わからないもの
2026年07月15日
西洋の敗北と日本の選択
とーとつですが・・・

西洋の敗北と日本の選択~エマニュエル・トッド著~を読みました
表紙カバー裏にあった惹句

著者紹介と奥付

2025年9月の発行で、2024年1月に発行され話題になった著書「西洋の敗北」と
日本との関連などをまとめた本で同著の解説書にもなっています
ま、わたくしはまだ同著を読んでませんが・・・
目次




(以下てきとーメモですが著作物からなので公開に問題があれば非公開設定にします)
日本の読者へ より
・私の世界を構成する(西洋の民主主義を作り出した)英米仏の三極が崩壊しつつある
⇒生産基盤が流失し産業の空洞化が起き、財が生産されるのは「その他の世界」
⇒崩壊は価値観の面で著しく、ニヒリスト的な歴史観に陥り戦争自体が目的となった
⇒しかもその戦争は兵器生産力を欠いたまま遂行される戦争であり、戦争のための戦争、
自殺行為に等しい戦争と化している
・西洋の民主主義は消滅した
⇒西洋の労働者階級は国外で生産された財で生活する個人の寄せ集めでしかなく、
古代ローマの平民に取って代わられた
⇒形式的な自由はあるがネットワークは「国家と金融グループの共生連合」に支配されている
・アメリカは生産せずに消費する「怠惰の帝国」と化し「世界からの搾取システム」を
死守しようとしている
⇒この姿勢が「終わりのない戦争」へと帰結する
・「西洋の敗北」を確信できたのは、米国より(人口が米国の半分以下の)ロシアの方が
より多くのエンジニアを養成していた事実から
⇒イランもイラン・イラク戦争(1980-1988)後からエンジニアの養成を重視してきた国
・米国が(主として代理)戦争に熱狂するなかで最終的には中国への攻撃も想定できるが、
米国の兵器備蓄は脆弱で時代遅れで船舶生産能力が欠如しておりレアアースは中国依存
⇒オーストラリア・台湾・韓国・日本が米国に引きずられ中国と衝突するとは想像しがたい
・ウクライナ戦争で経済的にロシアと分断させられたドイツは「米国への熱狂的な服従」と
「戦争への積極的な参加」へ
⇒対露制裁による経済危機への技術的な解決策は軍需産業であり戦争への参加だと
⇒これは宗教的空白から生まれたニヒリズム
⇒しかしロシアの軍事ドクトリンは明快で脅威があれば戦術核を使用する
・モスクワ、北京、テヘラン、平壌の悪魔たちは同程度の国力とみなす錯乱した西側外交
⇒米国への対抗上は対等な同盟でも国力からは不均衡で国益も政治文化も異なっている
⇒ロシアは19世紀の共同体家族に由来する共同体文化に支えられた権威主義的民主主義
⇒イランはペルシャ語圏の父系重視傾向はあるものの権威主義的ではなく核家族的で、
政党は存在しないが派閥間の対立が「多元主義」を保証しており、(スンニ派にはない)
シーア派の伝統である解釈と徹底した討論が生きていると外交官から実感した
⇒中国は権威主義的であり全体主義的でもある
⇒このように「米国の軍事・金融システム」の外の世界は多様性に富んでいる
⇒これらの考察は西洋の経済的支配をもはや受け入れないBRICS全体に拡大できる
・西洋の二元性
⇒米英仏の個人主義的な核家族の三国からなる自由主義の中心部
⇒ドイツや日本のような直系家族の国々からなる非自由主義的な周縁部
(日独は敗戦以来、米国のシステムに統合されている)
⇒ドイツは西洋の国だが日本は大きく異なる
・日本は歴史の大部分で孤立した島国で対外関係は平和的だった
⇒一時期、帝国主義的になったのは西洋の植民地主義を模倣したことの悪影響
⇒過去に日本が朝鮮半島や中国で行ったことがフランスがアルジェリアで行ったことや、
英国が大英帝国内で行ったことより悪かったとは私は思わない
・独立を保つために近代化したのが明治維新の目的であり意味
⇒これはBRICSの先駆者になるが、あまりに早くうまく成功し過ぎたのが日本の不幸
⇒数十年で大国になりロシアに勝利して植民地支配に乗り出し米国との対決から敗北へ
・今日、ロシアはBRICSの軍事的な腕であり中国は経済的な腕
⇒日本は西洋の独裁を拒否する旧世界のこれらの文明国家の中でしかるべき地位を、
しかも非常に素晴らしい地位を占められたのではないか
⇒ロシア・中国・インド・イラン・日本リストは歴史家にとってG7リストより立派なリスト
・私は不幸な西洋人でフランスを情熱的に愛しているが日本での出版がなければ知識人として、
作家として自国で生き延びることはできなかった⇒西洋に対する日本の外部性は特別なもの
⇒あなた方が私を救ってくれたのだ!!!
1 米欧の分裂と日本の選択~米国は日本を守らない~より
・トランプ政権の首脳陣が欧州への憎悪と軽蔑を露わにしている
⇒米国・欧州・ウクライナの三者が「敗北の責任」をなすりつけあっている
・予測可能で信頼できるロシア、予測不可能で信頼できない米国(トランプ以前から)
⇒トランプの演劇的な言動は不確実で予測困難、プーチンの冷静な言動は一貫しており予測可能
⇒「2022年2月にロシアが突然ウクライナに侵攻した」とされているが、2008年4月のNATO
首脳会議(ジョージアとウクライナを将来的にNATOに組み込むと宣言した)時点からずっと、
「それは絶対に許さない」と明言し、「ウクライナでの軍事力強化は受け入れがたい」と
レッドラインを明確にしていたのに欧州やNATOは東方へ拡大を続けた
⇒さらに2014年(独仏主導の)ミンスク合意も裏切られ、自ら安全保障を達成するしかなくなった
⇒実際に米国の約束を信じたジョージアは領土の20%を失い、ウクライナも現時点(2025年3月)で
クリミアを含み約20%を失っている
⇒オバマ時代のイラン核合意もトランプに破棄されており「米国は信用できない」という
イランの反応のほうが真っ当
⇒ロシアの主権が脅かされた場合の戦術核の使用可能性を明文化していることは、ブラフではなく
現実と受け止めるべきなのに、軽く見ている西洋の政治家やジャーナリストに恐怖を感じる
・日韓を含む西洋連合GDPの僅か3.3%に過ぎないロシア+ベラルーシの方が武器供給量が多く、
欧州が経済制裁の最大の被害者となっている中での停戦和平案はロシアに何の利益もない
・国境をNATOと米英支援のウクライナ軍に脅かされたので防衛のため侵攻したので、
⇒オデッサなどの軍事目標を掌握すれば侵攻は止まり、親露政権の樹立を望むだろうが、
ウクライナの次はポーランドに侵攻、というのは欧州エリートのプロパガンダ
・プーチンは欧州との友好関係を望み、特に9.11テロ以降は米国とも極めて友好的だった
⇒逆に人口でも経済でもロシアを圧倒し長大な国境を接する中国とは常に緊張状態だった
⇒ロシアを排除して中露接近を招いたのは中国をライバルとする米国の致命的な戦略ミスだが、
日独がロシアに接近することが最大の悪夢なのでウクライナ戦争によってロシアから離した
⇒「西洋の敗北」で、この構図が崩れ始めている
・経済統計などとは異なり人口統計は誤魔化せない
⇒フランスでは乳幼児死亡率が年々上昇している
⇒生活環境がひどく悪化しているということ
⇒ポピュリスト政党の台頭(革命の兆候)へ
⇒それを戦争の継続(外敵の存在)で押さえ込もうとしているのが欧州のエリートたち
・西洋の敗北、米欧の分裂の中で中国と対峙する日本はどうすればよいか
⇒欧州と米国のヒステリーに関わらず静観し、密かに核武装を進めるべき
⇒「NATO条約の第5条によりドイツ防衛に米国が核兵器を使うことはなかっただろう」と、
退任後のキッシンジャーもマクナマラも述べているように、核の傘の概念は無意味
⇒ドイツのケースと同じで自国も核攻撃を受けるリスクのある核を他国のためには使えない
⇒なので米国が核を使って日本を守ることは絶対にあり得ない
⇒核は持たないか、自前で持つか、それ以外の選択肢はない
・マクロンはフランスの核の傘を欧州に広げると言ってるが無意味で危険な発言
⇒核の傘が幻想である以上、隣国ドイツが核武装を目指すきっかけになるだけ
⇒日本や韓国では中国と北朝鮮の核という深刻な脅威があり、それに対する米国の核の傘が
幻想なのだが、ロシアはドイツの深刻な脅威ではなくドイツに核保有の必要はない
・核保有によってフランス国民は安心感を得ている
(英国はメンテナンス依存している米国の同意なしに核は使えず核保有国とは言えない)
⇒日仏のような勢力拡大を目指さない中規模国にとって核保有は専ら防衛的なもの
(人口減少を大量の移民で補完しているドイツは勢力拡大を諦めていない)
・日本も核武装と通常兵器の増強を進めるべき
⇒戦争は軍事的な不均衡から生まれるから
・もう一つ勧めたいのはロシアとの友好関係の構築
⇒安全保障面でもエネルギー面でも日本の国益に適うもので、
⇒対中国牽制のパワーバランスとしても機能し世界の安定に寄与するから
・日本の核武装は中長期的には中国との信頼構築にもつながる
⇒もちろん表向きは反対するが日本の核武装は対米自立を意味するから
・日本にとって安全保障以上の問題が少子化で先進国共通の文明史的な問題
⇒戦争や外敵を強調して現実から目を逸らせるのではなく自国民が「なぜ子供を作らないか」
という真の問題にどの国も向き合うべき・・・
2 トランプは「敗北の大統領」となる~トッド自身による「西洋の敗北」入門~より
・「西洋の敗北」はどんな本で、なぜ書いたか
⇒ウクライナ侵攻は欧州やNATOが東方へ拡大した結果なのに西洋側が攻撃を受けたとの
「誤った現実認識」が西洋人にあったから訂正しようとした
⇒戦争を分析して「ロシアの勝利」を確信したが、真のテーマは「西洋の敗北」
⇒米国を含むアングロサクソン世界の内部崩壊
⇒衰退の究極の要因としてプロテスタンティズムの崩壊を指摘した
⇒道徳、教育、知性の退行が結果として米国の無力さ、失敗、敗北に
・二つの西洋
⇒広義では価値観の異なる日独を含む欧州と極東における米国支配圏としての西洋
⇒狭義ではリベラルという政治的価値観で規定された英米仏からなる西洋
⇒この崩壊が西洋の敗北
⇒米国はこれらの国を支配し続けるためにロシアとの戦争などに巻き込んでいる
⇒欧州の敵はロシアではなく世界の中心で崩壊しつつ危険に巻き込もうとしている米国
・日本は敗北しつつある西洋、特に米国とどう付き合えばよいか
⇒米国による世界覇権の鍵は欧州・中東・東アジア
⇒ここで緊張を高め紛争を引き起こし同盟国(というより属国)を巻き込んでいる
⇒勧めたいのは「できるだけ何もしないこと」と、人口問題に移民も含め本気で取り組むこと
・ウクライナ戦争はどう終わるのか
⇒ロシアの兵器生産力が勝り西洋諸国は真の軍事介入ができないからロシアが勝利する
⇒ウクライナの敗北は経済制裁や金融支配による米国覇権の敗北を意味する
⇒米国には受け入れ難く、戦線を欧州・中東・東アジアにエスカレートさせるリスクがある
⇒だからこそ日本は「何もしないこと」が喫緊の課題で、これはドイツも同じ
・「西洋の敗北」は日本も含め25ヶ国で翻訳されているのに英語版がないことについて
⇒私の最近の著作は全て英訳されているが「西洋の敗北」だけは英訳版がない
⇒これは英米世界にとっての「不都合な真実」を正確に合理的に描いたことを証明している
⇒もはや寛容さを失った帝国によって禁書扱いされたもの
⇒なので販売促進のために帯に「帝国から発禁された書」と巻けばよい
3 日本は欧米とともに衰退するのか
~家族を発明したホモサピエンス(成田悠輔との対談)~より
成田
・日本では自国の惨状を上から目線で批判・説教する経営者や知識人がいる一方、
隣国との緊張や外国人嫌悪を煽る運動や言説があるが、トッドさんは第三者的に家族構造や
人類史から、むしろ日本に「都合の良い真実」を示されているが・・・
⇒欧州では日本は特殊な国と思われてきたが直系家族で共同体家族の中国よりドイツに近く、
両者の共通点と違いは非常に興味深い(略)
⇒30年前から日本の問題は経済ではなく人口、対外政策では核兵器の保有と指摘してきたが、
日本が行動に移すことはなかった
成田
・日本は経済停滞で貧困化しているが政権は安定したままで「変わらない」が・・・
⇒フランスもドイツも米国の覇権下にあり「変われない」⇒米国も同じで退化している
⇒西洋が退化に向かっている中で、日本の国内産業維持などの「退化に対する保守主義」は
ポジティブかもしれない
・人口減少
⇒ホモサピエンスが「育児を可能にする持続的な夫婦関係」を発明した
⇒核家族から直系家族(長子相続)⇒共同体家族が生まれたが、これらは核家族より変化を
妨げる停滞要因として作用したとみている
⇒家族による子育てには「愛」が必要で国や公的機関が組織化することは不可能だと思う
⇒残念ながら戦争が変化をもたらしたことは否めない
・二つの資本主義⇒英米と日独
⇒世代間の繋がりが弱く変化する核家族構造の英米で発展したのが古典的な自由主義
⇒労働者が産業革命を支えたが、レーガン・サッチャーから始まった新自由主義は
金融を自由化し生産設備の破壊を進めた
⇒世代間継承する直系家族社会である日独は国内の産業基盤を維持した
・グローバル経済の罠
⇒核家族社会は直系家族ほど子供を教育で「囲い込む」ことはなく教育水準の低下が顕著
⇒結果として今日の米国には「良質で勤勉な労働者」が不足している
⇒トランプの保護主義への転換は正しいが国内産業の再建を担うエンジニアや労働者はいない
⇒国内の産業基盤を維持した国々も外需への過度な依存や少子化の問題を抱えている
⇒異なる家族構造社会の国が得意分野へ依存してしまったのがグローバル経済の罠
⇒唯一、脱却に成功したのがロシア
成田
・日本企業の特徴として長寿企業が多いこと、独自製品を生産する企業が多いことが挙げられ、
これらの特徴は直系家族と相性がいいかもだが、明治大正時代の日本は弱肉強食の市場経済で
格差は欧米より大きく、この変化は家族構造では説明できないのではないか
⇒日本の歴史は西洋の「権威から自由へ、硬直から柔軟へ」の歴史とは逆の流れではないか
成田
・古典経済学では各国が得意分野で貿易することで全体のパイが増え、貿易の敗者も生むが
増えたパイの再分配で救済できると考えられてきた
・ところが中国との競争で生まれた米国製造業の失業者は救済されておらず、最近の経済学者は
自由経済の負の面も強調している
⇒30年近く自由貿易批判をしてきたが米英仏は生産基盤の海外移転が進み過ぎて後戻りできない
⇒労働はお金を稼ぐためだけでなく自己実現であり社会貢献
⇒米国の労働者は生産せずドルの恩恵で消費してきたが消費者は共同体には属さない
⇒民主主義は消費者ではなく労働者に支えられるので米国では自由民主主義が消滅した
成田
・戦後から20世紀末まで西側諸国では資本主義が経済成長と技術革新を担当し、
それにより生まれる格差や弱者を民主主義政治が救うという役割分担ができていた
・しかし資本主義の暴走を民主主義が制御できなくなり格差が爆増した
・トランプ勝利も大富豪の資本による勝利⇒これらに代わる新たな政治経済の提案は
⇒批判は得意でも提案は不得意なので
違った観点から
⇒米国の退化はもはや不可逆で民主主義は資本主義に敗れた
⇒ところがこれを労働の観点から考えると、
⇒産業基盤の残る日独には民主主義の担い手(労働者)がまだ残っている
⇒だが両国は米国支配下にあり主権がないので、その点で民主主義国家と言えないのが問題
(米国によるノルドストリーム破壊への沈黙でドイツは米国占領下にあることを公式に認めた)
成田
・トッドさんの立場は悲観的で反ユートピア的だが、古代の賢人政治から近代のマルクス共産主義、
現代の技術革新礼賛まで、人々を惹きつけるのは統一ビジョンのユートピア
・それらの統一ビジョンがいかに機能し得ないか、社会や国家は多様であらざるを得ないことを
家族構造から教えてくれるのがトッドさんの仕事
・家族は閉鎖的で非対称性や階層性があり、さらに世界の家族構造は多様と理解させてくれる
⇒米国の軍事介入によるイラクの民主化やEUの通貨統一も家族の多様性から批判してきた
⇒「世界の多極的なビジョン」を国際社会で打ち出しているロシアの戦略的合理性も即座に
理解できた
⇒今後は国民としての連帯感のある国だけが生き残るだろう
⇒懸念は内部での連帯感は外部への敵対心で成り立っていること(アダム・ファーガソン)
⇒ロシアは戦争遂行で社会が安定に向かっており、社会分断の解決策として安易に戦争に
向かう動きが出てくる可能性がある
⇒社会分断している米国が東アジアでも戦争を引き起こす可能性
⇒そうした米国に追従しないことが日本の平和と安全には不可欠
4 ウクライナを支援して破壊した米国~欧州支配の装置としてのNATO~より
・長期戦になれば高度な軍事技術より兵器生産力が重要にと2022年6月から指摘しているが、
産業空洞化という米国の弱点が露わになり産業基盤を維持しているロシアが優位になっている
(さらに世界の工場である中国の支援も期待できる)
・ロシア経済の強さを見誤ったのは時代遅れのGDP指標から
⇒軍事力を最終的に支えるのはリアルな生産力でバーチャルな金融やサービスではない
・2028年にロシアの人口ピラミッドに大きな穴が生じ徴兵世代が急減する
⇒それまでには終わらせたいだろうが勝利を急ぐより国内の平穏を優先している
・「西洋の敗北」執筆のために米国の専門家の現実認識や世界戦略を理解しようとした
⇒見えてきたのは米国のエリート集団が真面目でも有能でもないということだった
⇒現実を直視できない彼らの攻撃性こそ世界にとって一番の不安定要因
・地政学的な力学によりロシアとドイツが再び接近する
⇒ウクライナをNATOの事実上の加盟国にするため、この戦争を嗾けた米国の真の目的は
ロシアとドイツの分断
⇒両者はエネルギー・経済で相互補完関係にあり協力は地政学上も地域の安定に寄与するが、
両者に挟まれたポーランドには両者による分断の歴史があり反ロシアで反ドイツ
⇒米国が離れウクライナが崩壊すれば西ウクライナを併合すると開戦当初から指摘している
⇒ウクライナ分割が本格化すればポーランドへの併合か独立で分離する可能性は高い
⇒ウクライナでクーデターを主導したのは旧ナチスドイツ側だった西部地域の勢力で、
ここを分離すればロシアは中央部への影響力を回復できる(東部などはロシアに併合)
⇒ただしウクライナ西部には伝統的にポーランドに属する地域だけでなく、ドイツ語圏の
伝統に属する地域もあり、分離が実現すれば地政学的緊張が30年は続く
・反転攻勢の失敗で西側諸国に亀裂が生まれつつある
⇒スロバキアでは2023年9月の総選挙でウクライナ支援停止の中道左派が勝利した
⇒ドイツのレオパルト供与も逡巡を重ねており意志に反するというロシアへのサインか
⇒ノルドストリーム爆破への政府としての沈黙もドイツの米国への暗黙の批判か
(私は米国とノルウェーが爆破した説をとっている⇒ロシアなら栓を閉めれば済むから)
・米国の覇権が世界中で綻びはじめている
⇒逆に欧州同盟国への支配は強まりドイツもフランスも独立国家とは言えない状態
⇒英国、ノルウェー、デンマークもほぼ同様だが他の欧州諸国は微妙な状況
・中国とロシアには自律的な情報ネットワークがあるが欧州は米国GAFAMに支配されている
⇒2013年に元CIA職員によりNSAによる個人情報収集が暴露されたが、驚いたのはロシアや
中国に対する情報収集ではなく同盟国への監視だったこと
⇒NATOも日米同盟も米韓同盟も同盟国に対して米国は支配者として振る舞っている
・「アメリカ帝国システム」を支えてきたのは基軸通貨としてのドルだった
⇒金融システムの覇権を握りドルを発行して世界中から物資を輸入し豊かさを享受してきた
⇒対露制裁による国際金融決済システムからの排除にロシア経済は耐え、それをきっかけに
ドルを介さない国際取引も活発になった
⇒ドル基軸体制の終わりは膨大な貿易赤字をタダでファイナンスする手段を失うことになり、
米国にとって死活問題だが、急激な崩壊は世界中にとって悪夢
⇒米国とドルからの撤退と新たな体制への移行はコントロールされなければいけない
・世界に寄生する米国と自立するロシア
⇒ドルを刷って物資を輸入し豊かに暮らす米国は世界に寄生しており、自国の生存のために
世界覇権を維持しようとする
⇒ロシアはエネルギー面でも経済面でも相対的に自立しており世界覇権を求める理由もない
(わたしはロシア人との接触を意図的に避けており、これは文献上の研究結果)
・ウクライナにもパレスチナにも首を突っ込む米国
⇒世界は「これは自分たちの問題ではない」とみなすべきではないか
⇒「非常に複雑な一つの地域の特殊な問題であって世界の問題ではない」と
⇒殺し合いをしている人たちのナルシズム感情を煽らず、世界中が注目しないことこそが
彼らが紛争から抜け出すための道となるように思う
5 イスラエルは神を信じていない~戦争自体が自己の存在理由に~より
・ニヒリズムという破壊活動
⇒ニヒリズムとは「物や人々や現実を破壊したい」という欲求や衝動のことで、
西洋の宗教的・形而上学的価値観の空白から生じているもの
⇒ニヒリズムとは虚無の産物で「宗教のゼロ状態」の産物
⇒西洋もイスラエルもこの状態に達している
・戦争自体が自己の存在理由に
⇒ウクライナはロシアの侵攻以前から破綻国家だったが強い戦意と抵抗力を示しているのは
ロシアとの戦争自体が自己の存在理由になっているということ
⇒イスラエルも「暴力の行使」が自己目的化してしまった印象を受ける
・イラン(9000万人)と戦争したいというイスラエル(700万人)の欲求
⇒イスラエル人であることは(ユダヤ人であることを意味せず)アラブ人やイラン人と戦うことを
無意識の深層で意味しているのだろう
・最終的に私たちがユダヤ人か否かを決めるのは迫害する側
⇒イスラエルとの絆を感じない現象は米国で始まっている⇒フランスではゆるぎない連帯
・宗教がゼロ状態になる時代に、反ユダヤだった階層やグループが極右化したイスラエルを
熱狂的に支持しているのは非論理的ではない
⇒欧州では移民流入による「イスラム恐怖症」が煙幕となり「イスラエルの戦い」に興奮している
・宗教の三段階
⇒第一段階は活動的でミサや礼拝に行き安息日を守る
⇒第二段階はゾンビ状態で信者ではないが世俗的に宗教由来の価値観は残存する
(この段階で国家の理想や政治的イデオロギーが宗教の代替物として登場)
⇒第三段階が宗教のゼロ状態で宗教由来の個人の道徳観も社会的枠組みも存在しない
⇒イスラエルがどの段階なのか、もはや古典的ユダヤ教ではないのか・・・
⇒ただし本物ユダヤ人の消滅は反ユダヤ主義の消滅を意味するわけではない
6 ロシア・ハンガリーより愛をこめて~ロシア恐怖症という「西洋の病い」~より
・ハンガリーが東欧では例外的にロシア恐怖症に囚われないのは唯一抵抗した自信から
⇒1956年のハンガリー動乱の自信が1989年の東欧最初の鉄のカーテン解放へ
・モスクワの驚くべき正常さにショックを受けた
⇒モスクワの現実と仏メディア報道のあまりのギャップに怒りが湧いた
⇒ロシア嫌いは反ユダヤと同じで差別する側の精神的病い
⇒欧州で英国が最もロシア嫌いなのは英国が最も悪い「空白」状態にあるから
・「自立した欧州」が再登場するなら「ドイツに支配された欧州」になる
⇒従来のドイツ・イタリア・フランスを中心軸とする欧州はウクライナ戦争により、
米国に操られた英国・デンマーク・北欧諸国・バルト三国の軸に代わられた
⇒英仏の好戦論は充分な産業基盤がないので心配ないがドイツ語圏の産業力はロシアの脅威
⇒兵器生産をフル稼働すればロシアが明言している戦術核の使用が現実に
⇒対露制裁によるエネルギー不足からの不況、米国からの貿易不均衡是正の要求
⇒この経済問題を再軍備と軍需産業への転換で解決する可能性
⇒ロシアとの和平か戦争か
・トランプの周囲には奇妙な人間が大勢いる
⇒米国では技術・産業・軍事力の衰退だけでなく道徳の崩壊が起きている
・欧州各国は依然として民族国家だが米国は市民国家
⇒その核だったWASPが消滅したことで空中分解しつつある⇒部族主義への退行
⇒州に権力がある銃社会でウェーバーが定義する「正当な暴力の独占機関」である国家を
一度も実現したことはない
⇒米国社会の崩壊を食い止めるものはない
・日本は核武装すべき
⇒自国の独立を保障し超大国間の紛争に不必要に関わらずに済むから
⇒米国は常に戦争に引きずり込もうとするが核があればパワーゲームから抜け出せる
⇒トランプ政権の国防次官コルビーは現実的な戦略として、中国を封じ込める通常戦力が
米国にない場合、日本・韓国・台湾・オーストラリアによる核保有(同盟国への友好的選択的な
核拡散)が解決策になり各国にも米国にも利益になる、と述べている
(イスラエル熱狂支持の「奇妙な」長官と異なり次官は冷静で優秀な若者)
7 危険なのはイランより米国とイスラエルだ
~日本と同じくイランの核武装は平和に寄与する~より
・核戦争のリスクは不均衡から生まれる
⇒1945年には米国だけが保有していたから広島と長崎に使用できた
⇒冷戦時代に核戦争は起きなかった
⇒戦後に第三次まで続いた印パ戦争は双方の核武装で収まった
⇒東アジアでは核を持たない日本が核を持つ中国と北朝鮮に対峙し、中東ではイスラエルだけが
核を持っており、この不均衡が不安定な状況を作り出している
⇒イランや日本に持たせようとしないのは非西洋人への西洋人の偏見で西洋の最大の弱点
・リビア政権もイラク政権もアラブ系の脆弱な政治システムで指導者が消えると崩壊したが、
ペルシャ系でシーア派のイランは根本的に異なる社会
⇒ハメネイ師が暗殺されてもイランの国家体制が崩壊することなどあり得ない
・アラブとペルシャの違い
⇒スンニ派アラブ諸国の特徴は男系の親族ネットワークの強さで、一族が国家より強力で
国家が存続する場合もサウジアラビア(サウード家のアラビア)のように一族が支配する
⇒イランはペルシャ帝国の末裔で2500年にわたる国家建設の伝統歴史を引き継いでいる
⇒シーア派イランの女性の大学進学率は男性を上回り、出生率もフランスとほぼ同じ
⇒中東の中心スンニ派アラブ諸国の周縁部で男女平等・核家族的特徴を遺しているから
(ユーラシア大陸の周縁部である欧州とくに英仏に近い)
⇒部族集団の概念に立脚するスンニ派の法と家族集団に限定されたシーア派の法
⇒核家族的なイラン社会は部族社会と異なりモサドや協力者の浸透を許したが、要人暗殺が
実行されても属人的ではない近代組織が存在するので戦略的には無意味
・1979年のイラン革命とは
⇒民主化革命でフランス革命やロシア革命のイトコ⇒識字率・出生率との関連から
⇒宗教革命だがピューリタン革命同様に神の名で王制を打倒した「左翼の宗教革命」
⇒シーア派の教義には異議申し立ての伝統がありスンニ派と逆に議論を重んじるシステム
(6人のイラン外交官に食事会でどの大統領候補に投票したかを聞いたら全員が異なる候補に
投票しており、その後は互いに口論がはじまり議論する文化を目の当たりにした)
・米国の締め付けは逆効果
⇒米国の脅威がイラン国内の保守派を強化している
・イランの軍事力分析で核開発より重要なのは弾道ミサイルとドローンの製造
⇒高価な航空戦力を放棄しての「安価な開発」がうまく機能した
⇒イランが膨大な数のエンジニアを輩出しているから可能だった
(米国博士号留学生のエンジニア分野を選ぶ割合はイラン66%中国35%インド39%)
・日本は最初に西洋の支配に立ち向かった国で明治維新はBRICSの先駆け
⇒明治時代の思想的な文献を探せば「国を守るためにはエンジニアが必要」と書かれたものが
きっと見つかるはずだと確信している・・・
・・・・・・・・・・
はてさて・・・
ま、「エンジニアが必要」なことは国防だけでなく日頃から痛感してますが・・・
一部に???な部分もありましたが、そんな見方もあるのかと納得する部分もあったので、
次は(英米)帝国では発禁の書
「西洋の敗北」も読んでみようかな・・・

