壌生成を加速する技術が必要
・ストッキングに詰め天然林に埋設した岩石粉末や火山灰を荒れ地に接種するアイデア
⇒微生物の多様性は低くても最小限のセットで定着できればいい
⇒スピードアップ(私は40年で満足したけど
)と目的に応じたカスタマイズ実験を続けている
・現状でもっとも成功している人工土壌は田んぼ
⇒福島の原発事故後の土壌調査で気付かされた
⇒除染後の腐植は減少しており不作は確実と思われたのに大豊作だった
⇒急激な変化(略)で放出された栄養分と考えられ翌年からの収穫は入れ替えた土壌の質による
⇒40億年前の粘土、35億年前の古細菌とビビアナイト、20億年分の細菌進化の歩み
⇒これらを人工的に濃縮したものが水田土壌だった
・土壌生物は土は作ってもゴミは出さない超循環型社会を築き上げた
⇒化石燃料などの資源利用でゴミを出し土壌を消耗し続ける人類との決定的な違い
⇒静脈物流・循環型経済・消費地から生産現場への資源循環による再炭素化へ
(アマゾン先住民は数千年前から廃棄物での土作りと人工土壌のハイブリッドをやっている)
⇒腐植の維持増加には社会全体で土と断絶しないライフスタイルを構築する必要がある
・「土はかけがえのないもの」と伝えるなら宮崎アニメのヒロインのほうが上手
・「家庭菜園で役立つ土作りの指南」なら近所のプロ農家のほうが詳しい
・この本で伝えたいのは土作りは難しいという実感と不可能ではなさそうという希望
・40年前の岩石粉末サンプルを探して山中をさまよい気付いたこと
⇒自分の代では収穫できない森の再生と子孫の繁栄を信じて木を植えた人々が確かにいた
⇒それが今では伐採適期60年を過ぎて花粉症を招く厄介者になっていた
⇒一人一人の仕事や暮らしもちっぽけさでは似たようなもの
⇒それでも足元には土がある
⇒40年前の先人が岩石粉末サンプルを埋めていなければ人工土壌の希望はなかった
・科学技術に依存した現代社会には、科学離れした人々が暮らしている
⇒食料生産で土への依存や負荷を高めて、逆にどんどん土から遠ざかりつつある
⇒現代科学でも再現できない高度な物質を見下すことはできないはず
・土とは何なのか(定義)
⇒土粒子に着目した定義「砂+粘土+腐植の混合物」
⇒団粒構造に代表される定義「砂+粘土+腐植+空気+水の空間」
⇒人工土壌にも適用できる定義「鉱物+生物=自律的な知的システム」
・・・と拡張してきたが、これもゴールではない・・・
・本書では土と生命の歩みを身近な事例で説明することに挑戦した
・四十を超えても泥団子作りに勤しんでると、研究というより子供の遊びだと思われることも
少なくない
で、その対策として巻末に化学式をつけたそうで
、せっかくなので巻末付録もご紹介
(著作物なので公開に問題があれば非公開設定にします)

ええ、わたくし注意書きどおりスルーしましたが・・・
(すっかり忘れてた基本の化学式のみ追記メモしました)
4)有機物の分解(逆に進めば植物の光合成)
C6H12O6(糖)+6O2➝6CO2+6H2O
(糖は1モルあたり2870ギガジュールのエネルギーを生む)

「土と生命の46億年史」であります
裏表紙カバーにあった惹句

奥付

第1刷から僅か1ヶ月で第2刷が発行されており売れ行きは好調のようですね
(本日現在、書店では次の増刷まで品切れになってるとか!!!)
著者の略歴

そう、以前wingさんからお借りした「大地の五億年」著者の最新刊であります
ま、今回も図書館からの借り物なんでしゅが・・・

例によって目次のご紹介





土と生命の関係に特化した入門書で・・・
・まず、かなり専門的なハナシなのにサルにもわかるように書かれてて、
(ま、さすがに中学生程度の読解力を持つサルに限られるけど)
・「諸説あります」ではなく様々な仮説の概要も紹介されてて目からウロコ、
・「たとえ話」が身近で一般的なので(土とか蟲とか懐中電灯とかのマニアに限らず

