SF
2024年02月28日
人類滅亡の科学
とーとつですが・・・
人類滅亡の科学~「滅びのシナリオ」と「回避する方法」~とゆー本のご紹介
表紙カバー裏にあった惹句
そう、惹句にもあるように・・・
・滅びのシナリオを想像し研究することで、滅びを未然に防ぐための多くの実行可能な
手段を手にすることができる
・問題にあらかじめ接しておくことで、私たちの社会は(免疫力までは無理としても)
滅ばずに回復できる力を養う可能性は高くなるはず
つーことで、25の起こり得る滅びのシナリオとその回避方法が紹介されてました
裏表紙カバー裏にあった著者紹介
冒頭にあった奥付
例によって目次のみ
まあ、危機の回避方法の中には・・・
合衆国を分断するダム破壊を回避するには水中ソナーやレーダーや迎撃システムを備え、
一般人は一切立ち入り禁止にして上空に侵入した飛行物体は全て撃墜せよとか、もしも
9.11の前にこの本が出版されてたら、航空セキュリティが現在のように強化されていて、
あのテロは防げたかもとか、自動化による失業にはユニバーサル・ベーシック・インカム
(基本所得制)で対応すればいいとか、とりあえずはカーボンニュートラルとか、超知性体は
人類や地球を救うかもとか・・・
いかにもアメリカらしいテクノロジーの発展に期待する方法や、一方的な正義の押し付け、
国連などの国際機関より強大な権力を前提に?、地域事情を無視したような方法もあって
「ホントにそれでいいの?」と思ってしまう部分もありましたが・・・
もちろん、わたくしが知らなかった事実や、なるほどと納得した回避方法なども多くあって、
全体としてはけっこう興味深く読めました
とりあえず地球環境に関する3項目からの(自分の脳の外部記憶としての)部分メモです
いつもの「てきとーメモ」で思い違いもありますし、図版の多い分かりやすい入門書なので、
興味を持たれた方は本書を読まれるようオススメします
「地球温暖化の暴走」よりのメモ
・氷床コアのデータから測定した過去40万年間の大気中の二酸化炭素濃度の変化
→変動が繰り返されているが最小180ppm~最大290ppmの間で推移していた
→1800年頃には280ppmだったのが1900年初頭に急に300ppmに上昇している
→2015年~2016年のどこかでレッドラインとされる400ppmを越えた
(地質学上はあり得ない一瞬の出来事で産業革命以降の人類の活動によるもの)
→レッドラインを越えると気温上昇を2℃以下に抑えることは不可能になる
・世界では毎日1億バレルの石油を汲み上げ、その多くを燃やしている
→この過程で年間約40ギガトンの二酸化炭素が大気中に放出される
→石油以外にも石炭、天然ガスの燃焼、人為的な森林火災など
→2016年の地球の平均気温は1980年に比べて約1℃上昇している
・地球温暖化の暴走
→正のフィードバックループにより暴走する
→これは人類が排出する炭素の量が転換点に達すると始まる
→永久凍土が溶けはじめ内部有機物の炭素がバクテリアにより二酸化炭素やメタンになり放出
→さらに永久凍土の融解を加速する
→北極や南極で太陽光を反射していた白い氷が溶け、太陽光を吸収する茶色い土や青い海水が増え
太陽光を吸収して熱を生み出す→さらに氷の融解を加速する
→海が過去数十年間は二酸化炭素を吸収してきたが限界に近づいており以後は大気中にとどまる
→さらに温暖化が加速する(海に溶けた余剰二酸化炭素は炭酸になり海は酸性化している)
→暑さや干ばつで森林が枯れ始め、燃えると二酸化炭素が放出される
→さらに温暖化が進み、森林が弱って森林破壊が加速される
→雲も太陽光を反射するが少なくなると気温が上昇し、さらに温暖化が加速される
・この正のフィードバックループが始まれば、化石燃料を控えても植林しても焼け石に水
→永久凍土内の炭素量は大気中の炭素量を上回っているので始まれば温暖化は止められない
・オーストラリアでは1950年代に比べ2010年代の夏は1ヶ月長くなり冬は1ヶ月短くなっている
・グリーンランドの氷の減少は1990年代は年間100ギガトンで現在は年間300ギガトンに近い
・産業革命前280ppmだった大気中の二酸化炭素量が現在410ppmになっていることは事実
→気温の(地質学上)突然の上昇との相関関係は明らか→主な要因は化石燃料の消費
(回避する方法)
・現在の科学者のアドバイス
①今すぐ熱帯雨林のような生態系の人為的な破壊をやめる(別項あり)
②すべての化石燃料の使用を中止する(別項あり)
③ただちに大気や海から二酸化炭素の除去をはじめる
④二酸化炭素濃度を産業革命以前(300ppm以下)に戻す
・さらに深刻化した場合の気候工学による環境修復の選択肢
①火山噴火による二酸化硫黄と硫化水素が成層圏に達すれば太陽光を宇宙に反射し数年にわたる
冷却効果をもたらす→人為的に放出すれば即座に冷やせる
②同様に軌道上に大きな鏡(小さな鏡の集合体)を配置し太陽光を反射させる
→①より角度調整も離脱もコントロールしやすい
③ハリケーン発生地など冷やす必要がある海域の上空に海水を霧状に放出する(海雲輝度増加)
④プランクトン増殖を促進する化学物質(鉄紛)を海洋に添加する(海洋肥沃化)
→プランクトンが炭素を取り込み、死ぬとそのまま海底に沈む
⑤大量の新しい木を植える(植林)→成長する過程で大気中の二酸化炭素を取り込む
(ある提案書では一兆本の木で数百ギガトンの二酸化炭素を大気中から回収できるという)
⑥大気から二酸化炭素を取り除き固定する機械を作り太陽光や風力で設置する
→⑤の植林よりはるかに少ない面積で済む
・これらの気候工学的アプローチは果たして良いことなのか実行可能なのか?
→植林を除いて研究や人的資源が必要で影響も副作用も不明だが、進めるしかない
→アポロ計画時のNASAでは40万人のスタッフが働き莫大な資金が投入された
→僅か10年で頭脳・才能・科学・工学・資金を結集して全てを開発し成功させた
→人類が同じ目標を共有し未来のための賢明な投資を行うことができれば実現できるはず
「大量絶滅」よりの部分メモ
・海洋の魚類は漁船団による大量漁獲、海洋汚染、気候変動により絶滅に瀕している
(魚類については詳細な統計データがある)
・昆虫類は農薬使用と生息地の喪失により数を減らしている
(昆虫の総量は重量ベースで毎年2.5%ずつ減少しており数十年後には姿を消すとも)
・鳥類は生息地の減少、食料源の喪失、移動ルートの分断、猫などの捕食、風力発電の風車など
人工建造物により苦境に立たされている
(北アメリカでは、この50年で90億羽から60億羽に減少した)
・爬虫類は乱獲や気候変動など各方面で危機にさらされている
(爬虫類の20%が絶滅の危機に瀕しているか絶滅寸前)
・両生類は汚染や気候変動の影響を特に受けやすい
(1/3の種がすでに絶滅危惧種となっている)
・哺乳類も最近に絶滅した種が少なくない
(西アフリカのクロサイ、台湾のウンピョウ、クリスマス島のコウモリ、マダガスカルのカバ、
長江のヨウスコウカワイルカなど・・・)
・地球を野生生物にとって過酷な環境に変えれば人間に必要な動植物も危機に陥る
・この5億年で4回あった大量絶滅は自然現象だったが回復には数百万年かかっている
(シアノバクテリアの出した酸素による嫌気性細菌の大量絶滅には30億年かかっている)
・人類の活動により6回目の大量絶滅がはじまっている・・・
・哺乳類の自然絶滅頻度は200年に1種(100万年で約5000種)
→過去100年だけで数十種類の哺乳類が絶滅し多くの種が絶滅の危機に瀕している
・アマゾンのような主要生息地が崩壊すれば数十年で100万種が絶滅する(加速している)
・マダガスカルの例
→1万年前は熱帯林の楽園で多種の野生動物で溢れていた→人類により絶滅がはじまった
→過去50年で人口は500万から2500万に→対策がない限り固有種は全て絶滅する
(回避する方法)
