自然観察

2023年08月10日

瀕死の林業

瀕死の林業・・・

ええ、

P8053935

月刊誌「Wedgeウェッジ」2023年6月号の特集記事であります



この特集部分の目次のみ

P8053936


例によって、てきとーな読後メモで思い違いもあり、図表なども一切紹介してませんので、
興味を持たれた方は本書をしっかり読んでくださいね

まずは編集部による現状つーか問題提起より

・4/14の花粉症に関する関係閣僚会議でスギの伐採加速化も掲げられた
(
日本の林業・林政はこうした政治発言に左右されてきた歴史がある)
→林業の成長産業化+カーボンニュートラルの潮流

・生産量や自給率など統計上の数値は改善しているが現場は全く違う
→成長産業化の結果は供給過多による価格低下→資金不足で3割しか再造林できていない
→総額3000億の補助金の活用方法の再検討が必要→今は補助金獲得自体が目的になっている

・目先の成長を追い求め「持続可能な森林管理」に逆行している
→まさに「木を見て森を見ず」そのものの林政

・現場では森林所有者、森林組合、製材加工業者などに新しい取り組みを始める改革者もいる

・瀕死の林業を再生する処方箋とは・・・


Part1より

・森林の持つ防災機能からも森林再生がいわれるが異常降雨時には森林も被害者になる
→日本の森林再生はすでに達成している
→いっぽうで日本の林業は受け皿がなく瀕死の状態にある
→林業再生は矛盾だらけで行政優先・机上論理優先で科学や技術は軽視

・費用対効果を軽視してはいけない
→日本の人工造成林は費用対効果が著しく悪い
→伐採跡を植林しない天然更新や植林しても自然木の侵入を許すなどへ移行すべき
→50年後のスギ・ヒノキの価値など分からないのだから多様な品揃えにしておくこと
→補助金と事業の硬直化により、この多様性が失われている

・間伐で森林の価値を下げるケースもある
→無間伐のメリット、間伐のデメリット(略)
→価格低下により標準齢で伐採されないことは森林にはいいことだが行政が許さない
→これが森林経営者の自由度を阻害し森林機能と商品価値の低下にも繋がる

・森林を温存し「待ち」に徹すること
→すでに再生された森林を持続させること→商品価値がないなら無理に伐採しない
→森林の温存は様々な国家リスクへの備えになるので、そのための補助金に
→経営者の自由度を尊重し森林の多様性を支援する(利益が見込めれば伐採)
→林道など基盤設備の整備も必要
→国民への教育、技術者や行政官の現場経験の充実も・・・


Part2より

・宮崎市における盗伐の実態
→被害者は全国1000世帯を超え伐採跡では土砂崩れも
→小規模な偽造伐採届が自治体に受理されると、その何十倍も伐採する
→合法伐採でも再造林が進んでいない

・林野庁の「林業の成長産業化」により自給率は増えたが増産要請で盗伐も増えた
→木材総需要は縮んでいる→経済的に林業が成長しているとはいい難い
→安い合板用や燃料用(バイオマス発電用)が増え、製材価格は抑えられている
→中国に輸出されるのは安価な丸太ばかりで「日本の木材は世界一安いから買う」
→木造建築(CLT直交集成板)が推進されているが鉄筋コンクリートより高い→
値下げ圧力
合板用や燃料用は所有者(山元)への還元が少ない用途のため再造林が進まない
→木材利用を推進すればするほど、はげ山が増える構造

・建築材需要の減少は人口減少と高齢化による(住宅着工件数はピーク時の半分)

・この40年間、価格が下がるたびに所有者(山元)の利益を削ることで対応してきた
(ウッドショックで高騰したのは製材価格で
原木価格はさほど上がっていない)
→さらにコスト上昇、大量伐採、作業道敷設、危険作業・・・経営の持続が危ない
→今は
ウッドショック終息により再び山元への値下げ圧力へ

・産出額より補助金の方が多い林業が「成長産業になった」といえるのか

・1990年代から丸太なら国産材の方が外材より安くなったが製材なら逆のケースも多い
→外材は供給量、品質、流通を商社がしっかり管理し商品アイテムも豊富
→国産材は多くの事業者が関わり相互の情報が伝わらず疑心暗鬼、ロスが多く責任も持てない
→乾燥材は国産材出荷量の3割、外材では8割以上→ここでも差がつく

