サバイバル
2023年09月21日
人類の起源
とーとつですが・・・
人類の起源~古代DNAが語るホモ・サピエンスの「大いなる旅」~

とゆー本のご紹介であります(備忘のための読書メモです)
表紙カバー裏にあった惹句

著者紹介と奥付

そう、こちらの記事の続きとゆーか、前回記事、前々回記事の前段階とゆーか・・・
日本などの古代史も含んだ最新研究による「人類の起源」であります
例によって目次のみ





で、まずは「はじめに」にあった本書のダイジェストより
・これまで現生人類ホモ・サピエンスは20万年前にアフリカで生まれたとされてきたが、
→ネアンデルタール人のDNA解析により彼らの祖先と分かれたのは60万年前と判明した
→別れた後も交雑を繰り返し他の絶滅人類とも交雑していたことも判明しつつある
・現代人DNAとの比較研究で、現生人類はアフリカ→中東→ヨーロッパや南アジア→
東南アジアやオセアニア→東アジア→南北アメリカ大陸へと拡がったことが判明した
・どのように現代の地域集団を形成していったのか
→古代文明が誕生する直前のヨーロッパやインドでは集団の大きな遺伝的変化があった
・世界各地の人類集団(民族)は、ある地域における「ヒトの移動の総和」といえる
→特定の遺伝子分布の地域差は集団成立の有力な手がかりになる
・1980年代に発明されたPCR法はウィルス検知だけでなく人類学にも多大な恩恵をもたらした
→古代DNA研究は考古学・歴史学・言語学の分野にも大きなインパクトを与えている
→「人間とは何か」→現時点で何が明らかになり、研究は何を目指しているのか・・・
第一章「人類の登場」より
・1859年のダーウィンの進化論→ヒトの祖先は?→神から化石人類学へ
→約700万年に及ぶ人類進化が大まかに示された
・神話と科学の違い
→科学は間違いと訂正の歴史
→なので科学を間違いないと信奉することは理解の障害にもなる
→本書の古代ゲノム解析による説明も現時点での結論であり将来反証されることもある
・ホモ属にはいくつもの種があったが、現在生存しているのはサピエンス種だけ
・人類の定義→本書では「生物学的に自由に交配して子孫を残せるグループ」という視点
→この視点は世界の集団形成を理解する際にも重要
・人類の祖先とチンパンジーの祖先が分かれたのは700万年前
→ホモ属が登場するのは250~200万年前
→サピエンス種が登場するのは30~20万年前
→ホモ・サピエンスの出アフリカは6万年前、顕著な文化発展は5万年前(異説あり)
→どの時点をもって人類の誕生としているか→読み手の注意が必要
・文明が農耕からなら1万年、文字に残る「人類の歴史」からなら5000年・・・
→歴史的な経緯や地域環境による文明の違いはヒトの選択による「多様性」であり、
→世界中の文明はヒトという共通の基盤に立っている
→この認識は現実世界を理解するうえでも欠かせない視点
・現在では、異なる進化段階の種が同時代に生きていたこともわかっているが、
→進化傾向を捉えるためには初期猿人→猿人→原人→旧人→新人という段階は便利な考え方
→それでも同時代・同所に多数の化石人類が見つかっているので状況は混乱している
・約200万年前に登場したホモ・エレクトスは最初に出アフリカを果たした原人
→アフリカ・西アジア・中国・ジャワ島などで発見されている人類
→20万年前の化石もあり180万年も生存していた(ホモ・サピエンスは20万年程度)
→フローレス島で発見されたホモ・エレクトスから進化したホビットは6万年前まで生存
・ネアンデルタール人は旧人とされてきたが2016年のDNA分析の成功で大きく変わった
→これ以降、人類進化はDNAデータで語られるようになる
→ネアンデルタールで発達したのは主に視覚に関わる後頭葉部分
→ホモ・サピエンスで発達したのは思考や創造性などの前頭葉部分
→どちらも脳の容量はほぼ同じで交雑していた
(コラム1より)
・ホモ・サピエンスの大脳新皮質で共同体を構成する人の顔・名前・考え・バックグラウンドが
理解できる人数は150人程度
→なので狩猟採集社会から現代社会まで150人程度を社会構成の単位としてきた(ダンパー数)
→言語・文字・物語・宗教・歌・音楽といった文化要素により、時間や空間を超えて概念や
考え方を共有するハードウェアで、なんとか複雑な社会を形成していった
→現在は(脳の容量は変わらないのに)通信ネットワークで何百人(何千人)が同時につながりあい、
それらの大量のデータが行き交う高度な社会環境
→自分の脳の処理能力より、はるかに多量のデータにさらされている状況
→バランスのとれた情報処理ができずに社会が混乱しているのも至極当然・・・
第二章「私たちの隠れた祖先」より
・2010年以降に核DNA分析が可能になり、次々と新たな事実が明らかになっている
→1980年代からコンタミネーション(混入)が問題だったがDNA分析を前提とした発掘に
・ネアンデルタール人はユーラシア大陸の西半分に分布していた
→ホモ・サピエンス集団のひとつがネアンデルタールと交雑して世界に拡がった
→交雑しなかった集団もコーカサスや中東、北イランに存在しており現在のヨーロッパ人の
形成に関与したので、現代ヨーロッパ人のネアンデルタールDNAは相対的に少ない
・ホモ・サピエンスとネアンデルタールは数十万年も交雑している
→初期の交雑はアフリカとは考えにくく、ホモ・サピエンスの出アフリカが6万年前ではなく
40万年前よりやや新しい時代だったのか、あるいはホモ・サピエンスがユーラシア大陸で
他の未知の人類から進化したのか→まだ完全解明には至っていない
・デニソワ洞窟ではデニソワ人とネアンデルタール人の混血少女の化石が確認されている
→パプア人DNAの3~6%はデニソワ人DNAに由来
→東アジア・南アジア・アメリカ先住民もパプア人の1/20程度のデニソワ人DNAを共有
→東アジアのゲノムはパプアとは別で、少なくとも2回は別々にデニソワ人と交雑していた
→チベット人にもデニソワ人DNAがあるが、ホモ・サピエンスがチベット高原に来たのは11000年前
→これらから、デニソワ人は数万年前まで生きていた可能性が示された
・サハラ以南のアフリカ人ではデニソワ人と未知の人類との混血が推察される
→3人類とは別の人類がいてデニソワ人と交雑した可能性
→異なる系統人類の混血が長期間続いた結果がホモ・サピエンス遺伝子にも残っている
・ユーラシア大陸に拡散した人類は単一種ではなく各段階が同時期・同所に存在
→20世紀の終わりまでホモ・サピエンスは他地域進化説だった
→21世紀になると6万年前にアフリカを出て他の人類を駆逐したというアフリカ起源説
→2010年以降は拡散過程で他の人類の遺伝子を取り込んだことが明らかになった
→アフリカ起源説が他地域進化説の一部を取り込む形で収束した
・生存に不利な遺伝子は徐々に集団から取り除かれる
→アフリカでも世界展開の途中でも交雑は長期に繰り返されている
→iPS細胞や遺伝子編集技術で理論的にはネアンデルタール人やデニソワ人の復活も可能
第三章「人類揺籃の地アフリカ」より
・アフリカでのホモ・サピエンス拡散の様子(略)
・ホモ・サピエンスが30万年前にアフリカで誕生したことはほぼ定説になっているが、
→ネアンデルタール人とデニソワ人の共通祖先から分岐したのは60万年前と判明してるのに、
→長期間にわたるホモ・サピエンスの祖先の化石がアフリカにないこと
→数十万年前にはネアンデルタール人と交雑があったことを考えると、
→最初の祖先はユーラシア大陸の原人で、
→そこから3人類が生まれ30万年前以降にアフリカに移動したグループが世界に拡がり、
→残ったグループはネアンデルタールと交雑した後に絶滅した、とも考えられる
・異なる人類の交雑が明らかになったので、起源はアフリカだけでなく広範囲で考えるべき
→イスラエルでは古いネアンデルタールよりも古いホモ・サピエンスが発見されている
→古い交雑はこの地域だった可能性がある
・ホモ・サピエンスの世界展開は、現代人のゲノム解析から6万年前以降とされてきたが、
中国・ギリシャ・東南アジア・オーストラリアから、それよりも古い化石の報告がある
・農耕民と牧畜民の起源
→アフリカ西部の農耕による人口拡大→移動→集団(言語)の分化
(世界各地でも初期農耕民の拡大が言語族の分布と結びついている)
→牧畜民には乳糖耐性遺伝子が必要→牧畜とともにヨーロッパに(新石器時代にはなかった)
→生業と遺伝子と言語には密接な関係がある
・現代人のゲノムにはネアンデルタール人やデニソワ人とは異なる人類との交雑を認める結果も
示されており、アフリカには30万年前の謎の人類ホモ・ナレディもいた・・・
第四章「ヨーロッパへの進出」より
・ホモ・サピエンスの出アフリカは20万年前以降に何度か試みられていた
→我々につながる祖先の出アフリカは6~5万年前
→シベリアでのネアンデルタールとの交雑時期は52000~58000年前
→中東での交雑は出アフリカの初期と考えられるので6万年前が妥当
→ただし南アジア・オーストラリアなどで6万年前より古い化石や石器が見つかっている
→6万年前より以前は放射性炭素年代測定が困難なので各説がある
→これ以降1万年前の農業生産まで(後期旧石器時代)の気候変動が離散と集合を促した
・現代人につながる系統だけでも、出アフリカから1万年の間に東アジア系・ヨーロッパ系・
ユーラシア基層集団の3系統が成立した
・出アフリカ集団は単一系統ではなく現在の集団はそれらの離合拡散・交雑・隔離を経たもの
・最も研究の進んでいるヨーロッパ集団について(略)
・ヨーロッパでも日本でも狩猟採集民のゲノムは10%から25%
→基本的に狩猟採集民は農耕民の社会に飲み込まれている
・5300年前のアイスマンのゲノムはアルプス人ではなくサルディニア人と近縁だった
→サルディニア人は8000年前に移住して混合しなかったヨーロッパ初期農耕民の子孫
→移住前の農耕民のゲノムを残しており現代ヨーロッパ人とは異なる→なぜか?
→5000年前にヨーロッパ人の遺伝的な構成が大きく変わったから
→その原因は東のステップ地域から来た牧畜民
→ヨーロッパ人の地域差は狩猟採集民と農耕民と牧畜民の混合の仕方の違い
→牧畜民のゲノムの割合が高いほど身長が高いなど・・・
→牧畜民ゲノムからはペスト菌DNAの断片が検出されており農耕民に大打撃を与えた可能性
→古代ゲノム解析は疫病研究にも重要な知見をもたらす
第五章「アジア集団の成立」より
・1万年前より古いユーラシア大陸の古代ゲノム解析は一部しか行われていないが、
→出アフリカ集団は中東で1万年ほど停滞していた
→5万年前より新しい時代にヨーロッパからシベリアまで拡散した
・ユーラシア東部へは北ルートと南ルートが考えられている
→南ルートでは古代南インド狩猟民集団→一部が東南アジアへ→デニソワ人と混血?
→一部がパプアニューギニア、オーストラリアへ
→北ルートで北上したグループが古代東アジア集団を形成した?
・ヒントは縄文人のゲノム
→日本列島にホモ・サピエンスが到達したのは4万年前
→16000年前に土器が作られ3000年前に稲作が入るまでの13000年の間が縄文時代
→この間に遺伝組成を変えるような外部からの流入はなかったので縄文人ゲノムがヒントに
・縄文人のゲノムを共有している現在の東アジア人
多い順にアイヌ集団→沖縄の人→本州・四国・九州の日本人
→沿海州の先住民、韓国人、台湾の先住民も僅かに共有している
→アムール流域の先住民、新石器・鉄器時代の台湾人、チベット高原の集団とは非常に古い
時代に分岐した同じ系統に属することも判明している
→古代南インド狩猟民集団→チベットや東アジアの沿岸地域へ→日本では縄文人に
・縄文人は4万年前以降に異なるふたつの系統が合流して形成された
→別々に南北から流入したのか大陸沿岸部で合流してから流入したのかは不明
・シベリア集団の変遷、アメリカ大陸集団の起源・・・
→複雑な集団の置換によりユーラシア北部から南北アメリカのモザイク状の遺伝構成へ
・1万年前以降は解析できる人骨も多く、1万年前には遺伝的に区別できる9集団がいた
→これらの離合集散が青銅器時代以降の集団形成に関わることになる
→スキタイ、匈奴、フン族などの遊牧騎馬民族も異なる遺伝的特徴を持った集団の連合体
→なので中央アジアの広大なステップを遺伝的に単一の集団が支配したことはない
・3回にわたる移住の波が南アジア集団の遺伝的構成を決定した
→9000年前の狩猟採集民と初期農耕民の混合
→7400~5700年前の混合完成と、その後の北方集団との混合
→4600~3900年前のインダス文明の初期農耕民にはイラン牧畜民や狩猟採集民ゲノムもある
・南アジアから東南アジアには5万年前
→どちらもDNA保存に適した地域ではないので現代人DNAからの考察
→遺伝的な分化は基本的に言語集団に対応している
→東南アジアの半島部と島嶼部は、ホモ・サピエンスが最初に拡散した氷河期には
スンダランドで一つの陸塊だった
→ヨーロッパ同様、農耕以前の狩猟採集民ゲノムは伝わっていない
・南太平洋・オセアニア(略)
・中国の南北地域集団
→今も言語的にも遺伝的にも異なり過去の違いはさらに大きい
→黄河流域と福建省では1万年~6000年前まで遺伝的に区別しうる集団だった
→北方集団と東南アジア集団
・日本への渡来の起源
→内モンゴル自治区東南部から遼寧省北部に流れる西遼河流域の雑穀農耕民の古代ゲノムには
日本や韓国の現代人ゲノムとの共通性を見いだせる
→日本語や韓国語の起源地と考えられるが、それ以外との関係はない
→なぜ朝鮮半島の方向だけに拡散したのかは、さらに多くの古代ゲノムが必要
→この集団の動きが弥生時代初期の日本列島への農耕民の流入に(拡散から約2000年後)
→ところが弥生時代初期の日本列島での農耕の始まりは水田稲作→なぜか?
→この分析には稲作起源地の長江流域の古代ゲノムが入っていないから
→長江流域の古代ゲノム解析が進めば日本への複雑な渡来経路が見えてくるはず
・東アジアの大陸部では北方のふたつの雑穀農耕民と南方の稲作農耕民が拡大した
→それぞれの混合が続くことで現代人集団が形成された
・東南アジアや東アジアの沿岸部では初期拡散定着民と農耕民の混合で現代人集団が形成された
・1万年前以降に起こった各地の農耕は集団の拡散を促し様々な言語グループを生み出した
第六章「日本列島集団の起源」より
・二重構造モデル説
→縄文時代と弥生時代の人骨の違い
(旧石器時代に直接来た集団と北東アジアで新石器時代に形質変化してから来た集団の違い)
→現代の北海道アイヌ集団・琉球列島集団と本州四国九州を中心とする集団の違い
(稲作のなかった北海道と、北部九州より稲作が2000年遅かった琉球列島との違い)
→古代ゲノム解析からは単純すぎる説と指摘されている→地域差が大きいから
・縄文時代
→旧石器時代の後半から縄文時代までの形質は連続している
→縄文人のゲノム解析からは現代の東アジア集団とはかけ離れた特徴が見られる
→礼文島の縄文人からは極北集団に見られる脂肪代謝遺伝子の有利な異常が見られる
→現代日本人でも3割に見られ韓国や中国には殆ど見られないハプログループは縄文人由来
→東南アジアからの初期拡散で北上した中の沿岸集団が縄文人の母体だが均一ではない
・弥生時代
→縄文時代にも農耕はあったので水田稲作農耕より金属器使用を弥生時代の特徴とすべき
→日本では、たまたま同じ時期に入ってきただけ(世界では別のルートで別の時期に)
→稲作農耕は長江中流域から拡散したもので、日本の青銅器の源流は北東アジアのもの
→異なる集団が渡来した?
→長江流域からの稲作農耕民集団と、西遼河から移動中に青銅器文化を得た雑穀農耕民集団が
朝鮮半島経由で別々に渡来した?(長江沿岸部やオホーツクから直接伝播したルートもあった?)
→稲作の東進により縄文人との混合が進んでいったのなら、東に行くほど縄文系ゲノムに
寄った位置になるはずだが、そうはなっていない
→弥生時代の中期以降も各地に多くの渡来があったと想定しないと説明できない
→弥生時代から古墳時代における大陸からの渡来集団の影響を考慮すべき
→ただし古墳時代の人骨は階級の出現によってランダムなサンプルとはなりえない
・琉球列島集団
→旧石器人骨との関係は不明だが、縄文時代以降は日本列島からの集団の移住があった
→7300年前の喜界カルデラ爆発により九州と途絶して独自集団となった
→弥生時代から再び本土の影響を受けグスク時代の南九州からの農耕民流入で加速され現在に至る
→縄文ゲノムが30%残っているのは後の集団の影響が本土よりは小さかったから
・北海道集団
→アイヌ集団は縄文人を基盤にオホーツク文化人の遺伝子を受け取り成立したもの
→縄文ゲノムが70%残っており大陸北方系ゲノムも引き継いでいる
(琉球列島集団には台湾より南のゲノムの影響がないのとは対照的)
・二重構造モデルでは稲作を受け入れた中央と遅れた周辺で形質の違いが生じたと考えるが、
この発想からは、周辺集団と他の地域集団との交流の姿を捉えることはできない
(コラム4より)
・鳥取市青谷上寺地遺跡の32個体の人骨分析(単一遺跡では日本最大規模の分析)
→9割に母系の血縁がなく、すべて現代日本人の範疇に入るものだった
→しかも縄文遺伝子が強い者から大陸遺伝子が強い者まで様々だった
→長く維持された村落だと同族婚が増えて核ゲノムも似たものになるはず
→木製容器や管玉の生産も考えると流入や離散を繰り返す古代都市だった可能性が高い
→多数の創傷もあるが解体痕もあり戦闘被害者だけではなかった可能性がある
→死亡時期は放射性炭素年代測定法により2世紀の後半と判明している
→2世紀の後半は複数の史書にある「倭国大乱」の時期
→混乱した社会状況を示す代表的な遺跡といえる
第七章「新大陸アメリカへ」より
・アメリカ大陸はホモ・サピエンスが最後に到達した大陸
→これまではベーリング陸橋からアラスカの無氷回廊をとおり拡散したと考えられてきた
→13000年前から3度の移住がありクロヴィス文化などが形成されたと・・・
→ところが南米最南端でクロヴィス文化より古い遺跡が発見された
→無氷回廊も寒冷すぎるので現在では海沿いのルートで移動したと考えられている
・新大陸の先住民の共通祖先はすべて24000年前だった
→アジアの同一系統の共通祖先はさらに数千年前で、進出した初期集団は5000人未満
→その後、爆発的に人口を増やした状況が明らかになった(略)
・2014年にバイカル湖周辺の古人骨の核ゲノム解析が行われた
→新大陸の先住民にも共有されていることが判明した
→東アジア集団からの分離ではなくユーラシア西部集団との共通遺伝子
(それまでヨーロッパ人の遺伝子はコロンブス以降の混血と考えられていた)
・北米では、さらに古い人類の痕跡も報告されている
→現在の先住民とは別系統のホモ・サピエンスがいたのかも?
終章「我々はどこから来たのか、我々は何者か、我々はどこへ行くのか」より
・ゴーギャンがこのタイトルの大作を描いたのは19世紀の終わり
→ネアンデルタール人の化石に続きジャワ原人の化石が発見された時期
→直近10年の古代ゲノム解析で化石だけでは知れなかった事実が明らかになっている
・19世紀前半にヨーロッパとは異なる人類集団の研究が始まった→「人種」という概念
→20世紀後半の遺伝学研究で人種は連続しており区分できないことが明確になった
・種の定義を「自由に交配し生殖能力のある子孫を残す集団」とする考え方
→これに時間軸を入れると旧人や原人も同じ種になるので、便宜上分けているだけ
→種の下位としての「人種」という概念は、さらに生物学的な実体のないもの
・現代のヨーロッパ人・東アジア人・アフリカ人のSNP分析は明確に区分できるように見える
→それに様々な地域集団のSNP分析を加えると、どこにも境界がないことが見えてくる
→人為的な基準を導入しない限り「人種」を定義することは不可能
・同じ集団の中の個人間の遺伝子の違いのほうが、集団間の遺伝子の違いよりはるかに大きい
→もともとホモ・サピエンス遺伝子の99.9%は共通で、残りが個人あるいは集団の違い
→この0.1%を研究し、個人あるいは集団の違いを明らかにしているだけ
→違いの原因となる変異があるのは事実だが、大部分は交配集団に生まれるランダムな変化で、
→基本的な能力の違いを表すものではない→このことが結果を理解する上で重要
・ある環境下で有利あるいは不利になる遺伝子の違いがあることも事実
→特定の集団にだけ有利な遺伝子が共有されていることもあり、これが集団優劣の根拠だが、
→集団の持つ遺伝子構成は時間で大きく変化するので、集団優劣に意味はない
・0.1%の違いで人の優劣を決める能力主義か、99.9%の共通性を重視する平等主義か
→現実の社会は違いのほうに価値を持たせ過ぎているように思える・・・
・遺伝子の流れを糸にたとえると・・・
→それぞれの個人はホモ・サピエンスという巨大なネットを構成する結び目のひとつ
→様々な色があるが全体を構成する要素では個々の色ではなく「結び目があること」が重要
→個人はネットを構成する上では等しい価値を持っている
・言語や宗教など文化的な違いによって定義される「民族」に生物学的な基礎はあるか
→ゲノム解析により地域集団の成立は古いものでも数千年前と判明した
→人類集団は6万年の間に集合と離散を繰り返しているので時間軸では1割程度の長さ
→他集団との混合を経ない集団を「純粋な民族」としても数千年レベルでしか存在しない
(例・漢民族は5000年前から北東と南部の3集団が緩慢に融合する過程から生み出された概念で、
今もそのプロセスは続いている→遺伝的にまとまった集団ではない)
→今後も他の地域集団との混合は進み「民族」は生物学的な実態を失っていく
→民族と遺伝子を混同した議論は、さらに意味のないものになっていく
・現在の研究対象は(民族ではなく)地域の集団で3世代程度までの人々の集合
→遺伝的な特徴はこのレベルでの時代幅で議論されているもの
→このレベルでも疫病や戦争で変化しており異なる集団になっていることも多い
→数千年前から16世紀までは遺伝的な特徴をあまり変えずに存続してきた
→その後の変化は加速しており日本列島も例外ではない
・ヨーロッパ北方では青銅器時代以降に集団の交代に近い変化があった
→日本でも縄文時代から弥生・古墳時代にかけて大規模な遺伝的変化があった
→弥生時代にクニができた→その時代にクニという体制を持った集団が渡来したということ
→文化だけ取り入れるパターン、集団間で混血するパターン、集団が置換するパターン・・・
→文化の変遷と集団の遺伝的な変化との関係は様々でケースバイケース
→普遍的な法則は見出されていないが両者の関係が明らかになれば新たな解釈が生まれるはず
・人類集団の起源と拡散
→現時点ではホモ・サピエンス誕生の経緯と出アフリカ後の初期拡散状況の再現の研究
→将来的に数百体レベルでネアンデルタール人やデニソワ人のゲノム解析ができれば、
ホモ・サピエンス特有のゲノムが明確になり「私たちは何者か」の答えが出る
→化石記録が貧弱で不明だった6~2万年前の初期拡散状況もゲノム解析でシナリオができた
→特に気温の低い高緯度地域では詳しい分析が可能になり精度の高いものになってきている
→今後は低緯度地域で変性の進んだDNAデータを取り出す技術革新の進展がカギ・・・
・古代ゲノム研究の意義
→現在の歴史の教科書では「アフリカでの人類の誕生」から「四大文明の発展」に飛ぶ
→人類の道のりを通史として捉えることのない、このような記述に欠けているのは、
→「世界に展開したホモ・サピエンスは遺伝的にはほぼ均一な集団だった」という視点と、
→「文化は同じ起源から生まれ、文明の違いは環境や経緯と人々の選択の結果」という認識
・古代ゲノム研究は、その地に人類が到達した時点から現在までを通史として明らかにする
→その地の人骨さえそろえば、集団成立のシナリオを提供できる
→歴史や文明に対する認識も必然的に変えていくのが古代ゲノム研究・・・
「おわりに」より
・本書は2021年現在の情報によるもので今後の研究次第で異なるシナリオになる可能性もある
・2010年以降は次世代シークエンサの実用化により核ゲノムが取り扱えるようになったが、
→共同研究と巨額資金が必要で大部分はビッグラボといわれる世界で十指もない施設による研究
→考古学や形質人類学などのデータが抜け落ちる危険性もある→共同研究の重要性
→たとえば東アジア古代集団と渡来系弥生人との関係はドイツ・韓国の研究者との共同研究
・古代ゲノム研究は最新成果を常に把握していないとついていけなくなる分野
→なので著者が読みためた論文メモを地域別に再構成したのが本書
・・・
古代ゲノム研究・・・よくわからないけど、じつに興味深い分野でした・・・
人類の起源~古代DNAが語るホモ・サピエンスの「大いなる旅」~

