2025年07月22日
技術革新と不平等の1000年史(上巻第1章まで)
とーとつですが・・・

技術革新と不平等の1000年史であります
今回の参議院選挙でもSNSには様々な情報が溢れたようでマスメディアはフェイク情報への
注意喚起やファクトチェックの重要性を何度も呼びかけていましたね
最近ではSNSでしか情報の受信をせず、本を読む習慣がないので各党の綱領や歴史書はもちろん、
高校の教科書でさえ文脈を理解できない人たちが増えているとも聞きました
そんな人たちをターゲットにSNSなどで刺激的な誤情報を拡散して過激思想を増幅するような
身勝手な発信がますます溢れているのではないかと不安になっています
本書はデジタル・テクノロジー特にAIの今の方向性を変えないと民主主義が崩壊することを、
過去の歴史における技術革新と不平等の関係から解き明かそうとする本であります
表紙カバー裏にあった惹句

裏表紙カバー裏にあった著者・訳者紹介

(追記です)
著者のダロン・アセモグルとサイモン・ジョンソンは2024年にノーベル経済学賞を受賞されてます
奥付

目次


とりあえず上巻のプロローグから第1章まで、しかもその一部だけのメモです
(暑さと飲酒で遅読になり図書館への返却期限が迫っているため
)
ただしメモの後半ぐらい「次章以降の予定」を読めば第2章以降の概要が推測できますので、
以下のメモで興味を持たれた方は本書をご熟読下さいね
(著作物の個人メモなので公開に問題があれば非公開設定にします)
プロローグ~進歩とは何か~よりメモ
・ジェレミー・ベンサムの監視できる監獄⇒ミシェル・フーコーの産業社会の監視⇒ジョージ・
オーウェルの1984年⇒マーベル映画ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーへ・・・
・18世紀後半にイギリス全土に広まった工場というシステム
⇒多くの雇用主がベンサムの考えに従い労働を組織化し厳しく監視監督した
⇒新設の機械は労働者を単なる歯車に変え安い賃金と過酷な労働に
・アダム・スミス
「機械が進歩すれば労働量は大きく減少するが社会が繁栄するので賃金は大幅に上昇する」
⇒こうしたテクノロジーの進歩に抵抗するには?そもそも抵抗する必要があるのか?
・楽観論とは裏腹の過去1000年間の事例
①中世から近代の農業におけるテクノロジー発展の恩恵は人口の90%を占める農民にはなかった
②中世後期からのヨーロッパ船舶設計の進歩では、貿易で富を手にした一部ヨーロッパ人もいたが、
この進歩により数百万人の奴隷がアフリカから新大陸へ運ばれた
③イギリス産業革命初期から労働者の収入はほぼ100年間上がらず、工場でも都会でも
労働時間は延び、労働条件は劣悪なままだった
④綿繰り機は革命的でアメリカを世界最大の綿花輸出国に変えたが、この発明が南部では
奴隷制の残虐性を激化させることになった
⑤19世紀末のフリッツ・ハーバーによる人工肥料の開発は農業生産力を向上させたが、
その後に同じアイデアで化学兵器を設計し数十万人を殺傷した
⑥コンピューターの発達で起業家や大物はこの数十年で大金を手にしたが大学教育を受けていない
ほとんどのアメリカ人は取り残され、多くは実質所得が減少している・・・
・テクノロジーの進歩で繁栄の共有が実現したのは、その方向性と社会による利益分配の方法が
一部エリートに有利な仕組みから脱した場合に限られる
・地球上の大半の人々が先祖より豊かに暮らしているのは、初期の産業社会で組織化された
市民と労働者が、テクノロジーや労働条件についてエリートの支配する選択に異を唱え、
技術の進歩がもたらす利益をより公平に分けるよう強制したから
・現在の我々は同じことを再び行う必要がある
⇒MRI、mRNAワクチン、産業用ロボット、インターネット・・・
⇒これらが現実の問題を解決するのは人々を助ける方向性になった場合で今の方向ではない
⇒重大な決定を下す人々はテクノロジーに楽観的でエリート主義的
⇒現代の進歩は少数の起業家や投資家を裕福にしているが大半の人々は恩恵を受けていない
・テクノロジーの方向性を一部エリートから奪い取ることは19世紀のイギリスやアメリカより
難しくなっているが、それがきわめて重要になっている
第1章「テクノロジーを支配する」よりメモ
・技術的失業(ケインズ1930年)
⇒労働の新たな用途が見つかるより速いペースで労働の使用を節約する手段が発見されるために
