書斎

2020年09月12日

いまこそ「小松左京」を読み直す

いまこそ「小松左京」を読み直す・・・

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宮崎哲弥著 NHK出版 2020年7月10日第1刷発行



表紙裏にあった惹句

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著者紹介

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例によって目次のみ・・・

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「はじめに」によると、本書は2019年7月にNHK Eテレで放送された「100分de名著
小松左京スペシャル」用テキストを大幅に改稿、書き下ろしの第2章を併せたものだそうです。

放送時には意識してませんでしたが、じつに詳細に小松作品を読み込んで研究しておられる、
仏教思想・政治哲学・サブカルチャーの評論家だったんですね。

番組放送直後の記事のコメント欄にも書きましたが、わたくし小松作品は中学時代から
読み耽っており、たまたま大学時代に小松氏の「現代史」の授業が文学部であって、
わたくしは他学部でしたが本来授業をサボって全講義を聴講、半年間の講義の最終日には
小松氏が学生時代に高橋和己氏や山崎正和氏らと通っていた居酒屋での(全額ご本人持ちの)
打ち上げにも参加、別の日には講義終了後に近くの喫茶店で、わたくしがSF研究会とは別に
所属していた史跡サークルとして、仏教や宇宙に関する学生たちの拙いインタビューにも、
快く応じていただきました。(こちらも喫茶店代は全額ご本人が・・・)

さらにわたくしの政治史ゼミの論文も小松作品からの受け売りが殆どでしたし、まさに
わたくしの青春時代つーか人格形成期に、最も大きな影響を与えてくれた作家・・・



最新刊ですし紹介されている作品は今一度その視点で読み返したいとも思いましたし、
とりあえず、わたくしが特に印象に残ったキーワードのみ備忘のため羅列・・・
(著者の見解、小松氏本人の言葉、その他からの引用など、ごっちゃにメモしてます)

第1章(地には平和を・戦争はなかった・ヤクトピアなど)より
・小松の「異常なほど情熱的な好奇心や向日性、あるいはエネルギッシュな行動力」は、
「ひたすら根にからまる翳の部分に、ひきこまれないためのあがき」のようにもみえる・・・

第2章(果てしなき流れの果に・神への長い道・彼方へ)より
(著者によると「宇宙構造探求系SF」に分類される作品群とのことですが、
書き下ろしで番組で紹介されてない部分も多かったですし、わたくしが最も影響を受けた
作品群なので、メモを書けばこの章だけで膨大な量になるし、いずれ、あらためて・・・)

第3章(日本沈没)より
・1973年にベストセラーになった時代背景(井上ひさし)
円の変動相場制への移行、石油危機、水銀・PCB(ポリ塩化ビフェニール)汚染魚の年で、
前二者は繁栄がカルタの城に過ぎなかったこと、後者は自然が必ず報復すること、
を日本人が思い知った年だった。
・ともかく先を読んでるのは間違いない
(プレートテクトニクス理論、新発売された「電卓」による沈下速度の計算など)
(日本はインターナショナルでもトランスナショナルでもなくサブナショナルがポスト国家)
→まるで1980年代以降のポストモダンの脱国家観
・文明論というより一種の仏教的諦観
・このデリケートな自然が、島が、破壊されなくなれば日本人というものはなくなる・・・

第4章(ゴルディアスの結び目、岬にてなど)より
・宇宙の本質をめぐる超神学論争
(釈迦がヒンズーの認識をバックに考えたのは宇宙=世界=生命=人間観)
(アーリア系の宗教は光と闇、善と悪の二元論で、一神教でも二元論的宇宙観)
・イベント・ホライゾン→(バイオハザードの)ポール・アンダーソン監督の1997年作品

第5章(虚無回廊、結晶星団、雨と風と夕映えの彼方に、など)より
・文学は科学さえも相対化する
星空の美しさと近代宇宙論の不思議な宇宙像
電子顕微鏡下の超現実的な美しさと生化学に対する知識
生産発展の驚異とそれを組織する演算素子の働き
これらに対する常識的理解を持たないものに・・・どうやって新しい世界像が語れるか、
と思っていたが・・・
・1995年の阪神淡路大震災
・心と、魂あるいは実存との違いは、自己の存在理由の自覚の有無?
・人工知能と人工実存の相違点
・「我思う」は「我あり」の恒久的な根拠にはなり得ないのでは・・・
・仏教は我(アートマン)も大我(ブラフマン)も実在を否定したが、
アートマン(個人原理)は実体として斥けられてもブラフマン(宇宙原理)の実体性は否定されない
・このダキニ師の反実存論が今後の(物語の)伏線になっている→未完のまま亡くなった
・一般自然言語
・イマジナリーは日本語と漢語では虚、無は虚と実のあいだの原点みたいなもの、
→無を挟んで虚と実が向かい合ってる・・・
・学生時代の桑原武夫の文学概論のレポート課題が「文学は人生に必要か」だった
→これに終生こだわりつつ文学と自分の作品に対峙していたのが高橋和己
→こんな難問を生涯手放すことなく探問し続けることになる無二の親友が小松左京
・救済のための文学を志すのは意味があるが、文学による救済はあり得ないという立場
→すると文学は一時の慰めだけど、それでいいじゃないかと・・・
・今ここにある苦しみを文学作品に置き換えるという理解
・でも人間は文学、物語をどうして編み出したのか
→何か人間性の大きな肯定が文学を志す者の基本的な心構えの中に要るだろう・・・

(世界と出会い直すためにーあとがきにかえてー)より
・たとえば「痛い」はある事態を記述し表出する行為と考えられているが、
それは錯覚で、事態の単なる報告ではなく何らかの対処を求める行為
・何かを意味する言明ではなく機能
・「痛み」の概念は生活において果たす固有の機能によって特徴づけられる
(ウィトゲンシュタイン・近内悠太「世界は贈与でできている」)
・小松SFでは疑うよすがもない事物がなくなってしまう
・生活を下支えしていた透明だったものを可視化させる
・(ウィルスや震災など)作品設定に近い事態が起こる都度、予言の書として話題になるが、
物語の表層の奥にある思想も(近内悠太のように)読み取って欲しいと思ってまとめた。
・それが氏への恩返し・・・


わたくし小松氏の書かれた「自伝」と「SF魂」は未読なので、読んでみていずれまた・・・



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2020年09月04日

危機と人類(承前)

ジャレド・ダイアモンド著「危機と人類」読後メモ、前回からの続きであります。

日本についての第3章と第8章、さらに比較のためオーストラリアについての第7章も、
どちらも一部ですが、わたくしの読後メモの中から抜粋しておきます。
今回も著者の分析と見解のメモだけで、わたくしの感想についてはいずれまた・・・
ええ、さすがに自国の部分については思うところもありますので・・・

第3章 近代日本の起源より(一部)
・日本とイギリスは大陸の端にある島国で似ていると思われがちだが、地政学的に日本は
大陸からの距離が180kmでイギリスは35km、面積は1.5倍で人口も2倍以上、土地も肥沃で
農作物や木材の生産量、沿岸漁業の漁獲量もイギリスより多い。
→なので(
近代工業の発展までは)必要不可欠な天然資源はほぼ自給でき、外国貿易(侵略)の
必要性が低く、鎖国政策はその傾向を強めていたただけ。イギリスはまったく逆。