とゆー本のご紹介であります(備忘のための読書メモです)
表紙カバー裏にあった惹句

著者紹介と奥付

そう、こちらの記事の続きとゆーか、前回記事、前々回記事の前段階とゆーか・・・
日本などの古代史も含んだ最新研究による「人類の起源」であります
例によって目次のみ





で、まずは「はじめに」にあった本書のダイジェストより
・これまで現生人類ホモ・サピエンスは20万年前にアフリカで生まれたとされてきたが、
→ネアンデルタール人のDNA解析により彼らの祖先と分かれたのは60万年前と判明した
→別れた後も交雑を繰り返し他の絶滅人類とも交雑していたことも判明しつつある
・現代人DNAとの比較研究で、現生人類はアフリカ→中東→ヨーロッパや南アジア→
東南アジアやオセアニア→東アジア→南北アメリカ大陸へと拡がったことが判明した
・どのように現代の地域集団を形成していったのか
→古代文明が誕生する直前のヨーロッパやインドでは集団の大きな遺伝的変化があった
・世界各地の人類集団(民族)は、ある地域における「ヒトの移動の総和」といえる
→特定の遺伝子分布の地域差は集団成立の有力な手がかりになる
・1980年代に発明されたPCR法はウィルス検知だけでなく人類学にも多大な恩恵をもたらした
→古代DNA研究は考古学・歴史学・言語学の分野にも大きなインパクトを与えている
→「人間とは何か」→現時点で何が明らかになり、研究は何を目指しているのか・・・
第一章「人類の登場」より
・1859年のダーウィンの進化論→ヒトの祖先は?→神から化石人類学へ
→約700万年に及ぶ人類進化が大まかに示された
・神話と科学の違い
→科学は間違いと訂正の歴史
→なので科学を間違いないと信奉することは理解の障害にもなる
→本書の古代ゲノム解析による説明も現時点での結論であり将来反証されることもある
・ホモ属にはいくつもの種があったが、現在生存しているのはサピエンス種だけ
・人類の定義→本書では「生物学的に自由に交配して子孫を残せるグループ」という視点
→この視点は世界の集団形成を理解する際にも重要
・人類の祖先とチンパンジーの祖先が分かれたのは700万年前
→ホモ属が登場するのは250~200万年前
→サピエンス種が登場するのは30~20万年前
→ホモ・サピエンスの出アフリカは6万年前、顕著な文化発展は5万年前(異説あり)
→どの時点をもって人類の誕生としているか→読み手の注意が必要
・文明が農耕からなら1万年、文字に残る「人類の歴史」からなら5000年・・・
→歴史的な経緯や地域環境による文明の違いはヒトの選択による「多様性」であり、
→世界中の文明はヒトという共通の基盤に立っている
→この認識は現実世界を理解するうえでも欠かせない視点
・現在では、異なる進化段階の種が同時代に生きていたこともわかっているが、
→進化傾向を捉えるためには初期猿人→猿人→原人→旧人→新人という段階は便利な考え方
→それでも同時代・同所に多数の化石人類が見つかっているので状況は混乱している
・約200万年前に登場したホモ・エレクトスは最初に出アフリカを果たした原人
→アフリカ・西アジア・中国・ジャワ島などで発見されている人類
→20万年前の化石もあり180万年も生存していた(ホモ・サピエンスは20万年程度)
→フローレス島で発見されたホモ・エレクトスから進化したホビットは6万年前まで生存
・ネアンデルタール人は旧人とされてきたが2016年のDNA分析の成功で大きく変わった
→これ以降、人類進化はDNAデータで語られるようになる
→ネアンデルタールで発達したのは主に視覚に関わる後頭葉部分
→ホモ・サピエンスで発達したのは思考や創造性などの前頭葉部分
→どちらも脳の容量はほぼ同じで交雑していた
(コラム1より)
・ホモ・サピエンスの大脳新皮質で共同体を構成する人の顔・名前・考え・バックグラウンドが
理解できる人数は150人程度
→なので狩猟採集社会から現代社会まで150人程度を社会構成の単位としてきた(ダンパー数)
→言語・文字・物語・宗教・歌・音楽といった文化要素により、時間や空間を超えて概念や
考え方を共有するハードウェアで、なんとか複雑な社会を形成していった
→現在は(脳の容量は変わらないのに)通信ネットワークで何百人(何千人)が同時につながりあい、
それらの大量のデータが行き交う高度な社会環境
→自分の脳の処理能力より、はるかに多量のデータにさらされている状況
→バランスのとれた情報処理ができずに社会が混乱しているのも至極当然・・・

