ミリタリーグッズ

2023年08月15日

日本はすでに戦時下にある

台風7号が大阪湾を北上中ですが、8月15日なので・・・

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日本はすでに戦時下にある・・・とゆー本のご紹介であります・・・



著者紹介と奥付

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著者は東京大学から陸上自衛隊に入り外務省にも出向→ドイツ連邦軍大学留学→駐屯地司令
→師団長→防衛研究所や陸幕を経て方面総監で退職された、陸自ではエリート中のエリート、
さらにハーバード大学などでも研究されてますから日本では数少ない、現場も知り尽くした
「軍事専門家」であることは間違いないでしょう

その著者が素人にも分かるよう書かれた日本と世界の最新情勢ですが、2021年12月現在なので、
その直後(2022年2月24日)のロシアによるウクライナ侵攻などには触れられてません


例によって目次のみの紹介

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著者の政治的な主張については果たしてそうなの?と思った部分もありましたが事実として、
あるいは事実の可能性が高いとして記載されている部分は、その根拠となる文献やデータ、
実経験が示されてて参考になりましたので、そういった部分を中心にメモしてみました


まえがきより
・目にみえない戦いは進行している
→キネティック戦争(火が噴く戦争)をしていないだけ

・現代は全領域戦(All-Domain Warfare)の時代
→非軍事では情報、サイバー、政治、経済、金融、外交、メディア、歴史など
→軍事では陸海空、宇宙、サイバー、電磁波など

・本書では戦いと戦争とは明確に区別している
→戦いは「競争者やライバル間の悪意ある仮借なき紛争」で非軍事的手段も含む
→戦争は「2ヶ国以上の軍事紛争で軍事的手段を使った紛争」に限定している

・中国中央統一戦線工作部の戦い
→オーストラリアは主要ターゲットだったが新型コロナで流れが変わった
→日本でもあらゆる分野に浸透している
→中国の超限戦に対して日本は無防備


第一章より
全領域戦について(略)
→特徴は全領域(ドメイン)で全手段、平時・戦時を問わず特に平時を重視すること

・平時と戦時の概念の変化
→米陸軍の作戦構想では競争から危機を経て紛争に
→米空軍
の作戦構想では協力から競争を経て武力紛争に
→平時とは平和なときではなく情報戦、宇宙戦、サイバー戦などでの競争の期間

中国の超限戦
→目的達成には制限を加えず手段を選ばない→起源はマキャベリの思想
→戦争以外の戦争で戦争に勝ち戦場以外の戦場で勝利を奪い取る→戦わずして勝つ孫子の兵法
→軍隊は勝利できる態勢を作り危機をコントロールし戦争を抑止して戦わずして勝つ(習近平)


第二章より

・中国の中央統一戦線工作部
→活動資金は2019年で26億ドルを超え外交部の予算を上回るとも
→活動は台湾、米国、日本、オーストラリア、ニュージーランド、カナダで最も顕著
→日本では政財界エリート、日中友好団体、孔子学院などに・・・
→琉球王朝末裔の中国招待、基地周辺の不動産取得、沖縄との姉妹都市提携奨励なども・・・

・各国のスパイ(略)


第三章より
・1995年の地下鉄サリン事件
→死者14人、負傷者6300人
→自分も霞ヶ関駅での被害者で自衛隊中央病院に入院した
→隣のベッドには対化学兵器用防護具を予算要求していた同僚幹部が入院しており、
要求の妥当性を当人が被害者となって証明したかたちになった

・2004年の鳥インフルエンザ対応(京都府丹波市)
→当時は第三師団の副師団長で災害派遣の現場指揮官になった
→マニュアル作りから始め、隊員のタミフル服用、簡易防護服、ゴーグルで対応したが、
戦いは福島第一原発事故や今回の新型コロナに対する災害派遣へと継続している

・2019年からの新型コロナウィルス対応
→「流出した生物兵器」説には明白な事実がなかったので無理があると否定している
→2021年の有力研究では発生源は武漢海鮮市場の(宿主となる)生きたタヌキ売場
(コウモリからタヌキへのいずれかの段階でヒト感染するように変異した可能性が高い)
→ポジショントークが多い中で16のアメリカ情報機関が出した冷静な結論(可能性はあるが
明白な事実がなかった)を重視すべき
WHO報告書でも中国が情報やデータを公開しないため疑義が残るのだから公開すべき


第四章より
・サイバー戦
→ランサムウェア攻撃の実例(略)→重要インフラを停止できる→9.11にも匹敵する
→中国、北朝鮮、ロシアによる攻撃の実例(略)→フランスも攻撃していた
→サイバー空間の国際会議には他国からは軍関係者や情報関係者が多いが日本からは少ない
→自衛隊サイバー防衛隊は専守防衛と縦割り行政で自衛隊以外への攻撃に出る幕はない
→サイバー軍の総合力でも
サイバー戦能力でも日本は下位で安全保障省もない
→自衛隊は国内法で日常の情報収集さえできずサイバー攻撃されても敵に侵入もできない
→テンセントはテスラ車ハッキングに成功したと発表しているが、まだ米軍には困難か・・・


第五章より
・SNSは影響工作の主戦場
→偽情報や誤情報の大量拡散によるコントロール
→2016大統領選へのロシアの影響工作は事実で実際に成功している
→2020大統領選ではロシアがバイデン攻撃、イランがトランプ攻撃を行った
(Qアノンでは影の政府D.Sと戦う救世主はプーチンとトランプになっている)
→中国は攻撃を検討したが実施しなかったと報告書にはあるが分断を深める工作はあった
・新型コロナをめぐる影響工作
→米軍関与説、都市封鎖した中国に感謝説→逆に米国で怒りを買い強固な対中戦略へ
→EUの報告書ではロシアと中国から様々な根拠のない影響工作があったとしている