(ちなみに9/2放送の「歴史秘話ヒストリア」で、ペリー来航時のアメリカの要求は、
漂流民の保護と船への補給と貿易だったが、日本は国内で自給できるので貿易は不要、
アメリカが人命重視というなら前二者だけでいいはずと回答、はじめての国際条約である
日米和親条約を締結したが、きわめてまともな二国間交渉だった、とやってましたね。
ま、その後は不平等な日米修好通商条約などに続くわけですが・・・
さらにペリーの記録には、日本人は教育が普及しており好奇心が旺盛で手先も器用なので、
西洋の技術を習得したら機械技術の成功を目指すうえで(アメリカの)強力なライバルになる
であろう、と記していたとも・・・)

・1853年のペリー来航以来、日本では意識的に選択された多岐にわたる抜本的改革が行われ、
同じく意識的に選択された多くの伝統が保持された。
・明治時代の日本は現実的な軍備増強と領土拡大を段階的かつ着実に成功させたが、
1937年以降に非現実的かつ失敗に終わる領土拡大に一歩ずつ進んだのは何故か。
→理由は多数あるが本書のテーマからは「公正な自国評価を行う知識や能力」の違い。
→海外経験の違い→明治の志士と昭和の将校との戦争体験や知識の違い・・・
→明治の志士は欧米を実感し多くが留学したが昭和の将校は日清・日露の知識だけ
→昭和でも欧米経験のある実力者も一部に残っていたが軍部に押されていった。


第8章 日本を待ち受けるものより(一部)
・日本のビジネスが世界で高い競争力を持つ理由はたくさんある。(省略)
・現在利益をもたらしているが将来トラブルを招き得る日本経済の特徴
→憲法第9条により中国アメリカに比べ、はるかに軍事費を節約していること

七つの問題点
①国債発行残高→GDPの2.5倍(アメリカは1倍)で、悪名高いギリシャの2倍、スペインの4倍
→ユーロ圏17ヶ国の合計残高に等しいがユーロ圏の人口は日本の3倍
→それなのになぜ、崩壊あるいはデフォルトしなかったのか?
→保有者が日本の個人・企業・年金基金・日本銀行で政府に対して強硬態度は取らない。
→日本はマイナス金利政策
→日本人も外国人も返済能力を信頼し買い続けており、日本の個人・企業の主たる投資先
→しかし利払いと高齢化による社会保障費に使われており経済成長投資に使われていない
→さらに日本の税負担は軽く、現役世代の税金が利払いに→実質的に高齢者への支払いに
なっており世代間の利害対立を作り出している→未来を担保にしたローンの借り入れ

②女性
→平等を阻む女性の社会的障壁は韓国を除く富裕な先進国の中で最も強い
→大学生の49%、新入社員の45%が女性なのに、大学教員ポストでの比率は14%、
中間および上級管理職で2%、役員で1%、CEOでは1%未満で、韓国を除けば先進国で最悪
→女性首相もなく先進国35ヶ国中、男女賃金格差は韓国・エストニアに次いでワースト3
→原因は長時間労働や終業後の交流
→アメリカのような保育請負移民女性や北欧のような保育所もなく母親が保育すべきとの伝統も残る
→なので制度はあっても出産を機に辞めざるを得ないし、子どもとのジレンマもある
→なので高度な仕事はオファーされにくいし、されても受けない傾向もある
→保守派だった安倍晋三首相が改善提案しているが女性を家庭に縛り付ける陰謀とも・・・

③新生児
→1000人当たりの年間出産数はアメリカ13人、世界平均19人、日本は7人で最低
→合計特殊出生率もアメリカ1.9人、世界平均2.5人、日本は1.26人で最低
→出生率が低くても移民流入が多ければ問題ないが日本にはほぼない。
→原因は初婚年齢の上昇、婚姻率の低下、婚姻外子の少なさ
→その原因は経済的理由、女性は夫の親の介護などに責任を持ちたくない、さらに男女とも
同じ割合で、多くの現代日本人が人生の充実に結婚は不要と考えている。
→さらに1950年代まで主流だった見合い結婚が5%まで減り、ネットで社交スキルが低下し
若者の多くは忙しさもありデートできなくなっている。
(アメリカの若者もネット中毒になってるが、デートを楽しむ文化的伝統は受け継いでいる)

④高齢者
→人口は2015年の1億2700万人から2060年には4000万人減って8000万人になる予測
→過疎化も進み毎年500校が閉校になっている。
→しかし人口が減れば必要とされる国内外の資源が減るので非常に裕福になるはず
→なので問題は人口減少より高齢化で、これは日本人も理解している。
→著者は82歳で高齢者に反感はないが、高齢者が増えれば医療費が増え、退職者比率が上がり
労働者比率が下がり、高齢者介護は個人にも税金で賄う年金制度にも負担なのは事実。
→1960年には退職者1に対し労働者9、2014年で2.4、2050年には1.3になる見込み
→ただし日本が極端レベルになっているだけで少子化高齢化はアメリカも西欧も共通
→だが欧米では人口減少と逆ピラミッド人口構成の進行が同時発生していない。何故か?

⑤移民
→日本の全人口に占める移民及びその子の割合は1.9%
(オーストラリア28%、カナダ21%、スウェーデン16%、アメリカ14%)
→日本の難民申請受け入れ率は0.2%(スウェーデン92%、ドイツ70%、カナダ48%)
→日本の外国人労働者の割合は2%弱(アメリカ15%、ドイツ9%)
→どの国も移民の受け入れには利益と困難を秤にかける
→多民族国家アメリカと民族的同質性の高い日本で異なる世論になるのは当然
→他国が移民によって緩和した問題を移民に頼らず解決する方法を見つけられないのが日本
→アメリカでは働く女性の保育サービス、高齢者の介護や病院スタッフを移民が行っている
→西欧でも少子化高齢化が進んでいるが、若い移民労働者でその影響を最小化している
→アメリカのノーベル賞受賞者の多くは移民第一世代かその子孫
→移民するのもイノベーションに取り組むのも、進んでリスクをとり挑戦するのは共通
→日本が移民政策を変更する道を選ぶか未知の解決策を見出すか、移民政策に変更するなら
申請者が自国にとって潜在的価値があるかどうかを基準とするカナダが手本になるだろう

⑥中国と韓国
→中国では1937年から宣戦布告なき全面戦争で虐殺や略奪を続け、韓国では1910年に併合後
35年間の占領統治下で日本語の義務化や奴隷労働を強要した。
→その結果、今日も反日感情が蔓延しているが、彼らから見れば認識も謝罪もしていない。
→リー・クアンユーの評価(部分要約)
「日本人はドイツ人と異なり自分たちのシステムの中にある毒を浄化することも取り除くことも
していない。過去の過ちについて自国の若者に教えていない。橋本龍太郎首相は1997年に
心からのお詫びと深い反省の気持ちを表明したが、中国や韓国の国民が日本の指導者に
望むような謝罪は行わなかった。
謝罪するとは過ちを犯したことを認めることで、後悔や遺憾の意を示すのは現時点での
主観的な感情を表明しているにすぎない。今日の日本人の態度は将来の行動を暗示している」
→アメリカも中国も韓国も教科書には自国に都合よく第二次世界大戦を紹介しているが、
→ドイツの手法は多くの敵国を納得させているのに日本の手法はそうではない
→ドイツのように子どもたちに過去を教える、日本の首相が現地でひざまずく、博物館や現地に
詳しい説明を展示する、子どもたちの修学旅行や遠足で定期的に訪れる、など戦争の犠牲者
としての日本人より、犠牲となった非日本人を描くことに、もっと力を入れてはどうか・・・
→こうした活動が実行されるまで中国や韓国は日本人を憎み続けるだろう・・・