第二章「私たちの隠れた祖先」より
・2010年以降に核DNA分析が可能になり、次々と新たな事実が明らかになっている
→1980年代からコンタミネーション(混入)が問題だったがDNA分析を前提とした発掘に
・ネアンデルタール人はユーラシア大陸の西半分に分布していた
→ホモ・サピエンス集団のひとつがネアンデルタールと交雑して世界に拡がった
→交雑しなかった集団もコーカサスや中東、北イランに存在しており現在のヨーロッパ人の
形成に関与したので、現代ヨーロッパ人のネアンデルタールDNAは相対的に少ない
・ホモ・サピエンスとネアンデルタールは数十万年も交雑している
→初期の交雑はアフリカとは考えにくく、ホモ・サピエンスの出アフリカが6万年前ではなく
40万年前よりやや新しい時代だったのか、あるいはホモ・サピエンスがユーラシア大陸で
他の未知の人類から進化したのか→まだ完全解明には至っていない
・デニソワ洞窟ではデニソワ人とネアンデルタール人の混血少女の化石が確認されている
→パプア人DNAの3~6%はデニソワ人DNAに由来
→東アジア・南アジア・アメリカ先住民もパプア人の1/20程度のデニソワ人DNAを共有
→東アジアのゲノムはパプアとは別で、少なくとも2回は別々にデニソワ人と交雑していた
→チベット人にもデニソワ人DNAがあるが、ホモ・サピエンスがチベット高原に来たのは11000年前
→これらから、デニソワ人は数万年前まで生きていた可能性が示された
・サハラ以南のアフリカ人ではデニソワ人と未知の人類との混血が推察される
→3人類とは別の人類がいてデニソワ人と交雑した可能性
→異なる系統人類の混血が長期間続いた結果がホモ・サピエンス遺伝子にも残っている
・ユーラシア大陸に拡散した人類は単一種ではなく各段階が同時期・同所に存在
→20世紀の終わりまでホモ・サピエンスは他地域進化説だった
→21世紀になると6万年前にアフリカを出て他の人類を駆逐したというアフリカ起源説
→2010年以降は拡散過程で他の人類の遺伝子を取り込んだことが明らかになった
→アフリカ起源説が他地域進化説の一部を取り込む形で収束した
・生存に不利な遺伝子は徐々に集団から取り除かれる
→アフリカでも世界展開の途中でも交雑は長期に繰り返されている
→iPS細胞や遺伝子編集技術で理論的にはネアンデルタール人やデニソワ人の復活も可能
第三章「人類揺籃の地アフリカ」より
・アフリカでのホモ・サピエンス拡散の様子(略)
・ホモ・サピエンスが30万年前にアフリカで誕生したことはほぼ定説になっているが、
→ネアンデルタール人とデニソワ人の共通祖先から分岐したのは60万年前と判明してるのに、
→長期間にわたるホモ・サピエンスの祖先の化石がアフリカにないこと
→数十万年前にはネアンデルタール人と交雑があったことを考えると、
→最初の祖先はユーラシア大陸の原人で、
→そこから3人類が生まれ30万年前以降にアフリカに移動したグループが世界に拡がり、
→残ったグループはネアンデルタールと交雑した後に絶滅した、とも考えられる
・異なる人類の交雑が明らかになったので、起源はアフリカだけでなく広範囲で考えるべき
→イスラエルでは古いネアンデルタールよりも古いホモ・サピエンスが発見されている
→古い交雑はこの地域だった可能性がある
・ホモ・サピエンスの世界展開は、現代人のゲノム解析から6万年前以降とされてきたが、
中国・ギリシャ・東南アジア・オーストラリアから、それよりも古い化石の報告がある
・農耕民と牧畜民の起源
→アフリカ西部の農耕による人口拡大→移動→集団(言語)の分化
(世界各地でも初期農耕民の拡大が言語族の分布と結びついている)
→牧畜民には乳糖耐性遺伝子が必要→牧畜とともにヨーロッパに(新石器時代にはなかった)
→生業と遺伝子と言語には密接な関係がある
・現代人のゲノムにはネアンデルタール人やデニソワ人とは異なる人類との交雑を認める結果も
示されており、アフリカには30万年前の謎の人類ホモ・ナレディもいた・・・
第四章「ヨーロッパへの進出」より
・ホモ・サピエンスの出アフリカは20万年前以降に何度か試みられていた
→我々につながる祖先の出アフリカは6~5万年前
→シベリアでのネアンデルタールとの交雑時期は52000~58000年前
→中東での交雑は出アフリカの初期と考えられるので6万年前が妥当
→ただし南アジア・オーストラリアなどで6万年前より古い化石や石器が見つかっている
→6万年前より以前は放射性炭素年代測定が困難なので各説がある
→これ以降1万年前の農業生産まで(後期旧石器時代)の気候変動が離散と集合を促した
・現代人につながる系統だけでも、出アフリカから1万年の間に東アジア系・ヨーロッパ系・
ユーラシア基層集団の3系統が成立した
・出アフリカ集団は単一系統ではなく現在の集団はそれらの離合拡散・交雑・隔離を経たもの
・最も研究の進んでいるヨーロッパ集団について(略)
・ヨーロッパでも日本でも狩猟採集民のゲノムは10%から25%
→基本的に狩猟採集民は農耕民の社会に飲み込まれている
・5300年前のアイスマンのゲノムはアルプス人ではなくサルディニア人と近縁だった
→サルディニア人は8000年前に移住して混合しなかったヨーロッパ初期農耕民の子孫
→移住前の農耕民のゲノムを残しており現代ヨーロッパ人とは異なる→なぜか?
→5000年前にヨーロッパ人の遺伝的な構成が大きく変わったから
→その原因は東のステップ地域から来た牧畜民
→ヨーロッパ人の地域差は狩猟採集民と農耕民と牧畜民の混合の仕方の違い
→牧畜民のゲノムの割合が高いほど身長が高いなど・・・
→牧畜民ゲノムからはペスト菌DNAの断片が検出されており農耕民に大打撃を与えた可能性
→古代ゲノム解析は疫病研究にも重要な知見をもたらす
第五章「アジア集団の成立」より
・1万年前より古いユーラシア大陸の古代ゲノム解析は一部しか行われていないが、
→出アフリカ集団は中東で1万年ほど停滞していた
→5万年前より新しい時代にヨーロッパからシベリアまで拡散した
・ユーラシア東部へは北ルートと南ルートが考えられている
→南ルートでは古代南インド狩猟民集団→一部が東南アジアへ→デニソワ人と混血?
→一部がパプアニューギニア、オーストラリアへ
→北ルートで北上したグループが古代東アジア集団を形成した?
・ヒントは縄文人のゲノム
→日本列島にホモ・サピエンスが到達したのは4万年前
→16000年前に土器が作られ3000年前に稲作が入るまでの13000年の間が縄文時代
→この間に遺伝組成を変えるような外部からの流入はなかったので縄文人ゲノムがヒントに
・縄文人のゲノムを共有している現在の東アジア人
多い順にアイヌ集団→沖縄の人→本州・四国・九州の日本人
→沿海州の先住民、韓国人、台湾の先住民も僅かに共有している
→アムール流域の先住民、新石器・鉄器時代の台湾人、チベット高原の集団とは非常に古い
時代に分岐した同じ系統に属することも判明している
→古代南インド狩猟民集団→チベットや東アジアの沿岸地域へ→日本では縄文人に
・縄文人は4万年前以降に異なるふたつの系統が合流して形成された
→別々に南北から流入したのか大陸沿岸部で合流してから流入したのかは不明
・シベリア集団の変遷、アメリカ大陸集団の起源・・・
→複雑な集団の置換によりユーラシア北部から南北アメリカのモザイク状の遺伝構成へ
・1万年前以降は解析できる人骨も多く、1万年前には遺伝的に区別できる9集団がいた
→これらの離合集散が青銅器時代以降の集団形成に関わることになる
→スキタイ、匈奴、フン族などの遊牧騎馬民族も異なる遺伝的特徴を持った集団の連合体
→なので中央アジアの広大なステップを遺伝的に単一の集団が支配したことはない
・3回にわたる移住の波が南アジア集団の遺伝的構成を決定した
→9000年前の狩猟採集民と初期農耕民の混合
→7400~5700年前の混合完成と、その後の北方集団との混合
→4600~3900年前のインダス文明の初期農耕民にはイラン牧畜民や狩猟採集民ゲノムもある
・南アジアから東南アジアには5万年前
→どちらもDNA保存に適した地域ではないので現代人DNAからの考察
→遺伝的な分化は基本的に言語集団に対応している
→東南アジアの半島部と島嶼部は、ホモ・サピエンスが最初に拡散した氷河期には
スンダランドで一つの陸塊だった
→ヨーロッパ同様、農耕以前の狩猟採集民ゲノムは伝わっていない
・南太平洋・オセアニア(略)
・中国の南北地域集団
→今も言語的にも遺伝的にも異なり過去の違いはさらに大きい
→黄河流域と福建省では1万年~6000年前まで遺伝的に区別しうる集団だった
→北方集団と東南アジア集団
・日本への渡来の起源
→内モンゴル自治区東南部から遼寧省北部に流れる西遼河流域の雑穀農耕民の古代ゲノムには
日本や韓国の現代人ゲノムとの共通性を見いだせる
→日本語や韓国語の起源地と考えられるが、それ以外との関係はない
→なぜ朝鮮半島の方向だけに拡散したのかは、さらに多くの古代ゲノムが必要
→この集団の動きが弥生時代初期の日本列島への農耕民の流入に(拡散から約2000年後)
→ところが弥生時代初期の日本列島での農耕の始まりは水田稲作→なぜか?
→この分析には稲作起源地の長江流域の古代ゲノムが入っていないから
→長江流域の古代ゲノム解析が進めば日本への複雑な渡来経路が見えてくるはず
・東アジアの大陸部では北方のふたつの雑穀農耕民と南方の稲作農耕民が拡大した
→それぞれの混合が続くことで現代人集団が形成された
・東南アジアや東アジアの沿岸部では初期拡散定着民と農耕民の混合で現代人集団が形成された
・1万年前以降に起こった各地の農耕は集団の拡散を促し様々な言語グループを生み出した
第六章「日本列島集団の起源」より
・二重構造モデル説
→縄文時代と弥生時代の人骨の違い
(旧石器時代に直接来た集団と北東アジアで新石器時代に形質変化してから来た集団の違い)
→現代の北海道アイヌ集団・琉球列島集団と本州四国九州を中心とする集団の違い
(稲作のなかった北海道と、北部九州より稲作が2000年遅かった琉球列島との違い)
→古代ゲノム解析からは単純すぎる説と指摘されている→地域差が大きいから
・縄文時代
→旧石器時代の後半から縄文時代までの形質は連続している
→縄文人のゲノム解析からは現代の東アジア集団とはかけ離れた特徴が見られる
→礼文島の縄文人からは極北集団に見られる脂肪代謝遺伝子の有利な異常が見られる
→現代日本人でも3割に見られ韓国や中国には殆ど見られないハプログループは縄文人由来
→東南アジアからの初期拡散で北上した中の沿岸集団が縄文人の母体だが均一ではない
・弥生時代
→縄文時代にも農耕はあったので水田稲作農耕より金属器使用を弥生時代の特徴とすべき
→日本では、たまたま同じ時期に入ってきただけ(世界では別のルートで別の時期に)
→稲作農耕は長江中流域から拡散したもので、日本の青銅器の源流は北東アジアのもの
→異なる集団が渡来した?
→長江流域からの稲作農耕民集団と、西遼河から移動中に青銅器文化を得た雑穀農耕民集団が
朝鮮半島経由で別々に渡来した?(長江沿岸部やオホーツクから直接伝播したルートもあった?)
→稲作の東進により縄文人との混合が進んでいったのなら、東に行くほど縄文系ゲノムに
寄った位置になるはずだが、そうはなっていない
→弥生時代の中期以降も各地に多くの渡来があったと想定しないと説明できない
→弥生時代から古墳時代における大陸からの渡来集団の影響を考慮すべき
→ただし古墳時代の人骨は階級の出現によってランダムなサンプルとはなりえない
・琉球列島集団
→旧石器人骨との関係は不明だが、縄文時代以降は日本列島からの集団の移住があった
→7300年前の喜界カルデラ爆発により九州と途絶して独自集団となった
→弥生時代から再び本土の影響を受けグスク時代の南九州からの農耕民流入で加速され現在に至る
→縄文ゲノムが30%残っているのは後の集団の影響が本土よりは小さかったから
・北海道集団
→アイヌ集団は縄文人を基盤にオホーツク文化人の遺伝子を受け取り成立したもの
→縄文ゲノムが70%残っており大陸北方系ゲノムも引き継いでいる
(琉球列島集団には台湾より南のゲノムの影響がないのとは対照的)
・二重構造モデルでは稲作を受け入れた中央と遅れた周辺で形質の違いが生じたと考えるが、
この発想からは、周辺集団と他の地域集団との交流の姿を捉えることはできない
(コラム4より)
・鳥取市青谷上寺地遺跡の32個体の人骨分析(単一遺跡では日本最大規模の分析)
→9割に母系の血縁がなく、すべて現代日本人の範疇に入るものだった
→しかも縄文遺伝子が強い者から大陸遺伝子が強い者まで様々だった
→長く維持された村落だと同族婚が増えて核ゲノムも似たものになるはず
→木製容器や管玉の生産も考えると流入や離散を繰り返す古代都市だった可能性が高い
→多数の創傷もあるが解体痕もあり戦闘被害者だけではなかった可能性がある
→死亡時期は放射性炭素年代測定法により2世紀の後半と判明している
→2世紀の後半は複数の史書にある「倭国大乱」の時期
→混乱した社会状況を示す代表的な遺跡といえる
第七章「新大陸アメリカへ」より
・アメリカ大陸はホモ・サピエンスが最後に到達した大陸
→これまではベーリング陸橋からアラスカの無氷回廊をとおり拡散したと考えられてきた
→13000年前から3度の移住がありクロヴィス文化などが形成されたと・・・
→ところが南米最南端でクロヴィス文化より古い遺跡が発見された
→無氷回廊も寒冷すぎるので現在では海沿いのルートで移動したと考えられている
・新大陸の先住民の共通祖先はすべて24000年前だった
→アジアの同一系統の共通祖先はさらに数千年前で、進出した初期集団は5000人未満
→その後、爆発的に人口を増やした状況が明らかになった(略)
・2014年にバイカル湖周辺の古人骨の核ゲノム解析が行われた
→新大陸の先住民にも共有されていることが判明した
→東アジア集団からの分離ではなくユーラシア西部集団との共通遺伝子
(それまでヨーロッパ人の遺伝子はコロンブス以降の混血と考えられていた)
・北米では、さらに古い人類の痕跡も報告されている
→現在の先住民とは別系統のホモ・サピエンスがいたのかも?
終章「我々はどこから来たのか、我々は何者か、我々はどこへ行くのか」より
・ゴーギャンがこのタイトルの大作を描いたのは19世紀の終わり
→ネアンデルタール人の化石に続きジャワ原人の化石が発見された時期
→直近10年の古代ゲノム解析で化石だけでは知れなかった事実が明らかになっている
・19世紀前半にヨーロッパとは異なる人類集団の研究が始まった→「人種」という概念
→20世紀後半の遺伝学研究で人種は連続しており区分できないことが明確になった
・種の定義を「自由に交配し生殖能力のある子孫を残す集団」とする考え方
→これに時間軸を入れると旧人や原人も同じ種になるので、便宜上分けているだけ
→種の下位としての「人種」という概念は、さらに生物学的な実体のないもの
・現代のヨーロッパ人・東アジア人・アフリカ人のSNP分析は明確に区分できるように見える
→それに様々な地域集団のSNP分析を加えると、どこにも境界がないことが見えてくる
→人為的な基準を導入しない限り「人種」を定義することは不可能
・同じ集団の中の個人間の遺伝子の違いのほうが、集団間の遺伝子の違いよりはるかに大きい
→もともとホモ・サピエンス遺伝子の99.9%は共通で、残りが個人あるいは集団の違い
→この0.1%を研究し、個人あるいは集団の違いを明らかにしているだけ
→違いの原因となる変異があるのは事実だが、大部分は交配集団に生まれるランダムな変化で、
→基本的な能力の違いを表すものではない→このことが結果を理解する上で重要
・ある環境下で有利あるいは不利になる遺伝子の違いがあることも事実
→特定の集団にだけ有利な遺伝子が共有されていることもあり、これが集団優劣の根拠だが、
→集団の持つ遺伝子構成は時間で大きく変化するので、集団優劣に意味はない
・0.1%の違いで人の優劣を決める能力主義か、99.9%の共通性を重視する平等主義か
→現実の社会は違いのほうに価値を持たせ過ぎているように思える・・・
・遺伝子の流れを糸にたとえると・・・
→それぞれの個人はホモ・サピエンスという巨大なネットを構成する結び目のひとつ
→様々な色があるが全体を構成する要素では個々の色ではなく「結び目があること」が重要
→個人はネットを構成する上では等しい価値を持っている
・言語や宗教など文化的な違いによって定義される「民族」に生物学的な基礎はあるか
→ゲノム解析により地域集団の成立は古いものでも数千年前と判明した
→人類集団は6万年の間に集合と離散を繰り返しているので時間軸では1割程度の長さ
→他集団との混合を経ない集団を「純粋な民族」としても数千年レベルでしか存在しない
(例・漢民族は5000年前から北東と南部の3集団が緩慢に融合する過程から生み出された概念で、
今もそのプロセスは続いている→遺伝的にまとまった集団ではない)
→今後も他の地域集団との混合は進み「民族」は生物学的な実態を失っていく
→民族と遺伝子を混同した議論は、さらに意味のないものになっていく
・現在の研究対象は(民族ではなく)地域の集団で3世代程度までの人々の集合
→遺伝的な特徴はこのレベルでの時代幅で議論されているもの
→このレベルでも疫病や戦争で変化しており異なる集団になっていることも多い
→数千年前から16世紀までは遺伝的な特徴をあまり変えずに存続してきた
→その後の変化は加速しており日本列島も例外ではない
・ヨーロッパ北方では青銅器時代以降に集団の交代に近い変化があった
→日本でも縄文時代から弥生・古墳時代にかけて大規模な遺伝的変化があった
→弥生時代にクニができた→その時代にクニという体制を持った集団が渡来したということ
→文化だけ取り入れるパターン、集団間で混血するパターン、集団が置換するパターン・・・
→文化の変遷と集団の遺伝的な変化との関係は様々でケースバイケース
→普遍的な法則は見出されていないが両者の関係が明らかになれば新たな解釈が生まれるはず
・人類集団の起源と拡散
→現時点ではホモ・サピエンス誕生の経緯と出アフリカ後の初期拡散状況の再現の研究
→将来的に数百体レベルでネアンデルタール人やデニソワ人のゲノム解析ができれば、
ホモ・サピエンス特有のゲノムが明確になり「私たちは何者か」の答えが出る
→化石記録が貧弱で不明だった6~2万年前の初期拡散状況もゲノム解析でシナリオができた
→特に気温の低い高緯度地域では詳しい分析が可能になり精度の高いものになってきている
→今後は低緯度地域で変性の進んだDNAデータを取り出す技術革新の進展がカギ・・・
・古代ゲノム研究の意義
→現在の歴史の教科書では「アフリカでの人類の誕生」から「四大文明の発展」に飛ぶ
→人類の道のりを通史として捉えることのない、このような記述に欠けているのは、
→「世界に展開したホモ・サピエンスは遺伝的にはほぼ均一な集団だった」という視点と、
→「文化は同じ起源から生まれ、文明の違いは環境や経緯と人々の選択の結果」という認識
・古代ゲノム研究は、その地に人類が到達した時点から現在までを通史として明らかにする
→その地の人骨さえそろえば、集団成立のシナリオを提供できる
→歴史や文明に対する認識も必然的に変えていくのが古代ゲノム研究・・・
「おわりに」より
・本書は2021年現在の情報によるもので今後の研究次第で異なるシナリオになる可能性もある
・2010年以降は次世代シークエンサの実用化により核ゲノムが取り扱えるようになったが、
→共同研究と巨額資金が必要で大部分はビッグラボといわれる世界で十指もない施設による研究
→考古学や形質人類学などのデータが抜け落ちる危険性もある→共同研究の重要性
→たとえば東アジア古代集団と渡来系弥生人との関係はドイツ・韓国の研究者との共同研究
・古代ゲノム研究は最新成果を常に把握していないとついていけなくなる分野
→なので著者が読みためた論文メモを地域別に再構成したのが本書
・・・
古代ゲノム研究・・・よくわからないけど、じつに興味深い分野でした・・・
2023年08月15日
日本はすでに戦時下にある
台風7号が大阪湾を北上中ですが、8月15日なので・・・

日本はすでに戦時下にある・・・とゆー本のご紹介であります・・・
著者紹介と奥付

著者は東京大学から陸上自衛隊に入り外務省にも出向→ドイツ連邦軍大学留学→駐屯地司令
→師団長→防衛研究所や陸幕を経て方面総監で退職された、陸自ではエリート中のエリート、
さらにハーバード大学などでも研究されてますから日本では数少ない、現場も知り尽くした
「軍事専門家」であることは間違いないでしょう
その著者が素人にも分かるよう書かれた日本と世界の最新情勢ですが、2021年12月現在なので、
その直後(2022年2月24日)のロシアによるウクライナ侵攻などには触れられてません
例によって目次のみの紹介



著者の政治的な主張については果たしてそうなの?と思った部分もありましたが事実として、
あるいは事実の可能性が高いとして記載されている部分は、その根拠となる文献やデータ、
実経験が示されてて参考になりましたので、そういった部分を中心にメモしてみました
まえがきより
・目にみえない戦いは進行している
→キネティック戦争(火が噴く戦争)をしていないだけ
・現代は全領域戦(All-Domain Warfare)の時代
→非軍事では情報、サイバー、政治、経済、金融、外交、メディア、歴史など
→軍事では陸海空、宇宙、サイバー、電磁波など
・本書では戦いと戦争とは明確に区別している
→戦いは「競争者やライバル間の悪意ある仮借なき紛争」で非軍事的手段も含む
→戦争は「2ヶ国以上の軍事紛争で軍事的手段を使った紛争」に限定している
・中国中央統一戦線工作部の戦い
→オーストラリアは主要ターゲットだったが新型コロナで流れが変わった
→日本でもあらゆる分野に浸透している
→中国の超限戦に対して日本は無防備
第一章より
・全領域戦について(略)
→特徴は全領域(ドメイン)で全手段、平時・戦時を問わず特に平時を重視すること
・平時と戦時の概念の変化
→米陸軍の作戦構想では競争から危機を経て紛争に
→米空軍の作戦構想では協力から競争を経て武力紛争に
→平時とは平和なときではなく情報戦、宇宙戦、サイバー戦などでの競争の期間
・中国の超限戦
→目的達成には制限を加えず手段を選ばない→起源はマキャベリの思想
→戦争以外の戦争で戦争に勝ち戦場以外の戦場で勝利を奪い取る→戦わずして勝つ孫子の兵法
→軍隊は勝利できる態勢を作り危機をコントロールし戦争を抑止して戦わずして勝つ(習近平)
第二章より
・中国の中央統一戦線工作部
→活動資金は2019年で26億ドルを超え外交部の予算を上回るとも
→活動は台湾、米国、日本、オーストラリア、ニュージーランド、カナダで最も顕著
→日本では政財界エリート、日中友好団体、孔子学院などに・・・
→琉球王朝末裔の中国招待、基地周辺の不動産取得、沖縄との姉妹都市提携奨励なども・・・
・各国のスパイ(略)
第三章より
・1995年の地下鉄サリン事件
→死者14人、負傷者6300人
→自分も霞ヶ関駅での被害者で自衛隊中央病院に入院した
→隣のベッドには対化学兵器用防護具を予算要求していた同僚幹部が入院しており、
要求の妥当性を当人が被害者となって証明したかたちになった
・2004年の鳥インフルエンザ対応(京都府丹波市)
→当時は第三師団の副師団長で災害派遣の現場指揮官になった
→マニュアル作りから始め、隊員のタミフル服用、簡易防護服、ゴーグルで対応したが、
戦いは福島第一原発事故や今回の新型コロナに対する災害派遣へと継続している
・2019年からの新型コロナウィルス対応
→「流出した生物兵器」説には明白な事実がなかったので無理があると否定している
→2021年の有力研究では発生源は武漢海鮮市場の(宿主となる)生きたタヌキ売場
(コウモリからタヌキへのいずれかの段階でヒト感染するように変異した可能性が高い)
→ポジショントークが多い中で16のアメリカ情報機関が出した冷静な結論(可能性はあるが
明白な事実がなかった)を重視すべき
→WHO報告書でも中国が情報やデータを公開しないため疑義が残るのだから公開すべき
第四章より
・サイバー戦
→ランサムウェア攻撃の実例(略)→重要インフラを停止できる→9.11にも匹敵する
→中国、北朝鮮、ロシアによる攻撃の実例(略)→フランスも攻撃していた
→サイバー空間の国際会議には他国からは軍関係者や情報関係者が多いが日本からは少ない
→自衛隊サイバー防衛隊は専守防衛と縦割り行政で自衛隊以外への攻撃に出る幕はない
→サイバー軍の総合力でもサイバー戦能力でも日本は下位で安全保障省もない
→自衛隊は国内法で日常の情報収集さえできずサイバー攻撃されても敵に侵入もできない
→テンセントはテスラ車ハッキングに成功したと発表しているが、まだ米軍には困難か・・・
第五章より
・SNSは影響工作の主戦場
→偽情報や誤情報の大量拡散によるコントロール
→2016大統領選へのロシアの影響工作は事実で実際に成功している
→2020大統領選ではロシアがバイデン攻撃、イランがトランプ攻撃を行った
(Qアノンでは影の政府D.Sと戦う救世主はプーチンとトランプになっている)
→中国は攻撃を検討したが実施しなかったと報告書にはあるが分断を深める工作はあった
・新型コロナをめぐる影響工作
→米軍関与説、都市封鎖した中国に感謝説→逆に米国で怒りを買い強固な対中戦略へ
→EUの報告書ではロシアと中国から様々な根拠のない影響工作があったとしている
・偽情報とファクトチェック
→人は見たいものを見て、聞きたいものを聞き、読みたいものを読む
→自分の先入観に合致する情報を選択的に収集して拡散する
→ネットでは真実に基づく書き込みより誤情報や偽情報に基づく書き込みのほうが注目され、
はるかに広く速く拡散する(ボットではなく人間が拡散していることが証明されている)
→アテンション・エコノミー(注目経済圏)、訴訟、アルゴリズムの弊害修正などでの対処(略)
第六章より
・宇宙戦(略)
→スペースデブリも大きく関係する・・・
第七章より
・電磁波戦
→通信、レーダー、ミサイル誘導、偵察衛星、レーザーなど現代戦に電磁波は不可欠
→大きく電子攻撃、電子防御、電子戦支援に分けられる(略)
→2017年からのハバナ症候群はGRUによる指向性マイクロ波兵器の可能性が高い
→2020年の中印衝突でも8月29日に解放軍が使用して撃退したとの講演発言があった
(ロンドンタイムズが報道)
(インド政府は何故か否定、中国政府はノーコメント)
→頭痛、吐き気、記憶障害、倦怠感などを引き起こすが外傷がないのが特徴
→指向性エネルギー兵器市場は2027年までには大幅な拡大が見込まれている
・電磁パルス(EMP)攻撃
→北朝鮮がミサイル恫喝の次の段階で日本の高高度で使用する可能性はある
(日本への直接ミサイル攻撃では米軍に報復攻撃される恐れがあるため)
→すでにスーパーEMP弾の開発を完了している
→東京上空96kmで使用すれば影響範囲は半径1080kmで北海道の北半分と南西諸島を除く、
日本全域と韓国の西半分に及ぶが、北朝鮮には影響しない
→中国による台湾と米空母打撃群へのEMP攻撃も戦術上は当然(中国も開発を完了している)
→台湾、フィリピン、グアムの中央海域上空185kmで使用すれば影響範囲は半径1500kmで
台湾、フィリピン、グアムの全域をカバーするが、中国本土には影響しない
→この攻撃は米空母打撃群の正確な位置が特定できない場合にも有効で、中国やロシアは
「EMPは高高度での核爆発で人体に有害な影響はないので核攻撃ではない」と主張している
第八章より
・CIA分析官レイ・クラインの方程式
国力=(人口+領土+経済力+軍事力)×(国家戦略目標+国家意思)
→重要なのは国家戦略目標と国家意思という無形の要素だが日本に欠けているもの
→中国の国力が強いのは世界一になるという国家戦略目標と国家意思を明らかにしているから
→プーチン大統領の断固とした決断はロシアを日本以上に大きく見せている
・国際政治学者ジョセフ・ナイのソフトパワー理論を加味した著者の修正方程式
国力=(人口+領土+経済力+軍事力+政治力+科学技術+教育+文化)×(国家戦略目標+国家意思)
→日本の国力を低下させたい勢力は、この各要素をターゲットに工作を実施している
→日本の国力低下のもっとも重要な理由は国家戦略がなかったこと
→米国の安全保障、防衛、軍事の国家戦略の最初に記述されているのが「国益」
→安全保障は国益を守ることが中核テーマだが、国家戦略は政治の責任分野
・日本の極端な軍事アレルギー
→安全保障や軍事を抜きに国際政治、外交、経済、科学技術などを語ることはできない
→日本では極端な軍事アレルギー反応があらゆる分野にある
→これを確実にしたのはGHQの戦争責任情報計画と軍国主義排除のための民主化改革
→改革を全面的に否定するわけではないが、これで確実に弱い国家になった
・安全保障、日本国憲法、日本学術会議、大学、情報管理、スパイ・・・(略)
・失われた30年の責任の相当部分は三流の政治にある
→三流の政治を支える一流の官僚も一流の経済もなくなった現在では一流の政治しかない
・公明党、専守防衛、自衛隊違憲論、憲法改正、防衛費増額・・・(略)
・新たな国家安全保障戦略への提言
→明確な脅威認識を示すべき(北朝鮮の記述はあるが中国の明確な記述がない)
→全領域戦について記述すべき(サイバー戦と宇宙戦の記述はあるが他はない)
→民主主義国家は全領域戦には不適な体制だが、無視するわけにはいかない
→すでに全領域戦の戦時下にあり、対処しなければあらゆる領域が侵略される
あとがきより
・オーストラリアの例
→クライブ・ハミルトンの「目に見えぬ侵略」発刊→中国工作阻止の活発化→新型コロナ発生
→徹底調査発言から中国の威圧→徹底して対抗→米英との軍事同盟へ
・台湾の例
→2019年1月に習近平主席が演説した五つの対台湾工作の具体的な内容
①解放軍による軍事的圧力→頻繁な活動による疲弊戦と心理戦
②台湾の友好国や国際機関からの隔離
→友好国に圧力をかけ国交断絶させ、国際機関への加盟を拒否させる
③浸透工作と政権転覆→メディア浸透や国民党系企業の優遇、民主進歩党系企業の冷遇など
④統一戦線工作→22の親中組織、親中政党(国民党)はじめ、あらゆる組織への人脈の拡大
⑤サイバー戦→最近2年間で14億回の攻撃、1日500万件の攻撃やスキャン、偽情報の拡散
・中国の超限戦は邪道だが厳しい国際社会を生き延びるひとつの戦略
→あらゆる領域が戦場となり境界がなくなる点は私が主張する全領域戦と合致する
→日本には超限戦に匹敵するようなしたたかな国家戦略がない
・日本と中国の(国家戦略の)ギャップを認識し、全領域戦で戦いを仕かける相手に対して
いかに対処するかを真剣に検討すべき・・・
といった感じでしたが、はてさてどうなんでしょう・・・
つい最近のニュースでも日本のサイバー対策が不十分なのは確実なようですが・・・
安全保障のあり方について大多数の国民は、関心も基本的知識もなく政府におまかせ、
その政府は、その場しのぎ的な政策ばかりで国家戦略目標も国家意思も国民に説明もせず、
与党は身内と忖度官僚で周りを固め自己保身に奔走してるし、野党は野党で分裂と迎合を
繰り返しているうちに、ポピュリスト政党や自己目的の少数政党ばかりが目立ってきて、
まだ二大政党があった55年体制のほうがマシだったかも、とさえ思える政治状況・・・
著者が言うように、中国を安全保障上の脅威と明確にした国家戦略にすべきなのか、
はたまた軍事力以外での全方位外交を前提にした国家戦略にすべきなのか・・・
両者のメリットとデメリットを考えた(中途半端ではなく)中庸の国家戦略はあるのか・・・
いずれにしても明確な国家戦略目標も国家意思もないままで済まないのは確かでしょう
大多数の国民が基本的な安全保障に関する知識を身につけ、事実に基づいた自分なりの判断で、
国政選挙に臨むことによって明確な国家戦略目標や国家意思が形成されるのが理想なんですが、
少なくとも偽情報や誤情報に踊らされないよう、各国の政府発表を含む様々なソースから、
自分でファクトチェックをすることが、まずは重要ですね
まあ、当サイトのファクトチェックは、じつにてきとーなんですが・・・