・盗伐、過剰伐採、再造林放棄の問題とは反対の放置林の問題
→相続人不明、名義人多数の共有林、進まない民有林の地籍調査→放置→災害

・目先の都合だけの政策では経営も持続もできず環境保全も不可能・・・


林野庁森林整備部計画課長へのインタビューより

・供給量拡大への取り組み
→戦後や高度成長期に植えた人工林が成熟して利用可能になった
→木材利用はカーボンニュートラルにも貢献すると認識され、需要拡大策も功を奏した
→ただし販売収入が少なく、重労働を要する再造林をしないなど課題も多い

・収支面での取り組み
→高性能機械の導入、労働削減技術の開発実証、花粉量半分で成長1.5倍のエリートツリー

・最終価格の2%しか山元に還元されない仕組みや価格への取り組み
→原木を製材用、合板用、チップ用と仕分けして供給することが重要
→製材技術開発、フル活用に向けた事業者連携、持続可能なサプライチェーンの構築で再造林に
→昨年6月に林業木材産業関係団体が共同で宣言を出した→業界の意識も変わりつつある

・伐採のための補助金のあり方について
→間伐への補助はあるが目的は森林の健全性を保ち公益的機能を発揮させるため
→皆伐への補助はない
→国際商品の価格は海外を含む需給関係で決定されるので補助金の影響はない
→需要無視の伐採は好ましくないので需給情報を公表している
→レーザー航測技術を使って林業適地を見定め関係者で共有することも進めたい


Part3より

・1980年代以降の世界的潮流は「持続可能な森林管理」
→95年のモントリオール・プロセスには日本を含む12ヶ国が参加→日本は逆行している

・戦後の林政の振り返り
→戦争で荒廃した天然林の伐採跡や原野を人工林に置き換える拡大造林政策
→高度成長期には林業振興で森林の公益的機能も発揮できるという「予定調和論」へ
→これには丁寧で集約的な技術が要求されるが外材輸入による価格低迷で技術基盤が崩壊した
→2001年の法改正では
「持続可能な森林管理」が検討されたが最終的には予定調和論に
→補助金を投入した工場の大型化の結果、大量安価な供給が必要になった
→2011年には温暖化防止ロジックで短伐期皆伐再造林施策へ→真の目的は
大量安価な供給
→2016年には林業の成長産業化
→2021年には「グリーン成長を新しい林業で実現させる」
→転換に見せかけた成長産業化の継承強化で
「持続可能な森林管理」とは相反するもの

・森林管理には科学的理論が根底にあるべき
→地域ごとに生産林と環境林に分け目標林型に応じて
短伐期皆伐を選択するなら理解できる
→ところが施策は全国一律


・「持続可能な森林管理」を基本にした森林法制への転換が不可欠
→林業は特殊な条件下でしか成り立たないことが前提
→地域(山村)政策、環境政策としてEUの農業政策のような所得補償
(条件不利地域論・デカップリング論の取り込み、入林権の保証など国民的な議論で)


Part4より

・速水林業はFSC森林認証を日本で初めて取得した環境保全型林業
→1070㌶東京ドーム228個分
→最新外国製重機の修理やメンテナンスも自社で行う
→人材、道路網の密度、再造林と育林、苗木が揃わなければ林業は成り立たない
→2010年以降、専業事業者が売却・離脱している
→国の施策(環境保全)で間伐が加速し供給過多で立木価格が大きく低下
→安くても売れるうちに売り、植えなければいいという発想
→今は森林資源が持続できるかどうかの瀬戸際に
→補助金でしか変われない林業から脱却すべき
→誰がどう管理しどう利用されるか分からない数十年、数百年先の理想の森林を思い描き、
そこに向かって今できる限りのことを真面目にやる、それが面白くなければ林業は面白くない


Part5より

・銘建工業は構造用集成材のトップメーカー
→CLT直交集成板を日本に紹介し初めて建築物を建てた→鉄筋コンクリートより軽い
→日本の規制は厳しくコストが高くなり年間使用量は欧州の1/100で工場稼働率は低い
→フィンランドやスウェーデンでは時間をかけたインフラ整備で林業の生産性を上げた
→地元の真庭市にはバイオマス発電所がある
→チップだけでなく街路樹の剪定枝まで集まる仕組みができている
→林業もそれぞれの地域でビジョンを持つことが大事になる