西洋の敗北と日本の選択~エマニュエル・トッド著~を読みました
表紙カバー裏にあった惹句

著者紹介と奥付

2025年9月の発行で、2024年1月に発行され話題になった著書「西洋の敗北」と
日本との関連などをまとめた本で同著の解説書にもなっています
ま、わたくしはまだ同著を読んでませんが・・・

目次




(以下てきとーメモですが著作物からなので公開に問題があれば非公開設定にします)
日本の読者へ より
・私の世界を構成する(西洋の民主主義を作り出した)英米仏の三極が崩壊しつつある
⇒生産基盤が流失し産業の空洞化が起き、財が生産されるのは「その他の世界」
⇒崩壊は価値観の面で著しく、ニヒリスト的な歴史観に陥り戦争自体が目的となった
⇒しかもその戦争は兵器生産力を欠いたまま遂行される戦争であり、戦争のための戦争、
自殺行為に等しい戦争と化している
・西洋の民主主義は消滅した
⇒西洋の労働者階級は国外で生産された財で生活する個人の寄せ集めでしかなく、
古代ローマの平民に取って代わられた
⇒形式的な自由はあるがネットワークは「国家と金融グループの共生連合」に支配されている
・アメリカは生産せずに消費する「怠惰の帝国」と化し「世界からの搾取システム」を
死守しようとしている
⇒この姿勢が「終わりのない戦争」へと帰結する
・「西洋の敗北」を確信できたのは、米国より(人口が米国の半分以下の)ロシアの方が
より多くのエンジニアを養成していた事実から
⇒イランもイラン・イラク戦争(1980-1988)後からエンジニアの養成を重視してきた国
・米国が(主として代理)戦争に熱狂するなかで最終的には中国への攻撃も想定できるが、
米国の兵器備蓄は脆弱で時代遅れで船舶生産能力が欠如しておりレアアースは中国依存
⇒オーストラリア・台湾・韓国・日本が米国に引きずられ中国と衝突するとは想像しがたい
・ウクライナ戦争で経済的にロシアと分断させられたドイツは「米国への熱狂的な服従」と
「戦争への積極的な参加」へ
⇒対露制裁による経済危機への技術的な解決策は軍需産業であり戦争への参加だと
⇒これは宗教的空白から生まれたニヒリズム
⇒しかしロシアの軍事ドクトリンは明快で脅威があれば戦術核を使用する
・モスクワ、北京、テヘラン、平壌の悪魔たちは同程度の国力とみなす錯乱した西側外交
⇒米国への対抗上は対等な同盟でも国力からは不均衡で国益も政治文化も異なっている
⇒ロシアは19世紀の共同体家族に由来する共同体文化に支えられた権威主義的民主主義
⇒イランはペルシャ語圏の父系重視傾向はあるものの権威主義的ではなく核家族的で、
政党は存在しないが派閥間の対立が「多元主義」を保証しており、(スンニ派にはない)
シーア派の伝統である解釈と徹底した討論が生きていると外交官から実感した
⇒中国は権威主義的であり全体主義的でもある
⇒このように「米国の軍事・金融システム」の外の世界は多様性に富んでいる
⇒これらの考察は西洋の経済的支配をもはや受け入れないBRICS全体に拡大できる
・西洋の二元性
⇒米英仏の個人主義的な核家族の三国からなる自由主義の中心部
⇒ドイツや日本のような直系家族の国々からなる非自由主義的な周縁部
(日独は敗戦以来、米国のシステムに統合されている)
⇒ドイツは西洋の国だが日本は大きく異なる
・日本は歴史の大部分で孤立した島国で対外関係は平和的だった
⇒一時期、帝国主義的になったのは西洋の植民地主義を模倣したことの悪影響
⇒過去に日本が朝鮮半島や中国で行ったことがフランスがアルジェリアで行ったことや、
英国が大英帝国内で行ったことより悪かったとは私は思わない
・独立を保つために近代化したのが明治維新の目的であり意味
⇒これはBRICSの先駆者になるが、あまりに早くうまく成功し過ぎたのが日本の不幸
⇒数十年で大国になりロシアに勝利して植民地支配に乗り出し米国との対決から敗北へ
・今日、ロシアはBRICSの軍事的な腕であり中国は経済的な腕
⇒日本は西洋の独裁を拒否する旧世界のこれらの文明国家の中でしかるべき地位を、
しかも非常に素晴らしい地位を占められたのではないか
⇒ロシア・中国・インド・イラン・日本リストは歴史家にとってG7リストより立派なリスト
・私は不幸な西洋人でフランスを情熱的に愛しているが日本での出版がなければ知識人として、
作家として自国で生き延びることはできなかった⇒西洋に対する日本の外部性は特別なもの
⇒あなた方が私を救ってくれたのだ!!!
1 米欧の分裂と日本の選択~米国は日本を守らない~より
・トランプ政権の首脳陣が欧州への憎悪と軽蔑を露わにしている
⇒米国・欧州・ウクライナの三者が「敗北の責任」をなすりつけあっている
・予測可能で信頼できるロシア、予測不可能で信頼できない米国(トランプ以前から)
⇒トランプの演劇的な言動は不確実で予測困難、プーチンの冷静な言動は一貫しており予測可能
⇒「2022年2月にロシアが突然ウクライナに侵攻した」とされているが、2008年4月のNATO
首脳会議(ジョージアとウクライナを将来的にNATOに組み込むと宣言した)時点からずっと、
「それは絶対に許さない」と明言し、「ウクライナでの軍事力強化は受け入れがたい」と
レッドラインを明確にしていたのに欧州やNATOは東方へ拡大を続けた
⇒さらに2014年(独仏主導の)ミンスク合意も裏切られ、自ら安全保障を達成するしかなくなった
⇒実際に米国の約束を信じたジョージアは領土の20%を失い、ウクライナも現時点(2025年3月)で
クリミアを含み約20%を失っている
⇒オバマ時代のイラン核合意もトランプに破棄されており「米国は信用できない」という
イランの反応のほうが真っ当
⇒ロシアの主権が脅かされた場合の戦術核の使用可能性を明文化していることは、ブラフではなく
現実と受け止めるべきなのに、軽く見ている西洋の政治家やジャーナリストに恐怖を感じる
・日韓を含む西洋連合GDPの僅か3.3%に過ぎないロシア+ベラルーシの方が武器供給量が多く、
欧州が経済制裁の最大の被害者となっている中での停戦和平案はロシアに何の利益もない
・国境をNATOと米英支援のウクライナ軍に脅かされたので防衛のため侵攻したので、
⇒オデッサなどの軍事目標を掌握すれば侵攻は止まり、親露政権の樹立を望むだろうが、
ウクライナの次はポーランドに侵攻、というのは欧州エリートのプロパガンダ
・プーチンは欧州との友好関係を望み、特に9.11テロ以降は米国とも極めて友好的だった
⇒逆に人口でも経済でもロシアを圧倒し長大な国境を接する中国とは常に緊張状態だった
⇒ロシアを排除して中露接近を招いたのは中国をライバルとする米国の致命的な戦略ミスだが、
日独がロシアに接近することが最大の悪夢なのでウクライナ戦争によってロシアから離した
⇒「西洋の敗北」で、この構図が崩れ始めている
・経済統計などとは異なり人口統計は誤魔化せない
⇒フランスでは乳幼児死亡率が年々上昇している
⇒生活環境がひどく悪化しているということ
⇒ポピュリスト政党の台頭(革命の兆候)へ
⇒それを戦争の継続(外敵の存在)で押さえ込もうとしているのが欧州のエリートたち
・西洋の敗北、米欧の分裂の中で中国と対峙する日本はどうすればよいか
⇒欧州と米国のヒステリーに関わらず静観し、密かに核武装を進めるべき
⇒「NATO条約の第5条によりドイツ防衛に米国が核兵器を使うことはなかっただろう」と、
退任後のキッシンジャーもマクナマラも述べているように、核の傘の概念は無意味
⇒ドイツのケースと同じで自国も核攻撃を受けるリスクのある核を他国のためには使えない
⇒なので米国が核を使って日本を守ることは絶対にあり得ない
⇒核は持たないか、自前で持つか、それ以外の選択肢はない
・マクロンはフランスの核の傘を欧州に広げると言ってるが無意味で危険な発言
⇒核の傘が幻想である以上、隣国ドイツが核武装を目指すきっかけになるだけ
⇒日本や韓国では中国と北朝鮮の核という深刻な脅威があり、それに対する米国の核の傘が
幻想なのだが、ロシアはドイツの深刻な脅威ではなくドイツに核保有の必要はない
・核保有によってフランス国民は安心感を得ている
(英国はメンテナンス依存している米国の同意なしに核は使えず核保有国とは言えない)
⇒日仏のような勢力拡大を目指さない中規模国にとって核保有は専ら防衛的なもの
(人口減少を大量の移民で補完しているドイツは勢力拡大を諦めていない)
・日本も核武装と通常兵器の増強を進めるべき
⇒戦争は軍事的な不均衡から生まれるから
・もう一つ勧めたいのはロシアとの友好関係の構築
⇒安全保障面でもエネルギー面でも日本の国益に適うもので、
⇒対中国牽制のパワーバランスとしても機能し世界の安定に寄与するから
・日本の核武装は中長期的には中国との信頼構築にもつながる
⇒もちろん表向きは反対するが日本の核武装は対米自立を意味するから
・日本にとって安全保障以上の問題が少子化で先進国共通の文明史的な問題
⇒戦争や外敵を強調して現実から目を逸らせるのではなく自国民が「なぜ子供を作らないか」
という真の問題にどの国も向き合うべき・・・
2 トランプは「敗北の大統領」となる~トッド自身による「西洋の敗北」入門~より
・「西洋の敗北」はどんな本で、なぜ書いたか
⇒ウクライナ侵攻は欧州やNATOが東方へ拡大した結果なのに西洋側が攻撃を受けたとの
「誤った現実認識」が西洋人にあったから訂正しようとした
⇒戦争を分析して「ロシアの勝利」を確信したが、真のテーマは「西洋の敗北」
⇒米国を含むアングロサクソン世界の内部崩壊
⇒衰退の究極の要因としてプロテスタンティズムの崩壊を指摘した
⇒道徳、教育、知性の退行が結果として米国の無力さ、失敗、敗北に
・二つの西洋
⇒広義では価値観の異なる日独を含む欧州と極東における米国支配圏としての西洋
⇒狭義ではリベラルという政治的価値観で規定された英米仏からなる西洋
⇒この崩壊が西洋の敗北
⇒米国はこれらの国を支配し続けるためにロシアとの戦争などに巻き込んでいる
⇒欧州の敵はロシアではなく世界の中心で崩壊しつつ危険に巻き込もうとしている米国
・日本は敗北しつつある西洋、特に米国とどう付き合えばよいか
⇒米国による世界覇権の鍵は欧州・中東・東アジア
⇒ここで緊張を高め紛争を引き起こし同盟国(というより属国)を巻き込んでいる
⇒勧めたいのは「できるだけ何もしないこと」と、人口問題に移民も含め本気で取り組むこと
・ウクライナ戦争はどう終わるのか
⇒ロシアの兵器生産力が勝り西洋諸国は真の軍事介入ができないからロシアが勝利する
⇒ウクライナの敗北は経済制裁や金融支配による米国覇権の敗北を意味する
⇒米国には受け入れ難く、戦線を欧州・中東・東アジアにエスカレートさせるリスクがある
⇒だからこそ日本は「何もしないこと」が喫緊の課題で、これはドイツも同じ
・「西洋の敗北」は日本も含め25ヶ国で翻訳されているのに英語版がないことについて
⇒私の最近の著作は全て英訳されているが「西洋の敗北」だけは英訳版がない
⇒これは英米世界にとっての「不都合な真実」を正確に合理的に描いたことを証明している
⇒もはや寛容さを失った帝国によって禁書扱いされたもの
⇒なので販売促進のために帯に「帝国から発禁された書」と巻けばよい

3 日本は欧米とともに衰退するのか
~家族を発明したホモサピエンス(成田悠輔との対談)~より
成田
・日本では自国の惨状を上から目線で批判・説教する経営者や知識人がいる一方、
隣国との緊張や外国人嫌悪を煽る運動や言説があるが、トッドさんは第三者的に家族構造や
人類史から、むしろ日本に「都合の良い真実」を示されているが・・・
⇒欧州では日本は特殊な国と思われてきたが直系家族で共同体家族の中国よりドイツに近く、
両者の共通点と違いは非常に興味深い(略)
⇒30年前から日本の問題は経済ではなく人口、対外政策では核兵器の保有と指摘してきたが、
日本が行動に移すことはなかった
成田
・日本は経済停滞で貧困化しているが政権は安定したままで「変わらない」が・・・
⇒フランスもドイツも米国の覇権下にあり「変われない」⇒米国も同じで退化している
⇒西洋が退化に向かっている中で、日本の国内産業維持などの「退化に対する保守主義」は
ポジティブかもしれない
・人口減少
⇒ホモサピエンスが「育児を可能にする持続的な夫婦関係」を発明した
⇒核家族から直系家族(長子相続)⇒共同体家族が生まれたが、これらは核家族より変化を
妨げる停滞要因として作用したとみている
⇒家族による子育てには「愛」が必要で国や公的機関が組織化することは不可能だと思う
⇒残念ながら戦争が変化をもたらしたことは否めない
・二つの資本主義⇒英米と日独
⇒世代間の繋がりが弱く変化する核家族構造の英米で発展したのが古典的な自由主義
⇒労働者が産業革命を支えたが、レーガン・サッチャーから始まった新自由主義は
金融を自由化し生産設備の破壊を進めた
⇒世代間継承する直系家族社会である日独は国内の産業基盤を維持した
・グローバル経済の罠
⇒核家族社会は直系家族ほど子供を教育で「囲い込む」ことはなく教育水準の低下が顕著
⇒結果として今日の米国には「良質で勤勉な労働者」が不足している
⇒トランプの保護主義への転換は正しいが国内産業の再建を担うエンジニアや労働者はいない
⇒国内の産業基盤を維持した国々も外需への過度な依存や少子化の問題を抱えている
⇒異なる家族構造社会の国が得意分野へ依存してしまったのがグローバル経済の罠
⇒唯一、脱却に成功したのがロシア
成田
・日本企業の特徴として長寿企業が多いこと、独自製品を生産する企業が多いことが挙げられ、
これらの特徴は直系家族と相性がいいかもだが、明治大正時代の日本は弱肉強食の市場経済で
格差は欧米より大きく、この変化は家族構造では説明できないのではないか
⇒日本の歴史は西洋の「権威から自由へ、硬直から柔軟へ」の歴史とは逆の流れではないか
成田
・古典経済学では各国が得意分野で貿易することで全体のパイが増え、貿易の敗者も生むが
増えたパイの再分配で救済できると考えられてきた
・ところが中国との競争で生まれた米国製造業の失業者は救済されておらず、最近の経済学者は
自由経済の負の面も強調している
⇒30年近く自由貿易批判をしてきたが米英仏は生産基盤の海外移転が進み過ぎて後戻りできない
⇒労働はお金を稼ぐためだけでなく自己実現であり社会貢献
⇒米国の労働者は生産せずドルの恩恵で消費してきたが消費者は共同体には属さない
⇒民主主義は消費者ではなく労働者に支えられるので米国では自由民主主義が消滅した
成田
・戦後から20世紀末まで西側諸国では資本主義が経済成長と技術革新を担当し、
それにより生まれる格差や弱者を民主主義政治が救うという役割分担ができていた
・しかし資本主義の暴走を民主主義が制御できなくなり格差が爆増した
・トランプ勝利も大富豪の資本による勝利⇒これらに代わる新たな政治経済の提案は
⇒批判は得意でも提案は不得意なので
違った観点から⇒米国の退化はもはや不可逆で民主主義は資本主義に敗れた
⇒ところがこれを労働の観点から考えると、
⇒産業基盤の残る日独には民主主義の担い手(労働者)がまだ残っている
⇒だが両国は米国支配下にあり主権がないので、その点で民主主義国家と言えないのが問題
(米国によるノルドストリーム破壊への沈黙でドイツは米国占領下にあることを公式に認めた)
成田
・トッドさんの立場は悲観的で反ユートピア的だが、古代の賢人政治から近代のマルクス共産主義、
現代の技術革新礼賛まで、人々を惹きつけるのは統一ビジョンのユートピア
・それらの統一ビジョンがいかに機能し得ないか、社会や国家は多様であらざるを得ないことを
家族構造から教えてくれるのがトッドさんの仕事
・家族は閉鎖的で非対称性や階層性があり、さらに世界の家族構造は多様と理解させてくれる
⇒米国の軍事介入によるイラクの民主化やEUの通貨統一も家族の多様性から批判してきた
⇒「世界の多極的なビジョン」を国際社会で打ち出しているロシアの戦略的合理性も即座に
理解できた
⇒今後は国民としての連帯感のある国だけが生き残るだろう
⇒懸念は内部での連帯感は外部への敵対心で成り立っていること(アダム・ファーガソン)
⇒ロシアは戦争遂行で社会が安定に向かっており、社会分断の解決策として安易に戦争に
向かう動きが出てくる可能性がある
⇒社会分断している米国が東アジアでも戦争を引き起こす可能性
⇒そうした米国に追従しないことが日本の平和と安全には不可欠
4 ウクライナを支援して破壊した米国~欧州支配の装置としてのNATO~より
・長期戦になれば高度な軍事技術より兵器生産力が重要にと2022年6月から指摘しているが、
産業空洞化という米国の弱点が露わになり産業基盤を維持しているロシアが優位になっている
(さらに世界の工場である中国の支援も期待できる)
・ロシア経済の強さを見誤ったのは時代遅れのGDP指標から
⇒軍事力を最終的に支えるのはリアルな生産力でバーチャルな金融やサービスではない
・2028年にロシアの人口ピラミッドに大きな穴が生じ徴兵世代が急減する
⇒それまでには終わらせたいだろうが勝利を急ぐより国内の平穏を優先している
・「西洋の敗北」執筆のために米国の専門家の現実認識や世界戦略を理解しようとした
⇒見えてきたのは米国のエリート集団が真面目でも有能でもないということだった
⇒現実を直視できない彼らの攻撃性こそ世界にとって一番の不安定要因
・地政学的な力学によりロシアとドイツが再び接近する
⇒ウクライナをNATOの事実上の加盟国にするため、この戦争を嗾けた米国の真の目的は
ロシアとドイツの分断
⇒両者はエネルギー・経済で相互補完関係にあり協力は地政学上も地域の安定に寄与するが、
両者に挟まれたポーランドには両者による分断の歴史があり反ロシアで反ドイツ
⇒米国が離れウクライナが崩壊すれば西ウクライナを併合すると開戦当初から指摘している
⇒ウクライナ分割が本格化すればポーランドへの併合か独立で分離する可能性は高い
⇒ウクライナでクーデターを主導したのは旧ナチスドイツ側だった西部地域の勢力で、
ここを分離すればロシアは中央部への影響力を回復できる(東部などはロシアに併合)
⇒ただしウクライナ西部には伝統的にポーランドに属する地域だけでなく、ドイツ語圏の
伝統に属する地域もあり、分離が実現すれば地政学的緊張が30年は続く
・反転攻勢の失敗で西側諸国に亀裂が生まれつつある
⇒スロバキアでは2023年9月の総選挙でウクライナ支援停止の中道左派が勝利した
⇒ドイツのレオパルト供与も逡巡を重ねており意志に反するというロシアへのサインか
⇒ノルドストリーム爆破への政府としての沈黙もドイツの米国への暗黙の批判か
(私は米国とノルウェーが爆破した説をとっている⇒ロシアなら栓を閉めれば済むから)
・米国の覇権が世界中で綻びはじめている
⇒逆に欧州同盟国への支配は強まりドイツもフランスも独立国家とは言えない状態
⇒英国、ノルウェー、デンマークもほぼ同様だが他の欧州諸国は微妙な状況
・中国とロシアには自律的な情報ネットワークがあるが欧州は米国GAFAMに支配されている
⇒2013年に元CIA職員によりNSAによる個人情報収集が暴露されたが、驚いたのはロシアや
中国に対する情報収集ではなく同盟国への監視だったこと
⇒NATOも日米同盟も米韓同盟も同盟国に対して米国は支配者として振る舞っている
・「アメリカ帝国システム」を支えてきたのは基軸通貨としてのドルだった
⇒金融システムの覇権を握りドルを発行して世界中から物資を輸入し豊かさを享受してきた
⇒対露制裁による国際金融決済システムからの排除にロシア経済は耐え、それをきっかけに
ドルを介さない国際取引も活発になった
⇒ドル基軸体制の終わりは膨大な貿易赤字をタダでファイナンスする手段を失うことになり、
米国にとって死活問題だが、急激な崩壊は世界中にとって悪夢
⇒米国とドルからの撤退と新たな体制への移行はコントロールされなければいけない
・世界に寄生する米国と自立するロシア
⇒ドルを刷って物資を輸入し豊かに暮らす米国は世界に寄生しており、自国の生存のために
世界覇権を維持しようとする
⇒ロシアはエネルギー面でも経済面でも相対的に自立しており世界覇権を求める理由もない
(わたしはロシア人との接触を意図的に避けており、これは文献上の研究結果)
・ウクライナにもパレスチナにも首を突っ込む米国
⇒世界は「これは自分たちの問題ではない」とみなすべきではないか
⇒「非常に複雑な一つの地域の特殊な問題であって世界の問題ではない」と
⇒殺し合いをしている人たちのナルシズム感情を煽らず、世界中が注目しないことこそが
彼らが紛争から抜け出すための道となるように思う
5 イスラエルは神を信じていない~戦争自体が自己の存在理由に~より
・ニヒリズムという破壊活動
⇒ニヒリズムとは「物や人々や現実を破壊したい」という欲求や衝動のことで、
西洋の宗教的・形而上学的価値観の空白から生じているもの
⇒ニヒリズムとは虚無の産物で「宗教のゼロ状態」の産物
⇒西洋もイスラエルもこの状態に達している
・戦争自体が自己の存在理由に
⇒ウクライナはロシアの侵攻以前から破綻国家だったが強い戦意と抵抗力を示しているのは
ロシアとの戦争自体が自己の存在理由になっているということ
⇒イスラエルも「暴力の行使」が自己目的化してしまった印象を受ける
・イラン(9000万人)と戦争したいというイスラエル(700万人)の欲求
⇒イスラエル人であることは(ユダヤ人であることを意味せず)アラブ人やイラン人と戦うことを
無意識の深層で意味しているのだろう
・最終的に私たちがユダヤ人か否かを決めるのは迫害する側
⇒イスラエルとの絆を感じない現象は米国で始まっている⇒フランスではゆるぎない連帯
・宗教がゼロ状態になる時代に、反ユダヤだった階層やグループが極右化したイスラエルを
熱狂的に支持しているのは非論理的ではない
⇒欧州では移民流入による「イスラム恐怖症」が煙幕となり「イスラエルの戦い」に興奮している
・宗教の三段階
⇒第一段階は活動的でミサや礼拝に行き安息日を守る
⇒第二段階はゾンビ状態で信者ではないが世俗的に宗教由来の価値観は残存する
(この段階で国家の理想や政治的イデオロギーが宗教の代替物として登場)
⇒第三段階が宗教のゼロ状態で宗教由来の個人の道徳観も社会的枠組みも存在しない
⇒イスラエルがどの段階なのか、もはや古典的ユダヤ教ではないのか・・・
⇒ただし本物ユダヤ人の消滅は反ユダヤ主義の消滅を意味するわけではない
6 ロシア・ハンガリーより愛をこめて~ロシア恐怖症という「西洋の病い」~より
・ハンガリーが東欧では例外的にロシア恐怖症に囚われないのは唯一抵抗した自信から
⇒1956年のハンガリー動乱の自信が1989年の東欧最初の鉄のカーテン解放へ
・モスクワの驚くべき正常さにショックを受けた
⇒モスクワの現実と仏メディア報道のあまりのギャップに怒りが湧いた
⇒ロシア嫌いは反ユダヤと同じで差別する側の精神的病い
⇒欧州で英国が最もロシア嫌いなのは英国が最も悪い「空白」状態にあるから
・「自立した欧州」が再登場するなら「ドイツに支配された欧州」になる
⇒従来のドイツ・イタリア・フランスを中心軸とする欧州はウクライナ戦争により、
米国に操られた英国・デンマーク・北欧諸国・バルト三国の軸に代わられた
⇒英仏の好戦論は充分な産業基盤がないので心配ないがドイツ語圏の産業力はロシアの脅威
⇒兵器生産をフル稼働すればロシアが明言している戦術核の使用が現実に
⇒対露制裁によるエネルギー不足からの不況、米国からの貿易不均衡是正の要求
⇒この経済問題を再軍備と軍需産業への転換で解決する可能性
⇒ロシアとの和平か戦争か
・トランプの周囲には奇妙な人間が大勢いる
⇒米国では技術・産業・軍事力の衰退だけでなく道徳の崩壊が起きている
・欧州各国は依然として民族国家だが米国は市民国家
⇒その核だったWASPが消滅したことで空中分解しつつある⇒部族主義への退行
⇒州に権力がある銃社会でウェーバーが定義する「正当な暴力の独占機関」である国家を
一度も実現したことはない
⇒米国社会の崩壊を食い止めるものはない
・日本は核武装すべき
⇒自国の独立を保障し超大国間の紛争に不必要に関わらずに済むから
⇒米国は常に戦争に引きずり込もうとするが核があればパワーゲームから抜け出せる
⇒トランプ政権の国防次官コルビーは現実的な戦略として、中国を封じ込める通常戦力が
米国にない場合、日本・韓国・台湾・オーストラリアによる核保有(同盟国への友好的選択的な
核拡散)が解決策になり各国にも米国にも利益になる、と述べている
(イスラエル熱狂支持の「奇妙な」長官と異なり次官は冷静で優秀な若者)
7 危険なのはイランより米国とイスラエルだ
~日本と同じくイランの核武装は平和に寄与する~より
・核戦争のリスクは不均衡から生まれる
⇒1945年には米国だけが保有していたから広島と長崎に使用できた
⇒冷戦時代に核戦争は起きなかった
⇒戦後に第三次まで続いた印パ戦争は双方の核武装で収まった
⇒東アジアでは核を持たない日本が核を持つ中国と北朝鮮に対峙し、中東ではイスラエルだけが
核を持っており、この不均衡が不安定な状況を作り出している
⇒イランや日本に持たせようとしないのは非西洋人への西洋人の偏見で西洋の最大の弱点
・リビア政権もイラク政権もアラブ系の脆弱な政治システムで指導者が消えると崩壊したが、
ペルシャ系でシーア派のイランは根本的に異なる社会
⇒ハメネイ師が暗殺されてもイランの国家体制が崩壊することなどあり得ない
・アラブとペルシャの違い
⇒スンニ派アラブ諸国の特徴は男系の親族ネットワークの強さで、一族が国家より強力で
国家が存続する場合もサウジアラビア(サウード家のアラビア)のように一族が支配する
⇒イランはペルシャ帝国の末裔で2500年にわたる国家建設の伝統歴史を引き継いでいる
⇒シーア派イランの女性の大学進学率は男性を上回り、出生率もフランスとほぼ同じ
⇒中東の中心スンニ派アラブ諸国の周縁部で男女平等・核家族的特徴を遺しているから
(ユーラシア大陸の周縁部である欧州とくに英仏に近い)
⇒部族集団の概念に立脚するスンニ派の法と家族集団に限定されたシーア派の法
⇒核家族的なイラン社会は部族社会と異なりモサドや協力者の浸透を許したが、要人暗殺が
実行されても属人的ではない近代組織が存在するので戦略的には無意味
・1979年のイラン革命とは
⇒民主化革命でフランス革命やロシア革命のイトコ⇒識字率・出生率との関連から
⇒宗教革命だがピューリタン革命同様に神の名で王制を打倒した「左翼の宗教革命」
⇒シーア派の教義には異議申し立ての伝統がありスンニ派と逆に議論を重んじるシステム
(6人のイラン外交官に食事会でどの大統領候補に投票したかを聞いたら全員が異なる候補に
投票しており、その後は互いに口論がはじまり議論する文化を目の当たりにした)
・米国の締め付けは逆効果
⇒米国の脅威がイラン国内の保守派を強化している
・イランの軍事力分析で核開発より重要なのは弾道ミサイルとドローンの製造
⇒高価な航空戦力を放棄しての「安価な開発」がうまく機能した
⇒イランが膨大な数のエンジニアを輩出しているから可能だった
(米国博士号留学生のエンジニア分野を選ぶ割合はイラン66%中国35%インド39%)
・日本は最初に西洋の支配に立ち向かった国で明治維新はBRICSの先駆け
⇒明治時代の思想的な文献を探せば「国を守るためにはエンジニアが必要」と書かれたものが
きっと見つかるはずだと確信している・・・
・・・・・・・・・・
はてさて・・・
ま、「エンジニアが必要」なことは国防だけでなく日頃から痛感してますが・・・