日本はすでに戦時下にある・・・とゆー本のご紹介であります・・・
著者紹介と奥付

著者は東京大学から陸上自衛隊に入り外務省にも出向→ドイツ連邦軍大学留学→駐屯地司令
→師団長→防衛研究所や陸幕を経て方面総監で退職された、陸自ではエリート中のエリート、
さらにハーバード大学などでも研究されてますから日本では数少ない、現場も知り尽くした
「軍事専門家」であることは間違いないでしょう
その著者が素人にも分かるよう書かれた日本と世界の最新情勢ですが、2021年12月現在なので、
その直後(2022年2月24日)のロシアによるウクライナ侵攻などには触れられてません
例によって目次のみの紹介



著者の政治的な主張については果たしてそうなの?と思った部分もありましたが事実として、
あるいは事実の可能性が高いとして記載されている部分は、その根拠となる文献やデータ、
実経験が示されてて参考になりましたので、そういった部分を中心にメモしてみました
まえがきより
・目にみえない戦いは進行している
→キネティック戦争(火が噴く戦争)をしていないだけ
・現代は全領域戦(All-Domain Warfare)の時代
→非軍事では情報、サイバー、政治、経済、金融、外交、メディア、歴史など
→軍事では陸海空、宇宙、サイバー、電磁波など
・本書では戦いと戦争とは明確に区別している
→戦いは「競争者やライバル間の悪意ある仮借なき紛争」で非軍事的手段も含む
→戦争は「2ヶ国以上の軍事紛争で軍事的手段を使った紛争」に限定している
・中国中央統一戦線工作部の戦い
→オーストラリアは主要ターゲットだったが新型コロナで流れが変わった
→日本でもあらゆる分野に浸透している
→中国の超限戦に対して日本は無防備
第一章より
・全領域戦について(略)
→特徴は全領域(ドメイン)で全手段、平時・戦時を問わず特に平時を重視すること
・平時と戦時の概念の変化
→米陸軍の作戦構想では競争から危機を経て紛争に
→米空軍の作戦構想では協力から競争を経て武力紛争に
→平時とは平和なときではなく情報戦、宇宙戦、サイバー戦などでの競争の期間
・中国の超限戦
→目的達成には制限を加えず手段を選ばない→起源はマキャベリの思想
→戦争以外の戦争で戦争に勝ち戦場以外の戦場で勝利を奪い取る→戦わずして勝つ孫子の兵法
→軍隊は勝利できる態勢を作り危機をコントロールし戦争を抑止して戦わずして勝つ(習近平)
第二章より
・中国の中央統一戦線工作部
→活動資金は2019年で26億ドルを超え外交部の予算を上回るとも
→活動は台湾、米国、日本、オーストラリア、ニュージーランド、カナダで最も顕著
→日本では政財界エリート、日中友好団体、孔子学院などに・・・
→琉球王朝末裔の中国招待、基地周辺の不動産取得、沖縄との姉妹都市提携奨励なども・・・
・各国のスパイ(略)
第三章より
・1995年の地下鉄サリン事件
→死者14人、負傷者6300人
→自分も霞ヶ関駅での被害者で自衛隊中央病院に入院した
→隣のベッドには対化学兵器用防護具を予算要求していた同僚幹部が入院しており、
要求の妥当性を当人が被害者となって証明したかたちになった
・2004年の鳥インフルエンザ対応(京都府丹波市)
→当時は第三師団の副師団長で災害派遣の現場指揮官になった
→マニュアル作りから始め、隊員のタミフル服用、簡易防護服、ゴーグルで対応したが、
戦いは福島第一原発事故や今回の新型コロナに対する災害派遣へと継続している
・2019年からの新型コロナウィルス対応
→「流出した生物兵器」説には明白な事実がなかったので無理があると否定している
→2021年の有力研究では発生源は武漢海鮮市場の(宿主となる)生きたタヌキ売場
(コウモリからタヌキへのいずれかの段階でヒト感染するように変異した可能性が高い)
→ポジショントークが多い中で16のアメリカ情報機関が出した冷静な結論(可能性はあるが
明白な事実がなかった)を重視すべき
→WHO報告書でも中国が情報やデータを公開しないため疑義が残るのだから公開すべき
第四章より
・サイバー戦
→ランサムウェア攻撃の実例(略)→重要インフラを停止できる→9.11にも匹敵する
→中国、北朝鮮、ロシアによる攻撃の実例(略)→フランスも攻撃していた
→サイバー空間の国際会議には他国からは軍関係者や情報関係者が多いが日本からは少ない
→自衛隊サイバー防衛隊は専守防衛と縦割り行政で自衛隊以外への攻撃に出る幕はない
→サイバー軍の総合力でもサイバー戦能力でも日本は下位で安全保障省もない
→自衛隊は国内法で日常の情報収集さえできずサイバー攻撃されても敵に侵入もできない
→テンセントはテスラ車ハッキングに成功したと発表しているが、まだ米軍には困難か・・・
第五章より
・SNSは影響工作の主戦場
→偽情報や誤情報の大量拡散によるコントロール
→2016大統領選へのロシアの影響工作は事実で実際に成功している
→2020大統領選ではロシアがバイデン攻撃、イランがトランプ攻撃を行った
(Qアノンでは影の政府D.Sと戦う救世主はプーチンとトランプになっている)
→中国は攻撃を検討したが実施しなかったと報告書にはあるが分断を深める工作はあった
・新型コロナをめぐる影響工作
→米軍関与説、都市封鎖した中国に感謝説→逆に米国で怒りを買い強固な対中戦略へ
→EUの報告書ではロシアと中国から様々な根拠のない影響工作があったとしている
・偽情報とファクトチェック
→人は見たいものを見て、聞きたいものを聞き、読みたいものを読む
→自分の先入観に合致する情報を選択的に収集して拡散する
→ネットでは真実に基づく書き込みより誤情報や偽情報に基づく書き込みのほうが注目され、
はるかに広く速く拡散する(ボットではなく人間が拡散していることが証明されている)
→アテンション・エコノミー(注目経済圏)、訴訟、アルゴリズムの弊害修正などでの対処(略)
第六章より
・宇宙戦(略)
→スペースデブリも大きく関係する・・・
第七章より
・電磁波戦
→通信、レーダー、ミサイル誘導、偵察衛星、レーザーなど現代戦に電磁波は不可欠
→大きく電子攻撃、電子防御、電子戦支援に分けられる(略)
→2017年からのハバナ症候群はGRUによる指向性マイクロ波兵器の可能性が高い
→2020年の中印衝突でも8月29日に解放軍が使用して撃退したとの講演発言があった
(ロンドンタイムズが報道)
(インド政府は何故か否定、中国政府はノーコメント)
→頭痛、吐き気、記憶障害、倦怠感などを引き起こすが外傷がないのが特徴
→指向性エネルギー兵器市場は2027年までには大幅な拡大が見込まれている
・電磁パルス(EMP)攻撃
→北朝鮮がミサイル恫喝の次の段階で日本の高高度で使用する可能性はある
(日本への直接ミサイル攻撃では米軍に報復攻撃される恐れがあるため)
→すでにスーパーEMP弾の開発を完了している
→東京上空96kmで使用すれば影響範囲は半径1080kmで北海道の北半分と南西諸島を除く、
日本全域と韓国の西半分に及ぶが、北朝鮮には影響しない
→中国による台湾と米空母打撃群へのEMP攻撃も戦術上は当然(中国も開発を完了している)
→台湾、フィリピン、グアムの中央海域上空185kmで使用すれば影響範囲は半径1500kmで
台湾、フィリピン、グアムの全域をカバーするが、中国本土には影響しない
→この攻撃は米空母打撃群の正確な位置が特定できない場合にも有効で、中国やロシアは
「EMPは高高度での核爆発で人体に有害な影響はないので核攻撃ではない」と主張している
第八章より
・CIA分析官レイ・クラインの方程式
国力=(人口+領土+経済力+軍事力)×(国家戦略目標+国家意思)
→重要なのは国家戦略目標と国家意思という無形の要素だが日本に欠けているもの
→中国の国力が強いのは世界一になるという国家戦略目標と国家意思を明らかにしているから
→プーチン大統領の断固とした決断はロシアを日本以上に大きく見せている
・国際政治学者ジョセフ・ナイのソフトパワー理論を加味した著者の修正方程式
国力=(人口+領土+経済力+軍事力+政治力+科学技術+教育+文化)×(国家戦略目標+国家意思)
→日本の国力を低下させたい勢力は、この各要素をターゲットに工作を実施している
→日本の国力低下のもっとも重要な理由は国家戦略がなかったこと
→米国の安全保障、防衛、軍事の国家戦略の最初に記述されているのが「国益」
→安全保障は国益を守ることが中核テーマだが、国家戦略は政治の責任分野
・日本の極端な軍事アレルギー
→安全保障や軍事を抜きに国際政治、外交、経済、科学技術などを語ることはできない
→日本では極端な軍事アレルギー反応があらゆる分野にある
→これを確実にしたのはGHQの戦争責任情報計画と軍国主義排除のための民主化改革
→改革を全面的に否定するわけではないが、これで確実に弱い国家になった
・安全保障、日本国憲法、日本学術会議、大学、情報管理、スパイ・・・(略)
・失われた30年の責任の相当部分は三流の政治にある
→三流の政治を支える一流の官僚も一流の経済もなくなった現在では一流の政治しかない
・公明党、専守防衛、自衛隊違憲論、憲法改正、防衛費増額・・・(略)
・新たな国家安全保障戦略への提言
→明確な脅威認識を示すべき(北朝鮮の記述はあるが中国の明確な記述がない)
→全領域戦について記述すべき(サイバー戦と宇宙戦の記述はあるが他はない)
→民主主義国家は全領域戦には不適な体制だが、無視するわけにはいかない
→すでに全領域戦の戦時下にあり、対処しなければあらゆる領域が侵略される
あとがきより
・オーストラリアの例
→クライブ・ハミルトンの「目に見えぬ侵略」発刊→中国工作阻止の活発化→新型コロナ発生
→徹底調査発言から中国の威圧→徹底して対抗→米英との軍事同盟へ
・台湾の例
→2019年1月に習近平主席が演説した五つの対台湾工作の具体的な内容
①解放軍による軍事的圧力→頻繁な活動による疲弊戦と心理戦
②台湾の友好国や国際機関からの隔離
→友好国に圧力をかけ国交断絶させ、国際機関への加盟を拒否させる
③浸透工作と政権転覆→メディア浸透や国民党系企業の優遇、民主進歩党系企業の冷遇など
④統一戦線工作→22の親中組織、親中政党(国民党)はじめ、あらゆる組織への人脈の拡大
⑤サイバー戦→最近2年間で14億回の攻撃、1日500万件の攻撃やスキャン、偽情報の拡散
・中国の超限戦は邪道だが厳しい国際社会を生き延びるひとつの戦略
→あらゆる領域が戦場となり境界がなくなる点は私が主張する全領域戦と合致する
→日本には超限戦に匹敵するようなしたたかな国家戦略がない
・日本と中国の(国家戦略の)ギャップを認識し、全領域戦で戦いを仕かける相手に対して
いかに対処するかを真剣に検討すべき・・・
といった感じでしたが、はてさてどうなんでしょう・・・
つい最近のニュースでも日本のサイバー対策が不十分なのは確実なようですが・・・
安全保障のあり方について大多数の国民は、関心も基本的知識もなく政府におまかせ、
その政府は、その場しのぎ的な政策ばかりで国家戦略目標も国家意思も国民に説明もせず、
与党は身内と忖度官僚で周りを固め自己保身に奔走してるし、野党は野党で分裂と迎合を
繰り返しているうちに、ポピュリスト政党や自己目的の少数政党ばかりが目立ってきて、
まだ二大政党があった55年体制のほうがマシだったかも、とさえ思える政治状況・・・
著者が言うように、中国を安全保障上の脅威と明確にした国家戦略にすべきなのか、
はたまた軍事力以外での全方位外交を前提にした国家戦略にすべきなのか・・・
両者のメリットとデメリットを考えた(中途半端ではなく)中庸の国家戦略はあるのか・・・
いずれにしても明確な国家戦略目標も国家意思もないままで済まないのは確かでしょう
大多数の国民が基本的な安全保障に関する知識を身につけ、事実に基づいた自分なりの判断で、
国政選挙に臨むことによって明確な国家戦略目標や国家意思が形成されるのが理想なんですが、
少なくとも偽情報や誤情報に踊らされないよう、各国の政府発表を含む様々なソースから、
自分でファクトチェックをすることが、まずは重要ですね
まあ、当サイトのファクトチェックは、じつにてきとーなんですが・・・