・偽情報とファクトチェック
→人は見たいものを見て、聞きたいものを聞き、読みたいものを読む
→自分の先入観に合致する情報を選択的に収集して拡散する
→ネットでは真実に基づく書き込みより誤情報や偽情報に基づく書き込みのほうが注目され、
はるかに広く速く拡散する(ボットではなく人間が拡散していることが証明されている)
→アテンション・エコノミー(注目経済圏)、訴訟、アルゴリズムの弊害修正などでの対処(略)


第六章より
・宇宙戦(略)
→スペースデブリも大きく関係する・・・


第七章より
・電磁波戦
→通信、レーダー、ミサイル誘導、偵察衛星、レーザーなど現代戦に電磁波は不可欠
→大きく電子攻撃、電子防御、電子戦支援に分けられる(略)
→2017年からのハバナ症候群はGRUによる指向性マイクロ波兵器の可能性が高い
→2020年の中印衝突でも8月29日に解放軍が使用して撃退したとの講演発言があった
(ロンドンタイムズが報道)
(インド政府は何故か否定、中国政府はノーコメント)
→頭痛、吐き気、記憶障害、倦怠感などを引き起こすが外傷がないのが特徴
→指向性エネルギー兵器市場は2027年までには大幅な拡大が見込まれている

・電磁パルス(EMP)攻撃
→北朝鮮がミサイル恫喝の次の段階で日本の高高度で使用する可能性はある
(日本への直接ミサイル攻撃では米軍に報復攻撃される恐れがあるため)
→すでにスーパーEMP弾の開発を完了している
→東京上空96kmで使用すれば影響範囲は半径1080kmで北海道の北半分と南西諸島を除く、
日本全域と韓国の西半分に及ぶが、北朝鮮には影響しない

→中国による台湾と米空母打撃群へのEMP攻撃も戦術上は当然(中国も
開発を完了している)
→台湾、フィリピン、グアムの中央海域上空185kmで使用すれば影響範囲は半径1500kmで
台湾、フィリピン、グアムの全域をカバーするが、中国本土には影響しない
→この攻撃は米空母打撃群の正確な位置が特定できない場合にも有効で、中国やロシアは
「EMPは高高度での核爆発で人体に有害な影響はないので核攻撃ではない」と主張している


第八章より
・CIA分析官レイ・クラインの方程式
国力=(人口+領土+経済力+軍事力)×(国家戦略目標+国家意思)
→重要なのは
国家戦略目標と国家意思という無形の要素だが日本に欠けているもの
→中国の国力が強いのは世界一になるという国家戦略目標と国家意思を明らかにしているから
→プーチン大統領の断固とした決断はロシアを日本以上に大きく見せている

・国際政治学者ジョセフ・ナイのソフトパワー理論を加味した著者の修正方程式
国力=(人口+領土+経済力+軍事力+政治力+科学技術+教育+文化)×(国家戦略目標+国家意思)
→日本の国力を低下させたい勢力は、この各要素をターゲットに工作を実施している
→日本の国力低下のもっとも重要な理由は国家戦略がなかったこと
→米国の安全保障、防衛、軍事の国家戦略の最初に記述されているのが「国益」
→安全保障は国益を守ることが中核テーマだが、国家戦略は政治の責任分野

・日本の極端な軍事アレルギー
→安全保障や軍事を抜きに国際政治、外交、経済、科学技術などを語ることはできない
→日本では極端な軍事アレルギー反応があらゆる分野にある
→これを確実にしたのはGHQの戦争責任情報計画と軍国主義排除のための民主化改革
→改革を全面的に否定するわけではないが、これで確実に弱い国家になった

・安全保障、日本国憲法、日本学術会議、大学、情報管理、スパイ・・・(略)

・失われた30年の責任の相当部分は三流の政治にある
→三流の政治を支える一流の官僚も一流の経済もなくなった現在では一流の政治しかない

・公明党、専守防衛、自衛隊違憲論、憲法改正、防衛費増額・・・(略)

・新たな国家安全保障戦略への提言
→明確な脅威認識を示すべき(北朝鮮の記述はあるが中国の明確な記述がない)
→全領域戦について記述すべき(サイバー戦と宇宙戦の記述はあるが他はない)
→民主主義国家は全領域戦には不適な体制だが、無視するわけにはいかない
→すでに全領域戦の戦時下にあり、対処しなければあらゆる領域が侵略される


あとがきより
・オーストラリアの例
→クライブ・ハミルトンの「目に見えぬ侵略」発刊→中国工作阻止の活発化→新型コロナ発生
→徹底調査発言から中国の威圧→徹底して対抗→米英との軍事同盟へ

・台湾の例
→2019年1月に習近平主席が演説した五つの対台湾工作の具体的な内容
①解放軍による軍事的圧力→頻繁な活動による疲弊戦と心理戦
②台湾の友好国や国際機関からの隔離
→友好国に圧力をかけ国交断絶させ、国際機関への加盟を拒否させる
③浸透工作と政権転覆→メディア浸透や国民党系企業の優遇、民主進歩党系企業の冷遇など
④統一戦線工作→22の親中組織、親中政党(国民党)はじめ、あらゆる組織への人脈の拡大
⑤サイバー戦→最近2年間で14億回の攻撃、1日500万件の攻撃やスキャン、偽情報の拡散