・アフリカの解決策の例→サハラ砂漠を緑化して人類を移住させ立入禁止の保護区を増やす
→出生率を抑え少子化で徐々に人口を減らすアプローチも・・・
・海洋の解決策→商業漁業をただちに停止し、養殖を加速させるよう資金的支援をする
→ただし現在の養殖技術は完璧ではないので環境への影響に対処が必要
→発展途上国や石油産業の海洋汚染、酸性化、プラスチックなどにも対処が必要
・朝鮮半島の非武装地帯、チョルノービリ(チェルノブイリ)の広大な立入禁止区域の例
→結果的に自然が保護・再生されている
「熱帯雨林の崩壊」からの部分メモ
・20%が消失したアマゾン熱帯雨林の例(略)
→カナダのブリティッシュコロンビア州、ボルネオ島と周辺の島々、中央アフリカなども
・森林破壊の主な原因
①農業→放牧地や畑に→南アメリカ、アフリカ、ボルネオ島など
②伐採→材木として販売
③入植→移住して道路や建物を建設
④鉱山採掘→金、銅、スズなど
・1日あたり320平方キロ以上の熱帯雨林が失われている
→2日半でニューヨーク市や仙台市と同じ面積を切り開いていることになる
・アマゾンでは2019年だけで8万件の放火があり2万平方キロの熱帯雨林が焼失した
→報道されたが世の中の反応は薄く保護活動もあるが金儲け目的に比べれば焼け石に水
・アマゾンの蒸散(1日18兆リットル)と降雨(年間2500mm)の関係(略)
→樹木数が減ると好循環が弱まり減少が加速→生態系が崩壊、乾燥化する
→すでに乾季が50年前より最大1ヶ月長くなっている
(回避する方法)
①世界中で牛肉を食べるのを控える→牛肉は一般食肉の中で最も環境負荷が大きい
→肉牛の飼育禁止と人工肉の普及→熱帯雨林の保護→温室効果ガス(メタン)削減にも
②熱帯雨林でのパーム油の生産を控える
→熱帯雨林でなくても油を採るための植物は栽培できる→代替品はたくさんある
→藻類油・合成油など新しい代替品を探る方法もある
③熱帯雨林産の木材製品・農産物の輸入を控える
→象牙取引の禁止や捕鯨の一時停止と同じで伐採に歯止めがかかる
④1970年以降に農業のために伐採された熱帯雨林をすべて再植林する
→農業や鉱業などで伐採されたアマゾン熱帯雨林の20%は回復する
・奴隷制度、児童労働、産業廃棄物の河川放出、フロンガス使用、航空機内喫煙などと同様、
森林破壊も時代遅れの行為という認識を広める必要がある
・・・
さてさて・・・
人類滅亡の科学~「滅びのシナリオ」と「回避する方法」~とゆー本のご紹介
表紙カバー裏にあった惹句
そう、惹句にもあるように・・・
・滅びのシナリオを想像し研究することで、滅びを未然に防ぐための多くの実行可能な
手段を手にすることができる
・問題にあらかじめ接しておくことで、私たちの社会は(免疫力までは無理としても)
滅ばずに回復できる力を養う可能性は高くなるはず
つーことで、25の起こり得る滅びのシナリオとその回避方法が紹介されてました
裏表紙カバー裏にあった著者紹介
冒頭にあった奥付
例によって目次のみ
まあ、危機の回避方法の中には・・・
合衆国を分断するダム破壊を回避するには水中ソナーやレーダーや迎撃システムを備え、
一般人は一切立ち入り禁止にして上空に侵入した飛行物体は全て撃墜せよとか、もしも
9.11の前にこの本が出版されてたら、航空セキュリティが現在のように強化されていて、
あのテロは防げたかもとか、自動化による失業にはユニバーサル・ベーシック・インカム
(基本所得制)で対応すればいいとか、とりあえずはカーボンニュートラルとか、超知性体は
人類や地球を救うかもとか・・・
いかにもアメリカらしいテクノロジーの発展に期待する方法や、一方的な正義の押し付け、
国連などの国際機関より強大な権力を前提に?、地域事情を無視したような方法もあって
「ホントにそれでいいの?」と思ってしまう部分もありましたが・・・
もちろん、わたくしが知らなかった事実や、なるほどと納得した回避方法なども多くあって、
全体としてはけっこう興味深く読めました
とりあえず地球環境に関する3項目からの(自分の脳の外部記憶としての)部分メモです
いつもの「てきとーメモ」で思い違いもありますし、図版の多い分かりやすい入門書なので、
興味を持たれた方は本書を読まれるようオススメします
「地球温暖化の暴走」よりのメモ
・氷床コアのデータから測定した過去40万年間の大気中の二酸化炭素濃度の変化
→変動が繰り返されているが最小180ppm~最大290ppmの間で推移していた
→1800年頃には280ppmだったのが1900年初頭に急に300ppmに上昇している
→2015年~2016年のどこかでレッドラインとされる400ppmを越えた
(地質学上はあり得ない一瞬の出来事で産業革命以降の人類の活動によるもの)
→レッドラインを越えると気温上昇を2℃以下に抑えることは不可能になる
・世界では毎日1億バレルの石油を汲み上げ、その多くを燃やしている
→この過程で年間約40ギガトンの二酸化炭素が大気中に放出される
→石油以外にも石炭、天然ガスの燃焼、人為的な森林火災など
→2016年の地球の平均気温は1980年に比べて約1℃上昇している
・地球温暖化の暴走
→正のフィードバックループにより暴走する
→これは人類が排出する炭素の量が転換点に達すると始まる
→永久凍土が溶けはじめ内部有機物の炭素がバクテリアにより二酸化炭素やメタンになり放出
→さらに永久凍土の融解を加速する
→北極や南極で太陽光を反射していた白い氷が溶け、太陽光を吸収する茶色い土や青い海水が増え
太陽光を吸収して熱を生み出す→さらに氷の融解を加速する
→海が過去数十年間は二酸化炭素を吸収してきたが限界に近づいており以後は大気中にとどまる
→さらに温暖化が加速する(海に溶けた余剰二酸化炭素は炭酸になり海は酸性化している)
→暑さや干ばつで森林が枯れ始め、燃えると二酸化炭素が放出される
→さらに温暖化が進み、森林が弱って森林破壊が加速される
→雲も太陽光を反射するが少なくなると気温が上昇し、さらに温暖化が加速される
・この正のフィードバックループが始まれば、化石燃料を控えても植林しても焼け石に水
→永久凍土内の炭素量は大気中の炭素量を上回っているので始まれば温暖化は止められない
・オーストラリアでは1950年代に比べ2010年代の夏は1ヶ月長くなり冬は1ヶ月短くなっている
・グリーンランドの氷の減少は1990年代は年間100ギガトンで現在は年間300ギガトンに近い
・産業革命前280ppmだった大気中の二酸化炭素量が現在410ppmになっていることは事実
→気温の(地質学上)突然の上昇との相関関係は明らか→主な要因は化石燃料の消費
(回避する方法)
・現在の科学者のアドバイス
①今すぐ熱帯雨林のような生態系の人為的な破壊をやめる(別項あり)
②すべての化石燃料の使用を中止する(別項あり)
③ただちに大気や海から二酸化炭素の除去をはじめる
④二酸化炭素濃度を産業革命以前(300ppm以下)に戻す
・さらに深刻化した場合の気候工学による環境修復の選択肢
①火山噴火による二酸化硫黄と硫化水素が成層圏に達すれば太陽光を宇宙に反射し数年にわたる
冷却効果をもたらす→人為的に放出すれば即座に冷やせる
②同様に軌道上に大きな鏡(小さな鏡の集合体)を配置し太陽光を反射させる
→①より角度調整も離脱もコントロールしやすい
③ハリケーン発生地など冷やす必要がある海域の上空に海水を霧状に放出する(海雲輝度増加)
④プランクトン増殖を促進する化学物質(鉄紛)を海洋に添加する(海洋肥沃化)
→プランクトンが炭素を取り込み、死ぬとそのまま海底に沈む
⑤大量の新しい木を植える(植林)→成長する過程で大気中の二酸化炭素を取り込む
(ある提案書では一兆本の木で数百ギガトンの二酸化炭素を大気中から回収できるという)
⑥大気から二酸化炭素を取り除き固定する機械を作り太陽光や風力で設置する
→⑤の植林よりはるかに少ない面積で済む
・これらの気候工学的アプローチは果たして良いことなのか実行可能なのか?