一部に???な部分もありましたが、そんな見方もあるのかと納得する部分もあったので、
次は(英米)帝国では発禁の書
「西洋の敗北」も読んでみようかな・・・
2026年06月11日
平等について、いま話したいこと
ええ、前回記事の飲酒主義もとい民主主義に関連して・・・

~平等について、いま話したいこと~であります
なぜか歪んでますが対談者の略歴

そう、フランスの経済学者トマ・ピケティとアメリカの政治哲学者マイケル・サンデルが
2024年5月20日、パリの学校で対談した際の内容を編集した本
訳者略歴と奥付

目次

わたくしが興味を持った部分のみのてきとーメモですが、著作物からのメモなので、
公開に問題があれば非公開設定にします
(以下「さ・」はマイケル・サンデルの発言、「ぴ・」はトマ・ピケティの発言からのメモ)
第1章 なぜ不平等を懸念するのかより
さ・ピケティ著書にヨーロッパでは上位10%が所得の1/3以上、保有資産の半分以上を占め、
アメリカではさらに顕著とあるが、なぜそれが問題なのか、から・・・
ぴ・今も多くの不平等があるが長期的には平等に向かう動きであり、それが質問への答えになる
⇒この動きの源は社会運動と政治的要求で権利の平等を求めるもの
⇒18世紀末のフランス革命からアメリカ独立戦争、19世紀には奴隷制廃止、労働運動、男性による
普通選挙、女性参政権への動き、20世紀には社会保障の発達、累進課税、植民地の独立・・・
ここ数十年もこの動きは続いている
⇒1980年代からの新自由主義時代については不平等拡大の時代と言われるがジェンダー間、
人種間、南北間においても平等に向かう長期的な動きは続き、今後も続くとみている
⇒近代民主主義の広がりで基本的な財に対する平等な機会、参加、尊厳への意欲が高まっており、
これが平等への原動力であり、金銭面での不平等についても同じこと
⇒著書の今の数字は正しいが100年前はもっとひどく、200年前はさらにひどかった
⇒決して簡単な道のりではなかったが、これは勝てる可能性のある闘争であり研究することが
次の段階に備える有効な方法になるから(というのが質問への答え)
さ・先ほどの3つ、基本的な財の利用機会、政治的な発言・権限・参加、そして尊厳、
これらを切り離すことができても金銭面での問題は残るか
ぴ・100年前と基本的な財が同じではないこと(高等教育など)と南北問題(資源搾取など)が
今後の大きな問題だが、さらに平等に向けて歩みを進めていくしかない
第2章 お金はもっと重要でなくなるべきかより
さ・再分配と脱商品化についての思考実験
①すべての人の購買力が近くなるよう所得と富を再分配し経済の商品化は現状のままにする
②所得と富は現状のままで経済と社会の脱商品化でお金をあまり重要でないものにする
⇒ラディカルな再分配か、お金のメリットを少なくするか、どちらを選ぶか
ぴ・1930年代からのイギリス・スウェーデンのラディカルな再分配と脱商品化の例(略)
⇒当時のハイエク(新自由主義の元祖といわれる)はソ連のような独裁になると言っていた
⇒最終的には非常にうまくいったが、
⇒1980年代以降は社会民主主義政党の上層部そのものが過去の遺物と見なしはじめた
⇒結論から言えば金銭的不平等の圧縮と脱商品化は同時に行われるべき
⇒福祉国家(福祉だけではないので厳密には社会国家)の出現
⇒1930年から1980年までのアメリカの所得税最高税率平均は82%
⇒それでもアメリカの資本主義は崩壊せず生産性は世界最高だった
⇒当時のアメリカは他国より高校進学率が高く教育(の脱商品化)が繁栄の鍵だった
⇒累進課税が重要なのは金銭的な格差が尊厳や社会的関係に影響を及ぼすだけでなく、
行政機関が経済力を規制する際の有効性の問題でもあるから
⇒たとえば優秀な人材を必要とする公的規制機関の給与がグーグルの1/20だったら・・・
⇒解決策は給与を20倍ではなく所得格差を圧縮することで、歴史的にはうまく機能していた
第3章 市場の道徳的限界より
さ・商品化を懸念するのは経済的不平等により教育や保健医療や政治的発言から締め出す以外にも、
すべてを商品化すれば財の価値そのものが劣悪化するからではないか
⇒高等教育なら商品化により経済的不平等になるのはもちろん、学生が教育の目的を手段として
(よい仕事につき、もっとお金を稼ぐための手段として)見るようになり、大学側も善と価値を
顧みなくなるのではないか
ぴ・高等教育なら教員を毀損することにもなる
⇒学生の成績に応じて金銭的インセンティブを与える実験は多いが、最初は成績が上がる
ことはあっても、6ケ月後には本当は何も学んでいないことがわかる
⇒教員は試験でよい成績を取らせるために教え、本物の学びをさせているわけではないから
⇒教育と保健医療の分野で脱商品化のプロセスがうまくいったのは、その分野で働く人たちの
内在的動機が、金銭や利益の追求という動機によって破壊されやすいからにほかならない
⇒アメリカの医療費はGDPの10%だったのが今や18%、もうすぐ20%になる
⇒ヨーロッパの公的医療制度はもっと少ないお金で、はるかにうまくいっている
⇒なんでも商品化して高い金銭的インセンティブや高い給与を払うのは、仕事や生活で本当に
大切にしているものを壊すことになる
⇒ハーバード大学やアイビーリーグの大学には多くの問題があるが非営利組織
⇒株式会社になれば教員と学生が学び研究する機関で大切にしているものが破壊される
さ・アダム・スミスもカントも講義に出席する学生数に応じた給料・・・
ぴ・それが悪いわけではないが結論として平等主義の脱商品化が大きな成功をおさめた
第4章 グローバリズムとポピュリズムより
さ・二人とも資本やモノの規制なき国家間移動を批判、ヒトの国家間移動には賛成しがちだが、
中道右派の人たちは移民の増加を批判しながら、資本とモノの移動は支持し促進している
⇒矛盾しているのはどちらか
ぴ・労働力の移動については教育や住宅を税金でどうするかというルールが必要だが、これは
資本移動と貿易が規制されれば解決する問題
行き過ぎグローバリゼーションへの反応については細心の注意で区別すべき
⇒トランプやルペンの排外主義や反移民主義、一方でアメリカではサンダースのような反応もある
⇒著書ではどちらもポピュリストとしているが後者は民主社会主義ではないのか
さ・ではフランスでは右派ポピュリストだけをそう呼ぶのか
ぴ・社会主義・国家主義・自由主義は正当なイデオロギーであり民主主義の主張
⇒自由市場グローバリゼーションへの反対者を全てポピュリストと呼べば混同する
さ・やはりヨーロッパとアメリカではポピュリズムのニュアンスが違うようだ
⇒アメリカ政治でのポピュリストは19世紀の鉄道のちに石油も牛耳っていた経済エリートに対し
一致団結した工場労働者と農民たち
⇒進歩的な運動だったが排外主義、反ユダヤ・人種差別主義も最初から存在していた
さ・近年の右派ポピュリズムは進歩的・社会民主的な政策の失敗が生んだ症状
⇒失敗は2008年オバマ政権の金融危機対応でウォール街を救済した
⇒金融と経済の関係を新たに構築することもできたのに、クリントン政権に金融自由化を
推進させた経済学者を登用して銀行を救済し、それへの怒りが政治的立場を超えて広がった
⇒左派ではオキュパイ(反格差)運動やヒラリークリントンに対抗したサンダース大統領候補、
右派ではティーパーティー(反民主党)運動で、それが最終的にトランプ当選につながった
さ・中道左派も中道右派も市場信仰を歓迎したのは、財の価値をどう評価するかという議論を
やらずとも市場があたえてくれるからで、それが市場の魅力の根源ではないか
ぴ・要するに民主主義に対する怖れで自分たちがやっていることの価値を評価しなおすこと
への怖れでもある⇒「再分配というパンドラの箱を開ける」ことへの怖れ
ぴ・グローバリゼーション・金融化・能力主義ウォール街的な新自由主義イデオロギーを
クリントン・オバマ・ブレア・シュレーダーが問い直せず、サンダースやウォーレンが
民主社会主義と呼ぶべき政策を打ち出した
⇒ポピュリストの怒りの表現ではないのに、二人を左派ポピュリストと呼ぶのか
さ・ポピュリズムは再分配についではなくエリートから権力を取り戻すのが主な意味だが
あまり深堀りし過ぎないほうがいいかも・・・
ぴ・でもトランプに使うのと同じ言葉だ・・・
さ・なるほど、それで使いたくないのか・・・
第5章 能力主義より
ぴ・サンデル著「実力も運のうち」の大ファンで、この中ではグローバリゼーション・
金融化・能力主義を新自由主義時代の三本柱として挙げているが、うち能力主義についてと
それを脱する方法として提案されている「くじ引き」入学について訊きたい
⇒「大学は大学のものだから入学方法は理事が決める」という意見もあるが、高等教育は
保健医療とならぶ基本的な財で「自分のお金だからタックスヘブンに送って納税しない」と同じ
⇒「自分のお金」も多くの人たちの労働や公共インフラや法制度によって生み出されたもの
⇒アメリカ有名大学への「くじ引き入学」提案も同じ解釈でいいか
さ・そのとおりだが能力主義にはふたつの問題がある
⇒基本的に能力自体はよいもので手術が必要になれば優秀な医者に手術してもらいたい
⇒1980年代から能力が一種の専制になった
⇒不平等の拡大と成功のとらえ方の変化
⇒機会さえ平等なら成功者が恩恵を受けていいというのが能力主義の原則
⇒アメリカ有名大学の優秀な入学者は所得上位者の家族が多く完全に能力主義ではないが、
⇒仮に平等が実現して完全な能力主義になっても公正な社会は実現しない
⇒「自分のお金」と同じで、自分の成功は多くの人たちによるということを忘れるから
⇒不平等が拡大し失業者が増える中で中道左派も中道右派もアドバイスは「学べば稼げる」
⇒特に昔は労働者階級を支持基盤としていたアメリカ民主党・イギリス労働党・フランス社会党が
高学歴・高経験の専門職階級と価値観・利益・見解を同じくする政党になった
⇒怒りの反発は当然だった
⇒能力主義の成功概念が新自由主義グローバリゼーションの倫理に結びついたことの表れ
ぴ・昔の不平等な政治形態では貴族・軍人・労働者・農民といった集団が必要だったが、
貧しくて当然、金持ちで当然という能力主義は現在の不平等な体制の特徴
⇒レガシー入学や寄付者入学を禁止すべきか、自主的にやめるべきか
さ・そうさせるための世論や道徳的な圧力、ケネディが法案提出した情報の公開・・・
ぴ・もっとラディカルに・・・ルールが間違っているのにアメリカ人が慣れてしまっている
第6章 大学入試や議員選挙にくじ引きを取り入れるべきかより
さ・わたしが提案してるのは「適格者の中からの」くじ引き
⇒スタンフォードなら6万人の志願者のうち上位2万人~3万人の中から2000人をくじ引きで
⇒提案理由は運の要素に気づかせ、勝者の奢りや敗者の屈辱感を問い直してしぼませること
⇒二院制の議会でも一方は寄付制限による選挙で、もう一方はくじ引きで選ばれた市民で
⇒くじ引き選挙は能力主義が生み出した学歴偏重に抗うことにもなる
⇒アメリカ連邦議会でもフランス国民議会でも今は大卒者が殆どで極めてアンバランス
ぴ・入試にはマーコヴィッツ提案(略)のような、くじ引きよりよい方法があるのでは
⇒高等教育の機会は基本的な財なのだから機会均等は入試の義務とも主張できるはず
さ・くじ引き提案の別の狙いは能力主義の奢りをしぼませることで両方の仕組みを検討すべき
ぴ・人口の50%が非大卒なのに議会の現状では5%と仮定して、第2院をくじ引きにすれば
50%になるが、ジュリア・カジェ提案のように人口の50%が非大卒であれば候補者の50%を
非大卒にするよう各政党に義務付ける方法もあり、インドの無作為抽出された25%の選挙区では
1950年以降、すべての政党が指定されたカーストや部族(インド社会の下位25%を占める
グループ)の候補者を立てる
さ・政党名簿式の比例代表制ならそのほうがうまくいくが・・・
ぴ・インドは選挙区制で無作為抽出された25%の選挙区(500なら100)では各政党の候補者は
指定カーストや部族(インド社会の下位25%を占めるグループ)に属してなければならず、
誰が当選しても議会の25%はそのグループの議員が占めることになる
さ・議会の社会的構成・学歴構成・階級構成については(性構成同様)公の議論をすべきで、
くじ引きにこだわっているわけではない
ぴ・では大学制度が能力主義の選別装置・格付け装置になっていることについて
さ・能力主義の競争に備えて武装するより仕事の尊厳を肯定することに目を向けるべき
⇒経済や共通善に(仕事や子育てやコミュニティ活動を通じて)貢献している人たちの生活を
もっとよくすることに重点を置くべき
⇒何を仕事の尊厳と考えるかは右派と左派で意見が分かれるだろうが議論すべき
⇒エリートへの反発は自分たちの仕事の価値がないがしろにされているという感覚
⇒これは主流政党が高等教育で不平等を解消しようとしてきたことにも関係しており、
政治的に真剣に受け止める必要があるが容易ではない
⇒トランプやルペンが煽る人種差別・女性蔑視・外国人嫌悪を責める方が簡単だから
⇒アメリカ連邦政府の大学進学支援支出は年間1620億ドルで職業訓練校支援支出は年間11億ドル
⇒政策策定者の学歴偏重偏見・能力主義偏見がここに反映されている
⇒分配正義の不公平だけでなく労働者階級の仕事への敬意が欠如している
⇒これに拍車をかけているのが金融業界の法外な報酬
⇒ヘッジファンドマネージャーの稼ぎが教師や看護師、さらにいえば医師の5000倍でないと
いけない理由がどこにあるのか
⇒不公平どころか社会が暗黙の裡に身近な意味での仕事を集団で侮辱している
⇒学歴偏重こそが最後まで容認されている偏見であり仕事の尊厳は重要
⇒再分配で解決できる不平等だけが問題ではなく、共通善に貴重な貢献を行っている人たちが
認められず尊敬も尊重もされていない問題にも仕事の尊厳を考えることで気づくことになる
第7章 課税、連帯、コミュニティより
ぴ・公的リソースを増やさないと保健医療分野にもアメリカのように民間リソースが入る
⇒調査分野にもグーグルかマイクロソフトかどこか、教育分野では私立大学リソースになり
すべてに大きな不公平が生じ実際に内在的動機が破壊される
⇒必要なのは公平な税制、累進課税、給与格差と所得格差の大幅圧縮だがサンデルの立場は
さ・累進課税や再分配の倫理的土台は帰属意識・成員意識・共同体意識・連帯感
⇒昔から社会主義の政治や哲学は連帯の概念に大きく頼ってきた
⇒そんな特定の概念は哲学の見地からすると間違いだと思うが、進歩主義者や社会民主主義者が
共通性、コミュニティ、アイデンティティという倫理的土台を扱わずに累進課税を論じようと
ずるのも政治の見地からすると間違っていると思う
⇒共通のプロジェクトに参加し互いに依存しながら責任を分かち合っている感覚と確信を
持つためには共通性を感じられる状態や施設を市民社会の中に創り出す必要がある(例示略)
⇒学校だけでなく住まいも職場も買い物も遊び場も金持ちと貧しい人たちは別々で混在施設が
どんどん減っているが、平等な社会を築くプロジェクトには税率改革以前に必要なもの
ぴ・同意するが双方向であり累進課税を重視せず共通性を擁護することはできるのか
さ・確かに相互依存の関係なので待つのではなく同時にやらなくてはならない
第8章 国境、移民、気候変動より
さ・ピケティ著書にある平等社会を促進する共通性の醸成などほんとうに可能なのか?
⇒再分配をおこないグローバルな正義を広げる連邦制の超国家的枠組みを構築し、なおかつ
リソースを分け合う動機としてのアイデンティティを共有することなど・・・
ぴ・標榜しているのは民主社会主義、連邦制の国際社会主義で世界連邦のようなかたちでの
累進課税がよいと思っているが(略)、アメリカなら国家レベルでも可能
⇒ここ数十年で中道左派政権が自由貿易を推し進め国をまたいでの移動を可能にした
⇒それを利用した富の蓄積や課税逃れの国際法規を構築して手助けをする偽善
⇒国際主義が嫌われトランプの方がクリントンより中立に見えた
⇒フランス北東部ではEUの自由貿易や資本の自由移動で製造業が失われルペンへ
⇒アメリカでも中国との競争で失業者が多い地方でトランプへ
⇒国家が法人税や炭素税の国家間差額を輸入の際に徴収する貿易制裁
⇒通常の保護貿易と異なりすべての国の標準を引き上げる狙いで同じ水準になれば消滅する
⇒世界の経済・金融・会計・環境規制の変化の実現が南と北の調和を図ることにもなる
さ・何らかの世界的合意や超国家的組織を通じて法人税の最低税率を定めるやり方は
ぴ・前述の一方的な方策と国連レベルで最低税率を定める戦略を同時に進める必要がある
⇒OECDレベルでは、すでにはじまっているが最低税率15%は富裕国しかメリットがない
⇒OECDは金持ちクラブだが国連では西側ヨーロッパとアメリカを除くすべての国が
昨年の国連総会で租税条約に賛成した
⇒国際協調は必要だが偽善的でなく南側も考えたものにすべきで、事態を前に進めるには
各国による一方的な方策も必要
さ・炭素排出量のクレジット化について
ぴ・アメリカが国内の炭素排出量を削減せずにすませる方便で大きな反発が生まれる
⇒アメリカとヨーロッパの人口割合に対する排出量が多いから
⇒国ごとに割り当てても国家主義者が勝利するだけ
⇒地域代表的な闘争ではなく階級闘争に近いものにすべき
⇒アメリカだろうがヨーロッパだろうが中国だろうが億万長者や巨大多国籍企業に払わせるべき
⇒グローバル税を課し気候変動にさらされている南側諸国へ直接配分する
さ・あなたの国際社会主義の原理から国境を開放しない正当な理由はあるか?
ぴ・問題は同じでレベルごとに見る必要があるが、人の自由な移動には資金の手当てが要る
⇒たとえばEU加盟国の学生はEUのどの国でも学べるが資金となる連邦制の所得税はない
⇒EU加盟国の学生は無料同然だがEU以外の学生からは高額な授業料を徴収している
⇒これらを改善するには費用を賄うための国際的な税制度が必要になる
⇒このように公共サービス財源さえ計画されていれば人の自由な移動を厳しく制限する理由はない
さ・富裕国には貧しい国からの移民を締め出す権利があるのか?
ぴ・地中海を渡りたがる人をなくすため地中海で死なせるのが現在の方針
⇒2000年の地中海文明で今ほど豊かな時代はなかったのだから、はるかによい方法があるはず
⇒現在の方針も平等主義政策の継続をあきらめ共通善にお金を出さなかった好例で、
⇒国内問題を移民や国境開放のせいにしたりする排外主義がのさばるようになったということ
⇒実際にはヨーロッパ人口5億人に対する移民の流入規模は相対的に小さなもの
第9章 左派の未来ー経済とアイデンティティより
さ・移民問題については「左派の未来」につながるから訊いた
⇒左派の政治的弱みは愛国心・共同体意識・帰属意識の独占を右派に許したこと
⇒移民問題は共同体としての国家にどのような倫理的意味があるかという問いを突きつける
⇒満足できる答えを用意できるかどうかに左派の政治の未来がかかっている
⇒たとえば企業が利益をあげた国に税金を払わないのは経済的愛国心の欠如ではないか
⇒健全な意味での市民の誇りは外国人嫌悪や超国家主義の代わりになるのでは
ぴ・トランプやルペンに票が集まるのは移民の流入より貿易競争による製造業での失業
⇒左派が窮しているのは貿易と雇用の問題に取り組んでいないから
⇒アイデンティティや移民の論議で左派に勝ち目はないが重要なのは投票者の論点の中心に
なっている問題に取り組むこと
⇒アメリカの場合、トランプが大多数を獲得している郡の兆候は製造業の雇用喪失であり、
移民流入ではない⇒フランスも同様(具体例は略)
⇒別の論点では小都市住民のマイカーやマイホームへの偏見の眼
⇒この失業・貿易・競争・交通・住宅の問題が中道左派と中道右派から見捨てられているという
感覚につながっていてアイデンティティの問題よりはるかに大きい
⇒左派の問題は経済構造のあり方を問い直してこなかったこと
⇒産業革命以降の政治議論は国家主義・自由主義・社会主義の間で行われてきた
⇒自由主義での競争で繁栄できたが社会コスト損害や環境破壊を伴った
⇒国家主義は民族連帯で地域コミュニティレベルでの地元利益や連帯強化も必要だが、
解決できる問題には制限もあり昔からの権力温存の建前に利用されることもあった
⇒社会主義は新たな経済システムを構築しようとして社会民主主義・脱商品化・累進課税で
大きな成果をあげてきた
⇒民主主義が機能するには、この三本柱で支えることが必要だがソ連の崩壊以降、社会主義の柱
つまり左派の再分配の柱が弱くなっている
サ・わたしの場合はアイデンティティの問題と経済の問題のはっきりした区別はない
⇒空洞化した工業都市の人たちは賃金停滞や失業だけに苦しんでいたのではなく、自分たち
以外の社会や社会を治める人たちから同胞の市民として大切にされていない、認められず、
尊重されず、尊厳がないがしろにされているという感覚に苦しんでいた
ぴ・気候変動の責任という偏見まで持たれており確かにアイデンティティの問題
さ・この偏見、エリートに見下されているという考え方を承認と帰属の政治という意味で
とらえたいと考えているが、表現するには不満を認識し名称を与える必要がある
ぴ・それは同じではないが左派はその種のアイデンティティに訴えかける必要がある
⇒トランプやルペンは反エリートの立場に立った非難
⇒アメリカでは1980年代まではエリートは共和党に投票していたが現在は逆転している
⇒地域別でも最高級地域や最も豊かな場所では同じ現象で現在は民主党に投票している
⇒だからこそトランプの共和党が実現した
⇒民主党がエリート主義と見られている限りアイデンティティで共和党と競っても訴えられない
さ・ルソーの「人間不平等起源論」(略)は正しかったか?
ぴ・私有財産にしたことは問題ではなく、それを際限なく蓄積することが問題という点で
ルソーに賛成
⇒少数の手に財産が集中し権力が集中することが問題であり、富や財産を所有することは
お金の問題ではなく交渉力の問題になる
⇒所有するものがなく負債しかない場合はどんな賃金でも吞まなければならないが、
10万~30万ドル持っていれば(億万長者からはどちらもゼロ同然だが)家が買え(ニューヨークや
パリでは無理だが国内で買える場所はある)小さな事業をはじめられ引き受ける仕事を少し
選り好みできるようになる
⇒これはまさに交渉する権限の問題
さ・平等とは何か、なぜ重要かを考えるため所得と富、権限や発言権、尊厳や承認まで話した
⇒ルソーと同じように経済、哲学、政治理論を横断することになったが議論が今後も続くことを・・・
・・・・・・
さてさて・・・