・中国の超限戦は邪道だが厳しい国際社会を生き延びるひとつの戦略
→あらゆる領域が戦場となり境界がなくなる点は私が主張する全領域戦と合致する
→日本には超限戦に匹敵するようなしたたかな国家戦略がない

・日本と中国の(国家戦略の)ギャップを認識し、全領域戦で戦いを仕かける相手に対して
いかに対処するかを真剣に検討すべき・・・


といった感じでしたが、はてさてどうなんでしょう・・・


つい最近のニュースでも日本のサイバー対策が不十分なのは確実なようですが・・・

安全保障のあり方について大多数の国民は、関心も基本的知識もなく政府におまかせ、
その政府は、その場しのぎ的な政策ばかりで
国家戦略目標も国家意思も国民に説明もせず、
与党は身内と忖度官僚で周りを固め自己保身に奔走してるし、野党は野党で分裂と迎合を
繰り返しているうちに、ポピュリスト政党や自己目的の少数政党ばかりが目立ってきて、
まだ二大政党があった55年体制のほうがマシだったかも、とさえ思える政治状況・・・

著者が言うように、中国を安全保障上の脅威と明確にした国家戦略にすべきなのか、
はたまた軍事力以外での全方位外交を前提にした国家戦略にすべきなのか・・・
両者のメリットとデメリットを考えた(中途半端ではなく)中庸の国家戦略はあるのか・・・
いずれにしても明確な
国家戦略目標も国家意思もないままで済まないのは確かでしょう

大多数の国民が基本的な安全保障に関する知識を身につけ、事実に基づいた自分なりの判断で、
国政選挙に臨むことによって明確な
国家戦略目標や国家意思が形成されるのが理想なんですが、
少なくとも偽情報や誤情報に踊らされないよう、各国の政府発表を含む様々なソースから、
自分でファクトチェックをすることが、まずは重要ですね

まあ、当サイトのファクトチェックは、じつにてきとーなんですが・・・




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2023年07月28日

ジーナの賭け・・・

ええ・・・

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本日、
三鷹の森ジブリ美術館から無事に届きました



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けっこう大きなサイズであります



そう・・・

P7283934 (1)

壁窓「ジーナの賭け」であります・・・




じゃーん

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もちろん、窓から見えるアドリア海の上空には・・・

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下品な紅に塗った飛行艇を駆る豚の姿が・・・いいですねえ・・・



ま、当面は・・・

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居間の窓にして眺め、いずれは窓のないトイレの窓にするつもり・・・
そう、窓の外に真夏のアドリア海を眺めながら、毎朝の用を足せますので・・・




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2023年07月25日

地政学で読みとく「これからの世界」

ええ、

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地政学で読みとく「これからの世界」とゆー本のご紹介であります



監修者紹介と奥付

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例によって目次のみ・・・

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説明は大まかでしたが素人には分かりやすく、問題の全容が俯瞰できる本でした
ただし、図解でよくわかる、ビジュアルで身につく「大人の教養」とゆー構成ですから、
図解なしビジュアルなしのてきとーな読後メモでは、よくわからず身につくこともないので、
少しでも興味を持たれた方には本書のご熟読をオススメします

以下、図解なし
ビジュアルなしのてきとーな読後メモであります
(読んでてホントにそうなの?と思った部分もメモしてます)


序章より
・地政学はその国の地理的条件を切り口にして国家間パワーゲームの様相を読み解くもの
→政治・経済・社会は時代で変わるが地理はいつの時代も変わらない
→各国のおかれた地理的条件に政治・経済・軍事といった諸事情を含めて検討すれば、
より明快な理解が可能になる

・地政学の歴史的展開
→最初の提唱者はスウェーデンの政治学者チューレンで1916年刊行の「生活形態としての国家」
に登場、英語ではgeopoliticsになり地理の政治学
→ナチス・ドイツのヨーロッパ侵攻や、日本の大東亜共栄圏構想の理論的根拠になったとされ、
戦後は世界でタブー視されて日本でもGHQが研究を禁止して関連書籍も抹消されたものの、
東西冷戦期に紛争分析のための理論として注目され、現在では国際情勢一般にも応用されている
(ちなみにこちらの本では研究はイギリス・アメリカが発祥でドイツ→日本となってます)

・地政学の重要ワード
・シーパワーとランドパワー(略)
→両者の対立構造が生まれやすい
・ハートランド(中央部)とリムランド(その周縁部)
ハートランドがリムランドに進出して衝突するケースが多い
→朝鮮半島、ベトナム、中央アジア、ウクライナなど
・シーレーンとチョークポイント(略)
・内海(閉鎖海)→ひとつの国の支配下に置かれた状態の海
(アメリカにとってのメキシコ湾やカリブ海、ローマ帝国にとっての地中海、中国にとっての
南シナ海などで、得ることで防衛コストが抑えられ余剰戦力を別の海域へ向けられる)
・緩衝地帯、現代戦におけるエアパワー(制空権)などなど・・・


1章「話題の国際情勢と地政学」より
・ウクライナ侵攻
キエフ公国→モンゴルの侵攻→モスクワ大公国→ロシア→ソ連崩壊→独立→親欧米派の新政権
→ロシアとの対立→クリミア半島、ドネツク州、ルガンスク州への侵攻→ミンスク合意
→ゼレンスキー政権による不履行とNATO加盟への動き→全面侵攻→逆にNATO拡大へ

