2026年06月11日
平等について、いま話したいこと
ええ、前回記事の飲酒主義もとい民主主義に関連して・・・

~平等について、いま話したいこと~であります
なぜか歪んでますが対談者の略歴

そう、フランスの経済学者トマ・ピケティとアメリカの政治哲学者マイケル・サンデルが
2024年5月20日、パリの学校で対談した際の内容を編集した本
訳者略歴と奥付

目次

わたくしが興味を持った部分のみのてきとーメモですが、著作物からのメモなので、
公開に問題があれば非公開設定にします
(以下「さ・」はマイケル・サンデルの発言、「ぴ・」はトマ・ピケティの発言からのメモ)
第1章 なぜ不平等を懸念するのかより
さ・ピケティ著書にヨーロッパでは上位10%が所得の1/3以上、保有資産の半分以上を占め、
アメリカではさらに顕著とあるが、なぜそれが問題なのか、から・・・
ぴ・今も多くの不平等があるが長期的には平等に向かう動きであり、それが質問への答えになる
⇒この動きの源は社会運動と政治的要求で権利の平等を求めるもの
⇒18世紀末のフランス革命からアメリカ独立戦争、19世紀には奴隷制廃止、労働運動、男性による
普通選挙、女性参政権への動き、20世紀には社会保障の発達、累進課税、植民地の独立・・・
ここ数十年もこの動きは続いている
⇒1980年代からの新自由主義時代については不平等拡大の時代と言われるがジェンダー間、
人種間、南北間においても平等に向かう長期的な動きは続き、今後も続くとみている
⇒近代民主主義の広がりで基本的な財に対する平等な機会、参加、尊厳への意欲が高まっており、
これが平等への原動力であり、金銭面での不平等についても同じこと
⇒著書の今の数字は正しいが100年前はもっとひどく、200年前はさらにひどかった
⇒決して簡単な道のりではなかったが、これは勝てる可能性のある闘争であり研究することが
次の段階に備える有効な方法になるから(というのが質問への答え)
さ・先ほどの3つ、基本的な財の利用機会、政治的な発言・権限・参加、そして尊厳、
これらを切り離すことができても金銭面での問題は残るか
ぴ・100年前と基本的な財が同じではないこと(高等教育など)と南北問題(資源搾取など)が
今後の大きな問題だが、さらに平等に向けて歩みを進めていくしかない
第2章 お金はもっと重要でなくなるべきかより
さ・再分配と脱商品化についての思考実験
①すべての人の購買力が近くなるよう所得と富を再分配し経済の商品化は現状のままにする
②所得と富は現状のままで経済と社会の脱商品化でお金をあまり重要でないものにする
⇒ラディカルな再分配か、お金のメリットを少なくするか、どちらを選ぶか
ぴ・1930年代からのイギリス・スウェーデンのラディカルな再分配と脱商品化の例(略)
⇒当時のハイエク(新自由主義の元祖といわれる)はソ連のような独裁になると言っていた
⇒最終的には非常にうまくいったが、
⇒1980年代以降は社会民主主義政党の上層部そのものが過去の遺物と見なしはじめた
⇒結論から言えば金銭的不平等の圧縮と脱商品化は同時に行われるべき
⇒福祉国家(福祉だけではないので厳密には社会国家)の出現
⇒1930年から1980年までのアメリカの所得税最高税率平均は82%
⇒それでもアメリカの資本主義は崩壊せず生産性は世界最高だった
⇒当時のアメリカは他国より高校進学率が高く教育(の脱商品化)が繁栄の鍵だった
⇒累進課税が重要なのは金銭的な格差が尊厳や社会的関係に影響を及ぼすだけでなく、
行政機関が経済力を規制する際の有効性の問題でもあるから
⇒たとえば優秀な人材を必要とする公的規制機関の給与がグーグルの1/20だったら・・・
⇒解決策は給与を20倍ではなく所得格差を圧縮することで、歴史的にはうまく機能していた
第3章 市場の道徳的限界より
さ・商品化を懸念するのは経済的不平等により教育や保健医療や政治的発言から締め出す以外にも、
すべてを商品化すれば財の価値そのものが劣悪化するからではないか
⇒高等教育なら商品化により経済的不平等になるのはもちろん、学生が教育の目的を手段として
(よい仕事につき、もっとお金を稼ぐための手段として)見るようになり、大学側も善と価値を
顧みなくなるのではないか
ぴ・高等教育なら教員を毀損することにもなる
⇒学生の成績に応じて金銭的インセンティブを与える実験は多いが、最初は成績が上がる
ことはあっても、6ケ月後には本当は何も学んでいないことがわかる
⇒教員は試験でよい成績を取らせるために教え、本物の学びをさせているわけではないから
⇒教育と保健医療の分野で脱商品化のプロセスがうまくいったのは、その分野で働く人たちの
内在的動機が、金銭や利益の追求という動機によって破壊されやすいからにほかならない
⇒アメリカの医療費はGDPの10%だったのが今や18%、もうすぐ20%になる
⇒ヨーロッパの公的医療制度はもっと少ないお金で、はるかにうまくいっている
⇒なんでも商品化して高い金銭的インセンティブや高い給与を払うのは、仕事や生活で本当に
大切にしているものを壊すことになる
⇒ハーバード大学やアイビーリーグの大学には多くの問題があるが非営利組織
⇒株式会社になれば教員と学生が学び研究する機関で大切にしているものが破壊される
さ・アダム・スミスもカントも講義に出席する学生数に応じた給料・・・
ぴ・それが悪いわけではないが結論として平等主義の脱商品化が大きな成功をおさめた
第4章 グローバリズムとポピュリズムより
さ・二人とも資本やモノの規制なき国家間移動を批判、ヒトの国家間移動には賛成しがちだが、
中道右派の人たちは移民の増加を批判しながら、資本とモノの移動は支持し促進している
⇒矛盾しているのはどちらか
ぴ・労働力の移動については教育や住宅を税金でどうするかというルールが必要だが、これは