生じる失業
・機械が労働需要を減少させることはない(リカード1819年)⇒1821年に見解が変わった
⇒「仕事を機械がこなせるなら労働需要はなくなる」
・これらの懸念はあったが戦後の工業国(アメリカ・ドイツ・日本)では生産性の急上昇により
賃金も上昇、消費財の価格低下、抗生物質による病気の克服などで労働者も豊かになった
⇒その半面で公害・環境破壊・核戦争の脅威もあったが、いずれテクノロジーが解決すると・・・
⇒これが1960年代の楽観論(タイム誌やケネディ)で、その後のテクノ・オプティミズムへ
・ところがアメリカ男性の長期失業率(25歳~54歳)は1960年代の6%が現在(2023年)は12%
⇒主な理由は非大卒男性が「いい仕事」に就くことが、ますます困難になっているから
⇒かつては大卒・非大卒を問わず適正賃金・雇用保障・キャリアが構築できる機会のある
「いい仕事」があったが、学位を持たない労働者の「いい仕事」は、ほとんどなくなった
・デジタル技術は起業家・経営者・一部投資家に富を与えたが大半の労働者の実質賃金は
増えておらず、非大卒者は減少、大卒者でも院卒以外は微増にとどまっている
⇒大半の労働者が就ける「いい仕事」が減り、コンピュータ科学・エンジニア・金融関係など
教育された一握りの労働者の収入が急速に増えて二層構造の格差社会へ
・これは新しいテクノロジーがもたらす不平等な帰結だった
⇒まさにH.G.ウェルズが「タイムマシン」で予見したディストピア
(政府の手厚い保護・団体交渉・適正な最低賃金などにより北欧・フランス・カナダでは
アメリカより賃金下落は少ないが格差は拡大しており非大卒者の仕事は足りていない)
・1000年にわたる証拠から新たなテクノロジーが広範な繁栄をもたらすか否かは自動的ではなく、
経済的・社会的・政治的な選択にかかっていることが明白になった
⇒本書では、
①この選択の本質
②テクノロジー・賃金・不平等の関係をめぐる歴史的・現代的証拠、
③繁栄の共有に資するイノベーションを機能させるためにできること
の3点を追求する
・第1章ではその下準備として次の基本的な三つの問いに取り組む
①新たな機械や生産技術が賃金を上昇させる時期は何によって決まるか?
②テクノロジーの方向性を変えるには何が必要か?
③現在とりわけ人工知能に関して気がかりな別方向に向かっているのはなぜか?
・生産性バンドワゴン(生産性の向上による増産で雇用は拡大して賃金も増加する)
⇒新型機械・効率的工場で20世紀前半のアメリカ自動車製造業は生産性が急上昇した
⇒雇用も増え正規教育のない労働者も含め経済界全体で賃金が上昇した
⇒アメリカでは戦後1970年代まで賃金上昇率は大卒も高卒も同じだった
⇒その後の出来事にバンドワゴンが合致しないのはなぜか?
⇒限界生産性(労働者一人あたり生産量ではなく需要増大や生産増大への寄与)の違い
・フォードやGMが優れたモデルを出せば需要は増え、労働者一人あたり収益と労働者の
限界生産性はともに上昇する
⇒会社は追加需要を満たすため労働者を増員し必要ならさらに賃金を払う
⇒ところが産業用ロボットを導入すれば平均生産性は向上するが労働者の必要性は低くなる
⇒労働者の限界生産性が向上することはなく低下の可能性さえある
・オートメーション、グローバリゼーションはコストを削減し利益を増やしたが、
先進国の国内では労働者は職を奪われて繁栄の共有をもたらさなかった
⇒これが経済効率を向上させる唯一の方法ではなく労働者一人あたりの生産量を増やす方法は
いくつもあり、これは歴史を通じていえることである(第5章から第9章で説明)
⇒イノベーションには自動化やオフショアリング以外に生産性への個人貢献度を高めるものもある
⇒例えば自動車整備士の作業を支援し、より精密な作業を可能にする新アプリの導入
⇒これは労働者の限界生産性を高めるイノベーションであり、
⇒労働者と置き換える産業用ロボットの導入とは全く異なるもの
・1910年代のフォード工場の自動化では設計・技術・機械操作・事務など新しい仕事が生まれた
⇒新しい機械で新たな労働用途が生まれると労働者の生産貢献が拡大し限界生産性が増す
⇒リカードやケインズの最悪の懸念が実現しなかったのは新たな仕事を伴っていたため
⇒自動車製造の急増で新たな雇用は関連業界だけでなく沿道サービス業の台頭まで可能にした
・ただし自動化による生産性の向上が小さい場合は新たな雇用を生まない
