うつけ者・・・技術革新と不平等の1000年史(上巻第1章まで)

2025年07月16日

塞王の楯

前回記事の続き、つーか引き続き時代小説のご紹介・・・


P7119057

知人がわたくし向きでは?と薦めてくれた「塞王の楯」
であります



奥付

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著者紹介

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この後、
本作品で2022年に第166回の直木賞を受賞されたんですね・・・・



で、お話は・・・

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この登場人物表にあるとおり・・・
信長⇒秀吉⇒家康と天下統一に動く戦乱時代を生きた、石積み穴太衆のトップとなる
主人公と、
鉄砲の国友衆のトップとなるライバルとの攻城戦・籠城戦を軸に描かれています

日本中の城が絶対に破れない城になれば、誰も攻めなくなり天下泰平の世になるはず、
と信じて活躍する
穴太衆の主人公・・・

逆に日本中に誰もが扱える安価で高性能な鉄砲が普及すれば、反撃を恐れ戦わなくなるので
(あるいは特定の大名がこれを独占すれば誰も抵抗できなくなるので)天下泰平の世になる、
と信じて活躍する
国友衆のライバル・・・

そう、この「矛盾」の盾側の主人公がタイトルになってて、二人の心の葛藤も描かれますが、
当時の石積み職人集団の暮らしなどがじつに活き活きと描かれてました

以下、思いつくままの読後メモです
・全ての大名が絶対に破れない城を持てば戦はなくなる、でもそれは可能なのか・・・
⇒これは主人公の自問自答ですが、レーガンのスターウォーズ計画を完璧にして各国が同時に
実現するようなもので、いまだに不可能なままですね

・誰もが使える鉄砲を誰もが持てば誰もが使えなくなる・・・
⇒こちらはライバルの思いですが、銃で反撃されるから銃を使わないとの論理は戦国時代や
西部開拓時代にはありかもですが、国家が暴力を権力で支配できる社会で
誰もが銃を持てば、
現代のアメリカ銃社会になりますね
護身銃の効用も少しはあるのでしょうが、国家権力が所持を厳しく規制している国に較べて、
犯罪に銃が使われる件数がはるかに多く銃による自殺や事故の件数も多いですね

・特定の大名だけが高性能な鉄砲を独占すれば天下泰平に・・・
⇒これも
ライバルの思いですが冷戦時代の核兵器と同じ、核を持つ国が大国だけであれば
他国は従うしかない、嫌なら何とか自国で核開発するか持っている大国の傘下に入るしかない、
というものですが、徳川幕府も各藩の武力を削ぐ努力はしたけど最期まで実現しませんでしたね

さらに、わたくしが知らなかった当時の石積み技法や鉄砲の工夫についてもメモ

・これまで
穴太衆などの石積みといえば①野面積み⇒②打ち込み接⇒③切り込み接と進化した、
と思ってたのですが、用途や必要強度などに応じて昔から使い分けてたみたいですね

穴太衆の中にも〇〇屋といわれる複数の集団があり、さらに石を積む積方、石を運ぶ荷方、
石を切り出す山方に分かれた分業制で、トップ集団のトップの積方が「塞王」・・・

・城の縄張りも含む請負制なので秘密を守ることが最重要になるため、一切を書類には残さず、
使う技法なども全て口伝のみだった

・戦のない期間が続くと城の仕事は減り、極秘だった縄張りもやがて世間に広まるとか、
さらに領地替えにより以前の大名や家来などは城の縄張りを知っているとか・・・
(徳川幕府は全ての大名に城の縄張り図を提出させ建て替えや改修を禁止してますね)

・飛び道具は礫(つぶて)⇒弓(弩)⇒銃と進化したが、違いは威力や飛距離だけではない
⇒礫(つぶて)は個人の力と技により段違いの差が出るが、特に力による個人差が大きい
⇒弓は子供用でも殺傷能力があるぐらい力の差は縮まったが、技による個人差が大きくなった
⇒銃は個人の力と技にほぼ関係なく初心者でも扱え、
威力や飛距離に個人差はない・・・

・主人公のライバル国友衆の頭が密かに開発したホイールロック銃や3mの大筒
(実際にはこの時代の国産品は存在しないとされてますが、当時の鉄砲鍛冶の技術で苦労して
西洋銃の模倣や模倣できない部分を発明する様子がじつにリアルでした)


ストーリー展開や登場人物が史実とリンクしていてわかりやすく、活躍舞台となる琵琶湖周辺は
どこも馴染みがあって身近、わたくしの好きな気持ちのいいエンディングだったし・・・
ともかく戦国時代の矛と楯の戦いが興味津々でした

(本書にも解説がありましたが鉄砲の生産地についての追記メモです)
鉄砲伝来以降、日本では近江国坂田郡の国友と蒲生郡の日野、紀伊国那賀郡の根来、
摂津国住吉郡の堺などが鉄砲の主要生産地として栄え、多くの鉄砲鍛冶が軒を連ねた。
根来のみ織田信長・豊臣秀吉による紀州攻めの影響で桃山期以降衰退したが、国友・日野・堺は
その後も鉄砲の生産地として栄え、高い技術力を誇った。
また城下町において、鉄砲足軽や鉄砲鍛冶が集中して居住した場所は「鉄砲町」と呼ばれ、
現代でも地名に残っている。(以上ウィキペディアより部分抜粋)

NHK英雄たちの選択・シリーズ島の歴史旅「種子島~戦国を変えたイノベーション~」でも
鉄砲の国産化や改良、主要生産地などについて紹介されてましたね・・・






m98k at 14:46│Comments(0) このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック 書斎 | ミリタリーグッズ

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