資本移動と貿易が規制されれば解決する問題
行き過ぎグローバリゼーションへの反応については細心の注意で区別すべき
⇒トランプやルペンの排外主義や反移民主義、一方でアメリカではサンダースのような反応もある
⇒著書ではどちらもポピュリストとしているが後者は民主社会主義ではないのか
さ・ではフランスでは右派ポピュリストだけをそう呼ぶのか
ぴ・社会主義・国家主義・自由主義は正当なイデオロギーであり民主主義の主張
⇒自由市場グローバリゼーションへの反対者を全てポピュリストと呼べば混同する
さ・やはりヨーロッパとアメリカではポピュリズムのニュアンスが違うようだ
⇒アメリカ政治でのポピュリストは19世紀の鉄道のちに石油も牛耳っていた経済エリートに対し
一致団結した工場労働者と農民たち
⇒進歩的な運動だったが排外主義、反ユダヤ・人種差別主義も最初から存在していた
さ・近年の右派ポピュリズムは進歩的・社会民主的な政策の失敗が生んだ症状
⇒失敗は2008年オバマ政権の金融危機対応でウォール街を救済した
⇒金融と経済の関係を新たに構築することもできたのに、クリントン政権に金融自由化を
推進させた経済学者を登用して銀行を救済し、それへの怒りが政治的立場を超えて広がった
⇒左派ではオキュパイ(反格差)運動やヒラリークリントンに対抗したサンダース大統領候補、
右派ではティーパーティー(反民主党)運動で、それが最終的にトランプ当選につながった
さ・中道左派も中道右派も市場信仰を歓迎したのは、財の価値をどう評価するかという議論を
やらずとも市場があたえてくれるからで、それが市場の魅力の根源ではないか
ぴ・要するに民主主義に対する怖れで自分たちがやっていることの価値を評価しなおすこと
への怖れでもある⇒「再分配というパンドラの箱を開ける」ことへの怖れ
ぴ・グローバリゼーション・金融化・能力主義ウォール街的な新自由主義イデオロギーを
クリントン・オバマ・ブレア・シュレーダーが問い直せず、サンダースやウォーレンが
民主社会主義と呼ぶべき政策を打ち出した
⇒ポピュリストの怒りの表現ではないのに、二人を左派ポピュリストと呼ぶのか
さ・ポピュリズムは再分配についではなくエリートから権力を取り戻すのが主な意味だが
あまり深堀りし過ぎないほうがいいかも・・・
ぴ・でもトランプに使うのと同じ言葉だ・・・
さ・なるほど、それで使いたくないのか・・・
第5章 能力主義より
ぴ・サンデル著「実力も運のうち」の大ファンで、この中ではグローバリゼーション・
金融化・能力主義を新自由主義時代の三本柱として挙げているが、うち能力主義についてと
それを脱する方法として提案されている「くじ引き」入学について訊きたい
⇒「大学は大学のものだから入学方法は理事が決める」という意見もあるが、高等教育は
保健医療とならぶ基本的な財で「自分のお金だからタックスヘブンに送って納税しない」と同じ
⇒「自分のお金」も多くの人たちの労働や公共インフラや法制度によって生み出されたもの
⇒アメリカ有名大学への「くじ引き入学」提案も同じ解釈でいいか
さ・そのとおりだが能力主義にはふたつの問題がある
⇒基本的に能力自体はよいもので手術が必要になれば優秀な医者に手術してもらいたい
⇒1980年代から能力が一種の専制になった
⇒不平等の拡大と成功のとらえ方の変化
⇒機会さえ平等なら成功者が恩恵を受けていいというのが能力主義の原則
⇒アメリカ有名大学の優秀な入学者は所得上位者の家族が多く完全に能力主義ではないが、
⇒仮に平等が実現して完全な能力主義になっても公正な社会は実現しない
⇒「自分のお金」と同じで、自分の成功は多くの人たちによるということを忘れるから
⇒不平等が拡大し失業者が増える中で中道左派も中道右派もアドバイスは「学べば稼げる」
⇒特に昔は労働者階級を支持基盤としていたアメリカ民主党・イギリス労働党・フランス社会党が
高学歴・高経験の専門職階級と価値観・利益・見解を同じくする政党になった
⇒怒りの反発は当然だった
⇒能力主義の成功概念が新自由主義グローバリゼーションの倫理に結びついたことの表れ
ぴ・昔の不平等な政治形態では貴族・軍人・労働者・農民といった集団が必要だったが、
貧しくて当然、金持ちで当然という能力主義は現在の不平等な体制の特徴
⇒レガシー入学や寄付者入学を禁止すべきか、自主的にやめるべきか
さ・そうさせるための世論や道徳的な圧力、ケネディが法案提出した情報の公開・・・
ぴ・もっとラディカルに・・・ルールが間違っているのにアメリカ人が慣れてしまっている
第6章 大学入試や議員選挙にくじ引きを取り入れるべきかより
さ・わたしが提案してるのは「適格者の中からの」くじ引き
⇒スタンフォードなら6万人の志願者のうち上位2万人~3万人の中から2000人をくじ引きで
⇒提案理由は運の要素に気づかせ、勝者の奢りや敗者の屈辱感を問い直してしぼませること
⇒二院制の議会でも一方は寄付制限による選挙で、もう一方はくじ引きで選ばれた市民で
⇒くじ引き選挙は能力主義が生み出した学歴偏重に抗うことにもなる
⇒アメリカ連邦議会でもフランス国民議会でも今は大卒者が殆どで極めてアンバランス
ぴ・入試にはマーコヴィッツ提案(略)のような、くじ引きよりよい方法があるのでは
⇒高等教育の機会は基本的な財なのだから機会均等は入試の義務とも主張できるはず
さ・くじ引き提案の別の狙いは能力主義の奢りをしぼませることで両方の仕組みを検討すべき
ぴ・人口の50%が非大卒なのに議会の現状では5%と仮定して、第2院をくじ引きにすれば
50%になるが、ジュリア・カジェ提案のように人口の50%が非大卒であれば候補者の50%を
非大卒にするよう各政党に義務付ける方法もあり、インドの無作為抽出された25%の選挙区では
1950年以降、すべての政党が指定されたカーストや部族(インド社会の下位25%を占める