⑦自然資源管理
→1853年まで日本は鎖国し自然資源を自給自足、1600年代には森林減少の危機を迎え、
ドイツやスイスとは別の独自の科学的植林法を発展させてきた。
→その後は近代工業経済に欠かせない需要で世界最大の自然資源輸入国になった。
→再生可能資源も海産物、木材(合板・紙・パルプを含む)などは1位から3位の輸入国
→食糧輸入、農業輸入についても比率が先進国では最も高い
→特に漁業資源や森林資源については持続可能な活用に世界をリードすべきだが現実は逆
→不法あるいは持続可能でない方法で収穫された林産品の輸入量はアメリカやEU諸国より
はるかに多く、遠洋漁業や捕鯨の規制についても反対の先頭に立っている。
→日本人の友人は、国内の林業や漁業については自然との調和から管理するが、現在搾取している
海外についてはその限りではない、日本人は国際的圧力に屈することを嫌うので、たとえば
捕鯨推進は「反・反捕鯨」ともいえる、日本人には国内資源には限りがあるという意識が強く
過去140年間、国家安全保障・対外政策の基礎として、世界の自然資源を無制限に利用する
権利を主張してきた、と説明していた。
→需要を上回る供給があった過去ならあり得たが、これはもはや実行可能な政策ではない
→過去にも海外資源を手に入れるため自己破滅的な行動に走ったが、今回は軍事力ではなく
海外の自然資源の枯渇によって敗北は避けられなくなる。
→日本を破滅させたいと思う独裁者なら、日本が依存している海外資源を破壊する。


危機の枠組み
・楽観的になれる理由のひとつは危機を解消した経験があること
→明治の改革と維持に成功し、大戦後に民主主義と輸出による経済再生に成功した
・もうひとつの理由が失敗や敗北から回復する忍耐力と能力が実証されている点
→前述リー・クアンユーの評価(部分要約)
「占領時代の経験で恐怖を覚えた日本人の特質にもかかわらず今の日本人を尊敬し称賛する。
団結力、規律、知性、勤勉さ、努力・・・あの文化的価値があれば、どんな大災害でも
唯一生き残るだろう。地震や台風、津波によって被害を受けても立ち上がり再建する。
阪神淡路大震災の1年半後に神戸を訪れて驚いた。冷静に対処し日常生活を取り戻していた。」
・他の有利な条件
→国境を接しない列島→選択の自由(海を挟んだ中国・韓国との近接性に相殺されるが)
→ナショナル・アイデンティティ、誇り、一貫性の強さ
→多くの貿易相手国からの友好的支援、少なくとも中立的な対応(中国・韓国を除く)
→手本となる他国の存在と、大きな強みである経済、人的資源、文化、環境
・いっぽう、これらの強みを相殺するのは、
→環境変化で合わなくなった伝統的価値観
(資源の持続可能な入手のための国際協調ではなく無制限に確保するための努力を継続している。)
→第二次世界大戦の捉え方
(責任を受け入れるどころか自己憐憫や自国の被害者性ばかりに集中している)
(対中・対韓関係を改善したいなら責任を認めたドイツの例に習う必要がある、
個人と同じく国の政治も責任を否定している限り問題の解決に進むことはできない)
→公正で現実的な自国認識の欠如
(前二者に加え人口減少への誤解と移民についての自国認識)
(日本が大国なのは質的な強みがあるからで人口減少は資源輸入が減り大きな利点)
(移民は若年労働者減少、保育サービス、高齢者介護に有効で多くの国が採用している)
(カナダの移民プログラムやアメリカや南米に行った日系移民の経験を参考に)
・移民以外の方法は労働力から排除している女性の障害を取り除く、一時滞在労働ビザの
大幅増加などだが、まずは今日の思考停止状態を脱すること。
・いずれにしても1853年や1945年ほど大きな打撃ではないので基本的価値観を選択的に
再評価することは可能だと(著者は)希望を持っている・・・



比較のためオーストラリアについても一部だけメモから抜粋・・・

第7章 オーストラリアーわれわれは何者か?

(在外イギリス人としての)アイデンティティと白豪主義からの変化
→専門的な少人数集団であるアフガン人(ラクダ使い)と日本人(真珠採り潜水夫)を除き、
太平洋諸島の人々、中国人、インド人は国外退去、アボリジニは隔離消滅の白豪主義
→第二次大戦で日本軍から直接攻撃されイギリスから見捨てられた(シンガポール陥落撤退)
→防衛配備したのはアメリカ軍→司令官マッカーサーはオーストラリア軍を後方配備に
→その結果、直接攻撃を受けたのに負傷者は(国土とは関係なかった)第一次大戦の半数以下
→戦場はヨーロッパではなくアジアで、敵はドイツではなく日本という実感
・人口の多い日本インドネシア中国は、土地が広く人の少ないオーストラリアを狙うはず
・それに対抗するには白人の人口増加が必要→移民を増やす政策に
(じつはどちらも間違いで大陸の大部分は不毛の地だし、経済の繁栄には人の量より質だし、
人口が少ないほど脆弱な環境への影響も少なく国民一人当たりの自然資源の割合も増える)
・最優先したのはイギリスとアイルランドから→応募者が少なかった
・駐留アメリカ軍の定住→アフリカ系アメリカ人の割合が高く白豪主義に相容れない
・次善策の北欧や南欧などから→イタリアとドイツの捕虜にも残留を許可
・バルト三国なども含め、戦後5年で人口の10%、70万人の白人がヨーロッパから移住。

白豪主義が弱まった原因
・軍事→戦後覇者がイギリスからアメリカに、アジアでの共産主義の脅威、安全保障
・アジアの政治的発展→植民地・保護領だった周辺国が完全独立、経済的にも発展
・貿易の推移→最大の貿易相手国がイギリスから和解した日本に(1980年代、2位はアメリカ)
・移民そのものの変化→戦後移住した白人はイギリス人ではなく、昔から持ち続けていた
アイデンティティを共有せず、アジア人への根強い差別意識も持ち合わせていなかった
・イギリス本国の政策の変化
→連邦中心からヨーロッパ中心へ転換→EEC加盟→関税→シンガポール陥落と同じ象徴的な衝撃
→1962年のイギリス連邦移民法→連邦市民の入国権と居住権の廃止→異邦人扱いに

白豪主義の終焉
・1972年成立の労働党政権→僅か19日間の急激な改革→その一つとして
→白豪主義政策の正式な撤廃→すでに起きていることを追認しただけと表現した
1949年の日本人戦争花嫁の受け入れ
1950年代のアジアからの留学生1万人受け入れ
1958年の書き取り試験の廃止、技能能力を有するアジア人を許可した移民法の制定・・・
これらの経過があったため、一世紀以上続いた政策にしては意外なほど反発は少なかった。
→1980年代後半には半数は外国生まれか親の片方が外国生まれに・・・
→1991年には移民の50%以上がアジア系に・・・
→2010年には外国生まれが25%以上でイスラエルに次いで世界第二位
・政治的には1986年、最高裁判決のイギリス枢密院への上訴の廃止で完全な独立国家に
(1999年の最高裁判決でイギリスは外国と宣言)