~平等について、いま話したいこと~であります
なぜか歪んでますが対談者の略歴

そう、フランスの経済学者トマ・ピケティとアメリカの政治哲学者マイケル・サンデルが
2024年5月20日、パリの学校で対談した際の内容を編集した本
訳者略歴と奥付

目次

わたくしが興味を持った部分のみのてきとーメモですが、著作物からのメモなので、
公開に問題があれば非公開設定にします
(以下「さ・」はマイケル・サンデルの発言、「ぴ・」はトマ・ピケティの発言からのメモ)
第1章 なぜ不平等を懸念するのかより
さ・ピケティ著書にヨーロッパでは上位10%が所得の1/3以上、保有資産の半分以上を占め、
アメリカではさらに顕著とあるが、なぜそれが問題なのか、から・・・
ぴ・今も多くの不平等があるが長期的には平等に向かう動きであり、それが質問への答えになる
⇒この動きの源は社会運動と政治的要求で権利の平等を求めるもの
⇒18世紀末のフランス革命からアメリカ独立戦争、19世紀には奴隷制廃止、労働運動、男性による
普通選挙、女性参政権への動き、20世紀には社会保障の発達、累進課税、植民地の独立・・・
ここ数十年もこの動きは続いている
⇒1980年代からの新自由主義時代については不平等拡大の時代と言われるがジェンダー間、
人種間、南北間においても平等に向かう長期的な動きは続き、今後も続くとみている
⇒近代民主主義の広がりで基本的な財に対する平等な機会、参加、尊厳への意欲が高まっており、
これが平等への原動力であり、金銭面での不平等についても同じこと
⇒著書の今の数字は正しいが100年前はもっとひどく、200年前はさらにひどかった
⇒決して簡単な道のりではなかったが、これは勝てる可能性のある闘争であり研究することが
次の段階に備える有効な方法になるから(というのが質問への答え)
さ・先ほどの3つ、基本的な財の利用機会、政治的な発言・権限・参加、そして尊厳、
これらを切り離すことができても金銭面での問題は残るか
ぴ・100年前と基本的な財が同じではないこと(高等教育など)と南北問題(資源搾取など)が
今後の大きな問題だが、さらに平等に向けて歩みを進めていくしかない
第2章 お金はもっと重要でなくなるべきかより
さ・再分配と脱商品化についての思考実験
①すべての人の購買力が近くなるよう所得と富を再分配し経済の商品化は現状のままにする
②所得と富は現状のままで経済と社会の脱商品化でお金をあまり重要でないものにする
⇒ラディカルな再分配か、お金のメリットを少なくするか、どちらを選ぶか
ぴ・1930年代からのイギリス・スウェーデンのラディカルな再分配と脱商品化の例(略)
⇒当時のハイエク(新自由主義の元祖といわれる)はソ連のような独裁になると言っていた
⇒最終的には非常にうまくいったが、
⇒1980年代以降は社会民主主義政党の上層部そのものが過去の遺物と見なしはじめた
⇒結論から言えば金銭的不平等の圧縮と脱商品化は同時に行われるべき
⇒福祉国家(福祉だけではないので厳密には社会国家)の出現
⇒1930年から1980年までのアメリカの所得税最高税率平均は82%
⇒それでもアメリカの資本主義は崩壊せず生産性は世界最高だった
⇒当時のアメリカは他国より高校進学率が高く教育(の脱商品化)が繁栄の鍵だった
⇒累進課税が重要なのは金銭的な格差が尊厳や社会的関係に影響を及ぼすだけでなく、
行政機関が経済力を規制する際の有効性の問題でもあるから
⇒たとえば優秀な人材を必要とする公的規制機関の給与がグーグルの1/20だったら・・・
⇒解決策は給与を20倍ではなく所得格差を圧縮することで、歴史的にはうまく機能していた
第3章 市場の道徳的限界より
さ・商品化を懸念するのは経済的不平等により教育や保健医療や政治的発言から締め出す以外にも、
すべてを商品化すれば財の価値そのものが劣悪化するからではないか
⇒高等教育なら商品化により経済的不平等になるのはもちろん、学生が教育の目的を手段として
(よい仕事につき、もっとお金を稼ぐための手段として)見るようになり、大学側も善と価値を
顧みなくなるのではないか
ぴ・高等教育なら教員を毀損することにもなる
⇒学生の成績に応じて金銭的インセンティブを与える実験は多いが、最初は成績が上がる
ことはあっても、6ケ月後には本当は何も学んでいないことがわかる
⇒教員は試験でよい成績を取らせるために教え、本物の学びをさせているわけではないから
⇒教育と保健医療の分野で脱商品化のプロセスがうまくいったのは、その分野で働く人たちの
内在的動機が、金銭や利益の追求という動機によって破壊されやすいからにほかならない
⇒アメリカの医療費はGDPの10%だったのが今や18%、もうすぐ20%になる
⇒ヨーロッパの公的医療制度はもっと少ないお金で、はるかにうまくいっている
⇒なんでも商品化して高い金銭的インセンティブや高い給与を払うのは、仕事や生活で本当に
大切にしているものを壊すことになる
⇒ハーバード大学やアイビーリーグの大学には多くの問題があるが非営利組織
⇒株式会社になれば教員と学生が学び研究する機関で大切にしているものが破壊される
さ・アダム・スミスもカントも講義に出席する学生数に応じた給料・・・
ぴ・それが悪いわけではないが結論として平等主義の脱商品化が大きな成功をおさめた
第4章 グローバリズムとポピュリズムより
さ・二人とも資本やモノの規制なき国家間移動を批判、ヒトの国家間移動には賛成しがちだが、
中道右派の人たちは移民の増加を批判しながら、資本とモノの移動は支持し促進している
⇒矛盾しているのはどちらか
ぴ・労働力の移動については教育や住宅を税金でどうするかというルールが必要だが、これは
資本移動と貿易が規制されれば解決する問題
行き過ぎグローバリゼーションへの反応については細心の注意で区別すべき
⇒トランプやルペンの排外主義や反移民主義、一方でアメリカではサンダースのような反応もある
⇒著書ではどちらもポピュリストとしているが後者は民主社会主義ではないのか
さ・ではフランスでは右派ポピュリストだけをそう呼ぶのか
ぴ・社会主義・国家主義・自由主義は正当なイデオロギーであり民主主義の主張
⇒自由市場グローバリゼーションへの反対者を全てポピュリストと呼べば混同する
さ・やはりヨーロッパとアメリカではポピュリズムのニュアンスが違うようだ
⇒アメリカ政治でのポピュリストは19世紀の鉄道のちに石油も牛耳っていた経済エリートに対し
一致団結した工場労働者と農民たち
⇒進歩的な運動だったが排外主義、反ユダヤ・人種差別主義も最初から存在していた
さ・近年の右派ポピュリズムは進歩的・社会民主的な政策の失敗が生んだ症状
⇒失敗は2008年オバマ政権の金融危機対応でウォール街を救済した
⇒金融と経済の関係を新たに構築することもできたのに、クリントン政権に金融自由化を
推進させた経済学者を登用して銀行を救済し、それへの怒りが政治的立場を超えて広がった
⇒左派ではオキュパイ(反格差)運動やヒラリークリントンに対抗したサンダース大統領候補、
右派ではティーパーティー(反民主党)運動で、それが最終的にトランプ当選につながった
さ・中道左派も中道右派も市場信仰を歓迎したのは、財の価値をどう評価するかという議論を
やらずとも市場があたえてくれるからで、それが市場の魅力の根源ではないか
ぴ・要するに民主主義に対する怖れで自分たちがやっていることの価値を評価しなおすこと
への怖れでもある⇒「再分配というパンドラの箱を開ける」ことへの怖れ
ぴ・グローバリゼーション・金融化・能力主義ウォール街的な新自由主義イデオロギーを
クリントン・オバマ・ブレア・シュレーダーが問い直せず、サンダースやウォーレンが
民主社会主義と呼ぶべき政策を打ち出した
⇒ポピュリストの怒りの表現ではないのに、二人を左派ポピュリストと呼ぶのか
さ・ポピュリズムは再分配についではなくエリートから権力を取り戻すのが主な意味だが
あまり深堀りし過ぎないほうがいいかも・・・
ぴ・でもトランプに使うのと同じ言葉だ・・・
さ・なるほど、それで使いたくないのか・・・
第5章 能力主義より
ぴ・サンデル著「実力も運のうち」の大ファンで、この中ではグローバリゼーション・
金融化・能力主義を新自由主義時代の三本柱として挙げているが、うち能力主義についてと
それを脱する方法として提案されている「くじ引き」入学について訊きたい
⇒「大学は大学のものだから入学方法は理事が決める」という意見もあるが、高等教育は
保健医療とならぶ基本的な財で「自分のお金だからタックスヘブンに送って納税しない」と同じ
⇒「自分のお金」も多くの人たちの労働や公共インフラや法制度によって生み出されたもの
⇒アメリカ有名大学への「くじ引き入学」提案も同じ解釈でいいか
さ・そのとおりだが能力主義にはふたつの問題がある
⇒基本的に能力自体はよいもので手術が必要になれば優秀な医者に手術してもらいたい
⇒1980年代から能力が一種の専制になった
⇒不平等の拡大と成功のとらえ方の変化
⇒機会さえ平等なら成功者が恩恵を受けていいというのが能力主義の原則
⇒アメリカ有名大学の優秀な入学者は所得上位者の家族が多く完全に能力主義ではないが、
⇒仮に平等が実現して完全な能力主義になっても公正な社会は実現しない
⇒「自分のお金」と同じで、自分の成功は多くの人たちによるということを忘れるから
⇒不平等が拡大し失業者が増える中で中道左派も中道右派もアドバイスは「学べば稼げる」
⇒特に昔は労働者階級を支持基盤としていたアメリカ民主党・イギリス労働党・フランス社会党が
高学歴・高経験の専門職階級と価値観・利益・見解を同じくする政党になった
⇒怒りの反発は当然だった
⇒能力主義の成功概念が新自由主義グローバリゼーションの倫理に結びついたことの表れ
ぴ・昔の不平等な政治形態では貴族・軍人・労働者・農民といった集団が必要だったが、
貧しくて当然、金持ちで当然という能力主義は現在の不平等な体制の特徴
⇒レガシー入学や寄付者入学を禁止すべきか、自主的にやめるべきか
さ・そうさせるための世論や道徳的な圧力、ケネディが法案提出した情報の公開・・・
ぴ・もっとラディカルに・・・ルールが間違っているのにアメリカ人が慣れてしまっている
第6章 大学入試や議員選挙にくじ引きを取り入れるべきかより
さ・わたしが提案してるのは「適格者の中からの」くじ引き
⇒スタンフォードなら6万人の志願者のうち上位2万人~3万人の中から2000人をくじ引きで
⇒提案理由は運の要素に気づかせ、勝者の奢りや敗者の屈辱感を問い直してしぼませること
⇒二院制の議会でも一方は寄付制限による選挙で、もう一方はくじ引きで選ばれた市民で
⇒くじ引き選挙は能力主義が生み出した学歴偏重に抗うことにもなる
⇒アメリカ連邦議会でもフランス国民議会でも今は大卒者が殆どで極めてアンバランス
ぴ・入試にはマーコヴィッツ提案(略)のような、くじ引きよりよい方法があるのでは
⇒高等教育の機会は基本的な財なのだから機会均等は入試の義務とも主張できるはず
さ・くじ引き提案の別の狙いは能力主義の奢りをしぼませることで両方の仕組みを検討すべき
ぴ・人口の50%が非大卒なのに議会の現状では5%と仮定して、第2院をくじ引きにすれば
50%になるが、ジュリア・カジェ提案のように人口の50%が非大卒であれば候補者の50%を
非大卒にするよう各政党に義務付ける方法もあり、インドの無作為抽出された25%の選挙区では
1950年以降、すべての政党が指定されたカーストや部族(インド社会の下位25%を占める
グループ)の候補者を立てる
さ・政党名簿式の比例代表制ならそのほうがうまくいくが・・・
ぴ・インドは選挙区制で無作為抽出された25%の選挙区(500なら100)では各政党の候補者は
指定カーストや部族(インド社会の下位25%を占めるグループ)に属してなければならず、
誰が当選しても議会の25%はそのグループの議員が占めることになる
さ・議会の社会的構成・学歴構成・階級構成については(性構成同様)公の議論をすべきで、
くじ引きにこだわっているわけではない
ぴ・では大学制度が能力主義の選別装置・格付け装置になっていることについて
さ・能力主義の競争に備えて武装するより仕事の尊厳を肯定することに目を向けるべき
⇒経済や共通善に(仕事や子育てやコミュニティ活動を通じて)貢献している人たちの生活を
もっとよくすることに重点を置くべき
⇒何を仕事の尊厳と考えるかは右派と左派で意見が分かれるだろうが議論すべき
⇒エリートへの反発は自分たちの仕事の価値がないがしろにされているという感覚
⇒これは主流政党が高等教育で不平等を解消しようとしてきたことにも関係しており、
政治的に真剣に受け止める必要があるが容易ではない
⇒トランプやルペンが煽る人種差別・女性蔑視・外国人嫌悪を責める方が簡単だから
⇒アメリカ連邦政府の大学進学支援支出は年間1620億ドルで職業訓練校支援支出は年間11億ドル
⇒政策策定者の学歴偏重偏見・能力主義偏見がここに反映されている
⇒分配正義の不公平だけでなく労働者階級の仕事への敬意が欠如している
⇒これに拍車をかけているのが金融業界の法外な報酬
⇒ヘッジファンドマネージャーの稼ぎが教師や看護師、さらにいえば医師の5000倍でないと
いけない理由がどこにあるのか
⇒不公平どころか社会が暗黙の裡に身近な意味での仕事を集団で侮辱している
⇒学歴偏重こそが最後まで容認されている偏見であり仕事の尊厳は重要
⇒再分配で解決できる不平等だけが問題ではなく、共通善に貴重な貢献を行っている人たちが
認められず尊敬も尊重もされていない問題にも仕事の尊厳を考えることで気づくことになる
第7章 課税、連帯、コミュニティより
ぴ・公的リソースを増やさないと保健医療分野にもアメリカのように民間リソースが入る
⇒調査分野にもグーグルかマイクロソフトかどこか、教育分野では私立大学リソースになり
すべてに大きな不公平が生じ実際に内在的動機が破壊される
⇒必要なのは公平な税制、累進課税、給与格差と所得格差の大幅圧縮だがサンデルの立場は
さ・累進課税や再分配の倫理的土台は帰属意識・成員意識・共同体意識・連帯感
⇒昔から社会主義の政治や哲学は連帯の概念に大きく頼ってきた
⇒そんな特定の概念は哲学の見地からすると間違いだと思うが、進歩主義者や社会民主主義者が
共通性、コミュニティ、アイデンティティという倫理的土台を扱わずに累進課税を論じようと
ずるのも政治の見地からすると間違っていると思う
⇒共通のプロジェクトに参加し互いに依存しながら責任を分かち合っている感覚と確信を
持つためには共通性を感じられる状態や施設を市民社会の中に創り出す必要がある(例示略)
⇒学校だけでなく住まいも職場も買い物も遊び場も金持ちと貧しい人たちは別々で混在施設が
どんどん減っているが、平等な社会を築くプロジェクトには税率改革以前に必要なもの
ぴ・同意するが双方向であり累進課税を重視せず共通性を擁護することはできるのか
さ・確かに相互依存の関係なので待つのではなく同時にやらなくてはならない
第8章 国境、移民、気候変動より
さ・ピケティ著書にある平等社会を促進する共通性の醸成などほんとうに可能なのか?
⇒再分配をおこないグローバルな正義を広げる連邦制の超国家的枠組みを構築し、なおかつ
リソースを分け合う動機としてのアイデンティティを共有することなど・・・
ぴ・標榜しているのは民主社会主義、連邦制の国際社会主義で世界連邦のようなかたちでの
累進課税がよいと思っているが(略)、アメリカなら国家レベルでも可能
⇒ここ数十年で中道左派政権が自由貿易を推し進め国をまたいでの移動を可能にした
⇒それを利用した富の蓄積や課税逃れの国際法規を構築して手助けをする偽善
⇒国際主義が嫌われトランプの方がクリントンより中立に見えた
⇒フランス北東部ではEUの自由貿易や資本の自由移動で製造業が失われルペンへ
⇒アメリカでも中国との競争で失業者が多い地方でトランプへ
⇒国家が法人税や炭素税の国家間差額を輸入の際に徴収する貿易制裁
⇒通常の保護貿易と異なりすべての国の標準を引き上げる狙いで同じ水準になれば消滅する
⇒世界の経済・金融・会計・環境規制の変化の実現が南と北の調和を図ることにもなる
さ・何らかの世界的合意や超国家的組織を通じて法人税の最低税率を定めるやり方は
ぴ・前述の一方的な方策と国連レベルで最低税率を定める戦略を同時に進める必要がある
⇒OECDレベルでは、すでにはじまっているが最低税率15%は富裕国しかメリットがない
⇒OECDは金持ちクラブだが国連では西側ヨーロッパとアメリカを除くすべての国が
昨年の国連総会で租税条約に賛成した
⇒国際協調は必要だが偽善的でなく南側も考えたものにすべきで、事態を前に進めるには
各国による一方的な方策も必要
さ・炭素排出量のクレジット化について
ぴ・アメリカが国内の炭素排出量を削減せずにすませる方便で大きな反発が生まれる
⇒アメリカとヨーロッパの人口割合に対する排出量が多いから
⇒国ごとに割り当てても国家主義者が勝利するだけ
⇒地域代表的な闘争ではなく階級闘争に近いものにすべき
⇒アメリカだろうがヨーロッパだろうが中国だろうが億万長者や巨大多国籍企業に払わせるべき
⇒グローバル税を課し気候変動にさらされている南側諸国へ直接配分する
さ・あなたの国際社会主義の原理から国境を開放しない正当な理由はあるか?
ぴ・問題は同じでレベルごとに見る必要があるが、人の自由な移動には資金の手当てが要る
⇒たとえばEU加盟国の学生はEUのどの国でも学べるが資金となる連邦制の所得税はない
⇒EU加盟国の学生は無料同然だがEU以外の学生からは高額な授業料を徴収している
⇒これらを改善するには費用を賄うための国際的な税制度が必要になる
⇒このように公共サービス財源さえ計画されていれば人の自由な移動を厳しく制限する理由はない
さ・富裕国には貧しい国からの移民を締め出す権利があるのか?
ぴ・地中海を渡りたがる人をなくすため地中海で死なせるのが現在の方針
⇒2000年の地中海文明で今ほど豊かな時代はなかったのだから、はるかによい方法があるはず
⇒現在の方針も平等主義政策の継続をあきらめ共通善にお金を出さなかった好例で、
⇒国内問題を移民や国境開放のせいにしたりする排外主義がのさばるようになったということ
⇒実際にはヨーロッパ人口5億人に対する移民の流入規模は相対的に小さなもの
第9章 左派の未来ー経済とアイデンティティより
さ・移民問題については「左派の未来」につながるから訊いた
⇒左派の政治的弱みは愛国心・共同体意識・帰属意識の独占を右派に許したこと
⇒移民問題は共同体としての国家にどのような倫理的意味があるかという問いを突きつける
⇒満足できる答えを用意できるかどうかに左派の政治の未来がかかっている
⇒たとえば企業が利益をあげた国に税金を払わないのは経済的愛国心の欠如ではないか
⇒健全な意味での市民の誇りは外国人嫌悪や超国家主義の代わりになるのでは
ぴ・トランプやルペンに票が集まるのは移民の流入より貿易競争による製造業での失業
⇒左派が窮しているのは貿易と雇用の問題に取り組んでいないから
⇒アイデンティティや移民の論議で左派に勝ち目はないが重要なのは投票者の論点の中心に
なっている問題に取り組むこと
⇒アメリカの場合、トランプが大多数を獲得している郡の兆候は製造業の雇用喪失であり、
移民流入ではない⇒フランスも同様(具体例は略)
⇒別の論点では小都市住民のマイカーやマイホームへの偏見の眼
⇒この失業・貿易・競争・交通・住宅の問題が中道左派と中道右派から見捨てられているという
感覚につながっていてアイデンティティの問題よりはるかに大きい
⇒左派の問題は経済構造のあり方を問い直してこなかったこと
⇒産業革命以降の政治議論は国家主義・自由主義・社会主義の間で行われてきた
⇒自由主義での競争で繁栄できたが社会コスト損害や環境破壊を伴った
⇒国家主義は民族連帯で地域コミュニティレベルでの地元利益や連帯強化も必要だが、
解決できる問題には制限もあり昔からの権力温存の建前に利用されることもあった
⇒社会主義は新たな経済システムを構築しようとして社会民主主義・脱商品化・累進課税で
大きな成果をあげてきた
⇒民主主義が機能するには、この三本柱で支えることが必要だがソ連の崩壊以降、社会主義の柱
つまり左派の再分配の柱が弱くなっている
サ・わたしの場合はアイデンティティの問題と経済の問題のはっきりした区別はない
⇒空洞化した工業都市の人たちは賃金停滞や失業だけに苦しんでいたのではなく、自分たち
以外の社会や社会を治める人たちから同胞の市民として大切にされていない、認められず、
尊重されず、尊厳がないがしろにされているという感覚に苦しんでいた
ぴ・気候変動の責任という偏見まで持たれており確かにアイデンティティの問題
さ・この偏見、エリートに見下されているという考え方を承認と帰属の政治という意味で
とらえたいと考えているが、表現するには不満を認識し名称を与える必要がある
ぴ・それは同じではないが左派はその種のアイデンティティに訴えかける必要がある
⇒トランプやルペンは反エリートの立場に立った非難
⇒アメリカでは1980年代まではエリートは共和党に投票していたが現在は逆転している
⇒地域別でも最高級地域や最も豊かな場所では同じ現象で現在は民主党に投票している
⇒だからこそトランプの共和党が実現した
⇒民主党がエリート主義と見られている限りアイデンティティで共和党と競っても訴えられない
さ・ルソーの「人間不平等起源論」(略)は正しかったか?
ぴ・私有財産にしたことは問題ではなく、それを際限なく蓄積することが問題という点で
ルソーに賛成
⇒少数の手に財産が集中し権力が集中することが問題であり、富や財産を所有することは
お金の問題ではなく交渉力の問題になる
⇒所有するものがなく負債しかない場合はどんな賃金でも吞まなければならないが、
10万~30万ドル持っていれば(億万長者からはどちらもゼロ同然だが)家が買え(ニューヨークや
パリでは無理だが国内で買える場所はある)小さな事業をはじめられ引き受ける仕事を少し
選り好みできるようになる
⇒これはまさに交渉する権限の問題
さ・平等とは何か、なぜ重要かを考えるため所得と富、権限や発言権、尊厳や承認まで話した
⇒ルソーと同じように経済、哲学、政治理論を横断することになったが議論が今後も続くことを・・・
・・・・・・
さてさて・・・
2026年06月07日
現代ファシズム論
ええ、