グループ)の候補者を立てる
さ・政党名簿式の比例代表制ならそのほうがうまくいくが・・・
ぴ・インドは選挙区制で無作為抽出された25%の選挙区(500なら100)では各政党の候補者は
指定カーストや部族(インド社会の下位25%を占めるグループ)に属してなければならず、
誰が当選しても議会の25%はそのグループの議員が占めることになる
さ・議会の社会的構成・学歴構成・階級構成については(性構成同様)公の議論をすべきで、
くじ引きにこだわっているわけではない
ぴ・では大学制度が能力主義の選別装置・格付け装置になっていることについて
さ・能力主義の競争に備えて武装するより仕事の尊厳を肯定することに目を向けるべき
⇒経済や共通善に(仕事や子育てやコミュニティ活動を通じて)貢献している人たちの生活を
もっとよくすることに重点を置くべき
⇒何を仕事の尊厳と考えるかは右派と左派で意見が分かれるだろうが議論すべき
⇒エリートへの反発は自分たちの仕事の価値がないがしろにされているという感覚
⇒これは主流政党が高等教育で不平等を解消しようとしてきたことにも関係しており、
政治的に真剣に受け止める必要があるが容易ではない
⇒トランプやルペンが煽る人種差別・女性蔑視・外国人嫌悪を責める方が簡単だから
⇒アメリカ連邦政府の大学進学支援支出は年間1620億ドルで職業訓練校支援支出は年間11億ドル
⇒政策策定者の学歴偏重偏見・能力主義偏見がここに反映されている
⇒分配正義の不公平だけでなく労働者階級の仕事への敬意が欠如している
⇒これに拍車をかけているのが金融業界の法外な報酬
⇒ヘッジファンドマネージャーの稼ぎが教師や看護師、さらにいえば医師の5000倍でないと
いけない理由がどこにあるのか
⇒不公平どころか社会が暗黙の裡に身近な意味での仕事を集団で侮辱している
⇒学歴偏重こそが最後まで容認されている偏見であり仕事の尊厳は重要
⇒再分配で解決できる不平等だけが問題ではなく、共通善に貴重な貢献を行っている人たちが
認められず尊敬も尊重もされていない問題にも仕事の尊厳を考えることで気づくことになる
第7章 課税、連帯、コミュニティより
ぴ・公的リソースを増やさないと保健医療分野にもアメリカのように民間リソースが入る
⇒調査分野にもグーグルかマイクロソフトかどこか、教育分野では私立大学リソースになり
すべてに大きな不公平が生じ実際に内在的動機が破壊される
⇒必要なのは公平な税制、累進課税、給与格差と所得格差の大幅圧縮だがサンデルの立場は
さ・累進課税や再分配の倫理的土台は帰属意識・成員意識・共同体意識・連帯感
⇒昔から社会主義の政治や哲学は連帯の概念に大きく頼ってきた
⇒そんな特定の概念は哲学の見地からすると間違いだと思うが、進歩主義者や社会民主主義者が
共通性、コミュニティ、アイデンティティという倫理的土台を扱わずに累進課税を論じようと
ずるのも政治の見地からすると間違っていると思う
⇒共通のプロジェクトに参加し互いに依存しながら責任を分かち合っている感覚と確信を
持つためには共通性を感じられる状態や施設を市民社会の中に創り出す必要がある(例示略)
⇒学校だけでなく住まいも職場も買い物も遊び場も金持ちと貧しい人たちは別々で混在施設が
どんどん減っているが、平等な社会を築くプロジェクトには税率改革以前に必要なもの
ぴ・同意するが双方向であり累進課税を重視せず共通性を擁護することはできるのか
さ・確かに相互依存の関係なので待つのではなく同時にやらなくてはならない
第8章 国境、移民、気候変動より
さ・ピケティ著書にある平等社会を促進する共通性の醸成などほんとうに可能なのか?
⇒再分配をおこないグローバルな正義を広げる連邦制の超国家的枠組みを構築し、なおかつ
リソースを分け合う動機としてのアイデンティティを共有することなど・・・
ぴ・標榜しているのは民主社会主義、連邦制の国際社会主義で世界連邦のようなかたちでの
累進課税がよいと思っているが(略)、アメリカなら国家レベルでも可能
⇒ここ数十年で中道左派政権が自由貿易を推し進め国をまたいでの移動を可能にした
⇒それを利用した富の蓄積や課税逃れの国際法規を構築して手助けをする偽善
⇒国際主義が嫌われトランプの方がクリントンより中立に見えた
⇒フランス北東部ではEUの自由貿易や資本の自由移動で製造業が失われルペンへ
⇒アメリカでも中国との競争で失業者が多い地方でトランプへ
⇒国家が法人税や炭素税の国家間差額を輸入の際に徴収する貿易制裁
⇒通常の保護貿易と異なりすべての国の標準を引き上げる狙いで同じ水準になれば消滅する
⇒世界の経済・金融・会計・環境規制の変化の実現が南と北の調和を図ることにもなる
さ・何らかの世界的合意や超国家的組織を通じて法人税の最低税率を定めるやり方は
ぴ・前述の一方的な方策と国連レベルで最低税率を定める戦略を同時に進める必要がある
⇒OECDレベルでは、すでにはじまっているが最低税率15%は富裕国しかメリットがない
⇒OECDは金持ちクラブだが国連では西側ヨーロッパとアメリカを除くすべての国が
昨年の国連総会で租税条約に賛成した
⇒国際協調は必要だが偽善的でなく南側も考えたものにすべきで、事態を前に進めるには
各国による一方的な方策も必要
さ・炭素排出量のクレジット化について
ぴ・アメリカが国内の炭素排出量を削減せずにすませる方便で大きな反発が生まれる
⇒アメリカとヨーロッパの人口割合に対する排出量が多いから
⇒国ごとに割り当てても国家主義者が勝利するだけ
⇒地域代表的な闘争ではなく階級闘争に近いものにすべき
⇒アメリカだろうがヨーロッパだろうが中国だろうが億万長者や巨大多国籍企業に払わせるべき
⇒グローバル税を課し気候変動にさらされている南側諸国へ直接配分する
さ・あなたの国際社会主義の原理から国境を開放しない正当な理由はあるか?