→植林を除いて研究や人的資源が必要で影響も副作用も不明だが、進めるしかない
→アポロ計画時のNASAでは40万人のスタッフが働き莫大な資金が投入された
→僅か10年で頭脳・才能・科学・工学・資金を結集して全てを開発し成功させた
→人類が同じ目標を共有し未来のための賢明な投資を行うことができれば実現できるはず
「大量絶滅」よりの部分メモ
・海洋の魚類は漁船団による大量漁獲、海洋汚染、気候変動により絶滅に瀕している
(魚類については詳細な統計データがある)
・昆虫類は農薬使用と生息地の喪失により数を減らしている
(昆虫の総量は重量ベースで毎年2.5%ずつ減少しており数十年後には姿を消すとも)
・鳥類は生息地の減少、食料源の喪失、移動ルートの分断、猫などの捕食、風力発電の風車など
人工建造物により苦境に立たされている
(北アメリカでは、この50年で90億羽から60億羽に減少した)
・爬虫類は乱獲や気候変動など各方面で危機にさらされている
(爬虫類の20%が絶滅の危機に瀕しているか絶滅寸前)
・両生類は汚染や気候変動の影響を特に受けやすい
(1/3の種がすでに絶滅危惧種となっている)
・哺乳類も最近に絶滅した種が少なくない
(西アフリカのクロサイ、台湾のウンピョウ、クリスマス島のコウモリ、マダガスカルのカバ、
長江のヨウスコウカワイルカなど・・・)
・地球を野生生物にとって過酷な環境に変えれば人間に必要な動植物も危機に陥る
・この5億年で4回あった大量絶滅は自然現象だったが回復には数百万年かかっている
(シアノバクテリアの出した酸素による嫌気性細菌の大量絶滅には30億年かかっている)
・人類の活動により6回目の大量絶滅がはじまっている・・・
・哺乳類の自然絶滅頻度は200年に1種(100万年で約5000種)
→過去100年だけで数十種類の哺乳類が絶滅し多くの種が絶滅の危機に瀕している
・アマゾンのような主要生息地が崩壊すれば数十年で100万種が絶滅する(加速している)
・マダガスカルの例
→1万年前は熱帯林の楽園で多種の野生動物で溢れていた→人類により絶滅がはじまった
→過去50年で人口は500万から2500万に→対策がない限り固有種は全て絶滅する
(回避する方法)
・アフリカの解決策の例→サハラ砂漠を緑化して人類を移住させ立入禁止の保護区を増やす
→出生率を抑え少子化で徐々に人口を減らすアプローチも・・・
・海洋の解決策→商業漁業をただちに停止し、養殖を加速させるよう資金的支援をする
→ただし現在の養殖技術は完璧ではないので環境への影響に対処が必要
→発展途上国や石油産業の海洋汚染、酸性化、プラスチックなどにも対処が必要
・朝鮮半島の非武装地帯、チョルノービリ(チェルノブイリ)の広大な立入禁止区域の例
→結果的に自然が保護・再生されている
「熱帯雨林の崩壊」からの部分メモ
・20%が消失したアマゾン熱帯雨林の例(略)
→カナダのブリティッシュコロンビア州、ボルネオ島と周辺の島々、中央アフリカなども
・森林破壊の主な原因
①農業→放牧地や畑に→南アメリカ、アフリカ、ボルネオ島など
②伐採→材木として販売
③入植→移住して道路や建物を建設
④鉱山採掘→金、銅、スズなど
・1日あたり320平方キロ以上の熱帯雨林が失われている
→2日半でニューヨーク市や仙台市と同じ面積を切り開いていることになる
・アマゾンでは2019年だけで8万件の放火があり2万平方キロの熱帯雨林が焼失した
→報道されたが世の中の反応は薄く保護活動もあるが金儲け目的に比べれば焼け石に水
・アマゾンの蒸散(1日18兆リットル)と降雨(年間2500mm)の関係(略)
→樹木数が減ると好循環が弱まり減少が加速→生態系が崩壊、乾燥化する
→すでに乾季が50年前より最大1ヶ月長くなっている
(回避する方法)
①世界中で牛肉を食べるのを控える→牛肉は一般食肉の中で最も環境負荷が大きい
→肉牛の飼育禁止と人工肉の普及→熱帯雨林の保護→温室効果ガス(メタン)削減にも
②熱帯雨林でのパーム油の生産を控える
→熱帯雨林でなくても油を採るための植物は栽培できる→代替品はたくさんある
→藻類油・合成油など新しい代替品を探る方法もある
③熱帯雨林産の木材製品・農産物の輸入を控える
→象牙取引の禁止や捕鯨の一時停止と同じで伐採に歯止めがかかる
④1970年以降に農業のために伐採された熱帯雨林をすべて再植林する
→農業や鉱業などで伐採されたアマゾン熱帯雨林の20%は回復する
・奴隷制度、児童労働、産業廃棄物の河川放出、フロンガス使用、航空機内喫煙などと同様、
森林破壊も時代遅れの行為という認識を広める必要がある
・・・
さてさて・・・
2023年08月19日
帆立の詫び状・てんやわんや編より
とーとつですが・・・
帆立の詫び状・てんやわんや編(新川帆立著・幻冬舎文庫)とゆーエッセイ集のご紹介であります
表紙カバー裏にあった著者紹介
裏表紙カバーにあった惹句
奥付
例によって目次のみ・・・
以下、数タイトルからの読後メモで、(カッコ内)はわたくしの感想なり補足です
(著作物なので記事公開に問題があるようなら、すぐ非公開にします)
「イエローストーンで政治談議」より
ユタ州の白人ガイドで西部の古き善き保守の香りがするビルさんの話
・軍隊では18歳で銃を持たせるのに民間だけ21歳にする銃規制は個人より国家優先なので反対
→軍隊も21歳からにするなら理解できる
→アリゾナ州では隣接するメキシコのギャング集団による誘拐事件が多発していたが銃規制の緩和で
市民が銃を所持するようになり件数が減った
→このような国境地域などの現実をワシントンで働く官僚は理解していない
→だから銃規制は一律の連邦法ではなく各州の州法で行うべき
(これは日本の獣害のひどい地域独自の狩猟・銃規制関連の法改正や条例制定に繋がる議論かも?)
・土地収用は州によっては営利施設にも適用されている(法人税が増え公共の利益になるから)
→憲法上の財産権の侵害なのだから厳格に適用されるべきで反対
→マイノリティの権利のための憲法の拡大解釈にも反対
→どちらも必要なら憲法を修正すべき
・個別の論点は私とは異なるが理解はできる
→法政策の話では絶対にない(法学論理的におかしい)意見と、一定の筋の通った意見がある
→一定の筋の通った意見は複数存在し、どれに説得力を見出すかについては個人差が出る
→だから正解がないというわけではなく、それぞれの立場に基づいて議論し「どの意見が一番説得的か」
のすり合わせをすることはできる
→法学の議論はこのようにして進む
(そう、これが国会や地方議会の本来の役割でもあるはずなんですが、今は真摯な議論なんかなく力まかせ、
野党とのすり合わせどころか、国民や市民への説明さえ怪しいような与党意見がそのまま・・・)
→理系分野の研究でも「今のところ一番説得的な仮説」が限度だろう→常に反証の可能性があるから
・立場の異なる者同士の議論が大事で有益なのだが、現状は非常に難しくなっている
→世相のせいなのか、SNSの影響なのか、知的水準の問題なのかは分からないが・・・
・絶対にない意見を議論する必要はないが、最近は絶対にないという判定がすぐに出ている気がする
→考えたり調べたりすると一定の筋が見えることもあるのに・・・
→相手の筋を理解することと、それでも自分が正しいと考えることは両立する
・考えすぎてSNSでは何も言えないが、割り切れない問題を考え続けるのが知的に誠実な姿勢だと思う
(大和ミュージアム館長の戸高一成氏もTV番組で「最後まで考え続けること、思考停止しないこと」が
最も大事だと、特攻の例からおっしゃってましたね・・・
考え続けていたら、勝つ見込みがなくなった時点で講和なのに、思考停止していたと・・・)
「アニメにハマりました」より
・食わず嫌いの筆頭がアニメだった→お約束や内輪ノリが苦手で、オタク言論空間も得意ではなかった
→純文学も何が言いたいか分からなかったが、高等教育を受けて初めて魅力や面白さに気づいた
→だから「分からない」だけで嫌いになってはいけない
→分からないという気持ちを誤魔化さず大切に抱えておくと後に解決することもある
→自分の「分からない」は許容するが、他人には押し付けない努力をする→分かりやすさ
→学術書や専門書は内容の良さと分かりやすさは一致しないが小説では分かりやすさを諦めない
・「分からない」はストレスで疎外感が残り、そのジャンルや物事への苦手意識が蓄積されていく
→小説の書き手になって、この疎外感を被害妄想ではなく実感している
→たとえばメインターゲット読者を想定して物語を設計すれば、それ以外は振り落とされる
→性別、年齢、居住地、教育水準、文化水準などなど・・・
→私自身が「振り落とされる側」だったので、誰かに深く刺さればいいと簡単には割り切れない
・アニメは面白いと思うだけで深く鑑賞しなかったが、大人になり作家になって目から鱗が・・・(略)
「イケてる女性への道」より
・年齢ほど相対的なものはない
→私の小説の師匠は78歳だが84歳の人を指し「あの人は年寄りだから話が長い」と言う
→高校生とのイベントで26歳まで小説家を諦めなかった秘訣を訊かれ、作家としては早いデビューだと
思っていたので驚いたが、高校生にとってはかなり年長に感じるのだろう
・いい感じに歳を重ねた大人の女性、イケてる女性になりたいと思い本を色々と読んでみた
→女性への一番オススメの図書は、川崎淳与さん著「80代の今が最高と言える」
「税金と戦争と国際法」より
・税金には何らかの正当化根拠が必要だが盗賊には不要?(法哲学講義での井上達夫先生の仮説提示)
→悪法も法→正当化を試みている限り改正までは従わなければならない→改正がなければ革命?