2023年07月25日
地政学で読みとく「これからの世界」
ええ、

地政学で読みとく「これからの世界」とゆー本のご紹介であります
監修者紹介と奥付

例によって目次のみ・・・



説明は大まかでしたが素人には分かりやすく、問題の全容が俯瞰できる本でした
ただし、図解でよくわかる、ビジュアルで身につく「大人の教養」とゆー構成ですから、
図解なしビジュアルなしのてきとーな読後メモでは、よくわからず身につくこともないので、
少しでも興味を持たれた方には本書のご熟読をオススメします
以下、図解なしビジュアルなしの
てきとーな読後メモであります
(読んでてホントにそうなの?と思った部分もメモしてます)
序章より
・地政学はその国の地理的条件を切り口にして国家間パワーゲームの様相を読み解くもの
→政治・経済・社会は時代で変わるが地理はいつの時代も変わらない
→各国のおかれた地理的条件に政治・経済・軍事といった諸事情を含めて検討すれば、
より明快な理解が可能になる
・地政学の歴史的展開
→最初の提唱者はスウェーデンの政治学者チューレンで1916年刊行の「生活形態としての国家」
に登場、英語ではgeopoliticsになり地理の政治学
→ナチス・ドイツのヨーロッパ侵攻や、日本の大東亜共栄圏構想の理論的根拠になったとされ、
戦後は世界でタブー視されて日本でもGHQが研究を禁止して関連書籍も抹消されたものの、
東西冷戦期に紛争分析のための理論として注目され、現在では国際情勢一般にも応用されている
(ちなみにこちらの本では研究はイギリス・アメリカが発祥でドイツ→日本となってます)
・地政学の重要ワード
・シーパワーとランドパワー(略)
→両者の対立構造が生まれやすい
・ハートランド(中央部)とリムランド(その周縁部)
→ハートランドがリムランドに進出して衝突するケースが多い
→朝鮮半島、ベトナム、中央アジア、ウクライナなど
・シーレーンとチョークポイント(略)
・内海(閉鎖海)→ひとつの国の支配下に置かれた状態の海
(アメリカにとってのメキシコ湾やカリブ海、ローマ帝国にとっての地中海、中国にとっての
南シナ海などで、得ることで防衛コストが抑えられ余剰戦力を別の海域へ向けられる)
・緩衝地帯、現代戦におけるエアパワー(制空権)などなど・・・
1章「話題の国際情勢と地政学」より
・ウクライナ侵攻
キエフ公国→モンゴルの侵攻→モスクワ大公国→ロシア→ソ連崩壊→独立→親欧米派の新政権
→ロシアとの対立→クリミア半島、ドネツク州、ルガンスク州への侵攻→ミンスク合意
→ゼレンスキー政権による不履行とNATO加盟への動き→全面侵攻→逆にNATO拡大へ
・北方領土問題
→不凍港を得るためのロシアの南下政策→日露戦争→第二次世界大戦下での侵攻と実効支配
→平和条約で権利を放棄したのは千島列島とサハリンの一部だが四島返還で対立する理由
①軍事的理由→日米地位協定による米軍基地建設の脅威
②経済的理由→温暖化による北極海航路の独占権益を守る必要性
③国内的理由→国内少数民族の独立問題や領土問題が加速する可能性
→さらに北海道を領土にすればオホーツク海をロシアの内海にできる
→なのでロシアは北海道すべての権利を有するとの主張もロシア国内にある
・アメリカと中国の新冷戦
→中国は2010年にGDPで日本を抜き2位になり2013年に一帯一路の世界秩序構想を発表
→アメリカは地政学上のバランス・オブ・パワー(勢力均衡)戦略で対抗している
(冷戦時代はナンバー2のソ連を抑えるためナンバー3の日本と協力、日本がナンバー2になると
中国との関係を強めて日本を牽制していた→これがバランス・オブ・パワー戦略)
→2018年には貿易戦争になり新冷戦という言葉が使われる
→QUAD(2006年に安倍首相が提唱)などシーパワーの結集で中国を牽制
・中国による経済圏「一帯一路」構想
中央アジア経由の道路・鉄道整備などによる「一帯」と、南シナ海→インド洋→アフリカ東岸→
紅海経由の港湾整備などによる「一路」→どちらにも借金の罠があり批判もあるが達成すれば、
→経済力で支配するシーパワーとランドパワーを備えた世界史上初の国になる
・中国・台湾問題
→台湾が自国領土なら第一列島線内を内海にできる
→将来的には第二列島線内にも影響を及ぼしたい
→歴史的背景とともに地政学的な理由がある
→台湾有事で米軍が出動するなら日本の基地から
2章「アジアの地政学」より
(アジア情勢は複雑に思えるが地政学で考えると大局が見やすくなる)
・アジアの中心は多様な民族を含む14億人の中国、その周辺で局面が展開するというイメージ
→内陸エリアの北はモンゴルとロシア、西は旧ソ連衛星国で中東イスラム諸国との緩衝地帯
→海洋エリアの南はインドと東南アジア諸国、東は緩衝地帯の北朝鮮を挟み韓国、台湾と日本
→東南アジア諸国は中華・インド・イスラムの文化圏
→といった地政上の条件下にある国が中国で、その周辺で局面が展開している
・中国の海洋進出
→第二列島線で太平洋をアメリカと二分できるが、まだ第一列島線さえ確保できていない
→第一列島線の重要拠点である台湾・南沙・西沙・尖閣は何としても実効支配したい
→建国100年の2049年までにアメリカと同等の海軍力を有することを目標にしている
・南シナ海九段線内側の制海権確保
→ベトナム、フィリピン、マレーシア、ブルネイ、台湾を排して実効支配しようとしている
・中国とロシア
→4000kmの国境問題は2000年代半ばで解決→エネルギー需給でwinwinの関係になった
→ロシア経済が崩壊しないのは中国の影響が大きい
・新彊ウイグル問題
→ウイグル族はトルコ系民族で言語も宗教も異なる
→18世紀に清朝が征服して以来ずっと支配している
→インド・ロシアとの緩衝地帯で一帯一路上でもあり地政上重要
→他の少数民族の独立運動にも繋がるため力で抑えている
・中国・インド・パキスタンの抗争(3国とも核保有国)
→カシミール地方は3国が実効支配する地域が重なる係争地でアジアの火薬庫
→18世紀まで独立国だったチベットは清朝→(英領)インド→中国に征服されて現在に至る
→緩衝地帯はなくなりヒマラヤ山脈を挟み中印が直接対峙している
・中国の真珠の首飾り戦略(インド洋での経済支援とシーレーン整備拡充によるインド包囲)
→ミャンマー、バングラデシュ、スリランカ、パキスタン、モルディブでの港湾建設など
・インドのダイヤのネックレス戦略(インド洋沿岸各国との連携による真珠の首飾り外側の包囲)
→東南アジア諸国インド洋沿岸諸国との連携、日米豪とのQUADだが軍事面は進んでいない
→ただしインドは全方位外交であり中国は最大の貿易相手国でもある
・冷戦後の北朝鮮
→東西の緩衝地帯だったがソ連を失いアメリカを仮想敵とした核ミサイルを開発
→軍事支援を続ける中国としても手に余る状態だが緩衝地帯の消滅は困る
→両者の緊張を高めて外交的譲歩を引き出す瀬戸際外交がいつまで続くか
・中豪関係
→シーパワーのオーストラリアは1970年代から白豪主義を見直しアジア中心で経済発展した
→2014年には包括的・戦略的パートナーシップで中国と最大の蜜月関係になった
→2016年ごろからの中国の南太平洋島嶼国との関係強化や中国企業の内政干渉疑惑
→2020年のコロナ感染源調査をめぐる対立で関係がさらに悪化、原潜配備やQUADへ
・地政学でひもとく中国史
→中国歴代王朝は東夷・西戎・南蛮・北狄に対抗するためランドパワーを高めていった
→元と明はシーパワーも求めたが、元は日本侵攻での撤退や東南アジアでの風土病により、
明は北でのモンゴル勢力回復と南での倭寇(北虜南倭)により、海洋進出が失敗に終わった
→近代以降も海洋進出には消極的だったが、ヨーロッパではシーパワーの国が力をつけて
アジアに進出し、清はその標的になった
→1840年のアヘン戦争、1856年のアロー戦争、1894年の日清戦争でシーパワーの国に敗北
→経済成長で軍事力をシーパワーに向けられるようになり21世紀からは積極的に海洋進出
→これまでシーパワーを得られずにシーパワーの国に蹂躙されてきた歴史がある・・・
3章「アメリカの地政学」より
・南北アメリカ大陸はユーラシア大陸から隔絶した「大きな島」
→防衛上の懸案事項があまりなかった(2度の世界大戦でもノーダメージだった)
→軍事的・経済的にアメリカの脅威になる国が周辺に存在しない
→この地理的条件により世界各地に軍事拠点を設けシーパワーを拡大してきた
・世界の警察官からの引退
→アフガニスタン侵攻やイラク侵攻などの失敗、リーマンショック、財政悪化・・・
→2013年にオバマが宣言し、トランプ、バイデンも引き継いだ
→結果はタリバンの復活、南シナ海の現状変更、台湾への強硬姿勢、ウクライナ侵攻など・・・
・アメリカと中東との関係
→中東はランドパワーとシーパワーが激突するリムランドで石油利権がある
→1948年からのイスラエル支援→イラン革命によるイラク支援→湾岸戦争→アフガニスタン侵攻や
イラク侵攻などで大きく関わってきた
→2000年からのシェール革命により世界一の原油産出国になった
→中東で軍事力を維持する必要がなくなり撤退、その後は中国が台頭している
・中南米は2001年の同時多発テロ対応から手薄に、2017年のトランプ政権で左派政権が増え、
そこに中国が関係を深めてアメリカの存在感が薄くなっている
→キューバも2017年のトランプ政権で関係悪化、コロナ禍で主力の観光業が減り経済危機に
→最大の貿易相手国が中国になっている
・ファイブアイズ・クアッド・アイペフ・TPP・ブルードットネットワーク・オーカス(略)
・地政学でひもとくアメリカ史
→1776年に東部13州300万人からスタート→ランドパワーによる武力制圧で西部へ進出
→1823年のモンロー主義には中南米カリブ海も含む(ヨーロッパには干渉させない)
→1846年のメキシコとの米墨戦争でテキサスとカリフォルニアを獲得→天然資源の宝庫
→1867年にロシアからアラスカを格安で購入、これで未開地は消滅しシーパワー獲得へ
→1898年のスペインとの米西戦争でキューバを植民地化→中南米とカリブ海を影響下に
→スペインからはフィリピンやグアムも獲得、ハワイや西サモアも併合し大平洋にも進出
→1914年にはチョークポイントのパナマ運河を完成させ租借権を獲得(返還は1999年)
→第二次世界大戦で日本に勝利、メキシコ湾カリブ海に続き太平洋も自国の内海にした
4章「ヨーロッパ・ロシアの地政学」より
・ユーラシア大陸は世界島でありヨーロッパは三方を海に囲まれた半島
→半島は海に出やすいが陸側から攻められると逃げ場がない→最大の脅威はロシア
→半島の付根部分(バルト海と黒海を結ぶ線)で衝突しやすい→ヨーロッパの断層線
→冷戦時代には緩衝地帯として翻弄され、2022年にはウクライナ侵攻
・ロシアは14の国と北極海に囲まれておりシーパワーを求めて南下することが基本戦略
・EU拡大(発足時の12から27へ、ユーロ導入は19)の問題点
→各国の経済格差が大きすぎる(労働力の移動などによる混乱)
→難民・移民の受け入れによるキリスト教という共通価値観の揺らぎなど
→反EU、反移民、反グローバルの声が高まっている
→イギリスは地政学上の利点を活かしたオフショア・バランシング外交を展開
→2020年にEU離脱(ブレグジット)
→2009年のギリシャ危機でEUが切り捨てなかったのは地政学上の理由から
・ロシアの資源戦略
→天然ガスのパイプラインを使った販売方法で、何かあればすぐに圧力をかけられる
→ドイツはじめヨーロッパは脱炭素政策で依存が高まっていた
・北極海の争奪戦
→温暖化により地政学の理論が変化する局面になる可能性が高い
→北極海航路の出現と原油・天然ガス・レアメタルなど資源採掘の実現
→ロシアは北極海沿いに24000km以上の海岸線を持ち領土の1/3は北極圏内
→航路や資源の開発を進められるが、北側の国境が外敵に晒されることにもなる
→今後は北方艦隊も増強せねばならない
→北極海ではアメリカや中国の動きも目立ってきている
・地政学でひもとくイギリス史
→ケルト人と後から来たゲルマン系アングロ・サクソン人が同化した辺境の島国だった
→陸上の防衛力が最小限で済んだため軍事費を海軍力や植民地経営にまわすことができた
→16世紀半ばから海洋進出を開始、強大なシーパワーで世界の1/4を支配していた
→スペイン、オランダ、フランスに勝利し北アメリカやインドの海岸都市などを植民地化
→立憲王政で国内政治が安定すると産業革命が起こり、さらに繁栄の時代に
→1783年のアメリカ独立でインド内部、ビルマ、マレー半島、マラッカ海峡、中国(清王朝)へ
→1875年にスエズ運河の権利を買収しアフリカや太平洋の島嶼部にまで進出、1901年には
オーストラリアを自治領に、1910年には南アフリカ連邦を成立・・・
→ドーヴァー海峡、ホルムズ海峡、マラッカ海峡、スエズ運河といったチョークポイントを抑え、
最強のシーパワー国になった→パックス・ブリタニカ→第一次世界大戦で疲弊した
・地政学でひもとくロシア史
→9世紀末にノルマン人がスラブ人を征服したキエフ大公国がルーツ
→13世紀にモンゴル帝国に征服されたが1480年にモスクワ大公国が独立しロシアの歴史へ
→1613年のロマノフ王朝誕生から周辺国を征服して世界最大のランドパワー国に
→1682年からの南下政策でオスマン帝国やスウェーデンと戦い黒海・バルト海を抑える
→18世紀後半にはクリミア半島のセヴァストポリに黒海艦隊の軍港
→19世紀後半には沿海州のウラジオストックに太平洋艦隊の軍港
→19世紀から20世紀にかけてイギリスが干渉するが南下政策は継続し東アジアへ
→ウクライナ侵攻により緩衝地帯を維持しようとしているがシーパワーも求め続けている
5章「中東の地政学」より
・トルコの主要領土アナトリア半島はアジア・ヨーロッパ・ロシアの接点
→ボスポラス海峡とダーダネルス海峡はシーパワーのチョークポイント
→現在のトルコは欧米と、犬猿だったロシアとを天秤にかける巧みな外交をしている
・イランはアラブ人ではなくペルシャ人の国で、その誇りが高い
→1979年のイスラム革命以降、各国のシーア派を支援して革命の輸出をしている
→ペルシャ湾に面し中東と中央アジアの接点で中国やロシアも重視
・親米スンニ派のサウジアラビア(アラブ人が多数派)と反米シーア派のイランとの対立
→レバノンではスンニ派政権をサウジが支援、反体制のヒズボラをイランが支援
→シリアではアサド政権をイランが支援、反体制派をサウジが支援
・パレスチナ紛争
→イスラエルは周囲を全てアラブ人国家に囲まれた脆弱土地で石油も独自水源もない
→対外膨張なしには存続が難しく、これはパレスチナ人にとっては災難でしかない
→イスラエル、親米アラブとイラン、シーア派とスンニ派が対立している構造
・シリア内戦
アサド家はシーア派の一派でシリアの多数派であるスンニ派を抑圧
→アサド政権、反体制派、IS、クルド人が争い疲弊している
→アメリカの反体制派支援からの撤退、地中海の海軍基地を守るロシアの政権支援、
政権と同じシーア派のイランの支援により、内戦が続いてもアサド政権は倒れない
・アフガニスタンはハートランドとリムランドの接点
→ロシアとイギリス、ソ連とアメリカの代理戦争が続いた
→ランドパワーの大国とシーパワーの大国の争いの舞台
・クルド語を話しスンニ派が多いクルド人は2500万~3000万人
→トルコ、シリア、イラン、イラクなどにまたがるクルディスタンに暮らす民族
→国を持たない世界最大の民族と呼ばれている
→イギリス、フランス、トルコの思惑で分断され、各国での弾圧が続くが独立運動も続く
→この状況が中東不安定化の要因ともなっている
・地政学でひもとくトルコ史
→1299年にトルコ民族により建国されたオスマン帝国(オスマン・トルコ)がルーツ
→1453年にビザンツ帝国(東ローマ帝国)を滅ぼし15世紀末にはアナトリア地方とバルカン半島、
16世紀前半にはエジプトとアラビア半島西岸、16世紀半ばには黒海、地中海、紅海、アラビア海、
ペルシャ湾の制海権を掌握、古代ローマ帝国領土の3/4を支配する大帝国になった
→大航海時代からヨーロッパ列強の海洋進出により東西貿易は地中海を離れたので徐々に衰退、
19世紀末にはロシアとイギリスに蹂躙され第一次世界大戦では同盟国側は連合国側に敗北
→国と民族は分断され1922年の革命でオスマン帝国は滅亡し現在のトルコ共和国になった
→オスマン帝国の支配下で安定していた中東は紛争が多発する火薬庫になった
6章「日本の地政学」より
・朝鮮半島から九州本土までは130km以上も離れており本格的な侵略はなかった
→中国から見れば日本列島が蓋をしており宗谷、津軽、対馬、大隅の海峡はチョークポイント
→大航海時代以降の覇権はシーパワー国家が制したが、今の日本は覇権を狙うレベルにはない
→それでも環太平洋やアジア各国へのシーレーンで世界をリードするハブ国家にはなり得る
・尖閣諸島は中国で需要が増える魚介類の宝庫で石油や天然ガスの埋蔵も推測されている
→軍事拠点としても重要で中国に編入すればアメリカに太平洋への進出を邪魔されない
→なので実効支配されてしまえば以後の排除は困難
・沖縄の米軍基地はアメリカの戦略に極めて重要で最高レベルの装備・軍備を有している
→中国の大平洋進出を牽制するキーポイントにあり、ICBMならロシア、中東、オセアニア
まで、全て射程内に収めることができる
→中距離ミサイルでも中国・インド・ロシアとオーストラリアの北半分までを射程内に収める
→現在アメリカは中距離ミサイルをもっておらず、中国は1250発以上をもっている
→2023年には開発配備予定だが、沖縄を含む第一列島線沿いへの配備が位置的に最も適切
→沖縄への中距離ミサイル配備の要請が近い将来にアメリカからあるかもしれない
・韓国と北朝鮮の反日政策(略)
・核シェアリング
→ドイツ・イタリア・オランダ・ベルギー・トルコには航空機搭載型B61タイプの核爆弾
(数は非公表だが100発ほどとされている)が存在する
→各国にシェアリングされた核は米軍が運用するもので各国には使用権も拒否権もない
→日本でも安倍元首相の核共有発言があったが岸田首相は認められないとしている
→シーパワーやランドパワーではなくニュークリアパワー(核兵器)を持った大国アメリカと
大国ソ連との冷戦は終わり両国とも削減したが、ウクライナ侵攻により見直しされるかも・・・
・地政学でひもとく日本史
→近隣に中国という大国が存在するが海流や季節風で独立を保ってきた
→古代4世紀後半から朝鮮半島に介入しシーパワーを発揮していた
→百済と友好関係にあり百済が唐や新羅に圧迫された663年に大軍を送り支援したが敗北、
以後は半島への影響力を失い海外進出はなかった
→1592年と1597年に李氏に明征服の案内を拒否された豊臣秀吉が朝鮮出兵したが敗北
→その後250年の江戸時代は鎖国でランドパワーだったが、明治以降に再び海洋進出へ
→1894年、朝鮮半島の支配権をめぐる日清戦争に勝利
→1904年、朝鮮半島と南満州の支配権をめぐる日露戦争にシーパワー同士の日英同盟で勝利
→1914年、日英同盟で第一次世界大戦で勝利しドイツ領の青島や南洋諸島に侵攻し国力増大
→世界恐慌による経済危機を大陸進出で乗り越えようと1932年に満州国を建国
→1937年からは中国との全面戦争に突入し資源確保と米英の中国支援遮断のためインドシナ半島へ
→それでABCD包囲網により石油などの輸入を封鎖され、1941年12月に太平洋戦争へ突入
→戦争初期はシーパワーが最大限に発揮され、東はギルバート諸島、西はビルマ(ミャンマー)、
南はガダルカナル島、北はアッツ島まで、日本史上で最大の領域を支配下に置いた
(大東亜共栄圏は大義名分で実態は植民地化だった)
→1942年6月ミッドウェー海戦での大敗後は防戦一方になり、1945年8月に敗戦
→戦後の東西冷戦では西側アメリカとの同盟により東側への防波堤となった
→冷戦終了後もアメリカのアジア戦略の重要拠点として中国やロシアににらみを利かせている
はてさて、今後の世界はどうなるんでしょうね・・・

地政学で読みとく「これからの世界」とゆー本のご紹介であります
監修者紹介と奥付

例によって目次のみ・・・



説明は大まかでしたが素人には分かりやすく、問題の全容が俯瞰できる本でした
ただし、図解でよくわかる、ビジュアルで身につく「大人の教養」とゆー構成ですから、
図解なしビジュアルなしのてきとーな読後メモでは、よくわからず身につくこともないので、
少しでも興味を持たれた方には本書のご熟読をオススメします
以下、図解なしビジュアルなしの