現代ファシズム論~何が民主主義を壊すのか~であります
(ローマ字入力で何度か「民主主義」が「飲酒主義」と変換されましたが・・・
)
表紙カバー裏にあった惹句

著者紹介と奥付

目次



以下、じつにてきとーなメモですが著作物からなので問題があれば非公開設定にします
序章より
・2016年アメリカのトランプ当選とイギリスのEU離脱がファシズム議論のきっかけ
(戦後それまでは殆どの民主主義国で代表民主主義と政党政治への支持が持続していた)
⇒ドイツのための選択肢やフランス国民戦線も政治の約束事を嘲笑し虚偽を撒き少数派を否定した
⇒権力の濫用や私物化については日本の第2次安倍政権が世界での先行事例
⇒世界の学者や有識者が民主主義の危機を先進国のファシズムの入口とした
・本書では戦後民主政治の形成と1990年代以降のグローバル化・情報革命の中での崩壊を
振り返り、民主政治の動揺がいかにファシズムへの接近をもたらしているかを考察したい
⇒そして最後に現代版ファシズムに対抗するために何をなすべきかを考える
第1章より
・戦後の民主主義国家では国際協調、ケインズ主義、福祉国家への合意が形成された
⇒アメリカではニューディールの遺産が継続され党派を超えた福祉合意が存在した
⇒イギリスでもアトリー政権以降の福祉国家路線が二大政党に堅持された
⇒ドイツではファシズムの絶対否定と謝罪による国際社会への低姿勢による協調
(ワイマール憲法の生存権・組合の経営参加・社会保障拡充などを実現した)
⇒日本では1950年代まで戦後民主憲法体制そのものが政治で争われていたが、
⇒1960年安保の混乱責任で岸信介が退陣、自民党が戦後憲法を承認し体制が定着した
⇒各国とも基本は数年に一度の投票により政治家・エリートによる政策調整を待つパターン
・戦後のマスメディアは自由の担い手として高い自立性を持っていた
⇒この時代の情報提供は一方的だったがチェック機能があり基本的に信頼されていた
・1970年代まで先進国の民主主義に参加する市民は人種・宗教・言語などが均質的だった
⇒1980年代後半から移民など多様な社会の統合問題が表面化
⇒1990年代以降は経済のグローバル化・冷戦後の地域紛争・EUの東欧への拡大など
⇒資本と労働力の移動・製造業移転・情報技術の進歩・意識そのものの変化
・20世紀後半の30年間は民主主義の安定・経済的豊かさの達成という例外的な静穏期
⇒2010年代には資本主義の破壊性や苛烈さ、民主主義の不安定さが露呈する
⇒否定したはずのファシズムが先進国にも現れる
⇒以下の章で民主主義の前提崩壊について考察する・・・
第2章より
・経済成長と賃金上昇の好循環、冷戦による社会主義との競争⇒福祉国家・平等分配へ
⇒これが西側の政治経済エリートにとっても有益であり大きな合意が存在した
・総力戦・大恐慌・社会主義体制の存在が経済に介入する戦後の大きな政府をもたらした
⇒福祉国家・平等分配についての保守革新を超えた大きな合意
(日本では民間での労使協調・自民党の建設業雇用による地域所得格差の縮小)
・2度の石油危機、スタグフレーションからの脱却政策として80年代から90年代にかけて
減税、規制緩和、民営化を軸とする新自由主義が拡がる
⇒サッチャー・レーガンによる福祉国家の縮小、中曽根による行政改革(公共政策の縮小)
⇒保守政党による「平等から自由へ」⇒その自由は雇用側の自由・富の追及の自由
⇒非正規雇用・低賃金⇒格差の拡大
・民主政治は定住地に愛着を持つ前提
⇒代表民主主義も基本的に地域単位で利益も地域社会の改良
⇒グローバル資本主義の生産拠点は土地・労働力の安い場所に世界規模で移動する
⇒金融・情報企業は先端大都市に立地するが仕事には特定分野の高度なスキルが必要
⇒先端産業ではそもそも大量の労働力を必要としない
⇒地方から移動できず待遇の悪い仕事か大都市に移動しても補助的な仕事しかない
⇒21世紀の格差は貧困層と富裕層という階層格差と先端大都市と荒廃地方との空間的格差
⇒地域社会が荒廃すれば民主政治の前提も崩壊するが、
⇒新自由主義では荒廃地域から移動しないのは自己責任で地域間格差の縮小政策はしない
⇒地域間でも政治への疎外感、被害者意識から反感と憎悪の政治を生み出す
・1990年代の中道左派勢力もグローバル資本主義を前提として受け入れた
⇒平等とは雇用機会の平等であり政府の役割は能力開発・教育投資とした
⇒ドイツ・シュレーダー政権では雇用制度を柔軟化し国際競争力が向上、失業率も低下した
・労働者の権利拡大が20世紀後半の公平な分配の基礎的な条件となったが、21世紀の資本主義は
19世紀にマルクスが描いた苛烈な資本主義に先祖返りした⇒収奪的システム
⇒生産性上昇による付加価値が労働者に還元される割合が低下している(非正規雇用など)
⇒特に日本だけ実質賃金が停滞したまま⇒収奪的システムの典型例
⇒中道左派は対応できず左派は政権から遠くなり右派ポピュリストが支持を広げている
・民主党オバマの医療制度改革などは金権政治により議会で阻止された
⇒政治資金規正法の違憲判決により共和党が躍進⇒格差の拡大
・1%が99%を分断している現状を改善できない政治への無力感⇒政治への無関心へ
⇒資金力を持つ1%の政治家への影響力が一層大きくなるという悪循環へ
第3章より
・民主主義とメディアの関係
⇒100年前の「ステレオタイプ」がSNSのエコーチェンバー・フィルターバブルにも
⇒対面では言葉のエスカレートには限界があるがネット空間では自制は働かない
・インターネットの悲観と楽観
⇒新聞購読、テレビ視聴が激減し、さらにその質が低下するという悪循環
⇒ネット配信ニュースの大半は新聞社が提供しており伝統的メディアは誤報を訂正謝罪する
・インターネットによる民主主義の混乱
⇒2016年アメリカのトランプ当選とイギリスのEU離脱
⇒ネット上のフェイクニュース垂れ流しによって民意が誘導された
⇒それまでのテレビCMは製作者が明確でネガティブキャンペーンでも虚偽は責任追及された
⇒支持者がネット上で虚偽宣伝しても候補者の責任を追及することは困難
⇒事実や真実が意味を持たなくなり、それを超越した政治的議論に⇒ポスト真実
・SNSと活版印刷のメディアとしての類似性
⇒職業的媒介者(コミュニケーター)なしに直接情報を取得・発信できる⇒500年ぶりの革命
⇒印刷術は文字による啓蒙の手段となったがSNSは感情に反応し啓蒙の終わりをもたらした
・格差社会で普通の人は富の獲得や社会的地位の向上では満足を得られないが「いいね」や
ヒット数の多さでは簡便に満足を得られる
⇒消費ではなく発信によって賞賛を得る行動様式が日常になった
⇒「神なき時代におけるルターの万人祭司主義」に・・・
・SNSは事実の共有による議論という民主政治の前提を破壊した⇒政治を劣化させた
第4章より
・フランシス・フクヤマ「歴史の終わり」
⇒冷戦の終わりにより民主主義と市場経済の基本的原理が前提になったと主張した
⇒原題のENDは目標・目的の意味だが日本語の「終わり」にはこの意味がなく誤解が多い
⇒冷戦の終結で民主主義への不断の努力が軽視され退行現象が始まった
・リンカーン「人民の人民による人民のための政治」(人民はMEN⇒白人男性のみ)
⇒政策が複雑になれば専門の知識や技術がいる⇒人民には判断できない
⇒FORには「~に代わって」の意味もありエリートによる支配に転化する(原発と事故の例)
⇒ただし人民による支配が人民に幸福をもたらす保証はない(新型コロナ対策の例)
⇒しかし人民には意思決定ができないとするのは愚民思想であり手続と議論が必要
⇒議論とは様々な意見を(少数者意見も)尊重する自由主義だが人民の支配は最終的に多数決
⇒なのでブレーキや関門を用意することで民主主義と自由主義のバランスは保たれている
・予備選挙や国民投票など直接民主制は一般市民が政治に関心を持ち誠実に政策を選ぶ前提
⇒2016年アメリカのトランプ当選とイギリスのEU離脱
⇒民主主義による制度がデマ・情報操作・脱イデオロギー的ポピュリストアプローチにより
非合理な政策選択(EU離脱)や民主政治を破壊する指導者(トランプ)を生み出した(略)
・民主主義の多数支配以外の原理とメカニズム
⇒法の支配(立憲主義)⇒民主的に選ばれた権力者でも上位法には従わなければならない
⇒文字に書かれていない法(慣習・常識・暗黙の了解など)を「柔らかいガードレール」と定義
⇒重視したのは組織的自制心(禁止でなくても自ら抑制する)と相互的寛容(民主政治の政党同士)
⇒独立機関への人事権があっても介入しない、権力を持った際にライバル政党を弾圧しない
⇒アメリカではこれまで「柔らかいガードレール」の中で民主政治が営まれてきた
・大衆社会で選ばれる指導者は「大衆そのもの」で「甘やかされた子供」で「慢心した坊ちゃん」
⇒家庭内と同じで何をしても罪にならず公私のけじめもない
⇒自制心を持たず規範を無視して権力を行使する
⇒その結果が家産制国家(税収は権力者の財産で官僚は権力者の下僕という国家)
⇒世界では2010年代の日本(安倍)が最初でアメリカ(トランプ)や一部ヨーロッパにも波及した
・企業の命題は利益を最大化することでCEOが上意下達で実行し指標に達しないものを解雇する
⇒政府の命題は秩序や健康の維持など様々な公益の実現で、もともと成果指標はない
⇒そこに企業モデルを採用するとすれば疑似的な指標を設定するしかない
⇒それを達したものを評価し、達しないものを解雇する
(その際に官僚に求められるのは専門知識ではなく支配者の意に沿う形式を整える能力)
・治安の改善が本来の目標(命題)なのに不法移民の摘発件数を指標として使わされる
⇒職員は上から指示された指標に向かって努力する(評価基準への迎合)
⇒不法移民の摘発件数を増やすこと自体が目標となる(目標の転移)
⇒反発した移民・追い込まれた移民らの犯罪が増え治安が悪化しても構わない
⇒公益の実現ではなく疑似目的への奔走は官僚主義を悪化させる
・独裁的企業経営の手法を政府に持ち込めば国民全体に不利益を及ぼす
⇒企業経営を誤れば業績が悪化しCEOが責任を取るが政府の業績悪化は見えにくい
⇒支配者が専門職員による自由な批判を力で封じれば誤った政策は続く
第5章より
・日本では1955年に二つの保守勢力が結集して自由民主党が結成された
⇒戦争を失敗と反省した経済中心路線の財務官僚出身政治家などのグループと、
⇒第9条改正・天皇の地位強化など戦前復古を志向した内務官僚出身政治家などのグループ
⇒改憲などのイデオロギーを棚上げし柔軟穏健路線になったのは戦後体制への広範な支持と
それに支えられた左派政党の存在があったから⇒1960年安保で決定的になった(岸の退陣)
⇒その後の長期安定政権下での官僚制の弊害・市民要求の無視・政治腐敗はあったものの、
選挙・言論の自由など自由民主主義の基本条件は満たされていた
⇒大雑把な平和主義には国民合意が存在し、それに従う自民党は民主主義を実践したといえる
・戦後民主主義の頂点は1995年
⇒非自民連立の細川政権が短命に終わり自民党がライバルの社会党と連立して政権に復帰した
⇒当時の自民党の最大の敵であった小沢一郎の戦後民主主義への修正姿勢に対抗するグループが
自民党の主導権を握っており、戦後民主主義や平和主義を肯定的に評価する歴史観を出した
⇒社会党は自衛隊や日米安保を合憲と受け入れる転換をして自民党との合意を形成した
⇒この合意が歴史に残る形になったのが村山首相の「戦後50年談話」
⇒村山政権下で少数者の権利擁護・地方分権・市民参加制度の改革も着手された
⇒戦後50年をはさむ数年間は戦後日本の民主主義について最も幅広い合意が形成されていた
・その後の30年で自民党が大きく変質し政治の雰囲気も大きく変化した要因
①時間経過による戦争経験者の消失
⇒日本ではドイツと異なり人々の実感レベルで戦争を否定する感情が共有されていた
(田中角栄談「戦争を体験した政治家がいなくなったら日本は危ない」)
(ドイツにも歴史修正主義は存在するが日本では政権与党に浸透しているのが大きな違い)
②経済停滞の長期継続
⇒経済成長期には税の増収分を国民の要求に応じて配分する民主政治だった
⇒1980年代以降は配分が縮小し1990年代にはグローバル化による雇用の流動化と賃金停滞
⇒政策決定がゼロサムゲームになった⇒政策により損得側がはっきり別れる
(円安誘導で輸出企業は得するが物価上昇により庶民は損するなど)
⇒政策の本質を損する側に理解させないためのキャンペーンに(小泉政権の構造改革が典型例)
⇒損する側が圧倒的に多くても政治に関わる余裕がなければ民主主義は作動しない(99:1)
③人口減少と高齢化の急速な進行
⇒人口減少で国内需要も労働力も減少、投資も抑制され非大都市圏の存続は不可能に
⇒明るい未来を想像できない若い世代に政治参加の意欲がなくなる
⇒社会保障制度は高齢少子化で税と保険料負担が増え若い世代には受益のない負担と映る
(若い世代も未来の高齢者だが明るい未来が想像できないので今を煽る政治家が出現する)
⇒公的負担を減らせという世論が形成されれば政府は弱体化し、あてにならない政府への
公的負担を忌避する悪循環に
・この30年間で前向きの政治論議がしにくい風潮が広まった
⇒民主政治にとっての静かな危機
・安倍政治の10年
①家産制国家への逆行(公私混同・恣意的人事・統計偽装・忖度違法行為など)
②統治機構内の中立の侵害と党派化
⇒統治機構では司法検察以外にも会計検査院・内閣法制局・日本学術会議などは独立性が重要
⇒日本銀行やNHKは統治機構ではないが中立性が期待されている
・これらを全て制圧して内閣の牽制やチェックを無効化した(後継政権も)
⇒これらを統制することが選挙で選ばれた内閣が民意を貫徹することだという理屈
⇒民意の絶対化によって実際には権力の私物化や恣意的な支配を正当化した
⇒この現象はトランプ政権下のアメリカや一部ヨーロッパの国でも起きている
・家産制国家への逆行は国家の能力を低下させ、国民は国家の無能さを攻撃し、さらに政府から
人材と資源を奪うという悪循環⇒日本でもアメリカでも起きている⇒先は無政府状態
・安倍長期政権は具体的な政策的成果を挙げていないが安定していた
⇒その理由は諦めと無関心に基づいた多数決にある
⇒民主党政権の失敗、大震災、原発事故により日常が続くだけで満足するようになった
⇒より良い社会を求めることへの諦めと表裏一体で、政治参加(投票)への消極性にも
⇒諦めと無関心が続けば家産制国家は民主主義の手続きで持続する
・2020年代の生活苦で政治不満がはじまり2024年衆院選2025年参院選で自民党が大敗
⇒多党化が進み排外主義を煽り減税や生活支援を訴える政党が支持を得ている
・外国人が福祉で優遇されているなどのデマや虚偽、SNSの活用
(外国人旅行者の増加は安倍政権の円安政策、外国企業や富裕層の不動産購入は安倍政権の
開放政策の帰結だが、安倍信者だった参政党の政治家がこれを糾弾している)
⇒国内産業や農業の保護は農民や自営業者、これまでのグローバル化で圧迫されてきた、
海外市場とは無縁の中小企業労働者にとって共感できる政策
⇒従来政策で取り残された中堅層への救済策を唱えるのはトランプのMAGAから学習?
⇒女性就労やLGBTの権利、終末期医療などを否定するのは周縁部を劣後させる意図か?
・2010年代以降の日本政治
①新自由主義に対抗する政策を掲げた民主党政権が政権担当能力の欠如と大震災で崩壊
②ナショナリズムを標榜する安倍政権はリベラルを批判するだけで政権を維持した
⇒重要な政策課題は先送りし円安で大企業を儲けさせ、その間に国力は損耗を続けた
③安倍暗殺後、その腐敗や失敗への批判が広がり構造的矛盾に起因する問題が噴出した
④自民党の失敗を受け積極財政・排外主義などのポピュリスト政党が現れ多党化が進んだ
・①の段階では政権交代にマニフェストがあった
⇒実現過程での知恵や配慮が欠けていたが重要政策とその財源はまじめに考えられていた
⇒④の段階では分散した各政党が並列的に目玉政策を訴えているだけ
⇒政権で苦労するのは別の政党で、それに対し目玉政策を呑ませるのが政策実現と考えている?
⇒過半数割れはそのような責任を伴わない政策実現に好都合な環境
・ポピュリスト政党は減税や社会保険料の削減が国民への利益還元だと主張する
⇒政府の能力を縮小すれば危機対応ができず、さらに無能な政府への不満から無政府状態に
・参政党とれいわ新選組は赤字国債によって負担減と歳出増を実現すると主張する
⇒机上の空論であり超長期国債の金利上昇で引き受け手を海外に求めている状況は無際限の
国債発行が金融、財政の破綻に繋がることを暗示している
・2010年代の約10年は日本政治のモラトリアムの時間だったが自民党はこの時間を空費して
問題をさらに悪化させた
⇒経済社会的矛盾の深化で政治も破綻の入口に近づいている
第6章より
・誰が権力者になっても出てくる政策に大差がない状態が続くと、
⇒民主主義の手続きがエリートの権力を守るためだけの鎧になる
⇒鎧もろとも既成政党・既成政治家を破壊する希望が広がる
⇒普通の人々を代表すると自称するポピュリストが法を超越する企図を実現する
⇒「柔らかいガードレール」も破壊することまで民意が正当化するようになった
・ファシズムとは
⇒思想の中心は危機に瀕した国民共同体を卓越した指導者が再興するというナショナリズム
⇒国民が一体になることを求める点で多元性が前提の自由主義を否定
⇒拝金資本主義を否定する一方で資本主義を転覆する社会主義にも反対
⇒弱い劣るとみなされる人種や集団を差別排斥、弱肉強食の社会ダーウィン主義・・・
⇒権力分立・複数政党制・自由選挙・思想言論の自由・個人の否定・・・
・運動・思想・体制の3つの要件を備えるというファシズムの定義は厳格にすべき(山口定)
⇒独裁者をファシストと攻撃しても、その是非についての不毛な空中戦になるだけ
⇒独裁者を批判する際には具体的な危機現象や問題を明らかにして危機感を共有する努力を
(映画「グッドナイト&グッドラック」CBSニュースキャスター・エドワード・マローの
マッカーシー上院議員糾弾の例)
・今は1930年代のドイツのような「民主主義の例外的危機状況」なのか
・アメリカ・トランプ政治の事例に上記3つの要件が当てはまるか
①運動については全米に草の根組織があり自前ではないが武装組織と密接な関係を持っており
ファシズムと重なる部分があるといえる
②思想については民主主義・人権拡充への反動、ナショナリズム、反理性・反科学の姿勢で、
ファシズムや一種のロマン主義を継承するもの
③体制については選挙・議会制度・複数政党制など民主主義の基本的な制度は肯定している
⇒ただし大統領令を乱発し憲法違反の判決が出ても司法判断を否定している
⇒批判する有力紙・全国ネット局を名誉棄損で訴え免許剥奪威嚇でもメディアを委縮させ、
連邦の権力で州や自治体を抑圧している
・トランプ政治はファシズムに接近しつつあるが、議会制度や司法制度は否定せず、
不法移民の排除は進めるが特定人種の殺戮はせず反ユダヤ主義は取り締まっている
⇒現局面は「ポスト・ファシズム」の時期(エンツォ・トラヴェルソ)
⇒民主主義とファシズムのグラデーションの中で現状はファシズムに近づいているという警告
⇒虚偽情報を流布して権力を得るという点では「フェイクファシズム」(金子勝)
⇒まがいものという意味でも21世紀のフェイクファシズムを批判し対抗すべき
第7章より
・政治危機の大きな原因はグローバル資本主義がもたらした格差と貧困
⇒1929年の大恐慌でアメリカでは民主党リベラル派のニューディール政策、西欧では
社会民主主義政党が資本主義のひずみを是正する政策を展開して福祉国家を実現した
⇒今やリベラル派や社民政党への支持は低下し、グローバル資本主義への批判については、
右派ポピュリスト政党にお株を奪われている
⇒1970年代の不況インフレ以降、社民政党には経済運営能力がないとイメージされた
・社民政党は大きな政府での雇用拡大政策を捨て能力開発重視政策に(以下、中道左派政党)
⇒能力開発で対処しようとした資本主義は実物経済(リアルエコノミー)だが1982年以降は
マネー経済(シンボルエコノミー)が膨張
⇒マネー経済の参加者は投資家であり実物経済に対応した有能な人材の出番は少ない
・中道左派政党は有能さを訴えるあまり労働者から見放された
(アメリカ大統領選でもイギリスEU離脱でもトランプやEU離脱を支持したのは工業都市や
炭鉱の労働者が多数)
・成長戦略の大半は幻想だが産業を育て雇用を作り出す努力は必要⇒経済学者へ
・一億円の壁(所得税負担率)⇒リアルエコノミーで働く給与所得が冷遇されている
⇒政治として再分配システムの再構築が必要
⇒岸田文雄は総裁選立候補で金融資産課税強化や賃上げなど再構築に言及した
⇒岸田政権の発足で日経平均株価が8日連続で下がり岸田は消極姿勢に転じた
⇒リアルエコノミーで働く人もNISAなどでシンボルエコノミーに組み込んでいるので、
株価を下げる可能性のある政策は中間層からも反発を招く
・中道左派政党は一時的な株価下落があっても公平な分配と国民を説得すべき
⇒格差や貧困の拡大は政策の結果であり政策を変えることで解決できると
・中道左派政党は漫然と10年以上続けてきたアベノミクス国債発行の危険性を回避する
「臆病な政党」としてポピュリスト政党と差異化すべき
・政治に万能薬はなく意思決定には時間がかかり政策は様々な意見を反映した角のないもの
⇒政府への不満で民間企業の見た目の分かりやすさや速さを求める気分が広がった
⇒それに応えたのがポピュリスト政党
⇒市場主義の被害者が政治で市場主義を求めるという皮肉な話
・これを権力拡大の材料にしたのが維新の会で「身を切る改革(市場主義)」を売り物にした
⇒慎重さや遅さを排除した市場主義で普通の人のための政策が出ないことは明らかなのに
・ポピュリスト政党はわかりやすさと直接性を訴え成功した
⇒問題解決には多くの材料と考える作業が必要だが、単純化によってわかった気になる
⇒問題の根源を特定の敵に求めるという発想
⇒財務省解体とか外国人排斥とかの単純化が政治的な影響力を持つようになった
⇒もちろん単純化は問題のすり替えで解決にはつながらない
⇒直接性は自分で決めたいという政治インサイダーへの不満と表裏一体のもの
⇒この気分が蔓延する状態はポピュリスト政党への支持を広げる
・民主主義では曖昧さを受け入れなければならない
⇒的確な決定のためには単純化の罠に陥らないよう考えることが重要
・民主政治とは共同体に共通する問題を協力して(税を払って)解決する作業
⇒なので共同体への愛着や責任は民主政治の前提
⇒世界を共同体として税を払うことは理想だが当面は国家が最大の共同体
⇒なのでナショナリズムを丸ごと否定すれば民主政治は成立しないが・・・
・右派ポピュリズムの推進力となっている有害ナショナリズムの無毒化
①国民を「日本人ファースト」などとひとくくりにして問題を語らないこと
⇒規制緩和や円安で利益を得ている人も雇用の非正規化や物価高で苦しんでいる人も日本人
⇒その歪みを是正して日本という政治共同体を生きやすくすることが有益なナショナリズム
②国民とその共同体がその国民以外の様々な人々に支えられていることを理解すること
⇒グローバル化により社会の構成員が多様化することは不可避で昔の「単一民族」は幻想、
日本経済が外国人労働者に依存していることも不可逆的な変化
⇒純粋国民幻想にとらわれると非合理な政策で害を与える結果に(トランプ政権のH-1Bビザ)
③ナショナリズムが幼稚な自己正当化につながらないよう注意すること
⇒自国の失敗や欠点を冷静に指摘する人を愛国的でないと攻撃したり、時々の権力者の悪い点を
批判する人を反米とか反日とかと攻撃したりしない
⇒冷静な批判は愛国心の発露であり、懐の深いナショナリズムが必要
・20世紀後半の民主政治と資本主義経済の安定、1990年代の社会主義体制の崩壊と民主化
⇒これらを目撃した世代は政治の現状に絶望や幻滅を覚える
⇒東欧諸国の民主化の後の絶えることのない政党間の抗争、裏取引、暴露合戦・・・
⇒幻滅は不可避で・・・民主主義はそれ自体に、これが民主主義か?という幻滅の感を、
あらかじめビルトインされたform of government・・・(堀田善衛)
⇒一度の幻滅で民主主義を放棄しない持続力や忍耐力が市民の美徳
終章より
・自民党の脆弱化と多党化
⇒2025年の参院選で自民党は大敗して過半数割れ、党内では石破総裁の責任論に
⇒党外では安倍政権で党内野党だった石破政権への支持率が上る「石破やめるな」現象が
⇒石破は党内では支持者が少なく無力で改革ができず退陣を表明
(この時点で留まっていたら自民党は分裂再編、石破は激変より自民党の継続を選んだ)
⇒総裁選の結果、国会議員と党員の支持を集めた高市が勝利した
・高市は党員には排外主義とナショナリズム、国会議員には麻生太郎の支持により勝利した
⇒党員にも参政党に対抗したナショナリズムの鮮明を望む声が多く、派閥解体による乱戦で
今でも残る麻生派閥がキャスティングボードを握った
・公明党は連立協議で高市に歴史観・排外主義・政治とカネの3点について善処を求めたが
政治とカネについては消極姿勢だったので連立から離脱
(高市背後の右派勢力と公明党・創価学会との距離が広がった)
⇒高市自民党は公明党に代わり維新の閣外協力を得て政局を運営
・高市首相の理論上の2つの可能性(2025年11月現在)
①イタリア・メローニ首相のように、右派出身でありながら首相になると穏健化し、
堅実に政策課題に取り組むパターン⇒右派を裏切り官僚や有能穏健な政治家を内閣に
②総裁選で主張していた排外主義、国債による防衛費増額、給付拡大のパターン
・維新との政策合意では憲法9条の改正、緊急事態規定の創設、スパイ防止法の制定など
⇒従来の平和主義・自由主義を転換する政策
・高市政権はアベノミクスを引き継ぐ一方、積極的な給付を掲げている
⇒防衛費増額などでも歳出拡大と国債依存が進む⇒円安や金利上昇に
⇒2022年イギリスのトラス・ショック(減税発表で通貨国債株式が暴落)が日本を襲うかも
・石破首相は在任中の最後の仕事として2025年10月10日に「戦後80年所感」を発表した
(高市はじめ自民党右派が発表に反対していたが自分の意思を貫いた)
⇒戦争を阻止できなかった原因として①憲法構造②軍部統制③メディアを挙げた
⇒石破のいう「本来のリベラリズム」や「歴史を学ぶ重要性」は高市への批判と受け取れる
⇒退任後には「党員として高市政権を支えるが無批判ではない・維新は新自由主義的・自民党が
保守の路線へさらに傾くことにすごく違和感があると発言(10月30日)
・自民党が右派と穏健派に分裂することがファシズム対抗勢力を結集するのに不可欠
⇒衆参選挙結果で多党化に向かっていると言われるが政治理念と政策の基軸は2つのベクトル
①穏健な自由民主主義+責任ある財政運営
②ナショナリズム+歳出拡大
⇒穏健派連合の必要性は高まっている
・日本政治がフェイクファシズムに転げ落ちるか、自由民主主義の枠組みを死守できるか・・・
あとがきより
・2025年は戦後80年の節目
⇒本書は民主主義の将来に対する危機感の表明
・本文でカバーできなかった2025年11月7日予算委員会での岡田質問への高市答弁(略)
⇒ファシズム論として深刻な問題は「岡田の質問が悪い」とする攻撃
⇒ネトウヨだけでなく読売新聞も社説で「答弁を迫り答弁したら撤回を求めた」と攻撃した
⇒岡田は「法律の定義や過去の答弁を守った(首相としての)限定的な答弁を期待していたが、
まずい答弁だったので後戻りできなくなると思い、突っ込むことは控えた」
「国会終了後に党内協議し取り消しませんかと聞いたが拒否された」と毎日新聞に答えている
⇒高市が議員時代の主張ではなく(首相として)従来の政府見解を踏襲することを期待した
質問だったが防衛省や外務省とのすり合わせなく個人の思いで暴走したもの
(直後にトランプは習近平と電話会談を行い共通利益を確認して相互訪問を決めている)
⇒それを野党の質問が悪いとするのは議会政治の否定であり、責任追及を受けない権力は
まさにファシズム国家の権力
・さらに憂慮すべきは台湾有事発言後の世論調査での内閣支持率の高さ(70%前後)
⇒集団的自衛権行使についても賛成44.8%反対44.2%で半数が賛成している
⇒日本への攻撃がなくても(中国と)戦争するという重要な点を半数が理解していないのでは
・自民党は衆参両院で過半数に及ばないが右側には右派ポピュリスト政党が存在する
⇒民主主義と人権を否定する政策アジェンダは右派をまとめる有効な道具
・敵の恐怖を煽ることでファシズムが成立しファシズム政権は実際に戦争を起こす
⇒この20世紀前半の教訓を今こそ噛みしめねばならない・・・
・・・・・・
と、ここまでが2025年11月までの本書からのてきとーメモなんですが、備忘のため、
その僅か数ヶ月後の大きな変化も、さくさくっとウィキよりメモ・・・
・2026年1月には衆院の解散が浮上、立憲民主党と公明党が合流して中道改革連合を結成
⇒「選挙で過半数なら高市、でなければ野田か斎藤か別の方に」と23日に解散、総選挙へ
・2026年2月の衆院選では自民と維新の調整も野党間の調整も共闘もなく、
全選挙区の8割でいずれかの党が競合する構図になった
・結果は高市自民党が戦後初の単独2/3以上の議席を獲得して圧勝した
⇒2月18日に引き続きの維新との連立で第2次高市内閣が誕生(全員再任)
⇒議席占有率は与党全体で4分の3以上にまで達し高市政権の継続は決定的に
(衆議院で一つの政党が3分の2以上を獲得するのは戦後初で戦前の大政翼賛会に次ぐ記録)
・共に連合を支持母体に持つ中道改革連合と国民民主党は小選挙区で競合し全て共倒れに
⇒与党と野党の一騎打ちとなった選挙区では5勝40敗、うち自民党と中道の一騎打ちとなった
選挙区では中道の2勝26敗で大きく負け越した
・参政党は小選挙区では全敗したものの比例では約426万票を獲得し参院選の約742万票には
及ばなかったものの前回衆院選の約187万票から倍以上に増加
・チームみらいも小選挙区では議席を得られなかったが消費税減税反対派や社会保障改革を
望む層の受け皿となり、比例で381万票11議席を獲得し衆議院で初めて議席を得た