・政治家が不祥事の言い訳をしている間は不十分でもいいが、認めたうえで開き直ればアウト
→せめて建前は守れということ
・近年の言論空間では建前を笑い冷やかす「冷笑系」言説が見られる
→戦争反対というお題目をいくら唱えても仕方がない?
→戦争はいけないという建前が存在する世界での戦争と存在しない世界での戦争は同じではない
→侵略戦争は国際法違反というが、強制力の乏しい国際法など無意味?
→ロシアのウクライナ侵攻を止められない国際法を学ぶ意味はあるのか?
→国際法という建前があるから非難もできるし外交を進めることもできる
→建前を唱え続けることそのものに、法と正義の支配する世界の根底があると思う
(確かに国連などの拘束力のない宣言や主要国の加盟が少ない条約でも、その存在意義は大きいはず)
・冷笑系は個人的に好きになれず学問的な誠実さに欠けるものも多いが、それにすがらないと気持ちを
保てない現実があるのも分かるから、難しいなあと思う日々・・・
(当サイトでも、ナナメに構えることで何となく満足してるような記事もあるし、確かに難しいです)
「東大女子という呪い」より
・東大男子はモテるが東大女子はモテない、女性弁護士も同様という言い伝え→どちらも嘘だと断言できる
→周りの知人友人を見ると、身のふたもない話だが美人だったらモテている
→たとえ不美人でもダサくても、毎日が楽しくて経済的にも困らず、恋愛や結婚の優先順位が低いので、
彼女らは恋愛的な魅力に乏しいと判断されることはある
→加えて高学歴やハイキャリアというだけで一部の人から嫌われることもある
→さらに高学歴集団やハイキャリア集団は男性向けに設計されており女性はお客さんに過ぎない
・性別に基づいた規範は未だに根強くダブルバインド(矛盾する二つの規範)で身動きがとれなくなる
→東大に入ったことで生きづらくなった面は確実にあるが、知識や教養やキャリアを手に入れると、
モテないことなど全く気にならないほどの楽しみや自由がある
→なので若い女の子たちには、好きなだけ勉強して、思いきり働けばいいと伝えたい
・学ぶことが好きだし、知識がないと他人を尊重できない、優しさは知識に下支えされていると思う
→だから今後も中高生には「勉強しろおばさん」としてやっていこうと思う
「新人作家1年目の結論」より
・山村正夫記念小説講座では受講生同士の作品講評は禁止
→作品の良し悪しはプロにしか分からず素人の口出しは無益どころか有害にもなり得ると思う
・ゲンロン大森望SF創作講座ではプロを目指す必要はなくSFファンとして聴講してもいい
→純文学と接近した中間小説的なものを書いてる人も多く、詳しい人、読める人、知的水準が高い層に
向けて書いていて、リーダビリティよりも先進性が優先される印象
→一般文芸やエンタメ商業小説は私にとっては手軽に楽しめる普段の家庭料理で、たまには重いものも
いいが毎日は食べられない
→SF創作講座で触れる小説群はエスニックフード的な楽しみで、作り方は全然分からないし人を選ぶ作り
→妙にハマることもあり、ハマると自分でも作ってみたくなる感じの魅力がある
・よく分からないけど書けるものを書くしかないというのが新人作家1年目の歯切れの悪い結論
→自分が書きたいものの中で他人が読みたいだろうと思う部分を書けばよいと思うので悩まない
「悪気のないおじさんたち」より
・年齢や性別で区別したくないが、私に失礼な言動をとったのは驚くほど全員が中高年男性
→爽やかにニコニコしながらの言動で殆どの場合は悪気がないようにもみえる
→好意をどう処理していいか分からず暴発している感じもあるので怒らないが、傷は残って蓄積する
→事情もあるだろうし好き勝手に生きてくれと思っているが「黒腹の手帳」に詳細に記録している
→いずれ私が大御所になれば(その頃には彼らは殆ど鬼籍だろうが)暴露本にして出版しようと・・・
→悔い改めたほうがいいが、許すつもりはない→たいてい作家は執念深いのだ
・同じ経験を持つ人に向けて自分の経験を語りたい
→あなたが傷つけられるのは、あなたのせいではなく、何をしても言われる時には言われるし、
理由なく(しかも悪気なく)石を投げてくる人はいるのだと・・・
・その後ドラマ化もあり売れたからか、この手のおじさんが寄ってこない、どこに行ったのか???
→今年デビューした新人作家に群がっているのかも・・・無意識に対象を選んでいるのだろう・・・
云々・・・
他のエピソードや思いも(ブランドバッグ愛を除き)どれもニヤニヤなるほどと楽しく読めました
わたくしが気になった部分だけのメモですので、読書の参考になれば・・・
帆立の詫び状・てんやわんや編(新川帆立著・幻冬舎文庫)とゆーエッセイ集のご紹介であります
表紙カバー裏にあった著者紹介
裏表紙カバーにあった惹句
奥付
例によって目次のみ・・・
以下、数タイトルからの読後メモで、(カッコ内)はわたくしの感想なり補足です
(著作物なので記事公開に問題があるようなら、すぐ非公開にします)
「イエローストーンで政治談議」より
ユタ州の白人ガイドで西部の古き善き保守の香りがするビルさんの話
・軍隊では18歳で銃を持たせるのに民間だけ21歳にする銃規制は個人より国家優先なので反対
→軍隊も21歳からにするなら理解できる
→アリゾナ州では隣接するメキシコのギャング集団による誘拐事件が多発していたが銃規制の緩和で
市民が銃を所持するようになり件数が減った
→このような国境地域などの現実をワシントンで働く官僚は理解していない
→だから銃規制は一律の連邦法ではなく各州の州法で行うべき
(これは日本の獣害のひどい地域独自の狩猟・銃規制関連の法改正や条例制定に繋がる議論かも?)
・土地収用は州によっては営利施設にも適用されている(法人税が増え公共の利益になるから)
→憲法上の財産権の侵害なのだから厳格に適用されるべきで反対
→マイノリティの権利のための憲法の拡大解釈にも反対
→どちらも必要なら憲法を修正すべき
・個別の論点は私とは異なるが理解はできる
→法政策の話では絶対にない(法学論理的におかしい)意見と、一定の筋の通った意見がある
→一定の筋の通った意見は複数存在し、どれに説得力を見出すかについては個人差が出る
→だから正解がないというわけではなく、それぞれの立場に基づいて議論し「どの意見が一番説得的か」
のすり合わせをすることはできる
→法学の議論はこのようにして進む
(そう、これが国会や地方議会の本来の役割でもあるはずなんですが、今は真摯な議論なんかなく力まかせ、
野党とのすり合わせどころか、国民や市民への説明さえ怪しいような与党意見がそのまま・・・)
→理系分野の研究でも「今のところ一番説得的な仮説」が限度だろう→常に反証の可能性があるから
・立場の異なる者同士の議論が大事で有益なのだが、現状は非常に難しくなっている
→世相のせいなのか、SNSの影響なのか、知的水準の問題なのかは分からないが・・・
・絶対にない意見を議論する必要はないが、最近は絶対にないという判定がすぐに出ている気がする
→考えたり調べたりすると一定の筋が見えることもあるのに・・・
→相手の筋を理解することと、それでも自分が正しいと考えることは両立する
・考えすぎてSNSでは何も言えないが、割り切れない問題を考え続けるのが知的に誠実な姿勢だと思う
(大和ミュージアム館長の戸高一成氏もTV番組で「最後まで考え続けること、思考停止しないこと」が
最も大事だと、特攻の例からおっしゃってましたね・・・
考え続けていたら、勝つ見込みがなくなった時点で講和なのに、思考停止していたと・・・)
「アニメにハマりました」より
・食わず嫌いの筆頭がアニメだった→お約束や内輪ノリが苦手で、オタク言論空間も得意ではなかった
→純文学も何が言いたいか分からなかったが、高等教育を受けて初めて魅力や面白さに気づいた
→だから「分からない」だけで嫌いになってはいけない
→分からないという気持ちを誤魔化さず大切に抱えておくと後に解決することもある
→自分の「分からない」は許容するが、他人には押し付けない努力をする→分かりやすさ
→学術書や専門書は内容の良さと分かりやすさは一致しないが小説では分かりやすさを諦めない
・「分からない」はストレスで疎外感が残り、そのジャンルや物事への苦手意識が蓄積されていく
→小説の書き手になって、この疎外感を被害妄想ではなく実感している
→たとえばメインターゲット読者を想定して物語を設計すれば、それ以外は振り落とされる
→性別、年齢、居住地、教育水準、文化水準などなど・・・
→私自身が「振り落とされる側」だったので、誰かに深く刺さればいいと簡単には割り切れない
・アニメは面白いと思うだけで深く鑑賞しなかったが、大人になり作家になって目から鱗が・・・(略)
「イケてる女性への道」より
・年齢ほど相対的なものはない
→私の小説の師匠は78歳だが84歳の人を指し「あの人は年寄りだから話が長い」と言う
→高校生とのイベントで26歳まで小説家を諦めなかった秘訣を訊かれ、作家としては早いデビューだと
思っていたので驚いたが、高校生にとってはかなり年長に感じるのだろう
・いい感じに歳を重ねた大人の女性、イケてる女性になりたいと思い本を色々と読んでみた
→女性への一番オススメの図書は、川崎淳与さん著「80代の今が最高と言える」
「税金と戦争と国際法」より
・税金には何らかの正当化根拠が必要だが盗賊には不要?(法哲学講義での井上達夫先生の仮説提示)
→悪法も法→正当化を試みている限り改正までは従わなければならない→改正がなければ革命?