ふつーの生活をしてる人でも最後まで関心が途切れることはないでしょう
・たとえば「大地の五億年」にもあった「地球お母さんの半生」(地球46億年のたとえ話)
(前回は「地球おばさん」だったのに何故か今回「地球お母さん」になってたけど

⇒地球お母さんは現在46歳
⇒小学1年生(6歳)で生き物係になる(生命の誕生)
⇒19歳で生計を独立(酸素発生型光合成の開始)
⇒28歳から38歳まで債務処理(海水の鉄イオンの酸化)⇒地質学では退屈な10億年とされる
⇒41歳で一念発起して家庭菜園をはじめる(植物の上陸⇒土の誕生)
⇒2年ほど暮らしていた恐竜兄さんが半年前に失踪する
⇒10日前に小人たちが温室栽培をはじめた(人類の誕生)・・・
まあ、こんな感じでわかりやすく土と生命の関係が描かれるのですが、以下
消えゆく脳の外部記憶としてのランダムな一部メモです
(著作物からのメモなので公開に問題があれば非公開設定にします)
・植物が上陸してから5億年
⇒主役の交代劇はあっても生命と物質(土)のサイクルが繰り返されてきた
⇒これが完全に循環した場合、土の栄養分収支は差し引きゼロになる
⇒必要な栄養分は地表付近に集まり必要のない成分は集まらない⇒表土が肥沃になる
⇒細菌・カビなどにキノコや動物も加わり土のシステムは多様化し今も進化している
⇒これが「土を人工的に作ることができない」土の研究者の言い訳・・・

・土と動物の歴史
⇒ミミズは植物の上陸から1億年後、ダンゴムシはさらに1億年後に登場している
⇒動物は植物・微生物の炭素・窒素・リンの循環に余剰が生まれるまで上陸できなかった
(植物・微生物のように陸地を風や水で移動できず糖分を植物の光合成に依存していたから)
⇒植物はカリウムを必要とするがナトリウムは必要としない(動物はどちらも必要)
(植物・微生物の上陸で岩石風化が活発化し、要らない(塩化)ナトリウムが海水に増えた?)
⇒捕食者(魚類)と塩分濃度の変化から自由になる方法の一つが「上陸」だった
⇒「土ができるのを1億年も待っていた」というのが遅刻したミミズの言い訳

⇒花の4億年組(脚が0~無数の土壌動物)と森の3億年組(脚が6本の昆虫と4本の両生類)略
・土壌動物は変動への柔軟性で数億年も生き続けている⇒そんな大型動物はいない
⇒恐竜はまだ息の長い方だがアルカロイド毒を持つ被子植物の登場で絶滅した説もある
⇒大型動物は植物の進化にすぐに適応できない
・大陸移動⇒地域固有の生物進化に
⇒ゴンドワナ大陸の分裂前に拡がった土壌動物
⇒大陸ごとに異なる土や植物に合わせた昆虫
・土と大気の変化に対応できなかった生物は衰退・絶滅した
⇒現在、人類も気候変動に直面している
・白亜紀に増加した被子植物とキノコ
⇒被子植物は光合成能力が高く根とキノコの働きで岩石風化も促進され土も深くなった
⇒岩石風化で土ができるプロセスで大気中の二酸化炭素が大量に消費された
⇒海でも酸欠により植物プランクトンが大量死、海底に二酸化炭素が固定された(中東の石油)
⇒これで地球が寒冷化し巨大隕石もあって恐竜が絶滅、小型の鳥類と哺乳類が増加した説
・鳥類と哺乳類は脳が大きく、さらに「自分の殻に閉じこもらない」(アルマジロは例外)