⇒食料品店のセルフレジ化は作業を従業員から顧客に移すだけで生産性への寄与は限られ、
新たな仕事は生まれず、大して安くもならず、生産も拡大せず、顧客の生活も変わらない
⇒テクノロジーを何のために使うかという「選択」が最重要
⇒テクノロジー開発によって労働者の限界生産性を高めるという選択
・労働者の限界生産性が向上しても労働者への需要が増加しなければ賃金は上昇しない
それが起こらないかもしれない三つの理由
①奴隷制のような強制的な関係
⇒アメリカ南部の綿繰り機の導入は強制力を高め奴隷も農民もさらに貧困になった(第4章)
②生産性が向上してもライバルとの競争がなければ賃金を上げないかもしれない
⇒他の仕事に就けない初期の農業社会や別の仕事探しを禁じていた18世紀のイギリス
⇒中世ヨーロッパでは風車・輪作の効率化・馬利用拡大で生産性が向上したが、その恩恵は
少数のエリートだけが享受し大規模建築へ、人口の90%を占めていた農民にはなかった
⇒1700年代のイギリスでは産業機械で労働者の生活水準は悪化し工場主だけが裕福に
③労働者の利益についての交渉能力
⇒1950年代から60年代のアメリカ野球ビジネスの例
(テレビ放送の巨額収益は全て球団オーナーへ⇒60年代後半から交渉により選手にも)
・科学的発見は光速で伝わるようになったが世界の生活改善にはテクノロジーの方向転換が
必要で、科学とイノベーションの新たな活用法を構築しなければならない
⇒ビジョンの選択⇒高圧が標準となった蒸気機関の例⇒炭鉱の過酷な労働条件になった
⇒選択が異なれば利益を享受する人も異なる
・共有されるビジョンが特定方向の例
⇒中国の社会信用システム(2009年から運用)
⇒決定したのは少数の党幹部でブラックリストの作成に
⇒フェイスブック(2018年にユーザー投稿優先にアルゴリズムを変更)
⇒決定したのは数名の幹部で、広告サービスとユーザーのエンゲージメントを高めることが
目的だったが、帰結は誤報や政治的分断の拡大に
⇒いずれもシステムの影響を受ける14億の国民や25億のユーザーの選択ではなかった
⇒個人のデータや社会的活動を支配するための利己的で偏狭なビジョンの選択になった
・南アフリカのスワートクランス洞窟
⇒100万年前の木炭層(火の使用痕跡)から以降は捕食関係が逆転している
⇒グーグルCEOサンダー・ビチャイ「AIは火や電気よりも深遠な何か」
⇒グーグル・チャイナ前社長カイフー・リー「AIは最も変革的なテクノロジー」
⇒今のAIは世界中で不平等を拡大させ企業や独裁政府のデータ収集を強化している
⇒ところが企業リーダーの大半はAIによる良い未来や問題解決を主張し続けている
⇒我々は火によって獲物から最強の捕食者になり、車輪によって距離を、電気によって暗闇を、
薬によって病気を征服してきたのだと・・・
・デジタル・テクノロジーというツールを人々のために活用するにはテクノロジー企業の
支配者にはびこる世界観を覆す必要がある
⇒こうした世界観を支えているのは特定の不正確な歴史解釈
⇒イノベーションによる人類への影響について示唆するもの⇒この歴史の見直しから
・次章以降の予定
⇒重大なテクノロジーの変化が生じた地域を中心に、まずは西欧と中国の農業、次にイギリスと
アメリカの産業革命、さらにアメリカと中国のデジタル・テクノロジーを取り上げる
⇒様々な国の様々な選択、テクノロジーが他の地域に自発的・強制的に広がった際の影響
・第2章「運河のビジョン」
⇒フランスのエンジニア、レセップスがスエズで成功した海面式運河建設と同じアイデアで
パナマで失敗して2万人が死んだ話
⇒大きな災害は過去の成功に基づく強力なビジョンに根差しており、あらゆるテクノロジーの
歴史にとって教訓となる話
・第3章「説得する力」
⇒テクノロジーや社会の重要な決定をなす際に説得が中心的役割を果たす
⇒説得する力は政治制度やアジェンダ設定能力に根差し、対抗勢力や幅広い意見で自信過剰や
利己的なビジョンが抑制される
・第4章「不幸の種を育てる」
⇒本書の構想の主要な考え方を農業テクノロジーの進歩に応用する
⇒新石器時代における定住農業の始まり、中世から近世初期にかけての土地と生産技術の
組織化をめぐる大変化
⇒いずれも生産性バンドワゴンが自動的に走り出した証拠は見つからない
⇒少数エリートの富と権力を増大させたが殆どの農業労働者に恩恵はもたらさなかった
⇒小作農は政治的・社会的権力を持たずテクノロジーの進路は一握りのエリートのビジョンに従う