・政治家が不祥事の言い訳をしている間は不十分でもいいが、認めたうえで開き直ればアウト
→せめて建前は守れということ
・近年の言論空間では建前を笑い冷やかす「冷笑系」言説が見られる
→戦争反対というお題目をいくら唱えても仕方がない?
→戦争はいけないという建前が存在する世界での戦争と存在しない世界での戦争は同じではない
→侵略戦争は国際法違反というが、強制力の乏しい国際法など無意味?
→ロシアのウクライナ侵攻を止められない国際法を学ぶ意味はあるのか?
→国際法という建前があるから非難もできるし外交を進めることもできる
→建前を唱え続けることそのものに、法と正義の支配する世界の根底があると思う
(確かに国連などの拘束力のない宣言や主要国の加盟が少ない条約でも、その存在意義は大きいはず)
・冷笑系は個人的に好きになれず学問的な誠実さに欠けるものも多いが、それにすがらないと気持ちを
保てない現実があるのも分かるから、難しいなあと思う日々・・・
(当サイトでも、ナナメに構えることで何となく満足してるような記事もあるし、確かに難しいです)
「東大女子という呪い」より
・東大男子はモテるが東大女子はモテない、女性弁護士も同様という言い伝え→どちらも嘘だと断言できる
→周りの知人友人を見ると、身のふたもない話だが美人だったらモテている
→たとえ不美人でもダサくても、毎日が楽しくて経済的にも困らず、恋愛や結婚の優先順位が低いので、
彼女らは恋愛的な魅力に乏しいと判断されることはある
→加えて高学歴やハイキャリアというだけで一部の人から嫌われることもある
→さらに高学歴集団やハイキャリア集団は男性向けに設計されており女性はお客さんに過ぎない
・性別に基づいた規範は未だに根強くダブルバインド(矛盾する二つの規範)で身動きがとれなくなる
→東大に入ったことで生きづらくなった面は確実にあるが、知識や教養やキャリアを手に入れると、
モテないことなど全く気にならないほどの楽しみや自由がある
→なので若い女の子たちには、好きなだけ勉強して、思いきり働けばいいと伝えたい
・学ぶことが好きだし、知識がないと他人を尊重できない、優しさは知識に下支えされていると思う
→だから今後も中高生には「勉強しろおばさん」としてやっていこうと思う
「新人作家1年目の結論」より
・山村正夫記念小説講座では受講生同士の作品講評は禁止
→作品の良し悪しはプロにしか分からず素人の口出しは無益どころか有害にもなり得ると思う
・ゲンロン大森望SF創作講座ではプロを目指す必要はなくSFファンとして聴講してもいい
→純文学と接近した中間小説的なものを書いてる人も多く、詳しい人、読める人、知的水準が高い層に
向けて書いていて、リーダビリティよりも先進性が優先される印象
→一般文芸やエンタメ商業小説は私にとっては手軽に楽しめる普段の家庭料理で、たまには重いものも
いいが毎日は食べられない
→SF創作講座で触れる小説群はエスニックフード的な楽しみで、作り方は全然分からないし人を選ぶ作り
→妙にハマることもあり、ハマると自分でも作ってみたくなる感じの魅力がある
・よく分からないけど書けるものを書くしかないというのが新人作家1年目の歯切れの悪い結論
→自分が書きたいものの中で他人が読みたいだろうと思う部分を書けばよいと思うので悩まない
「悪気のないおじさんたち」より
・年齢や性別で区別したくないが、私に失礼な言動をとったのは驚くほど全員が中高年男性
→爽やかにニコニコしながらの言動で殆どの場合は悪気がないようにもみえる
→好意をどう処理していいか分からず暴発している感じもあるので怒らないが、傷は残って蓄積する
→事情もあるだろうし好き勝手に生きてくれと思っているが「黒腹の手帳」に詳細に記録している
→いずれ私が大御所になれば(その頃には彼らは殆ど鬼籍だろうが)暴露本にして出版しようと・・・
→悔い改めたほうがいいが、許すつもりはない→たいてい作家は執念深いのだ
・同じ経験を持つ人に向けて自分の経験を語りたい
→あなたが傷つけられるのは、あなたのせいではなく、何をしても言われる時には言われるし、
理由なく(しかも悪気なく)石を投げてくる人はいるのだと・・・
・その後ドラマ化もあり売れたからか、この手のおじさんが寄ってこない、どこに行ったのか???
→今年デビューした新人作家に群がっているのかも・・・無意識に対象を選んでいるのだろう・・・
云々・・・
他のエピソードや思いも(ブランドバッグ愛を除き)どれもニヤニヤなるほどと楽しく読めました
わたくしが気になった部分だけのメモですので、読書の参考になれば・・・
2023年07月15日
華竜の宮
華竜の宮・・・
まずは表紙カバー裏にあった著者紹介から
デビュー作で第4回小松左京賞、本作でベストSF2010・国内編の第1位と、
第32回日本SF大賞を受賞された作家
裏表紙カバーにあった惹句とゆーか、あらすじであります
奥付
2010年10月に刊行された単行本の文庫版ですが、わたくし著者の作品は初読でした
例によって目次のご紹介・・・
以下、プロローグのてきとーな要約・・・
・環太平洋で地震の頻発が続く2017年(本作では7年後の未来ですね)、学術会議を終えた
新進気鋭の学者二人(モデルあり)が、巨大地震で大陸棚が崩壊しメタンハイドレート層から
(二酸化炭素の20倍の温室効果を持つ)メタンガスが発生した場合の海面上昇は8mになるが、
それに続くポリネシア・ホットプルームの上昇による海面上昇は250mに達するはずだと、
議論しているあたりからはじまります
・この理論が現実となり、やがて海の広さは白亜紀なみになって(ウィキによれば白亜紀の
海面上昇は120mとされてますが、プルームテクトニクス理論による本書の設定では258m)、
平野部が大半だった国は機能崩壊、生き残った民族の大移動もあって臨時の海上都市だけでは
限界になり各地で武力衝突がエスカレート、世界はいくつかの連合に分かれて、遺伝子操作
による人工生命体や人工知性体まで使った大殺戮と破壊の時代が続きます
・人類滅亡直前で一応の停戦合意に達したものの、列島から小さな群島と化した日本では、
隙間の人工浮島を合わせても人口は1/10になり、大陸側からの災厄が多かったことから、
反ユーラシア側(アメリカ側)連合の一員になって、名目上の独立は維持しています
(まあ、今も似たようなものか・・・)
・海は生活空間になり、飼い馴らした巨大海洋生物への寄生に適した人工種族「海上民」が、
巨大サンショウウオに似た「魚舟」で暮らし、各領海を越えて公海にまで進出してますが、
海底に沈んだ都市や工場や研究所などから流出し続ける汚染物質や分子機械などにより、
海洋生物には様々な変異が起きています
(少数になった旧来の人類は「陸上民」と呼ばれるようになっています)
・これが最初のホットプルーム上昇から数百年の歳月が経過した25世紀の世界であり、
「人類の文明と科学技術は後退と進歩、つまり揺り戻しを経験しながら、新しい環境に徐々に
適応していって、人類が迎えた第二の繁栄時代」だったのですが・・・
と、この時代を舞台にした第1部に入って行きます
このプロローグつーか設定説明が、プルームテクトニクス理論や遺伝子操作による人工生命体、
分子レベルの機械進化など、当時最新の研究成果をもとに詳しく描かれてて、さすが本格SF、
これは竹内均教授などによるプレートテクトニクス理論が、まだ仮説だった頃に発表された、
小松左京氏による「日本沈没」と同じパターンで、数々の賞を総ナメしたのもなるほどと納得、
物語世界に惹き込まれていきました
小説なので本編までは紹介できませんが、わたくしの思いつくままの感想・・・
・主人公は優秀有能な外交官だけど、自分の良心に従う行動をして本省の出世街道を外され、
辺境をタライ廻しにされながらも、陸上民と海上民との交渉を続けているのですが、この姿が
とても爽やかで、主人公を陰ながら支援する人たちの姿も爽やか、逆に意思決定する側の汚さ
醜さが際立ってて、その点では気持ちのいい勧善懲悪・海洋冒険モノとして楽しめました