(読んでてホントにそうなの?と思った部分もメモしてます)
序章より
・地政学はその国の地理的条件を切り口にして国家間パワーゲームの様相を読み解くもの
→政治・経済・社会は時代で変わるが地理はいつの時代も変わらない
→各国のおかれた地理的条件に政治・経済・軍事といった諸事情を含めて検討すれば、
より明快な理解が可能になる
・地政学の歴史的展開
→最初の提唱者はスウェーデンの政治学者チューレンで1916年刊行の「生活形態としての国家」
に登場、英語ではgeopoliticsになり地理の政治学
→ナチス・ドイツのヨーロッパ侵攻や、日本の大東亜共栄圏構想の理論的根拠になったとされ、
戦後は世界でタブー視されて日本でもGHQが研究を禁止して関連書籍も抹消されたものの、
東西冷戦期に紛争分析のための理論として注目され、現在では国際情勢一般にも応用されている
(ちなみにこちらの本では研究はイギリス・アメリカが発祥でドイツ→日本となってます)
・地政学の重要ワード
・シーパワーとランドパワー(略)
→両者の対立構造が生まれやすい
・ハートランド(中央部)とリムランド(その周縁部)
→ハートランドがリムランドに進出して衝突するケースが多い
→朝鮮半島、ベトナム、中央アジア、ウクライナなど
・シーレーンとチョークポイント(略)
・内海(閉鎖海)→ひとつの国の支配下に置かれた状態の海
(アメリカにとってのメキシコ湾やカリブ海、ローマ帝国にとっての地中海、中国にとっての
南シナ海などで、得ることで防衛コストが抑えられ余剰戦力を別の海域へ向けられる)
・緩衝地帯、現代戦におけるエアパワー(制空権)などなど・・・
1章「話題の国際情勢と地政学」より
・ウクライナ侵攻
キエフ公国→モンゴルの侵攻→モスクワ大公国→ロシア→ソ連崩壊→独立→親欧米派の新政権
→ロシアとの対立→クリミア半島、ドネツク州、ルガンスク州への侵攻→ミンスク合意
→ゼレンスキー政権による不履行とNATO加盟への動き→全面侵攻→逆にNATO拡大へ
・北方領土問題
→不凍港を得るためのロシアの南下政策→日露戦争→第二次世界大戦下での侵攻と実効支配
→平和条約で権利を放棄したのは千島列島とサハリンの一部だが四島返還で対立する理由
①軍事的理由→日米地位協定による米軍基地建設の脅威
②経済的理由→温暖化による北極海航路の独占権益を守る必要性
③国内的理由→国内少数民族の独立問題や領土問題が加速する可能性
→さらに北海道を領土にすればオホーツク海をロシアの内海にできる
→なのでロシアは北海道すべての権利を有するとの主張もロシア国内にある
・アメリカと中国の新冷戦
→中国は2010年にGDPで日本を抜き2位になり2013年に一帯一路の世界秩序構想を発表
→アメリカは地政学上のバランス・オブ・パワー(勢力均衡)戦略で対抗している
(冷戦時代はナンバー2のソ連を抑えるためナンバー3の日本と協力、日本がナンバー2になると
中国との関係を強めて日本を牽制していた→これがバランス・オブ・パワー戦略)
→2018年には貿易戦争になり新冷戦という言葉が使われる
→QUAD(2006年に安倍首相が提唱)などシーパワーの結集で中国を牽制
・中国による経済圏「一帯一路」構想
中央アジア経由の道路・鉄道整備などによる「一帯」と、南シナ海→インド洋→アフリカ東岸→
紅海経由の港湾整備などによる「一路」→どちらにも借金の罠があり批判もあるが達成すれば、
→経済力で支配するシーパワーとランドパワーを備えた世界史上初の国になる
・中国・台湾問題
→台湾が自国領土なら第一列島線内を内海にできる
→将来的には第二列島線内にも影響を及ぼしたい
→歴史的背景とともに地政学的な理由がある
→台湾有事で米軍が出動するなら日本の基地から
2章「アジアの地政学」より
(アジア情勢は複雑に思えるが地政学で考えると大局が見やすくなる)
・アジアの中心は多様な民族を含む14億人の中国、その周辺で局面が展開するというイメージ
→内陸エリアの北はモンゴルとロシア、西は旧ソ連衛星国で中東イスラム諸国との緩衝地帯
→海洋エリアの南はインドと東南アジア諸国、東は緩衝地帯の北朝鮮を挟み韓国、台湾と日本
→東南アジア諸国は中華・インド・イスラムの文化圏
→といった地政上の条件下にある国が中国で、その周辺で局面が展開している
・中国の海洋進出
→第二列島線で太平洋をアメリカと二分できるが、まだ第一列島線さえ確保できていない
→第一列島線の重要拠点である台湾・南沙・西沙・尖閣は何としても実効支配したい
→建国100年の2049年までにアメリカと同等の海軍力を有することを目標にしている
・南シナ海九段線内側の制海権確保
→ベトナム、フィリピン、マレーシア、ブルネイ、台湾を排して実効支配しようとしている
・中国とロシア
→4000kmの国境問題は2000年代半ばで解決→エネルギー需給でwinwinの関係になった
→ロシア経済が崩壊しないのは中国の影響が大きい
・新彊ウイグル問題
→ウイグル族はトルコ系民族で言語も宗教も異なる
→18世紀に清朝が征服して以来ずっと支配している
→インド・ロシアとの緩衝地帯で一帯一路上でもあり地政上重要
→他の少数民族の独立運動にも繋がるため力で抑えている
・中国・インド・パキスタンの抗争(3国とも核保有国)
→カシミール地方は3国が実効支配する地域が重なる係争地でアジアの火薬庫
→18世紀まで独立国だったチベットは清朝→(英領)インド→中国に征服されて現在に至る
→緩衝地帯はなくなりヒマラヤ山脈を挟み中印が直接対峙している
・中国の真珠の首飾り戦略(インド洋での経済支援とシーレーン整備拡充によるインド包囲)
→ミャンマー、バングラデシュ、スリランカ、パキスタン、モルディブでの港湾建設など
・インドのダイヤのネックレス戦略(インド洋沿岸各国との連携による真珠の首飾り外側の包囲)
→東南アジア諸国インド洋沿岸諸国との連携、日米豪とのQUADだが軍事面は進んでいない
→ただしインドは全方位外交であり中国は最大の貿易相手国でもある
・冷戦後の北朝鮮
→東西の緩衝地帯だったがソ連を失いアメリカを仮想敵とした核ミサイルを開発
→軍事支援を続ける中国としても手に余る状態だが緩衝地帯の消滅は困る
→両者の緊張を高めて外交的譲歩を引き出す瀬戸際外交がいつまで続くか
・中豪関係
→シーパワーのオーストラリアは1970年代から白豪主義を見直しアジア中心で経済発展した
→2014年には包括的・戦略的パートナーシップで中国と最大の蜜月関係になった
→2016年ごろからの中国の南太平洋島嶼国との関係強化や中国企業の内政干渉疑惑
→2020年のコロナ感染源調査をめぐる対立で関係がさらに悪化、原潜配備やQUADへ
・地政学でひもとく中国史
→中国歴代王朝は東夷・西戎・南蛮・北狄に対抗するためランドパワーを高めていった
→元と明はシーパワーも求めたが、元は日本侵攻での撤退や東南アジアでの風土病により、
明は北でのモンゴル勢力回復と南での倭寇(北虜南倭)により、海洋進出が失敗に終わった
→近代以降も海洋進出には消極的だったが、ヨーロッパではシーパワーの国が力をつけて
アジアに進出し、清はその標的になった
→1840年のアヘン戦争、1856年のアロー戦争、1894年の日清戦争でシーパワーの国に敗北
→経済成長で軍事力をシーパワーに向けられるようになり21世紀からは積極的に海洋進出
→これまでシーパワーを得られずにシーパワーの国に蹂躙されてきた歴史がある・・・
3章「アメリカの地政学」より
・南北アメリカ大陸はユーラシア大陸から隔絶した「大きな島」
→防衛上の懸案事項があまりなかった(2度の世界大戦でもノーダメージだった)
→軍事的・経済的にアメリカの脅威になる国が周辺に存在しない
→この地理的条件により世界各地に軍事拠点を設けシーパワーを拡大してきた
・世界の警察官からの引退
→アフガニスタン侵攻やイラク侵攻などの失敗、リーマンショック、財政悪化・・・
→2013年にオバマが宣言し、トランプ、バイデンも引き継いだ
→結果はタリバンの復活、南シナ海の現状変更、台湾への強硬姿勢、ウクライナ侵攻など・・・
・アメリカと中東との関係
→中東はランドパワーとシーパワーが激突するリムランドで石油利権がある
→1948年からのイスラエル支援→イラン革命によるイラク支援→湾岸戦争→アフガニスタン侵攻や
イラク侵攻などで大きく関わってきた
→2000年からのシェール革命により世界一の原油産出国になった
→中東で軍事力を維持する必要がなくなり撤退、その後は中国が台頭している
・中南米は2001年の同時多発テロ対応から手薄に、2017年のトランプ政権で左派政権が増え、
そこに中国が関係を深めてアメリカの存在感が薄くなっている
→キューバも2017年のトランプ政権で関係悪化、コロナ禍で主力の観光業が減り経済危機に
→最大の貿易相手国が中国になっている
・ファイブアイズ・クアッド・アイペフ・TPP・ブルードットネットワーク・オーカス(略)
・地政学でひもとくアメリカ史
→1776年に東部13州300万人からスタート→ランドパワーによる武力制圧で西部へ進出
→1823年のモンロー主義には中南米カリブ海も含む(ヨーロッパには干渉させない)
→1846年のメキシコとの米墨戦争でテキサスとカリフォルニアを獲得→天然資源の宝庫
→1867年にロシアからアラスカを格安で購入、これで未開地は消滅しシーパワー獲得へ
→1898年のスペインとの米西戦争でキューバを植民地化→中南米とカリブ海を影響下に
→スペインからはフィリピンやグアムも獲得、ハワイや西サモアも併合し大平洋にも進出
→1914年にはチョークポイントのパナマ運河を完成させ租借権を獲得(返還は1999年)
→第二次世界大戦で日本に勝利、メキシコ湾カリブ海に続き太平洋も自国の内海にした
4章「ヨーロッパ・ロシアの地政学」より
・ユーラシア大陸は世界島でありヨーロッパは三方を海に囲まれた半島
→半島は海に出やすいが陸側から攻められると逃げ場がない→最大の脅威はロシア
→半島の付根部分(バルト海と黒海を結ぶ線)で衝突しやすい→ヨーロッパの断層線
→冷戦時代には緩衝地帯として翻弄され、2022年にはウクライナ侵攻
・ロシアは14の国と北極海に囲まれておりシーパワーを求めて南下することが基本戦略
・EU拡大(発足時の12から27へ、ユーロ導入は19)の問題点
→各国の経済格差が大きすぎる(労働力の移動などによる混乱)
→難民・移民の受け入れによるキリスト教という共通価値観の揺らぎなど
→反EU、反移民、反グローバルの声が高まっている
→イギリスは地政学上の利点を活かしたオフショア・バランシング外交を展開
→2020年にEU離脱(ブレグジット)
→2009年のギリシャ危機でEUが切り捨てなかったのは地政学上の理由から
・ロシアの資源戦略
→天然ガスのパイプラインを使った販売方法で、何かあればすぐに圧力をかけられる
→ドイツはじめヨーロッパは脱炭素政策で依存が高まっていた
・北極海の争奪戦
→温暖化により地政学の理論が変化する局面になる可能性が高い
→北極海航路の出現と原油・天然ガス・レアメタルなど資源採掘の実現
→ロシアは北極海沿いに24000km以上の海岸線を持ち領土の1/3は北極圏内
→航路や資源の開発を進められるが、北側の国境が外敵に晒されることにもなる
→今後は北方艦隊も増強せねばならない
→北極海ではアメリカや中国の動きも目立ってきている
・地政学でひもとくイギリス史
→ケルト人と後から来たゲルマン系アングロ・サクソン人が同化した辺境の島国だった
→陸上の防衛力が最小限で済んだため軍事費を海軍力や植民地経営にまわすことができた
→16世紀半ばから海洋進出を開始、強大なシーパワーで世界の1/4を支配していた
→スペイン、オランダ、フランスに勝利し北アメリカやインドの海岸都市などを植民地化
→立憲王政で国内政治が安定すると産業革命が起こり、さらに繁栄の時代に
→1783年のアメリカ独立でインド内部、ビルマ、マレー半島、マラッカ海峡、中国(清王朝)へ
→1875年にスエズ運河の権利を買収しアフリカや太平洋の島嶼部にまで進出、1901年には
オーストラリアを自治領に、1910年には南アフリカ連邦を成立・・・
→ドーヴァー海峡、ホルムズ海峡、マラッカ海峡、スエズ運河といったチョークポイントを抑え、
最強のシーパワー国になった→パックス・ブリタニカ→第一次世界大戦で疲弊した
・地政学でひもとくロシア史
→9世紀末にノルマン人がスラブ人を征服したキエフ大公国がルーツ
→13世紀にモンゴル帝国に征服されたが1480年にモスクワ大公国が独立しロシアの歴史へ
→1613年のロマノフ王朝誕生から周辺国を征服して世界最大のランドパワー国に
→1682年からの南下政策でオスマン帝国やスウェーデンと戦い黒海・バルト海を抑える
→18世紀後半にはクリミア半島のセヴァストポリに黒海艦隊の軍港
→19世紀後半には沿海州のウラジオストックに太平洋艦隊の軍港
→19世紀から20世紀にかけてイギリスが干渉するが南下政策は継続し東アジアへ
→ウクライナ侵攻により緩衝地帯を維持しようとしているがシーパワーも求め続けている
5章「中東の地政学」より
・トルコの主要領土アナトリア半島はアジア・ヨーロッパ・ロシアの接点
→ボスポラス海峡とダーダネルス海峡はシーパワーのチョークポイント
→現在のトルコは欧米と、犬猿だったロシアとを天秤にかける巧みな外交をしている
・イランはアラブ人ではなくペルシャ人の国で、その誇りが高い
→1979年のイスラム革命以降、各国のシーア派を支援して革命の輸出をしている
→ペルシャ湾に面し中東と中央アジアの接点で中国やロシアも重視
・親米スンニ派のサウジアラビア(アラブ人が多数派)と反米シーア派のイランとの対立
→レバノンではスンニ派政権をサウジが支援、反体制のヒズボラをイランが支援
→シリアではアサド政権をイランが支援、反体制派をサウジが支援
・パレスチナ紛争
→イスラエルは周囲を全てアラブ人国家に囲まれた脆弱土地で石油も独自水源もない
→対外膨張なしには存続が難しく、これはパレスチナ人にとっては災難でしかない
→イスラエル、親米アラブとイラン、シーア派とスンニ派が対立している構造
・シリア内戦
アサド家はシーア派の一派でシリアの多数派であるスンニ派を抑圧
→アサド政権、反体制派、IS、クルド人が争い疲弊している
→アメリカの反体制派支援からの撤退、地中海の海軍基地を守るロシアの政権支援、
政権と同じシーア派のイランの支援により、内戦が続いてもアサド政権は倒れない
・アフガニスタンはハートランドとリムランドの接点
→ロシアとイギリス、ソ連とアメリカの代理戦争が続いた
→ランドパワーの大国とシーパワーの大国の争いの舞台
・クルド語を話しスンニ派が多いクルド人は2500万~3000万人
→トルコ、シリア、イラン、イラクなどにまたがるクルディスタンに暮らす民族
→国を持たない世界最大の民族と呼ばれている
→イギリス、フランス、トルコの思惑で分断され、各国での弾圧が続くが独立運動も続く
→この状況が中東不安定化の要因ともなっている
・地政学でひもとくトルコ史
→1299年にトルコ民族により建国されたオスマン帝国(オスマン・トルコ)がルーツ
→1453年にビザンツ帝国(東ローマ帝国)を滅ぼし15世紀末にはアナトリア地方とバルカン半島、
16世紀前半にはエジプトとアラビア半島西岸、16世紀半ばには黒海、地中海、紅海、アラビア海、
ペルシャ湾の制海権を掌握、古代ローマ帝国領土の3/4を支配する大帝国になった
→大航海時代からヨーロッパ列強の海洋進出により東西貿易は地中海を離れたので徐々に衰退、
19世紀末にはロシアとイギリスに蹂躙され第一次世界大戦では同盟国側は連合国側に敗北
→国と民族は分断され1922年の革命でオスマン帝国は滅亡し現在のトルコ共和国になった
→オスマン帝国の支配下で安定していた中東は紛争が多発する火薬庫になった
6章「日本の地政学」より
・朝鮮半島から九州本土までは130km以上も離れており本格的な侵略はなかった
→中国から見れば日本列島が蓋をしており宗谷、津軽、対馬、大隅の海峡はチョークポイント
→大航海時代以降の覇権はシーパワー国家が制したが、今の日本は覇権を狙うレベルにはない
→それでも環太平洋やアジア各国へのシーレーンで世界をリードするハブ国家にはなり得る
・尖閣諸島は中国で需要が増える魚介類の宝庫で石油や天然ガスの埋蔵も推測されている
→軍事拠点としても重要で中国に編入すればアメリカに太平洋への進出を邪魔されない
→なので実効支配されてしまえば以後の排除は困難
・沖縄の米軍基地はアメリカの戦略に極めて重要で最高レベルの装備・軍備を有している
→中国の大平洋進出を牽制するキーポイントにあり、ICBMならロシア、中東、オセアニア
まで、全て射程内に収めることができる
→中距離ミサイルでも中国・インド・ロシアとオーストラリアの北半分までを射程内に収める
→現在アメリカは中距離ミサイルをもっておらず、中国は1250発以上をもっている
→2023年には開発配備予定だが、沖縄を含む第一列島線沿いへの配備が位置的に最も適切
→沖縄への中距離ミサイル配備の要請が近い将来にアメリカからあるかもしれない
・韓国と北朝鮮の反日政策(略)
・核シェアリング
→ドイツ・イタリア・オランダ・ベルギー・トルコには航空機搭載型B61タイプの核爆弾
(数は非公表だが100発ほどとされている)が存在する
→各国にシェアリングされた核は米軍が運用するもので各国には使用権も拒否権もない
→日本でも安倍元首相の核共有発言があったが岸田首相は認められないとしている
→シーパワーやランドパワーではなくニュークリアパワー(核兵器)を持った大国アメリカと
大国ソ連との冷戦は終わり両国とも削減したが、ウクライナ侵攻により見直しされるかも・・・
・地政学でひもとく日本史
→近隣に中国という大国が存在するが海流や季節風で独立を保ってきた
→古代4世紀後半から朝鮮半島に介入しシーパワーを発揮していた
→百済と友好関係にあり百済が唐や新羅に圧迫された663年に大軍を送り支援したが敗北、
以後は半島への影響力を失い海外進出はなかった
→1592年と1597年に李氏に明征服の案内を拒否された豊臣秀吉が朝鮮出兵したが敗北
→その後250年の江戸時代は鎖国でランドパワーだったが、明治以降に再び海洋進出へ
→1894年、朝鮮半島の支配権をめぐる日清戦争に勝利
→1904年、朝鮮半島と南満州の支配権をめぐる日露戦争にシーパワー同士の日英同盟で勝利
→1914年、日英同盟で第一次世界大戦で勝利しドイツ領の青島や南洋諸島に侵攻し国力増大
→世界恐慌による経済危機を大陸進出で乗り越えようと1932年に満州国を建国
→1937年からは中国との全面戦争に突入し資源確保と米英の中国支援遮断のためインドシナ半島へ
→それでABCD包囲網により石油などの輸入を封鎖され、1941年12月に太平洋戦争へ突入
→戦争初期はシーパワーが最大限に発揮され、東はギルバート諸島、西はビルマ(ミャンマー)、
南はガダルカナル島、北はアッツ島まで、日本史上で最大の領域を支配下に置いた
(大東亜共栄圏は大義名分で実態は植民地化だった)
→1942年6月ミッドウェー海戦での大敗後は防戦一方になり、1945年8月に敗戦
→戦後の東西冷戦では西側アメリカとの同盟により東側への防波堤となった
→冷戦終了後もアメリカのアジア戦略の重要拠点として中国やロシアににらみを利かせている
はてさて、今後の世界はどうなるんでしょうね・・・
2023年07月15日
華竜の宮
華竜の宮・・・

まずは表紙カバー裏にあった著者紹介から

デビュー作で第4回小松左京賞、本作でベストSF2010・国内編の第1位と、
第32回日本SF大賞を受賞された作家
裏表紙カバーにあった惹句とゆーか、あらすじであります