・第5章「中流層の革命」
⇒産業革命の再解釈
⇒これまであまり強調されていなかった、新たに自信をつけた中産階級、起業家、実業家の
あいだに現れたビジョン
⇒彼らの考え方や願望は16世紀から17世紀以降にイングランド中流層に力を与えるようになった
制度的変化に根差し、彼らのビジョンは包括的ではなかった
⇒政治経済の仕組みの変化はどのように起きたのか、またそれが「自然は誰がどうコントロール
するのか」という新たな概念を生み出すうえで、なぜ重要だったのか
(蒸気機関車・鉄道のスチーブンソンなど技術を持った「成り上がり」を認める社会に)
第6章「進歩の犠牲者」
前章の新たなビジョンの帰結
⇒産業革命の第一段階で多くの人々がいかに貧しくなり無力化したか
⇒それがオートメーションへの強い偏向と、テクノロジーや賃金の決定に関し労働者の声が
欠如していたことの帰結だったのはなぜか
⇒工業化で経済生活、健康、自主性に悪影響が及んだが、状況が変わりはじめたのは19世紀後半、
普通の人々が団結し経済的・政治的改革を推進した社会的変化がテクノロジーの方向性を変え、
賃金を押し上げたが、これは繁栄の共有に向けた小さな勝利に過ぎなかった
⇒西欧諸国が繁栄の共有を達成するにはテクノロジーと制度をめぐる長く争いに満ちた道が・・・
・第7章「争い多き道」
⇒テクノロジーの方向性、賃金設定、より一般的には政治をめぐる闘争が経済成長期の土台を
いかにして築いたかの概観
⇒戦後の30年間、アメリカはじめ西側工業国は急速な経済成長を遂げ殆どの層に共有された
⇒教育や医療の普及、平均寿命の延伸など社会的改善は経済トレンドと軌を一にしていた
⇒テクノロジーの変化、仕事の自動化がなぜ、いかにして労働者に新たな機会を生み出したのか
⇒それが対抗勢力を勇気づける制度的環境にどう組み込まれていたのかについての説明
第8章「デジタル・ダメージ」
⇒現代に目を向け、われわれがいかにして繁栄の共有という戦後数十年間のモデルを手放して
しまったのかを振り返る
⇒この方向転換の中心にある変化は、テクノロジーの方向性が労働者に新たな仕事や機会を提供
することから、仕事の自動化や人件費削減を最優先することになったこと
⇒これは必然ではなく労働団体や政府規制の圧力が欠如した結果で繁栄の共有を損なう一因
第9章「人工闘争」
⇒1980年代以降のビジョンが規定するようになった次の2点についての説明
①デジタル・テクノロジーの次の段階、人工知能についてどう考えるかという問題
②AIが経済的不平等へのトレンドをいかに悪化させているかという問題
⇒多くのテック・リーダーの主張に反してAIテクノロジーは人間に限られた利益しかもたらして
おらず、職場監視に利用されて労働者の力を奪い、現在の方針ではオートメーションが世界中に
輸出されて、発展途上国における数十年分の経済的利益を台無しにしてしまう恐れがある
⇒AIはデジタル・テクノロジーの特殊な進路を反映しており深刻な分配効果を持つ
(少数に恩恵をもたらし残りを置き去りにする効果)
⇒機械的知能に注力するより機械の人間にとっての有用性を獲得する方が実りが多い
(かつて機械の有用性が求められた際には、それがデジタル・テクノロジーの生産的な応用に
つながったが、AIとオートメーションの追及につれ、顧みられなくなったことも説明する)
・第10章「民主主義の崩壊」
⇒AIを使った大量のデータ収集で政府や企業による監視が強化されている
⇒同時にAIを活用した広告ビジネスモデルは誤情報を拡散し過激思想を増幅している
⇒現在のAIが歩んでいる道は経済にも民主主義にも良いものではないし、残念ながら、
この二つの問題は相互に強化し合っている
・第11章「テクノロジーの方向転換」
⇒こうした有害なトレンドを反転させる方法の略述
⇒テクノロジーの変化の方向転換のテンプレート
⇒土台となるのはテクノロジーの社会的偏りに取り組むために、物語を変え、対抗勢力を築き、
技術、規制、政策に関する解決策を練り上げること
・・・つーことで、ここまでだけでも中世ヨーロッパの農業イノベーションや産業革命など
テクノロジーの進展(技術革新)と不平等の歴史から、AIなどデジタル・テクノロジーの現在の
方向性を変えないと民主主義が崩壊するつーのは、まさに目からウロコの本でしたが・・・
と、ここまでで図書館への返却期限まであと3日・・・はてさて・・・
(8月10日追記です)