・組織に属する側の理想と現実、自由に生きようとする側の理想と現実が、現代社会の鏡として
未来の極限社会という設定にすることによって、見事に表現されてました
これは戦場という極限状況を設定することによって、究極の人間性を描く戦争映画と同じで、
わたくしがSFや戦争モノの小説や映画が大好きな理由のひとつなのかも知れません
・自然災害や環境破壊と人類の努力、さらに政治の駆け引きから地球生命体のあり方まで、
もちろん水上や水中の戦闘シーンもあって・・・まさに正統派SF小説の真骨頂ですね
ちなみに著者は、文庫版(2012年11月)のあとがきに・・・
・単行本は2010年10月、その後の2011年3月に東日本大震災があり、しばしばコメントを
求められたが、殆どのコメントを控えさせてもらっている
・自分は1995年1月の阪神淡路大震災の際、神戸に住んでいて震災の影響で家族を亡くしている
・なので本作は1995年当時の社会状況に対する返歌として書かれている部分がある
・個人の体験から人類としての未来を幻視するという、SF特有の発想で書かれた作品だが、
小説とはそのような要素だけで書けるものではない
・海洋世界への憧れ、地球や生命の不思議に対する感動、ヒトと他知性と機械の理想的な
共生関係など、SFの形をとったロマンティシズムの横溢する作品で、こちらのほうこそ
読者の心に残りますように・・・
・たぶん、空想する心、想像する心こそが、私たちが生きるこの情けない現実に対する、
最も強力なカウンターブローに成り得るのですから・・・
といった内容を書かれてましたが、なるほどと納得しました
さらに、物語を一人称で語るのは主人公のアシスタント知性体(ネットワーク上の仮想人格)で、
常に繋がっている主人公との脳内会話や他のアシスタント知性体との会話でも物語を進めて
いくのですが、このような小説手法は今回はじめて知りました
で、読み終わってから、この作品が10年以上前に書かれていることに、あらためて驚きました
そう、ChatGPTなどの普及でパーソナルAIつーのが、ごく身近に感じられる現時点では、
この手法に全く違和感はないけど、10年以上前ならどうだったかと・・・
まずは表紙カバー裏にあった著者紹介から
デビュー作で第4回小松左京賞、本作でベストSF2010・国内編の第1位と、
第32回日本SF大賞を受賞された作家
裏表紙カバーにあった惹句とゆーか、あらすじであります
奥付
2010年10月に刊行された単行本の文庫版ですが、わたくし著者の作品は初読でした
例によって目次のご紹介・・・
以下、プロローグのてきとーな要約・・・
・環太平洋で地震の頻発が続く2017年(本作では7年後の未来ですね)、学術会議を終えた
新進気鋭の学者二人(モデルあり)が、巨大地震で大陸棚が崩壊しメタンハイドレート層から
(二酸化炭素の20倍の温室効果を持つ)メタンガスが発生した場合の海面上昇は8mになるが、
それに続くポリネシア・ホットプルームの上昇による海面上昇は250mに達するはずだと、
議論しているあたりからはじまります
・この理論が現実となり、やがて海の広さは白亜紀なみになって(ウィキによれば白亜紀の
海面上昇は120mとされてますが、プルームテクトニクス理論による本書の設定では258m)、
平野部が大半だった国は機能崩壊、生き残った民族の大移動もあって臨時の海上都市だけでは
限界になり各地で武力衝突がエスカレート、世界はいくつかの連合に分かれて、遺伝子操作
による人工生命体や人工知性体まで使った大殺戮と破壊の時代が続きます
・人類滅亡直前で一応の停戦合意に達したものの、列島から小さな群島と化した日本では、
隙間の人工浮島を合わせても人口は1/10になり、大陸側からの災厄が多かったことから、
反ユーラシア側(アメリカ側)連合の一員になって、名目上の独立は維持しています
(まあ、今も似たようなものか・・・)
・海は生活空間になり、飼い馴らした巨大海洋生物への寄生に適した人工種族「海上民」が、
巨大サンショウウオに似た「魚舟」で暮らし、各領海を越えて公海にまで進出してますが、
海底に沈んだ都市や工場や研究所などから流出し続ける汚染物質や分子機械などにより、
海洋生物には様々な変異が起きています
(少数になった旧来の人類は「陸上民」と呼ばれるようになっています)
・これが最初のホットプルーム上昇から数百年の歳月が経過した25世紀の世界であり、
「人類の文明と科学技術は後退と進歩、つまり揺り戻しを経験しながら、新しい環境に徐々に
適応していって、人類が迎えた第二の繁栄時代」だったのですが・・・
と、この時代を舞台にした第1部に入って行きます
このプロローグつーか設定説明が、プルームテクトニクス理論や遺伝子操作による人工生命体、
分子レベルの機械進化など、当時最新の研究成果をもとに詳しく描かれてて、さすが本格SF、
これは竹内均教授などによるプレートテクトニクス理論が、まだ仮説だった頃に発表された、
小松左京氏による「日本沈没」と同じパターンで、数々の賞を総ナメしたのもなるほどと納得、
物語世界に惹き込まれていきました
小説なので本編までは紹介できませんが、わたくしの思いつくままの感想・・・
・主人公は優秀有能な外交官だけど、自分の良心に従う行動をして本省の出世街道を外され、
辺境をタライ廻しにされながらも、陸上民と海上民との交渉を続けているのですが、この姿が
とても爽やかで、主人公を陰ながら支援する人たちの姿も爽やか、逆に意思決定する側の汚さ
醜さが際立ってて、その点では気持ちのいい勧善懲悪・海洋冒険モノとして楽しめました
・組織に属する側の理想と現実、自由に生きようとする側の理想と現実が、現代社会の鏡として
未来の極限社会という設定にすることによって、見事に表現されてました
これは戦場という極限状況を設定することによって、究極の人間性を描く戦争映画と同じで、
わたくしがSFや戦争モノの小説や映画が大好きな理由のひとつなのかも知れません
・自然災害や環境破壊と人類の努力、さらに政治の駆け引きから地球生命体のあり方まで、
もちろん水上や水中の戦闘シーンもあって・・・まさに正統派SF小説の真骨頂ですね
ちなみに著者は、文庫版(2012年11月)のあとがきに・・・
・単行本は2010年10月、その後の2011年3月に東日本大震災があり、しばしばコメントを
求められたが、殆どのコメントを控えさせてもらっている
・自分は1995年1月の阪神淡路大震災の際、神戸に住んでいて震災の影響で家族を亡くしている
・なので本作は1995年当時の社会状況に対する返歌として書かれている部分がある
・個人の体験から人類としての未来を幻視するという、SF特有の発想で書かれた作品だが、
小説とはそのような要素だけで書けるものではない
・海洋世界への憧れ、地球や生命の不思議に対する感動、ヒトと他知性と機械の理想的な
共生関係など、SFの形をとったロマンティシズムの横溢する作品で、こちらのほうこそ
読者の心に残りますように・・・
・たぶん、空想する心、想像する心こそが、私たちが生きるこの情けない現実に対する、
最も強力なカウンターブローに成り得るのですから・・・
といった内容を書かれてましたが、なるほどと納得しました
さらに、物語を一人称で語るのは主人公のアシスタント知性体(ネットワーク上の仮想人格)で、
常に繋がっている主人公との脳内会話や他のアシスタント知性体との会話でも物語を進めて
いくのですが、このような小説手法は今回はじめて知りました
で、読み終わってから、この作品が10年以上前に書かれていることに、あらためて驚きました
そう、ChatGPTなどの普及でパーソナルAIつーのが、ごく身近に感じられる現時点では、
この手法に全く違和感はないけど、10年以上前ならどうだったかと・・・
2023年06月30日
定吉七番の復活!!!
とーとつですが・・・
表表紙
裏表紙
帯の惹句
そう、わたくしが愛したスパイ定吉七番(セブン)の最新刊であります!!!