ぴ・問題は同じでレベルごとに見る必要があるが、人の自由な移動には資金の手当てが要る
⇒たとえばEU加盟国の学生はEUのどの国でも学べるが資金となる連邦制の所得税はない
⇒EU加盟国の学生は無料同然だがEU以外の学生からは高額な授業料を徴収している
⇒これらを改善するには費用を賄うための国際的な税制度が必要になる
⇒このように公共サービス財源さえ計画されていれば人の自由な移動を厳しく制限する理由はない
さ・富裕国には貧しい国からの移民を締め出す権利があるのか?
ぴ・地中海を渡りたがる人をなくすため地中海で死なせるのが現在の方針
⇒2000年の地中海文明で今ほど豊かな時代はなかったのだから、はるかによい方法があるはず
⇒現在の方針も平等主義政策の継続をあきらめ共通善にお金を出さなかった好例で、
⇒国内問題を移民や国境開放のせいにしたりする排外主義がのさばるようになったということ
⇒実際にはヨーロッパ人口5億人に対する移民の流入規模は相対的に小さなもの
第9章 左派の未来ー経済とアイデンティティより
さ・移民問題については「左派の未来」につながるから訊いた
⇒左派の政治的弱みは愛国心・共同体意識・帰属意識の独占を右派に許したこと
⇒移民問題は共同体としての国家にどのような倫理的意味があるかという問いを突きつける
⇒満足できる答えを用意できるかどうかに左派の政治の未来がかかっている
⇒たとえば企業が利益をあげた国に税金を払わないのは経済的愛国心の欠如ではないか
⇒健全な意味での市民の誇りは外国人嫌悪や超国家主義の代わりになるのでは
ぴ・トランプやルペンに票が集まるのは移民の流入より貿易競争による製造業での失業
⇒左派が窮しているのは貿易と雇用の問題に取り組んでいないから
⇒アイデンティティや移民の論議で左派に勝ち目はないが重要なのは投票者の論点の中心に
なっている問題に取り組むこと
⇒アメリカの場合、トランプが大多数を獲得している郡の兆候は製造業の雇用喪失であり、
移民流入ではない⇒フランスも同様(具体例は略)
⇒別の論点では小都市住民のマイカーやマイホームへの偏見の眼
⇒この失業・貿易・競争・交通・住宅の問題が中道左派と中道右派から見捨てられているという
感覚につながっていてアイデンティティの問題よりはるかに大きい
⇒左派の問題は経済構造のあり方を問い直してこなかったこと
⇒産業革命以降の政治議論は国家主義・自由主義・社会主義の間で行われてきた
⇒自由主義での競争で繁栄できたが社会コスト損害や環境破壊を伴った
⇒国家主義は民族連帯で地域コミュニティレベルでの地元利益や連帯強化も必要だが、
解決できる問題には制限もあり昔からの権力温存の建前に利用されることもあった
⇒社会主義は新たな経済システムを構築しようとして社会民主主義・脱商品化・累進課税で
大きな成果をあげてきた
⇒民主主義が機能するには、この三本柱で支えることが必要だがソ連の崩壊以降、社会主義の柱
つまり左派の再分配の柱が弱くなっている
サ・わたしの場合はアイデンティティの問題と経済の問題のはっきりした区別はない
⇒空洞化した工業都市の人たちは賃金停滞や失業だけに苦しんでいたのではなく、自分たち
以外の社会や社会を治める人たちから同胞の市民として大切にされていない、認められず、
尊重されず、尊厳がないがしろにされているという感覚に苦しんでいた
ぴ・気候変動の責任という偏見まで持たれており確かにアイデンティティの問題
さ・この偏見、エリートに見下されているという考え方を承認と帰属の政治という意味で
とらえたいと考えているが、表現するには不満を認識し名称を与える必要がある
ぴ・それは同じではないが左派はその種のアイデンティティに訴えかける必要がある
⇒トランプやルペンは反エリートの立場に立った非難
⇒アメリカでは1980年代まではエリートは共和党に投票していたが現在は逆転している
⇒地域別でも最高級地域や最も豊かな場所では同じ現象で現在は民主党に投票している
⇒だからこそトランプの共和党が実現した
⇒民主党がエリート主義と見られている限りアイデンティティで共和党と競っても訴えられない
さ・ルソーの「人間不平等起源論」(略)は正しかったか?