現代ファシズム論~何が民主主義を壊すのか~であります
(ローマ字入力で何度か「民主主義」が「飲酒主義」と変換されましたが・・・
)表紙カバー裏にあった惹句

著者紹介と奥付

目次



以下、じつにてきとーなメモですが著作物からなので問題があれば非公開設定にします
序章より
・2016年アメリカのトランプ当選とイギリスのEU離脱がファシズム議論のきっかけ
(戦後それまでは殆どの民主主義国で代表民主主義と政党政治への支持が持続していた)
⇒ドイツのための選択肢やフランス国民戦線も政治の約束事を嘲笑し虚偽を撒き少数派を否定した
⇒権力の濫用や私物化については日本の第2次安倍政権が世界での先行事例
⇒世界の学者や有識者が民主主義の危機を先進国のファシズムの入口とした
・本書では戦後民主政治の形成と1990年代以降のグローバル化・情報革命の中での崩壊を
振り返り、民主政治の動揺がいかにファシズムへの接近をもたらしているかを考察したい
⇒そして最後に現代版ファシズムに対抗するために何をなすべきかを考える
第1章より
・戦後の民主主義国家では国際協調、ケインズ主義、福祉国家への合意が形成された
⇒アメリカではニューディールの遺産が継続され党派を超えた福祉合意が存在した
⇒イギリスでもアトリー政権以降の福祉国家路線が二大政党に堅持された
⇒ドイツではファシズムの絶対否定と謝罪による国際社会への低姿勢による協調
(ワイマール憲法の生存権・組合の経営参加・社会保障拡充などを実現した)
⇒日本では1950年代まで戦後民主憲法体制そのものが政治で争われていたが、
⇒1960年安保の混乱責任で岸信介が退陣、自民党が戦後憲法を承認し体制が定着した
⇒各国とも基本は数年に一度の投票により政治家・エリートによる政策調整を待つパターン
・戦後のマスメディアは自由の担い手として高い自立性を持っていた
⇒この時代の情報提供は一方的だったがチェック機能があり基本的に信頼されていた
・1970年代まで先進国の民主主義に参加する市民は人種・宗教・言語などが均質的だった
⇒1980年代後半から移民など多様な社会の統合問題が表面化
⇒1990年代以降は経済のグローバル化・冷戦後の地域紛争・EUの東欧への拡大など
⇒資本と労働力の移動・製造業移転・情報技術の進歩・意識そのものの変化
・20世紀後半の30年間は民主主義の安定・経済的豊かさの達成という例外的な静穏期
⇒2010年代には資本主義の破壊性や苛烈さ、民主主義の不安定さが露呈する
⇒否定したはずのファシズムが先進国にも現れる
⇒以下の章で民主主義の前提崩壊について考察する・・・
第2章より
・経済成長と賃金上昇の好循環、冷戦による社会主義との競争⇒福祉国家・平等分配へ
⇒これが西側の政治経済エリートにとっても有益であり大きな合意が存在した
・総力戦・大恐慌・社会主義体制の存在が経済に介入する戦後の大きな政府をもたらした
⇒福祉国家・平等分配についての保守革新を超えた大きな合意
(日本では民間での労使協調・自民党の建設業雇用による地域所得格差の縮小)
・2度の石油危機、スタグフレーションからの脱却政策として80年代から90年代にかけて
減税、規制緩和、民営化を軸とする新自由主義が拡がる
⇒サッチャー・レーガンによる福祉国家の縮小、中曽根による行政改革(公共政策の縮小)
⇒保守政党による「平等から自由へ」⇒その自由は雇用側の自由・富の追及の自由
⇒非正規雇用・低賃金⇒格差の拡大
・民主政治は定住地に愛着を持つ前提
⇒代表民主主義も基本的に地域単位で利益も地域社会の改良
⇒グローバル資本主義の生産拠点は土地・労働力の安い場所に世界規模で移動する
⇒金融・情報企業は先端大都市に立地するが仕事には特定分野の高度なスキルが必要
⇒先端産業ではそもそも大量の労働力を必要としない
⇒地方から移動できず待遇の悪い仕事か大都市に移動しても補助的な仕事しかない
⇒21世紀の格差は貧困層と富裕層という階層格差と先端大都市と荒廃地方との空間的格差
⇒地域社会が荒廃すれば民主政治の前提も崩壊するが、
⇒新自由主義では荒廃地域から移動しないのは自己責任で地域間格差の縮小政策はしない
⇒地域間でも政治への疎外感、被害者意識から反感と憎悪の政治を生み出す
・1990年代の中道左派勢力もグローバル資本主義を前提として受け入れた
⇒平等とは雇用機会の平等であり政府の役割は能力開発・教育投資とした
⇒ドイツ・シュレーダー政権では雇用制度を柔軟化し国際競争力が向上、失業率も低下した
・労働者の権利拡大が20世紀後半の公平な分配の基礎的な条件となったが、21世紀の資本主義は
19世紀にマルクスが描いた苛烈な資本主義に先祖返りした⇒収奪的システム
⇒生産性上昇による付加価値が労働者に還元される割合が低下している(非正規雇用など)
⇒特に日本だけ実質賃金が停滞したまま⇒収奪的システムの典型例
⇒中道左派は対応できず左派は政権から遠くなり右派ポピュリストが支持を広げている
・民主党オバマの医療制度改革などは金権政治により議会で阻止された
⇒政治資金規正法の違憲判決により共和党が躍進⇒格差の拡大
・1%が99%を分断している現状を改善できない政治への無力感⇒政治への無関心へ
⇒資金力を持つ1%の政治家への影響力が一層大きくなるという悪循環へ
第3章より
・民主主義とメディアの関係
⇒100年前の「ステレオタイプ」がSNSのエコーチェンバー・フィルターバブルにも
⇒対面では言葉のエスカレートには限界があるがネット空間では自制は働かない
・インターネットの悲観と楽観
⇒新聞購読、テレビ視聴が激減し、さらにその質が低下するという悪循環
⇒ネット配信ニュースの大半は新聞社が提供しており伝統的メディアは誤報を訂正謝罪する
・インターネットによる民主主義の混乱
⇒2016年アメリカのトランプ当選とイギリスのEU離脱
⇒ネット上のフェイクニュース垂れ流しによって民意が誘導された
⇒それまでのテレビCMは製作者が明確でネガティブキャンペーンでも虚偽は責任追及された
⇒支持者がネット上で虚偽宣伝しても候補者の責任を追及することは困難
⇒事実や真実が意味を持たなくなり、それを超越した政治的議論に⇒ポスト真実
・SNSと活版印刷のメディアとしての類似性
⇒職業的媒介者(コミュニケーター)なしに直接情報を取得・発信できる⇒500年ぶりの革命
⇒印刷術は文字による啓蒙の手段となったがSNSは感情に反応し啓蒙の終わりをもたらした
・格差社会で普通の人は富の獲得や社会的地位の向上では満足を得られないが「いいね」や
ヒット数の多さでは簡便に満足を得られる
⇒消費ではなく発信によって賞賛を得る行動様式が日常になった
⇒「神なき時代におけるルターの万人祭司主義」に・・・
・SNSは事実の共有による議論という民主政治の前提を破壊した⇒政治を劣化させた
第4章より
・フランシス・フクヤマ「歴史の終わり」
⇒冷戦の終わりにより民主主義と市場経済の基本的原理が前提になったと主張した
⇒原題のENDは目標・目的の意味だが日本語の「終わり」にはこの意味がなく誤解が多い
⇒冷戦の終結で民主主義への不断の努力が軽視され退行現象が始まった
・リンカーン「人民の人民による人民のための政治」(人民はMEN⇒白人男性のみ)
⇒政策が複雑になれば専門の知識や技術がいる⇒人民には判断できない
⇒FORには「~に代わって」の意味もありエリートによる支配に転化する(原発と事故の例)
⇒ただし人民による支配が人民に幸福をもたらす保証はない(新型コロナ対策の例)
⇒しかし人民には意思決定ができないとするのは愚民思想であり手続と議論が必要
⇒議論とは様々な意見を(少数者意見も)尊重する自由主義だが人民の支配は最終的に多数決
⇒なのでブレーキや関門を用意することで民主主義と自由主義のバランスは保たれている
・予備選挙や国民投票など直接民主制は一般市民が政治に関心を持ち誠実に政策を選ぶ前提
⇒2016年アメリカのトランプ当選とイギリスのEU離脱
⇒民主主義による制度がデマ・情報操作・脱イデオロギー的ポピュリストアプローチにより
非合理な政策選択(EU離脱)や民主政治を破壊する指導者(トランプ)を生み出した(略)
・民主主義の多数支配以外の原理とメカニズム
⇒法の支配(立憲主義)⇒民主的に選ばれた権力者でも上位法には従わなければならない
⇒文字に書かれていない法(慣習・常識・暗黙の了解など)を「柔らかいガードレール」と定義
⇒重視したのは組織的自制心(禁止でなくても自ら抑制する)と相互的寛容(民主政治の政党同士)
⇒独立機関への人事権があっても介入しない、権力を持った際にライバル政党を弾圧しない
⇒アメリカではこれまで「柔らかいガードレール」の中で民主政治が営まれてきた
・大衆社会で選ばれる指導者は「大衆そのもの」で「甘やかされた子供」で「慢心した坊ちゃん」
⇒家庭内と同じで何をしても罪にならず公私のけじめもない
⇒自制心を持たず規範を無視して権力を行使する
⇒その結果が家産制国家(税収は権力者の財産で官僚は権力者の下僕という国家)
⇒世界では2010年代の日本(安倍)が最初でアメリカ(トランプ)や一部ヨーロッパにも波及した
・企業の命題は利益を最大化することでCEOが上意下達で実行し指標に達しないものを解雇する
⇒政府の命題は秩序や健康の維持など様々な公益の実現で、もともと成果指標はない
⇒そこに企業モデルを採用するとすれば疑似的な指標を設定するしかない
⇒それを達したものを評価し、達しないものを解雇する
(その際に官僚に求められるのは専門知識ではなく支配者の意に沿う形式を整える能力)
・治安の改善が本来の目標(命題)なのに不法移民の摘発件数を指標として使わされる
⇒職員は上から指示された指標に向かって努力する(評価基準への迎合)
⇒不法移民の摘発件数を増やすこと自体が目標となる(目標の転移)
⇒反発した移民・追い込まれた移民らの犯罪が増え治安が悪化しても構わない
⇒公益の実現ではなく疑似目的への奔走は官僚主義を悪化させる
・独裁的企業経営の手法を政府に持ち込めば国民全体に不利益を及ぼす
⇒企業経営を誤れば業績が悪化しCEOが責任を取るが政府の業績悪化は見えにくい
⇒支配者が専門職員による自由な批判を力で封じれば誤った政策は続く
第5章より
・日本では1955年に二つの保守勢力が結集して自由民主党が結成された
⇒戦争を失敗と反省した経済中心路線の財務官僚出身政治家などのグループと、
⇒第9条改正・天皇の地位強化など戦前復古を志向した内務官僚出身政治家などのグループ
⇒改憲などのイデオロギーを棚上げし柔軟穏健路線になったのは戦後体制への広範な支持と
それに支えられた左派政党の存在があったから⇒1960年安保で決定的になった(岸の退陣)
⇒その後の長期安定政権下での官僚制の弊害・市民要求の無視・政治腐敗はあったものの、
選挙・言論の自由など自由民主主義の基本条件は満たされていた
⇒大雑把な平和主義には国民合意が存在し、それに従う自民党は民主主義を実践したといえる
・戦後民主主義の頂点は1995年
⇒非自民連立の細川政権が短命に終わり自民党がライバルの社会党と連立して政権に復帰した
⇒当時の自民党の最大の敵であった小沢一郎の戦後民主主義への修正姿勢に対抗するグループが
自民党の主導権を握っており、戦後民主主義や平和主義を肯定的に評価する歴史観を出した
⇒社会党は自衛隊や日米安保を合憲と受け入れる転換をして自民党との合意を形成した
⇒この合意が歴史に残る形になったのが村山首相の「戦後50年談話」
⇒村山政権下で少数者の権利擁護・地方分権・市民参加制度の改革も着手された
⇒戦後50年をはさむ数年間は戦後日本の民主主義について最も幅広い合意が形成されていた
・その後の30年で自民党が大きく変質し政治の雰囲気も大きく変化した要因
①時間経過による戦争経験者の消失
⇒日本ではドイツと異なり人々の実感レベルで戦争を否定する感情が共有されていた
(田中角栄談「戦争を体験した政治家がいなくなったら日本は危ない」)
(ドイツにも歴史修正主義は存在するが日本では政権与党に浸透しているのが大きな違い)
②経済停滞の長期継続
⇒経済成長期には税の増収分を国民の要求に応じて配分する民主政治だった
⇒1980年代以降は配分が縮小し1990年代にはグローバル化による雇用の流動化と賃金停滞
⇒政策決定がゼロサムゲームになった⇒政策により損得側がはっきり別れる
(円安誘導で輸出企業は得するが物価上昇により庶民は損するなど)
⇒政策の本質を損する側に理解させないためのキャンペーンに(小泉政権の構造改革が典型例)
⇒損する側が圧倒的に多くても政治に関わる余裕がなければ民主主義は作動しない(99:1)
③人口減少と高齢化の急速な進行
⇒人口減少で国内需要も労働力も減少、投資も抑制され非大都市圏の存続は不可能に
⇒明るい未来を想像できない若い世代に政治参加の意欲がなくなる
⇒社会保障制度は高齢少子化で税と保険料負担が増え若い世代には受益のない負担と映る
(若い世代も未来の高齢者だが明るい未来が想像できないので今を煽る政治家が出現する)
⇒公的負担を減らせという世論が形成されれば政府は弱体化し、あてにならない政府への
公的負担を忌避する悪循環に
・この30年間で前向きの政治論議がしにくい風潮が広まった
⇒民主政治にとっての静かな危機
・安倍政治の10年
①家産制国家への逆行(公私混同・恣意的人事・統計偽装・忖度違法行為など)
②統治機構内の中立の侵害と党派化
⇒統治機構では司法検察以外にも会計検査院・内閣法制局・日本学術会議などは独立性が重要
⇒日本銀行やNHKは統治機構ではないが中立性が期待されている
・これらを全て制圧して内閣の牽制やチェックを無効化した(後継政権も)
⇒これらを統制することが選挙で選ばれた内閣が民意を貫徹することだという理屈
⇒民意の絶対化によって実際には権力の私物化や恣意的な支配を正当化した
⇒この現象はトランプ政権下のアメリカや一部ヨーロッパの国でも起きている
・家産制国家への逆行は国家の能力を低下させ、国民は国家の無能さを攻撃し、さらに政府から
人材と資源を奪うという悪循環⇒日本でもアメリカでも起きている⇒先は無政府状態
・安倍長期政権は具体的な政策的成果を挙げていないが安定していた
⇒その理由は諦めと無関心に基づいた多数決にある
⇒民主党政権の失敗、大震災、原発事故により日常が続くだけで満足するようになった
⇒より良い社会を求めることへの諦めと表裏一体で、政治参加(投票)への消極性にも
⇒諦めと無関心が続けば家産制国家は民主主義の手続きで持続する
・2020年代の生活苦で政治不満がはじまり2024年衆院選2025年参院選で自民党が大敗
⇒多党化が進み排外主義を煽り減税や生活支援を訴える政党が支持を得ている
・外国人が福祉で優遇されているなどのデマや虚偽、SNSの活用
(外国人旅行者の増加は安倍政権の円安政策、外国企業や富裕層の不動産購入は安倍政権の
開放政策の帰結だが、安倍信者だった参政党の政治家がこれを糾弾している)
⇒国内産業や農業の保護は農民や自営業者、これまでのグローバル化で圧迫されてきた、
海外市場とは無縁の中小企業労働者にとって共感できる政策
⇒従来政策で取り残された中堅層への救済策を唱えるのはトランプのMAGAから学習?
⇒女性就労やLGBTの権利、終末期医療などを否定するのは周縁部を劣後させる意図か?
・2010年代以降の日本政治
①新自由主義に対抗する政策を掲げた民主党政権が政権担当能力の欠如と大震災で崩壊
②ナショナリズムを標榜する安倍政権はリベラルを批判するだけで政権を維持した
⇒重要な政策課題は先送りし円安で大企業を儲けさせ、その間に国力は損耗を続けた
③安倍暗殺後、その腐敗や失敗への批判が広がり構造的矛盾に起因する問題が噴出した
④自民党の失敗を受け積極財政・排外主義などのポピュリスト政党が現れ多党化が進んだ
・①の段階では政権交代にマニフェストがあった
⇒実現過程での知恵や配慮が欠けていたが重要政策とその財源はまじめに考えられていた
⇒④の段階では分散した各政党が並列的に目玉政策を訴えているだけ
⇒政権で苦労するのは別の政党で、それに対し目玉政策を呑ませるのが政策実現と考えている?
⇒過半数割れはそのような責任を伴わない政策実現に好都合な環境
・ポピュリスト政党は減税や社会保険料の削減が国民への利益還元だと主張する
⇒政府の能力を縮小すれば危機対応ができず、さらに無能な政府への不満から無政府状態に
・参政党とれいわ新選組は赤字国債によって負担減と歳出増を実現すると主張する
⇒机上の空論であり超長期国債の金利上昇で引き受け手を海外に求めている状況は無際限の
国債発行が金融、財政の破綻に繋がることを暗示している
・2010年代の約10年は日本政治のモラトリアムの時間だったが自民党はこの時間を空費して
問題をさらに悪化させた
⇒経済社会的矛盾の深化で政治も破綻の入口に近づいている
第6章より
・誰が権力者になっても出てくる政策に大差がない状態が続くと、
⇒民主主義の手続きがエリートの権力を守るためだけの鎧になる
⇒鎧もろとも既成政党・既成政治家を破壊する希望が広がる
⇒普通の人々を代表すると自称するポピュリストが法を超越する企図を実現する
⇒「柔らかいガードレール」も破壊することまで民意が正当化するようになった
・ファシズムとは
⇒思想の中心は危機に瀕した国民共同体を卓越した指導者が再興するというナショナリズム
⇒国民が一体になることを求める点で多元性が前提の自由主義を否定
⇒拝金資本主義を否定する一方で資本主義を転覆する社会主義にも反対
⇒弱い劣るとみなされる人種や集団を差別排斥、弱肉強食の社会ダーウィン主義・・・
⇒権力分立・複数政党制・自由選挙・思想言論の自由・個人の否定・・・
・運動・思想・体制の3つの要件を備えるというファシズムの定義は厳格にすべき(山口定)
⇒独裁者をファシストと攻撃しても、その是非についての不毛な空中戦になるだけ
⇒独裁者を批判する際には具体的な危機現象や問題を明らかにして危機感を共有する努力を
(映画「グッドナイト&グッドラック」CBSニュースキャスター・エドワード・マローの
マッカーシー上院議員糾弾の例)
・今は1930年代のドイツのような「民主主義の例外的危機状況」なのか
・アメリカ・トランプ政治の事例に上記3つの要件が当てはまるか
①運動については全米に草の根組織があり自前ではないが武装組織と密接な関係を持っており
ファシズムと重なる部分があるといえる
②思想については民主主義・人権拡充への反動、ナショナリズム、反理性・反科学の姿勢で、
ファシズムや一種のロマン主義を継承するもの
③体制については選挙・議会制度・複数政党制など民主主義の基本的な制度は肯定している
⇒ただし大統領令を乱発し憲法違反の判決が出ても司法判断を否定している
⇒批判する有力紙・全国ネット局を名誉棄損で訴え免許剥奪威嚇でもメディアを委縮させ、
連邦の権力で州や自治体を抑圧している
・トランプ政治はファシズムに接近しつつあるが、議会制度や司法制度は否定せず、
不法移民の排除は進めるが特定人種の殺戮はせず反ユダヤ主義は取り締まっている
⇒現局面は「ポスト・ファシズム」の時期(エンツォ・トラヴェルソ)
⇒民主主義とファシズムのグラデーションの中で現状はファシズムに近づいているという警告
⇒虚偽情報を流布して権力を得るという点では「フェイクファシズム」(金子勝)
⇒まがいものという意味でも21世紀のフェイクファシズムを批判し対抗すべき
第7章より
・政治危機の大きな原因はグローバル資本主義がもたらした格差と貧困
⇒1929年の大恐慌でアメリカでは民主党リベラル派のニューディール政策、西欧では
社会民主主義政党が資本主義のひずみを是正する政策を展開して福祉国家を実現した
⇒今やリベラル派や社民政党への支持は低下し、グローバル資本主義への批判については、
右派ポピュリスト政党にお株を奪われている
⇒1970年代の不況インフレ以降、社民政党には経済運営能力がないとイメージされた
・社民政党は大きな政府での雇用拡大政策を捨て能力開発重視政策に(以下、中道左派政党)
⇒能力開発で対処しようとした資本主義は実物経済(リアルエコノミー)だが1982年以降は
マネー経済(シンボルエコノミー)が膨張
⇒マネー経済の参加者は投資家であり実物経済に対応した有能な人材の出番は少ない
・中道左派政党は有能さを訴えるあまり労働者から見放された
(アメリカ大統領選でもイギリスEU離脱でもトランプやEU離脱を支持したのは工業都市や
炭鉱の労働者が多数)
・成長戦略の大半は幻想だが産業を育て雇用を作り出す努力は必要⇒経済学者へ
・一億円の壁(所得税負担率)⇒リアルエコノミーで働く給与所得が冷遇されている
⇒政治として再分配システムの再構築が必要
⇒岸田文雄は総裁選立候補で金融資産課税強化や賃上げなど再構築に言及した
⇒岸田政権の発足で日経平均株価が8日連続で下がり岸田は消極姿勢に転じた
⇒リアルエコノミーで働く人もNISAなどでシンボルエコノミーに組み込んでいるので、
株価を下げる可能性のある政策は中間層からも反発を招く
・中道左派政党は一時的な株価下落があっても公平な分配と国民を説得すべき
⇒格差や貧困の拡大は政策の結果であり政策を変えることで解決できると
・中道左派政党は漫然と10年以上続けてきたアベノミクス国債発行の危険性を回避する
「臆病な政党」としてポピュリスト政党と差異化すべき
・政治に万能薬はなく意思決定には時間がかかり政策は様々な意見を反映した角のないもの
⇒政府への不満で民間企業の見た目の分かりやすさや速さを求める気分が広がった
⇒それに応えたのがポピュリスト政党
⇒市場主義の被害者が政治で市場主義を求めるという皮肉な話
・これを権力拡大の材料にしたのが維新の会で「身を切る改革(市場主義)」を売り物にした
⇒慎重さや遅さを排除した市場主義で普通の人のための政策が出ないことは明らかなのに
・ポピュリスト政党はわかりやすさと直接性を訴え成功した
⇒問題解決には多くの材料と考える作業が必要だが、単純化によってわかった気になる
⇒問題の根源を特定の敵に求めるという発想
⇒財務省解体とか外国人排斥とかの単純化が政治的な影響力を持つようになった
⇒もちろん単純化は問題のすり替えで解決にはつながらない
⇒直接性は自分で決めたいという政治インサイダーへの不満と表裏一体のもの
⇒この気分が蔓延する状態はポピュリスト政党への支持を広げる
・民主主義では曖昧さを受け入れなければならない
⇒的確な決定のためには単純化の罠に陥らないよう考えることが重要
・民主政治とは共同体に共通する問題を協力して(税を払って)解決する作業
⇒なので共同体への愛着や責任は民主政治の前提
⇒世界を共同体として税を払うことは理想だが当面は国家が最大の共同体
⇒なのでナショナリズムを丸ごと否定すれば民主政治は成立しないが・・・
・右派ポピュリズムの推進力となっている有害ナショナリズムの無毒化
①国民を「日本人ファースト」などとひとくくりにして問題を語らないこと
⇒規制緩和や円安で利益を得ている人も雇用の非正規化や物価高で苦しんでいる人も日本人
⇒その歪みを是正して日本という政治共同体を生きやすくすることが有益なナショナリズム
②国民とその共同体がその国民以外の様々な人々に支えられていることを理解すること
⇒グローバル化により社会の構成員が多様化することは不可避で昔の「単一民族」は幻想、
日本経済が外国人労働者に依存していることも不可逆的な変化
⇒純粋国民幻想にとらわれると非合理な政策で害を与える結果に(トランプ政権のH-1Bビザ)
③ナショナリズムが幼稚な自己正当化につながらないよう注意すること
⇒自国の失敗や欠点を冷静に指摘する人を愛国的でないと攻撃したり、時々の権力者の悪い点を
批判する人を反米とか反日とかと攻撃したりしない
⇒冷静な批判は愛国心の発露であり、懐の深いナショナリズムが必要
・20世紀後半の民主政治と資本主義経済の安定、1990年代の社会主義体制の崩壊と民主化
⇒これらを目撃した世代は政治の現状に絶望や幻滅を覚える
⇒東欧諸国の民主化の後の絶えることのない政党間の抗争、裏取引、暴露合戦・・・
⇒幻滅は不可避で・・・民主主義はそれ自体に、これが民主主義か?という幻滅の感を、
あらかじめビルトインされたform of government・・・(堀田善衛)
⇒一度の幻滅で民主主義を放棄しない持続力や忍耐力が市民の美徳
終章より
・自民党の脆弱化と多党化
⇒2025年の参院選で自民党は大敗して過半数割れ、党内では石破総裁の責任論に
⇒党外では安倍政権で党内野党だった石破政権への支持率が上る「石破やめるな」現象が
⇒石破は党内では支持者が少なく無力で改革ができず退陣を表明
(この時点で留まっていたら自民党は分裂再編、石破は激変より自民党の継続を選んだ)
⇒総裁選の結果、国会議員と党員の支持を集めた高市が勝利した
・高市は党員には排外主義とナショナリズム、国会議員には麻生太郎の支持により勝利した
⇒党員にも参政党に対抗したナショナリズムの鮮明を望む声が多く、派閥解体による乱戦で
今でも残る麻生派閥がキャスティングボードを握った
・公明党は連立協議で高市に歴史観・排外主義・政治とカネの3点について善処を求めたが
政治とカネについては消極姿勢だったので連立から離脱
(高市背後の右派勢力と公明党・創価学会との距離が広がった)
⇒高市自民党は公明党に代わり維新の閣外協力を得て政局を運営
・高市首相の理論上の2つの可能性(2025年11月現在)
①イタリア・メローニ首相のように、右派出身でありながら首相になると穏健化し、
堅実に政策課題に取り組むパターン⇒右派を裏切り官僚や有能穏健な政治家を内閣に
②総裁選で主張していた排外主義、国債による防衛費増額、給付拡大のパターン
・維新との政策合意では憲法9条の改正、緊急事態規定の創設、スパイ防止法の制定など
⇒従来の平和主義・自由主義を転換する政策
・高市政権はアベノミクスを引き継ぐ一方、積極的な給付を掲げている
⇒防衛費増額などでも歳出拡大と国債依存が進む⇒円安や金利上昇に
⇒2022年イギリスのトラス・ショック(減税発表で通貨国債株式が暴落)が日本を襲うかも
・石破首相は在任中の最後の仕事として2025年10月10日に「戦後80年所感」を発表した
(高市はじめ自民党右派が発表に反対していたが自分の意思を貫いた)
⇒戦争を阻止できなかった原因として①憲法構造②軍部統制③メディアを挙げた
⇒石破のいう「本来のリベラリズム」や「歴史を学ぶ重要性」は高市への批判と受け取れる
⇒退任後には「党員として高市政権を支えるが無批判ではない・維新は新自由主義的・自民党が
保守の路線へさらに傾くことにすごく違和感があると発言(10月30日)
・自民党が右派と穏健派に分裂することがファシズム対抗勢力を結集するのに不可欠
⇒衆参選挙結果で多党化に向かっていると言われるが政治理念と政策の基軸は2つのベクトル
①穏健な自由民主主義+責任ある財政運営
②ナショナリズム+歳出拡大
⇒穏健派連合の必要性は高まっている
・日本政治がフェイクファシズムに転げ落ちるか、自由民主主義の枠組みを死守できるか・・・
あとがきより
・2025年は戦後80年の節目
⇒本書は民主主義の将来に対する危機感の表明
・本文でカバーできなかった2025年11月7日予算委員会での岡田質問への高市答弁(略)
⇒ファシズム論として深刻な問題は「岡田の質問が悪い」とする攻撃
⇒ネトウヨだけでなく読売新聞も社説で「答弁を迫り答弁したら撤回を求めた」と攻撃した
⇒岡田は「法律の定義や過去の答弁を守った(首相としての)限定的な答弁を期待していたが、
まずい答弁だったので後戻りできなくなると思い、突っ込むことは控えた」
「国会終了後に党内協議し取り消しませんかと聞いたが拒否された」と毎日新聞に答えている
⇒高市が議員時代の主張ではなく(首相として)従来の政府見解を踏襲することを期待した
質問だったが防衛省や外務省とのすり合わせなく個人の思いで暴走したもの
(直後にトランプは習近平と電話会談を行い共通利益を確認して相互訪問を決めている)
⇒それを野党の質問が悪いとするのは議会政治の否定であり、責任追及を受けない権力は
まさにファシズム国家の権力
・さらに憂慮すべきは台湾有事発言後の世論調査での内閣支持率の高さ(70%前後)
⇒集団的自衛権行使についても賛成44.8%反対44.2%で半数が賛成している
⇒日本への攻撃がなくても(中国と)戦争するという重要な点を半数が理解していないのでは
・自民党は衆参両院で過半数に及ばないが右側には右派ポピュリスト政党が存在する
⇒民主主義と人権を否定する政策アジェンダは右派をまとめる有効な道具
・敵の恐怖を煽ることでファシズムが成立しファシズム政権は実際に戦争を起こす
⇒この20世紀前半の教訓を今こそ噛みしめねばならない・・・
・・・・・・
と、ここまでが2025年11月までの本書からのてきとーメモなんですが、備忘のため、
その僅か数ヶ月後の大きな変化も、さくさくっとウィキよりメモ・・・
・2026年1月には衆院の解散が浮上、立憲民主党と公明党が合流して中道改革連合を結成
⇒「選挙で過半数なら高市、でなければ野田か斎藤か別の方に」と23日に解散、総選挙へ
・2026年2月の衆院選では自民と維新の調整も野党間の調整も共闘もなく、
全選挙区の8割でいずれかの党が競合する構図になった
・結果は高市自民党が戦後初の単独2/3以上の議席を獲得して圧勝した
⇒2月18日に引き続きの維新との連立で第2次高市内閣が誕生(全員再任)
⇒議席占有率は与党全体で4分の3以上にまで達し高市政権の継続は決定的に
(衆議院で一つの政党が3分の2以上を獲得するのは戦後初で戦前の大政翼賛会に次ぐ記録)
・共に連合を支持母体に持つ中道改革連合と国民民主党は小選挙区で競合し全て共倒れに
⇒与党と野党の一騎打ちとなった選挙区では5勝40敗、うち自民党と中道の一騎打ちとなった
選挙区では中道の2勝26敗で大きく負け越した
・参政党は小選挙区では全敗したものの比例では約426万票を獲得し参院選の約742万票には
及ばなかったものの前回衆院選の約187万票から倍以上に増加
・チームみらいも小選挙区では議席を得られなかったが消費税減税反対派や社会保障改革を
望む層の受け皿となり、比例で381万票11議席を獲得し衆議院で初めて議席を得た
・れいわ新選組は小選挙区で全敗、自民党の名簿登載者不足により山本譲司が復帰したのみで、
公示前の8議席から事実上の0議席と大きく減らして敗北
公示前の8議席から事実上の0議席と大きく減らして敗北
・日本保守党も社会民主党も日本共産党も小選挙区で全敗した
・都道府県別投票率は高市早苗の奈良県が1位で最下位は石破茂の鳥取県だった・・・
・2026年2月8日の衆院選結果
(与党)
自由民主党:316議席
日本維新の会:36議席
(野党)
中道改革連合:49議席
国民民主党:28議席
参政党:15議席
チームみらい:11議席
日本共産党:4議席
減税日本・ゆうこく連合:1議席
日本保守党:0議席
社会民主党:0議席
本書の終章にあった「穏健派連合」とは逆の結果になってますが・・・
さてさて、どうするべきか・・・
・都道府県別投票率は高市早苗の奈良県が1位で最下位は石破茂の鳥取県だった・・・
・2026年2月8日の衆院選結果
(与党)
自由民主党:316議席
日本維新の会:36議席
(野党)
中道改革連合:49議席
国民民主党:28議席
参政党:15議席
チームみらい:11議席
日本共産党:4議席
減税日本・ゆうこく連合:1議席
日本保守党:0議席
社会民主党:0議席
本書の終章にあった「穏健派連合」とは逆の結果になってますが・・・
さてさて、どうするべきか・・・
2026年01月27日
没落官僚
とーとつですが・・・

「没落官僚~国家公務員志願者がゼロになる日~」とゆー本のご紹介であります
ま、「子や孫に入ってほしい勤め先」で国家公務員は常に上位に入ってるようですが、
本書はキャリア官僚への志願者が激減しており、このままだと霞が関が崩壊する、しかも
90年代半ばまでなら国民生活に大きな影響はなかったが今は、といった怖いオハナシ・・・
裏表紙カバー裏にあった内容紹介

著者紹介

1990年に旧労働省にキャリア官僚として入省、不人気だった労働省でも基本は東大生の世界で、
奈良県出身と言うと大学名ではなく「東大寺学園?」と中学や高校名を聞かれたとか
ちなみにわたくし1999年の秋から1年間ほど、厚生労働省に統合(2001年1月)される前の
厚生省と労働省へ別々に、けっこうお仕事で通ってました
当時急増していた大都市ホームレスへの緊急支援策について、厚生省からは基本は失業対策だから
メインは労働省だよと、いっぽう労働省からは基本は福祉対策だからメインは厚生省だよと、
お互い謙遜して
言っておられましたが、(統合目前だったからか?)両省の役割分担などは
きちんと調整されてたようで、その対応はけっこう素早かったです
そう、「縦割り行政が悪い」とかよくいわれますが、横の調整さえきちんと出来ておれば、
一気にトップまで上がる縦割り行政のメリットを充分に活かせるのでありますね
閑話休題
奥付であります