ちなみにオーストラリア・ワインは今や世界でも最高レベルの銘柄を生んでいるとのことで、
著者のおすすめは、お手頃価格デ・ボルトリのノーブルワン、値は張るがおいしい赤ワインの
ペンフォールズのグランジ、お手頃な酒精強化ワインであるモーリスのラザグレン・マスカット!!!
だそうです。
おそらく、どれも飲んだことがないので、どなたか・・・じゅるじゅる



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2020年09月01日

危機と人類・・・

「危機と人類」(上下巻)のご紹介、つーか個人的な読後メモであります。

上巻表紙

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下巻表紙

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上下巻の表紙絵を重ね合わせると下田沖に現れた黒船の浮世絵に・・・

「危機と人類」原題は「UPHEAVAL~Turning Points for Nations in Crisis~」
ジャレド・ダイアモンド著 小川敏子、川上純子=訳
日本経済新聞出版社 2019年10月25日初版第1刷発行。

著者の「銃・病原菌・鉄」を読んですっかり虜になり、最新刊も読みたくなって、
2月に図書館へ貸出予約してたのですが、感染症対策による臨時休館もあって先日ようやく
借りることができました。わたくしの後にも予約が入ってるようで大人気なんですね。


上巻の表紙裏にあった惹句であります。

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続いて下巻表紙裏の惹句。

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例によって目次のみ・・・

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プロローグにあった「本書の構成」によると、第1章では国家的危機の帰結にも影響する
個人的危機の12の要因について、第2章~第7章は二つの国で1セットの章が3セット・・・
・他国からの衝撃によって突然の大変動に発展した国セット
(1939年からのフィンランドと1853年からの日本)、
・政治的妥協の破綻という国内の激変によって
突然の大変動に発展した国セット
(1973年からのチリと1965年からのインドネシア)、
・突然の激変はなく危機がゆっくりと進展していった国セット
(第二次大戦後からのドイツとオーストラリア)、
そして第三部の四つの章では、現在進行中あるいは将来起きるであろう危機として
日本、アメリカ、世界の、それぞれの問題と待ち受けるものを論じておられます。

フィンランド、チリ、インドネシア、ドイツの各章についても、興味深く読みましたが、
キリがないので、まずは下巻の大部分を占めるアメリカと世界の章およびエピローグについて
わたくしの読後メモからの抜粋・・・(日本とオーストラリアについては次回記事で)


・アメリカの基本的問題

→二極化、投票率と有権者登録にともなう障害、格差の拡大と社会的流動性の衰退、
教育や公共目的への政府予算の減少
(これに対して良好な見通しを示す要因)
選択の自由、強いナショナル・アイデンティティ、柔軟性あふれる歴史を与えた地理的特徴
(阻害する要因)
合意が得られない(危機を迎えているという共通認識の欠如)、他国(特にカナダ)を手本にしない、

不安や失敗を許容するのに慣れていない(ベトナム戦争など)、他者(他国)を責める、
危機を認識した富裕層が国家としての問題解決より自己保身に投資している。
(ニュージーランドの不動産を購入、廃地下ミサイル倉庫の豪華個人用防空壕化など)

アメリカについては長いので以下省略して・・・


・世界全体の基本的問題
→核兵器の使用、世界的な気候変動、資源枯渇、生活水準における格差の拡大
(他にイスラム教原理主義、新種の伝染病、小惑星衝突、大規模生物学的絶滅などもあるが)

・世界の危機の枠組み
今回の七つの国家には国政を議論する場、過去の危機への対処事例、手本となる国、
友好国からの物質的支援やアドバイスがあったが、世界には支援を求められる惑星も
手本となる社会を持つ惑星もなく、共有するアイデンティティや基本的価値観もない。
→解決へのひとつは二国間あるいは多国間の協定で、これは5000年以上続く経験済みのルート
(イスラエルとレバノンの野鳥観察家による協定→画期的な合意達成の例)
→別のルートは地域内の国家間協定
(EU→数千年間ほとんど戦争に明け暮れていた国家間の協定、他にも病気撲滅の協定など)
→第三のルートは世界的協定→国際連合や特定の活動目的を持った世界組織の協定
→これらはEUの権力よりも弱く、国家の自国内での権力よりもはるかに弱いが、
多くの目標を達成している。
(天然痘撲滅、オゾン層保護、マルポール条約、国際海洋法条約、国際海底機構など)
・グローバル化は問題の原因になるだけでなく、問題の解決も促進する。
→原因の拡大が早いか、解決の促進が早いか、どちらも2005年以降は著しく加速しており
今(2019年)現在も明らかでないが、少なくとも結果が判明するまでの時間は減ってきている。


・エピローグ(教訓、疑問、そして展望)より
国家的危機にも影響を与えると仮定した12要因の、今回取り上げた七か国へのあてはめ

1危機に陥っていることを認める
→日本はアヘン戦争で西欧の脅威を知っていたが1853年のペリー来航まで改革議論はなく、
その後はすみやかに危機について意見一致したが、1868年の解決までに15年かかった。
→フィンランドは1930年代後半にはソ連の強大な軍隊の脅威について知っていたが、
やはり1939年に直接攻撃を受けるまでは深刻に受け止めていなかった。
→ただし、いったん攻撃を受けると一夜にして、全会一致で反撃を決めた。
→チリとインドネシアでは勝者が敗者の多くを殲滅することで危機が消滅した。
→オーストラリアとドイツは危機の拡大を長年否定、ゆっくりと民主主義的プロセスをたどり
政府の政策を変える国家的合意に達することで解決した。

2責任を受け入れる、被害者意識や自己憐憫、他者を責めることを避ける
→他者を責めるのを避けた事例はフィンランド(対ソ連→犠牲者として非難を続けず対話へ)と、
明治日本(対欧米→不平等条約で犠牲者として非難を続けず対抗できる実力醸成に集中)
→逆に責任は他国(イギリス)としていたのはオーストラリアで発展にマイナスだった
→責任否定が悲惨な結果になったのが第一次大戦後のドイツ
(政府のミスを否定し自己を犠牲者とみなした結果、ナチス支持からの厄災へ発展)
→責任の受容をめぐって対照的なのが第二次世界大戦後のドイツと日本
→どちらも戦争を始めた責任があり、ドイツでは連合国による一般市民の爆撃犠牲者や
ソ連兵によるレイプ犠牲者、領土喪失が多大であったが、自己憐憫にふけることなく、
ナチスの犯罪とドイツの責任についての教育が行われ、多くの犠牲者を出した国々とも
良好な関係を確立した。
→日本は戦争を始めた責任をアメリカの企みと否定し、その4年前から中国で宣戦布告なしに
大規模な戦争を始めていた事実も無視、中国や韓国での犯罪責任も否定し続ける一方で、
爆撃などの被害者としての立場ばかりに目を向けており、隣国との関係を害している。

3囲いをつくる、選択的変化
→六か国はすべて危機への対応として選択的変化を取り入れた。
→変化の受容と非受容で非常に示唆に富んでいるのは明治日本とフィンランド
→明治日本は西洋化し発展したがコピーではなく手を加えて基本的な側面は変えなかった。
→フィンランドは自由を幾分犠牲にしソ連との対話を続けて独立を維持、他の隣国より
自由な工業国に発展した。