Part6より

・皆伐された山林の7割は木を植えず放置されている
・大分県の佐伯森林組合では100%再造林している
→国・県・市の再造林補助金で88%はカバーできるが残りは関係者の基金で苗の生産も組合
→再造林の直営は15人で請負は115人、請負には年収1000万を超えるメンバーが4,5人いる
→5年間は同じ山を世話するので愛着も責任も感じるし山元も信頼する
→所有形態が細分化しているので結果的に皆伐にならずモザイク状に分散し生態系維持にも

・大分県のうすき林業では混交林の択伐を行っている
→皆伐と再造林の林業を続けるのはきついし自分の代でサイクルが循環しない
→専門家と話して防火帯の雑木を残すと自然に混合林になり択伐方式にしている
→混交林つくりは難しく何を植えて何を伐るか、間伐コントロールなど試行錯誤の連続
→現在はスギとヒノキだけの出材だが、いずれ高価な広葉樹も出したいと商品化を模索中

・所有者不明土地や放棄林の問題→少しずつ進めるしかない
→相続時不動産登記の義務化と国庫帰属制度
→植林育林会社や木材会社による買取サービスなど

・林業に重要なのは時間感覚
→一般の経済活動とは異なるスパンが必要
→吉野の山林王・土倉庄三郎のような思慮と覚悟で林業が展開されることを願う・・・


Part7より

・伊佐ホームズは2017年に森林パートナーズを設立した
→住宅を建てる際のサプライチェーンを構成する事業者が株主となり出資・参画する
→流通連携による林業の収益化
→透明性の確保→信頼関係→付加価値→山元にも還元→森林を守り続ける
→工務店が山元から直接購入→詳細な木材情報を事業者全体で共有
→全てのデータがオープンなのでコスト・納期・在庫などが明確になりメリットが多い
→事業者間の透明性と信頼関係は住宅購入者にも大きな価値となる

・大型パネル工法
→1980年に93万人だった大工は2020年には30万人に、しかも60歳以上が40%を超えた
→耐震性や防火性、調湿性などの性能強化で建築部品の複雑化・重量化も進んだ
→大工の労働時間の半分以上は梱包外し、採寸、仕分けなどで現場作業は危険も多い
→大型パネルなら本来の仕事である造作や仕上げに集中でき人手不足解消にもなる

大型パネル工法開発者の話
→いかに森林資源と生活者、需要があるエリアと供給可能なエリアを最適な線で結べるか
→究極には林業をクラスター(圧縮統合)させ地域ごとのサプライチェーンを多数構築すること
→大規模化などの成長一辺倒ではなく、徹底的に持続することを目指す
→着実な持続こそ、結果として大成長につながる
さらに・・・
→これまでの木材はエンジンだけで売ってきたようなもの
→付加価値をつけて自動車として売ること
→我々は良質な木材を使いサッシや断熱材も付けた大型パネルという建築物として売っている
→生活者目線で主語を木材ではなく建築にし生活産業の一員として事業を行っている

云々・・・

と、確かに改革者の動きも一部にはあるようですが・・・
さてさて、部外者にできることはなんでしょう・・・



m98k at 18:10|PermalinkComments(0) mixiチェック

2023年05月12日

フラッシュ光・2023ボルネオツアーの公式?案内

(本記事は期間限定のお知らせです)

とーとつですが・・・

10981




PA140641




DSCN0466

フラッシュ光・2023ボルネオツアーの公式?案内であります

こちらの記事末尾でも日程は紹介しましたが、現時点での2023ツアー概要とご案内です
航空便の予約状況が逼迫してますので参加希望者は早めの連絡をお願いします


①スケジュール(出発まで順次更新しています)
(関西空港発着の場合
7泊9日うち平日は4日間で、日本のサラリーマンには優しい選択ですよ)

10月27日(金)
23:25関西空港発(往復ともシンガポール航空を利用予定)

10月28日(土)
04:40チャンギ空港着06:40発 08:10クチン空港着 
ホテルへチェックイン休憩、屋台で昼食後、全面改装されたボルネオ文化博物館へ
スーパーなどに立ち寄り、夕食は海鮮料理の屋台街
<クチンのホテル泊>

10月29日(日)
ホテルにて朝食後チェックアウト、クチン空港へ
10:55クチン空港発12:35ムル空港着、ムル国立公園へ。約3.4㎞の木道をハイキング
ディア・ケイブとラング・ケイブの見学+コウモリの群れの見学
公園内食堂にて夕食後、ナイト・ウォーク
<グヌン・ムル国立公園の宿泊所泊>