ま、最新刊とはいっても・・・
13年前に小説現代に連載され、10年前に刊行されてた本なんでしゅが・・・
定吉七番(セブン)シリーズ・・・
わたくしは1作目(1985年)から5作目(1986年)まで愛読してましたが、6作目7作目(1988年)は、
仕事が多忙な時期だったので刊行も知らないまま絶版となってたようで、8作目(1994~5年)は
小説現代に連載されたものの当時のサリン事件の影響により単行本化されなかったとのことで、
やはり知りませんでした
著者の作品では、実家に少なくとも文庫版4冊5作と単行本「戦場は僕らのオモチャ箱」が
あるのは覚えてた(著者の作品リストを見ると他にもけっこう読んでた)のですが・・・
最近、NATO東京事務所設置に関するnon☆postさんのツイートをきっかけに、懐かしくて
検索したところ、何と二十数年の時を経て!!!2013年に続編が刊行されていたことを知り、
思わず図書館に予約していた次第・・・(ちなみに本書の文庫版も刊行されてます)
閑話休題
例によって目次のみ・・・
目次にある著者の前口上によれば・・・
定吉七番が誕生したのはちょうど関西バブルの絶頂期で、その後は「アホな現実が小説世界を
はるかに凌駕する状況となり、いまさら東西摩擦でもあるまい」と、ずっと続編の執筆依頼を
断り続けていたところ、最近、大阪府を都にするとかを叫ぶ法律家の市長が現れたりして、
新秩序やら事業仕分けやらリストラやら文化補助削減やらで、人々が閉塞して混乱する中、
「古きに復し廃れたるを興さんとするも、また一興なり」と、定吉の復活を決意されたそうです
(そーいや文化財が行政で保管できずOSKの秘密基地に積み上げられてる場面もありました)
2010年頃の雑誌初出なので(2013年の単行本化時点では)時事ネタが若干古いけど御容赦を、
ともありましたが、今回はじめて読んだわたくしには、2010年頃の大阪どころか世界中の
世相が詳しく盛り込まれてて、じつに懐かしく貴重な一冊となりました
で、オハナシは・・・
帯の惹句にもあるとおり、二十数年前にNATTO幹部を追っていたスイス・アルプス山中で
返り討ちに遭い、氷河クレバスの底深くに落ちて死んだと思われていた定吉七番(セブン)が、
2010年に偶然、氷河の温暖化調査団によって冷凍保存状態で発見され、世界各国が稀少な
研究材料として奪い合う中、OSK(大阪商工会議所秘密会所)が、大阪オリンピック辞退の
見返りとして(それで東京になったんやっ!)密かに入手、南港WTC地下にある(あったのかっ!)
OSKの秘密基地で培養液の中から蘇る・・・あたりまでがプロローグ・・・
で、舞台は本町のレトロビルから枚方の古いアパート、淀川河川敷のホームレス小屋、
スイス国境付近の旧ドイツ要塞跡にあるナチス残党の秘密基地などなどから、やがて、
福島県境の新潟県側にある、田長巻子率いるNATTO過激派の秘密基地へ・・・
小説なので驚愕の展開には触れませんが1980年代のシリーズにさらに磨きがかかったとゆーか、
さらにハチャメチャになったとゆーか、雑誌連載されていた2010年までの007シリーズはじめ
あらゆる映画、小説、コミックス、アニメ、TV番組などのパロディが、これでもかとばかり
盛り込まれてて、1頁ごとに何度も抱腹絶倒しました
例えば・・・
・リクルートスーツ姿でビシッと決めているOSKの美人エージェント岡田真弓が、
初対面の際には「私の名前は真弓、岡田真弓・・・」と名乗るとか
(その名前で往年の阪神ファンからは必ず昔話を聞かされ辟易してるのですが)
・経費削減でリストラされた定吉七番の元上司が、淀川河川敷の小屋でアルミ缶収集しながら、
自然繁殖した巨大アリゲーターやアナコンダらと仲良く暮らしているとか
・スイスの草原から村の集積所へミルク缶を運ぶハイディの、祖父譲りのケッテンクラートとか
(ハイディの幼馴染の恋人がペーテルで、今は都会に住む友人がクララとか)
・新潟の秘密道路に突如現れるM1エイブラムズ(しかも105mm砲搭載の初期型)とか・・・
・それをRPG7で攻撃し軽微な損害しか与えられなかったものの、両者の原価を計算して
損得勘定だけで成果に満足しているOSK美人エージェント岡田真弓とか・・・
・駅弁鉄でもある定吉七番が大阪から新潟まで在来線を遠回りして全駅弁を制覇したため、
NATTOの待ち伏せチームが大混乱に陥るとか・・・
・新潟名物「イタリアン」の北越地方での評価やスイスのパンが不味い理由などなど・・・
映画「裸の銃を持つ男」を遥かに凌ぐコテコテのパロディやギャグが全頁に満載のうえ、
著者は上記ウィキにある経歴のとおり、博物館学の助手からコンバットマガジン編集部を経て
作家になり、真面目な歴史小説では数々の大賞も受賞されてますから博識も相当なもので、
世界の兵器、料理、歴史から古い吉本ギャグにいたるまで、じつに詳細に描かれており、
トリビアの泉としても興味深く読めました
前作までの作品を知らなくても充分に楽しめますので、未読の方には一読をオススメします
それにしても・・・
わたくしシリーズの第一作目から、ずっと感じていたことなんですが、
著者は大阪人でも関西人でもないのに、土地勘にしても言葉の使い方にしても、
なにゆえ、ここまで詳しいのだろうか???
表表紙
裏表紙
帯の惹句
そう、わたくしが愛したスパイ定吉七番(セブン)の最新刊であります!!!
ま、最新刊とはいっても・・・
13年前に小説現代に連載され、10年前に刊行されてた本なんでしゅが・・・
定吉七番(セブン)シリーズ・・・
わたくしは1作目(1985年)から5作目(1986年)まで愛読してましたが、6作目7作目(1988年)は、
仕事が多忙な時期だったので刊行も知らないまま絶版となってたようで、8作目(1994~5年)は
小説現代に連載されたものの当時のサリン事件の影響により単行本化されなかったとのことで、
やはり知りませんでした
著者の作品では、実家に少なくとも文庫版4冊5作と単行本「戦場は僕らのオモチャ箱」が
あるのは覚えてた(著者の作品リストを見ると他にもけっこう読んでた)のですが・・・
最近、NATO東京事務所設置に関するnon☆postさんのツイートをきっかけに、懐かしくて
検索したところ、何と二十数年の時を経て!!!2013年に続編が刊行されていたことを知り、
思わず図書館に予約していた次第・・・(ちなみに本書の文庫版も刊行されてます)
閑話休題
例によって目次のみ・・・
目次にある著者の前口上によれば・・・
定吉七番が誕生したのはちょうど関西バブルの絶頂期で、その後は「アホな現実が小説世界を
はるかに凌駕する状況となり、いまさら東西摩擦でもあるまい」と、ずっと続編の執筆依頼を
断り続けていたところ、最近、大阪府を都にするとかを叫ぶ法律家の市長が現れたりして、
新秩序やら事業仕分けやらリストラやら文化補助削減やらで、人々が閉塞して混乱する中、
「古きに復し廃れたるを興さんとするも、また一興なり」と、定吉の復活を決意されたそうです
(そーいや文化財が行政で保管できずOSKの秘密基地に積み上げられてる場面もありました)
2010年頃の雑誌初出なので(2013年の単行本化時点では)時事ネタが若干古いけど御容赦を、
ともありましたが、今回はじめて読んだわたくしには、2010年頃の大阪どころか世界中の
世相が詳しく盛り込まれてて、じつに懐かしく貴重な一冊となりました
で、オハナシは・・・
帯の惹句にもあるとおり、二十数年前にNATTO幹部を追っていたスイス・アルプス山中で
返り討ちに遭い、氷河クレバスの底深くに落ちて死んだと思われていた定吉七番(セブン)が、
2010年に偶然、氷河の温暖化調査団によって冷凍保存状態で発見され、世界各国が稀少な
研究材料として奪い合う中、OSK(大阪商工会議所秘密会所)が、大阪オリンピック辞退の
見返りとして(それで東京になったんやっ!)密かに入手、南港WTC地下にある(あったのかっ!)