ぴ・私有財産にしたことは問題ではなく、それを際限なく蓄積することが問題という点で
ルソーに賛成
⇒少数の手に財産が集中し権力が集中することが問題であり、富や財産を所有することは
お金の問題ではなく交渉力の問題になる
⇒所有するものがなく負債しかない場合はどんな賃金でも吞まなければならないが、
10万~30万ドル持っていれば(億万長者からはどちらもゼロ同然だが)家が買え(ニューヨークや
パリでは無理だが国内で買える場所はある)小さな事業をはじめられ引き受ける仕事を少し
選り好みできるようになる
⇒これはまさに交渉する権限の問題
さ・平等とは何か、なぜ重要かを考えるため所得と富、権限や発言権、尊厳や承認まで話した
⇒ルソーと同じように経済、哲学、政治理論を横断することになったが議論が今後も続くことを・・・
・・・・・・
さてさて・・・

~平等について、いま話したいこと~であります
なぜか歪んでますが対談者の略歴

そう、フランスの経済学者トマ・ピケティとアメリカの政治哲学者マイケル・サンデルが
2024年5月20日、パリの学校で対談した際の内容を編集した本
訳者略歴と奥付

目次

わたくしが興味を持った部分のみのてきとーメモですが、著作物からのメモなので、
公開に問題があれば非公開設定にします
(以下「さ・」はマイケル・サンデルの発言、「ぴ・」はトマ・ピケティの発言からのメモ)
第1章 なぜ不平等を懸念するのかより
さ・ピケティ著書にヨーロッパでは上位10%が所得の1/3以上、保有資産の半分以上を占め、
アメリカではさらに顕著とあるが、なぜそれが問題なのか、から・・・
ぴ・今も多くの不平等があるが長期的には平等に向かう動きであり、それが質問への答えになる
⇒この動きの源は社会運動と政治的要求で権利の平等を求めるもの
⇒18世紀末のフランス革命からアメリカ独立戦争、19世紀には奴隷制廃止、労働運動、男性による
普通選挙、女性参政権への動き、20世紀には社会保障の発達、累進課税、植民地の独立・・・
ここ数十年もこの動きは続いている
⇒1980年代からの新自由主義時代については不平等拡大の時代と言われるがジェンダー間、
人種間、南北間においても平等に向かう長期的な動きは続き、今後も続くとみている
⇒近代民主主義の広がりで基本的な財に対する平等な機会、参加、尊厳への意欲が高まっており、
これが平等への原動力であり、金銭面での不平等についても同じこと
⇒著書の今の数字は正しいが100年前はもっとひどく、200年前はさらにひどかった
⇒決して簡単な道のりではなかったが、これは勝てる可能性のある闘争であり研究することが
次の段階に備える有効な方法になるから(というのが質問への答え)
さ・先ほどの3つ、基本的な財の利用機会、政治的な発言・権限・参加、そして尊厳、
これらを切り離すことができても金銭面での問題は残るか
ぴ・100年前と基本的な財が同じではないこと(高等教育など)と南北問題(資源搾取など)が
今後の大きな問題だが、さらに平等に向けて歩みを進めていくしかない
第2章 お金はもっと重要でなくなるべきかより
さ・再分配と脱商品化についての思考実験
①すべての人の購買力が近くなるよう所得と富を再分配し経済の商品化は現状のままにする
②所得と富は現状のままで経済と社会の脱商品化でお金をあまり重要でないものにする
⇒ラディカルな再分配か、お金のメリットを少なくするか、どちらを選ぶか
ぴ・1930年代からのイギリス・スウェーデンのラディカルな再分配と脱商品化の例(略)
⇒当時のハイエク(新自由主義の元祖といわれる)はソ連のような独裁になると言っていた
⇒最終的には非常にうまくいったが、
⇒1980年代以降は社会民主主義政党の上層部そのものが過去の遺物と見なしはじめた
⇒結論から言えば金銭的不平等の圧縮と脱商品化は同時に行われるべき
⇒福祉国家(福祉だけではないので厳密には社会国家)の出現
⇒1930年から1980年までのアメリカの所得税最高税率平均は82%
⇒それでもアメリカの資本主義は崩壊せず生産性は世界最高だった
⇒当時のアメリカは他国より高校進学率が高く教育(の脱商品化)が繁栄の鍵だった
⇒累進課税が重要なのは金銭的な格差が尊厳や社会的関係に影響を及ぼすだけでなく、
行政機関が経済力を規制する際の有効性の問題でもあるから
⇒たとえば優秀な人材を必要とする公的規制機関の給与がグーグルの1/20だったら・・・
⇒解決策は給与を20倍ではなく所得格差を圧縮することで、歴史的にはうまく機能していた
第3章 市場の道徳的限界より
さ・商品化を懸念するのは経済的不平等により教育や保健医療や政治的発言から締め出す以外にも、
すべてを商品化すれば財の価値そのものが劣悪化するからではないか
⇒高等教育なら商品化により経済的不平等になるのはもちろん、学生が教育の目的を手段として
(よい仕事につき、もっとお金を稼ぐための手段として)見るようになり、大学側も善と価値を
顧みなくなるのではないか
ぴ・高等教育なら教員を毀損することにもなる
⇒学生の成績に応じて金銭的インセンティブを与える実験は多いが、最初は成績が上がる
ことはあっても、6ケ月後には本当は何も学んでいないことがわかる
⇒教員は試験でよい成績を取らせるために教え、本物の学びをさせているわけではないから
⇒教育と保健医療の分野で脱商品化のプロセスがうまくいったのは、その分野で働く人たちの
内在的動機が、金銭や利益の追求という動機によって破壊されやすいからにほかならない
⇒アメリカの医療費はGDPの10%だったのが今や18%、もうすぐ20%になる
⇒ヨーロッパの公的医療制度はもっと少ないお金で、はるかにうまくいっている
⇒なんでも商品化して高い金銭的インセンティブや高い給与を払うのは、仕事や生活で本当に
大切にしているものを壊すことになる
⇒ハーバード大学やアイビーリーグの大学には多くの問題があるが非営利組織
⇒株式会社になれば教員と学生が学び研究する機関で大切にしているものが破壊される
さ・アダム・スミスもカントも講義に出席する学生数に応じた給料・・・