下巻をようやく読破、現代については下巻がメインですね

技術革新と不平等の1000年史であります
今回の参議院選挙でもSNSには様々な情報が溢れたようでマスメディアはフェイク情報への
注意喚起やファクトチェックの重要性を何度も呼びかけていましたね
最近ではSNSでしか情報の受信をせず、本を読む習慣がないので各党の綱領や歴史書はもちろん、
高校の教科書でさえ文脈を理解できない人たちが増えているとも聞きました
そんな人たちをターゲットにSNSなどで刺激的な誤情報を拡散して過激思想を増幅するような
身勝手な発信がますます溢れているのではないかと不安になっています
本書はデジタル・テクノロジー特にAIの今の方向性を変えないと民主主義が崩壊することを、
過去の歴史における技術革新と不平等の関係から解き明かそうとする本であります
表紙カバー裏にあった惹句

裏表紙カバー裏にあった著者・訳者紹介

(追記です)
著者のダロン・アセモグルとサイモン・ジョンソンは2024年にノーベル経済学賞を受賞されてます
奥付

目次


とりあえず上巻のプロローグから第1章まで、しかもその一部だけのメモです
(暑さと飲酒で遅読になり図書館への返却期限が迫っているため
)ただしメモの後半ぐらい「次章以降の予定」を読めば第2章以降の概要が推測できますので、
以下のメモで興味を持たれた方は本書をご熟読下さいね
(著作物の個人メモなので公開に問題があれば非公開設定にします)
プロローグ~進歩とは何か~よりメモ
・ジェレミー・ベンサムの監視できる監獄⇒ミシェル・フーコーの産業社会の監視⇒ジョージ・
オーウェルの1984年⇒マーベル映画ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーへ・・・
・18世紀後半にイギリス全土に広まった工場というシステム
⇒多くの雇用主がベンサムの考えに従い労働を組織化し厳しく監視監督した
⇒新設の機械は労働者を単なる歯車に変え安い賃金と過酷な労働に
・アダム・スミス
「機械が進歩すれば労働量は大きく減少するが社会が繁栄するので賃金は大幅に上昇する」
⇒こうしたテクノロジーの進歩に抵抗するには?そもそも抵抗する必要があるのか?
・楽観論とは裏腹の過去1000年間の事例
①中世から近代の農業におけるテクノロジー発展の恩恵は人口の90%を占める農民にはなかった
②中世後期からのヨーロッパ船舶設計の進歩では、貿易で富を手にした一部ヨーロッパ人もいたが、
この進歩により数百万人の奴隷がアフリカから新大陸へ運ばれた
③イギリス産業革命初期から労働者の収入はほぼ100年間上がらず、工場でも都会でも
労働時間は延び、労働条件は劣悪なままだった
④綿繰り機は革命的でアメリカを世界最大の綿花輸出国に変えたが、この発明が南部では
奴隷制の残虐性を激化させることになった
⑤19世紀末のフリッツ・ハーバーによる人工肥料の開発は農業生産力を向上させたが、
その後に同じアイデアで化学兵器を設計し数十万人を殺傷した
⑥コンピューターの発達で起業家や大物はこの数十年で大金を手にしたが大学教育を受けていない
ほとんどのアメリカ人は取り残され、多くは実質所得が減少している・・・
・テクノロジーの進歩で繁栄の共有が実現したのは、その方向性と社会による利益分配の方法が
一部エリートに有利な仕組みから脱した場合に限られる
・地球上の大半の人々が先祖より豊かに暮らしているのは、初期の産業社会で組織化された
市民と労働者が、テクノロジーや労働条件についてエリートの支配する選択に異を唱え、
技術の進歩がもたらす利益をより公平に分けるよう強制したから
・現在の我々は同じことを再び行う必要がある
⇒MRI、mRNAワクチン、産業用ロボット、インターネット・・・
⇒これらが現実の問題を解決するのは人々を助ける方向性になった場合で今の方向ではない
⇒重大な決定を下す人々はテクノロジーに楽観的でエリート主義的
⇒現代の進歩は少数の起業家や投資家を裕福にしているが大半の人々は恩恵を受けていない
・テクノロジーの方向性を一部エリートから奪い取ることは19世紀のイギリスやアメリカより
難しくなっているが、それがきわめて重要になっている
第1章「テクノロジーを支配する」よりメモ
・技術的失業(ケインズ1930年)
⇒労働の新たな用途が見つかるより速いペースで労働の使用を節約する手段が発見されるために
生じる失業