⇒哺乳類の体温は37度(アルマジロは例外34度

⇒土の温度はふつう25度以下、土壌微生物は25度で活発に増殖する
⇒37度では8割が増殖できない⇒母から継承された腸内細菌だけが37度で活発化する
・6600万年前の隕石衝突で森林が壊滅、その分解者であるカビ・キノコが大増殖した
⇒変温性の恐竜はカビ由来の病気で淘汰され恒温性の哺乳類・鳥類が選抜された説も
⇒隕石衝突時の硫酸雨で土壌が酸化し森林が破壊されたので大型恐竜が一掃された説も
・岩石⇒(生命誕生に関わる)粘土⇒植物と微生物が岩石砂漠を土に変化させた
⇒土と大気が動物の栄枯盛衰に関わり変動に対応できなかった生物は衰退・絶滅した
・岩石のサイクル
⇒岩石(玄武岩や花崗岩⇒土の成分)⇒風化・浸食⇒一部が海底に沈み堆積岩に
⇒さらにその一部がマグマになって隆起や噴火で岩石に戻る(一周するのに数千年~数億年)
・土の新陳代謝
⇒日本は地形が急峻で隆起も噴火も活発、火山灰も黄砂も降り積もるので土は若い
⇒地質年代が古くなだらかな大陸では土の新陳代謝が起きにくく土が古い
⇒古い土は栄養分が失われる⇒風化しにくい鉄と砂だけ残されたのがラテライト「土の墓標」
⇒オーストラリア大陸、アフリカ大陸の中央部、南米大陸の赤土など⇒リン不足
・脳が大きくエネルギー消費も大きい哺乳類と鳥類は多くのリンを必要とする
⇒フクロミツスイとバンクシアの例(略)
⇒気候変動による火災頻発で絶滅の危機に⇒人類も同じ
・哺乳類⇒霊長類⇒大型類人猿⇒ヒト
⇒高カロリーでリンの豊富な食料が熱帯雨林のトロピカルフルーツ

⇒実際にサルの分布は熱帯雨林に集中している(ニホンザルとヒトは例外)
・現在の熱帯雨林は南米アマゾン・アフリカ中央部・東南アジアが三大地域
⇒南米やアフリカの樹高は40mぐらいだが東南アジアのフタバガキ科は60m以上
⇒樹間をつなぐツル植物も少なく滑空生物が有利となる(サル・トカゲ・カエルなど)
⇒フタバガキ科が増加した時期に滑空を選ばなかったサルが霊長類の祖先説
・東南アジアの赤黄色土はアフリカの赤土より若く酸性土壌でリンが溶けにくいが、
⇒キノコ(外生菌根菌)との共生でフタバガキ科の巨大化を可能にした
⇒多様なドリアンも育ち多くのリンを求める霊長類の胃袋を満たした
・ヒマラヤの標高とサルの脳の巨大化の関係
⇒ヒマラヤ山脈の発達⇒モンスーン気候を強化⇒雨は山を削り土砂は熱帯アジアに流れ込む
⇒広大な半島スンダランドを形成⇒風化に多くの二酸化炭素が使われた⇒地球寒冷化
⇒同時期にアンデス山脈も隆起し同様の風化で熱帯アマゾンを形成⇒地球寒冷化
⇒氷河・永久凍土が発達⇒地球全体が乾燥化して森林は草原に
⇒アフリカでは熱帯雨林が分断された⇒サルは森から森へ草原を歩くようになった
⇒草食動物を狩るために社会性を身につけたサル(ヒト)の脳は巨大化した
⇒これが人類進化についての一つの仮説だが、話はここまで単純ではない・・・
・陸地で風化が進めば海では逆の現象が起きる(逆風化)
⇒陸で溶けた鉄などが海で鉱物に戻る際に二酸化炭素が大気に返却される
⇒この逆風化が地球の極端な寒冷化を食い止めてきた
⇒この動きを止めたのが生物進化
・乾燥化により陸ではイネ科、海では珪藻(植物プランクトン)が増加した