4他国からの支援
正の側面の例→明治日本へ西洋から、チリやインドネシアの軍事政権、戦後日本とドイツへの
アメリカからの経済援助、オーストラリアへのイギリス次にアメリカの軍事防衛など、
負の側面の例→チリのアジェンデ政権へのアメリカの援助停止、ドイツ・ワイマール共和国への
イギリス・フランスからの莫大な戦争賠償金など、
正負両側面の例→オーストラリアへのイギリスの軍事防衛喪失とECC加盟による特恵関税廃止
(新しいナショナル・アイデンティティ追及に寄与)、フィンランドへの友好国の支援の欠如
(再び紛争が起きれば支援が期待できない→ソ連との関係を発展させるしかない認識へ)

5他国を手本として利用する
→明治日本は西洋モデルに手を加えて利用、戦後日本はアメリカ民主主義モデルに手を加え、
あるいは押し付けられて利用したが明治期ほどの規模ではない。
→手本のない例としてはソ連の要求を満たしつつ独立の維持にも成功したフィンランド
→手本としての西欧やカナダの民主主義から学ぶことはないと否定するアメリカの問題

6ナショナル・アイデンティティ
→フィンランドと日本は他国では使われていない独自の言語を持ち誇りにしている
→チリは他の中南米諸国と同じ言語を使いながら政治的安定性や民主主義の伝統において
異なっていることを逆説的にナショナル・アイデンティティにしている。
→軍事的成功→フィンランド、オーストラリア、アメリカ、イギリス
→文化→イタリアの芸術や料理や生活様式、イギリスの文学、ドイツの音楽
→歴史→イギリスとイタリアはかつて大国であった歴史
→歴史の浅いインドネシアを除けばナショナル・アイデンティティが危機の解決に寄与したが
今日のアメリカは集団ごとのアイデンティティの声は大きいが国家をまとめるアイデンティティ
の声は小さい。
→国家神話は事実と嘘のスペクトルをすべて取り込んでしまうもの
→事実として正確性があり政治目的に今も語られているもの
(イギリスのバトル・オブ・ブリテン、フィンランドの冬戦争など)
→語られる事実は正しいが他の重要な出来事を省略してしまっているもの
(アメリカの開拓史、インドネシアの独立史、オーストラリアの歴史など)
→ほぼ嘘に等しいもの
(第一次大戦の敗北原因についてのドイツの説明、南京大虐殺を否定する日本の説明など)
→いずれにせよナショナル・アイデンティティは国家神話によって政治目的のため利用され
国家にとって重要であり、神話が拠り所とする歴史はそれぞれで異なることは変わらない。

7公正な自己評価
→強力な指導者・独裁者の対照的な例
(ビスマルクとヴィルヘルム2世、ヒトラーとブラント、スカルノとスハルト)
→強力な指導者がなく公正な自己評価にもとづく国民的コンセンサスに至った国
(多くの官僚や民間人を欧米に派遣した明治日本、対ソ連の厳しい現実に正面から向き合った
フィンランド、イギリスの重要性が消滅しアジア・アメリカが重要になった現実を認めることで
世論の合意を得たオーストラリア)
→今日、公正な自己評価が欠如している日本とアメリカの問題

8過去の国家的危機の経験
→成功が自信を与えた日本、フィンランド、イギリス、アメリカ、インドネシア

9国家的失敗に対する忍耐
→明治日本、ドイツ、フィンランド、戦後日本の例
(日本へのペリー来航から西洋との最初の戦争に勝利するまで50年、ドイツの事実上の分断から
再統合まで
45年、フィンランドはソ連との戦争終結後、数十年にわたり対ソ政策を見直し続けた。
敗戦後の日本はアメリカ軍による占領、困難な再建、経済社会問題、自然災害を生き抜いた。
→これら四つの例はいずれも国内の不満はあったが、拙速な行動で墓穴を掘ることには抵抗した。
→アメリカは壊滅的な敗北や占領を経験していなかったので、朝鮮戦争での行き詰った休戦、
ベトナム戦争の敗北、アフガニスタンでの軍事的膠着に耐えるのは困難だった。
→今日のアメリカに必要なのは忍耐と妥協だが、いまだにそれらを発揮できていない。

10状況に応じた国としての柔軟性
→アイスランドの(デンマークの善意を拒否した)硬直性の理由(環境の脆弱性)
→柔軟性が状況に応じて発揮された明治日本、フィンランド、オーストラリア
→アメリカは個人も国家も柔軟だったが、この20年で政治はますます妥協を拒否している。

11国家の基本的価値観
→フィンランドのアイデンティティは言語、基本的価値観は独立
→ドイツのアイデンティティは言語と文化、ゲルマン系が共有する歴史
基本的価値観は公益事業(医療、文化芸術、森林保護など)への政府投資と重要な公益事業を
民間企業に任せないこと、公益を優先するための個人の権利の制限

12地政学的制約がないこと
→アメリカは制約がなく、明治日本、チリ、インドネシア、オーストラリアは比較的自由、
フィンランドとドイツはその逆で厳しい制約がある。
→この500年でつながりはグローバルになり軍事的脅威は世界中で海を渡って訪れるように
→現在では世界中どこでも海洋を越えてICBMで攻撃できるようになったが、地政学的な条件は
今でも国家の危機を左右している。

・危機は必要か?
→日本はペリー来航まで西欧の脅威を避けていたが明治以降は外的ショックを必要とせず、
むしろ更なる西洋からの圧力を想定して変化していった。
→フィンランドもソ連の意図を無視していたがソ連の更なる攻撃を必要とせず圧力を想定、
機先を制することを目的とする外交政策をとった。
→チリのアジェンデ政権は突発的な危機対応ではなく慢性的な二極化への対処をしていたが、
マルクス主義への転換を宣言すると、軍は危機とみなしクーデターを起こした。
→インドネシアでは両方のタイプの対処が選択された。
→戦後ドイツの各種共同体設立計画は危機を想定し阻止するために採用されたもの
→今日の日本は七つの問題に決定的な行動がとれていない。オーストラリアのような
ゆっくりとした変化で解決するか、突発的な危機によって大胆な行動をとるか?
→アメリカもアフガン侵攻・イラク侵攻を除けば決定的な行動をとれていない。
→ゆっくり進む問題より突然悪いことが起こる方が人々に行動を促す。
「二週間後に死刑になることが分かっていれば人は素晴らしい集中力を発揮するものだ」
(サミュエル・ジョンソン)

・歴史上の指導者の役割
→対照的なのはトーマス・カーライルとレフ・トルストイ、中間がマックス・ヴェーバー
→指導者が在任中に自然死すれば経済成果に影響を与えることは実証されている。
→暗殺計画の成功後の方が失敗後より国の政治制度の変化の可能性は高かった。
→指導者によって違いが生まれることもあるが(指導者と検証される影響の)タイプで左右される。
・本書で取り上げた指導者の役割(略)
・次のステップは?(略)

・将来のための教訓
→特定の国の歴史を理解すれば将来の行動を予測しやすい
→大国に脅かされる小国は常に気を配り別の選択肢を考慮し現実的に見極めるべき
→自国が危機の中にあると認識すること
→他国を責め被害者として引き籠るのではなく、変化する責任を受け入れること
→変化する特徴を見極めるために囲いを作り、変化に圧倒されてしまわないこと
→支援を求める他国を見出すこと
→忍耐力を発揮し解決策を続けていくつか試す必要も認識すること
→重視すべき基本的価値観と、もはや適切でないものを熟考すること
→公正な自国評価を行うこと
→これらの「あたりまえ」を無視しているケースがあまりにも多い
→今は歴史を学びやすいし指導者や政治家から過去の自著に影響を受けたといわれ喜んだ
→世界全体がグローバルな問題に直面しているが、過去数十年で対処する諸機関も発展した
→現在の国家や世界は対応策を求めて暗闇を手探りする必要はない
→過去にうまくいった変化、いかなかった変化を知っておくことが導き手になるから・・・

おそらく次回に続きます。→追記です。次回記事にアップしました。

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2020年08月28日

ワールド・スケールモデラーNo.2!!!