OSKの秘密基地で培養液の中から蘇る・・・あたりまでがプロローグ・・・
で、舞台は本町のレトロビルから枚方の古いアパート、淀川河川敷のホームレス小屋、
スイス国境付近の旧ドイツ要塞跡にあるナチス残党の秘密基地などなどから、やがて、
福島県境の新潟県側にある、田長巻子率いるNATTO過激派の秘密基地へ・・・
小説なので驚愕の展開には触れませんが1980年代のシリーズにさらに磨きがかかったとゆーか、
さらにハチャメチャになったとゆーか、雑誌連載されていた2010年までの007シリーズはじめ
あらゆる映画、小説、コミックス、アニメ、TV番組などのパロディが、これでもかとばかり
盛り込まれてて、1頁ごとに何度も抱腹絶倒しました
例えば・・・
・リクルートスーツ姿でビシッと決めているOSKの美人エージェント岡田真弓が、
初対面の際には「私の名前は真弓、岡田真弓・・・」と名乗るとか
(その名前で往年の阪神ファンからは必ず昔話を聞かされ辟易してるのですが)
・経費削減でリストラされた定吉七番の元上司が、淀川河川敷の小屋でアルミ缶収集しながら、
自然繁殖した巨大アリゲーターやアナコンダらと仲良く暮らしているとか
・スイスの草原から村の集積所へミルク缶を運ぶハイディの、祖父譲りのケッテンクラートとか
(ハイディの幼馴染の恋人がペーテルで、今は都会に住む友人がクララとか)
・新潟の秘密道路に突如現れるM1エイブラムズ(しかも105mm砲搭載の初期型)とか・・・
・それをRPG7で攻撃し軽微な損害しか与えられなかったものの、両者の原価を計算して
損得勘定だけで成果に満足しているOSK美人エージェント岡田真弓とか・・・
・駅弁鉄でもある定吉七番が大阪から新潟まで在来線を遠回りして全駅弁を制覇したため、
NATTOの待ち伏せチームが大混乱に陥るとか・・・
・新潟名物「イタリアン」の北越地方での評価やスイスのパンが不味い理由などなど・・・
映画「裸の銃を持つ男」を遥かに凌ぐコテコテのパロディやギャグが全頁に満載のうえ、
著者は上記ウィキにある経歴のとおり、博物館学の助手からコンバットマガジン編集部を経て
作家になり、真面目な歴史小説では数々の大賞も受賞されてますから博識も相当なもので、
世界の兵器、料理、歴史から古い吉本ギャグにいたるまで、じつに詳細に描かれており、
トリビアの泉としても興味深く読めました
前作までの作品を知らなくても充分に楽しめますので、未読の方には一読をオススメします
それにしても・・・
わたくしシリーズの第一作目から、ずっと感じていたことなんですが、
著者は大阪人でも関西人でもないのに、土地勘にしても言葉の使い方にしても、
なにゆえ、ここまで詳しいのだろうか???
2023年06月23日
令和その他のレイワにおける健全な反逆に関する架空六法
ええ、
「令和その他のレイワにおける健全な反逆に関する架空六法」のご紹介!!!
(図書館予約でも)待ちに待った、新川帆立初のSF短編集であります
帯にあった惹句
初のリーガルSF短編集とあり、浮かび上がるのは社会の「ジョーシキ」とその歪みとも、
自分より大きなものに立ち向かうすべての人のための反逆本ともあります・・・
奥付であります
そう、図書館予約当時は著者の最新刊だったんですが半年待ちでした
著者紹介
詳しい経歴などについては前々回記事「先祖探偵」をご覧ください
本書の目次であります
以下、さくさくっと各話の感想などを・・・
第一話「動物裁判」
人権同様に動物の「命権」も認められるようになった世界での水戸地方裁判所を舞台にした、
ネコ側が原告、ボノボ側が被告とゆー法廷モノ・・・
男女関係(雄雌関係?)がテーマのお話ですが、ミステリーとしても大いに楽しめました
第二話「自家醸造の女」
戦後、占領軍により禁酒法が発令され家庭での酒造りが常態となり、法の廃止後も酒造りが
主婦の嗜みとなった世界で、苦手な酒造りに挑む美女のお話・・・
日本の家族関係や習俗や風俗に対する著者の愛憎が密に感じられた作品でした
第三話「シレーナの大冒険」
バーチャル・ビーイング(仮想世界の人間)とフィジカル・ビーイング(現実世界の人間)が、
一緒に暮らす近未来世界に崩壊の危機が迫るお話で、アバターやマトリックスの世界ですが
なかなか素敵な純愛物語でした
第四話「健康なまま死んでくれ」
過労死を出す企業には投資されなくなった世界の中の日本で働く非正規雇用労働者のお話
こちらもよくできた殺人ミステリで、格差社会もリアルに描かれた作品でした
第五話「最後のYUKICHI」
日本で現金が原則廃止されてから5年後のお話・・・
高度な偽造防止対策が施されたYUKICHIが世界中でマネーロンダリングに使われたり、
新型ウィルスが紙幣や硬貨で感染するとゆーデマが蔓延したりして、現金を貯め込む者や、
使おうとする者は、反社会的人物として迫害され追い詰められていきます
筒井康隆の短編「最後の喫煙者」へのオマージュでしょうか、展開もドタバタ仕立てで、
痛烈な社会風刺にもなってました
第六話「接待麻雀士」
高齢者の認知症予防を名目に賭け麻雀が合法化された社会で、プロ雀士から接待麻雀士になった、
麻雀しか知らない地味で真面目な女性が巧妙な罠に嵌められて・・・とゆーお話
雀士の世界やイカサマの手口など、さすがプロ雀士としての経歴を持つ著者の面目躍如作品
ま、麻雀をしないわたくしには麻雀シーンがよくわかりませんでしたが・・・
ご都合主義に我慢に我慢を重ねてきた純粋な主人公がとても爽やかでした
と、どのオハナシも「異なるレイワ世界」とゆー意味ではパラレル・ワールドSFですし、
法(制度)改正された近未来社会とゆー意味ではフューチャー・ポリティカル・サタイアSF、
アイデアやプロットもよくできてて、もともとSF・ファンタジー作家になりたかったとゆー
著者なので、今後のSF・ファンタジーの長編や連作が楽しみです
「令和その他のレイワにおける健全な反逆に関する架空六法」のご紹介!!!
(図書館予約でも)待ちに待った、新川帆立初のSF短編集であります
帯にあった惹句
初のリーガルSF短編集とあり、浮かび上がるのは社会の「ジョーシキ」とその歪みとも、
自分より大きなものに立ち向かうすべての人のための反逆本ともあります・・・
奥付であります
そう、図書館予約当時は著者の最新刊だったんですが半年待ちでした
著者紹介
詳しい経歴などについては前々回記事「先祖探偵」をご覧ください
本書の目次であります
以下、さくさくっと各話の感想などを・・・
第一話「動物裁判」
人権同様に動物の「命権」も認められるようになった世界での水戸地方裁判所を舞台にした、
ネコ側が原告、ボノボ側が被告とゆー法廷モノ・・・
男女関係(雄雌関係?)がテーマのお話ですが、ミステリーとしても大いに楽しめました
第二話「自家醸造の女」
戦後、占領軍により禁酒法が発令され家庭での酒造りが常態となり、法の廃止後も酒造りが
主婦の嗜みとなった世界で、苦手な酒造りに挑む美女のお話・・・
日本の家族関係や習俗や風俗に対する著者の愛憎が密に感じられた作品でした
第三話「シレーナの大冒険」
バーチャル・ビーイング(仮想世界の人間)とフィジカル・ビーイング(現実世界の人間)が、
一緒に暮らす近未来世界に崩壊の危機が迫るお話で、アバターやマトリックスの世界ですが
なかなか素敵な純愛物語でした
第四話「健康なまま死んでくれ」
過労死を出す企業には投資されなくなった世界の中の日本で働く非正規雇用労働者のお話
こちらもよくできた殺人ミステリで、格差社会もリアルに描かれた作品でした
第五話「最後のYUKICHI」
日本で現金が原則廃止されてから5年後のお話・・・
高度な偽造防止対策が施されたYUKICHIが世界中でマネーロンダリングに使われたり、
新型ウィルスが紙幣や硬貨で感染するとゆーデマが蔓延したりして、現金を貯め込む者や、
使おうとする者は、反社会的人物として迫害され追い詰められていきます
筒井康隆の短編「最後の喫煙者」へのオマージュでしょうか、展開もドタバタ仕立てで、
痛烈な社会風刺にもなってました
第六話「接待麻雀士」
高齢者の認知症予防を名目に賭け麻雀が合法化された社会で、プロ雀士から接待麻雀士になった、
麻雀しか知らない地味で真面目な女性が巧妙な罠に嵌められて・・・とゆーお話
雀士の世界やイカサマの手口など、さすがプロ雀士としての経歴を持つ著者の面目躍如作品
ま、麻雀をしないわたくしには麻雀シーンがよくわかりませんでしたが・・・
ご都合主義に我慢に我慢を重ねてきた純粋な主人公がとても爽やかでした
と、どのオハナシも「異なるレイワ世界」とゆー意味ではパラレル・ワールドSFですし、
法(制度)改正された近未来社会とゆー意味ではフューチャー・ポリティカル・サタイアSF、
アイデアやプロットもよくできてて、もともとSF・ファンタジー作家になりたかったとゆー
著者なので、今後のSF・ファンタジーの長編や連作が楽しみです