10月30日(月)
公園内食堂にて朝食後にボートで移動、プナン族の村訪問、
ウィンド・ケイブとクリアーウォータ―ケイブの見学、ピクニックランチの昼食
ボートで戻る途中、元気のある方は約3kmのハイキング
公園内食堂にて夕食後、ナイト・ウォーク
<グヌン・ムル国立公園の宿泊所泊>

10月31日(火)
公園内食堂にて朝食、出発まで自由行動(近隣の熱帯雨林を散策)
チェックアウト後、ムル空港へ。昼食はムル空港近くの食堂にて。
13:30ムル空港発15:10クチン空港着、いったんホテルへ
スーパーなどに立ち寄り、夕食はスチームボート
<クチンのホテル泊>

11月1日(水)
ホテルにて朝食後、サバル森林保護区にある過去の植林地見学、記念植樹
昼食は弁当、夕食はローカル料理
夕食後、クバ国立公園カエル池ナイトツアー
<クチンのホテル泊>

11月2日(木)
ホテルにて朝食後、ボルネオのジュラシックパークと呼ばれるベンゴー地区へ
(車両とボートで移動。
インドネシアとの国境を跨ぐクレーター状の山脈に囲まれた湖)
滝の傍でビダユ族スタイルのお弁当の昼食。
その後、さらに奥のアナ・ライス村でホームステイ。
サラワク川源流には温泉もあります。夕食は伝統料理。
<ビダユ族のロングハウス泊>

11月3日(金・祝)
ロングハウスにて朝食後、人々の生活や畑などを見学し早めに出発。
屋台で昼食後、
Fairy & Wind Cave へ
ラフレシアが咲いていればグヌン・ガディン国立公園へ
夕方クチン郊外の週末のみに開催されるシニアワンのナイト・バザールへ
ウツボカズラ飯など含めクチン中のいろんな食べ物が並びます。ホテルにチェックイン。
<クチンのホテル泊>

11月4日(土)
ホテルにて朝食後、ホテルをチェックアウト
09:30クチン空港発 11:00チャンギ空港着14:05発 21:10関西空港着、解散


②概算費用など
(出発まで順次更新しています)
・関空⇔クチン往復、現地での移動、宿泊、食事等を含み5月12日時点で27万ぐらい
・現地クチンでの集合解散も可能、その場合は半額ぐらいになります
・別途、個人の酒代・土産物代・旅行保険代等が必要(安全な飲み水は用意します)
・クチンでのホテル4泊は基本2人1室ですが、割増料金により1人1室も可能
・ムル国立公園の宿泊所2泊は男女別各4人部屋、ビダユ族の村ホームステイ1泊は全員で
大部屋に近い状態になります

③参加人数・参加方法・申込期限など
5月末時点で確定している参加者は7名で今回は8名のツアーにしたいと考えています
・予約申込時期により航空運賃は変わります(満席で予約できない場合もあります)
・参加を希望される方はコメント欄やDMなどで早めの連絡をお願いします
(こちらから申込方法など詳細をお知らせします)

つーことで・・・

秋にはボルネオの洞窟や熱帯雨林でライト照射を楽しみましょう!!!



m98k at 12:12|PermalinkComments(0) mixiチェック

2023年04月28日

人類学者K

人類学者K・・・


P4213813

ロスト・イン・ザ・フォレストとゆー本のご紹介であります
前回記事のとおり自宅療養中なので、じっくりと読ませていただきました



表紙カバー裏にあった惹句

P4213814





裏表紙カバー裏にあった著者紹介

P4213819





奥付

P4213821




目次

P4213820




舞台となるマレーシア・ボルネオ島・サラワク州北東部の略図
(掲載に問題があれば削除します)

P4213818

そう、わたくしが2017年の植林ツアーでメリナウ川の居住地を訪れたプナンの人たちの中でも
さらに奥地のブラガ川上流域に暮らす人たちを中心に、その暮らしぶりや世界観を長年にわたり
調査研究されている奥野克巳教授(人類学者K)の体験記です

(ちなみにサラワク州クチン在住のN嶋さんによると、メリナウ川の居住地のプナンの人たちは、
1970年代の英国地質学会のムル洞窟調査時にポーターなどとして雇われたことがきっかけで、
周辺に住むようになり、その後、政府支援の定住化政策でロングハウス建設や農業指導などが
行われたとのことでした。情報ありがとうございました)