奥付

2010年10月に刊行された単行本の文庫版ですが、わたくし著者の作品は初読でした
例によって目次のご紹介・・・


以下、プロローグのてきとーな要約・・・
・環太平洋で地震の頻発が続く2017年(本作では7年後の未来ですね)、学術会議を終えた
新進気鋭の学者二人(モデルあり)が、巨大地震で大陸棚が崩壊しメタンハイドレート層から
(二酸化炭素の20倍の温室効果を持つ)メタンガスが発生した場合の海面上昇は8mになるが、
それに続くポリネシア・ホットプルームの上昇による海面上昇は250mに達するはずだと、
議論しているあたりからはじまります
・この理論が現実となり、やがて海の広さは白亜紀なみになって(ウィキによれば白亜紀の
海面上昇は120mとされてますが、プルームテクトニクス理論による本書の設定では258m)、
平野部が大半だった国は機能崩壊、生き残った民族の大移動もあって臨時の海上都市だけでは
限界になり各地で武力衝突がエスカレート、世界はいくつかの連合に分かれて、遺伝子操作
による人工生命体や人工知性体まで使った大殺戮と破壊の時代が続きます
・人類滅亡直前で一応の停戦合意に達したものの、列島から小さな群島と化した日本では、
隙間の人工浮島を合わせても人口は1/10になり、大陸側からの災厄が多かったことから、
反ユーラシア側(アメリカ側)連合の一員になって、名目上の独立は維持しています
(まあ、今も似たようなものか・・・
)
・海は生活空間になり、飼い馴らした巨大海洋生物への寄生に適した人工種族「海上民」が、
巨大サンショウウオに似た「魚舟」で暮らし、各領海を越えて公海にまで進出してますが、
海底に沈んだ都市や工場や研究所などから流出し続ける汚染物質や分子機械などにより、
海洋生物には様々な変異が起きています
(少数になった旧来の人類は「陸上民」と呼ばれるようになっています)
・これが最初のホットプルーム上昇から数百年の歳月が経過した25世紀の世界であり、
「人類の文明と科学技術は後退と進歩、つまり揺り戻しを経験しながら、新しい環境に徐々に
適応していって、人類が迎えた第二の繁栄時代」だったのですが・・・
と、この時代を舞台にした第1部に入って行きます
このプロローグつーか設定説明が、プルームテクトニクス理論や遺伝子操作による人工生命体、
分子レベルの機械進化など、当時最新の研究成果をもとに詳しく描かれてて、さすが本格SF、
これは竹内均教授などによるプレートテクトニクス理論が、まだ仮説だった頃に発表された、
小松左京氏による「日本沈没」と同じパターンで、数々の賞を総ナメしたのもなるほどと納得、
物語世界に惹き込まれていきました
小説なので本編までは紹介できませんが、わたくしの思いつくままの感想・・・
・主人公は優秀有能な外交官だけど、自分の良心に従う行動をして本省の出世街道を外され、
辺境をタライ廻しにされながらも、陸上民と海上民との交渉を続けているのですが、この姿が
とても爽やかで、主人公を陰ながら支援する人たちの姿も爽やか、逆に意思決定する側の汚さ
醜さが際立ってて、その点では気持ちのいい勧善懲悪・海洋冒険モノとして楽しめました
・組織に属する側の理想と現実、自由に生きようとする側の理想と現実が、現代社会の鏡として
未来の極限社会という設定にすることによって、見事に表現されてました
これは戦場という極限状況を設定することによって、究極の人間性を描く戦争映画と同じで、
わたくしがSFや戦争モノの小説や映画が大好きな理由のひとつなのかも知れません
・自然災害や環境破壊と人類の努力、さらに政治の駆け引きから地球生命体のあり方まで、
もちろん水上や水中の戦闘シーンもあって・・・まさに正統派SF小説の真骨頂ですね
ちなみに著者は、文庫版(2012年11月)のあとがきに・・・
・単行本は2010年10月、その後の2011年3月に東日本大震災があり、しばしばコメントを
求められたが、殆どのコメントを控えさせてもらっている
・自分は1995年1月の阪神淡路大震災の際、神戸に住んでいて震災の影響で家族を亡くしている
・なので本作は1995年当時の社会状況に対する返歌として書かれている部分がある
・個人の体験から人類としての未来を幻視するという、SF特有の発想で書かれた作品だが、
小説とはそのような要素だけで書けるものではない
・海洋世界への憧れ、地球や生命の不思議に対する感動、ヒトと他知性と機械の理想的な
共生関係など、SFの形をとったロマンティシズムの横溢する作品で、こちらのほうこそ
読者の心に残りますように・・・
・たぶん、空想する心、想像する心こそが、私たちが生きるこの情けない現実に対する、
最も強力なカウンターブローに成り得るのですから・・・
といった内容を書かれてましたが、なるほどと納得しました
さらに、物語を一人称で語るのは主人公のアシスタント知性体(ネットワーク上の仮想人格)で、
常に繋がっている主人公との脳内会話や他のアシスタント知性体との会話でも物語を進めて
いくのですが、このような小説手法は今回はじめて知りました
で、読み終わってから、この作品が10年以上前に書かれていることに、あらためて驚きました
そう、ChatGPTなどの普及でパーソナルAIつーのが、ごく身近に感じられる現時点では、
この手法に全く違和感はないけど、10年以上前ならどうだったかと・・・

まずは表紙カバー裏にあった著者紹介から

デビュー作で第4回小松左京賞、本作でベストSF2010・国内編の第1位と、
第32回日本SF大賞を受賞された作家
裏表紙カバーにあった惹句とゆーか、あらすじであります


奥付

2010年10月に刊行された単行本の文庫版ですが、わたくし著者の作品は初読でした
例によって目次のご紹介・・・


以下、プロローグのてきとーな要約・・・
・環太平洋で地震の頻発が続く2017年(本作では7年後の未来ですね)、学術会議を終えた
新進気鋭の学者二人(モデルあり)が、巨大地震で大陸棚が崩壊しメタンハイドレート層から
(二酸化炭素の20倍の温室効果を持つ)メタンガスが発生した場合の海面上昇は8mになるが、
それに続くポリネシア・ホットプルームの上昇による海面上昇は250mに達するはずだと、
議論しているあたりからはじまります
・この理論が現実となり、やがて海の広さは白亜紀なみになって(ウィキによれば白亜紀の
海面上昇は120mとされてますが、プルームテクトニクス理論による本書の設定では258m)、
平野部が大半だった国は機能崩壊、生き残った民族の大移動もあって臨時の海上都市だけでは
限界になり各地で武力衝突がエスカレート、世界はいくつかの連合に分かれて、遺伝子操作
による人工生命体や人工知性体まで使った大殺戮と破壊の時代が続きます
・人類滅亡直前で一応の停戦合意に達したものの、列島から小さな群島と化した日本では、
隙間の人工浮島を合わせても人口は1/10になり、大陸側からの災厄が多かったことから、
反ユーラシア側(アメリカ側)連合の一員になって、名目上の独立は維持しています
(まあ、今も似たようなものか・・・

・海は生活空間になり、飼い馴らした巨大海洋生物への寄生に適した人工種族「海上民」が、
巨大サンショウウオに似た「魚舟」で暮らし、各領海を越えて公海にまで進出してますが、
海底に沈んだ都市や工場や研究所などから流出し続ける汚染物質や分子機械などにより、
海洋生物には様々な変異が起きています
(少数になった旧来の人類は「陸上民」と呼ばれるようになっています)
・これが最初のホットプルーム上昇から数百年の歳月が経過した25世紀の世界であり、
「人類の文明と科学技術は後退と進歩、つまり揺り戻しを経験しながら、新しい環境に徐々に
適応していって、人類が迎えた第二の繁栄時代」だったのですが・・・
と、この時代を舞台にした第1部に入って行きます
このプロローグつーか設定説明が、プルームテクトニクス理論や遺伝子操作による人工生命体、
分子レベルの機械進化など、当時最新の研究成果をもとに詳しく描かれてて、さすが本格SF、
これは竹内均教授などによるプレートテクトニクス理論が、まだ仮説だった頃に発表された、
小松左京氏による「日本沈没」と同じパターンで、数々の賞を総ナメしたのもなるほどと納得、
物語世界に惹き込まれていきました
小説なので本編までは紹介できませんが、わたくしの思いつくままの感想・・・
・主人公は優秀有能な外交官だけど、自分の良心に従う行動をして本省の出世街道を外され、
辺境をタライ廻しにされながらも、陸上民と海上民との交渉を続けているのですが、この姿が
とても爽やかで、主人公を陰ながら支援する人たちの姿も爽やか、逆に意思決定する側の汚さ
醜さが際立ってて、その点では気持ちのいい勧善懲悪・海洋冒険モノとして楽しめました
・組織に属する側の理想と現実、自由に生きようとする側の理想と現実が、現代社会の鏡として
未来の極限社会という設定にすることによって、見事に表現されてました
これは戦場という極限状況を設定することによって、究極の人間性を描く戦争映画と同じで、
わたくしがSFや戦争モノの小説や映画が大好きな理由のひとつなのかも知れません
・自然災害や環境破壊と人類の努力、さらに政治の駆け引きから地球生命体のあり方まで、
もちろん水上や水中の戦闘シーンもあって・・・まさに正統派SF小説の真骨頂ですね
ちなみに著者は、文庫版(2012年11月)のあとがきに・・・
・単行本は2010年10月、その後の2011年3月に東日本大震災があり、しばしばコメントを
求められたが、殆どのコメントを控えさせてもらっている
・自分は1995年1月の阪神淡路大震災の際、神戸に住んでいて震災の影響で家族を亡くしている
・なので本作は1995年当時の社会状況に対する返歌として書かれている部分がある
・個人の体験から人類としての未来を幻視するという、SF特有の発想で書かれた作品だが、
小説とはそのような要素だけで書けるものではない
・海洋世界への憧れ、地球や生命の不思議に対する感動、ヒトと他知性と機械の理想的な
共生関係など、SFの形をとったロマンティシズムの横溢する作品で、こちらのほうこそ
読者の心に残りますように・・・
・たぶん、空想する心、想像する心こそが、私たちが生きるこの情けない現実に対する、
最も強力なカウンターブローに成り得るのですから・・・
といった内容を書かれてましたが、なるほどと納得しました
さらに、物語を一人称で語るのは主人公のアシスタント知性体(ネットワーク上の仮想人格)で、
常に繋がっている主人公との脳内会話や他のアシスタント知性体との会話でも物語を進めて
いくのですが、このような小説手法は今回はじめて知りました
で、読み終わってから、この作品が10年以上前に書かれていることに、あらためて驚きました
そう、ChatGPTなどの普及でパーソナルAIつーのが、ごく身近に感じられる現時点では、
この手法に全く違和感はないけど、10年以上前ならどうだったかと・・・
2023年06月02日
「遊ぶ」が勝ち
まだ台風2号による洪水警報・大雨注意報が発令中の大阪からですが、今回はお外で・・・
「遊ぶ」が勝ち・・・とゆー本のご紹介であります

Playing is a smart way・・・
表紙カバー裏にあった著者紹介

奥付


新装版・前書きからの読後メモ・・・
→英語で陸上競技場はplaygroundだし「スポーツをする」は play○○○○で、スポーツの本質は遊ぶこと
→本を上梓したのが2013年で7年たった今は、さらに効率的に真面目にを求める圧力が強くなっている
→「ホモ・ルーデンス」は僕の愛読書だが、その中に日本人は遊び上手だったという記述がある
→近代化する中で薄れているが、遊ぶ心は眠っているはずなので今一度呼び戻そう
→本書がそのきっかけになってくれたら嬉しい・・・
この新装版発行から3年なので最初の上梓は今から10年前、著者は引き続き活躍されてるようですが、
コロナ禍では運動会やお祭りは中止になって東京五輪は開催、キャンプがブームになったりしました
コロナ後の「遊び」の状況は、今後どのように変化していくのでしょう・・・
わたくしも「ホモ・ルーデンス」は愛読書つーか、若い頃に興味深く読んだ覚えがあります
著者も書いてましたが、文庫版でも分厚い哲学の専門書で確かにとっつきにくかったです
この本には著者なりの「ホモ・ルーデンス」の解釈もあり、さすがにプロ・アスリートの経験と発想だと
感心しましたが、本の内容をすっかり忘れてたので分かりやすい復習にもなりました
子どもの頃に身体を使った遊びをすることと自分で遊びを工夫することは、とても大事なことかも知れません
わたくしは生まれも育ちも大阪の下町ですが、まだ近所に遊べる空き地や廃墟が残ってる時代だったし、
母親の郷が泉州で、当時は田畑や山林もいっぱい残ってたので、けっこう屋外で遊んだほうだと思います
まあ、中学ぐらいまでずっと「秘密基地ごっこ」や「戦争ごっこ」がメインでしたが・・・
今ならサバイバルゲームをフィールド作り、道具作り、ルール作りまで全部自分たちでやってたようなもの
それで高校からは山歩きやキャンプ好きになり、社会人になってからはスキーや川下りなどが加わり、
やがてマルイの電動ガンが登場して一時期はサバイバルゲームに夢中でしたから、幅広い遊びとゆーより
子どもの頃からのアウトドア遊びがずっと続いてたことになりますね
なので球技には全く無縁・・・って、そーいやサバゲーは6mmBB弾を使う球技なのかっ???
以前も書きましたが、サバゲーつーのは究極の「ごっこ遊び」スポーツだと今も思ってます
球技としてはドッジボールに似てますが、はるかにリアルでフィールドも野山の自然地形がメイン、
仲間内ならルールやレギュレーションは自由に決められるけど、それを守ることが絶対条件になり、
あとは自分の役柄になり切って、自分の身体と頭と技術を極限まで使って何とか生き延びる、あるいは
チームとして敵に勝利する、その行為自体を目的として仲間と楽しむので、ハマると夢中になる・・・
これは他の球技にも共通するんでしょうが「ごっこ遊び」スポーツとしては、おそらく究極でしょう
閑話休題
例によって目次のみのご紹介




ハードル選手らしい目次構成であります・・・
「助走路」の読後メモから・・・(以下、正しくは本書をお読みくださいね)
・ヨハン・ホイジンガ著「ホモ・ルーデンス」のまとめ(略)
・僕の競技人生のスタートは「走りたいから走る」喜びだった
→やがて「走ると女の子にモテる」「走れると進学できる」になり、
→「プロになればお金が儲かる」「勝てば名誉が手に入る」「有名人になる」の世界へ・・・
→とうとう「手に入れたものを失うのが怖い」世界が到来した
→その時すでに「結果を出せるから走る意味がある」というモデル自体が崩れかけていた
→それでも走った時、走る根本には喜びがあることが見えたから、走り続けることができた
→遊びは楽しい→スポーツでも人生でも「遊ぶが勝ち」・・・
「第1ハードル」からの読後メモ・・・
・高校3年で短距離では伸びず400mハードルに転向したが、心の葛藤は大学4年間続いていた
→人生には「仮置き」や「仮決め」があってもいいのではないか
→視点をずらすという、遊びの感覚で余白、ゆるみ、隙間を作ることが大事
・目の前の出来事は一時的な約束事で回っているに過ぎない
→それが全てじゃないと距離を取れば人生は概ね何とかなる
・「遊び」も「演じる」も「競技する」も英語ではPLAY→何かのために走ってはいけない
→外から期待されることに遊びの要素は入りにくい
→自分ではじめた能動的な作業なら遊びの感覚や楽しさを持ちやすい
→遊びには自発性が関係している→自由な行動
→「したい」と「しなくては」の差→義務化すれば楽しくない
→「ねばならない」の過去をいったん「なかったこと」にしてゼロからスタートする・・・
・スランプ脱出には「考えないこと」も重要
→遊びの世界に没頭した瞬間を思い出すこと→ZONEの状態
・当時の日本では選手が「オリンピックを楽しんできます」なんて言えない状態だった
→ところが選手村での海外選手は楽しんでいるように見えた
→結果的に彼らはいきいきと楽しく良い結果を出していた
・ハードルに転向して海外で東洋の無名選手として走る際は演じなくてもいいので楽だった
→また走るのが楽しくなった→日本の陸上界はまだまだ硬い空気だった
・「努力を実現するために人間に先天的に与えられている機能、それが遊び」(ホイジンガ)
→なので楽しさを殺しては絶対にダメ
→これを言葉に出して肯定できたのは、この本(ホモ・ルーデンス)に出合ってから
「第2ハードル」からの読後メモ・・・
・遊びのヘンな感じの身体感覚、トライ&エラーの楽しさ、夢中になるスイッチ・・・(略)
・枠組みの中で遊ぶのが楽しい人も、枠組みそのものを設計するのが楽しい人もいる
→「型にはめる」教え方をするなら「型を脱する」方法も一緒に教えることが絶対に必要
・日本のスポーツ選手の多くが多彩な身体経験をしていない→大学からは伸びない選手が多い
→アメリカでは多種多様なスポーツ経験からアスリートになり、ロシアでは基幹スポーツの体操から
枝葉が伸びていくので逆だが、どちらも自由度や広がりが貴重な体験になっている
・ハンマー投げとゴルフのインパクト、高跳びの踏み切りとサルサの感覚は同じだった
→子どもの頃に自転車に乗った感覚のように運動感覚は風化しない
→運動神経が開発される10歳ぐらいまでに様々に身体を動かす経験を蓄積すること
→それが子どもの遊び
・自転車を漕ぐ時は景色に没頭している方が早く漕げたりする
→これは意識で身体を動かすより感覚で身体が動いてしまうほうがスムースになる一例
・遊びで役を演じている自分を楽しむ→ごっこ遊びや仮面劇
→仮面で自分が消えるということは「こうふるまうべき」という自分の役割も消えること
→他人の目を気にせず熱中できる→ZONEの超集中状態にも通じる
→スポーツ選手は外見や形によって意識・精神も変わることに注意すべき
→試合前に意識的に勝負顔を作る
→昔の宗教的な仮面や顔面ペイントと同じでトランス状態や別人格のきっかけになる
・役割そのものを遊ぶということは日本人が得意なジャンルかも
→落語のように演じ分けることも得意で、関係性が変わってもあまり気にしない
→そのタイミングを上手に読み切ることが求められる→「空気を読む」
→ツイッターなどで一人あたりのアカウント数が多いのも日本の特徴で、欧米などとは逆
→演技的、多重人格的な感性は遊び感覚で、これはこれで面白い
→ひとつの自分にしがみつかない軽やかさを、もっと自分の力に変えていけばいいのにと思う
・自分とは何か
→引退前の4年間、アメリカのパラリンピリアンと同じグラウンドにいた
→義足を自分の身体の一部とし、視覚障害の選手はリズムで距離を測っていた
→身体感覚を極めていくと、まだまだ使っていない感覚があることに気づく・・・
「第3ハードル」からの読後メモ・・・
・広島生まれで幼い頃に原爆について立場の違う意見があることを知らされ困惑する体験をした
→とりあえず選択せざるを得ない際でも、立場を変えて批評的に見る態度が大事
→コミュニケーションの重要性
→身体で感じたことを言語にするのは難しいがツイッターで発信し続けている
→自分との会話が好きなので外部化するいい機会になっている
→伝えようとする行為はコミュニケーション的な遊びに近い
→ツイッターやSNSにハマるのは予測がつかず変化に対応できることが嬉しく面白く楽しいから
→僕にとっては大いなる遊び
・獲れると決まっているメダルを獲りに行くなら仕事(作業)で、不確実な緊張があるから面白い遊び
・熱狂の中に身を置くことは楽しいがクールダウンも大事
→コミュニケーションを「いかにとらないか」もコミュニケーション力の一つかも
・日米の距離の取り方の違い
→アメリカでは議論を楽しむディベートが娯楽になっている
→日本では相手と共感したり同調しがちになる
→日本人は「私」という主語のないところで遊ぶのが上手
→これは強さにも弱さにもなる
→リーダーのいないチームスポーツや渋滞時などでは、みんなが空気を読んで対応するので有利
→言語を介さないコミュニケーション術を日本の特性として磨いて戦術化すべき
・知恵の輪は外し方を考えるから楽しく、遊びとして成立する
→説明書があったり、あきらめてしまえば遊びは不成立
→外しても意味はなく報酬もない→レースに勝つのと同じ→1番になることが面白いだけ
・認識の違う世界でのコミュニケーションは互いに橋を架けることから始めるしかない
→完璧ではなくとも何とか架かって、互いが理解できそうになる瞬間ほど面白いものはない
(特にこの言葉に感動しました。経験から出た素直で素晴らしい言葉だと思います)
「第4ハードル」からの読後メモ・・・
・知識と体感のバランスをとることは難しい
→スランプに陥る選手の傾向は体感の量が少ないこと
→「気持ちいい/よくない」の境目が判断できないのは知識の詰め込み過ぎ
→大切なのは「気持ちよかった時の感覚」が記憶できているかどうか
→海外では読書、散歩、練習、読書の繰り返しで、頭と身体のバランスが心地よく流れていた
→役立つかどうかも分からず好奇心を満たしワクワクしたくて本を読んだ
→僕にとって走ることと本を読むことは似ている
・タオイズム(道教)、禅宗の世界観→意識しないで身体が動く→そのための教養(略)
・応用領域は遊びの領域
→発想力を磨き新しい方法をクリエイトすること
→強さは反復や基本の先にあるもの
・スポーツの根本は遊び
→だからこそ自分から努力し鍛錬する自発性が不可欠
→遊びもスポーツも本来は自発的な行為で目的は行為そのもの
→この視点を日本のスポーツ界が取り入れれば、選手の育成方法も、コーチと選手の関係も、
暴力による体罰も、必ず変化していくだろう
・俳句と欧米スポーツの共通点
→俳句には季語や五七五などのルールがある
→最初はルールに縛られ当然うまく作れない
→知識を増やし観察した風景を言葉に置き換える練習を続けながら磨きをかけていく
→仲間同士で評価し合うので緊張感もあり、比べられ優劣をつけるという競技性もある
→だが、俳句の基本は楽しさということは自然に共有されて浸透している
→だから、うまく作れた時もそうでない時も、その場は楽しさに満ちているのだろう
→スポーツもそうあってほしい
・クラブチームなら目的をはっきり掲げることができる
→人格形成、人と繋がること、日本の頂点に立つなど、様々な目的があってもいい
→それぞれがスポーツを自分の目的に沿って選択できる環境を整えることが基本
→句会のようにスポーツをもっと楽しむための会が各地域に作られる必要がある
→みんなが遊びとして俳句を楽しむ中で俳句文化が育ち磨かれたのではないか
・ツイッター上では辛辣なのにリアルではおとなしくなり、表面上の言葉しか出てこない
→本音を言おうとしない、議論が得意ではない
→その文化も素晴らしいが、世界が舞台では自分の意思を表示する必要に迫られる
→挙手でもツイッターでもいいので、まずは自分の考えをまとめて公にする訓練が大事
・学習の究極の形態は遊び
→遊びながら学ぶ、学びながら遊ぶ
→教養と遊びを融合させるような場になればと「為末大学」を続けている
「第5ハードル」からの読後メモ・・・
・仕事と遊びの違い
→欧州グランプリでは入賞賞金だけで生計を立てているプロもいた
→1位なら150万、2位なら100万といったシンプルなゲーム
→自分は大阪ガスの会社員選手だったので給料もカリキュラムも生活も安定していて確実だった
→ホイジンガによる遊びの要素は緊張、不確実、不安定性
→プロ選手は会社員に比べ格段に遊び的だったので賞金やスポンサー収入だけのプロになった
・アスリート外交、スポーツ交流の役割は大きい
→反日の雰囲気だった中国でも卓球・福原愛さんの人気は絶大で日本人への親近感が維持されていた
→もともと貴族の種目である近代五種やカヌー、フェンシングなどは外交上大きな力を発揮する
・引退後のセカンドキャリア
→サンク・コスト→なかったものとして考える→念を継がない
→競技の結果とは、ただ遊ぶ者自身の問題である(ホイジンガ)
→遊びが成功した、うまくいったという観念的事実である(ホイジンガ)
→遊びの成功は遊ぶ者に暫く持続する満足をもたらす(ホイジンガ)
→スポーツ選手にとって成功体験が大きいと、その体験が忘れられなくなり次の一歩の障害になる
・火焔型縄文土器からルイ・ヴィトンのバッグまで、ムダは遊びであり文化でもある
→生きることと遊びは分かちがたく結びついている
・ネイティブアメリカンの通過儀礼の例(略)
→僕にとっては遊びの時間が身体的体験を積み重ねていく通過儀礼だった
→無意識の中で獲得していく体感的な学びを子どもたちに何としても伝えたい
→今後も増える廃校を利用したキャンプや山歩きなど、身体的経験のできるプログラムを考えている
「ゴール」からの読後メモ・・・
・ジャマイカの19歳以下を対象とした陸上大会はテレビ視聴率が80%を超える
→彼らはひたすら早く走ることを楽しんでいる→ジャマイカが短距離王国になるはず
→「ホモ・ルーデンス」の世界は競技を始めた頃に僕が感じていた世界そのものだった
・遊びは真面目と共存しうる→何かに熱中すること
→遊びは遊び自体が目的で自主的であり義務感に弱い
→これまでの社会は人が淡々と作業をこなすことで産業が成り立ってきた
→今後はテクノロジーの発展で人の作業的部分は減っていく
(21世紀後半にはプロ・アスリートとプロ・アドベンチャーツアラー以外に肉体的労働で対価を得る人は、
ほとんどいなくなると、こちらの本にありましたね
)
→作業に遊び感は組み込みにくいがイノベーションやクリエイティビリティが大事な時代になる
→これらには遊び感が大きく影響してくる
→人間にしかできないことが求められるとしたら、遊びの五感的な直感と楽しい気持ちがヒント
・人間とは遊びたいもので、遊ぶことにより人間らしくなると思っている
・・・
いやあ、プロ・アスリートの世界なんて全く別世界と思ってましたが、大いに共感しました
「遊ぶ」が勝ち・・・とゆー本のご紹介であります