石破政権が2024年の10月からですから、岸田政権の末頃の出版物になりますね
目次



(以下てきとーメモですが著作物からのメモなので公開に問題があれば非公開設定にします)
はじめにより
・霞が関の中央官庁は悲惨なブラック職場とされ、キャリア官僚の志願者は激減している
⇒これに抜本的な対策がされないのは人口減少や少子高齢化と同じ理由
⇒つまり短期的に目立った痛みがないからで、痛みを実感した時には手遅れになる
・霞が関の機能不全を導く要素
①現職官僚のモチベーションがガタ落ちになっている
⇒かつての敬意もなければ本省課長にもなれず仕事は激増し部下は増えず酷使されるだけ
②答弁資料など労働条件が過酷過ぎて政策立案など本来の知的業務に時間を割けない
(ただし能力が劣化しているのも事実で今の生え抜き官僚にDXを進める能力はない)
(巨大イベントも電通などの民間企業に委託するしかない⇒不祥事に)
③官邸主導(そのものは必要)の弊害
⇒首相の取り巻き官僚からのインフォーマル指示など
(政権に人事権を握られた官僚は委縮し、やがてやる気を失っていった)
④優秀な若手官僚が入ってこない
⇒志願者数が減少すると人材の質が低下するのは事実
・政治や官僚が機能不全になっても経済が自動成長していれば国民生活に影響はないが、今は
①官僚の単ミス②予算の空白③国会の空転で国民生活が混乱する
⇒やる気のない「ロボット官僚」と政治家・権力志向の「官邸官僚」だけになればリーク、
機密漏洩が蔓延し、国会は権力闘争の場に・・・
・官僚が激減して能力が地に落ちた場合、実務は国会議員が担わざるを得ない
⇒実際に民主党政権でやろうとして混乱を極めた
・国会議員にパワハラは適用されず今の官僚は恫喝すれば言いなりになると思っている
⇒彼らに官僚激減への危機意識はなく、官僚の主人である国民にもその自覚はない
・すべての始まりは90年代半ばから吹き荒れた行政改革の嵐だった・・・
第1章より
・81年の第二次臨時行政調査会⇒増税なき財政再建
⇒3公社(JR,NTT,JT)の経済規模を考えると成功だったと言える
⇒公務員数は総定員法もあり肥大化しないが特殊法人や公益法人は激増していた
・90年代中盤以降の「成熟社会」になると「行政の守備範囲」という考え方に
⇒自助努力、官から民、国から地方など
・NPMニューパブリックマネジメント
⇒民間原理を行政にも適用するアングロサクソン系国家の手法
⇒公務員を減らし、さらに公務の効率性を厳しく追及する
⇒市場メカニズム導入・業績と成果中心・顧客サービス中心・簡素化
・千葉県松戸市(マツモトキヨシ市長)の「すぐやる課」(69年)
⇒市民を顧客とみなして(お客様は神様として)何でも請け負う⇒その弊害も
・中央官庁の縮小、外郭団体の整理統合、民営化、規制緩和、許認可の廃止・・・
⇒規制緩和は経済規制だけでなく社会規制にも踏み込んだ
⇒医療、福祉、教育、公共施設も民間企業に⇒PFIが代表的
(まだ規制が強いとの批判もあるが郵政さえ民営化された日本は民営化大国だと思う)
・その後も公務員制度改革は続き、その典型が第二次安倍内閣の「内閣人事局」で人事を掌握した
⇒その歪みや忖度が話題になり、それまでずっと官僚の抵抗で行革が進まないと批判していた
マスコミがようやく官僚人事の自立性を言及するようになった(その豹変ぶりには呆れ返るが)
・96年の総選挙では行政改革が主な選挙の争点となっていた
⇒公務員の定数は法律で厳格に管理されており、国際比較でも少ないことは自明で、公務員の
給与が国民生活を圧迫することなどあり得ないのに、なぜ国民は行革に熱狂したのか?
⇒バブル以降の長期不況、正規と非正規の格差社会への不満感情から
⇒公務員は決して裕福層ではないが身分保障特権やリスクが少ないことへのバッシングだった
⇒なによりも長期不況をもたらしたのが霞が関の官僚だと見なされたこと
(グローバル化に対応できなかったなど民間企業の競争力が衰えた原因が官僚だったと?)
(政府自身も官僚や官僚が作った戦後システムが原因と報告⇒経済の中心は民間企業なのに?)
・小泉政権の構造改革も同様で「霞が関(特に財務省)を変えれば日本が変わる」と主張した
⇒その改革後もこれだけ長期不況が続いてるのが事実
⇒それなのに未だに「財務省陰謀説」は根強い(「まだ規制緩和が足りない説」も同じ)
・「政策形成の主体を(財務)官僚から政治家に移せば斬新な政策になり日本経済は復活する説」
⇒それで首相官邸に権限を集中させたが経済成長は鈍化したままなのも明らか
⇒それなら「鈍化で生じている社会問題を見据えた行革」になぜ変えなかったのか?
⇒予測できなかったからではなく人口減少や格差などの社会問題に手をつけなかっただけ
⇒景気回復すれば社会問題は解決すると、実現しない経済成長を待ち続けたのが現実
(例として失業率が上がると自殺率や犯罪率や児童虐待率は上がり、自殺対策、犯罪対策、
虐待対策の仕事量は激増してるのにマンパワーは圧倒的に不足したまま)
・官邸主導と首相権限強化の形が整ったのが2001年とすると、すでに20年が経過している
⇒この間に少なくとも経済成長に影響を与えていないのであれば改善する必要がある
第2章より
・行革で各省の利権が消滅しつつあり政治家も官僚も組織のためには働かなくなった
⇒天下りも出世もなくなれば出身省庁に忠誠を尽くす必要もない
・政治主導システムと小選挙区制度で首相官邸に権力が集中するようになった
⇒かつての族議員も姿を消した
・その結果、官邸に近い者が力を持つようになった
(戦前は内務省と大蔵省、戦後は大蔵省がトップといった序列の意味がなくなった)
・権力志向で有力政治家に近づくなどの官邸官僚(スーパーキャリア官僚)の誕生
(いっぽう受験秀才で真面目だけが取り柄の普通官僚にとってはブラック霞が関に)
・かつての横並び昇進、平等処遇といったキャリア官僚制度は崩壊し官僚の個人化が進む
⇒首相や官房長官との近さ、政策分野の重要度などから重用される官僚と普通官僚の格差が拡大
・軍と警察は政治から切り離すべきだが、今は警察庁が官邸で重きをなしている
⇒「首相、官房長官といった政治家を官邸官僚が補佐する政官融合体」を警察庁が守護する体制
⇒そんな官邸主導体制が日本をどういう方向に導くのか・・・
第3章より
・各省の再就職斡旋禁止が制定されたのが2007年
⇒一部の真面目な官僚にとっては厳しい老後が待ち受けている
⇒ところがごく一部の官僚は以前よりはるかに恵まれた再就職を享受している
・キャリア官僚の局長・審議官ポスト数などは法令で縛られている
⇒定年まで居座られると若手にポストが空かない
⇒辞める側にも生活があり関連企業や団体への再就職=天下り慣行が昭和初期にはあった
(今の年金制度は戦前の恩給制度ほどではなく退職後も働くことが前提となっている)
・天下りには組織影響力の拡大意図もあった
⇒許認可権のある民間企業や不要な外郭団体など
・2007年以降、キャリア官僚の天下りは壊滅しつつあり生活基盤が不安定化している
⇒キャリアで本省課長になれないまま60歳で定年退職して再就職先がないという状況
⇒ポストを空けるため外郭団体等に出向させ退職直前に呼び戻す手法が現在も続いている
・民間企業や経済界との接触が多い経産省や財務省は再就職の勝ち組
⇒許認可や利権と絡んだ国土交通省、旧郵政省も・・・
・能力やコネクションを利用して再就職する者とそうでない者との二分化
・生命保険・損害保険への再就職が多いのは何故か
⇒金融と同じく業界の垣根がなく、役立つかどうかわからなくとも余裕があるからでは
・大学教員への再就職も多い
⇒文献を読みデータで仮説を実証し、論文(企画書)を書く仕事は官僚と親和性がある
・現在の事後規制・斡旋禁止で、個人の再就職・転職は自由というのがいいと思う
⇒厳しい天下り規制より職業として官僚の魅力を高める方がよい
⇒ただし人材流動化によるロビイスト、機密漏洩などへの法整備が必要
第4章より
・バブル崩壊以降の不況⇒社会保障も公共事業も削れない⇒役所を減らせ
⇒行政改革⇒政治主導で痛みを伴う改革⇒反対する官僚は抵抗勢力
⇒内閣人事局の創設で官邸主導体制(首相や官房長官の圧倒的優位)が確立された
⇒各大臣・各省官僚・各族議員の三角関係の上に官邸が来た(それまではほぼ同列だった)
・安倍政権では官邸・内閣官房・内閣府の官僚が各省大臣よりも存在感があった
⇒彼らは政権と一体化した政治家と見なすべきではないのかという議論も
・行政改革の目的は行政のスリム化だが官僚の力を削ぐことが隠れた目的
⇒人事権を握った影響は絶大だった
⇒首相や官房長官や官邸官僚の影に怯える忖度官僚が続出した
・内閣人事局の創設までは(名目の人事権は各大臣だが)実質は各省の官僚案が承認されていた
・上級公務員(事務次官・局長・部長・審議官)を育成管理するのが内閣人事局の目的
⇒上級公務員は各省の都合ではなく日本全体の利益を考える「日の丸官僚」であるべき
⇒それは首相官邸の意向を受ける官僚ということになる
⇒なぜなら各省の政策を選ぶのは国家全体を俯瞰する首相であり官邸だから(という理屈)
・内閣人事局は官僚人事の「政治的応答性」を「中立性専門性」より重視した制度だったが、
当時は文科省の幼稚園と厚労省の保育園など各省のセクショナリズムと官僚の特権が大問題
となっており、ごく自然な流れであった
・内閣人事局制度運用の特徴(2018年4月23日付け日本経済新聞から)
①順送り人事をしない
②政権の政策目標を実現するための布陣
③政権の姿勢をアピールするノンキャリアや技官や制服組の抜擢
④情報が洩れれば人事を差し替える
⑤女性の活躍など
⇒批判されているのは、そのプロセスが曖昧で不透明な点
⇒水面下で様々な注文がついて決まっており、任命権者である大臣より官邸が優位に
・上位政策に人事が絡むことは本来は正常
⇒例えば安全保障に関し官邸の方針に従わない幹部官僚はすぐに更迭すべきだが、
⇒下位政策(個別案件)に官邸主導の人事が絡むと行政は歪んでしまう
⇒歪みの原因は総理の取り巻き政治家や官僚
⇒その取り巻き集団が官邸主導体制になってから跳梁跋扈している
⇒官邸、内閣官房、内閣府の幹部官僚で一部は政治任用だが虎の威を借る資格任用が問題
⇒官邸官僚とは首相秘書官、官房副長官、3人の副長官補、内閣審議官、内閣参事官(課長級)など
・政治任用でも使えるのは元官僚だから資格任用の一般職国家公務員とは明確に区別すべき
⇒政治との調整は政治任用と事務次官から局長まで、審議官以下は政策立案に専念するべき
⇒有名無実化している政官接触記録制度を厳格運用すべき
①公正中立な内閣人事局制度
②政治任用の拡充
③政官の完全分離
・・・だけでは済まない
⇒英国のような「政治家と官僚が守るべき規範」と「国会の監視機能」が必要
第5章より
①官僚の労働環境の悪化⇒長時間労働
②仕事の中身と質の変化
⇒官邸主導システム以降は政策の企画立案が官邸に独占され、根回しや調整だけが各省に
③未知の仕事に官僚が対応できなくなっている⇒デジタル化など
⇒外郭団体が少なくなり民間企業に頼らざるを得ない構造も影響
・この①②③の相乗効果で官僚がやる気を失い各省が制御不能になり政府が機能不全に?
⇒これが本書の提示する仮説
・これまでのキャリア官僚の人事慣行
(これが給料が安く長時間労働でもモチベーションが下がらなかった理由その1)
①同期横並びで本省課長クラスまではスピード昇進できる
②そこまでは後輩が先輩を追い抜くことはない
③それ以上もある程度は規則性のある予測可能な昇進レース
④降格などの不利益処分はない
⑤斡旋による天下りが保証される(本省課長以上)
⇒本省課長での勧奨退職と天下りがなくなり定年退職まで働くようになった
⇒ポストは増えないので管理職の年齢が上昇する⇒昇任までの年数が上昇する
⇒短期間スピード出世というエリートの証しが消えモチベーションも消える
・(公共心もあるが)自分主体で世の中に影響力を与える仕事をしたいのが官僚の本音
(これが給料が安く長時間労働でもモチベーションが下がらなかった理由その2)
⇒政策形成プロセスは①政策の企画立案②政策形成過程の調整③政策の執行の3段階だが、
③は出先や地方自治体なので、やりがいを感じる圧倒的比重は①政策の企画立案
⇒自分の考えた政策が法律や予算になり世の中に大きな影響を与えているという実感
⇒これで給料が安く長時間労働でパワハラ横行の霞が関で生きていこうと思えた(実体験から)
・政策決定についての各省割拠システム・小泉政権・第二次安倍政権の違い(略)
⇒第二次安倍政権の政策決定は官邸官僚
⇒それ以外の普通官僚は望みもしない政策の是非で人事評価された
・官邸主導体制の功罪
⇒トップダウンは政策決定スピードだけでなく各省の協力体制にも有利なのは事実
⇒ただし官邸案件だけが各省折衝の苦労もなく通ることへの不安もあった
⇒政策決定した官邸官僚は国会答弁に立つことなく吊るしあげられるのは各省の普通官僚だけ
⇒その前でふんぞり返る閣僚の多くは世襲議員で実力で勝ち取った地位ではない
⇒そんな哀れな姿を見て、それでも官僚になりたいと思う若者がいるだろうか?
・第二次安倍政権では自分たちが主体的に進めた政策でもないのに責任を追及され苦悩した
⇒ただし自分たちが消極的に加担したのも事実なので、さらに苦悩した
⇒各省の政策立案では(硬直的だったが)各省に責任感はあった
⇒官邸の政策立案では(変化とスピード感はあるが)責任は曖昧になる
・高市総務大臣(当時)と総務省の放送法に関する流出文書の問題
⇒本書では放送法解釈の変更そのものではなく首相補佐官が加わった政策形成に巻き込まれ、
与野党政争の狭間で立ち尽くさざるを得ない官僚の悲哀を問題にする
①これまで正義(秩序)とされてきたもの(放送法の解釈)を変更することの苦痛
⇒継続が正しいとは限らないが過去から続く解釈に一定の正義と合理性があるのも事実
⇒放送の中立については過去の情勢に影響を受けつつ困難の中で維持されてた経緯がある
⇒それを権力者の命令であっさり変えられてしまうと今までの先輩の仕事は何だったのかと
②政策形成プロセスの複雑さ
⇒官僚主導の政策であれば主体的に立案・根回しして総務大臣の了解を得れば終わりだった
⇒放送法解釈の変更は総務省への磯崎首相補佐官の指示で官僚が総務大臣にも納得してもらい、
最終的に国会で答弁を変更した
⇒放送法解釈の変更は総務大臣の権限だが本当に首相補佐官の背後に首相がいるのか不明
⇒菅官房長官や副長官、政務秘書官への説明がいるのかも不明
(首相補佐官から総務大臣らに話してもらえばいいのだが官僚は政治家に言えないので悩む)
(実際に流出文書でも局長が提案したが「それは俺と総理が決めることだ」と一蹴されている)
・本来の官邸主導システムであれば官邸が大方針を公にしたうえで政策を変えていくべき
⇒ところが総理本人でも公でもないところから大方針もない個別案件に近い政策変更を要求される
(各省割拠システムであれば業界や議員への根回し⇒研究会⇒審議会ではじめて解釈変更になる)
・霞が関では省内で「梯子を外される」ことはあるが官邸案件では国会に証人喚問される
⇒こんな状況がネット情報で流れる中、年収800万で長時間労働の官僚を選ぶ若者がいるか?
⇒どろどろ世界での権力者を目指さない限り民間企業に行くだろうし、不安定でも夢のある
起業家を選ぶだろう
⇒このことを良識ある政治家は、よくよく考えたほうがいい
・官邸主導システムにはネガティブな側面があるが各省割拠システムはそれ以上に時代に合わない
⇒官邸主導でもうまくいかないのは官僚の能力自体が劣化している、もしくは経済社会や
時代に追い付いていないからではないか
⇒人材不足・デジタルなどへの対応能力不足
⇒コンサルと広告代理店への委託料は総額の21%で独立行政法人と肩を並べる(2020)
⇒霞が関とコンサル・広告代理店の学歴も逆転しており、やがて官僚志望者はゼロに近づく
⇒その時に国会議員が自分でどこまで事務や調整ができるか、見てみたいものだ
第6章より
・霞が関の長時間労働
⇒規制緩和・小さな政府でも業務量は増え続けており総定員法で人員は増えないから当然
・働き方改革の厚労省自体、長時間労働が前提でブラックの筆頭だと思っている
⇒コロナ禍では2階大講堂の対策本部は24時間体制で体調を崩す職員が続出した
⇒緊急入院する妊娠中の女子職員もいたが、それで子育て支援策が作れるのか?
・2020年に民間企業と同様のパワハラ禁止規定が人事院規則に設けられた
⇒ところが大臣や国会議員などの政治家には適用されない
(官僚より選挙で苦労している政治家のほうが人間的にまともと思ってるがひどいのもいた
)
・厚労省若手改革チームの緊急提言(略)
⇒霞が関から続々と若者と女性が去っていく現状
⇒人手不足はより深刻になり、やがて無定限・無定量の文化も死に絶える
⇒報道は官僚のミスだけでなく、なぜミスが生じているのかを詳細に報じてほしい
終章より
・90年代半ばから本格化した行政改革で官僚は見事に没落した
⇒東大生の多くは外資系コンサルに流れ、早慶上智MARCH関関同立が大躍進する
⇒霞が関=最高学歴という図式は完全に消える
⇒日本では大学受験時の偏差値が優秀さを計る絶対的な基準になっているので、
⇒公務員試験は難関のままでもキャリア官僚はエリートではなくなる
・政治家と官僚は合わせ鏡で官僚が没落した分だけ権力を手中にしたのが政治家
⇒この30年で政治主導システムに改革したが、それは成功したのか?
・官僚は試験で選ばれ政治家は選挙で選ばれる
⇒民意を反映した政治家が政策の方向性を決定すべきというのが、この30年間のロジック
・目立ったのは国会議員の偉さより民意や世論の絶対化であり、それを体現するポピュリズム
⇒世論を煽り世論に迎合するポピュリストが政治の前面に出るようになった
⇒インターネットの勢いもあり4年に1度の選挙で選ばれる政治家に権力を集中させた結果、
政治家を抑えることができる対抗勢力はいなくなった
・いっぽう国民は政治家が最も信用できない人間で民意を体現した存在だとは思っていない
⇒政治家は信用できず直接民主主義も実現できないので「くじ引き民主主義」論が出る
⇒日本では欧米とは逆にボイコットやデモへの参加率は低下している
・政治主導体制に変えた根拠のひとつは政権交代だったはず
⇒二大政党の権力交代があるので官邸に権力を集中しても腐敗はないという前提
⇒その前提が崩れるどころか半永久的に実現しないのだから政治主導も見直すべき
⇒世間ウケのいいバラマキばかりの政治家に権限を集中させる必要はない
⇒財務省感覚ではなく日常生活感覚でみても、そろそろ限界ではないか
・政治主導を見直すといっても、文句を言わない国民や世論には期待できない
⇒吠えない犬となったマスコミにも期待はできない
⇒ならば政治家を縛る規範や制度を作るしかない
⇒内閣人事局制度と同様の権力抑止システムを作れば物事は動く
・政治家を縛る制度と合わせて政治家を評価する制度も必要
⇒民主党政権と一緒に追い払われた「マニフェスト」の復活
・官僚が復権することはないが特定政策分野に興味がある学生や官邸官僚を目指す学生は残る
⇒それでも東大生が減り官僚の権威は失墜する
(東大生が優秀とかのロジカルな理由ではなく権威の図式が壊れるだけ)
⇒やがて早慶上智MARCH関関同立も激減していくだろう
・90年代半ばから公務員制度を改革してきたが結果をみると明治以来の芸術作品を破壊した
にすぎなかったのかもしれない
⇒公務員制度の研究者として、制度を作り替える怖さを実感している・・・
・・・
ホントにそうなのとの部分もありましたが、なるほどと納得する部分が多かったです
前述のとおり岸田政権の終わりごろに書かれた本で、その後の国政は目まぐるしく動いてますね
さてさて今度の衆院選後に、この状況が改善されるのか、はたまた・・・

「没落官僚~国家公務員志願者がゼロになる日~」とゆー本のご紹介であります
ま、「子や孫に入ってほしい勤め先」で国家公務員は常に上位に入ってるようですが、
本書はキャリア官僚への志願者が激減しており、このままだと霞が関が崩壊する、しかも
90年代半ばまでなら国民生活に大きな影響はなかったが今は、といった怖いオハナシ・・・
裏表紙カバー裏にあった内容紹介

著者紹介

1990年に旧労働省にキャリア官僚として入省、不人気だった労働省でも基本は東大生の世界で、
奈良県出身と言うと大学名ではなく「東大寺学園?」と中学や高校名を聞かれたとか

ちなみにわたくし1999年の秋から1年間ほど、厚生労働省に統合(2001年1月)される前の
厚生省と労働省へ別々に、けっこうお仕事で通ってました
当時急増していた大都市ホームレスへの緊急支援策について、厚生省からは基本は失業対策だから
メインは労働省だよと、いっぽう労働省からは基本は福祉対策だからメインは厚生省だよと、
お互い謙遜して
言っておられましたが、(統合目前だったからか?)両省の役割分担などはきちんと調整されてたようで、その対応はけっこう素早かったです
そう、「縦割り行政が悪い」とかよくいわれますが、横の調整さえきちんと出来ておれば、
一気にトップまで上がる縦割り行政のメリットを充分に活かせるのでありますね
閑話休題
奥付であります