・北方領土問題
→不凍港を得るためのロシアの南下政策→日露戦争→第二次世界大戦下での侵攻と実効支配
→平和条約で
権利を放棄したのは千島列島とサハリンの一部だが四島返還で対立する理由
①軍事的理由→日米地位協定による米軍基地建設の脅威
②経済的理由→温暖化による北極海航路の独占権益を守る必要性
③国内的理由→国内少数民族の独立問題や領土問題が加速する可能性
→さらに北海道を領土にすればオホーツク海をロシアの内海にできる
→なのでロシアは北海道すべての権利を有するとの主張もロシア国内にある

・アメリカと中国の新冷戦
→中国は2010年にGDPで日本を抜き2位になり2013年に一帯一路の世界秩序構想を発表
→アメリカは地政学上のバランス・オブ・パワー(勢力均衡)戦略で対抗している
(冷戦時代はナンバー2のソ連を抑えるためナンバー3の日本と協力、日本が
ナンバー2になると
中国との関係を強めて日本を牽制していた→これがバランス・オブ・パワー戦略)
→2018年には貿易戦争になり新冷戦という言葉が使われる
→QUAD(2006年に安倍首相が提唱)などシーパワーの結集で中国を牽制

・中国による経済圏「一帯一路」構想
中央アジア経由の道路・鉄道整備などによる「一帯」と、南シナ海→インド洋→アフリカ東岸→
紅海経由の港湾整備などによる「一路」→どちらにも借金の罠があり批判もあるが達成すれば、
→経済力で支配するシーパワーとランドパワーを備えた世界史上初の国になる

・中国・台湾問題
→台湾が自国領土なら第一列島線内を内海にできる
→将来的には第二列島線内にも影響を及ぼしたい
→歴史的背景とともに地政学的な理由がある
→台湾有事で米軍が出動するなら日本の基地から


2章「アジアの地政学」より
(アジア情勢は複雑に思えるが地政学で考えると大局が見やすくなる)

・アジアの中心は多様な民族を含む14億人の中国、その周辺で局面が展開するというイメージ
→内陸エリアの北はモンゴルとロシア、西は
旧ソ連衛星国で中東イスラム諸国との緩衝地帯
→海洋エリアの南はインドと東南アジア諸国、東は緩衝地帯の北朝鮮を挟み韓国、台湾と日本
→東南アジア諸国は中華・インド・イスラムの文化圏
→といった地政上の条件下にある国が中国で、
その周辺で局面が展開している

・中国の海洋進出
→第二列島線で太平洋をアメリカと二分できるが、まだ第一列島線さえ確保できていない
第一列島線の重要拠点である台湾・南沙・西沙・尖閣は何としても実効支配したい
→建国100年の2049年までにアメリカと同等の海軍力を有することを目標にしている

・南シナ海九段線内側の制海権確保
→ベトナム、フィリピン、マレーシア、ブルネイ、台湾を排して実効支配しようとしている

・中国とロシア
→4000kmの国境問題は2000年代半ばで解決→エネルギー需給でwinwinの関係になった
→ロシア経済が崩壊しないのは中国の影響が大きい

・新彊ウイグル問題
→ウイグル族はトルコ系民族で言語も宗教も異なる
→18世紀に清朝が征服して以来ずっと支配している
→インド・ロシアとの緩衝地帯で一帯一路上でもあり地政上重要
→他の少数民族の独立運動にも繋がるため力で抑えている

・中国・インド・パキスタンの抗争(3国とも核保有国)
→カシミール地方は3国が実効支配する地域が重なる係争地でアジアの火薬庫
→18世紀まで独立国だったチベットは清朝→(英領)インド→中国に征服されて現在に至る
→緩衝地帯はなくなりヒマラヤ山脈を挟み中印が直接対峙している

・中国の真珠の首飾り戦略(インド洋での経済支援とシーレーン整備拡充によるインド包囲)
→ミャンマー、バングラデシュ、スリランカ、パキスタン、モルディブでの港湾建設など
・インドのダイヤのネックレス戦略(
インド洋沿岸各国との連携による真珠の首飾り外側の包囲)
→東南アジア諸国インド洋沿岸諸国との連携、日米豪とのQUADだが軍事面は進んでいない
→ただしインドは全方位外交であり中国は最大の貿易相手国でもある

・冷戦後の北朝鮮
→東西の緩衝地帯だったがソ連を失いアメリカを仮想敵とした核ミサイルを開発
→軍事支援を続ける中国としても手に余る状態だが緩衝地帯の消滅は困る
→両者の緊張を高めて外交的譲歩を引き出す瀬戸際外交がいつまで続くか

・中豪関係
→シーパワーのオーストラリアは1970年代から白豪主義を見直しアジア中心で経済発展した
→2014年には包括的・戦略的パートナーシップで中国と最大の蜜月関係になった
→2016年ごろからの中国の南太平洋島嶼国との関係強化や中国企業の内政干渉疑惑
→2020年のコロナ感染源調査をめぐる対立で関係がさらに悪化、原潜配備やQUADへ