・機械が労働需要を減少させることはない(リカード1819年)⇒1821年に見解が変わった
⇒「仕事を機械がこなせるなら労働需要はなくなる」
・これらの懸念はあったが戦後の工業国(アメリカ・ドイツ・日本)では生産性の急上昇により
賃金も上昇、消費財の価格低下、抗生物質による病気の克服などで労働者も豊かになった
⇒その半面で公害・環境破壊・核戦争の脅威もあったが、いずれテクノロジーが解決すると・・・
⇒これが1960年代の楽観論(タイム誌やケネディ)で、その後のテクノ・オプティミズムへ
・ところがアメリカ男性の長期失業率(25歳~54歳)は1960年代の6%が現在(2023年)は12%
⇒主な理由は非大卒男性が「いい仕事」に就くことが、ますます困難になっているから
⇒かつては大卒・非大卒を問わず適正賃金・雇用保障・キャリアが構築できる機会のある
「いい仕事」があったが、学位を持たない労働者の「いい仕事」は、ほとんどなくなった
・デジタル技術は起業家・経営者・一部投資家に富を与えたが大半の労働者の実質賃金は
増えておらず、非大卒者は減少、大卒者でも院卒以外は微増にとどまっている
⇒大半の労働者が就ける「いい仕事」が減り、コンピュータ科学・エンジニア・金融関係など
教育された一握りの労働者の収入が急速に増えて二層構造の格差社会へ
・これは新しいテクノロジーがもたらす不平等な帰結だった
⇒まさにH.G.ウェルズが「タイムマシン」で予見したディストピア
(政府の手厚い保護・団体交渉・適正な最低賃金などにより北欧・フランス・カナダでは
アメリカより賃金下落は少ないが格差は拡大しており非大卒者の仕事は足りていない)
・1000年にわたる証拠から新たなテクノロジーが広範な繁栄をもたらすか否かは自動的ではなく、
経済的・社会的・政治的な選択にかかっていることが明白になった
⇒本書では、
①この選択の本質
②テクノロジー・賃金・不平等の関係をめぐる歴史的・現代的証拠、
③繁栄の共有に資するイノベーションを機能させるためにできること
の3点を追求する
・第1章ではその下準備として次の基本的な三つの問いに取り組む
①新たな機械や生産技術が賃金を上昇させる時期は何によって決まるか?
②テクノロジーの方向性を変えるには何が必要か?
③現在とりわけ人工知能に関して気がかりな別方向に向かっているのはなぜか?
・生産性バンドワゴン(生産性の向上による増産で雇用は拡大して賃金も増加する)
⇒新型機械・効率的工場で20世紀前半のアメリカ自動車製造業は生産性が急上昇した
⇒雇用も増え正規教育のない労働者も含め経済界全体で賃金が上昇した
⇒アメリカでは戦後1970年代まで賃金上昇率は大卒も高卒も同じだった
⇒その後の出来事にバンドワゴンが合致しないのはなぜか?
⇒限界生産性(労働者一人あたり生産量ではなく需要増大や生産増大への寄与)の違い
・フォードやGMが優れたモデルを出せば需要は増え、労働者一人あたり収益と労働者の
限界生産性はともに上昇する
⇒会社は追加需要を満たすため労働者を増員し必要ならさらに賃金を払う
⇒ところが産業用ロボットを導入すれば平均生産性は向上するが労働者の必要性は低くなる
⇒労働者の限界生産性が向上することはなく低下の可能性さえある
・オートメーション、グローバリゼーションはコストを削減し利益を増やしたが、
先進国の国内では労働者は職を奪われて繁栄の共有をもたらさなかった
⇒これが経済効率を向上させる唯一の方法ではなく労働者一人あたりの生産量を増やす方法は
いくつもあり、これは歴史を通じていえることである(第5章から第9章で説明)
⇒イノベーションには自動化やオフショアリング以外に生産性への個人貢献度を高めるものもある
⇒例えば自動車整備士の作業を支援し、より精密な作業を可能にする新アプリの導入
⇒これは労働者の限界生産性を高めるイノベーションであり、
⇒労働者と置き換える産業用ロボットの導入とは全く異なるもの
・1910年代のフォード工場の自動化では設計・技術・機械操作・事務など新しい仕事が生まれた
⇒新しい機械で新たな労働用途が生まれると労働者の生産貢献が拡大し限界生産性が増す
⇒リカードやケインズの最悪の懸念が実現しなかったのは新たな仕事を伴っていたため
⇒自動車製造の急増で新たな雇用は関連業界だけでなく沿道サービス業の台頭まで可能にした
・ただし自動化による生産性の向上が小さい場合は新たな雇用を生まない
⇒食料品店のセルフレジ化は作業を従業員から顧客に移すだけで生産性への寄与は限られ、