石破政権が2024年の10月からですから、岸田政権の末頃の出版物になりますね
目次



(以下てきとーメモですが著作物からのメモなので公開に問題があれば非公開設定にします)
はじめにより
・霞が関の中央官庁は悲惨なブラック職場とされ、キャリア官僚の志願者は激減している
⇒これに抜本的な対策がされないのは人口減少や少子高齢化と同じ理由
⇒つまり短期的に目立った痛みがないからで、痛みを実感した時には手遅れになる
・霞が関の機能不全を導く要素
①現職官僚のモチベーションがガタ落ちになっている
⇒かつての敬意もなければ本省課長にもなれず仕事は激増し部下は増えず酷使されるだけ
②答弁資料など労働条件が過酷過ぎて政策立案など本来の知的業務に時間を割けない
(ただし能力が劣化しているのも事実で今の生え抜き官僚にDXを進める能力はない)
(巨大イベントも電通などの民間企業に委託するしかない⇒不祥事に)
③官邸主導(そのものは必要)の弊害
⇒首相の取り巻き官僚からのインフォーマル指示など
(政権に人事権を握られた官僚は委縮し、やがてやる気を失っていった)
④優秀な若手官僚が入ってこない
⇒志願者数が減少すると人材の質が低下するのは事実
・政治や官僚が機能不全になっても経済が自動成長していれば国民生活に影響はないが、今は
①官僚の単ミス②予算の空白③国会の空転で国民生活が混乱する
⇒やる気のない「ロボット官僚」と政治家・権力志向の「官邸官僚」だけになればリーク、
機密漏洩が蔓延し、国会は権力闘争の場に・・・
・官僚が激減して能力が地に落ちた場合、実務は国会議員が担わざるを得ない
⇒実際に民主党政権でやろうとして混乱を極めた
・国会議員にパワハラは適用されず今の官僚は恫喝すれば言いなりになると思っている
⇒彼らに官僚激減への危機意識はなく、官僚の主人である国民にもその自覚はない
・すべての始まりは90年代半ばから吹き荒れた行政改革の嵐だった・・・
第1章より
・81年の第二次臨時行政調査会⇒増税なき財政再建
⇒3公社(JR,NTT,JT)の経済規模を考えると成功だったと言える
⇒公務員数は総定員法もあり肥大化しないが特殊法人や公益法人は激増していた
・90年代中盤以降の「成熟社会」になると「行政の守備範囲」という考え方に
⇒自助努力、官から民、国から地方など
・NPMニューパブリックマネジメント
⇒民間原理を行政にも適用するアングロサクソン系国家の手法
⇒公務員を減らし、さらに公務の効率性を厳しく追及する
⇒市場メカニズム導入・業績と成果中心・顧客サービス中心・簡素化
・千葉県松戸市(マツモトキヨシ市長)の「すぐやる課」(69年)
⇒市民を顧客とみなして(お客様は神様として)何でも請け負う⇒その弊害も
・中央官庁の縮小、外郭団体の整理統合、民営化、規制緩和、許認可の廃止・・・
⇒規制緩和は経済規制だけでなく社会規制にも踏み込んだ
⇒医療、福祉、教育、公共施設も民間企業に⇒PFIが代表的
(まだ規制が強いとの批判もあるが郵政さえ民営化された日本は民営化大国だと思う)
・その後も公務員制度改革は続き、その典型が第二次安倍内閣の「内閣人事局」で人事を掌握した
⇒その歪みや忖度が話題になり、それまでずっと官僚の抵抗で行革が進まないと批判していた
マスコミがようやく官僚人事の自立性を言及するようになった(その豹変ぶりには呆れ返るが)
・96年の総選挙では行政改革が主な選挙の争点となっていた
⇒公務員の定数は法律で厳格に管理されており、国際比較でも少ないことは自明で、公務員の
給与が国民生活を圧迫することなどあり得ないのに、なぜ国民は行革に熱狂したのか?
⇒バブル以降の長期不況、正規と非正規の格差社会への不満感情から
⇒公務員は決して裕福層ではないが身分保障特権やリスクが少ないことへのバッシングだった
⇒なによりも長期不況をもたらしたのが霞が関の官僚だと見なされたこと
(グローバル化に対応できなかったなど民間企業の競争力が衰えた原因が官僚だったと?)
(政府自身も官僚や官僚が作った戦後システムが原因と報告⇒経済の中心は民間企業なのに?)
・小泉政権の構造改革も同様で「霞が関(特に財務省)を変えれば日本が変わる」と主張した
⇒その改革後もこれだけ長期不況が続いてるのが事実
⇒それなのに未だに「財務省陰謀説」は根強い(「まだ規制緩和が足りない説」も同じ)
・「政策形成の主体を(財務)官僚から政治家に移せば斬新な政策になり日本経済は復活する説」
⇒それで首相官邸に権限を集中させたが経済成長は鈍化したままなのも明らか
⇒それなら「鈍化で生じている社会問題を見据えた行革」になぜ変えなかったのか?
⇒予測できなかったからではなく人口減少や格差などの社会問題に手をつけなかっただけ
⇒景気回復すれば社会問題は解決すると、実現しない経済成長を待ち続けたのが現実
(例として失業率が上がると自殺率や犯罪率や児童虐待率は上がり、自殺対策、犯罪対策、
虐待対策の仕事量は激増してるのにマンパワーは圧倒的に不足したまま)
・官邸主導と首相権限強化の形が整ったのが2001年とすると、すでに20年が経過している
⇒この間に少なくとも経済成長に影響を与えていないのであれば改善する必要がある
第2章より
・行革で各省の利権が消滅しつつあり政治家も官僚も組織のためには働かなくなった
⇒天下りも出世もなくなれば出身省庁に忠誠を尽くす必要もない
・政治主導システムと小選挙区制度で首相官邸に権力が集中するようになった
⇒かつての族議員も姿を消した
・その結果、官邸に近い者が力を持つようになった
(戦前は内務省と大蔵省、戦後は大蔵省がトップといった序列の意味がなくなった)
・権力志向で有力政治家に近づくなどの官邸官僚(スーパーキャリア官僚)の誕生
(いっぽう受験秀才で真面目だけが取り柄の普通官僚にとってはブラック霞が関に)
・かつての横並び昇進、平等処遇といったキャリア官僚制度は崩壊し官僚の個人化が進む
⇒首相や官房長官との近さ、政策分野の重要度などから重用される官僚と普通官僚の格差が拡大
・軍と警察は政治から切り離すべきだが、今は警察庁が官邸で重きをなしている
⇒「首相、官房長官といった政治家を官邸官僚が補佐する政官融合体」を警察庁が守護する体制
⇒そんな官邸主導体制が日本をどういう方向に導くのか・・・
第3章より
・各省の再就職斡旋禁止が制定されたのが2007年
⇒一部の真面目な官僚にとっては厳しい老後が待ち受けている
⇒ところがごく一部の官僚は以前よりはるかに恵まれた再就職を享受している
・キャリア官僚の局長・審議官ポスト数などは法令で縛られている
⇒定年まで居座られると若手にポストが空かない
⇒辞める側にも生活があり関連企業や団体への再就職=天下り慣行が昭和初期にはあった
(今の年金制度は戦前の恩給制度ほどではなく退職後も働くことが前提となっている)
・天下りには組織影響力の拡大意図もあった
⇒許認可権のある民間企業や不要な外郭団体など
・2007年以降、キャリア官僚の天下りは壊滅しつつあり生活基盤が不安定化している
⇒キャリアで本省課長になれないまま60歳で定年退職して再就職先がないという状況
⇒ポストを空けるため外郭団体等に出向させ退職直前に呼び戻す手法が現在も続いている
・民間企業や経済界との接触が多い経産省や財務省は再就職の勝ち組
⇒許認可や利権と絡んだ国土交通省、旧郵政省も・・・
・能力やコネクションを利用して再就職する者とそうでない者との二分化
・生命保険・損害保険への再就職が多いのは何故か
⇒金融と同じく業界の垣根がなく、役立つかどうかわからなくとも余裕があるからでは
・大学教員への再就職も多い
⇒文献を読みデータで仮説を実証し、論文(企画書)を書く仕事は官僚と親和性がある
・現在の事後規制・斡旋禁止で、個人の再就職・転職は自由というのがいいと思う
⇒厳しい天下り規制より職業として官僚の魅力を高める方がよい
⇒ただし人材流動化によるロビイスト、機密漏洩などへの法整備が必要
第4章より
・バブル崩壊以降の不況⇒社会保障も公共事業も削れない⇒役所を減らせ
⇒行政改革⇒政治主導で痛みを伴う改革⇒反対する官僚は抵抗勢力
⇒内閣人事局の創設で官邸主導体制(首相や官房長官の圧倒的優位)が確立された
⇒各大臣・各省官僚・各族議員の三角関係の上に官邸が来た(それまではほぼ同列だった)
・安倍政権では官邸・内閣官房・内閣府の官僚が各省大臣よりも存在感があった
⇒彼らは政権と一体化した政治家と見なすべきではないのかという議論も
・行政改革の目的は行政のスリム化だが官僚の力を削ぐことが隠れた目的
⇒人事権を握った影響は絶大だった
⇒首相や官房長官や官邸官僚の影に怯える忖度官僚が続出した
・内閣人事局の創設までは(名目の人事権は各大臣だが)実質は各省の官僚案が承認されていた
・上級公務員(事務次官・局長・部長・審議官)を育成管理するのが内閣人事局の目的
⇒上級公務員は各省の都合ではなく日本全体の利益を考える「日の丸官僚」であるべき
⇒それは首相官邸の意向を受ける官僚ということになる
⇒なぜなら各省の政策を選ぶのは国家全体を俯瞰する首相であり官邸だから(という理屈)
・内閣人事局は官僚人事の「政治的応答性」を「中立性専門性」より重視した制度だったが、
当時は文科省の幼稚園と厚労省の保育園など各省のセクショナリズムと官僚の特権が大問題
となっており、ごく自然な流れであった
・内閣人事局制度運用の特徴(2018年4月23日付け日本経済新聞から)
①順送り人事をしない
②政権の政策目標を実現するための布陣
③政権の姿勢をアピールするノンキャリアや技官や制服組の抜擢
④情報が洩れれば人事を差し替える
⑤女性の活躍など
⇒批判されているのは、そのプロセスが曖昧で不透明な点
⇒水面下で様々な注文がついて決まっており、任命権者である大臣より官邸が優位に
・上位政策に人事が絡むことは本来は正常
⇒例えば安全保障に関し官邸の方針に従わない幹部官僚はすぐに更迭すべきだが、
⇒下位政策(個別案件)に官邸主導の人事が絡むと行政は歪んでしまう
⇒歪みの原因は総理の取り巻き政治家や官僚
⇒その取り巻き集団が官邸主導体制になってから跳梁跋扈している
⇒官邸、内閣官房、内閣府の幹部官僚で一部は政治任用だが虎の威を借る資格任用が問題
⇒官邸官僚とは首相秘書官、官房副長官、3人の副長官補、内閣審議官、内閣参事官(課長級)など
・政治任用でも使えるのは元官僚だから資格任用の一般職国家公務員とは明確に区別すべき
⇒政治との調整は政治任用と事務次官から局長まで、審議官以下は政策立案に専念するべき
⇒有名無実化している政官接触記録制度を厳格運用すべき
①公正中立な内閣人事局制度
②政治任用の拡充
③政官の完全分離
・・・だけでは済まない
⇒英国のような「政治家と官僚が守るべき規範」と「国会の監視機能」が必要
第5章より
①官僚の労働環境の悪化⇒長時間労働
②仕事の中身と質の変化
⇒官邸主導システム以降は政策の企画立案が官邸に独占され、根回しや調整だけが各省に
③未知の仕事に官僚が対応できなくなっている⇒デジタル化など
⇒外郭団体が少なくなり民間企業に頼らざるを得ない構造も影響
・この①②③の相乗効果で官僚がやる気を失い各省が制御不能になり政府が機能不全に?
⇒これが本書の提示する仮説
・これまでのキャリア官僚の人事慣行
(これが給料が安く長時間労働でもモチベーションが下がらなかった理由その1)
①同期横並びで本省課長クラスまではスピード昇進できる
②そこまでは後輩が先輩を追い抜くことはない
③それ以上もある程度は規則性のある予測可能な昇進レース
④降格などの不利益処分はない
⑤斡旋による天下りが保証される(本省課長以上)
⇒本省課長での勧奨退職と天下りがなくなり定年退職まで働くようになった
⇒ポストは増えないので管理職の年齢が上昇する⇒昇任までの年数が上昇する
⇒短期間スピード出世というエリートの証しが消えモチベーションも消える
・(公共心もあるが)自分主体で世の中に影響力を与える仕事をしたいのが官僚の本音
(これが給料が安く長時間労働でもモチベーションが下がらなかった理由その2)
⇒政策形成プロセスは①政策の企画立案②政策形成過程の調整③政策の執行の3段階だが、
③は出先や地方自治体なので、やりがいを感じる圧倒的比重は①政策の企画立案
⇒自分の考えた政策が法律や予算になり世の中に大きな影響を与えているという実感
⇒これで給料が安く長時間労働でパワハラ横行の霞が関で生きていこうと思えた(実体験から)
・政策決定についての各省割拠システム・小泉政権・第二次安倍政権の違い(略)
⇒第二次安倍政権の政策決定は官邸官僚
⇒それ以外の普通官僚は望みもしない政策の是非で人事評価された
・官邸主導体制の功罪
⇒トップダウンは政策決定スピードだけでなく各省の協力体制にも有利なのは事実
⇒ただし官邸案件だけが各省折衝の苦労もなく通ることへの不安もあった
⇒政策決定した官邸官僚は国会答弁に立つことなく吊るしあげられるのは各省の普通官僚だけ
⇒その前でふんぞり返る閣僚の多くは世襲議員で実力で勝ち取った地位ではない
⇒そんな哀れな姿を見て、それでも官僚になりたいと思う若者がいるだろうか?
・第二次安倍政権では自分たちが主体的に進めた政策でもないのに責任を追及され苦悩した
⇒ただし自分たちが消極的に加担したのも事実なので、さらに苦悩した
⇒各省の政策立案では(硬直的だったが)各省に責任感はあった
⇒官邸の政策立案では(変化とスピード感はあるが)責任は曖昧になる
・高市総務大臣(当時)と総務省の放送法に関する流出文書の問題
⇒本書では放送法解釈の変更そのものではなく首相補佐官が加わった政策形成に巻き込まれ、
与野党政争の狭間で立ち尽くさざるを得ない官僚の悲哀を問題にする
①これまで正義(秩序)とされてきたもの(放送法の解釈)を変更することの苦痛
⇒継続が正しいとは限らないが過去から続く解釈に一定の正義と合理性があるのも事実
⇒放送の中立については過去の情勢に影響を受けつつ困難の中で維持されてた経緯がある
⇒それを権力者の命令であっさり変えられてしまうと今までの先輩の仕事は何だったのかと
②政策形成プロセスの複雑さ
⇒官僚主導の政策であれば主体的に立案・根回しして総務大臣の了解を得れば終わりだった
⇒放送法解釈の変更は総務省への磯崎首相補佐官の指示で官僚が総務大臣にも納得してもらい、
最終的に国会で答弁を変更した
⇒放送法解釈の変更は総務大臣の権限だが本当に首相補佐官の背後に首相がいるのか不明
⇒菅官房長官や副長官、政務秘書官への説明がいるのかも不明
(首相補佐官から総務大臣らに話してもらえばいいのだが官僚は政治家に言えないので悩む)
(実際に流出文書でも局長が提案したが「それは俺と総理が決めることだ」と一蹴されている)
・本来の官邸主導システムであれば官邸が大方針を公にしたうえで政策を変えていくべき
⇒ところが総理本人でも公でもないところから大方針もない個別案件に近い政策変更を要求される
(各省割拠システムであれば業界や議員への根回し⇒研究会⇒審議会ではじめて解釈変更になる)
・霞が関では省内で「梯子を外される」ことはあるが官邸案件では国会に証人喚問される
⇒こんな状況がネット情報で流れる中、年収800万で長時間労働の官僚を選ぶ若者がいるか?
⇒どろどろ世界での権力者を目指さない限り民間企業に行くだろうし、不安定でも夢のある
起業家を選ぶだろう
⇒このことを良識ある政治家は、よくよく考えたほうがいい

・官邸主導システムにはネガティブな側面があるが各省割拠システムはそれ以上に時代に合わない
⇒官邸主導でもうまくいかないのは官僚の能力自体が劣化している、もしくは経済社会や
時代に追い付いていないからではないか
⇒人材不足・デジタルなどへの対応能力不足
⇒コンサルと広告代理店への委託料は総額の21%で独立行政法人と肩を並べる(2020)
⇒霞が関とコンサル・広告代理店の学歴も逆転しており、やがて官僚志望者はゼロに近づく
⇒その時に国会議員が自分でどこまで事務や調整ができるか、見てみたいものだ

第6章より
・霞が関の長時間労働
⇒規制緩和・小さな政府でも業務量は増え続けており総定員法で人員は増えないから当然
・働き方改革の厚労省自体、長時間労働が前提でブラックの筆頭だと思っている
⇒コロナ禍では2階大講堂の対策本部は24時間体制で体調を崩す職員が続出した
⇒緊急入院する妊娠中の女子職員もいたが、それで子育て支援策が作れるのか?
・2020年に民間企業と同様のパワハラ禁止規定が人事院規則に設けられた
⇒ところが大臣や国会議員などの政治家には適用されない
(官僚より選挙で苦労している政治家のほうが人間的にまともと思ってるがひどいのもいた
)・厚労省若手改革チームの緊急提言(略)
⇒霞が関から続々と若者と女性が去っていく現状
⇒人手不足はより深刻になり、やがて無定限・無定量の文化も死に絶える
⇒報道は官僚のミスだけでなく、なぜミスが生じているのかを詳細に報じてほしい
終章より
・90年代半ばから本格化した行政改革で官僚は見事に没落した
⇒東大生の多くは外資系コンサルに流れ、早慶上智MARCH関関同立が大躍進する
⇒霞が関=最高学歴という図式は完全に消える
⇒日本では大学受験時の偏差値が優秀さを計る絶対的な基準になっているので、
⇒公務員試験は難関のままでもキャリア官僚はエリートではなくなる
・政治家と官僚は合わせ鏡で官僚が没落した分だけ権力を手中にしたのが政治家
⇒この30年で政治主導システムに改革したが、それは成功したのか?
・官僚は試験で選ばれ政治家は選挙で選ばれる
⇒民意を反映した政治家が政策の方向性を決定すべきというのが、この30年間のロジック
・目立ったのは国会議員の偉さより民意や世論の絶対化であり、それを体現するポピュリズム
⇒世論を煽り世論に迎合するポピュリストが政治の前面に出るようになった
⇒インターネットの勢いもあり4年に1度の選挙で選ばれる政治家に権力を集中させた結果、
政治家を抑えることができる対抗勢力はいなくなった
・いっぽう国民は政治家が最も信用できない人間で民意を体現した存在だとは思っていない
⇒政治家は信用できず直接民主主義も実現できないので「くじ引き民主主義」論が出る
⇒日本では欧米とは逆にボイコットやデモへの参加率は低下している
・政治主導体制に変えた根拠のひとつは政権交代だったはず
⇒二大政党の権力交代があるので官邸に権力を集中しても腐敗はないという前提
⇒その前提が崩れるどころか半永久的に実現しないのだから政治主導も見直すべき
⇒世間ウケのいいバラマキばかりの政治家に権限を集中させる必要はない
⇒財務省感覚ではなく日常生活感覚でみても、そろそろ限界ではないか
・政治主導を見直すといっても、文句を言わない国民や世論には期待できない
⇒吠えない犬となったマスコミにも期待はできない
⇒ならば政治家を縛る規範や制度を作るしかない
⇒内閣人事局制度と同様の権力抑止システムを作れば物事は動く
・政治家を縛る制度と合わせて政治家を評価する制度も必要
⇒民主党政権と一緒に追い払われた「マニフェスト」の復活
・官僚が復権することはないが特定政策分野に興味がある学生や官邸官僚を目指す学生は残る
⇒それでも東大生が減り官僚の権威は失墜する
(東大生が優秀とかのロジカルな理由ではなく権威の図式が壊れるだけ)
⇒やがて早慶上智MARCH関関同立も激減していくだろう
・90年代半ばから公務員制度を改革してきたが結果をみると明治以来の芸術作品を破壊した
にすぎなかったのかもしれない
⇒公務員制度の研究者として、制度を作り替える怖さを実感している・・・
・・・
ホントにそうなのとの部分もありましたが、なるほどと納得する部分が多かったです
前述のとおり岸田政権の終わりごろに書かれた本で、その後の国政は目まぐるしく動いてますね
さてさて今度の衆院選後に、この状況が改善されるのか、はたまた・・・
2025年12月25日
ヤマト建国の真相
とーとつですがクリスマスに・・・

「~最新考古学が解き明かす~ヤマト建国の真相」のご紹介であります
監修者紹介と奥付

目次



目次からもおわかりのとおり、ヤマト王権と邪馬台国について網羅してあり、
素人にもわかるよう最新の研究成果をまとめた入門書であります
巻末にあった主な参考文献

当サイトで取り上げた本も何冊かありますね・・・
と、まずは第1章の冒頭部分からメモ・・・
・ヤマト王権が誕生したのは3世紀後半以降の奈良盆地というのが定説
⇒ところがこの期間の文字資料がないため「空白の4世紀」とされている
(266年の晋書・武帝紀から、369年の七支刀刻印、391年の碑文記録までない)
⇒文書資料で卑弥呼が共立されたのは190年頃とされている
(3世紀には西日本の大部分を統治下においていた)
・両者は個別に研究されてきたが奈良県桜井市の纏向遺跡の発掘調査と研究が進んだ
⇒纏向遺跡は2世紀後半に突如出現した大規模な都市計画で3世紀後半にヤマト王権の王都
だったことはほぼ確定している
⇒纏向遺跡は卑弥呼政権の王都であり、その後のヤマト王権へ政権が何らかの形で直接継承
あるいは簒奪された可能性が高い
・だが魏志倭人伝の邪馬台国へ至るクニグニは北部九州が多く出土例も畿内より圧倒的に多い
⇒投馬国を除きいずれも玄界灘沿岸(畿内説では投馬国は吉備あるいは出雲)
⇒200年~260年(庄内期)の鏡の出土も北部九州に集中している
⇒これは何故なのか・・・
・・・
とはじまって寺沢薫説や、桃崎有一郎説が詳しく紹介され、九州説の矛盾を指摘する項もあり、
以降の章は邪馬台国畿内説で進みますが、以下わたくしが気になった一部のてきとーメモです
(著作物からのメモなので公開に問題があれば非公開設定にします)
・魏志倭人伝には倭国の内29国の盟主である卑弥呼の住む王都「ヤマト国」の長官はイコマ、
副官はミマス、ミマキ、ナカトの3人で、この4人がヤマト国を支配するとある
(他にもナ国やイト国など主な倭国内の国の長官と副官の名前が記されている)
⇒イコマ、ミマス、ミマキは記紀にある初期ヤマト王権の大王名と共通する(村井康彦説)
⇒イコマ垂仁天皇イクメイリヒコ、ミマス孝昭天皇ミマツヒコ、ミマキ崇神天皇ミマキイリヒコ
⇒この3人の御陵の地を当てるとイコマは奈良盆地の北東部、ミマスは南西部、ミマキは東部
⇒ナカトに該当する天皇名はないが「中処」とすると3地域の中央部になる
⇒イコマの生駒は当時の河内湾につながる大和川の要衝、ミマスの南西部は葛城氏の本拠地、
ミマキの東部は纏向遺跡や最初期の前方後円墳がある天理市から桜井市にかけて
⇒ナカトの中央部に鍵・唐古遺跡があり、卑弥呼以前の体制・社会状況を引き継いだものか
⇒他の国では長官1副官1で2人だがヤマト国のみ4人、しかも3人の副官に序列はない・・・
・北東部のイコマが長官で王都である纏向のある東部のミマキが副官なのは何故?
⇒記紀の神武東征では大阪に上陸したイワレヒコが生駒山の西麓でナガスネヒコに敗れている
⇒このナガスネヒコの根拠地がイコマのエリア
⇒現代なら都庁が生駒にあって国会議事堂が纏向にできた、ということになる
⇒イコマのエリア内にある富雄丸山古墳は(大王以上の副葬品があるのに)大王級の前方後円墳
ではなくランクが下の円墳
⇒被葬者は卑弥呼以前にヤマトを治めていたナガスネヒコのモデルとなった王を祖先とし、
その後ヤマト国の長官となったイコマの後裔だったからではないか・・・
・瀬戸内海沿岸部の鉄をめぐる第一次倭国乱で大和と吉備と淡路島が結びついた?(記紀)
⇒このとき北部九州は安定しており防備を固め静観していた(当時の遺跡から)
・181年のニュージーランド・タウポ火山噴火により184年には黄巾の乱、三国志の時代へ
⇒北部九州も難民や後漢の衰退で混乱し、交易をめぐり瀬戸内海中部・畿内連合の圧力も
⇒これが第二次倭国乱だが武力衝突はせず連合に加わり卑弥呼政権が形成された
⇒鉄を中心とする物流システムの再編成のために生まれた政権ともいえる
・なぜ畿内の纏向が王都に選ばれたのか
⇒北部九州の難民などによる社会変化の激しさ、岡山平野の少ない降水量に対する奈良盆地の
安定的な農業生産もあるが、大きな要因は強力な首長がいなかったからではないか
⇒400のムラ⇒11の共同体⇒3つの主要勢力で200年続いていたが、倭国乱以降の2世紀末に
拠点集落では環濠が埋められ、唐古・鍵では掘り直しもされるが規模は格段に縮小する
⇒奈良盆地の集落ネットワークは解体・再編成させられたのだ
・纏向王都の先進性
⇒吉備や讃岐の大規模土木技術、北部九州の大陸からもたらされた最先端知識の活用
⇒配置や建物D(出雲大社本殿の大社造りと共通)、建物C(伊勢神宮の神明造りにつながる)など
・纏向遺跡の外来形土器は2世紀末の5大勢力(北部九州・瀬戸内海中部・出雲・畿内・東海)を
もれなく網羅しており3世紀に日本の中心地だったことは明らか
⇒中国宮殿を模した桃、紅花、バジルなど西アジア原産種が出土している
⇒ところがイネや鍬など農業遺物が殆ど出ない(土木工事に使う鋤は多い)
・卑弥呼共立と銅鐸祭祀の破壊・消滅(略)
・瀬戸内海中部・畿内連合の前方後円墳に北部九州が加わった卑弥呼政権の纏向型前方後円墳、
そして出雲の勢力が加わって葺石が備えられたホケノ山古墳(卑弥呼の墓とも)、という発展
⇒箸墓古墳は諸勢力の首長霊祭祀を集約化し発展していったもので規模も魏志倭人伝と一致、
放射性炭素年代法による240~260年という推定も卑弥呼の死亡年とされる248年頃と一致し、
箸墓古墳の被葬者が卑弥呼と考えるのが自然・・・
と、ここまでで第3章まで、4章から7章も最新の研究成果をわかりやすくまとめてあり、
とても面白かったのですが、メモ能力よりアルコール勢力が拡大してきて・・・ひっく
ここまでのメモや目次を見て興味を持たれた方はぜひ本書をお読みくださいね
NHK教育の「3ヶ月でマスターする古代文明」も面白かったけど、日本の古代史も面白いなあ

「~最新考古学が解き明かす~ヤマト建国の真相」のご紹介であります
監修者紹介と奥付

目次



目次からもおわかりのとおり、ヤマト王権と邪馬台国について網羅してあり、
素人にもわかるよう最新の研究成果をまとめた入門書であります
巻末にあった主な参考文献

当サイトで取り上げた本も何冊かありますね・・・
と、まずは第1章の冒頭部分からメモ・・・
・ヤマト王権が誕生したのは3世紀後半以降の奈良盆地というのが定説
⇒ところがこの期間の文字資料がないため「空白の4世紀」とされている
(266年の晋書・武帝紀から、369年の七支刀刻印、391年の碑文記録までない)
⇒文書資料で卑弥呼が共立されたのは190年頃とされている
(3世紀には西日本の大部分を統治下においていた)
・両者は個別に研究されてきたが奈良県桜井市の纏向遺跡の発掘調査と研究が進んだ
⇒纏向遺跡は2世紀後半に突如出現した大規模な都市計画で3世紀後半にヤマト王権の王都
だったことはほぼ確定している
⇒纏向遺跡は卑弥呼政権の王都であり、その後のヤマト王権へ政権が何らかの形で直接継承
あるいは簒奪された可能性が高い
・だが魏志倭人伝の邪馬台国へ至るクニグニは北部九州が多く出土例も畿内より圧倒的に多い
⇒投馬国を除きいずれも玄界灘沿岸(畿内説では投馬国は吉備あるいは出雲)
⇒200年~260年(庄内期)の鏡の出土も北部九州に集中している
⇒これは何故なのか・・・
・・・
とはじまって寺沢薫説や、桃崎有一郎説が詳しく紹介され、九州説の矛盾を指摘する項もあり、
以降の章は邪馬台国畿内説で進みますが、以下わたくしが気になった一部のてきとーメモです
(著作物からのメモなので公開に問題があれば非公開設定にします)
・魏志倭人伝には倭国の内29国の盟主である卑弥呼の住む王都「ヤマト国」の長官はイコマ、
副官はミマス、ミマキ、ナカトの3人で、この4人がヤマト国を支配するとある
(他にもナ国やイト国など主な倭国内の国の長官と副官の名前が記されている)
⇒イコマ、ミマス、ミマキは記紀にある初期ヤマト王権の大王名と共通する(村井康彦説)
⇒イコマ垂仁天皇イクメイリヒコ、ミマス孝昭天皇ミマツヒコ、ミマキ崇神天皇ミマキイリヒコ
⇒この3人の御陵の地を当てるとイコマは奈良盆地の北東部、ミマスは南西部、ミマキは東部
⇒ナカトに該当する天皇名はないが「中処」とすると3地域の中央部になる
⇒イコマの生駒は当時の河内湾につながる大和川の要衝、ミマスの南西部は葛城氏の本拠地、
ミマキの東部は纏向遺跡や最初期の前方後円墳がある天理市から桜井市にかけて
⇒ナカトの中央部に鍵・唐古遺跡があり、卑弥呼以前の体制・社会状況を引き継いだものか
⇒他の国では長官1副官1で2人だがヤマト国のみ4人、しかも3人の副官に序列はない・・・
・北東部のイコマが長官で王都である纏向のある東部のミマキが副官なのは何故?
⇒記紀の神武東征では大阪に上陸したイワレヒコが生駒山の西麓でナガスネヒコに敗れている
⇒このナガスネヒコの根拠地がイコマのエリア
⇒現代なら都庁が生駒にあって国会議事堂が纏向にできた、ということになる
⇒イコマのエリア内にある富雄丸山古墳は(大王以上の副葬品があるのに)大王級の前方後円墳
ではなくランクが下の円墳
⇒被葬者は卑弥呼以前にヤマトを治めていたナガスネヒコのモデルとなった王を祖先とし、
その後ヤマト国の長官となったイコマの後裔だったからではないか・・・
・瀬戸内海沿岸部の鉄をめぐる第一次倭国乱で大和と吉備と淡路島が結びついた?(記紀)
⇒このとき北部九州は安定しており防備を固め静観していた(当時の遺跡から)
・181年のニュージーランド・タウポ火山噴火により184年には黄巾の乱、三国志の時代へ
⇒北部九州も難民や後漢の衰退で混乱し、交易をめぐり瀬戸内海中部・畿内連合の圧力も
⇒これが第二次倭国乱だが武力衝突はせず連合に加わり卑弥呼政権が形成された
⇒鉄を中心とする物流システムの再編成のために生まれた政権ともいえる
・なぜ畿内の纏向が王都に選ばれたのか
⇒北部九州の難民などによる社会変化の激しさ、岡山平野の少ない降水量に対する奈良盆地の
安定的な農業生産もあるが、大きな要因は強力な首長がいなかったからではないか
⇒400のムラ⇒11の共同体⇒3つの主要勢力で200年続いていたが、倭国乱以降の2世紀末に
拠点集落では環濠が埋められ、唐古・鍵では掘り直しもされるが規模は格段に縮小する
⇒奈良盆地の集落ネットワークは解体・再編成させられたのだ
・纏向王都の先進性
⇒吉備や讃岐の大規模土木技術、北部九州の大陸からもたらされた最先端知識の活用
⇒配置や建物D(出雲大社本殿の大社造りと共通)、建物C(伊勢神宮の神明造りにつながる)など
・纏向遺跡の外来形土器は2世紀末の5大勢力(北部九州・瀬戸内海中部・出雲・畿内・東海)を
もれなく網羅しており3世紀に日本の中心地だったことは明らか
⇒中国宮殿を模した桃、紅花、バジルなど西アジア原産種が出土している
⇒ところがイネや鍬など農業遺物が殆ど出ない(土木工事に使う鋤は多い)
・卑弥呼共立と銅鐸祭祀の破壊・消滅(略)
・瀬戸内海中部・畿内連合の前方後円墳に北部九州が加わった卑弥呼政権の纏向型前方後円墳、
そして出雲の勢力が加わって葺石が備えられたホケノ山古墳(卑弥呼の墓とも)、という発展
⇒箸墓古墳は諸勢力の首長霊祭祀を集約化し発展していったもので規模も魏志倭人伝と一致、
放射性炭素年代法による240~260年という推定も卑弥呼の死亡年とされる248年頃と一致し、
箸墓古墳の被葬者が卑弥呼と考えるのが自然・・・
と、ここまでで第3章まで、4章から7章も最新の研究成果をわかりやすくまとめてあり、
とても面白かったのですが、メモ能力よりアルコール勢力が拡大してきて・・・ひっく
ここまでのメモや目次を見て興味を持たれた方はぜひ本書をお読みくださいね
NHK教育の「3ヶ月でマスターする古代文明」も面白かったけど、日本の古代史も面白いなあ