Playing is a smart way・・・
表紙カバー裏にあった著者紹介

奥付


新装版・前書きからの読後メモ・・・
→英語で陸上競技場はplaygroundだし「スポーツをする」は play○○○○で、スポーツの本質は遊ぶこと
→本を上梓したのが2013年で7年たった今は、さらに効率的に真面目にを求める圧力が強くなっている
→「ホモ・ルーデンス」は僕の愛読書だが、その中に日本人は遊び上手だったという記述がある
→近代化する中で薄れているが、遊ぶ心は眠っているはずなので今一度呼び戻そう
→本書がそのきっかけになってくれたら嬉しい・・・
この新装版発行から3年なので最初の上梓は今から10年前、著者は引き続き活躍されてるようですが、
コロナ禍では運動会やお祭りは中止になって東京五輪は開催、キャンプがブームになったりしました
コロナ後の「遊び」の状況は、今後どのように変化していくのでしょう・・・
わたくしも「ホモ・ルーデンス」は愛読書つーか、若い頃に興味深く読んだ覚えがあります
著者も書いてましたが、文庫版でも分厚い哲学の専門書で確かにとっつきにくかったです
この本には著者なりの「ホモ・ルーデンス」の解釈もあり、さすがにプロ・アスリートの経験と発想だと
感心しましたが、本の内容をすっかり忘れてたので分かりやすい復習にもなりました
子どもの頃に身体を使った遊びをすることと自分で遊びを工夫することは、とても大事なことかも知れません
わたくしは生まれも育ちも大阪の下町ですが、まだ近所に遊べる空き地や廃墟が残ってる時代だったし、
母親の郷が泉州で、当時は田畑や山林もいっぱい残ってたので、けっこう屋外で遊んだほうだと思います
まあ、中学ぐらいまでずっと「秘密基地ごっこ」や「戦争ごっこ」がメインでしたが・・・
今ならサバイバルゲームをフィールド作り、道具作り、ルール作りまで全部自分たちでやってたようなもの

それで高校からは山歩きやキャンプ好きになり、社会人になってからはスキーや川下りなどが加わり、
やがてマルイの電動ガンが登場して一時期はサバイバルゲームに夢中でしたから、幅広い遊びとゆーより
子どもの頃からのアウトドア遊びがずっと続いてたことになりますね
なので球技には全く無縁・・・って、そーいやサバゲーは6mmBB弾を使う球技なのかっ???
以前も書きましたが、サバゲーつーのは究極の「ごっこ遊び」スポーツだと今も思ってます
球技としてはドッジボールに似てますが、はるかにリアルでフィールドも野山の自然地形がメイン、
仲間内ならルールやレギュレーションは自由に決められるけど、それを守ることが絶対条件になり、
あとは自分の役柄になり切って、自分の身体と頭と技術を極限まで使って何とか生き延びる、あるいは
チームとして敵に勝利する、その行為自体を目的として仲間と楽しむので、ハマると夢中になる・・・
これは他の球技にも共通するんでしょうが「ごっこ遊び」スポーツとしては、おそらく究極でしょう
閑話休題
例によって目次のみのご紹介




ハードル選手らしい目次構成であります・・・

「助走路」の読後メモから・・・(以下、正しくは本書をお読みくださいね)
・ヨハン・ホイジンガ著「ホモ・ルーデンス」のまとめ(略)
・僕の競技人生のスタートは「走りたいから走る」喜びだった
→やがて「走ると女の子にモテる」「走れると進学できる」になり、
→「プロになればお金が儲かる」「勝てば名誉が手に入る」「有名人になる」の世界へ・・・
→とうとう「手に入れたものを失うのが怖い」世界が到来した
→その時すでに「結果を出せるから走る意味がある」というモデル自体が崩れかけていた
→それでも走った時、走る根本には喜びがあることが見えたから、走り続けることができた
→遊びは楽しい→スポーツでも人生でも「遊ぶが勝ち」・・・
「第1ハードル」からの読後メモ・・・
・高校3年で短距離では伸びず400mハードルに転向したが、心の葛藤は大学4年間続いていた
→人生には「仮置き」や「仮決め」があってもいいのではないか
→視点をずらすという、遊びの感覚で余白、ゆるみ、隙間を作ることが大事
・目の前の出来事は一時的な約束事で回っているに過ぎない
→それが全てじゃないと距離を取れば人生は概ね何とかなる
・「遊び」も「演じる」も「競技する」も英語ではPLAY→何かのために走ってはいけない
→外から期待されることに遊びの要素は入りにくい
→自分ではじめた能動的な作業なら遊びの感覚や楽しさを持ちやすい
→遊びには自発性が関係している→自由な行動
→「したい」と「しなくては」の差→義務化すれば楽しくない
→「ねばならない」の過去をいったん「なかったこと」にしてゼロからスタートする・・・
・スランプ脱出には「考えないこと」も重要
→遊びの世界に没頭した瞬間を思い出すこと→ZONEの状態
・当時の日本では選手が「オリンピックを楽しんできます」なんて言えない状態だった
→ところが選手村での海外選手は楽しんでいるように見えた
→結果的に彼らはいきいきと楽しく良い結果を出していた
・ハードルに転向して海外で東洋の無名選手として走る際は演じなくてもいいので楽だった
→また走るのが楽しくなった→日本の陸上界はまだまだ硬い空気だった
・「努力を実現するために人間に先天的に与えられている機能、それが遊び」(ホイジンガ)
→なので楽しさを殺しては絶対にダメ
→これを言葉に出して肯定できたのは、この本(ホモ・ルーデンス)に出合ってから
「第2ハードル」からの読後メモ・・・
・遊びのヘンな感じの身体感覚、トライ&エラーの楽しさ、夢中になるスイッチ・・・(略)
・枠組みの中で遊ぶのが楽しい人も、枠組みそのものを設計するのが楽しい人もいる
→「型にはめる」教え方をするなら「型を脱する」方法も一緒に教えることが絶対に必要
・日本のスポーツ選手の多くが多彩な身体経験をしていない→大学からは伸びない選手が多い
→アメリカでは多種多様なスポーツ経験からアスリートになり、ロシアでは基幹スポーツの体操から
枝葉が伸びていくので逆だが、どちらも自由度や広がりが貴重な体験になっている
・ハンマー投げとゴルフのインパクト、高跳びの踏み切りとサルサの感覚は同じだった
→子どもの頃に自転車に乗った感覚のように運動感覚は風化しない
→運動神経が開発される10歳ぐらいまでに様々に身体を動かす経験を蓄積すること
→それが子どもの遊び
・自転車を漕ぐ時は景色に没頭している方が早く漕げたりする
→これは意識で身体を動かすより感覚で身体が動いてしまうほうがスムースになる一例
・遊びで役を演じている自分を楽しむ→ごっこ遊びや仮面劇
→仮面で自分が消えるということは「こうふるまうべき」という自分の役割も消えること
→他人の目を気にせず熱中できる→ZONEの超集中状態にも通じる
→スポーツ選手は外見や形によって意識・精神も変わることに注意すべき
→試合前に意識的に勝負顔を作る
→昔の宗教的な仮面や顔面ペイントと同じでトランス状態や別人格のきっかけになる
・役割そのものを遊ぶということは日本人が得意なジャンルかも
→落語のように演じ分けることも得意で、関係性が変わってもあまり気にしない
→そのタイミングを上手に読み切ることが求められる→「空気を読む」
→ツイッターなどで一人あたりのアカウント数が多いのも日本の特徴で、欧米などとは逆
→演技的、多重人格的な感性は遊び感覚で、これはこれで面白い
→ひとつの自分にしがみつかない軽やかさを、もっと自分の力に変えていけばいいのにと思う
・自分とは何か
→引退前の4年間、アメリカのパラリンピリアンと同じグラウンドにいた
→義足を自分の身体の一部とし、視覚障害の選手はリズムで距離を測っていた
→身体感覚を極めていくと、まだまだ使っていない感覚があることに気づく・・・
「第3ハードル」からの読後メモ・・・
・広島生まれで幼い頃に原爆について立場の違う意見があることを知らされ困惑する体験をした
→とりあえず選択せざるを得ない際でも、立場を変えて批評的に見る態度が大事
→コミュニケーションの重要性
→身体で感じたことを言語にするのは難しいがツイッターで発信し続けている
→自分との会話が好きなので外部化するいい機会になっている
→伝えようとする行為はコミュニケーション的な遊びに近い
→ツイッターやSNSにハマるのは予測がつかず変化に対応できることが嬉しく面白く楽しいから
→僕にとっては大いなる遊び
・獲れると決まっているメダルを獲りに行くなら仕事(作業)で、不確実な緊張があるから面白い遊び
・熱狂の中に身を置くことは楽しいがクールダウンも大事
→コミュニケーションを「いかにとらないか」もコミュニケーション力の一つかも
・日米の距離の取り方の違い
→アメリカでは議論を楽しむディベートが娯楽になっている
→日本では相手と共感したり同調しがちになる
→日本人は「私」という主語のないところで遊ぶのが上手
→これは強さにも弱さにもなる
→リーダーのいないチームスポーツや渋滞時などでは、みんなが空気を読んで対応するので有利
→言語を介さないコミュニケーション術を日本の特性として磨いて戦術化すべき
・知恵の輪は外し方を考えるから楽しく、遊びとして成立する
→説明書があったり、あきらめてしまえば遊びは不成立
→外しても意味はなく報酬もない→レースに勝つのと同じ→1番になることが面白いだけ
・認識の違う世界でのコミュニケーションは互いに橋を架けることから始めるしかない
→完璧ではなくとも何とか架かって、互いが理解できそうになる瞬間ほど面白いものはない
(特にこの言葉に感動しました。経験から出た素直で素晴らしい言葉だと思います)
「第4ハードル」からの読後メモ・・・
・知識と体感のバランスをとることは難しい
→スランプに陥る選手の傾向は体感の量が少ないこと
→「気持ちいい/よくない」の境目が判断できないのは知識の詰め込み過ぎ
→大切なのは「気持ちよかった時の感覚」が記憶できているかどうか
→海外では読書、散歩、練習、読書の繰り返しで、頭と身体のバランスが心地よく流れていた
→役立つかどうかも分からず好奇心を満たしワクワクしたくて本を読んだ
→僕にとって走ることと本を読むことは似ている
・タオイズム(道教)、禅宗の世界観→意識しないで身体が動く→そのための教養(略)
・応用領域は遊びの領域
→発想力を磨き新しい方法をクリエイトすること
→強さは反復や基本の先にあるもの
・スポーツの根本は遊び
→だからこそ自分から努力し鍛錬する自発性が不可欠
→遊びもスポーツも本来は自発的な行為で目的は行為そのもの
→この視点を日本のスポーツ界が取り入れれば、選手の育成方法も、コーチと選手の関係も、
暴力による体罰も、必ず変化していくだろう
・俳句と欧米スポーツの共通点
→俳句には季語や五七五などのルールがある
→最初はルールに縛られ当然うまく作れない
→知識を増やし観察した風景を言葉に置き換える練習を続けながら磨きをかけていく
→仲間同士で評価し合うので緊張感もあり、比べられ優劣をつけるという競技性もある
→だが、俳句の基本は楽しさということは自然に共有されて浸透している
→だから、うまく作れた時もそうでない時も、その場は楽しさに満ちているのだろう
→スポーツもそうあってほしい
・クラブチームなら目的をはっきり掲げることができる
→人格形成、人と繋がること、日本の頂点に立つなど、様々な目的があってもいい
→それぞれがスポーツを自分の目的に沿って選択できる環境を整えることが基本
→句会のようにスポーツをもっと楽しむための会が各地域に作られる必要がある
→みんなが遊びとして俳句を楽しむ中で俳句文化が育ち磨かれたのではないか
・ツイッター上では辛辣なのにリアルではおとなしくなり、表面上の言葉しか出てこない
→本音を言おうとしない、議論が得意ではない
→その文化も素晴らしいが、世界が舞台では自分の意思を表示する必要に迫られる
→挙手でもツイッターでもいいので、まずは自分の考えをまとめて公にする訓練が大事
・学習の究極の形態は遊び
→遊びながら学ぶ、学びながら遊ぶ
→教養と遊びを融合させるような場になればと「為末大学」を続けている
「第5ハードル」からの読後メモ・・・
・仕事と遊びの違い
→欧州グランプリでは入賞賞金だけで生計を立てているプロもいた
→1位なら150万、2位なら100万といったシンプルなゲーム
→自分は大阪ガスの会社員選手だったので給料もカリキュラムも生活も安定していて確実だった
→ホイジンガによる遊びの要素は緊張、不確実、不安定性
→プロ選手は会社員に比べ格段に遊び的だったので賞金やスポンサー収入だけのプロになった
・アスリート外交、スポーツ交流の役割は大きい
→反日の雰囲気だった中国でも卓球・福原愛さんの人気は絶大で日本人への親近感が維持されていた
→もともと貴族の種目である近代五種やカヌー、フェンシングなどは外交上大きな力を発揮する
・引退後のセカンドキャリア
→サンク・コスト→なかったものとして考える→念を継がない
→競技の結果とは、ただ遊ぶ者自身の問題である(ホイジンガ)
→遊びが成功した、うまくいったという観念的事実である(ホイジンガ)
→遊びの成功は遊ぶ者に暫く持続する満足をもたらす(ホイジンガ)
→スポーツ選手にとって成功体験が大きいと、その体験が忘れられなくなり次の一歩の障害になる
・火焔型縄文土器からルイ・ヴィトンのバッグまで、ムダは遊びであり文化でもある
→生きることと遊びは分かちがたく結びついている
・ネイティブアメリカンの通過儀礼の例(略)
→僕にとっては遊びの時間が身体的体験を積み重ねていく通過儀礼だった
→無意識の中で獲得していく体感的な学びを子どもたちに何としても伝えたい
→今後も増える廃校を利用したキャンプや山歩きなど、身体的経験のできるプログラムを考えている
「ゴール」からの読後メモ・・・
・ジャマイカの19歳以下を対象とした陸上大会はテレビ視聴率が80%を超える
→彼らはひたすら早く走ることを楽しんでいる→ジャマイカが短距離王国になるはず
→「ホモ・ルーデンス」の世界は競技を始めた頃に僕が感じていた世界そのものだった
・遊びは真面目と共存しうる→何かに熱中すること
→遊びは遊び自体が目的で自主的であり義務感に弱い
→これまでの社会は人が淡々と作業をこなすことで産業が成り立ってきた
→今後はテクノロジーの発展で人の作業的部分は減っていく
(21世紀後半にはプロ・アスリートとプロ・アドベンチャーツアラー以外に肉体的労働で対価を得る人は、
ほとんどいなくなると、こちらの本にありましたね

→作業に遊び感は組み込みにくいがイノベーションやクリエイティビリティが大事な時代になる
→これらには遊び感が大きく影響してくる
→人間にしかできないことが求められるとしたら、遊びの五感的な直感と楽しい気持ちがヒント
・人間とは遊びたいもので、遊ぶことにより人間らしくなると思っている
・・・
いやあ、プロ・アスリートの世界なんて全く別世界と思ってましたが、大いに共感しました