⇒海中のケイ素が減少し海底の粘土鉱物も生成されにくくなる
⇒二酸化炭素のリサイクル、温度調節が低調になり寒冷化・乾燥化を止められなくなった
・これらの生物進化と土壌侵食・岩石風化が組み合わさった気候変動が脳の巨大化に・・・
・サハラ砂漠の誕生は300万年前で人類最古の二足歩行の足跡と同じ年代
⇒砂漠のない東南アジアとは異なりアフリカでは乾燥化で熱帯雨林が減少した
⇒分断された森から森へ草原を二足歩行するようになったのがヒト
⇒実際に化石人骨は東アフリカに集中していた⇒イーストサイドストーリー仮説
⇒ところがアフリカ中央部や西アフリカでも発見され、この仮説は否定された
⇒アフリカ中央部は化石が示す700万年前は熱帯雨林だった(現在はサハラ砂漠)
⇒ヒトが二足歩行するようになったのは草原ではなく熱帯雨林だった
・なぜアフリカの熱帯雨林では「サルも木から降りた」のか
⇒上陸後の両生類や哺乳類は紫外線で発生する活性酸素への抗酸化物質としてビタミンCを
合成する酵素遺伝子を持っていたが霊長類は失った
⇒熱帯雨林のフルーツでビタミンCを摂取できてたから
⇒東南アジアのフタバガキ科の熱帯雨林では外生菌根菌との共生で栄養を貯めてもらい、
エルニーニョの低温や乾燥で細菌や菌類が死んだり眠った隙に放出された栄養分を集める
⇒充分な栄養が貯まると大量のフルーツを生産する(およそ4年に1度で気まぐれ)
⇒フルーツを主食にするオランウータンは我慢することを選んだ
⇒繁殖・子育てしやすい「気まぐれな豊作年」を待つため繁殖能力は極めて低い
(これが熱帯雨林の減少とあいまってオランウータン絶滅の危機に)
⇒いっぽうアフリカの熱帯雨林にフタバガキ科はなくマメ科が多い
⇒マメ科は根粒菌と共生しアンモニアを補給してもらうので赤土でも育つ
⇒しかし東南アジアの土より100倍も古い赤土にフルーツを作るのに必要なリンは少ない
⇒結果としてフルーツ生産量も少なく、ゴリラ・チンパンジーは明確な発情期を持って、
フルーツの多い季節にだけ子育てをするようになった
⇒乾燥化による森林減少に加え生産力が少ないことは食料争奪戦を激化させたはず
⇒弱かったヒトの祖先は落ちたフルーツを拾うことから始めた(腐る直前が一番美味しい)
⇒地面に落ちたフルーツは微生物によりアルコール発酵していた⇒酒の味を覚えた
⇒これがヒトの二足歩行の動機がフルーツ酒という「のんべえ仮説」
⇒地面のフルーツを両手に抱え妻子に運ぶため二足歩行を始めたという「イクメン仮説」もある
⇒いずれにせよ赤土の栄養不足で樹上のフルーツを食べられなくなったサルが私たちの祖先
・フルーツ争奪戦に負け木を降りたサルは西アフリカの熱帯雨林から東アフリカの草原へ
⇒東アフリカの草原は半乾燥地だったので土は肥沃だった
⇒化石人骨の多くはこの肥沃な土の分布域から見つかっている
⇒肥沃な土で季節を問わず食料入手できるようになり発情期がなくなった⇒人口爆発へ
⇒アウストラロピテクス属は植物食、ホモ属は肉食を含む雑食だった
⇒肉食のホモ・ネアンデルタールはヨーロッパの寒冷化で絶滅、雑食のホモ・サピエンスは
ネアンデルタールと交雑しつつ生き延び世界に分布した
⇒なので「好き嫌いせず食べなさい」は人類史に基づく教訓なのである