上記リンク記事にも書きましたが、ボルネオ島の熱帯雨林では川沿いの焼畑や漁労で暮らす
川の人(オラン・スンガイ)と、森で暮らす森の人(オラン・ウータン)以外にも、少数ですが
森を移動して狩猟採集で暮らしていた人たちもいて、そのひとつがプナンの人たち・・・

定住するまでのプナンの暮らしについて、はじめて知ることも多く、驚きの連続でしたが、
惹句にもあるとおり
小説のような体験記で、読み物としても面白かったです

箸休めのインタールードも、ジャカルタの安宿で飲み続けたフレディ・マーキュリーの曲に
出てくるシャンパン、別れた彼女に書き続けたクリフォード・ブラウンやカミュ、ゴダール
自分がバックパッカーになるきっかけになった美人生物教師の厚い唇など、興味津々でした


以下、わたくしが詳しく知らなかった部分のみの読後メモです

・ボルネオ島低地の混交フタバガキ林は、林床の草本層、花を咲かせる低木層、10m以上の
亜高木層、林冠を形成する高木層、60~70mに達する突出木層から構成される「空中の階層」
→上空から階層の高所を訪れる「トリたち」、地面から樹上まで階層を上下する「サルたち」、
高所で行われていることを地上から想像する人間、の三者で織りなされる森の世界

・ブラガ川上流域の森に住む狩猟採集民プナンはその世界を手に取るように眺めている
→Kは驚くべきことだと思った

・プナンは焼畑耕作民イバンとはまったく異なる独自の世界観を持っている
→狩りで死んだ動物には人間には使わない忌み名を使う
→彼らにサルという分類言語はなくマメジカやヒゲイノシシと同じ「動物」のみ
→フタバガキ林に住むサル5種は判別するが木に登る動物という共通性を感じているのは確か

・オオミツバチが来たら(開花・結実で動物が集まるので)狩猟の準備を始める
→ボルネオでは
開花・結実の季節性がなく特定の場所で一斉に開花・結実するから

・1980年代の初頭までノマド(移動狩猟採集民)として暮らしてきた

・死者が出るとその場所に埋めて移動し、生前に使っていたものは焼き尽くす
(定住後でも死者の愛用品は全て取り去られ、居場所は完全に模様替えされていた)
→死者の実在も生前の実存もすべて否定する
→死者を祖先として祀る日本人とはまったく逆の習慣
→死者の名は決して口にしない
→死者の家族は自分たちの名前も一時的に変えて心を落ち着かせる
→体、魂、名の三要素を持つのは生身の人間と犬だけ(カミに体はなく赤ん坊に名はない)

・死者を思い出し耐えられなくなったときにノーズフルート(鼻笛)を奏でる
→鼻からの息の出し入れによる音色は死者と生者の交歓そのもの
ノーズフルート(鼻笛)は死者と生者を繋げるシャーマン

・無文字社会で伝承されない過去は儚く消えていく→過去に深度はない
→過去を振り返らない→過去の過失に対する反省も謝罪もない
(森林伐採の賠償金を頭金にローンで買った四輪駆動車と、それで獲ったヒゲイノシシと、
その肉を町に売りに行った収入の関係などなど・・・)

・狩猟や用事での失敗も、その後の話し合いで個人を追及したり庇ったりすることは一切なく、
あまり期待できないと思われる適当な善後策が立てられるだけ
→Kの育った日本にも反省しない腹立たしい人はいたが、共同体として反省しない事態はなかった

・人類にとって反省する文化の誕生の意味とは・・・
→プナンの過去の描き方は絶対的な時間軸ではなく相対的な位置づけ
→それなら過去の行いを振り返って反省することが存在しないのも当たり前か・・・

・プナンの子どもたちに将来の夢や仕事を聞いても、誰も意味が分からず答えられない
→未来にも時間軸を伸ばし将来の自分を想像することは及びもつかないこと
→プナンにとっては過去と同じく未来もつかみどころのないもの
→未来への漠然とした不安のようなものはプナンにもあるが、未来を描くのは個人の意思
→ありのままの時間性を歪めることによってしか未来は想像し得ないから

・プナンの時間性は、季節性の希薄なボルネオ島の熱帯雨林の中を移動するという、
狩猟採集での暮らしによるもの(ブラガ川上流域では1980年代初頭まで)
→生きるうえで時間や暦で生活リズムを管理する必要がなく今日でもカレンダーはない
(Kの予定を書いた卓上カレンダーをはじめて見たプナンの反応は「明日や明後日の手紙」)
→農耕や牧畜では将来の作業に向け時間や暦が必要だがプナンに未来を分かる必要はない
(3日後に再会する約束をした場合は、お互いに枝に結び目を3つ作って毎朝それを解く)