新たな仕事は生まれず、大して安くもならず、生産も拡大せず、顧客の生活も変わらない
⇒テクノロジーを何のために使うかという「選択」が最重要
⇒テクノロジー開発によって労働者の限界生産性を高めるという選択
・労働者の限界生産性が向上しても労働者への需要が増加しなければ賃金は上昇しない
それが起こらないかもしれない三つの理由
①奴隷制のような強制的な関係
⇒アメリカ南部の綿繰り機の導入は強制力を高め奴隷も農民もさらに貧困になった(第4章)
②生産性が向上してもライバルとの競争がなければ賃金を上げないかもしれない
⇒他の仕事に就けない初期の農業社会や別の仕事探しを禁じていた18世紀のイギリス
⇒中世ヨーロッパでは風車・輪作の効率化・馬利用拡大で生産性が向上したが、その恩恵は
少数のエリートだけが享受し大規模建築へ、人口の90%を占めていた農民にはなかった
⇒1700年代のイギリスでは産業機械で労働者の生活水準は悪化し工場主だけが裕福に
③労働者の利益についての交渉能力
⇒1950年代から60年代のアメリカ野球ビジネスの例
(テレビ放送の巨額収益は全て球団オーナーへ⇒60年代後半から交渉により選手にも)
・科学的発見は光速で伝わるようになったが世界の生活改善にはテクノロジーの方向転換が
必要で、科学とイノベーションの新たな活用法を構築しなければならない
⇒ビジョンの選択⇒高圧が標準となった蒸気機関の例⇒炭鉱の過酷な労働条件になった
⇒選択が異なれば利益を享受する人も異なる
・共有されるビジョンが特定方向の例
⇒中国の社会信用システム(2009年から運用)
⇒決定したのは少数の党幹部でブラックリストの作成に
⇒フェイスブック(2018年にユーザー投稿優先にアルゴリズムを変更)
⇒決定したのは数名の幹部で、広告サービスとユーザーのエンゲージメントを高めることが
目的だったが、帰結は誤報や政治的分断の拡大に
⇒いずれもシステムの影響を受ける14億の国民や25億のユーザーの選択ではなかった
⇒個人のデータや社会的活動を支配するための利己的で偏狭なビジョンの選択になった
・南アフリカのスワートクランス洞窟
⇒100万年前の木炭層(火の使用痕跡)から以降は捕食関係が逆転している
⇒グーグルCEOサンダー・ビチャイ「AIは火や電気よりも深遠な何か」
⇒グーグル・チャイナ前社長カイフー・リー「AIは最も変革的なテクノロジー」
⇒今のAIは世界中で不平等を拡大させ企業や独裁政府のデータ収集を強化している
⇒ところが企業リーダーの大半はAIによる良い未来や問題解決を主張し続けている
⇒我々は火によって獲物から最強の捕食者になり、車輪によって距離を、電気によって暗闇を、
薬によって病気を征服してきたのだと・・・
・デジタル・テクノロジーというツールを人々のために活用するにはテクノロジー企業の
支配者にはびこる世界観を覆す必要がある
⇒こうした世界観を支えているのは特定の不正確な歴史解釈
⇒イノベーションによる人類への影響について示唆するもの⇒この歴史の見直しから
・次章以降の予定
⇒重大なテクノロジーの変化が生じた地域を中心に、まずは西欧と中国の農業、次にイギリスと
アメリカの産業革命、さらにアメリカと中国のデジタル・テクノロジーを取り上げる
⇒様々な国の様々な選択、テクノロジーが他の地域に自発的・強制的に広がった際の影響
・第2章「運河のビジョン」
⇒フランスのエンジニア、レセップスがスエズで成功した海面式運河建設と同じアイデアで
パナマで失敗して2万人が死んだ話
⇒大きな災害は過去の成功に基づく強力なビジョンに根差しており、あらゆるテクノロジーの
歴史にとって教訓となる話
・第3章「説得する力」
⇒テクノロジーや社会の重要な決定をなす際に説得が中心的役割を果たす
⇒説得する力は政治制度やアジェンダ設定能力に根差し、対抗勢力や幅広い意見で自信過剰や
利己的なビジョンが抑制される
・第4章「不幸の種を育てる」
⇒本書の構想の主要な考え方を農業テクノロジーの進歩に応用する
⇒新石器時代における定住農業の始まり、中世から近世初期にかけての土地と生産技術の
組織化をめぐる大変化
⇒いずれも生産性バンドワゴンが自動的に走り出した証拠は見つからない
⇒少数エリートの富と権力を増大させたが殆どの農業労働者に恩恵はもたらさなかった
⇒小作農は政治的・社会的権力を持たずテクノロジーの進路は一握りのエリートのビジョンに従う
・第5章「中流層の革命」