・農業は3000万~5000万年前に昆虫が始めたが人類農業の特異点は「土を変える」こと
⇒土には人類が文明を興せた理由、危機に瀕している理由が隠されている
・地球の方程式⇒岩石+大気⇒(風化作用)⇒土+海
⇒この方程式には生命という項がない
⇒つまり生命が利用しているのは土の主成分ではなく周りの栄養分
・花崗岩の風化の例
花崗岩+炭酸水=砂+粘土+ケイ素+塩(ナトリウム)
⇒濃尾平野の山の花崗岩が風化すると微粒子に分解して木曽川に運ばれ砂は扇状地に堆積
⇒これが砂質土壌になり守口大根を生む
⇒粘土は名古屋を含む下流域に堆積して瀬戸焼に使われる粘土層となる
⇒岩石のカリウムやケイ素は田んぼのイネに吸収され米を生む
⇒海に流れ込んだナトリウムは食塩になる
⇒海に流れ込んだケイ素は珪藻(植物プランクトン)の材料になりウナギを育む
⇒これらを合わせると名古屋名物のうな丼になる

・つまり生命は土や海の栄養分の存在量より循環量に支えられているのだ
⇒循環量を超えて資源を利用すればやがて枯渇する
⇒この原則に抗う唯一の地球生物が人類・・・(略)
・(肉食から竹食へ変化したパンダのように)安定して確保できる安全な食料が欲しい
⇒草原でヒトと共存した草食動物の食料はイネ科植物の葉や茎で硬い殻の種子は好まない
⇒これに目をつけたヒトと作物の共進化が始まった
⇒集落の周りは糞尿や廃棄物で栄養分の多い土が多く実りがいい
⇒そこに実りのいい作物を選別してまた植える⇒小規模な家庭菜園から焼畑へ⇒農業
⇒狩猟採集では10㎢あたり1~7人しか生きられないが焼畑だと300人分の食料ができる
・農業は物質循環の法則を利用し土から効率よく食料を得る大発明
⇒狩猟採集より忙しくなり社会構造も変わるがヒトの繁殖能力の高さが農業を求めた
⇒人口増加による環境問題や土壌劣化もなく世界から飢餓、貧困、戦争がなくなっていれば
農業にケチをつける人はいなかっただろうが・・・
・焼畑農業でも人口が増加すれば土を回復させる余裕がなくなり酷使して放棄される
⇒人類は土によって繁栄したが土が繁栄の代償となったともいえる⇒文明崩壊へ
⇒それでも人類が発展を続けられたのは土の栄養分に貯蓄があって技術革新があったから
⇒不足分は日本では人糞尿や草木堆肥、ヨーロッパでは家畜糞尿堆肥で
⇒家畜の骨や硝石は有機物ではなく化学肥料だが生態系の物質循環を利用したものだった
・人新世の地層としての土とは?
⇒火の使用からか農業からか鉄器からか化学肥料の発明からか・・・
⇒古生代初期なら三葉虫、白亜紀ならアンモナイトが示準化石とされる
⇒人新世の地層はプラスチックや核実験由来の放射性物質が識別特徴とされる
・食料増産の手段は耕地の拡大か面積当たり収穫量を高めるかのいずれか
⇒自然の窒素循環速度が世界人口を16億人に制限していた(20世紀初頭)
⇒チリ硝石も枯渇し第一次世界大戦の前夜に発明されたのが火薬にもなるハーバー・ボッシュ法
・化石燃料を使って窒素肥料を作ることにより人口が5倍に増加した
(人体中の窒素2㎏のうち半分は化学肥料由来になっている)
⇒根粒菌の窒素固定と異なるのは重化学工業の発展が前提となること
(途上国では製造できず先進国では栄養過剰で汚染や富栄養化に)
⇒物質循環ではなく過去の生物の化石(石油や石炭)に一方的に協力させる仕組み
⇒一方的で経済的だが大気中の二酸化炭素を増やし化石燃料への依存体質になった
・品種改良された作物は野生を忘れ化学肥料と灌漑水の土が選択される
⇒機械化・大規模化
⇒肥沃な農地の分布する11%で世界人口の80%60億人分の食料を生むいびつな構造に
⇒ウクライナなど東欧、北米プレーリー、南米パンパ、インド玄武岩地帯、中国黄土高原に局在
⇒グローバル化すると生産地リサイクルできず北米プレーリーでは100年で腐植の半分を失った
・農耕開始から1万年、人類は技術革新を続けてきた(他生物の農業に似る⇒収斂進化)
⇒キノコや土壌動物のような土を作る生物の模倣はまだできていない
⇒環境汚染の低減・肥沃な土の維持・劣化した土の再生・・・
⇒人新世にはさらなる技術や知恵が必要
・化学肥料、植物工場、人工土壌、土壌改良、土壌生成(腐植の蓄積)・・・
・熱帯雨林の伐採・耕地化後、土壌有機物量は数年で急速に失われる
⇒土の復元には重粘土質、強酸性に併せて多様な微生物の喪失が問題になる
⇒私が20年間調査を継続しているインドネシア東カリマンタン州(ボルネオ島)では、
二次林において30年間で土壌有機物量が回復した
⇒荒れ地を森林に回復させた場所では10年で深さ30cmまでの腐植が1.5~2倍になった
⇒これは世界平均より早く、土の研究者の話よりも早い