ぴ・それが悪いわけではないが結論として平等主義の脱商品化が大きな成功をおさめた
第4章 グローバリズムとポピュリズムより
さ・二人とも資本やモノの規制なき国家間移動を批判、ヒトの国家間移動には賛成しがちだが、
中道右派の人たちは移民の増加を批判しながら、資本とモノの移動は支持し促進している
⇒矛盾しているのはどちらか
ぴ・労働力の移動については教育や住宅を税金でどうするかというルールが必要だが、これは
資本移動と貿易が規制されれば解決する問題
行き過ぎグローバリゼーションへの反応については細心の注意で区別すべき
⇒トランプやルペンの排外主義や反移民主義、一方でアメリカではサンダースのような反応もある
⇒著書ではどちらもポピュリストとしているが後者は民主社会主義ではないのか
さ・ではフランスでは右派ポピュリストだけをそう呼ぶのか
ぴ・社会主義・国家主義・自由主義は正当なイデオロギーであり民主主義の主張
⇒自由市場グローバリゼーションへの反対者を全てポピュリストと呼べば混同する
さ・やはりヨーロッパとアメリカではポピュリズムのニュアンスが違うようだ
⇒アメリカ政治でのポピュリストは19世紀の鉄道のちに石油も牛耳っていた経済エリートに対し
一致団結した工場労働者と農民たち
⇒進歩的な運動だったが排外主義、反ユダヤ・人種差別主義も最初から存在していた
さ・近年の右派ポピュリズムは進歩的・社会民主的な政策の失敗が生んだ症状
⇒失敗は2008年オバマ政権の金融危機対応でウォール街を救済した
⇒金融と経済の関係を新たに構築することもできたのに、クリントン政権に金融自由化を
推進させた経済学者を登用して銀行を救済し、それへの怒りが政治的立場を超えて広がった
⇒左派ではオキュパイ(反格差)運動やヒラリークリントンに対抗したサンダース大統領候補、
右派ではティーパーティー(反民主党)運動で、それが最終的にトランプ当選につながった
さ・中道左派も中道右派も市場信仰を歓迎したのは、財の価値をどう評価するかという議論を
やらずとも市場があたえてくれるからで、それが市場の魅力の根源ではないか
ぴ・要するに民主主義に対する怖れで自分たちがやっていることの価値を評価しなおすこと
への怖れでもある⇒「再分配というパンドラの箱を開ける」ことへの怖れ
ぴ・グローバリゼーション・金融化・能力主義ウォール街的な新自由主義イデオロギーを
クリントン・オバマ・ブレア・シュレーダーが問い直せず、サンダースやウォーレンが
民主社会主義と呼ぶべき政策を打ち出した
⇒ポピュリストの怒りの表現ではないのに、二人を左派ポピュリストと呼ぶのか
さ・ポピュリズムは再分配についではなくエリートから権力を取り戻すのが主な意味だが
あまり深堀りし過ぎないほうがいいかも・・・
ぴ・でもトランプに使うのと同じ言葉だ・・・
さ・なるほど、それで使いたくないのか・・・
第5章 能力主義より
ぴ・サンデル著「実力も運のうち」の大ファンで、この中ではグローバリゼーション・
金融化・能力主義を新自由主義時代の三本柱として挙げているが、うち能力主義についてと
それを脱する方法として提案されている「くじ引き」入学について訊きたい
⇒「大学は大学のものだから入学方法は理事が決める」という意見もあるが、高等教育は
保健医療とならぶ基本的な財で「自分のお金だからタックスヘブンに送って納税しない」と同じ
⇒「自分のお金」も多くの人たちの労働や公共インフラや法制度によって生み出されたもの
⇒アメリカ有名大学への「くじ引き入学」提案も同じ解釈でいいか
さ・そのとおりだが能力主義にはふたつの問題がある
⇒基本的に能力自体はよいもので手術が必要になれば優秀な医者に手術してもらいたい
⇒1980年代から能力が一種の専制になった
⇒不平等の拡大と成功のとらえ方の変化
⇒機会さえ平等なら成功者が恩恵を受けていいというのが能力主義の原則
⇒アメリカ有名大学の優秀な入学者は所得上位者の家族が多く完全に能力主義ではないが、
⇒仮に平等が実現して完全な能力主義になっても公正な社会は実現しない
⇒「自分のお金」と同じで、自分の成功は多くの人たちによるということを忘れるから
⇒不平等が拡大し失業者が増える中で中道左派も中道右派もアドバイスは「学べば稼げる」
⇒特に昔は労働者階級を支持基盤としていたアメリカ民主党・イギリス労働党・フランス社会党が
高学歴・高経験の専門職階級と価値観・利益・見解を同じくする政党になった
⇒怒りの反発は当然だった
⇒能力主義の成功概念が新自由主義グローバリゼーションの倫理に結びついたことの表れ
ぴ・昔の不平等な政治形態では貴族・軍人・労働者・農民といった集団が必要だったが、
貧しくて当然、金持ちで当然という能力主義は現在の不平等な体制の特徴
⇒レガシー入学や寄付者入学を禁止すべきか、自主的にやめるべきか
さ・そうさせるための世論や道徳的な圧力、ケネディが法案提出した情報の公開・・・
ぴ・もっとラディカルに・・・ルールが間違っているのにアメリカ人が慣れてしまっている
第6章 大学入試や議員選挙にくじ引きを取り入れるべきかより
さ・わたしが提案してるのは「適格者の中からの」くじ引き
⇒スタンフォードなら6万人の志願者のうち上位2万人~3万人の中から2000人をくじ引きで
⇒提案理由は運の要素に気づかせ、勝者の奢りや敗者の屈辱感を問い直してしぼませること
⇒二院制の議会でも一方は寄付制限による選挙で、もう一方はくじ引きで選ばれた市民で
⇒くじ引き選挙は能力主義が生み出した学歴偏重に抗うことにもなる
⇒アメリカ連邦議会でもフランス国民議会でも今は大卒者が殆どで極めてアンバランス
ぴ・入試にはマーコヴィッツ提案(略)のような、くじ引きよりよい方法があるのでは
⇒高等教育の機会は基本的な財なのだから機会均等は入試の義務とも主張できるはず
さ・くじ引き提案の別の狙いは能力主義の奢りをしぼませることで両方の仕組みを検討すべき
ぴ・人口の50%が非大卒なのに議会の現状では5%と仮定して、第2院をくじ引きにすれば
50%になるが、ジュリア・カジェ提案のように人口の50%が非大卒であれば候補者の50%を