・地政学でひもとく中国史
→中国歴代王朝は東夷・西戎・南蛮・北狄に対抗するためランドパワーを高めていった
→元と明はシーパワーも求めたが、元は日本侵攻での撤退や東南アジアでの風土病により、
明は北でのモンゴル勢力回復と南での倭寇(北虜南倭)により、海洋進出が失敗に終わった
→近代以降も海洋進出には消極的だったが、ヨーロッパではシーパワーの国が力をつけて
アジアに進出し、清はその標的になった
→1840年のアヘン戦争、1856年のアロー戦争、1894年の日清戦争でシーパワーの国に敗北
→経済成長で軍事力をシーパワーに向けられるようになり21世紀からは積極的に海洋進出
→これまでシーパワーを得られずにシーパワーの国に蹂躙されてきた歴史がある・・・


3章「アメリカの地政学」より
・南北アメリカ大陸はユーラシア大陸から隔絶した「大きな島」
→防衛上の懸案事項があまりなかった(2度の世界大戦でもノーダメージだった)
→軍事的・経済的にアメリカの脅威になる国が周辺に存在しない
→この地理的条件により世界各地に軍事拠点を設けシーパワーを拡大してきた

・世界の警察官からの引退
→アフガニスタン侵攻やイラク侵攻などの失敗、リーマンショック、財政悪化・・・
→2013年にオバマが宣言し、トランプ、バイデンも引き継いだ
→結果はタリバンの復活、南シナ海の現状変更、台湾への強硬姿勢、ウクライナ侵攻など・・・

・アメリカと中東との関係
→中東はランドパワーとシーパワーが激突するリムランドで石油利権がある
→1948年からのイスラエル支援→イラン革命によるイラク支援→湾岸戦争→
アフガニスタン侵攻や
イラク侵攻などで大きく関わってきた
→2000年からのシェール革命により世界一の原油産出国になった
→中東で軍事力を維持する必要がなくなり撤退、その後は中国が台頭している

・中南米は2001年の同時多発テロ対応から手薄に、2017年のトランプ政権で左派政権が増え、
そこに中国が関係を深めてアメリカの存在感が薄くなっている
→キューバも
2017年のトランプ政権で関係悪化、コロナ禍で主力の観光業が減り経済危機に
→最大の貿易相手国が中国になっている

・ファイブアイズ・クアッド・アイペフ・TPP・ブルードットネットワーク・オーカス(略)

・地政学でひもとくアメリカ史
→1776年に東部13州300万人からスタート→ランドパワーによる武力制圧で西部へ進出
→1823年のモンロー主義には中南米カリブ海も含む(ヨーロッパには干渉させない)
→1846年のメキシコとの米墨戦争でテキサスとカリフォルニアを獲得→天然資源の宝庫
→1867年にロシアからアラスカを格安で購入、これで未開地は消滅しシーパワー獲得へ
→1898年のスペインとの米西戦争でキューバを植民地化→
中南米とカリブ海を影響下に
→スペインからはフィリピンやグアムも獲得、ハワイや西サモアも併合し大平洋にも進出
→1914年にはチョークポイントのパナマ運河を完成させ租借権を獲得(返還は1999年)
→第二次世界大戦で日本に勝利、メキシコ湾カリブ海に続き太平洋も自国の内海にした


4章「ヨーロッパ・ロシアの地政学」より
・ユーラシア大陸は世界島でありヨーロッパは三方を海に囲まれた半島
→半島は海に出やすいが陸側から攻められると逃げ場がない→最大の脅威はロシア
→半島の付根部分(バルト海と黒海を結ぶ線)で衝突しやすい→ヨーロッパの断層線
→冷戦時代には緩衝地帯として翻弄され、2022年にはウクライナ侵攻

・ロシアは14の国と北極海に囲まれておりシーパワーを求めて南下することが基本戦略

・EU拡大(発足時の12から27へ、ユーロ導入は19)の問題点
→各国の経済格差が大きすぎる(労働力の移動などによる混乱)
→難民・移民の受け入れによるキリスト教という共通価値観の揺らぎなど
→反EU、反移民、反グローバルの声が高まっている
→イギリスは地政学上の利点を活かしたオフショア・バランシング外交を展開
→2020年にEU離脱(ブレグジット)
→2009年のギリシャ危機でEUが切り捨てなかったのは地政学上の理由から

・ロシアの資源戦略
→天然ガスのパイプラインを使った販売方法で、何かあればすぐに圧力をかけられる
→ドイツはじめヨーロッパは脱炭素政策で依存が高まっていた

・北極海の争奪戦
→温暖化により地政学の理論が変化する局面になる可能性が高い
→北極海航路の出現と原油・天然ガス・レアメタルなど資源採掘の実現
→ロシアは北極海沿いに24000km以上の海岸線を持ち領土の1/3は北極圏内
→航路や資源の開発を進められるが、北側の国境が外敵に晒されることにもなる
→今後は北方艦隊も増強せねばならない
→北極海ではアメリカや中国の動きも目立ってきている

・地政学でひもとくイギリス史
→ケルト人と後から来たゲルマン系アングロ・サクソン人が同化した辺境の島国だった
→陸上の防衛力が最小限で済んだため軍事費を海軍力や植民地経営にまわすことができた
→16世紀半ばから海洋進出を開始、強大なシーパワーで世界の1/4を支配していた
→スペイン、オランダ、フランスに勝利し北アメリカやインドの海岸都市などを植民地化
→立憲王政で国内政治が安定すると産業革命が起こり、さらに繁栄の時代に
→1783年のアメリカ独立でインド内部、ビルマ、マレー半島、マラッカ海峡、中国(清王朝)へ
→1875年にスエズ運河の権利を買収しアフリカや太平洋の島嶼部にまで進出、1901年には
オーストラリアを自治領に、1910年には南アフリカ連邦を成立・・・
→ドーヴァー海峡、ホルムズ海峡、マラッカ海峡、スエズ運河といったチョークポイントを抑え、
最強のシーパワー国になった→パックス・ブリタニカ→第一次世界大戦で疲弊した