⇒粘土が多い分は下駄を履いてるが条件次第で早く土ができる事実は現地には希望
・もっと条件の悪い石炭採掘跡地
⇒チェコでは私の共同研究者がミミズで森林土壌の再生に成功した
⇒ミミズの多様性はヨーロッパで高く小笠原ではカタツムリ、アフリカ・インドネシアでは
シロアリ、南米ではアリ
・植物・微生物・ミミズ・昆虫と、その生存環境をそろえることが土壌生成加速のカギ
⇒5億年前とは異なり進化を待つ必要はない⇒すでにフルメンバーは揃っている
⇒最後は人間の出番だ!!!
・栄養不足のアフリカの赤土も強酸性のインドネシアの赤黄色土も石灰・化学肥料・堆肥で
土壌改良はできるが、現地には資材も資金も充分ではないし数年で消失・流失する
⇒現地の物質循環で土を再生する仕組み⇒これが人工土壌に求める個人的なこだわり
・土壌再生には隣の天然林の土を借りて荒れ地にまくのが一番
⇒荒れ地への植林用の苗木ポッドに天然林の土を少し加える技術もある
⇒しかし熱帯雨林は風前の灯なので、このアイデアも広まると負の連鎖を招く
⇒持続可能な資材で土壌生成を加速する技術が必要
・ストッキングに詰め天然林に埋設した岩石粉末や火山灰を荒れ地に接種するアイデア
⇒微生物の多様性は低くても最小限のセットで定着できればいい
⇒スピードアップ(私は40年で満足したけど

・現状でもっとも成功している人工土壌は田んぼ
⇒福島の原発事故後の土壌調査で気付かされた
⇒除染後の腐植は減少しており不作は確実と思われたのに大豊作だった
⇒急激な変化(略)で放出された栄養分と考えられ翌年からの収穫は入れ替えた土壌の質による
⇒40億年前の粘土、35億年前の古細菌とビビアナイト、20億年分の細菌進化の歩み
⇒これらを人工的に濃縮したものが水田土壌だった
・土壌生物は土は作ってもゴミは出さない超循環型社会を築き上げた
⇒化石燃料などの資源利用でゴミを出し土壌を消耗し続ける人類との決定的な違い
⇒静脈物流・循環型経済・消費地から生産現場への資源循環による再炭素化へ
(アマゾン先住民は数千年前から廃棄物での土作りと人工土壌のハイブリッドをやっている)
⇒腐植の維持増加には社会全体で土と断絶しないライフスタイルを構築する必要がある
・「土はかけがえのないもの」と伝えるなら宮崎アニメのヒロインのほうが上手
・「家庭菜園で役立つ土作りの指南」なら近所のプロ農家のほうが詳しい
・この本で伝えたいのは土作りは難しいという実感と不可能ではなさそうという希望
・40年前の岩石粉末サンプルを探して山中をさまよい気付いたこと
⇒自分の代では収穫できない森の再生と子孫の繁栄を信じて木を植えた人々が確かにいた
⇒それが今では伐採適期60年を過ぎて花粉症を招く厄介者になっていた
⇒一人一人の仕事や暮らしもちっぽけさでは似たようなもの
⇒それでも足元には土がある
⇒40年前の先人が岩石粉末サンプルを埋めていなければ人工土壌の希望はなかった
・科学技術に依存した現代社会には、科学離れした人々が暮らしている
⇒食料生産で土への依存や負荷を高めて、逆にどんどん土から遠ざかりつつある
⇒現代科学でも再現できない高度な物質を見下すことはできないはず
・土とは何なのか(定義)
⇒土粒子に着目した定義「砂+粘土+腐植の混合物」
⇒団粒構造に代表される定義「砂+粘土+腐植+空気+水の空間」
⇒人工土壌にも適用できる定義「鉱物+生物=自律的な知的システム」
・・・と拡張してきたが、これもゴールではない・・・
・本書では土と生命の歩みを身近な事例で説明することに挑戦した
・四十を超えても泥団子作りに勤しんでると、研究というより子供の遊びだと思われることも
少なくない

で、その対策として巻末に化学式をつけたそうで

(著作物なので公開に問題があれば非公開設定にします)

ええ、わたくし注意書きどおりスルーしましたが・・・

(すっかり忘れてた基本の化学式のみ追記メモしました)
4)有機物の分解(逆に進めば植物の光合成)
C6H12O6(糖)+6O2➝6CO2+6H2O
(糖は1モルあたり2870ギガジュールのエネルギーを生む)