非大卒にするよう各政党に義務付ける方法もあり、インドの無作為抽出された25%の選挙区では
1950年以降、すべての政党が指定されたカーストや部族(インド社会の下位25%を占める
グループ)の候補者を立てる
さ・政党名簿式の比例代表制ならそのほうがうまくいくが・・・
ぴ・インドは選挙区制で無作為抽出された25%の選挙区(500なら100)では各政党の候補者は
指定カーストや部族(インド社会の下位25%を占めるグループ)に属してなければならず、
誰が当選しても議会の25%はそのグループの議員が占めることになる
さ・議会の社会的構成・学歴構成・階級構成については(性構成同様)公の議論をすべきで、
くじ引きにこだわっているわけではない
ぴ・では大学制度が能力主義の選別装置・格付け装置になっていることについて
さ・能力主義の競争に備えて武装するより仕事の尊厳を肯定することに目を向けるべき
⇒経済や共通善に(仕事や子育てやコミュニティ活動を通じて)貢献している人たちの生活を
もっとよくすることに重点を置くべき
⇒何を仕事の尊厳と考えるかは右派と左派で意見が分かれるだろうが議論すべき
⇒エリートへの反発は自分たちの仕事の価値がないがしろにされているという感覚
⇒これは主流政党が高等教育で不平等を解消しようとしてきたことにも関係しており、
政治的に真剣に受け止める必要があるが容易ではない
⇒トランプやルペンが煽る人種差別・女性蔑視・外国人嫌悪を責める方が簡単だから
⇒アメリカ連邦政府の大学進学支援支出は年間1620億ドルで職業訓練校支援支出は年間11億ドル
⇒政策策定者の学歴偏重偏見・能力主義偏見がここに反映されている
⇒分配正義の不公平だけでなく労働者階級の仕事への敬意が欠如している
⇒これに拍車をかけているのが金融業界の法外な報酬
⇒ヘッジファンドマネージャーの稼ぎが教師や看護師、さらにいえば医師の5000倍でないと
いけない理由がどこにあるのか
⇒不公平どころか社会が暗黙の裡に身近な意味での仕事を集団で侮辱している
⇒学歴偏重こそが最後まで容認されている偏見であり仕事の尊厳は重要
⇒再分配で解決できる不平等だけが問題ではなく、共通善に貴重な貢献を行っている人たちが
認められず尊敬も尊重もされていない問題にも仕事の尊厳を考えることで気づくことになる
第7章 課税、連帯、コミュニティより
ぴ・公的リソースを増やさないと保健医療分野にもアメリカのように民間リソースが入る
⇒調査分野にもグーグルかマイクロソフトかどこか、教育分野では私立大学リソースになり
すべてに大きな不公平が生じ実際に内在的動機が破壊される
⇒必要なのは公平な税制、累進課税、給与格差と所得格差の大幅圧縮だがサンデルの立場は
さ・累進課税や再分配の倫理的土台は帰属意識・成員意識・共同体意識・連帯感
⇒昔から社会主義の政治や哲学は連帯の概念に大きく頼ってきた
⇒そんな特定の概念は哲学の見地からすると間違いだと思うが、進歩主義者や社会民主主義者が
共通性、コミュニティ、アイデンティティという倫理的土台を扱わずに累進課税を論じようと
ずるのも政治の見地からすると間違っていると思う
⇒共通のプロジェクトに参加し互いに依存しながら責任を分かち合っている感覚と確信を
持つためには共通性を感じられる状態や施設を市民社会の中に創り出す必要がある(例示略)
⇒学校だけでなく住まいも職場も買い物も遊び場も金持ちと貧しい人たちは別々で混在施設が
どんどん減っているが、平等な社会を築くプロジェクトには税率改革以前に必要なもの
ぴ・同意するが双方向であり累進課税を重視せず共通性を擁護することはできるのか
さ・確かに相互依存の関係なので待つのではなく同時にやらなくてはならない
第8章 国境、移民、気候変動より
さ・ピケティ著書にある平等社会を促進する共通性の醸成などほんとうに可能なのか?
⇒再分配をおこないグローバルな正義を広げる連邦制の超国家的枠組みを構築し、なおかつ
リソースを分け合う動機としてのアイデンティティを共有することなど・・・
ぴ・標榜しているのは民主社会主義、連邦制の国際社会主義で世界連邦のようなかたちでの
累進課税がよいと思っているが(略)、アメリカなら国家レベルでも可能
⇒ここ数十年で中道左派政権が自由貿易を推し進め国をまたいでの移動を可能にした
⇒それを利用した富の蓄積や課税逃れの国際法規を構築して手助けをする偽善
⇒国際主義が嫌われトランプの方がクリントンより中立に見えた
⇒フランス北東部ではEUの自由貿易や資本の自由移動で製造業が失われルペンへ
⇒アメリカでも中国との競争で失業者が多い地方でトランプへ
⇒国家が法人税や炭素税の国家間差額を輸入の際に徴収する貿易制裁
⇒通常の保護貿易と異なりすべての国の標準を引き上げる狙いで同じ水準になれば消滅する
⇒世界の経済・金融・会計・環境規制の変化の実現が南と北の調和を図ることにもなる
さ・何らかの世界的合意や超国家的組織を通じて法人税の最低税率を定めるやり方は
ぴ・前述の一方的な方策と国連レベルで最低税率を定める戦略を同時に進める必要がある
⇒OECDレベルでは、すでにはじまっているが最低税率15%は富裕国しかメリットがない
⇒OECDは金持ちクラブだが国連では西側ヨーロッパとアメリカを除くすべての国が
昨年の国連総会で租税条約に賛成した
⇒国際協調は必要だが偽善的でなく南側も考えたものにすべきで、事態を前に進めるには
各国による一方的な方策も必要
さ・炭素排出量のクレジット化について
ぴ・アメリカが国内の炭素排出量を削減せずにすませる方便で大きな反発が生まれる
⇒アメリカとヨーロッパの人口割合に対する排出量が多いから
⇒国ごとに割り当てても国家主義者が勝利するだけ
⇒地域代表的な闘争ではなく階級闘争に近いものにすべき
⇒アメリカだろうがヨーロッパだろうが中国だろうが億万長者や巨大多国籍企業に払わせるべき
⇒グローバル税を課し気候変動にさらされている南側諸国へ直接配分する
さ・あなたの国際社会主義の原理から国境を開放しない正当な理由はあるか?