(期間限定のお知らせ)
2020年8月25日より当ブログサイトのURLをhttp:からhttps:に変更しています。
登録されているリンク等で閲覧に不具合が生ずる場合は変更をお願いします。


と、とーとつですが「ワールド・スケールモデラーNo.2」であります!!!

ええ、2018年の秋に発売された創刊号No.1に続く第二弾!!!



じゃーん

DSCN6980

モデルアート社 2020年8月10日発行

ちなみに右のジオラマは1/72スケール!!!で、この作品のモノクロ写真が当時の記録写真と
混同されて、ネットで出回ったことがあるとか・・・まさに凄いの一言です。



裏表紙

DSCN6981

こちらは1/96スケールだそうです。



奥付であります。

DSCN6982

こちらはドイツ軍に鹵獲されたP-47Dサンダーボルトでスケールはなんと1/32!!!

上記リンク記事にも書いてますが、わたくし編集長とは学生時代のSF研究会仲間で、
日々授業をサボってミリタリーモデル作りを競い合ってた???仲・・・ 
ま、当時からレベルは桁違いでしたが・・・
昔から工作は苦手でしたが、ジオラマ作品を見たりするのは今でも大好きです。


例によって目次のみご紹介・・・

DSCN6983

一番下、台湾迷彩会の張中復氏によるオランダSMC模型コンテスト記事で知ったのですが、
昔、張氏とともに台北で歓待いただいた王徳方氏が昨年、若くして急逝されてたんですね。

あらためまして、心よりご冥福をお祈りいたします。謝謝了



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2020年08月23日

林業がつくる日本の森林メモ(承前)

昨日紹介した「林業がつくる日本の森林」(藤森隆郎著)読後メモの続きであります。

図書館への返却期限が迫り余裕がなくなってきたので、さらにさくさくっと・・・
わたくしの思い違いもあると思いますので、ご教示いただけるとうれしいです。

第2部 問題を解決するために必要なことは何か

1目標とする社会
・食糧自給率が40%、木材自給率が30%という数値は先進国の中では飛びぬけて低い。
・化石資源は有限、原子力は制御とトータルコストに問題があることが大震災で明らかになった。
・太陽と水と二酸化炭素から永遠に生産される植物資源は食糧・資材・エネルギーとして日本に有益
・さらに植物の生育そのものが良好な環境を形成するので、その資源の活用をいかにするか
・災害時への備えにも豊かな森林のストックとそれを利用できるインフラと優れた働き手は必要
→そのためにも日本は自然を生かした林業国家であらねばならないし都市と農山村の交流も必要

2目標とする森林の姿
・正しい知識に基づいて議論することが正しいビジョンと実践には絶対不可欠
・人間にとって好ましい森林は安全性、生産性、弾力性、生物多様性、景観性に優れ、かつ低コスト
→そんな森林は存在せず生産機能と公益的機能のバランスをとるしかない
→そのためには生産林で公益的機能との乖離をいかに抑えるか、小流域レベルで生産林と環境林を
いかに適切に配置するか
・生産林の目標はスギなど生産対象の構成比率が高く、環境林の目標は樹種構成や樹齢などが多様
・この区分は費用対効果に大事で、生産林は育成管理にコストがかかっても収益が高まればいい、
環境林は目標に達すれば特に手を加える必要はない。
→これまでの林業政策は生産と環境の関係があいまいで投じたコストの評価がはっきりしていない。
・生産林は奥山の針葉樹中心の「経済林」と近くの広葉樹中心で農業と一体の「生活林(里山)」に区分。
→森林の管理はこれらの区分に応じて目標林型をはっきりすべき。

3森林についてよく知ること
・生態系とは
→その空間の生物と非生物との間、生物間の物質・エネルギー作用で形成されるシステム
・森林生態系は生産・消費・分解が見事に形成されている持続的な系
→生産林はそこからサービスを得る人為的なバイパスをうまく組み込んでいく間伐などの英知が不可欠
→森林からのサービスを持続的に受けるためには生物多様性の保全と土壌の保全が重要
・森林の構造と機能の関係から、持続可能な森林管理のために目指すべきは「構造の豊かな森林」
→環境林では天然林の保全、天然林への誘導・維持により
→生産林(経済林)では長伐、多間伐、択伐、混交林により、構造を豊かに誘導

4目標林型の求め方
・経済林の生産量を最大にするだけなら(平均成長量が50年で最大の森林なら)50年回転の主伐
→それでは生物多様性、土壌構造、水源涵養などの最も低い期間の繰り返しになる。
→100年以上の周期で間伐を重ね非皆伐の複相林にして回転させ公益的機能との乖離を最小限に
→広葉樹も混ざった混交複相林に持っていければ理想的だが優れた技術者の育成が不可欠
・環境林は大面積、小面積、河川沿いの渓畔林、水辺林など適切に配置

5合意形成のプロセスと科学的根拠
・様々な立場の人たちの合意形成には科学的根拠が必要→所有者は利益、多くの国民は環境保全
・1992年の国連会議で「持続可能な森林管理」がキーワードになりプロセスの基準と指標が示された。
・我が国も加盟しているが行政も森林所有者も一般市民も理解不足→合意形成には不可欠なプロセス

6日本の自然、森林との付き合い方
・林業関係者を含め多くの日本人は、世界の中での日本の森林の特色を知らない。
→グローバル経済の中では、この特色を知り低コストで価値の高い材の生産を考えねばならない。
・日本は世界の温帯の中で最も水分条件に恵まれた国で基本的に林業には有利な国だが、
・植物間の激しい競争がありスギやヒノキの初期保育経費は他の温帯諸国より10倍高い。
→1960年頃までは農山村に労力もあり下草も家畜の餌になったが、
→今では初期保育の頻度を高くする短期皆伐は合わない。
・日本と逆に夏は乾燥、冬は温暖で雨の多い大陸西岸気候のオレゴン州、ワシントン州、ニュージーランド、
チリなどは針葉樹に有利で皆伐しても自然更新し、マツ・ツガなどの林業が主要産業になっている。
・ヨーロッパも大陸西岸気候だがオレゴン・ワシントンほど夏に乾燥しないので天然林では
ブナやナラなどの広葉樹とトウヒやモミなどの針葉樹が混交しており、その点は日本に近い。
→ただし更新を妨げるクズなどのつる植物、ササ、シダ、ススキのような手ごわい植生がない。
→なので夏に高温多湿の日本のスギ・ヒノキは天然では決して広がることはない。
・日本は台風や豪雨による攪乱も多く攪乱を好む植物が進化し生物多様性を高くしている。
・さらに日本の地形は殆どが複雑急峻で生物多様性を豊かにする反面、維持管理に高い技術が必要。
・その初期保育経費を少なくするためには長期伐採で間伐収穫を多くすることが有利。
→長期伐採への道を阻んでいるのが相続税で制度改善が望まれる。