・プナン語でも昔の時(過去)、この時(現在)という表現はあるが、未来は「もし(ダウン)」
→ダウンはマレー語でも名詞「葉っぱ」も意味し、プナン語では「季節」も意味する
→プナンにとっての季節とは不定場所での開花結実の時期で、森が楽園になる時期
→いつどうなるかわからない季節性の象徴である「葉っぱ」で未来をあらわす
→プナンに未来は予期されないし思考の対象でもなく「今とここ」を生きている

・タソン川河口のアブラヤシ・プランテーションで狩猟キャンプした際の現代人とプナンの対比
→毎日の賃金労働で収穫に来る人々と、食べ物が手に入れば後はぶらぶらと過ごす人々
→動き回って富を生み出し、その一部を手に入れる人たちと、自然の中に入り食べ物を取って、
それだけで生きていこうとする人たち
→未来を自らの意思で想像し行動する人たちと、ありのままの時間の中を生きる人たち
→Kはここでは後者のプナン側にいたが、本質的には前者側の現代人
→二者それぞれの生きざま死にざまは、それぞれの時間性に大きく関わっている

・狩猟キャンプでの夜の子どもたちへの語り聞かせ
→動物に託して人間の性格を語ることが多い

・プナンにも個人所有欲があるが生きていくための社会慣習として平等に分け与えている
→最初はKがよそ者だから何でもねだられると思ってたがプナン同士でも同じだった
→無所有が絶対的価値で、持つ者にねだるプナンと分け与えるプナンに分かれる
→分け与えられても(過去になるから?無所有が基本だから?)感謝は一切ない
→悪いヤマアラシ(自分だけ金持ちに)と良いマレーグマ(尻尾を分け与えた)のハナシ

・プナン語の懐中電灯pisitなどはマレー語からの借用語だろうが「損得」も外来語だろう
→損得はシェア原理で暮らす中にはなく、交換行為、蓄え、貨幣価値で発生するもの
→銃による猟に失敗すれば「銃弾(1発15リンギット450円!!!)を損した」というが、吹き矢猟で
失敗しても「毒矢を損した」とはいわない
→毒矢の材料が全て森にあるので損得勘定が入る余地がないから・・・
(材料は無料でも、それを探して作る手間はかかるので、銃弾と同じく毒矢も損しているはず、
と思ったわたくしは現代人で、手間に要する時間を食べるために働く労働時間と認識したから、
でも労働時間という感覚がなければ現代人の趣味や娯楽の時間と同じで損得はないのか)
→糧と財が無尽蔵に出てくる森は、プナンにとって損得で計られるものではない

・フィールドワークで聞き取ったプナンの神話や動物譚は100近くある
→カメとマメジカ、貝とマメジカの競争の話→集団は個に勝るという集団優先の話?
→マメジカとマレーグマの競争の話→別の機会には狡知に長けたマメジカが勝つこともある

・人間と動物の地上世界と、動物(の魂?)とカミの天空世界の二層構造
→動物を食べる以外でないがしろにすれば、その魂の告げ口により地上は嵐になる
→動物を食べて生きるプナンは不完全なアミニズムを生きる

・40年前までにノマドを経験したプナンは、概して今の定住暮らしのほうがいいというが、
インスタントラーメンや缶詰で太って病気で死ぬようになったので森に戻るべきとも

・レプトスピラ症(感染した齧歯類の尿を含む川の水などから経口経皮感染する)
→2008年のサバ州エコチャレンジで感染が報告されたが選手は川で水浴びしただけだった
→死亡報告はないが感染リスクがある旅では予防薬ドキシサイクリン200mgを週1回服用する
→この年はサラワク州でも流行していてKも感染した
→アレクサンダー・フレミングのペニシリン!!!で助かったが予防は迂闊だった
→流行地域では不用意に水に入らない、特に洪水の後は入らないことが重要とされている

・コロナ禍で半年ごとの訪問を中止していたが2022年8月に3年ぶりに現地に行った
→1年前から世界的に豚熱ウィルスも流行し現地のヒゲイノシシが死滅していた
→1年前から無料の電気とWiFiが来たがネット情報ではなく日本のエロ動画ばかり見てた
→2021年8月にはクラスターが発生、医師の指示で政府の支援物資を持って森に逃げ込んだ