・地政学でひもとくロシア史
→9世紀末にノルマン人がスラブ人を征服したキエフ大公国がルーツ
→13世紀にモンゴル帝国に征服されたが1480年にモスクワ大公国が独立しロシアの歴史へ
→1613年のロマノフ王朝誕生から周辺国を征服して世界最大のランドパワー国に
→1682年からの南下政策でオスマン帝国やスウェーデンと戦い黒海・バルト海を抑える
→18世紀後半にはクリミア半島のセヴァストポリに黒海艦隊の軍港
→19世紀後半には沿海州のウラジオストックに太平洋艦隊の軍港
→19世紀から20世紀にかけてイギリスが干渉するが南下政策は継続し東アジアへ
→ウクライナ侵攻により緩衝地帯を維持しようとしているがシーパワーも求め続けている


5章「中東の地政学」より
・トルコの主要領土アナトリア半島はアジア・ヨーロッパ・ロシアの接点
→ボスポラス海峡とダーダネルス海峡はシーパワーのチョークポイント
→現在のトルコは欧米と、犬猿だったロシアとを天秤にかける巧みな外交をしている

・イランはアラブ人ではなくペルシャ人の国で、その誇りが高い
→1979年のイスラム革命以降、各国のシーア派を支援して革命の輸出をしている
→ペルシャ湾に面し中東と中央アジアの接点で中国やロシアも重視

・親米スンニ派のサウジアラビア(アラブ人が多数派)と反米シーア派のイランとの対立
→レバノンではスンニ派政権をサウジが支援、反体制のヒズボラをイランが支援
→シリアではアサド政権をイランが支援、反体制派をサウジが支援

・パレスチナ紛争
→イスラエルは周囲を全てアラブ人国家に囲まれた脆弱土地で石油も独自水源もない
→対外膨張なしには存続が難しく、これはパレスチナ人にとっては災難でしかない
→イスラエル、親米アラブとイラン、シーア派とスンニ派が対立している構造

・シリア内戦
アサド家はシーア派の一派でシリアの多数派であるスンニ派を抑圧
→アサド政権、反体制派、IS、クルド人が争い疲弊している
→アメリカの反体制派支援からの撤退、地中海の海軍基地を守るロシアの政権支援、
政権と同じシーア派のイランの支援により、内戦が続いてもアサド政権は倒れない

・アフガニスタンはハートランドとリムランドの接点
→ロシアとイギリス、ソ連とアメリカの代理戦争が続いた
→ランドパワーの大国とシーパワーの大国の争いの舞台

・クルド語を話しスンニ派が多いクルド人は2500万~3000万人
→トルコ、シリア、イラン、イラクなどにまたがるクルディスタンに暮らす民族
→国を持たない世界最大の民族と呼ばれている
→イギリス、フランス、トルコの思惑で分断され、各国での弾圧が続くが独立運動も続く
→この状況が中東不安定化の要因ともなっている

・地政学でひもとくトルコ史
→1299年にトルコ民族により建国されたオスマン帝国(オスマン・トルコ)がルーツ
→1453年にビザンツ帝国(東ローマ帝国)を滅ぼし15世紀末にはアナトリア地方とバルカン半島、
16世紀前半にはエジプトとアラビア半島西岸、16世紀半ばには黒海、地中海、紅海、アラビア海、
ペルシャ湾の制海権を掌握、古代ローマ帝国領土の3/4を支配する大帝国になった
→大航海時代からヨーロッパ列強の海洋進出により東西貿易は地中海を離れたので徐々に衰退、
19世紀末にはロシアとイギリスに蹂躙され第一次世界大戦では同盟国側は連合国側に敗北
→国と民族は分断され1922年の革命でオスマン帝国は滅亡し現在のトルコ共和国になった
→オスマン帝国の支配下で安定していた中東は紛争が多発する火薬庫になった


6章「日本の地政学」より
・朝鮮半島から九州本土までは130km以上も離れており本格的な侵略はなかった
→中国から見れば日本列島が蓋をしており宗谷、津軽、対馬、大隅の海峡はチョークポイント
→大航海時代以降の覇権はシーパワー国家が制したが、今の日本は覇権を狙うレベルにはない
→それでも環太平洋やアジア各国へのシーレーンで世界をリードするハブ国家にはなり得る

・尖閣諸島は中国で需要が増える魚介類の宝庫で石油や天然ガスの埋蔵も推測されている
→軍事拠点としても重要で中国に編入すればアメリカに太平洋への進出を邪魔されない
→なので実効支配されてしまえば以後の排除は困難

・沖縄の米軍基地はアメリカの戦略に極めて重要で最高レベルの装備・軍備を有している
→中国の大平洋進出を牽制するキーポイントにあり、
ICBMならロシア、中東、オセアニア
まで、全て
射程内に収めることができる
→中距離ミサイルでも中国・インド・ロシアとオーストラリアの北半分までを射程内に収める
→現在アメリカは中距離ミサイルをもっておらず、中国は1250発以上をもっている
→2023年には開発配備予定だが、沖縄を含む第一列島線沿いへの配備が位置的に最も適切
→沖縄への中距離ミサイル配備の要請が近い将来にアメリカからあるかもしれない