7森林を扱う技術者と経営者
・1970年代までは国有林にも現場技術に通じた技官がおり、1980年代までは民間林業家にも優れた
技術者が多かったが、林業不振から所有者の経営意欲が低下、技術者が減った。
・明治以降の日本の近代化で林業を遅れたものとする底流は高度経済成長以降に加速された。
・一方、近代化の手本にしたドイツは工業国で林業国、優れた林業技術者は尊敬されている。
・ヨーロッパ諸国、アメリカ、カナダなどには公のフォレスターが存在するが、日本では林業の専門家
と言える公務員はほとんどいなくなり、専門の学校も設立されないままできている。
・日本にも優れた民間の技術者はいるが、それを活かす政策が不十分。
→大阪府の大橋慶三郎氏の例(一度だけ補助金をもらったら創意工夫ができなくなった)
→岐阜県の古川林業の例(歴代経営者の長期伐採ビジョンと技術研鑽)
→長野県のC.W.ニコル氏の例(アファンの森の活動)etc
・欧米のような地域に密着したフォレスター制度があれば彼らの声や技術が反映されるはず。

8自伐林家と集約化
・林業を放棄した小規模森林所有者への対策は急務だが集団化以外の支援の道も必要。
・殆どの森林組合は森林管理や公共事業の下請けと補助金申請代行のみでビジョンがない。
→例外として京都府日吉町森林組合の例→これをモデルとした林野庁の育成研修事業など
・都会育ちで森林で仕事をしたい人は増えており受け皿としての森林組合や林業会社の発展は重要

9林業と木材産業の関係
・国産材は外材に押され非木質材に押され、加工材が増え良質材の価格が下がり、少子化で需要が減り、
ストックが高まっているので適正価格で売るためには流通の近代化が必要。
→昔ながらの原木・木材市場では生産者にも消費者にも不利で安定した質の確保にも不安を残す。
→ドイツでは生産計画から材質の管理、販売先のコーディネート、各地連携などもフォレスターが関与
→ヨーロッパの多くの国では大規模製材工場の一方で地域に密着した小規模工場も生き残っている。
・日本では地域の製材工場も工務店も大都市の市場経済に押されている。
→「地域材による家づくり」運動は任意団体と事業協同組合で進められているものが多いが
公的セクターと良い関係を築いて信頼を得ていくことと地域での部材の規格統一が必要。
・消費の多いのは圧倒的に都市部なので大規模工場との取引を増やすのが林業振興のカギ
→買いたたかれるのは複雑な流通システムで安定供給が十分でないから。
→どのような質の材がどのくらい安定供給できるかを伝えて信頼を得ることが重要
→ドイツでは森林管理署や森林組合が行っており、日本では森林組合とその連合会になるだろうが
行政も支援すべきで、供給の安定性に信頼が得られれば不利な価格交渉も減る。
・良質材の適正な評価、良質材を作るための優れた技術者、間伐での並材、低質材の利用・・・

10木を扱う技術者の育成
・今の日本の住宅は平均寿命25年あまりの消耗品で、伝統住宅を建てる大工職人は減り続けている。
→伝統的な和風軸組み工法の木造住宅は強度も耐久性もあり補修も増改築も容易で長期的には低コスト
→大学の建築科や工業高校は設計施工の監督育成が目的で、職人の教育が不可欠


第3部 新たな森林管理のために必要なこと

1森林管理のリーダーであるフォレスターの必要性
・どんなビジョンや目標を掲げても実践できる現場の技術者がいなければどうにもならない。
→林業技術者のリーダー→ヨーロッパに見られるレベルの高い森林官(フォレスター)が日本にも必要
・ドイツのフォレスター
→高級、上級、普通があり、いずれも現場中心に学び国家試験に合格して認定される。
→高級フォレスターは州有林などの現場で働き高級行政官、研究者、大学教官、民間幹部などに
→上級フォレスターは州の公務員として採用されると一つの任地で長年実務に当たる現場の中心的存在。
→普通フォレスターはそれに次ぐもので、やはり現場の実践的な活動のリーダー
→若者の憧れる職業ランクではパイロット、医師に次いで3番目で人気はさらに高まっている。
・ドイツの現場技術者
→各州に15歳以上を対象にした3年制の林業職業訓練学校が設置されている。
→やはり現場中心で修了試験に合格すれば林業技術士の公認資格、州に採用された林業技術士は
実務経験2年と半年の研修で普通フォレスターに、大学に進み上級フォレスターになるものもいる。
・日本でも2011年から林業作業士の研修制度はできたが、やはり教育機関の設立が必要
・日本なら国家公務員林学職の総合職合格者か一般職合格者の技官だが、大学では殆ど座学だけで
就職後はポストを短期間で変わるので林野庁の技官はフォレスターとは言えず、県の林業職も同じ。
・県には国家試験による林業普及指導員の資格者もいるがフォレスターとは程遠い。
・このため林業政策は現場から遊離した行政によってなされ、施策も全国一律になる。
・森林管理局、森林管理署は歴史的に国有林のみで現在でも民有林との繋がりは薄い。
・ドイツの森林計画は地域に密着したフォレスターからのボトムアップ、日本では補助金制度による
国からのトップダウン、地域の自然環境からはボトムアップが必要でフォレスターが不可欠。
・行政と研究機関を結ぶのもフォレスターで、国の研究者として相手がいないことを痛感していたが、
ドイツで会ったフォレスターたちは異口同音に「あなたの研究成果を期待している」と言っていた。

2今の制度では技術の専門家は育たない
・林野庁の技官で幹部になる人が現場の実務に関わるのは若い間の2年ぐらい。
・フォレスターは一つの現場で10年以上、林業では成果を見るのに最低10年は必要だから。
・林野庁では戦前は技官がフォレスター的な役割を果たしていたが戦後はいなくなった。
・2014年からは林野庁の「森林総合監理士」ができたが短期研修だけで要員確保に過ぎないのでは。
・本気で現場に密着したフォレスターを養成するなら国や都道府県で採用時から・・・

3研究機関と行政の間の関係の改善
・研究者の業績評価は論文数で決まり結果の出やすい基礎研究に、行政職員は数年でポストが変わる。
・林学(森林科学)は応用研究が主体なので大学の研究や教育にもフォレスターは不可欠

4「根拠」を問うこと
・日本の補助金は全国一律の指定条件で経営者や技術者の創意工夫を摘んでいる。
・ドイツではフォレスターが各所有者と話し合い、それぞれの森林に必要な補助金が決められる。
→公務員であるフォレスターの存在自体が補助金ということもできる。

5ボトムアップの法律・制度・政策が必要
・日本の法律・制度はドイツに学んだが、ドイツでは1975年以降に大きく変わりボトムアップの構造に
→日本では森林法も林業基本法も明治以来の官主導の構図が変わっていない。
(法律・制度比較は省略)
・地域によって自然条件も社会条件も異なるので、様々な立場の声を反映させるボトムアップに。

6ボトムアップのための地域から国へのシステム
・2009年の森林計画制度の改正で市町村の役割強化が謳われたが市町村には体制も人材も乏しい。
・泉英二教授の「流域=森林計画区」→市町村の一部事務組合なら広域の行政主体として機能する
→都道府県→各ブロック→各森林管理局とボトムアップしていくシステムを構築する必要がある。