ぴ・問題は同じでレベルごとに見る必要があるが、人の自由な移動には資金の手当てが要る
⇒たとえばEU加盟国の学生はEUのどの国でも学べるが資金となる連邦制の所得税はない
⇒EU加盟国の学生は無料同然だがEU以外の学生からは高額な授業料を徴収している
⇒これらを改善するには費用を賄うための国際的な税制度が必要になる
⇒このように公共サービス財源さえ計画されていれば人の自由な移動を厳しく制限する理由はない
さ・富裕国には貧しい国からの移民を締め出す権利があるのか?
ぴ・地中海を渡りたがる人をなくすため地中海で死なせるのが現在の方針
⇒2000年の地中海文明で今ほど豊かな時代はなかったのだから、はるかによい方法があるはず
⇒現在の方針も平等主義政策の継続をあきらめ共通善にお金を出さなかった好例で、
⇒国内問題を移民や国境開放のせいにしたりする排外主義がのさばるようになったということ
⇒実際にはヨーロッパ人口5億人に対する移民の流入規模は相対的に小さなもの
第9章 左派の未来ー経済とアイデンティティより
さ・移民問題については「左派の未来」につながるから訊いた
⇒左派の政治的弱みは愛国心・共同体意識・帰属意識の独占を右派に許したこと
⇒移民問題は共同体としての国家にどのような倫理的意味があるかという問いを突きつける
⇒満足できる答えを用意できるかどうかに左派の政治の未来がかかっている
⇒たとえば企業が利益をあげた国に税金を払わないのは経済的愛国心の欠如ではないか
⇒健全な意味での市民の誇りは外国人嫌悪や超国家主義の代わりになるのでは
ぴ・トランプやルペンに票が集まるのは移民の流入より貿易競争による製造業での失業
⇒左派が窮しているのは貿易と雇用の問題に取り組んでいないから
⇒アイデンティティや移民の論議で左派に勝ち目はないが重要なのは投票者の論点の中心に
なっている問題に取り組むこと
⇒アメリカの場合、トランプが大多数を獲得している郡の兆候は製造業の雇用喪失であり、
移民流入ではない⇒フランスも同様(具体例は略)
⇒別の論点では小都市住民のマイカーやマイホームへの偏見の眼
⇒この失業・貿易・競争・交通・住宅の問題が中道左派と中道右派から見捨てられているという
感覚につながっていてアイデンティティの問題よりはるかに大きい
⇒左派の問題は経済構造のあり方を問い直してこなかったこと
⇒産業革命以降の政治議論は国家主義・自由主義・社会主義の間で行われてきた
⇒自由主義での競争で繁栄できたが社会コスト損害や環境破壊を伴った
⇒国家主義は民族連帯で地域コミュニティレベルでの地元利益や連帯強化も必要だが、
解決できる問題には制限もあり昔からの権力温存の建前に利用されることもあった
⇒社会主義は新たな経済システムを構築しようとして社会民主主義・脱商品化・累進課税で
大きな成果をあげてきた
⇒民主主義が機能するには、この三本柱で支えることが必要だがソ連の崩壊以降、社会主義の柱
つまり左派の再分配の柱が弱くなっている
サ・わたしの場合はアイデンティティの問題と経済の問題のはっきりした区別はない
⇒空洞化した工業都市の人たちは賃金停滞や失業だけに苦しんでいたのではなく、自分たち
以外の社会や社会を治める人たちから同胞の市民として大切にされていない、認められず、
尊重されず、尊厳がないがしろにされているという感覚に苦しんでいた
ぴ・気候変動の責任という偏見まで持たれており確かにアイデンティティの問題
さ・この偏見、エリートに見下されているという考え方を承認と帰属の政治という意味で
とらえたいと考えているが、表現するには不満を認識し名称を与える必要がある
ぴ・それは同じではないが左派はその種のアイデンティティに訴えかける必要がある
⇒トランプやルペンは反エリートの立場に立った非難
⇒アメリカでは1980年代まではエリートは共和党に投票していたが現在は逆転している
⇒地域別でも最高級地域や最も豊かな場所では同じ現象で現在は民主党に投票している
⇒だからこそトランプの共和党が実現した
⇒民主党がエリート主義と見られている限りアイデンティティで共和党と競っても訴えられない
さ・ルソーの「人間不平等起源論」(略)は正しかったか?
ぴ・私有財産にしたことは問題ではなく、それを際限なく蓄積することが問題という点で
ルソーに賛成
⇒少数の手に財産が集中し権力が集中することが問題であり、富や財産を所有することは
お金の問題ではなく交渉力の問題になる
⇒所有するものがなく負債しかない場合はどんな賃金でも吞まなければならないが、
10万~30万ドル持っていれば(億万長者からはどちらもゼロ同然だが)家が買え(ニューヨークや
パリでは無理だが国内で買える場所はある)小さな事業をはじめられ引き受ける仕事を少し
選り好みできるようになる
⇒これはまさに交渉する権限の問題
さ・平等とは何か、なぜ重要かを考えるため所得と富、権限や発言権、尊厳や承認まで話した
⇒ルソーと同じように経済、哲学、政治理論を横断することになったが議論が今後も続くことを・・・
・・・・・・
さてさて・・・