・韓国と北朝鮮の反日政策(略)

・核シェアリング
→ドイツ・イタリア・オランダ・ベルギー・トルコには航空機搭載型B61タイプの核爆弾
(数は非公表だが100発ほどとされている)が存在する
→各国にシェアリングされた核は米軍が運用するもので各国には使用権も拒否権もない
→日本でも安倍元首相の核共有発言があったが岸田首相は認められないとしている
→シーパワーやランドパワーではなくニュークリアパワー(核兵器)を持った大国アメリカと
大国ソ連との冷戦は終わり両国とも削減したが、ウクライナ侵攻により見直しされるかも・・・

・地政学でひもとく日本史
→近隣に中国という大国が存在するが海流や季節風で独立を保ってきた
→古代4世紀後半から朝鮮半島に介入しシーパワーを発揮していた
→百済と友好関係にあり百済が唐や新羅に圧迫された663年に大軍を送り支援したが敗北、
以後は半島への影響力を失い海外進出はなかった
→1592年と1597年に李氏に明征服の案内を拒否された豊臣秀吉が朝鮮出兵したが敗北
→その後250年の江戸時代は鎖国でランドパワーだったが、明治以降に再び海洋進出へ
→1894年、朝鮮半島の支配権をめぐる日清戦争に勝利
→1904年、朝鮮半島と南満州の支配権をめぐる日露戦争にシーパワー同士の日英同盟で勝利
→1914年、日英同盟で第一次世界大戦で勝利しドイツ領の青島や南洋諸島に侵攻し国力増大
→世界恐慌による経済危機を大陸進出で乗り越えようと1932年に満州国を建国
→1937年からは中国との全面戦争に突入し資源確保と米英の中国支援遮断のためインドシナ半島へ
→それでABCD包囲網により石油などの輸入を封鎖され、1941年12月に太平洋戦争へ突入
→戦争初期はシーパワーが最大限に発揮され、東はギルバート諸島、西はビルマ(ミャンマー)、
南はガダルカナル島、北はアッツ島まで、日本史上で最大の領域を支配下に置いた
(大東亜共栄圏は大義名分で実態は植民地化だった)
→1942年6月ミッドウェー海戦での大敗後は防戦一方になり、1945年8月に敗戦
→戦後の東西冷戦では西側アメリカとの同盟により東側への防波堤となった
→冷戦終了後もアメリカのアジア戦略の重要拠点として中国やロシアににらみを利かせている

はてさて、今後の世界はどうなるんでしょうね・・・



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2023年07月07日

狙うて候・・・

前回記事の続きとゆーか全く異なる世界とゆーか、狙うて候・・・


P6283914

銃豪 
村田経芳の生涯・・・剣豪伝ならぬ銃豪伝であります



奥付

P6283918

20年前の新刊で、著者は前回記事と同じ東郷 隆・・・




P6283917

雑誌連載は28年前からで、著者は本作で第23回新田次郎賞を受賞されてます



例によって目次のご紹介

P6283916

600頁を超える分厚い単行本でしたが、面白くて二晩で完読しました

会話文が全て(幕末明治の)薩摩弁でしたが定吉七番シリーズの大阪弁と同じく違和感が殆どなく、
読後しばらくは、頭の中が完全に薩摩弁になってました

わたくしも村田経芳が国産初の近代軍用小銃「村田銃」を作った人物という程度は知ってましたが、
欧州にも知られた射撃の名手だったとか、薩英戦争、戊辰戦争、西南戦争に従軍し、指揮官、
時には狙撃手として常に最前線に
いたとか、晩年は銃に限らず弓術からビリヤードまで研究、
ともかく「遠方から物を正確に当てること」への欲求が強かった人だったとか・・・
全く知らなかった話、幕末明治の興味深い話も満載で、さすが博識な著者の大作であります
 

とても濃い内容で銃や射撃に関するエピソードだけでも数多く、概要紹介などはムリなので、
表紙カバー裏にあった村田
経芳の略歴のみご紹介・・・

P6283915

この生涯を600頁以上も飽きさせず、一気に読ませる筆力はさすがでした

主人公がどんな立場の人に対しても純粋な技術者として公平に接し、西郷隆盛が失脚しても、
政治が大きく
変わっても、当初からの信念(国産小銃による統一)を貫いて達成するというのは、
幕末明治の大変革期とはいいながら、やはり凄い人物だと思いました


欧米世界では薬莢や後込め式など新しい技術が次々と開発され、余剰中古から最新式まで、
最大の銃器市場と
なっていた幕末から明治初期の日本で、自分を取り巻く状況も激変する中、
あらゆる小銃を試して研究を続けたというのが、
他の維新立役者と異質なところなんですが、
やはり同じ明治人の気骨ともゆーべきなのか・・・
さてさて、今の日本の技術者はどうなんでしょうね・・・



せっかくなので、以下は村田銃と有坂銃に関する読後メモです

・村田銃の当初の生産量は明治13年(1880)制式の13年式単発村田銃が約6万挺、生産効率や
着剣重量などを改良した18年式が約8万挺、騎兵用短小銃が約1万挺で、年間生産3万挺を達成、
明治21年(1888)頃には屯田兵や輜重兵にまで最新の18年式が行き渡り、この時点でようやく
国産小銃による近代軍隊が日本でも実現した
(海外ではこれらを総称してムラタ・ライフルと呼ばれている)