7森林所有者と市民の関係
・日本では観光地を除き林業の行われている森林で一般市民を目にすることはない。
→強い私権と管理責任で立ち入り禁止になっている。
→奥入瀬渓流の国有林遊歩道では自然落下した枯れ枝が観光客に当たり訴訟で国と県が敗訴した。
・ドイツでは州有林でも私有林でも、林道や作業道を一般市民が散歩したりハイキングしている。
→林業が持続可能な循環型社会に必要なことを市民が理解し、森林所有者に所得補償や補助金が
税金から多く投入されることを認めている。
→その代わり市民は公共財である森林のサービスを求める権利を主張する。
→私有林でも市民は立ち入る権利があり手に持てる程度なら山菜や果実を採ることも認められている。
→自由な立ち入りを認めるいっぽうで安全義務は市民にあることが明記されている。
・日本でも森林法に明記されるべきだが、この差が国産材利用率30%と100%の差の理由に思える。

8国際的視野に立つこと
・第2部5の国連の持続可能な森林管理プロセスで、1995年に国際的な基準と指標が定められたが、
日本の政策は未だにかけ離れたまま。
・ヘルシンキプロセスにもモントリオールプロセスにも参加したが、多数のNGOが参加していた。
→各国の代表者と同等の立場で意見を述べ議事録にも同等に載せられておりプロセスにも反映されている。
・FSC認証、PEFC認証、TEEBなど欧米では進化、日本でもSGEC認証はできたが反応は鈍い。
→国際的に学ぶべきものは学んでいくべき


第4部 豊かな日本の農山村と社会を目指して

1地球環境保全と森林の付き合い方
・大気中の二酸化炭素増大の原因の3/4は化石燃料によるもの、1/4は森林破壊によるもの
・地球生態系で炭素循環に最も大きく関与しているのは海洋生態系で次が森林生態系
・森林の二酸化炭素の吸収量(速度)を高めることと炭素の貯蔵量を高めることとの調和
・京都議定書で「よく管理された森林」も吸収量カウント対象になったので間伐を推進する政策に。
→正しい間伐で良い木の成長は高まるが吸収速度を高めるわけではなく政治的妥協の産物
→持続的利用に反した「温暖化対策」のための荒い間伐が目立っている。
・林野庁の「温暖化対策」のための短期伐採は持続可能な森林管理とは逆行している。
・森林を持続管理して木材を利用し続ける限り大気中の二酸化炭素量は増減しない。
→使って燃えるか腐朽すれば二酸化炭素が排出されるが次世代の木が同量を吸収するから
→石油や石炭を使うと二酸化炭素は増え続ける
・木材の加工に要するエネルギーは鉄の1/100、アルミの1/1000
・外材輸送のエネルギーも大きく木材は生産地で、その国で使われるべきで余剰があれば輸出。
・天然林は人手をかけず低コストで炭素貯蔵量を高く維持できる。
①自然状態で森林生態系の炭素貯蔵量を最大にすることを求める
→老齢段階の天然林を目標林型にする→生物多様性、水資源の保全にも
②炭素貯蔵量の目標を主に成熟段階のレベルに設定、収穫した木材をできるだけ長く使用し炭素を貯蔵
→森林生態系の場と木材利用の場の両方で炭素貯蔵量を高める
③建物など耐久消費財、日用品にできるだけ木材を利用、材料製造に必要なエネルギー量を節減
木質エネルギーを化石エネルギーの代替にする→長期的な累積効果は大きい

2持続可能な社会のために農山村に必要なこと
・グローバル経済の中で効率の悪い農山村は分業から切り離されるか中まで分業が浸透して崩壊してきた。
→農山村でもスーパーで輸入食品を買う、スーパーで働く、非木質のプレハブや外材の住宅に住む、
エネルギーは都市の電力会社やガス会社から、金はそこから海外の産油国に流れ循環が断たれている。
・生きるのに必要なのは水と食料と燃料と建築資材
→これは本来、国内の農山村から供給されるべきもの→(水以外)殆どを海外に依存しているのは危険
・森林の多い地域の活性化には製材用材の持続的な生産林業を振興させること
→製材用材に向かない材はパルプチップ材やエネルギー材に
→地域のエネルギー材としては裏山の生活林(所有林)も有効→余剰は売却
→農山村の暖房には暖炉、薪ストーブ、薪ボイラー(伊那市の例)
→生活林の落葉有機物や薪の灰は有機肥料に
→里山は観光資源としての価値も高い
・2011年の大震災は都市と農山村の乖離、地域の衰退、自治機能の欠如をさらけ出した。
→大合併によって町や村の役場は権限のない支所となり地域に即した復旧復興計画が立てられず
権限を持つ市はきめ細かな策定に苦労、国の縦割り行政もあって復興が大幅に遅れている。
・流域の地域社会が形成されていれば災害時の食糧危機は小さくなる。
・林業がストックのもとで経営され流通システムが整っていれば復興資材の欠乏が緩和できるし
木材による生活上の熱エネルギーも確保できる。
・この20年で農山村で生き甲斐のある仕事をしたい若い人たちが増えてきている。
→問題は受け入れる農山村の社会体制をどのように築いていくかである。
(長野県川上村・藤原忠彦村長の例)

3技術者が誇りを持てる社会
・日本で技術者のイメージはエンジニア工業系で農業技術者も林業技術者も技術者とは見ていない。
どちらも高度な判断力と作業技術を要する優れた技術者だが社会が評価する目を持たないから
なろうとする動機が乏しく育成するシステムも不十分なのだろう。
・教育制度に位置付けられた林業技術者養成の学校はない。
→県独自の2年制の学校はあるが終了して得られる資格や身分は森林法では全く規定されていない。
→高校や林業専門高校では林業と名の付く学科は減少している。
→大学の林学科(森林科学科)は座学中心で現場実習はほとんどなく林学科そのものも消失している。

4日本の森林と社会への決意
・構造の豊かな森林は、生物多様性の保全、土壌の保全、木材の供給、気象緩和、保健文化などの
森林生態系のサービスをバランスよく発揮してくれる。
・世界四大文明といわれる地帯が滅亡した原因の共通項は繰り返された森林破壊による不毛地化だが、
日本の縄文文化は1万年以上続き、稲作文化と融合して現在に至る優れた文化と文明の土台となった。
・稲作を携えてきた弥生人が縄文人を駆逐しなかったのは、日本の圧倒的な森林に対応するために
縄文人の力と文化を必要としたからだと考えられている。
→水稲栽培に必要な安定的な水の供給には縄文人の森林活用の知恵が必要だった。
・6世紀に仏教が伝来し縄文文化に由来する神道と共存できたのは日本の森林と同じ照葉樹林帯を経て
伝わったからと言われており、それが日本文化の深層。
・室町時代からの人工林の育成が江戸時代に盛んになり現代に至るが、同一種の単純一斉林を育て、
途中で間伐収穫しながら最後は一斉に収穫するもので、弥生人の農耕文化の色合いの濃いもの。
→持続的な森林管理には縄文人の森林との付き合い方も付加した管理のあり方も加える必要がある。
・明治以降、工業技術や都市文明に偏り農林業を軽視してきたことは否めずバランスが必要。
・欧米ではグローバルな資本主義の中で、どのように技術の改善と市場の改革を行ったのか、
その先進事例を取り入れるだけでも日本の林業を取り巻く経済的条件はがらりと変わるだろう。

→木の文化を再構築すること→もともと日本列島に暮らす人々は森の民なのだから・・・



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