・アブラヤシ企業の計らいで300人の居住地に10台ほどの四輪駆動車が並んでたのが衝撃的だった
→企業が保証人になり所有者はプランテーションに働きに出るプナンから乗車賃を取って、
毎月のローン返済の一部に充てていた
→以前は賠償金の支払いをビールや生活必需品に消費するだけだったが、プナンを労働者として
組織する方が遠くからの労働者より効率的だと考えたのかも知れない

・車で賃金労働に通い、WiFiでスマホのやりとりをはじめたプナンは今後どうなるか
→プナンの持つ独自の野生思考ロジックで外部のシステムを粉々に破壊するだろうか
→解体して自分たちに合うよう再構築するのがけっこううまいが、今後は誰にも分らない・・・

(エピローグ ロスト・イン・ザ・フォレストより)

・ある時、ジュラロン川のプナンの村に向かった
→アブラヤシの苗や稲がヒゲイノシシに荒らされる獣害が農村でも深刻化していた
(ムスリムへの改宗でヒゲイノシシを食べなくなったから?)
→2年前に焼失したロングハウスは、殆どが都市に働きに出てゴースト・ビレッジ化していた
→ジュラロン川のプナンは古くにウスン・アパウの森を出て焼畑技術を身につけており、
焼畑稲作民イバンとも交わり、近現代の流れに乗っている
(周辺に獣害や出稼ぎ先のないブラガ川上流域のプナンとは異なっている)
→しかしキリスト教やムスリムに改宗していてもカミや動物の忌み名などは同じだった

・狩猟キャンプで忘れ物に気づき取りに行って帰る途中で道に迷った
→4時間近く森をさまよい歩いて自分を見失い、身体中が擦り傷と打撲だらけになった
→最後は借りていたGPSのログ記録とプナンが探しに来てくれたおかげで助かった
→その夜、道に迷うことはよくあることで邪悪な霊のせいだといわれた
これがロスト・イン・ザ・フォレスト・・・



m98k at 20:23|PermalinkComments(0) mixiチェック

2023年04月07日

2023フラッシュ光ツアーの日程決定!!!

とーとつのご報告になりますが・・・

前回記事の宴会の翌々日から1泊で・・・

フラッシュ光・ボルネオ照射ツアー企画会議?を開催しました
(結論は記事の末尾、ツアーの公式?案内記事はこちらです)


長かったコロナ禍もようやく収束に向かい、5月8日からは帰国時の制限もなくなることだし、
延び延びになってた
ボルネオ照射ツアーの実現に向け、今度こそ真摯な企画会議にして、
具体的な日程を決めましょうと、正午にわたくしの実家に関係者が集合・・・


まずは渡航の安全を祈願するため・・・

P4013816





P4013821





P4013819

航海の守護神でもある住吉大社にお詣りして・・・



見た人に幸せが訪れるとゆー稀少な「モ166」が偶然にも停まってた・・・

P4013829

旧の紀州街道を渡って・・・幸先がいいなあ




お花見で賑わう住吉公園へ・・・

P4013831





P4013832




もちろん、我々は桜花には目もくれず、真摯な企画会議を開催・・・

P4013842





ぷしゅ、くはあ

P4013837





P4013851

ごくごく、ばくばく、んぐんぐ




P4013856

ぱしゃぱしゃ




P4013859

ぱしゃぱしゃぱしゃ

「いやあ、サギさんもスズメさんもメジロさんもアップで撮れたし・・・」

「じつに実りのある企画会議でしたねえ・・・ひっく」

「いやいや、これからが真摯な企画会議ですよ」


と、手作り弁当による花見宴会から、ふらふらと
実家に戻って・・・

P4013864




P4013865


P4013867


P4023874


P4013873

持ち寄りの甘味やフルーツやつまみでタイ焼酎チューハイや缶ハイボールをかぱかぱ・・・

さらに野鳥園ポタ宴会の際に酔った勢いで大量購入してた満州の冷凍餃子を水餃子にして、
暗くなってからも延々と飲み続け、皆さんが完全に出来上がった頃に・・・



いよいよ今回企画会議?のメインである・・・

P4013869

タイ風チキンカレー鍋の登場であります むひひひ

そう、過日のバンコクの休日で持ち帰ってた数種類のタイカレー・レトルトを使って、
ネットにあったレシピを参考に、てきとーに作ってみたのですが、けっこうイケました!!!