・13年式は明治16年(1883)に来日したドイツの将軍から最優秀軍用小銃との認定書が出て、
ギリシャやブラジルから大量購入依頼が来たほど当時としては世界的な名銃だった

・無煙火薬の実用化(フランスが最初)は18年式の1年前で、各国も一斉に連発銃の開発を開始、
(それまでの黒色火薬では煙と煤がひどく連射機構は以前からあったが単発式が主流だった)
日本でも22年式連発村田銃が急きょ開発されたがチューブ弾倉で装填時間も生産効率も悪く、
平弾頭で命中精度も悪かったので(この辺りはこちらの本)、村田も改良を続けていたが、
明治27年(1894)の日清戦争には改良が間に合わなかった

日露戦争(明治37年~38年(1904~5)では村田の配下から後任となった有坂成章による
30年式歩兵銃が主力銃になったものの、一部では村田銃も使われていた

・さらに有坂の後任である南部麒次郎が
30年式歩兵銃を一部改良して38年式歩兵銃となり、
この38年式は計340万挺が生産されている
(海外ではこれらを総称してアリサカ・ライフルと呼ばれている)

・30年式(1897)はドイツ国防軍のマウザーK98k(1898)、ソ連労農赤軍のモシン・ナガンM1891/30、
イギリス軍のリー・エンフィールドNo.4 MkI(1895)、イタリア王国軍のカルカノM1891、
フランス軍のルベルM1886、アメリカ軍のスプリングフィールドM1903とほぼ同時期であり、
主要国のボルトアクション式小銃は1900年前後に完成の域に達した(ウィキペディアより)

云々・・・



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2023年03月08日

戦争の世界史 大図鑑

とかいいつつ、自宅でごろごろしてるので・・・

~地図とタイムラインでわかる~戦争の世界史大図鑑・・・とゆー本のご紹介であります


P2233809

原題はBATTLES MAP BY MAP・・・直訳すれば地図による戦いの地図???



発行所・発行年月日などは奥付のとおり

P2233816





例によって目次のみのご紹介・・・

P2233812



P2233813



P2233814



P2233815

紀元前1274年の古代エジプトとヒッタイト王国の戦争から、2003年の第二次湾岸戦争
(イラク戦争)まで、重要な戦いについては
見開き一枚で紹介、その戦争に至る背景から結果、
その当時に使われた主要兵器や戦術の特徴についても、説明や図版がありました

B4ハードカバー版で300頁ほどもある大著ですが、
表紙にあるとおり地図とタイムラインで
色分けして解説してあり、戦いの流れを全体として理解できるようになってました

といってもイメージが思い浮かばないでしょうから・・・

わたくしが昔から興味のあったエル・アラメイン会戦の項を例としてご紹介
(掲載に問題があるようなら、すぐに削除します)

P2253811

北アフリカでの枢軸軍と連合軍との戦いで重要な転換点となった、1942年10月15日から
11月4日までの両軍の動きや支配地域の変遷を、タイムラインで色分けして地図にも表示、
概要と色分けに従った経過解説があり、全体の流れが分かるようになってて、他の項も概ね
こんな感じで説明されてます


わたくし文明史にも興味があり政治史や軍事史の本も、それなりに読んでるはずなのですが、
特に目次にある、ヨーロッパにおける対イスラム戦や対モンゴル戦以後の戦争については、
100年戦争やバラ戦争など、その名前ぐらいは知ってても、
いつの時代に、どことどこが、
なぜ戦い、歴史上どのような影響があったのかなどは、殆ど理解してませんでした

そう、所詮は王家や王国、民族、宗教などによる支配地域の奪い合いと思ってたのですが、
本書であらためて流れを見ると、これらのヨーロッパでの戦争が第一次世界大戦まで連綿と
繋がっていることが、あらためて理解できました

第二次世界大戦から東西冷戦を経て、
少なくともNATO加盟国間の戦争はなくなりましたが、
それまでは殆ど絶えることなく戦争を続けてて、それが植民地支配をめぐって世界中に波及、
植民地の独立を含め、まさに戦争の火種になってるんですね

NATOにしても戦争の歴史を辿っていくと軍事同盟の集合離散は日常茶飯だったし・・・
まあ強いアメリカと仮想敵が存在する限りは軍事同盟として存続するんでしょうが・・・

さらに本書ではアメリカの独立戦争や南北戦争についても、いくつか取り上げてますが、
それ以前の北米植民地支配を巡る英仏の戦い(イギリス側からはフレンチ=インディアン戦争)
も紹介されてて、これが
ヨーロッパ各国にムガールやロシアまで巻き込んだ七年戦争に繋がり、
やがて
第一次世界大戦に拡大していくんですね

同様にアジア・アフリカ・中南米でも、ヨーロッパ各国の
植民地支配をめぐる争いがあり、
そこに新興国の日本も入って日清日露から第二次世界大戦に、さらに東西冷戦から今も続く
紛争の火種になっていることがわかります

戦争の原因は為政者の恐怖と欲望と威信であると、ロシアの歴史を特集したテレビ番組で
言ってましたが、この本でそれぞれの時代の戦いの原因や流れを見ていくと、犠牲の大きさ
とともに、戦争によって新しい技術が進歩してきたことも見えてきます

それが核による相互確証破壊の段階まで進歩?して、すでに
半世紀以上経過してるのですが
その後も部分的な戦いは世界中のあちこちで絶えず、その犠牲者も計り知れません・・・

国家や同盟、さらに文明や人類つーのは、これからどうなっていくんだか・・・



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