⇒産業革命の再解釈
⇒これまであまり強調されていなかった、新たに自信をつけた中産階級、起業家、実業家の
あいだに現れたビジョン
⇒彼らの考え方や願望は16世紀から17世紀以降にイングランド中流層に力を与えるようになった
制度的変化に根差し、彼らのビジョンは包括的ではなかった
⇒政治経済の仕組みの変化はどのように起きたのか、またそれが「自然は誰がどうコントロール
するのか」という新たな概念を生み出すうえで、なぜ重要だったのか
(蒸気機関車・鉄道のスチーブンソンなど技術を持った「成り上がり」を認める社会に)
第6章「進歩の犠牲者」
前章の新たなビジョンの帰結
⇒産業革命の第一段階で多くの人々がいかに貧しくなり無力化したか
⇒それがオートメーションへの強い偏向と、テクノロジーや賃金の決定に関し労働者の声が
欠如していたことの帰結だったのはなぜか
⇒工業化で経済生活、健康、自主性に悪影響が及んだが、状況が変わりはじめたのは19世紀後半、
普通の人々が団結し経済的・政治的改革を推進した社会的変化がテクノロジーの方向性を変え、
賃金を押し上げたが、これは繁栄の共有に向けた小さな勝利に過ぎなかった
⇒西欧諸国が繁栄の共有を達成するにはテクノロジーと制度をめぐる長く争いに満ちた道が・・・
・第7章「争い多き道」
⇒テクノロジーの方向性、賃金設定、より一般的には政治をめぐる闘争が経済成長期の土台を
いかにして築いたかの概観
⇒戦後の30年間、アメリカはじめ西側工業国は急速な経済成長を遂げ殆どの層に共有された
⇒教育や医療の普及、平均寿命の延伸など社会的改善は経済トレンドと軌を一にしていた
⇒テクノロジーの変化、仕事の自動化がなぜ、いかにして労働者に新たな機会を生み出したのか
⇒それが対抗勢力を勇気づける制度的環境にどう組み込まれていたのかについての説明
第8章「デジタル・ダメージ」
⇒現代に目を向け、われわれがいかにして繁栄の共有という戦後数十年間のモデルを手放して
しまったのかを振り返る
⇒この方向転換の中心にある変化は、テクノロジーの方向性が労働者に新たな仕事や機会を提供
することから、仕事の自動化や人件費削減を最優先することになったこと
⇒これは必然ではなく労働団体や政府規制の圧力が欠如した結果で繁栄の共有を損なう一因
第9章「人工闘争」
⇒1980年代以降のビジョンが規定するようになった次の2点についての説明
①デジタル・テクノロジーの次の段階、人工知能についてどう考えるかという問題
②AIが経済的不平等へのトレンドをいかに悪化させているかという問題
⇒多くのテック・リーダーの主張に反してAIテクノロジーは人間に限られた利益しかもたらして
おらず、職場監視に利用されて労働者の力を奪い、現在の方針ではオートメーションが世界中に
輸出されて、発展途上国における数十年分の経済的利益を台無しにしてしまう恐れがある
⇒AIはデジタル・テクノロジーの特殊な進路を反映しており深刻な分配効果を持つ
(少数に恩恵をもたらし残りを置き去りにする効果)
⇒機械的知能に注力するより機械の人間にとっての有用性を獲得する方が実りが多い
(かつて機械の有用性が求められた際には、それがデジタル・テクノロジーの生産的な応用に
つながったが、AIとオートメーションの追及につれ、顧みられなくなったことも説明する)
・第10章「民主主義の崩壊」
⇒AIを使った大量のデータ収集で政府や企業による監視が強化されている
⇒同時にAIを活用した広告ビジネスモデルは誤情報を拡散し過激思想を増幅している
⇒現在のAIが歩んでいる道は経済にも民主主義にも良いものではないし、残念ながら、
この二つの問題は相互に強化し合っている
・第11章「テクノロジーの方向転換」
⇒こうした有害なトレンドを反転させる方法の略述
⇒テクノロジーの変化の方向転換のテンプレート
⇒土台となるのはテクノロジーの社会的偏りに取り組むために、物語を変え、対抗勢力を築き、
技術、規制、政策に関する解決策を練り上げること
・・・つーことで、ここまでだけでも中世ヨーロッパの農業イノベーションや産業革命など
テクノロジーの進展(技術革新)と不平等の歴史から、AIなどデジタル・テクノロジーの現在の
方向性を変えないと民主主義が崩壊するつーのは、まさに目からウロコの本でしたが・・・
と、ここまでで図書館への返却期限まであと3日・・・はてさて・・・

(8月10日追記です)
下巻をようやく読破、現代については下巻がメインですね