(忘れないうちに基本食材などをメモしておきます)
材料は鶏モモ肉、ナス、パプリカ、竹の子、シメジ、チキンコンソメ、パクチーなど・・・
やはり素材を塩コショウで軽く炒めてから水とコンソメを加え、タイカレーのレトルトで
煮込むのがポイントですね、辛さもマイルドになるし・・・

って、
今回は何の宴会だっけ・・・ま、いいか・・・ひっく


しっかし皆さん、花見宴会でしこたま飲んでたのに、よく飲むなあ・・・

P4033810

まあ、安酒なら冷蔵庫にたっぷりと仕入れてあることだし・・・


とりあえず・・・

P4033811

持ち寄っていただいた高級な地酒やスパークリングワインはわたくし一人で・・・むひひひ

って、今回は何の宴会だっけ・・・
ま、いいか・・・ひっく


と、すっかり夜も更けてから、ようやく関係者の日程調整だけして寝袋に倒れ込み・・・

P4023876




P4023877

翌朝のモーニングサービスで真摯な企画会議?を無事に終えた次第 ふう

と、ツアーの詳細や費用などは未定ですが、とりあえず・・・



フラッシュ光・2023ボルネオ照射ツアーの日程であります

①10月28日(土)に関空や各地の空港を出発、マレーシアボルネオ・サラワク州のクチンへ
②翌日から連日、洞窟や夜のジャングルでのフラッシュライト照射はもちろん、
③熱帯雨林での自然観察や記念植樹、現地の文化や料理なんぞも大いに楽しみ、
④11月5日(日)に帰国する、7泊9日のツアーになる予定です
(5月6日追記)
関空を10月27日(金)の深夜に発ち11月4日(土)の夜に帰国することになりました
(5月12日追記)
公式?案内記事をアップしました!!! 参加希望者は至急連絡をお願いします


4年前の下見ツアーとは別のオススメ・スポットにも案内していただくつもりですが、
今回も現地旅行社のN嶋さんが全て手配してくれるので、参加者は楽しむだけです

なるべく早めに人数確定したいので参加希望や費用などの問い合わせは98kか関係者まで、
コメント欄やDMなどで早めに連絡をお願いします
(平日4日分の年次休暇やパスポートの準備も忘れないようにね!!!)



m98k at 20:07|PermalinkComments(0) mixiチェック

2023年04月03日

ひさしぶりの野鳥園ポタ

さる3月29日、じつにひさしぶりに大阪南港野鳥園へのポタリングを楽しんでました

ダッシュP18乗りの友人と住吉大社の太鼓橋前で待ってると・・・

P3293853



P3293855

10時半にわたくしと同じルーベSL4(ただしワングレード上)乗りの友人が豊中から自走で到着、
8時に出発して約30kmの距離だったそうです




P3293857

住吉川沿いの遊歩道から・・・




P3293859




P3293858

平林の貯木場を経て・・・




P3293862

南港の自転車道へ入り・・・




P3293864




P3293863





P3293867

南港大橋をひいひい上がってインテックス大阪、WTC、ATCを過ぎ・・・

そう、昔わたくしがブリヂストン・クロスロードにフィラメントのミニマグ1本だけで、
自転車通勤していた懐かしいコースであります


で、とりあえず野鳥園の北観察所へ・・・

P3293869



P3293870




P3293871

ま、水面にはオオバンさんが一羽いただけで・・・




P3293874

こんなのは観察できませんでしたが・・・




P3293875




P3293876




P3293877

満開の桜花なんぞを堪能できたのでよしとしましょう



ちなみに・・・

P3293879

水曜日は展望塔の休館日でした・・・



と、のんびりとATCへ・・・

P3293882




P3293883





P3293884





P3293885





P3293886

で、帰り道にラビットストリートの本店に寄りたかったのですが見つけられず、帰宅後に
調べたら閉店してて、今は向かいにできたスペシャライズド住之江が事業承継してました
ま、どうせ水曜日はお休みでしたが・・・


と、お腹も空いたし何を食べるかで延々と議論し、やっと三人が合意したのは・・・

P3293888

ぎょうざの満州でした・・・



って・・・

P3293889




P3293890

食べる前に撮ればよいものを・・・げふっ

と、例によって一人は輪行で、近所の二人は自転車を押して無事に?帰宅しましたとさ

ちなみに走行距離はちょうど30km、平均時速は歩きも含めて12.7km/h・・・ひっく



m98k at 20:50|PermalinkComments(0) mixiチェック